特許第6599804号(P6599804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6599804
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】電力変換装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20191021BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20191021BHJP
   H02J 3/01 20060101ALI20191021BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20191021BHJP
【FI】
   H02J3/38 180
   H02J3/38 170
   H02J3/32
   H02J3/01
   H02J3/38 110
   H02J3/38 130
   H02M7/48 R
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-47805(P2016-47805)
(22)【出願日】2016年3月11日
(65)【公開番号】特開2017-163768(P2017-163768A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和泉 晃浩
(72)【発明者】
【氏名】江口 政樹
【審査官】 永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−259400(JP,A)
【文献】 特開2013−008079(JP,A)
【文献】 特開2017−143670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00−5/00
H02M7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型電源を系統電源に連系させる電力変換装置であって、
前記分散型電源から供給される直流電力を交流電力に変換するインバータ部と、
系統周波数を計測する系統周波数計測部と、
前記系統周波数の偏差に応じて前記系統周波数の周波数変化を促すフィードバック機能を有する周波数フィードバック部と、
前記周波数フィードバック部からの情報に基づいて無効電力の注入を行うように、前記インバータ部の電流制御を行う電流制御処理部と、
前記系統周波数をモニタして単独運転を検出する単独運転検出部と、
電圧フリッカ発生の可能性がある場合に、前記フィードバック機能のゲインを一時的に低下させる判定する第1の判定部と、
を備え
前記電流制御処理部は、前記フィードバック機能のゲイン低下中に、所定の高調波成分を重畳させるように電流制御を行い、
前記高調波成分を重畳した後に系統側に現れる電圧高調波に基づいて前記ゲイン低下処理を終了するか否かを判定する第2の判定部を更に備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記第2の判定部によって前記ゲイン低下処理を終了しないと判定された場合、前記ゲイン低下処理の開始から所定の時間を経過した後に前記ゲイン低下処理が終了され、
前記第2の判定部によって前記ゲイン低下処理を終了すると判定された場合、前記所定の時間を経過する前でも前記ゲイン低下処理が終了されることを特徴とする請求項に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1の判定部は、系統側に現れる無効電力の変化に基づいて前記電圧フリッカ発生の可能性を判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1の判定部は、系統側に現れる無効電力が第1の閾値を超えて大きくなった後、小さくなる方向に転じた場合、又は、系統側に現れる無効電力が第2の閾値を超えて小さくなった後、大きくなる方向に転じた場合に、前記電圧フリッカが発生した可能性があると判定することを特徴とする請求項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
系統周波数の偏差に応じて周波数変化を促す周波数フィードバック機能を利用して単独運転を検出する単独運転検出機能を有する電力変換装置の制御方法であって、
電圧フリッカ発生の可能性がある場合に、前記フィードバック機能のゲインを一時的に低下させる判定するステップと、
前記フィードバック機能のゲイン低下中に、所定の高調波成分を重畳させるステップと、
前記高調波成分を重畳した後に系統側に現れる電圧高調波に基づいて前記ゲイン低下処理を終了するか否かを判定するステップと、
