(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該インクジェットで印刷された複数の導電線が、少なくとも1つのインクジェットで印刷された導電線を電流が通る場合に、該透明体を加熱することによって、該透明体から氷を除く(de−ice)ように構成されている、請求項1に記載の透明体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、既存の航空機透明体は、しばしば、満足できる氷除去能力、静電気消費能力および/またはEMIシールド能力を提供せず、現在使用されている一部の導電性透明体は、満足できない寿命を有する。従って、氷除去能力、静電気消費能力および/またはEMIシールド能力を提供するように構成することができ、かつ電気めっき、蒸着、および織り金網の形成などの従来の工業的方法よりも簡便で経済的な方法により製造することができる、耐久性のある導電性の航空機透明体および導電性の装甲グレード透明体に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様による形態は、基材と、前記基材上のポリマーフィルムと、前記ポリマーフィルム上のインクジェットで印刷された複数の導電線によって形成された導電性メッシュとを含む透明体であって、少なくとも1つのインクジェットで印刷された導電線が、少なくとも1つの他のインクジェットで印刷された導電線と交差する、透明体に関する。本発明の態様による導電性メッシュ(および例示的透明体自体)は、典型的な透明体を製造するのに必要な非常に高価な蒸着チャンバーを必要としないため、導電性メッシュを含むことにより、本発明の態様による透明体は、既存の航空機透明体または装甲グレード透明体よりはるかに低コストで製造することができる。さらに、本発明の態様による導電性メッシュは、任意の広範囲の導電性を有することができ、従って、優れたEMIシールドまたは静電気消費および/または氷除去もしくは曇り除去を提供するように構成することができる。
【0007】
ある態様において、透明体は、電磁気干渉(EMI)シールドを提供するように構成される。
【0008】
インクジェットで印刷された複数の導電線は、少なくとも1つのインクジェットで印刷された導電線を電流が通る場合に、透明体を加熱することにより、透明体から氷を除くように構成されることができる。
【0009】
導電性メッシュは、約0.02〜約1,000Ω/□の範囲のシート抵抗を有することができる。
【0010】
導電性メッシュは、約0.02〜400Ω/□未満の範囲のシート抵抗を有することができる。
【0011】
導電性メッシュは、約0.02〜約100Ω/□の範囲のシート抵抗を有することができる。
【0012】
導電性メッシュは、約0.02〜約4Ω/□の範囲のシート抵抗を有することができる。
【0013】
ある態様において、インクジェットで印刷された複数の導電線は、インクジェットで印刷された金属を含む。
【0014】
例えば、インクジェットで印刷された複数の導電線は、Cu、Au、Ni、Ag、およびそれらの組合せからなる群から選択される金属を含むことができる。
【0015】
ある態様において、ポリマーフィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、またはポリウレタンを含む。
【0016】
ある態様において、基材は、ガラス、ポリアクリレート、ポリカーボネート、またはポリウレタンを含む。例えば、基材のポリウレタンはOPTICORでもよく、これは、PPG Industries Inc.から得ることができる。OPTICORは、PPG Industries Inc.の商標である。
【0017】
ある態様において、透明体は、ポリマーフィルム上の被覆層と、被覆層とポリマーフィルムとの間の第1の結合フィルムと、ポリマーフィルムと基材との間の第2の結合フィルムと、をさらに含む。
【0018】
被覆層は、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ガラス、またはポリウレタンを含むことができる。例えば、被覆層のポリウレタンはOPTICORでもよく、これは、PPG Industries Inc.から得ることができる。OPTICORは、PPG Industries Inc.の商標である。
【0019】
第1の結合フィルムは、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、またはシリコーンを含むことができる。
