(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記温度調整部材は、前記温度調整機構と連結されて前記栽培パネル内へと熱伝達するためのイン側主流と、前記温度調整機構と連結されて前記栽培パネル外へと熱伝達するアウト側主流と、前記イン側主流及び前記アウト側主流との間を架橋して前記栽培パネル内部への熱伝達を実行する複数の分流と、を有して構成されており、
前記分流が、前記植物配設孔を縦断するよう配置されていることを特徴とする請求項1に記載の株元温度制御機構付栽培装置。
前記温度調整部材は、前記温度調整機構と連結されて前記栽培パネル内へと熱伝達するためのイン側主流と、前記温度調整機構と連結されて前記栽培パネル外へと熱伝達するアウト側主流と、前記イン側主流及び前記アウト側主流との間を架橋して前記栽培パネル内部への熱伝達を実行する複数の分流と、を有して構成されており、
前記分流が、前記植物配設孔の周縁部に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の株元温度制御機構付栽培装置。
前記温度調整部材は、加温用の加温側温度調整部材と、冷却用の冷却側温度調整部材と、の二系統を有して構成されるとともに、前記加温側温度調整部材と、前記冷却側温度調整部材と、を片方若しくは双方使用するようスイッチング可能であり、
前記加温側温度調整部材は、前記温度調整機構と連結されて前記栽培パネル内へと熱伝達するための加温イン側主流と、前記温度調整機構と連結されて前記栽培パネル外へと熱伝達する加温アウト側主流と、前記加温イン側主流及び前記加温アウト側主流との間を架橋して前記栽培パネル内部への熱伝達を実行する複数の加温分流と、を有して構成され、
前記冷却側温度調整部材は、前記温度調整機構と連結されて前記栽培パネル内へと熱伝達するための冷却イン側主流と、前記温度調整機構と連結されて前記栽培パネル外へと熱伝達する冷却アウト側主流と、前記冷却イン側主流及び前記冷却アウト側主流との間を架橋して前記栽培パネル内部への熱伝達を実行する複数の冷却分流と、を有して構成されるものであり、
前記加温分流と前記冷却分流とは、所定の角度を成して交差した状態で積層されていることを特徴とする請求項2に記載の株元温度制御機構付栽培装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種植物を育成する栽培方法として、植物工場に代表される規模の大きい栽培方法が知られている。
このような方法が実施される施設では、水耕栽培方式が採用されることが多く、管理された環境下において、必要養分を含有する培養液が供給され、高品質の植物を効率的に生産することができる。
一方、このような施設において、植物を栽培するにあたり、植物の生育をより良好とするための改良が望まれている。
例えば、植物の成長に関しては、温度が影響因子となることは広く知られているが、特に、根圏温度が生育に与える影響が大きいことがわかってきている。
つまり、水耕栽培を行うような場合には、培養液の温度が低下する冬季においては、根圏の温度が低下し、高温の夏季に比して生育が抑制されてしまうという事例が報告されている。
また、植物の生育段階によっては、根圏温度を低下させたほうがよい時期もあり、根圏温度を調整することにより、植物の生育をコントロールしたいという要望があった。
【0003】
このため、培養液温度を調整する方法が考えらえるが、このような培養液温度制御では、培養液の比熱が大きく、多大なエネルギー消費が必要とることから、特に大規模の水耕栽培施設においては実行することが困難であった。
また、培養液の温度制御を行っている場合であっても、施設全体又は栽培パネル全体で同一の温度制御が実行されるため、成長段階に応じて最適な温度に調整することができないという問題あるとともに、同一の栽培パネル内で根圏の温水域と冷水域とを混在させることは不可能であった。
なお、根圏を加温するための技術としては、特許文献1のような技術が提案されている。
【0004】
特許文献1の技術においては、株元保温器が開示されている。
当該株元保温器は、一株毎にその株元を被覆するケーシングにより構成されている。
このケーシングの内面には、潜熱蓄熱材が封入された潜熱蓄熱体が配設されており、太陽光が照射されると、このエネルギーが熱となり当該潜熱蓄熱材に蓄熱される構成となっている。
