(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正装置は、前記基本パターンメモリ部に記憶された前記基本パターンに対し、前記基本パターンを更新するための補正クロック信号の補正クロック周期及び開始タイミングを前記出射エネルギーに応じて変更する補正クロック周期、開始タイミング変更部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の加速器の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態に係る加速器の制御装置及びその制御方法について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態では、加速器を粒子線治療装置としての重粒子線治療装置に適用した例について説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態の加速器の制御装置を示すブロック図である。
図2は
図1の補正装置の内部構成を示すブロック図である。
図3は
図2の補正開始・停止信号及び基本パターン出力信号を示す波形図である。
図4は
図2の係数テーブルメモリ部に記録された係数テーブルの一例を示す説明図である。
図5は
図1のパターンメモリの動作を示すタイミングチャートである。
図6は
図1のパターンメモリ及び補正装置の動作を示すタイミングチャートである。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の加速器は、シンクロトロン1、ビーム輸送機器14、及び治療室照射装置15を備える。
【0021】
シンクロトロン1は、偏向電磁石2及び四極電磁石3等の電磁石を備える。偏向電磁石2には、電磁石電源4から電磁石電流A09が供給される。電磁石電源4は、交流電力を直流電力に変換する変換器5と、この変換器5を制御する電源制御装置6と、その他図示しない電流計測装置等と、から構成されている。電源制御装置6は、変換器5にゲート信号S1を出力する。
【0022】
電源電流基準値生成部7は、パターンメモリ8及び補正装置20を備える。このパターンメモリ8は、補正装置20に補正前電流基準値A01を出力する。補正装置20は、電源制御装置6に補正後電流基準値A15を出力する。タイミング信号発生装置9は、目的の磁場強度を発生させるための電流パターンをリセットするリセットトリガー信号S2と、電流パターンの出力データを更新するためのクロック信号S3をパターンメモリ8に出力する。また、タイミング信号発生装置9は、補正装置20に補正開始・停止信号S6及びリセットトリガー信号S2を出力する。
【0023】
高周波発生器10は、高周波加速空洞11内のビームに高周波電圧を印加し、ビームを加速する。タイミング信号発生装置9は、出射制御装置12にビーム出射開始・停止信号S4を出力する。出射制御装置12は、出射用機器13に出射用電場A13を出力する。出射用機器13は、出射用電場A13を得て、シンクロトロン1で加速されたビームを取り出す。ビーム輸送機器14は、出射用機器13から取り出されたビームを治療室照射装置15まで輸送する。治療室照射装置15では、照射対象である患者の患部にビームが照射されてがん治療が行われる。
【0024】
次に、
図2に基づいて補正装置20の内部構成を説明する。
【0025】
図2に示すように、補正装置20は、エネルギー判定部21、係数切替制御部22を有する切替制御部23、補正クロック発生部24、基本パターンメモリ部25及び係数テーブルメモリ部26を有する補正メモリ部27、乗算部28、補正終了処理部29、及び最終演算部30を備える。
【0026】
エネルギー判定部21は、パターンメモリ8から出力された補正前電流基準値A01を得て、この補正前電流基準値A01によりエネルギー種別を判定し、エネルギー種別信号S9を切替制御部23の係数切替制御部22に出力する。
【0027】
係数切替制御部22は、エネルギー種別信号S9に応じて係数を選択し、この係数選択信号S11を補正メモリ部27の係数テーブルメモリ部26に出力する。補正クロック発生部24は、タイミング信号発生装置9から出力された補正開始・停止信号S6を得て、補正メモリ部27の基本パターンメモリ部25に補正クロック信号S8を出力する。
【0028】
基本パターンメモリ部25は、乗算部28に基本パターン出力信号S12を出力する。係数テーブルメモリ部26は、乗算部28に係数出力信号S13を出力する。乗算部28は、基本パターン出力信号S12と係数出力信号S13とを乗算し、その補正データ信号S7を最終演算部30に出力する。補正終了処理部29は、最終演算部30にバンプレス制御電流補正値A03を出力する。
【0029】
