(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一実施形態であり、U相のコイルについて導体群を2分割した場合に各コイル端末の接続状態をモデル的に示す図
【
図2】スロットにコイルを一括挿入する場合と、コイルを巻き数で2分割した挿入場合と、本実施形態とを比較して示す図
【
図3】外径側及び内径側コイルの導体本数の一例を示す固定子の一部断面図
【
図4】従来構成であり、コイルを一括で挿入した固定子を示す平面図
【
図6】従来構成であり、同じスロットに納めるコイルを巻き数で2分割して挿入した固定子を示す平面図
【
図7】
図4に示す固定子のコイルがスロットに巻回されている状態を展開して示す図
【
図8】
図7に示すコイルの各端末の接続状態をモデル的に示す図
【
図9】
図6に示す固定子のコイルがスロットに巻回されている状態を展開して示す図
【
図10】
図9に示すコイルの各端末の接続状態をモデル的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、一実施形態について図面を参照して説明するが、本実施形態の構成と従来構成との相違を明確にするため、従来構成から順を追って説明する。
図4は、分布巻の一形態である重ね巻方式の固定子の平面図であり、
図5は同側面図である。固定子1は、ステータコア(固定子鉄心)2、U相コイル(巻線)3U、V相コイル3V及びW相コイル3Wを有しており、各コイルはスロット4に渦巻状に配置されている。
【0008】
尚、回転電機としてはインナロータ型であり、ステータコア(固定子鉄心)2の中空部に破線で示す回転子5が配置される。但し、本実施形態は固定子1の構造に特徴を有しているので、回転子5については詳細な説明を省略する。
【0009】
各コイル3U〜3Wは、複数本の導体(例えば銅線)を束ねた導体群が巻回されたもので、巻回された状態でスロット4内に納められる。この構成では、コイル3をスロット4に収容する際の銅線量が多くなるため、手作業の場合は作業性が悪化して挿入に時間がかかる。また、機械によって収容する場合でも銅線への負荷が大きくなり、被膜を損傷して絶縁信頼性が悪化し易い。更に、コイル3の挿入後に、ステータコア2の端面に露出するコイル部であるコイルエンド3E(
図5参照)を、外径方向に押し広げる成形工程においても同様の問題が生じる。加えて、銅線数が多くなるとコイル3の剛性が高くなるため、コイルエンド3Eの高さが高くなり、銅線の使用量が増えてしまう。
【0010】
図6は、特許文献1のように、各スロット4に納めるコイル6を巻き数で2分割した場合の
図4相当図である。同じスロット4に納めるコイル6を2回に分けて(6(1)、6(2))挿入するので一度に納める銅線量が減少し、コイル挿入、成形時の作業性向上や絶縁信頼性の確保、コイルエンドの高さ低減による銅線使用量の削減が可能になる。
【0011】
しかし、このようにコイル6を巻き数で分割する場合、モータ特性を一括で挿入する場合と同等にするには、分割して同じスロット4に挿入するコイル6(1)、6(2)を直列に接続することが必要になる。すると、コイル6の端末を接続する箇所が増加するため、接続作業に要する時間が増加するというデメリットがある。
【0012】
図7は、一般的な三相4極48スロットモータの固定子に、
図4に示したようにU相巻線3Uが収容されている状態を展開してモデル的に示した図である。各コイル3Uを2個連続で巻回しているので、2つのコイル3Uの端末間は図中に破線で示す渡り線7で接続されている。具体的には、例えば図中に示すステータコア2のティース番号1−2間、10−11間に納まるコイル3Uを先に作成し、次に渡り線7を介して2−3間、11−12間に納まるコイル3Uを作成する。そのため、2個連続のコイル1つについてコイル端末は2本となる。以下の説明は、2個連続のコイルを1つのコイルとして扱う。
【0013】
図中の添字U−A−B−C(例えばU−1−1−1)は、U:U相、A:段数、B:コイル番号、C:端末番号を示している。
図4に示した一般的な重ね巻のコイル段数は1段であるから、U相のコイルは4つでコイル端末は8本となる。
図8はこの場合のU相巻線のコイル端末接続図である。図中に示すドットは、溶接等により端末の接続が必要な箇所であり、U相巻線の接続箇所は4箇所であるから三相分で12箇所となる。
【0014】
図9は、
図6に示したようにコイル6を巻き数で2分割して挿入した場合の
図7相当図である。便宜上、1段目コイル6U(1)と2段目コイル6U(2)とを分けて図示しているが、これらは実際には同じスロット内に納められる。この場合、U相巻線のコイル数は8つでコイル端末は16本となる。
【0015】
図10は、
図9に対応する
図8相当図である。例えば、6本の銅線を1つに束ねた銅線群を20回巻きしたコイルの場合、それぞれ6本10回巻きのコイルに分割する。モータ特性を一括挿入の場合と等しくするには、1段目コイルの巻き終わりと2段目コイルの巻き始めとを直列接続する必要がある(例えばU1−1−2とU2−1−1)。したがって、端末接続箇所は、U相分で8箇所、三相分で24箇所となる。結果として、コイル挿入後の端末接続時間が一括挿入した場合と比べて2倍になり、製造コストが増加する。また、直列接続の場合、1段目と2段目の導体群に同じ大きさの電流が流れるので、損失のアンバランスを避けるには、1段目と2段目の導体群の導体断面積の合計を必ず等しくすることが望ましい。