を備えることを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池等の分散型電源を系統電源に連系させる電力変換装置が知られる。系統電源の停電時において、電力変換装置が系統電源から解列されないで単独運転を続けると、保安や電力供給の信頼度の確保等の観点から問題を生じる可能性がある。このために、従来の電力変換装置は単独運転を検出する機能を備える(例えば特許文献1参照)。電力変換装置は、単独運転を検出すると、自身を系統電源から解列させる。
【0003】
PV(photovoltaic)システム用PCS(power conditioning system)の新連系規定を定める非特許文献1は、能動的単独運転検出を行うための共通技術として、ステップ注入付き周波数フィードバック方式を開示する。図7は、ステップ注入付き周波数フィードバック方式の単独運転検出機能を備える従来の電力変換装置100の構成を示すブロック図である。
【0004】
電力変換装置(PCS)100は、分散型電源2と系統電源3との間に配置される。電力変換装置100と系統電源3との間には、図示は省略するが、高圧配電線から送られてきた高圧電力を低圧電力に降圧して低圧配電線に供給する柱上トランスや、低圧配電線に接続された負荷等が存在する。
【0005】
電力変換装置100は、分散型電源2から供給される直流電力を交流電力に変換するインバータ部10を備える。また、電力変換装置100は、インバータ部10の電流制御を行う電流制御処理部11を備える。更に、電力変換装置100は、単独運転を検出可能となるように、系統周波数計測部12と、周波数フィードバック部13と、無効電力ステップ注入部14と、単独運転検出部15とを備える。
【0006】
系統周波数計測部12は、周波数偏差の演算に用いる系統周波数を計測する。周波数フィードバック部13は、移動平均処理により算出された系統周波数の偏差から、注入する無効電力を演算して周波数シフトを促す。無効電力ステップ注入部14は、単独運転発生時においても周波数偏差が微小となる条件下において、周波数シフトを促すべく、無効電力をステップ注入する処理を行う。なお、電力変換装置100の単独運転時に、電力変換装置100の出力電力と負荷の消費電力とが平衡した場合に、周波数偏差が微小になる。
【0007】
無効電力ステップ注入部14は、周波数偏差が所定の微小範囲内(例えば±0.01Hz以内)であり、且つ、基本波電圧または電圧高調波歪の変化量が所定の条件を満たした場合に、ステップ注入が必要であると判断する。基本波電圧は、インバータ部10からの出力電圧に含まれる基本波成分である。電圧高調波歪は、インバータ部10からの出力電圧に含まれる高調波成分(二次〜七次以上)に基づいて算出される。基本波電圧及び高調波電圧は、無効電力ステップ注入部14に含まれる計測回路によって計測できる。周波数フィードバック部13は、周波数偏差から算出された無効電力注入量に、無効電力ステップ注入部14によって算出された無効電力のステップ注入量を足し合わせて、電流制御処理部11に伝達する。
【0008】
単独運転検出部15は、系統周波数の変化によって単独運転発生の有無を判定する。単独運転検出部15は、詳細には、能動的方式の単独運転判定部と受動的方式の単独運転判定部とを有する。電流制御処理部11は、系統周波数計測部12の出力に基づいて同期処理を行いつつ、適切な無効電力を注入するようにインバータ部10の電流制御を行う。
【0009】
次に、以上のように構成される電力変換装置100における、ステップ注入付き周波数フィードバック方式の単独運転検出動作について説明する。
【0010】
電力変換装置100と負荷との電力アンバランス状態においては、系統電源3の停電後、系統周波数が変化する。このために、周波数フィードバック部13によって無効電力の注入が行われ、周波数変化に対して正帰還がかけられる。この結果、系統周波数の周波数変化が大きくなって単独運転検出条件(予め設定される)に至り、単独運転が検出される。
【0011】
電力変換装置100と負荷との電力バランスがとれている状態においては、系統電源3の停電後、柱上トランスにおける励磁電流の影響によって、インバータ部10からの出力に電圧高調波が発生する。このために、無効電力ステップ注入部14によって電圧高調波歪の変化を検出して、周波数を低下させるように無効電力が注入される。これにより、周波数が変化し、周波数フィードバック部13によって周波数変化が促される。この結果、単独運転が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2015−220835号公報