そして、気温が低下する夜間等には、蓄熱された潜熱蓄熱材から熱が放出されることにより、株元が保温されることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、特許文献1に記載の株元保温器によれば、電力を使用することなく株元を保温することができるため、多大なエネルギーが使用されるという事態を回避することができる。
しかし、大量栽培において、特許文献1に記載されているような株元保存器を全株に着脱することは困難であり、工数的にも不利であるという問題があった。また、自然蓄熱及び放熱による制御となるため、成長段階や区画に応じた緻密な温度制御ができず、コントロール性に欠けるという問題もあった。
また、特許文献1の技術では、根圏の加温を行うことができても、冷却することはできず(株元保温器を撤去して自然状態に戻すことしかできない)、根圏に対し加温及び冷却を行って緻密な制御を行うことができないという問題もあった。
更に、根元付近が培養液に浸漬される水耕栽培という栽培方法においては、当該方法は適正に合致するとは言えないという問題もある。
更に、前述のように、培養液温度制御を取り入れると、エネルギー使用量が多大となるとともに、緻密な温度制御を行うことが困難である。
【0007】
本発明の目的は、上記各問題点を解決することにあり、少ないエネルギーで株元の温度を緻密にコントロールすることが可能となった株元温度制御機構付栽培装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、特に植物の水耕栽培において、適正に使用可能な株元温度制御機構付栽培装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、請求項1に係る株元温度制御機構付栽培装置によれば、植物を水耕栽培するための株元温度制御機構付栽培装置であって、該株元温度制御機構付栽培装置は、植物を支持して生育させる栽培トレーと、該栽培トレーに対し温度調整を行う温度調整機構と、を少なくとも有して構成されており、前記栽培トレーは、水耕栽培用の培養液を貯留する有底筐体状の培養液保持部と、該培養液保持部の開口を閉塞するように覆設される栽培パネルと、該栽培パネルに配設されるとともに前記温度調整機構に接続されて温度制御を行う温度調整部材と、を有して構成されており、前記栽培パネルには、植物を配設するための植物配設孔が形成されており、前記温度調整部材は、
前記栽培パネルに埋設されており、前記温度調整部材は、前記植物配設孔を縦断して、前記植物配設孔から縦断部分が露出するよう配置されていることにより解決される。
【0009】
このように本発明においては、植物を配設するための植物配設孔を有する栽培パネルにおいて、温度調整を行うことにした。
なお、この栽培パネルは、有底筐体状の培養液保持部の開口を覆設するように配置されるものである。つまり、水耕栽培を行うに際しては、培養液は有底筐体状のケース(培養液保持部)に培養液を保持し、このケース(培養液保持部)の上方(植物の地上部伸長方向)に覆設された栽培パネルに植物を支持する形態をとるものである。この栽培パネルには、植物を保持するための植物配設孔が形成されており、当該部分に植物が植付けられた円柱状の植物支持体が配置される。そして、根側は当該部分から下方へと延びて培養液に到達し、養分及び水分を吸い上げることができるように構成されている。
このため、この植物配設孔に近接して温度調整部材を配設することにより、植物の株元(根圏部分)の温度調整を行うことが可能となる。
このように、栽培パネルにおいて温度調整を行うことが可能となるため、培養液自体の温度調整を行う必要がなく、よって、少ないエネルギーで株元(根圏部分)の温度調整を行うことが可能となる。
また、本発明によれば、培養液保持部の上方(植物の地上部伸長方向)に配設された栽培パネルにおいて温度調整を行うため、培養液自体を加温若しくは冷却することはない。
よって、比熱の高い培養液の温度調整が不要となり、上記のようにエネルギー的に有利であるとともに、周辺環境温度(培養室内温度)に左右されることなく、植物に対し最適な生育温度(根圏温度)を実現することができる。
【0010】
また
、このように栽培パネル
に植物配設孔が形成され、温度調整部材がこれら植物配設孔に延びているため、複数の植物を最適根圏温度環境にて生育させることができる。よって、特に、工業的に植物の水耕栽培を行うにあたり最適に使用することが可能となる。