最終演算部30は、バンプレス制御電流補正値A03と、補正前電流基準値A01と、補正データ信号S7とを加算し、補正後電流基準値A15を出力する。
【0030】
ところで、本実施形態において、基本パターンメモリ部25は、例えば
図3に示すように1つの補正量のパターンを基本パターン出力信号S12として図示しない計算機等から設定し、記憶しているものとする。係数テーブルメモリ部26は、
図4の係数テーブルメモリ例で示すように、前回のクロック信号S3を停止したエネルギーと、今回のクロック信号S3を停止するエネルギーのマトリクス表として表し、正負ありの浮動小数形式とする。
【0031】
図4に示す係数テーブルメモリ例において、第1のエネルギーでクロック信号S3を停止し、その後再開し、第2のエネルギーをスルーし、第3のエネルギーでクロック信号S3を停止した場合と、第2のエネルギーでクロック信号S3を停止し、その後再開し、第3のエネルギーでクロック信号S3を停止した場合では、第3のエネルギーでの補正量が異なることから、これに対応するようにしている。
【0032】
すなわち、これは
図6に示すようにリセットトリガー信号S2から第1のエネルギーでクロック信号S3を停止した後で、第2のエネルギーでクロック信号S3を再度停止したときの磁気余効を補正するための補正メモリ量と、リセットトリガー信号S2から第1のエネルギーでクロック信号S3を停止せず、第2のエネルギーで初めてクロック信号S3を停止したときの磁気余効を補正するための補正メモリ量とでは、その補正メモリ量が異なることから、これに対応するようにしている。
【0033】
なお、係数テーブルメモリ部26の係数も図示しない計算機等から設定する。この係数テーブルメモリ部26の係数テーブルメモリ例は、本実施形態に限定することなく、異なる形態に変更したものも全て包含されるものとする。
【0034】
次に、本実施形態の動作について説明する。
【0035】
まず、
図5に示すような基準電流パターンB01を図示しない計算機等からパターンメモリ8に設定し、かつ記憶させておく。クロック信号S3は、タイミング信号発生装置9からパターンメモリ8にあらかじめ出力しておく。
【0036】
タイミング信号発生装置9は、パターンメモリ8に加速サイクルの開始タイミングであるリセットトリガー信号S2を出力する。すると、パターンメモリ8は、上記のように記憶された基準電流パターンB01の最初から出力を開始する。
【0037】
リセットトリガー信号S2が出力するタイミング付近では、電磁石電流A09は、ビームの入射レベルのエネルギーに相当する電流値になっている。
【0038】
この状態で、
図5に示す入射ビーム信号S5が出力されると、ビームがシンクロトロン1に入射する。すると、クロック信号S3に従ってパターンメモリ8の出力データが更新される。
【0039】
また、ビームをシンクロトロン1から出射するときは、補正前電流基準値A01が必要な出射エネルギーの値になったところで、タイミング信号発生装置9から出力されているクロック信号S3を停止することで、
図6の基準電流パターンB01に示すような補正前電流基準値A01を一定にすることができる。
【0040】
このクロック信号S3を停止している間にタイミング信号発生装置9から
図1に示す出射制御装置12にビーム出射開始・停止信号S4を出力する。これにより、出射制御装置12は出射用電場A13を出力することで出射用機器13が動作し、ビームを出射することが可能になる。
【0041】
本実施形態では、
図6に示すようにタイミング信号発生装置9からパターンメモリ8へのクロック信号S3を補正前電流基準値A01が目的のエネルギーに対応する値になるタイミングで停止させ、補正前電流基準値A01を一定値にさせる。このクロック信号S3を停止するタイミングで、補正装置20への補正開始・停止信号S6をオンにする。
【0042】
図2に示すように、補正クロック発生部24では、補正開始・停止信号S6のオン信号を得て、補正クロック信号S8を出力する。そして、基本パターンメモリ部25のメモリを開始アドレスに初期化した後、補正パターンを補正クロック信号S8に基づいて更新し、基本パターン出力信号S12として出力する。
【0043】
エネルギー判定部21では、補正開始・停止信号S6がオンになったタイミングで、補正前電流基準値A01から出射エネルギーの高低の種別を判定し、これをエネルギー種別信号S9として係数切替制御部22に出力する。ここで、上記エネルギー種別とは、
図5及び
図6に示す基準電流パターンB01に示す第1のエネルギー、第2のエネルギー、及び第Nのエネルギーのことである。
【0044】