【0020】
第2の結合フィルムは、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、またはシリコーンを含むことができる。
【0021】
ある態様において、透明体は、約60%以上の可視光線透過率を有する。
【0022】
ある態様において、飛行体は上記いずれかの透明体を含む。
【0023】
本発明の態様による形態はまた、基材であって、ガラス、ポリアクリレート、ポリカーボネート、またはポリウレタンを含む基材と、前記基材上のインクジェットで印刷された複数の導電線によって形成された導電性メッシュと、を含む透明体であって、少なくとも1つのインクジェットで印刷された導電線が、少なくとも1つの他のインクジェットで印刷された導電線と交差する、透明体に関する。
【0024】
本発明の例のさらに別の形態は、透明体を調製する方法であって、ポリマーフィルムと基材とを共に積層させることを含み、導電性メッシュが前記ポリマーフィルム上にインクジェットで印刷された複数の導電線によって形成されている、方法に関する。
【0025】
ポリマーフィルムと基材とを共に積層させることは、被覆層と、第1の結合フィルム、ポリマーフィルムと、第2の結合フィルムと、基材とを共に積層させることを含むことができる。
【0026】
被覆層と第1の結合フィルムとポリマーフィルムと第2の結合フィルムと基材とを共に積層させることは、ポリマーフィルムと第2の結合フィルムと基材とを共に積層させて積層した基材を形成させること、被覆層と前記第1の結合フィルムとを共に積層させて、積層した被覆層を形成させること、および積層した基材と前記積層した被覆層とを共に積層させること、を含むことができる。
【0027】
ある態様において、前記ポリマーフィルムと前記基材とを共に積層させることは、約15分〜約5時間の範囲の時間で、約125°F〜約300°Fの範囲の温度で加熱すること、および約50psi〜約220psiの範囲の圧力下でプレスすることを含むことができる。
【0028】
例えば、ポリマーフィルムと第2の結合フィルムと基材とを共に積層させることは、約150°F〜約300°Fの範囲の温度で加熱することを含むことができる。
【0029】
ポリマーフィルムと第2の結合フィルムと基材とを共に積層させることは、約50psi〜約220psiの範囲の圧力でプレスすることを含むことができる。
【0030】
ポリマーフィルムと第2の結合フィルムと基材とを共に積層させることは、約15分〜約5時間の範囲の時間で行うことができる。
【0031】
被覆層と第1の結合フィルムとを共に積層させて積層した被覆層を形成することは、約100°F〜約300°Fの範囲の温度で加熱することを含むことができる。
【0032】
被覆層と第1の結合フィルムとを共に積層させて積層した被覆層を形成することは、約100psi〜約250psiの範囲の圧力でプレスすることを含むことができる。
【0033】
被覆層と第1の結合フィルムとを共に積層させて積層した被覆層を形成することは、約1時間〜約5時間の範囲の時間で行うことができる。
【0034】
積層した基材と積層した被覆層とを共に積層させることは、約100°F〜約300°Fの範囲の温度で加熱することを含むことができる。
【0035】
積層した基材と積層した被覆層とを共に積層させることは、約100psi〜約250psiの範囲の圧力でプレスすることを含むことができる。
【0036】
積層した基材と積層した被覆層とを共に積層させることは、約1時間〜約5時間の範囲の時間で行うことができる。
【0037】
本発明の態様はまた、航空機透明体の氷を除くかまたは曇りを除く方法であって、基材と、前記基材上のポリマーフィルムと、インクジェット印刷により前記ポリマーフィルム上に堆積された複数の交差する導電線により形成された導電性メッシュと、を含む透明体を加熱し、ここで前記透明体は航空機に付着され、前記透明体を加熱することは、少なくとも1つの導電線に電流を印加することを含む、方法に関する。
【0038】
本発明の他の態様は、航空機透明体の氷を除くかまたは曇りを除く方法であって、基材と、前記基材上にインクジェット印刷により堆積された複数の交差する導電線により形成された導電性メッシュと、を含む透明体を加熱することを含み、ここで前記透明体は航空機に付着され、前記透明体を加熱することは、少なくとも1つの導電線に電流を印加することを含む、方法に関する。
【0039】