また、温度調整部材が植物配設孔にわたって配設されるため、当該部分により植物の株元を保持できるとともに、より近接及び接触した状態で株元を温度調整することができるため好適である。
【0011】
このとき具体的には、請求項
2に記載のように、前記温度調整部材は、前記温度調整機構と連結されて前記栽培パネル内へと熱伝達するためのイン側主流と、前記温度調整機構と連結されて前記栽培パネル外へと熱伝達するアウト側主流と、前記イン側主流及び前記アウト側主流との間を架橋して前記栽培パネル内部への熱伝達を実行する複数の分流と、を有して構成されており、前記分流が、前記植物配設孔を縦断するよう配置されていると好適である。
このように構成されていると、効率的に温度調整部材を栽培パネル内に張り巡らせることが可能となるため好適である。
【0012】
また、別の具体例としては、請求項
3に記載のように、
植物を水耕栽培するための株元温度制御機構付栽培装置であって、該株元温度制御機構付栽培装置は、植物を支持して生育させる栽培トレーと、該栽培トレーに対し温度調整を行う温度調整機構と、を少なくとも有して構成されており、前記栽培トレーは、水耕栽培用の培養液を貯留する有底筐体状の培養液保持部と、該培養液保持部の開口を閉塞するように覆設される栽培パネルと、該栽培パネルに配設されるとともに前記温度調整機構に接続されて温度制御を行う温度調整部材と、を有して構成されており、前記栽培パネルには、植物を配設するための植物配設孔が形成されており、前記温度調整部材は前記栽培パネルに埋設されており、前記温度調整部材は、少なくとも前記植物配設孔の周縁部に配置されていると好適である。
別例においては、植物配設孔の周縁部に温度調整部材を配置したため、植物の株元を囲むような形態で温度調整を行うことができ、効率的に株元の温度調整を行うことが可能となる。
【0013】
そして、請求項
3において、更に具体的な構成としては、請求項
4に記載のように、前記温度調整部材は、前記温度調整機構と連結されて前記栽培パネル内へと熱伝達するためのイン側主流と、前記温度調整機構と連結されて前記栽培パネル外へと熱伝達するアウト側主流と、前記イン側主流及び前記アウト側主流との間を架橋して前記栽培パネル内部への熱伝達を実行する複数の分流と、を有して構成されており、前記分流が、前記植物配設孔の周縁部に配置されていると好適である。
このように構成されていると、請求項
2の別の具体例においてもまた、効率的に温度調整部材を栽培パネル内に張り巡らせることが可能となるため好適である。
【0014】
また、請求項
3及び請求項
4の発明において、更に具体的な構成としては、請求項
5に記載のように、前記植物配設孔の周縁部に配置されている前記温度調整部材を弦状にわたるように複数の熱伝導部材が配置されていると好適である。
このように構成されていると、熱伝導部材が植物配設孔にわたって配設されるため、当該部分により植物の株元を保持できるとともに、植物配設孔の周縁部に配置されている前記温度調整部材からの熱伝導により、近接及び接触した状態で株元を温度調整することができるため好適である。
【0015】
更に、請求項
6に記載のように、前記温度調整部材は、加温用の加温側温度調整部材と、冷却用の冷却側温度調整部材と、の二系統を有して構成されており、前記加温側温度調整部材と、前記冷却側温度調整部材と、を片方若しくは双方使用するようスイッチング可能であると好適である。
このように構成されていると、より緻密に株元の温度を調整することが可能となるため好適である。
【0016】
また、請求項
2の発明において、温度調整部材を二系統に分ける場合には、請求項
7に記載のように、前記温度調整部材は、加温用の加温側温度調整部材と、冷却用の冷却側温度調整部材と、の二系統を有して構成されるとともに、前記加温側温度調整部材と、前記冷却側温度調整部材と、を片方若しくは双方使用するようスイッチング可能であり、前記加温側温度調整部材は、前記温度調整機構と連結されて前記栽培パネル内へと熱伝達するための加温イン側主流と、前記温度調整機構と連結されて前記栽培パネル外へと熱伝達する加温アウト側主流と、前記加温イン側主流及び前記加温アウト側主流との間を架橋して前記栽培パネル内部への熱伝達を実行する複数の加温分流と、を有して構成され、前記冷却側温度調整部材は、前記温度調整機構と連結されて前記栽培パネル内へと熱伝達するための冷却イン側主流と、前記温度調整機構と連結されて前記栽培パネル外へと熱伝達する冷却アウト側主流と、前記冷却イン側主流及び前記冷却アウト側主流との間を架橋して前記栽培パネル内部への熱伝達を実行する複数の冷却分流と、を有して構成されるものであり、前記加温分流と前記冷却分流とは、所定の角度を成して交差した状態で積層されていると好適である。