【0016】
以上を踏まえて、本実施形態の構成について説明する。本実施形態では、同じスロット内に収めるコイルの導体群を2つに分けて、2つのコイルに分割することで接続箇所を削減する。例えば、当初の設計仕様において、6本の銅線を1つに束ねた導体群を20回巻きしたコイルを使用する場合、3本の銅線を1つに束ねた導体群を20回巻きしたコイル2つに分割する。分割した2つのコイルは並列接続状態とすることになるから、一括挿入の場合と2分割挿入の場合の合成抵抗は、何れも当初の設計値と変わらず、モータ特性は同等となる。
【0017】
図1は、本実施形態の構成における
図10相当図である。同じスロットに挿入されたコイル8Uの端末をそれぞれ並列接続することで(例えばU1−1−1とU2−1−1)、接続箇所がU相分で4箇所、三相分でも12箇所となるから、
図4に示したようにコイル3を一括で挿入した場合と等しくなる。したがって、本実施形態の構成を採用すれば、巻き数で分割した場合に比べて接続作業時間が半減することになる。
【0018】
このように導体群で分割すると、コイル1つ当たりの巻き数は、
図6に示す巻き数で分割する場合と比較すれば2倍となる。しかし、コイルの製造工程は機械で実施することが多く、接続作業に要する時間に比較して短いため、トータルでの製造時間は短くなり製造コストが削減できる。
【0019】
また、1つの導体群を2分割すれば、上述のように1段目のコイル8U(1)と2段目のコイル8U(2)とは並列接続の状態になっている。したがって、それぞれのコイル8U(1)、8U(2)の導体断面積の合計を均等にする必要はない。例えば、導体の総本数6本を2分割するなら、例えば2本と4本、1本と5本のように分割可能な上、さらに1段目と2段目で銅線の線径の組合せを変更することも可能になる。
【0020】
一般的に、2段目のコイルを挿入する際には、1段目のコイルが既にスロット内に存在しているため、挿入、成形時の2段目コイルへの負荷が増加する。そこで、2段目コイルの導体群を構成する導体の本数、線径を調整してコイル全体の断面積を1段目より小さくすることで、2段目コイルにかかる負荷を低減できる。挿入、成形時にコイルに係る負荷を極力小さくすることで、コイルの絶縁信頼性が向上する。例えば
図3は、同じスロット内に収める総導体数が120本となるように構成したものであり、1段目コイル8U(1)は導体数を4本で構成した導体群を20回巻きし、2段目コイル8U(2)は導体数を2本で構成した導体群を20回巻きしている。
【0021】
また、コイルエンド部において異相のコイルが接触する部分に相間絶縁紙を挿入する工程についても、一般的に2段目コイルに対する作業は、固定子の外周側に1段目コイルが存在するため作業性が著しく低下する。これに対して本実施形態では、2段目コイルの導体本数を少なくして、コイル全体の断面積を小さくできるので挿入性が向上する。
【0022】
図2は、
図4に示すコイル3を一括で挿入した場合と、
図6に示すコイル6を巻き数で2分割した場合と、本実施形態の導体群を構成する導体数を分割した場合とを比較した一覧である。何れも設計値では同じスロット内に収めるコイル導体総本数が120本分となる場合(当初設計値)であり、コイル端末の接続箇所は、一括挿入の場合と本実施形態の場合が最小となり、また、本実施形態の場合は1段目コイルと2段目コイル全体の断面積が変更可能であるという独自のメリットがある。
【0023】
以上のように本実施形態によれば、ステータコア2の各スロット4に挿入される各コイル8を、導体群で2つに分けた巻き数が等しい並列接続コイル8(1)及び8(2)で構成した。これにより、各コイル8の端末接続点数を削減できるので、接続作業に要する時間を短縮できる。また、並列接続コイルのうち、ステータコア2の内径側に配置されるコイル8(2)の全体の断面積を、同外径側に配置されるコイル8(1)の全体の断面積よりも小さくしたので、コイル8の挿入負荷や成形負荷を低減し、相間絶縁紙の挿入性や設計自由度を向上させることができる。
【0024】
(その他の実施形態)
図11に示すように、直列コイルの接続箇所を全て共通にすれば、1相当たりの接続点数を「3」にすることもできる。
重ね巻に限ることなく、同心巻に適用しても良い。
連続で巻回するコイル数は、「2」である必要はない。
必ずしも2段目コイルの導体群を構成する導体数を、1段目コイルの導体群を構成する導体数より少なくする必要はない。
【0025】
また、導体の総本数や、分割した導体群のそれぞれの本数については、個別の設計に応じて適宜変更すれば良い。
導体群を分割する数は、「3」以上であっても良い。
コイルは、複数の導体を1つに束ねた導体群である必要はなく、導体数が「1」のコイルでも良い。この場合、1本の導体の断面積が外径側のコイルと内径側のコイルとで異なっていても良い(但し、導体としては連続している)。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。