図2に示す係数切替制御部22は、リセットトリガー信号S2と、補正開始・停止信号S6と、エネルギー種別信号S9を入力する。係数切替制御部22は、前回、補正開始・停止信号S6がオンになったときのエネルギー種別を記憶しており、今回、補正開始・停止信号S6がオンになったタイミングで、前回のエネルギー種別と今回のエネルギー種別の値から、係数テーブルメモリ部26に係数選択信号S11を出力し、係数を選択する。これにより、係数出力信号S13には、前回と今回のエネルギーに対応する係数が出力される。
【0045】
補正データ信号S7は、基本パターン出力信号S12と係数出力信号S13を乗算部28で常時乗算した値を出力している。最終演算部30では、補正前電流基準値A01と、補正データ信号S7と、バンプレス制御電流補正値A03とを加算することにより、補正後電流基準値A15を出力する。
【0046】
補正終了処理部29では、補正開始・停止信号S6と、補正前電流基準値A01と、補正後電流基準値A15を入力し、補正開始・停止信号S6がオフになるタイミングで、補正後電流基準値A15と補正前電流基準値A01とを比較し、補正後電流基準値A15が補正前電流基準値A01に滑らかに近づくように、バンプレス制御電流補正値A03を出力する。これにより、補正後電流基準値A15が突変するのを抑制しながら、補正制御を終了する。
【0047】
このように本実施形態によれば、補正メモリ部27を、補正前電流基準値A01に対する補正量の基準を規定する基本パターンメモリ部25と、出射エネルギーに対応して補正量の係数が設定された係数テーブルメモリ部26とに分け、前回ビーム取り出ししたエネルギー種別と今回ビーム取り出ししようとするエネルギー種別から該当する係数を係数テーブルメモリ部26から選択し、補正量は基本パターンの出力と選択した係数とを乗算している。そのため、磁気余効の影響がなくなるように適切に補正前電流基準値A01を補正することが可能であり、かつエネルギー種別が増大した場合でも、係数分のメモリだけで対応可能なため、従来よりもメモリ量を減らすことができる。その結果、計算機からのデータ設定量も減少するため、補正パターンの設定時間を短縮することも可能である。
【0048】
なお、本実施形態の電磁石電流A09は、偏向電磁石2に入力する例について説明したが、四極電磁石3も磁気余効の影響が無視できない場合には、同様の方法で制御する必要がある。
【0049】
また、本実施形態では、エネルギー判定部21にて現在のエネルギー種別を補正前電流基準値A01に基づいて判定しているが、これに限らずタイミング信号発生装置9等の装置から現在のエネルギーを補正装置20に直接入力することも可能である。
【0050】
(第2実施形態)
図7は第2実施形態の補正装置の内部構成を示すブロック図である。
図8は
図7の補正クロック周期、タイミング変更部が備えた周期テーブルを示す説明図である。
図9は
図7の補正クロック周期、タイミング変更部が備えた遅れ時間テーブルを示す説明図である。
図10は第2実施形態において周期係数変更及び遅れ時間遅れ設定での補正データ信号を示す波形図である。
【0051】
なお、本実施形態は、前記第1実施形態の変形例であって、前記1実施形態と同一又は対応する部分には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。その他の実施形態も同様とする。
【0052】
前記第1実施形態では、補正クロック信号S8は一定周期であり、補正クロック信号S8の開始タイミングも補正開始・停止信号S6と同期させているため、基本パターン出力信号S12に対して、大きさ方向の値をエネルギー種別に応じて変更することはできても、時間軸方向の調整をすることができない。
【0053】
また、前記第1実施形態であっても、磁気余効の影響は、時間依存が低いことが判っており、十分に補正することは可能であるが、さらに高精度な調整をする必要がある場合には、対応することができない。
【0054】
これに対応させるため、本実施形態の補正装置20Aでは、
図7に示すように切替制御部23に、補正クロック周期、開始タイミング変更部31を追加している。
【0055】
補正クロック周期、開始タイミング変更部31は、エネルギー判定部21からのエネルギー種別信号S9と、リセットトリガー信号S2と、補正開始・停止信号S6を入力し、補正クロック発生部24に周期指令信号S14と、補正開始・停止信号S6がオンしてからの遅れ時間指令信号S15を出力する。
【0056】
また、補正クロック周期、タイミング変更部31は、
図8に示す周期テーブル31aと、
図9に示す遅れ時間テーブル31bとを有している。
【0058】
本実施形態では、タイミング信号発生装置9から出力された補正開始・停止信号S6がオンになると、エネルギー判定部21は補正前電流基準値A01により、エネルギー種別信号S9を出力する。
【0059】