【特許文献2】特開2008−259400号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】日本電機工業会規格JEM1498(2012.8.27制定)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述のような周波数フィードバック方式の単独運転検出機能を備える場合、系統電源3における外乱の発生によっても周波数フィードバック部13が動作する。この際、系統インピーダンスが大きいと、無効電力の注入が原因となって系統電圧にフリッカ(周期的な電圧の変動)が発生してしまう(例えば特許文献2参照)。電圧フリッカが発生すると、蛍光灯などの系統電源3への接続機器にちらつき等の悪影響が生じるために問題となる。
【0015】
以上の点に鑑みて、本発明は、周波数フィードバック機能に起因する電圧フリッカの発生を抑制できる電力変換装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る電力変換装置は、分散型電源を系統電源に連系させる電力変換装置であって、前記分散型電源から供給される直流電力を交流電力に変換するインバータ部と、系統周波数を計測する系統周波数計測部と、前記系統周波数の偏差に応じて前記系統周波数の周波数変化を促すフィードバック機能を有する周波数フィードバック部と、前記周波数フィードバック部からの情報に基づいて無効電力の注入を行うように、前記インバータ部の電流制御を行う電流制御処理部と、前記系統周波数をモニタして単独運転を検出する単独運転検出部と、前記フィードバック機能のゲインを一時的に低下させるか否かを判定する第1の判定部と、を備える構成(第1の構成)になっている。
【0017】
上記第1の構成の電力変換装置は、前記フィードバック機能のゲインが低下された場合に、当該ゲイン低下処理を終了するか否かを判定する第2の判定部を更に備える構成(第2の構成)であるのが好ましい。
【0018】
上記第2の構成において、前記電流制御処理部は、前記フィードバック機能のゲイン低下中に、所定の高調波成分を重畳させるように電流制御を行い、前記第2の判定部は、前記高調波成分を重畳した後に系統側に現れる電圧高調波に基づいて前記ゲイン低下処理を終了するか否かを判定する構成(第3の構成)であってよい。
【0019】
上記第2又は第3の構成において、前記第2の判定部によって前記ゲイン低下処理を終了しないと判定された場合、前記ゲイン低下処理の開始から所定の時間を経過した後に前記ゲイン低下処理が終了され、前記第2の判定部によって前記ゲイン低下処理を終了すると判定された場合、前記所定の時間を経過する前でも前記ゲイン低下処理が終了される構成(第4の構成)が採用されてよい。
【0020】
上記第1から第4のいずれかの構成において、前記第1の判定部は、系統側に現れる無効電力の変化に基づいて前記フィードバック機能のゲインを一時的に低下させるか否かを判定する構成(第5の構成)であってよい。
【0021】
上記第5の構成において、前記第1の判定部は、系統側に現れる無効電力が第1の閾値を超えて大きくなった後、小さくなる方向に転じた場合、又は、系統側に現れる無効電力が第2の閾値を超えて小さくなった後、大きくなる方向に転じた場合に、前記フィードバック機能のゲインを一時的に低下させると判定する構成(第6の構成)であってよい。
【0022】
また、上記目的を達成するために本発明の一態様に係る電力変換装置の制御方法は、系統周波数の偏差に応じて周波数変化を促す周波数フィードバック機能を利用して単独運転を検出する単独運転検出機能を有する電力変換装置の制御方法であって、前記フィードバック機能のゲインを一時的に低下させるか否かを判定するステップを備える構成(第7の構成)になっている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、周波数フィードバック機能に起因する電圧フリッカの発生を抑制できる電力変換装置及びその制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置の構成を示すブロック図
図2】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置が備える第1の判定部の詳細構成を示すブロック図
図3】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置が備える第2の判定部の詳細構成を示すブロック図
図4】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置において、外乱によって電圧フリッカが発生した可能性があると判定された場合の動作例を示すフローチャート
図5】本発明の第2実施形態に係る電力変換装置の構成を示すブロック図
図6】本発明の第3実施形態に係る電力変換装置について説明するための模式図
図7】ステップ注入付き周波数フィードバック方式の単独運転検出機能を備える従来の電力変換装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る電力変換装置及びその制御方法について詳細に説明する。
<第1実施形態>
【0026】