このように構成されていると、植物配設孔に露出する分流部分が交差した構成となるため、当該部分により植物の株元をより確実に保持できるとともに、植物の株元に近接及び接触した状態で株元を温度調整することができる。
【0017】
更に、これらのとき、請求項
8に記載のように、前記温度調整部材は、パイプ状の配管として構成されており、前記温度調整部材の内部には、前記温度調整機構により温度調整された流動体状の温度調整媒体が流されると好適である。
温度調整部材としては、熱を伝導できるものであれば、特に限定されるものではなく、電熱線等も好適に使用することが可能であるが、請求項
8に記載のように、パイプ状の配管を張り巡らせて、流体状の温度調整媒体を循環させると好適である。
この温度調整媒体としては、これもまた特に限定されるものではないが、水(温水及び冷水)、プロピレングリコール等の媒体等が使用されるとよい。
【0018】
また、請求項
9に記載のように、前記イン側主流と前記分流との境界部には、調整電磁弁が配置されており、該調整電磁弁の開度制御を行うことにより、前記分流の流量制御を行うと好適である。
このように構成されていると、特に、植物配設孔が複数形成されている場合には、各植物配設孔毎に株元の温度を調整することができる。
例えば、一つの栽培パネルにおいて、生育ステージが異なる植物や、別種の植物を生育させることも可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る株元温度制御機構付栽培装置によれば、比熱の大きい培養液自体の温度を調整する必要がないため、従来の培養液温度を調整する装置に比して、エネルギー効率的に非常に有利である。
また、株元(根圏温度)を調整する構成であるため、地上部環境(栽培室内の環境等)に左右されず、適切な生育環境を提供することができる。
更に、調整電磁弁の使用により、一個の栽培パネル内であっても、植物配設孔毎に異なる温度制御を行うことが可能となるため、一項の栽培パネル内で、異なった品種や異なった生育ステージの植物を同時に栽培することができる。
また更に、株元の(根圏温度)を調整することにより、植物の高品質化が可能となるとともに、本発明に係るシステムにおいては、低温・高温の温度ストレスを与えることも可能となるため、植物の抗酸化機構が刺激されて機能性成含有量が増加した高付加価値植物(野菜)の提供が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する構成は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
本実施形態は、水耕栽培において使用される、温度制御機構が搭載された株元温度制御機構付栽培装置に関するものであり、当該装置は、少ないエネルギーで株元の温度を緻密にコントロールすることができる。
【0022】
図1乃至
図4は、本発明の第一実施形態を示すものであり、
図1は第一水耕栽培システムを示す概略説明図、
図2は第一栽培パネルの上面図、
図3は第一栽培パネルの内部説明図、
図4は第一栽培パネルの断面説明図である。
また、
図5及び
図6は、本発明の第二実施形態を示すものであり、
図5は第二栽培パネルの上面図、
図6は第二栽培パネルの内部説明図である。
更に、
図7及び
図8は、本発明の第三実施形態を示すものであり、
図7は第三栽培パネルの上面図、
図8は第三栽培パネルの内部説明図である。
【0023】
≪第一実施形態≫
<栽培システムの概略構成について>
図1に、本実施形態に係る第一水耕栽培システムS1の概略構成図を例示した。
この第一水耕栽培システムS1が、「株元温度制御機構付栽培装置」に相当するものである。
なお、本第一水耕栽培システムS1は、システムの一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、改変されていてもよい。
本実施形態に係る第一水耕栽培システムS1は、第一栽培トレー1と、貯留タンク2と、熱交換システム3と、ポンプ4と、これらを連結して温度調整媒体M1の通路となるライン5と、を有して構成されている。