補正クロック周期、開始タイミング変更部31は、前回のエネルギー種別と今回のエネルギー種別に応じて、周期テーブル31aと遅れ時間テーブル31bから周期及び遅れ時間を選択し、周期指令信号S14又は遅れ時間指令信号S15を補正クロック発生部24に出力する。
【0060】
補正クロック発生部24は、上述した遅れ時間指令信号S15に応じて、補正開始・停止信号S6からの遅れ時間指令信号S15の遅れ時間分待機した後、補正クロック信号S8を出力する。
【0061】
これにより、
図3に示す基本パターン出力信号S12と比べて、
図10に示すように時間軸方向のパターンも変更が可能となり、さらに高精度に磁気余効の影響を補正することができる。なお、
図10において、β=1が周期係数変更前の補正データ信号を示し、β=2が周期係数変更後の補正データ信号を示している。γ=0が遅れ時間遅れ設定変更前の補正データ信号を示し、γ=1が遅れ時間遅れ設定変更後の補正データ信号を示している。
【0062】
このように本実施形態によれば、基本パターンメモリ部25に記憶された基本パターン出力信号S12に対し、基本パターンを更新するための補正クロック信号S8の補正クロック周期及び開始タイミングを出射エネルギーに応じて変更する補正クロック周期、開始タイミング変更部31を設けたことにより、磁気余効の影響を一段と高精度に補正することができる。
【0063】
(第3実施形態)
図11は第3実施形態の補正装置の内部構成を示すブロック図である。
図12は
図11の近似用係数テーブルメモリ部に記憶された近似式の係数aのテーブルを示す説明図である。
図13は
図11の近似用係数テーブルメモリ部に記憶された近似式の計数bのテーブルを示す説明図である。
図14は
図11の補正パターン近似式作成部の出力波形図である。
【0064】
図2に示す前記第1実施形態の補正装置20の基本パターンメモリ部25と係数テーブルメモリ部26からなる補正メモリ部27に代えて、本実施形態の補正装置20Bは、
図11に示すように補正パターン近似式作成部33と近似式用係数テーブルメモリ部34からなる演算処理部32に変更したものである。
【0065】
図11に示すように、近似式用係数テーブルメモリ部34は、係数切替制御部22から係数選択信号S11を入力し、補正パターン近似式作成部33に係数出力信号S13を出力する。補正パターン近似式作成部33では、近似式用係数テーブルメモリ部34の係数出力信号S13と、補正開始・停止信号S6と、補正クロック信号S8とを入力し、補正データ信号S7を出力する。
【0066】
ここで、補正パターン近似式は、例えば、f(t)=a×t
5+b×t
4+c×t
3+d×t
2+e×t+fのような時間tの5次関数であるとする。なお、a,b,c,d,e,fは係数である。この数式は、一例であり、補正パターンを近似可能な数式はこれに限らない。
【0067】
近似式用係数テーブルメモリ部34には、
図12及び
図13に示すように近似式の係数a,bのそれぞれについて、前回エネルギーと今回エネルギーにより唯一に値の決まるテーブルが記憶されている。なお、近似式の係数c,d,e,fも係数a,bと同様であるため、図示を省略する。
【0068】
本実施形態では、補正前電流基準値A01に対する補正量を近似した補正パターン近似式を作成する補正パターン近似式作成部33と、補正パターン近似式の係数を出射エネルギーに対応して決定する近似式用係数テーブルメモリ部34とを備え、補正前電流基準値A01に対する補正量を補正パターン近似式の演算により算出している。
【0070】
図11に示すエネルギー判定部21及び係数切替制御部22の動作は、前記第1実施形態と同様であるため省略する。
【0071】
図14に示すように、補正開始・停止信号S6がオンされると、係数切替制御部22の係数選択信号S11により、近似式用係数テーブルメモリ部34から出射エネルギーに応じた係数出力信号S13が補正パターン近似式作成部33に出力される。これにより、補正パターン近似式作成部33のa,b,c,d,e,fの係数が決定される。また、補正クロック発生部24は、一定周期の補正クロック信号S8を補正パターン近似式作成部33に出力する。
【0072】
補正パターン近似式作成部33では、補正開始・停止信号S6がオンされたタイミングで時間tを0にリセットし、補正クロック信号S8をカウントすることで、時間tの値を更新する。このようにして時間tと係数a〜fが決まるので、近似式の出力値が決定し、これを補正データ信号S7として出力する。
【0073】
これにより、利用者はエネルギーに対する、補正パターン近似式作成部33のa〜fの係数を調整することにより、磁気余効の影響を補正することが可能となる。
【0074】