図1は、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1の構成を示すブロック図である。第1実施形態に係る電力変換装置1は、ステップ注入付き周波数フィードバック方式の単独運転検出機能を備え、概ね図7に示す従来の電力変換装置100の構成と同様である。従来の電力変換装置100と同様の機能を備える部分については、図7と同一の符号を付し、特に必要がないと判断される内容については、その説明を省略する。
【0027】
電力変換装置1は、分散型電源2を系統電源3に連系させる。なお、分散型電源としては、例えば太陽電池等の自然エネルギー発電手段、燃料電池、蓄電池等が挙げられ、それらのいずれであってもよい。インバータ部10は、分散型電源2から供給される直流電力を交流電力に変換する。系統周波数計測部12は、系統周波数を計測する。
【0028】
周波数フィードバック部13は、系統周波数計測部12で得られる系統周波数の偏差に応じて系統周波数の周波数変化を促すフィードバック機能を有する。無効電力ステップ注入部14は、所定の条件下において、系統周波数の偏差を強制的に生じさせるように無効電力をステップ注入するための処理を行う。単独運転検出部15は、系統周波数をモニタして単独運転を検出する。電流制御処理部16は、周波数フィードバック部13からの情報に基づいて無効電力の注入を行うように、インバータ部10の電流制御を行う。なお、電流制御処理部16は、従来の電力変換装置100の電流制御処理部11には無い機能を備える。この点の詳細は後述する。
【0029】
以上の構成を備えることにより、従来と同様に、電力変換装置1は、能動的方式(ステップ注入付き周波数フィードバック方式)により単独運転の検出を行える。また、本実施形態の電力変換装置1は、周波数フィードバック方式による単独運転検出機能が原因となって生じる電圧フリッカを抑制できる構成を採用しており、この点が従来の構成と異なる。以下、これについて説明する。
【0030】
図1に示すように、電力変換装置1は、フィードバック機能のゲインを一時的に低下させるか否かを判定する第1の判定部17を備える。図2は、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1が備える第1の判定部17の詳細構成を示すブロック図である。図2に示すように、第1の判定部17は、電流・電圧検出部171と、無効電力算出部172と、フリッカ判定部173とを備える。
【0031】
電流・電圧検出部171は、インバータ部10の出力側と系統電源3との間に設けられる。電流・電圧検出部171は、詳細には電流検出回路と電圧検出回路とを備え、系統側に現れる電流及び電圧を検出可能になっている。無効電力算出部172は、電流・電圧検出部171で検出された電流及び電圧を取得して無効電力を算出する。無効電力算出部172は、予め定められた所定間隔で常時無効電力を算出する。また、無効電力算出部172は、現在から過去の一定期間に遡って無効電力の平均値を算出する。無効電力算出部172は、取得した無効電力値及び無効電力の平均値をフリッカ判定部173に出力する。
【0032】
フリッカ判定部173は、系統側に現れる無効電力の変化に基づいて電圧フリッカ発生の可能性を判定する。詳細には、フリッカ判定部173は、次に示す第1条件又は第2条件を満たした場合に、電圧フリッカが発生した可能性があると判定する。第1条件は無効電力が正である場合を想定した条件であり、第2条件は無効電力が負である場合を想定した条件である。第1条件は、現在の無効電力値が当該時点における無効電力の平均値に対して予め設定された第1の閾値を超えて大きくなり、その後、現在の無効電力値が小さくなる方向に転じた場合である。第2条件は、現在の無効電力値が当該時点における無効電力の平均値に対して予め設定された第2の閾値を超えて小さくなり、その後、現在の無効電力値が大きくなる方向に転じた場合である。第1の閾値と第2の閾値は同じ値であっても、異なる値であってもよい。
【0033】
第1条件は、現在の無効電力値が当該時点における無効電力の平均値に予め設定された第1の閾値を加算した加算値より大きくなり、その後、現在の無効電力値が先の加算値以下になった場合としてもよい。第2条件は、現在の無効電力値が当該時点における無効電力の平均値から予め設定された第2の閾値を減算した減算値より小さくなり、その後、現在の無効電力値が先の減算値以上になった場合としてもよい。
【0034】
なお、第1条件及び第2条件には、無効電力の平均値が使用されない構成としてもよい。この場合、第1条件は、現在の無効電力値が予め設定された第1の閾値を超えて大きくなり、その後、現在の無効電力値が小さくなる方向に転じた場合としてよい。また、第2条件は、現在の無効電力値が予め設定された第2の閾値を超えて小さくなり、その後、現在の無効電力値が大きくなる方向に転じた場合としてよい。ただし、この方法の場合には、定常状態時の無効電力の大きさが電力変換装置1の出力によって異なる場合があることを考慮して、出力に応じて閾値を変更できるように閾値テーブルを準備するのが好ましい。