本発明の態様は、電磁気干渉(EMI)をシールドするように航空機を構成する方法であって、透明体を航空機に付着することを含み、ここで前記透明体は、基材と、前記基材上のポリマーフィルムと、インクジェット印刷により前記ポリマーフィルム上に堆積された複数の交差する導電線により形成された導電性メッシュとを含む、方法に関する。
【0040】
本発明の他の態様は、電磁気干渉(EMI)をシールドするように航空機を構成する方法であって、透明体を航空機に付着することを含み、ここで前記透明体は、前記基材と、インクジェット印刷により前記基材上に堆積された複数の交差する導電線により形成された導電性メッシュとを含む、方法に関する。
【0041】
本発明の態様はまた、装甲グレード透明体の氷を除くかまたは曇りを除く方法であって、この方法が、装甲グレード透明体であって、衝撃(ballistic)基材と、前記衝撃基材上のポリマーフィルムと、インクジェット印刷により前記ポリマーフィルム上に堆積された複数の交差する導電線により形成された導電性メッシュと、を含む装甲グレード透明体を加熱することを含み、ここで前記装甲グレード透明体を加熱することは、少なくとも1つの導電線に電流を印加することを含む、方法に関する。
【0042】
本発明のさらに別の態様は、装甲グレード透明体の氷を除くかまたは曇りを除く方法であって、この方法が、装甲グレード透明体であって、衝撃基材と、インクジェット印刷により前記衝撃基材上に堆積された複数の交差する導電線により形成された導電性メッシュと、を含む装甲グレード透明体を加熱することを含み、ここで前記装甲グレード透明体を加熱することは、少なくとも1つの導電線に電流を印加することを含む、方法に関する。
【0043】
本発明の態様はまた、電磁気干渉(EMI)をシールドするようにビークルを構成する方法であって、装甲グレード透明体をビークルに付着することを含み、ここで前記透明体は、衝撃基材と、前記衝撃基材上のポリマーフィルムと、インクジェット印刷により前記ポリマーフィルム上に堆積された複数の交差する導電線により形成された導電性メッシュとを含む、方法に関する。
【0044】
本発明の他の態様はまた、電磁気干渉(EMI)をシールドするようにビークルを構成する方法であって、装甲グレード透明体をビークルに付着することを含み、ここで前記透明体は、衝撃基材と、インクジェット印刷により前記衝撃基材上に堆積された複数の交差する導電線により形成された導電性メッシュとを含む、方法に関する。
【0045】
本発明の態様はまた、スマート窓であって、スマート窓は、透明基材と、前記透明基材上の第1の透明電極と、前記第1の透明電極上の透過率制御層と(ここで前記透過率制御層は前記スマート窓の光透過を変化させるように構成され、)、前記透過率制御層上の第2の透明電極とを含み、ここで前記第1および前記第2の透明電極の1つは、インクジェットで印刷された複数の導電線により形成された導電性メッシュを含み、前記少なくとも1つのインクジェットで印刷された導電線は、インクジェットで印刷された少なくとも1つの他の導電線と交差する、スマート窓に関する。
【0046】
ある態様において、前記スマート窓はさらに、前記第1の透明電極と前記透明基材との間にポリマーフィルムを含む。
【0047】
ある態様において、前記スマート窓は、前記第2の透明電極上にポリマーフィルムを含む。
【0048】
前記導電性メッシュは、前記ポリマーフィルム上に直接インクジェットで印刷されるか、または前記透明基材上に直接インクジェットで印刷されてよい。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下の詳細な説明と特許請求の範囲において、種々のフィルムと層は、1つまたはそれ以上の追加のフィルムや層の「上」にあるとして記載される。この言葉は、フィルムや層の相対的位置を示すのみである。すなわち、ある態様では、2つのフィルムおよび/または層が文字通り互いのすぐ隣にあり、他の態様では、同じ2つのフィルムおよび/または層は、1つまたはそれ以上のフィルムおよび/または層により分離される。いずれの場合も、2つのフィルムおよび/または層の1つは、他のフィルムまたは層の「上」にあると見なされる。また「上」は「より下」を意味することがある。例えば、別のフィルムまたは層の「上」にあるフィルムまたは層はまた、見方により、他のフィルムまたは層の「より下」にあると見なすことができる。さらに本明細書において用語「フィルム」は、他の形状物によって支持されない場合は、静的形状を保持しない薄く柔軟性のあるシートを指す。
【0067】