このように本実施形態によれば、補正前電流基準値A01に対する補正量を近似した補正パターン近似式を作成する補正パターン近似式作成部33と、補正パターン近似式の係数を出射エネルギーに対応して決定する近似式用係数テーブルメモリ部34とを備え、補正前電流基準値A01に対する補正量を補正パターン近似式の演算により算出することにより、磁気余効の影響を補正することが可能となる。
【0075】
(第4実施形態)
図15は第4実施形態の加速器の制御装置を示すブロック図である。
図16は
図15の補正装置の内部構成を示すブロック図である。
【0076】
図15に示すように、本実施形態では、前記第1実施形態の構成に加え、補正装置20Cの外部にシンクロトロン電磁石の磁場変化検出器35及び信号増幅器36を設けている。
【0077】
また、
図16に示すように、本実施形態の補正装置20Cは、
図2の係数切替制御部22を磁場変動量基準値切替制御部38に変更し、
図2の補正メモリ部27をフィードバック制御部40に変更し、補正装置20Cの内部に積分器37、差分演算処理部39を追加したものである。
【0078】
磁場変化検出器35は、一般にサーチコイルと呼ばれるような電磁石の磁場変化に応じた信号(磁場の微分値)を出力する検出器である。この磁場変化検出器35は、磁場変化信号S16を信号増幅器36に出力する。この信号増幅器36では、磁場変化信号S16を増幅して、磁場変化増幅信号S17を補正装置20Cに出力する。
【0079】
補正装置20Cの内部の積分器37では、磁場変化増幅信号S17を積分し、磁場の変化(磁場の微分)を磁場に変換し、磁場変動量検出値信号S18として差分演算処理部39に出力する。
【0080】
ここで、積分器37は、補正開始・停止信号S6のオン時に0に初期化することとし、磁場変動量検出値は、補正開始・停止信号S6オン時を0基準としたときからの磁場変動量になる。
【0081】
磁気余効の影響がないとすれば、この磁場変動量検出値信号S18は、ある一定の値で静定しているはずであるが、磁気余効の影響がある時間は、この磁場変動量検出値信号S18は変動していることになる。
【0082】
本実施形態では、この磁場変動量の変動を抑え、一定値に制御するため、磁場変動量基準値信号S19と磁場変動量検出値信号S18の差分を差分演算処理部39で演算し、磁場変動量偏差信号S20としてフィードバック制御部40に出力する。このフィードバック制御部40は、磁場変動量偏差信号S20が0に近づくように、フィードバック計算を行い、補正データ信号S7として最終演算部30に出力する。フィードバック制御部40は、一般的なPID制御計算方式とするため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0083】
また、磁場変動量基準値信号S19は、前回エネルギーと今回エネルギーに依存して値が異なり、切替えが必要である。そのため、磁場変動量基準値切替制御部38は、エネルギー種別信号S9に対応して、磁場変動量基準値切替制御部38に設けた図示しない磁場変動量テーブルから該当の磁場変動量を選択し、磁場変動量基準値信号S19を出力する。
【0084】
前段のエネルギー判定部21の動作説明は、前記第1実施形態と同様であり、磁場変動量テーブルは例えば、
図4に示す係数メモリテーブルと同様であるため、説明を省略する。
【0085】
このように本実施形態では、磁場変化検出器35を追加して、補正開始・停止信号S6がオンの間、磁場変動量検出値が一定値になるようにフィードバック制御することで、磁気余効の影響を補正することが可能であり、前記第1実施形態〜前記第3実施形態に比べて、磁場変化検出器35を補正装置20Cの外部に設置する必要があるものの、補正量パターンや係数の調整をすることが不要になる。
【0086】
(第5実施形態)
図17は第5実施形態の加速器の制御装置を示すブロック図である。
図18は
図17の補正装置の内部構成を示すブロック図である。
【0087】
図17に示すように、本実施形態では、
図16に示す第4実施形態の磁場変化検出器35及び信号増幅器36を削除している。本実施形態は、対をなす2つのビーム位置信号検出器41,41と、位置信号増幅回路42,42と、位置計算回路43と、を備える。
【0088】
2つのビーム位置信号検出器41,41は、シンクロトロン1のビームダクト内において対向する位置に設置され、ビームダクトの断面の中心に対してビームの位置ずれ量を検出する。位置信号増幅回路42,42は、ビーム位置信号検出器41,41にそれぞれ接続されてビームが通ることで誘起される2つの電圧信号を増幅する。位置計算回路43は、2つの電圧信号の差又は比からビームダクト中心からの位置づれ量を演算し、この位置づれ量をビーム位置検出値信号S21として出力する。
【0089】
図18に示すように、本実施形態の補正装置20Dでは、