【0035】
電圧フリッカが発生した可能性があると判定されると、当該情報が電流制御処理部16に伝達され、周波数フィードバック部13の周波数フィードバック機能のゲインが一時的に低下される。フリッカ判定部173によって電圧フリッカが発生した可能性があると判定されなかった場合には、周波数フィードバック部13の周波数フィードバック機能のゲインは維持される。すなわち、電圧フリッカ発生の可能性の判定は、フィードバック機能のゲインを一時的に低下させるか否かを判定することを意味する。なお、フィードバック機能のゲインの低下には、フィードバック機能の停止(ゲインがゼロ)も含む。
【0036】
電圧フリッカが発生した可能性があることを伝達された電流制御処理部16は、例えばフィードバック機能のゲインの低下と同時に、所定の高調波成分を所定の期間(例えば1周期等)重畳させるように電流制御を行う。高調波成分の注入は、例えば所定のサイクルで繰り返し行われるが、場合によっては1回限りでもよい。重畳させる高調波は、例えば或る単一の次数の高調波でもよいし、複数の次数の高調波を足し合わせたものであってもよい。また、場合によっては、重畳させる高調波は次数間高調波であってもよい。
【0037】
図1に示すように、電力変換装置1は、フィードバック機能のゲインが低下された場合に、当該ゲイン低下処理を終了するか否かを判定する第2の判定部18を備える。図3は、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1が備える第2の判定部18の詳細構成を示すブロック図である。図3に示すように、第2の判定部18は、高調波電圧計測部181と、高調波歪算出部182と、単独運転可能性判定部183とを備える。
【0038】
高調波電圧計測部181は、インバータ部10の出力側と系統電源3との間に設けられる。高調波電圧計測部181は、系統側に現れる高調波電圧を計測する。高調波歪算出部182は、総合高調波歪(THD)の変化量(或いは変化率)を算出する。例えば、直近の総合高調波歪から3サイクル前から5サイクル前までの3つの総合高調波歪の平均値を差し引いた値が、総合高調波歪の変化量とされる。なお、高調波電圧計測部181及び高調波歪算出部182は、場合によっては、無効電力ステップ注入部14に備えられるものを共用してもよい。また、高調波歪算出部182は、総合高調波歪に代えて、例えば、各次数の高調波歪、又は、次数間の高調波歪、或いは、複数の次数のうちのいくつかの高調波歪の合計値を算出して、その変化量を算出する構成であってもよい。
【0039】
単独運転可能性判定部183は、電流制御処理部16によって高調波成分が重畳された後に系統側に現れる全高調波歪(より詳細には全高調波歪の変化量或いは変化率)に基づいて単独運転の可能性を判定する。なお、当該判定の期間と、電流制御処理部16における高調波電流の注入期間とは同一の期間とするのが好ましい。
【0040】
単独運転の可能性が有る場合にフィードバック機能のゲインが低下されると、単独運転の検出が遅れてしまう。このために、単独運転の可能性が有ると判定された場合には、フィードバック機能のゲイン低下を終了して、通常のフィードバック機能に戻して単独運転の検出を行う。一方、単独運転の可能性が無い場合には、所定の期間、フィードバック機能のゲインが低下される。すなわち、単独運転の可能性の判定は、フィードバック機能のゲイン低下を終了するか否かを判定することを意味する。
【0041】
図4は、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1において、外乱によって電圧フリッカが発生した可能性があると判定された場合の動作例を示すフローチャートである。電圧フリッカの発生可能性の判定は、上述のように、系統側に現れる無効電力の変化の仕方を監視することによって第1の判定部17によって行われる。
【0042】
電圧フリッカが発生した可能性があると判定されると、フリッカ可能性フラグがオンされる(ステップS1)。フリッカ可能性フラグがオンされると、電流制御処理部16は、フィードバック処理に関するゲインを低下させ、周波数フィードバック部13から入力される情報の処理を行う。すなわち、周波数フィードバック部13によるフィードバック機能のゲインが低下される(ステップS2)。この際、ゲインをゼロとして周波数フィードバック機能が停止されてもよい。
【0043】
また、電流制御処理部16は、フィードバック処理に関するゲインの低下と同時に、電流高調波の注入を開始する(ステップS3)。電流高調波の注入が開始されると、第2の判定部18(より詳細には単独運転可能性判定部183)は、電圧の全高調波歪(THD)の変化量が所定の閾値(第3の閾値)以上であるか否かを確認する(ステップS4)。