なお、貯留タンク2、熱交換システム3、ポンプ4、ライン5は、特許請求の範囲の「温度調整機構」に相当するが、これらは、本実施形態における機構の一例であり、本発明の趣旨に逸脱しない範囲において改変されてもよいことは勿論である。
つまり、要は、第一栽培トレー1における温度を調整する(加温及び冷却等)ができればよいのであって、本実施形態においては、当該目的を達成するための機構例として、上記部材の組合せを示したものにすぎない。
【0024】
次いで、各構成に関して説明する。
第一栽培トレー1は、複数の植物を支持して培養する(生育する)ためのものである。
なお、当該第一栽培トレー1の詳細な構成は、本発明の主要部分であるため、後に詳述する。
貯留タンク2は、温度調整媒体M1を貯留しておくための容器である。
側面には、温度計Tが備えられており、内部に貯留された温度調整媒体M1の温度を監視している。
本実施形態においては、温度調整媒体M1の一例として、水が使用されている。なお、加温時期においては、熱交換システム3により加温された温度調整媒体M1(温水)が貯留されることとなり、冷却時期においては、熱交換システム3により冷却された温度調整媒体M1(冷水)が貯留されることとなる。
これらのコントロールは図示しない制御装置により公知の方法で実行されるとよい。
なお、本実施形態においては、温度1調整媒体M1の例として水を使用し、当該水を加温及び冷却する構成としたが、温度調整媒体M1として使用される素材はこれに限られるものではなく、例えば、プロピレングリコール等の液状媒体が使用されていてもよい。
【0025】
熱交換システム3は、公知の熱交換機で形成されている。
例えば、プレート式熱交換器等が使用されており、この熱交換システム3を通過する温度調整媒体M1の温度を上昇又は降下させることにより、温度調整媒体M1を所望の温度に調整する。
なお、貯留タンク2に備えられた温度計Tからの温度データにより、熱交換システム3に対しフィードバック制御が実行されるように設計されていると好適である。
また、本例では熱交換システム3を使用した構成としたが、これに限られることはなく、貯留タンク2の外側に温度調整ジャケットを装着し、貯留タンク2を直接冷却又は加温可能となるように構成されていてもよい。
【0026】
ポンプ4は公知のポンプであり、ライン5を通過する温度調整媒体M1を潤滑に移動させるために必要箇所に必要個数使用される。このポンプ4の配置個数や配置位置に関しては、栽培システムS1の状態(流路長、流量、高低差、ライン圧等)に応じて適宜設計されるものである。
ライン5は、温度調整媒体M1が移動するための経路であり、本実施形態においては、中空の配管が使用されている。
このライン5は、貯留タンク2の底弁から引き出され、第一栽培トレー1及び熱交換システム3をこの順に通過して貯留タンク2の戻入弁に到達する使用ライン51と、貯留タンク2の底弁から引き出され、熱交換システム3を通過して貯留タンク2の戻入弁に到達する循環ライン52と、を有する2個のライン構成を成して構成されている。
この使用ライン51と循環ライン52とは、前側三方弁V1と後側三方弁V2とにより切り替えられるように構成されている。
【0027】
循環ライン52は、貯留タンク2内に貯留させる温度調整媒体M1の温度変更を行うためのラインである。例えば、温度調整媒体M1を温水から冷水へ変更する際に、当該循環ライン52内を循環させて貯留タンク2内に貯留される温度調整媒体M1の温度を低下させる。
このようにして温度調整媒体M1の温度が所望の温度で安定すれば、ライン5を使用ライン51に切り替えて(前側三方弁V1と後側三方弁V2の流路を切り替えて)、第一栽培トレー1に温度調整媒体M1を供給する。
なお、本実施形態においては、このようにライン5を切り替えることにより、温度調整媒体M1の温度変更を行ったが、これに限られることはなく、高い温度用と低い温度用の2種類の貯留タンク2を使用して、第一栽培トレー1への温度調整用媒体M1供給元の貯留タンク2を切り替えるように構成してもよい。
このようにして、所定の温度に調整された温度調整媒体M1が、第一栽培トレー1に供給されることとなる。
【0028】
<栽培トレーの構成について>
次いで、
図2乃至
図4により、第一栽培トレー1について説明する。
第一栽培トレー1は、培養液保持部11と、第一栽培パネル12と、を主として有して構成されている。