図16に示す第4実施形態のエネルギー判定部21、磁場変動量基準値切替制御部38及び積分器37を削除し、磁場変動量基準値信号S19をビーム位置基準値信号S22に変更し、磁場変動量検出値信号S18をビーム位置検出値信号S21に変更したものである。
【0091】
本実施形態では、あらかじめ設定されたビーム位置基準値信号S22を0とし、ビーム位置検出値信号S21との差分を差分演算処理部39で演算し、位置偏差信号S23として出力する。フィードバック制御部40では、位置偏差信号S23が0になるようにフィードバック演算を行い、その演算結果を補正データ信号S7として出力する。
【0092】
フィードバック制御部40は、一般的なPID制御とするため、詳細な説明は省略する。但し、補正開始・停止信号S6がオン時にPID制御の積分計算の初期化を行い、演算を開始する。
【0093】
このように本実施形態によれば、磁気余効の影響により、磁場が変動することで、最終的にビームの中心位置が変動してビームが不安定になることに注目し、ビーム位置をフィードバック制御して補正することで、磁気余効の影響を補正することが可能になる。
【0094】
(第6実施形態)
図19は第6実施形態の加速器の制御装置における補正装置の内部構成を示すブロック図である。
【0095】
図19に示すように、本実施形態は、前記第1実施形態〜第5実施形態の全ての補正装置を有し、制御方式選択部45を追加している。各補正装置20A〜20Dは、上述したように補正データ信号S7を出力する。これらの補正データ信号S7は、制御方式選択部45内で、有効又は無効の選択設定が行われる。なお、補正装置20は、補正装置20Aの一部を構成し、補正装置20Aに含まれているものとする。
【0096】
制御方式選択部45では、各補正装置20A〜20Dの出力である補正データ信号S7を加算し、最終的な補正データ信号として出力する。
【0097】
このように本実施形態によれば、利用者は、各補正装置20A〜20Dの補正データ信号S7を1つあるいは複数有効設定することで、補正装置20A〜20Dを選択又は同時併用して補正することが可能である。その結果、磁気余効の影響を一段と高精度に補正することができる。
【0098】
(第7施形態)
図20は第7実施形態の加速器の制御装置における補正装置の内部構成を示すブロック図である。
【0099】
図20に示すように、本実施形態は、前記第6実施形態の構成に加えて、補正装置20Aに補正データ記憶部46を追加して設けたものである。
【0100】
補正データ記憶部46は、最終補正データ信号S24を入力し、補正開始・停止信号S6がオン時に記録を開始する。また、補正データ記憶部46は、補正前電流基準値A01も同時に入力し、補正前電流基準値A01と最終補正データ信号S24との和も同時に記録するようになっている。
【0101】
次に、この補正データ記憶部46の作用について説明する。
【0102】
例えば、制御方式選択部45が
図16に示す第4実施形態の補正装置20Cを選択したとする。この場合、磁場変化検出器35を用いた磁場変動量フィードバック制御方式で算出した補正データ信号S7により磁気余効の補正を行い、補正データ記憶部46で、最終補正データ信号S24を記憶しておく。
【0103】
この補正データ記憶部46で記憶した記録補正データ信号S25を図示しない計算機で得ることで、磁気余効の影響がどの程度発生しているか等を解析することが可能になる。また、得られた記録補正データ信号S25を
図2の第1実施形態で示した基本パターンメモリ部25にセットすることで、基本パターンメモリ部25を調整をすることなく、基本パターンを作成することが可能になる。
【0104】
図16に示す第4実施形態のフィードバック方式では、
図2に示す第1実施形態のパターン設定方式よりも比較的簡単に補正データ信号S7を演算して制御することが可能である。しかし、磁場変化検出器35から得られる信号は微小であり、ノイズ等の影響がある場合には、磁気余効補正の再現性を確保させることができない。そのため、補正データ記憶部46の記録補正データ信号S25を基本パターンメモリ部25に設定することで、補正データ信号S7を簡単に作成することができ、かつ再現性のある制御を行うことが可能となる。
【0105】
このように本実施形態によれば、補正量を記録する補正データ記録部46を備え、この補正データ記録部46に記録された記録補正データ信号S25を基本パターンメモリ部25に設定することにより、補正データ信号S7を簡単に作成することができ、かつ再現性のある制御を行うことができる。
【0106】
(その他の実施形態)
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0107】
なお、上記各実施形態では、重粒子線治療装置に適用した例について説明したが、これに限定することなく、例えば陽子線を用いた粒子線治療装置にも適用可能である。