【0044】
フィードバック機能停止中に単独運転に切り換わった場合、電流高調波の注入に応じて高調波電圧が変動するために、全高調波歪の変化量が所定の閾値以上になる(ステップS4でYes)。このために、第2の判定部18によって単独運転の可能性があると判定され、フリッカ可能性フラグがオフされる(ステップS5)。
【0045】
フリッカ可能性フラグのオフによって、電流制御処理部16は、低下させたフィードバック処理に関するゲインを元に戻して、周波数フィードバック部13から入力される情報に従って無効電力の注入を行うようになる。すなわち、周波数フィードバック部13によるフィードバック機能が通常状態に戻される(ステップS6)。また、フィードバック機能が通常状態に戻されると同時に、電流高調波の注入処理が終了される(ステップS7)。フィードバック機能が通常状態に戻されることによって、単独運転の検出を正確に検出することができる。
【0046】
一方、ステップS4で全高調波歪が所定の閾値を超えない場合には(ステップS4でNo)、単独運転の可能性はないと判断される。フィードバック機能のゲイン低下開始から所定の時間が経過していない場合(ステップS8でNo)には、ステップS5に戻って、再度、単独運転の可能性が判定される。フィードバック機能のゲイン低下開始から所定の時間が経過している場合(ステップS8でYes)には、フリッカ可能性フラグがオフされ(ステップS5)、その後は、上述の処理が行われる。
【0047】
なお、ステップS8における所定の時間は、特に限定される趣旨ではないが、例えば100m秒程度とされる。このぐらいの時間経過すれば、電圧フリッカが収まる可能性が高い。また、比較的短い時間でフィードバック機能を通常状態に戻せ、単独運転を適切に検出できる。
【0048】
以上のように、第1実施形態の電力変換装置1によれば、系統に外乱が発生した場合であっても、周波数フィードバック機能のゲインを一時的に低下することによって電圧フリッカの発生を抑制することができる。また、周波数フィードバック機能のゲインを低下させた場合においても、単独運転の可能性を判定する判定部を備えて適切なタイミグで周波数フィードバック機能のゲインを通常状態に戻す構成にしているために、単独運転を適切に検出することができる。
【0049】
以下、異なる実施形態について説明する。異なる実施形態の説明は、第1実施形態と異なる部分に絞って行う。
<第2実施形態>
【0050】
第1実施形態では、電圧フリッカ発生の可能性を検出すると、電流制御処理部16において、フィードバック機能のゲイン低下処理が行われる構成とした。しかし、これは、例示にすぎない。
【0051】
図5は、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置4の構成を示すブロック図である。第2実施形態の電力変換装置4においては、第1の判定部17は、電圧フリッカが発生した可能性があると判定すると、その情報を周波数フィードバック部13に伝達する。これにより、周波数フィードバック部13は、周波数フィードバック機能のゲイン低下処理を行う。
<第3実施形態>
【0052】
第1実施形態では、無効電力の変化を監視して電圧フリッカ発生の可能性を検出する構成とした。しかし、これは例示にすぎない。
【0053】
図6は、周波数偏差−注入無効電力特性を示す図である。周波数フィードバック部13は、図6に示すように、周波数偏差が±f[Hz](例えばf=0.01Hz)を境にして無効電力演算のゲインを変える(第1ゲイン及び第2ゲイン)。電圧フリッカが発生する場合、第2ゲインとなる無効電力を注入した後に第1ゲインに戻る(或いは、逆方向の第2ゲインとなる)といった現象が発生する。第3実施形態では、この現象(ゲインの切り替え)を利用して、電圧フリッカ発生の可能性を判定する。一旦挙げたゲインが下がった場合に、電圧フリッカが発生した可能性があると判定する。
【0054】
その他、電圧フリッカの可能性の検出は、上述した無効電力を用いる方法に代えて、電圧周波数を用いる構成としてもよい。また、無効電力や電圧周波数の周期的な変動を検出した場合に電圧フリッカの可能性があると判定するようにしてもよい。
<その他>
【0055】
以上に示した実施形態や変形例の構成は、本発明の例示にすぎない。実施形態や変形例の構成は、本発明の技術的思想を超えない範囲で適宜変更されてもよい。また、複数の実施形態及び変形例は、可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【符号の説明】
【0056】
1、4 電力変換装置
2 分散型電源
3 系統電源
10 インバータ部
12 系統周波数計測部
13 周波数フィードバック部
15 単独運転検出部
16 電流制御処理部
17 第1の判定部
18 第2の判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7