培養液保持部11は、有底筐体状のトレーであり、内部に培養液Kが保持されている。図示は省略するが、この培養液保持部11には、培養液導入口及び培養液排出口、これらに付随する弁(バルブ)やポンプ等があり、培養液の導入及び排出が簡易に行えるように構成されている。
第一栽培パネル12は、矩形板状体であり、培養液保持部11の上方(植物地上部伸長方向)開口部分を閉塞するように配置される。なお、図示は省略するが、培養液保持部11の側壁内面側には、第一栽培パネル12の端部(若しくは、被係止部)を係止するための係止部が複数形成されており、当該係止部に第一栽培パネル12の端部(若しくは被係止部)が固定可能となっている。
このとき、培養液Kは、第一栽培パネル12と接触しないように調整されている。つまり、培養液Kの表面よりも上方(植物地上部伸長方向)に第一栽培パネル12は配置されている。
【0029】
第一栽培パネル12は、矩形平板であり、複数の植物配設孔12Aが穿孔されている。
また、第一栽培パネル12には、温度調整部材12Bが内装されている。
第一栽培パネル12の素材は特に限定されるものではないが、熱伝導性の低い素材で形成されていることが望ましく、本実施形態においては、熱伝導性の低さ、密度(重さ)、成形性の観点から発泡スチロールが使用されている。
また、本実施形態においては、温度調整部材12Bは、熱伝導性の高い素材で形成された中空のパイプとして構成されており、この内部を温度調整媒体M1が通過するように構成されている。
【0030】
本実施形態においては、
図3に示すように、横方向に4個及び縦方向に3個各々並列した状態、つまり計12個の植物配設孔12Aを形成した例を示しており、横方向に並列する4個の植物配設孔12Aを1個のブロックとして、3個のブロック構成としている。
そして、温度調整部材12Bは、イン側主流121、3個の分流122(各ブロック相当分)、アウト側主流123と、で構成されている。
【0031】
イン側主流121は貯留タンク2から引き出されたライン5と連結されたパイプ部分であり、アウト側主流123は、熱交換システム3へと引き出されるライン5と連結されたパイプ部分である。
そして、分流122は、イン側主流121とアウト側主流123との間をわたるパイプ部分であり、各ブロックについて6本のブランチ122aに分流している。
本実施形態においては、このブランチ122aは、内径5mm〜10mm程度に形成されており、イン側主流121及びアウト側主流123よりも若干小径となっている。
【0032】
また、イン側主流121と各ブランチ122aとの境界部分には、調整電磁弁122bが配置されており、この調整電磁弁122bを比例制御することにより、ブランチ122aに流れる温度調整媒体M1の流量を、各ブロック毎に調整することができるように構成されている。これにより、各ブロック毎に緻密な温度制御を行うことが可能となる。
このように構成されているため、貯留タンク2から第一栽培トレー1に流れ込んだ温度調整媒体M1は、
図3に示すように、イン側主流121から、各ブランチ122aを通って、アウト側主流123へと流れるようになる。そして、アウト側主流123へと流れ込んだ温度調整媒体M1は、第一栽培トレー1から熱交換システム3へと送られる(
図1参照)。
また、温度調整部材12Bは、第一栽培パネル12に内装されているため、穿孔された植物配設孔12Aからは、
図2に示すように、ブランチ122aが露出することとなる。
【0033】
なお、植物は、植物配設孔12Aの内径と整合する外径を有する円柱状の植物支持体Gに植え付けられた状態で、植物配設孔12Aに配設されている。
このとき、この植物支持体Gは、植物配設孔12Aに嵌合するとともに、上述のように、穿孔された植物配設孔12Aからは、ブランチ122aが露出しているため、当該ブランチ122a位置でもまた植物支持体Gは保持される。
また、このブランチ122aは一定の間隙をもって6本並んでいるため、この間隙から植物の根が培養液K方向へと伸長することができる。
よって、ブランチ122aの存在により、根と培養液Kとが接触することが阻害されることはない。
【0034】
更に、
図4に示すように、植物の株元は、ブランチ122aの位置に配置されることとなる。そして、上述の通り、ブランチ122aには、温度調整媒体M1が流れているため、植物の株元は、温度調整媒体M1の温度に調整されることとなる。
つまり、植物の生育段階において、株元の加温が必要な場合には、適正温度に加温された温度調整媒体M1をブランチ122aに流すことにより株元を加温し、適正な生育を促すことができる。
また、前述のように、調整電磁弁122bの開度を制御することにより、各ブロックの温度調整媒体M1通過量を調整し、各ブロック毎に緻密な株元温度制御を行うことが可能となる。
【0035】
なお、本実施形態においては、温度調整媒体M1を流体(水:温水又は冷水)としたが、これに限られることはなく、温度調整媒体M1を流体以外で構成してもよい。
つまり、一例としては、温度調整媒体M1として、電熱線を第一栽培パネル12に埋め込む構成でもよいし、振動(衝撃)を与えると発熱又は吸熱するような化学物質を第一栽培パネル12に埋め込む構成でもよい。
【0036】
≪第二実施形態≫
次いで、
図5及び
図6により第二実施形態に係る第二水耕栽培システムS2について説明する。
当該実施形態においては、ライン5が2系統あること及び温度調整部材12Bの構成等が異なる構成である以外は、上記第一実施形態と同様であるため、上記第一実施形態と異なる部分について説明する。
本実施形態においては、ライン5は、加温ライン5Aと、冷却ライン5Bとの2ライン構成が採用されており、これに伴い、図示は省略するが、貯留タンク2も、温熱タンクと冷却タンクの二種類が使用される。
また、図示は省略するが、これに伴い、熱交換システム3も、加温用及び冷却用に二種類使用されている。
【0037】
ライン5の基本構成は、
図1と同様の構成であり、温熱用(加温ライン5A)と冷却用(冷却ライン5B)の2系統存在するのみであるため、図示による説明は省略する。
なお、加温ライン5Aには、温度調整媒体M1(本実施形態においては、加温されたもの)が循環し、冷却ライン5Bには、温度調整媒体1と異なる温度に調整された温度調整媒体M2(本実施形態においては、冷却されたもの)が循環する構成となっている。
【0038】
本実施形態では、上記第一実施形態の温度調整部材12Bに相当する構成である第二温度調整部材2012Bは、加温側調整部材2012aと、冷却側調整部材2012bと、が組合わされて構成されている。
なお、加温ライン5Aの構成は、
図1乃至
図3に示す上記第一実施形態のライン5と同様に構成されている。
この加温側調整部材2012aは、加温イン側主流2121Aと、3個の加温分流2122Aと、加温アウト側主流2123Aと、で構成されている。
そして、加温分流2122Aは、各ブロックについて6本の加温ブランチ2122aに分流している。
【0039】
なお、温度調整媒体M1は、上記実施形態と同様に、加温イン側主流2121A→加温分流2122A(加温ブランチ2122a)→加温アウト側主流2123Aと流れるよう流路構成されている。なお、第二栽培パネル2012の外側の流路に関しては、上記第一実施形態と同様であるため説明は省略する。更に、調整電磁弁122bは上記第一実施形態と同様の位置に配設されており、温度調整媒体M1の流量を調整できる点に関しても上記第一実施形態と同様である。
【0040】
冷却ライン5Bの構成は、基本的には、
図1乃至
図3に示す上記第一実施形態のライン5と同様であるが、冷却側調整部材2012bは、加温側調整部材2012aに対して90°回転した状態に配置されている。
以下、詳細に説明する。
冷却側調整部材2012bは、冷却イン側主流2121Bと、3個の冷却分流2122Bと、冷却アウト側主流2123Bと、で構成されている。
また、冷却分流2122Bは、各ブロックについて6本の冷却ブランチ2122bに分流している。
【0041】
そして、この冷却ブランチ2122bは、加温ブランチ2122aと直交するように(加温ブランチ2122aに対して90°ずれた状態で)、この加温ブランチ2122aに積層配置される。なお、この配置に伴い、冷却イン側主流2121B及び冷却アウト側主流2123Bが延びる方向は、加温イン側主流2121A及び加温アウト側主流2123Aが延びる方向と各々90°ずれることとなる。
なお、温度調整媒体M2は、上記実施形態と同様に、冷却イン側主流2121B→冷却分流2122B(冷却ブランチ2122b)→冷却アウト側主流2123Bと流れるよう流路構成されている。なお、第二栽培パネル2012の外側の流路に関しては、上記第一実施形態と同様であるため説明は省略する。更に、調整電磁弁122bは上記第一実施形態と同様の位置に配設されており、温度調整媒体M1の流量を調整できる点に関しても上記第一実施形態と同様である。
【0042】
なお、本実施形態においては、冷却ブランチ2122bは、加温ブランチ2122aと直交するように(加温ブランチ2122aに対して90°ずれた状態で)、この加温ブランチ2122aに積層配置されているが、これに限られることはなく、同方向(ずれ0°)、若しくは、0°<θ<90°ずらして積層されるものであってもよい。
しかし、ずらして配置することにより、加温ブランチ2122aと冷却ブランチ2122bとがメッシュ状に組まれることとなるため、植物の根側の安定性が良好となる。
【0043】
このように、第二実施形態に係る第二水耕栽培システムS2によれば、第二栽培トレー212にて栽培されている植物の根圏の加温と冷却とを容易に切り替えることができる。
また、加温ライン5Aと冷却ライン5B双方を使用することにより、より細やかな温度調整を行うことが可能となる。
よって、栽培している植物の生育ステージや植物種によって、各ラインの切り替えや、最適温度への調整をより緻密に行うことができる。
【0044】
≪第三実施形態≫
次いで、
図7及び
図8により第三実施形態に係る第三水耕栽培システムS3について説明する。
当該実施形態においては、温度調整部材12Bの構成等が異なる構成である以外は、上記第一実施形態と同様であるため、上記第一実施形態と異なる部分について説明する。
本実施形態では、第三栽培トレー301の外側のライン5基本構成は、上記第一実施形態と同様であるため、図示による説明は省略する。
【0045】
上記第一実施形態の温度調整部材12Bに相当する構成である第三温度調整部材3012Bは、第三イン側主流3121Aと、4個の第三分流3122Aと、第三アウト側主流3123Aと、で構成されている。
そして、第三分流3122Aは、各ブロックについて3本の第三ブランチ3122aに分流している。
第三ブランチ3122aは、ブランチ本流61と、ブランチ端末分流62と、から構成されている。
このブランチ本流61は、第三イン側主流3121Aと第三アウト側主流3123Aとにわたる流路となるものである。
また、ブランチ端末分流62は、上記ブランチ本流61から第三植物配設孔3012Aに至る流路となるものである。
【0046】
そして、このブランチ端末分流62は、第三植物配設孔3012Aの周囲を囲むように配設された環状分流62aと、ブランチ本流61と環状分流61aとを結ぶ連絡分流62bと、で構成されている。
また、この環状分流62aを弦状にわたるように配置されるメッシュ部材62cが複数本配置されている。
このメッシュ部材62cは、熱伝導性の高い素材(例えば、針金)で形成されおり、よって、環状分流62aからの熱伝導が実現されるとともに、植物の下方部分を支持することができる。
【0047】
このように構成されているため、温度調整部材M1は、第三イン側主流3121A→第三分流3122A(第三ブランチ3122a)→第三アウト側分流3123Aと流れるよう流路構成される。
このとき、本実施形態においては、第三植物配設孔3012Aの周囲を囲むように配設された環状分流62aに温度調整部材M1が流入するように構成されるとともに、メッシュ部62cへと熱伝導されるため、植物の株元部分に対し効率良く温度調整を行うことが可能となる。
なお、第三栽培パネル3012の外側の流路に関しては、上記第一実施形態と同様であるため説明は省略する。
更に、調整電磁弁122bに関しては、各ブランチ本流61と連絡分流62bとの境界部分に配設されており、環状分流62aに流入する温度調整媒体M1の流量を調整できるよう構成されている。
これにより、植物の株元の温度調整をより緻密に行うことができる。
【0048】
以上のように、全ての実施形態において、比熱の高い培養液自体の温度調整を行う必要がなくなるとともに、熱伝導が容易であるため、従来技術に比して、エネルギー効率が極めて良好となる。
また、調整電磁弁122bの操作や、第二実施形態のような複数系統の導入により、同じトレー内であっても、植物毎に異なる温度に制御することが可能となるため、同一トレー内において多品種栽培が可能となる。更に、植物の生育ステージや植物品種によって最良な温度制御を行うことにより、高栄養価・高品質の植物を栽培することが可能となる。
更に、植物に対し、適度な低温及び高温ストレスを与えることにより、抗酸化機構を増進させて、機能性成分含量を高めることもまた期待される効果である。
また、株元の温度を制御することにより、地上部が植物にとって最適とはいえない環境条件であっても、十分な生育を促すことができる。