本発明の態様は、導電性メッシュを含む透明体に関する。このような透明体は、例えば、飛行体(例えば航空機)の天蓋、窓または風防ガラスとして、または地上車両の装甲グレードの風防ガラスまたは窓として、様々な用途を有する。例えば、本発明の態様による透明体は、AM General HMMWV(「HUMVEE(商標)」)の風防ガラスまたは窓として使用することができる。従って、本発明の例示的態様は、導電性メッシュを含む透明体を含む飛行体に関する。
【0068】
ある態様において、導電性メッシュは、ポリマーフィルム上のインクジェットで印刷された複数の導電線により形成され、少なくとも1つのインクジェットで印刷された導電線は、少なくとも1つの他のインクジェットで印刷された導電線と交差する。導電性メッシュの例は、CIMA Nanotech, Inc., Dontech, Inc.、Applined Nanotec Holdings, Inc.、NanoMas TEchnologies, Inc.、およびFUJIFILM Dimatix, Inc.から得ることができる。別の態様において、導電性メッシュは、基材上(例えば、物理的に接触している)のインクジェットで印刷された複数の導電線により形成され、少なくとも1つのインクジェットで印刷された導電線は、少なくとも1つの他のインクジェットで印刷された導電線と交差する。例えばインクジェットで印刷された複数の導電線は、例えばガラス、ポリアクリレート、ポリカーボネート、またはポリウレタンなどの基材上に直接インクジェットで印刷することができる。ある態様において、基材のポリウレタンはOPTICORでもよく、これは、PPG Industries Inc.から得ることができる。OPTICORは、PPG Industries Inc.の商標である。例えば、基材のポリウレタンは、米国特許出願公開第2009/0280329号明細書(この全ての内容を参照により本明細書中に取り込む)に記載されている任意のポリウレタンでよい。導電線の例は、例えばNovacentrixから入手できるMETALON(商標)導電性インクなどのインクジェット印刷用導電性インクにより調製することができる。METALON(商標)は、Novacentrixの商標である。本発明の態様は、導電性メッシュを含む透明体を調製するための方法に関する。
【0069】
本発明は、本発明の例示的態様が示されている添付の図面を参照して、以下に説明される。この図面は、本質的に例示的であり、本発明を限定するものと解してはならない。図面において、フィルム、層、および領域の厚さは、例示を容易にするために誇張されている場合がある。
【0070】
透明体の例示的態様は
図1に示される。
図1に示される透明体200は、航空機の天蓋、窓または風防ガラスとして、または地上車両の装甲グレード透明体などの装甲グレード透明体として、使用することができる。
図1に示されるように、透明体200は、基材20と導電性メッシュ40とを含む。導電性メッシュ40は、インクジェットで印刷された複数の導電線を含み、ここで少なくとも1つのインクジェットで印刷された導電線は、少なくとも1つの他のインクジェットで印刷された導電線と交差する。導電性メッシュ40はポリマーフィルム上にあってもよく、インクジェットで印刷された複数の導電線は、物理的にポリマーフィルムと接触してもよい。あるいは、インクジェットで印刷された複数の導電線は、基材20上に直接インクジェットで印刷されていてもよい(例えば、インクジェットで印刷された導電線が物理的に基材20に接触してもよい)。しかし、透明体は、単一の導電性メッシュを有することに限定されない。例えば導電性メッシュ40は繰り返されて、基材30上に積み重ねられた構造を形成してもよい。導電性メッシュ40はまた基材20の反対側にもあって、サンドイッチ構造を形成してもよい。基材20の反対側の導電性メッシュ40は、単一のフィルム、または積み重ねられた構造を形成する複数のフィルムでもよい。
【0071】
本発明のいくつかの態様において、複数の導電線は互いに間隔を置いて配置される。例えば、インクジェットで印刷された複数の導電線は、EMIシールド性、氷除去性および/または曇り除去性を提供する導電性メッシュに適した任意の距離を置いて配置してもよい。例えば間隔は、透明体を通した、シールドされる特定の範囲の電磁放射線の伝達を、防止または低下するのに適したサイズを有することが好ましい。間隔が大きすぎる(例えば、シールドすべき電磁放射線の波長より大きい)場合、導電性メッシュは所望のシールドを提供しないであろう。導電性メッシュのEMIシールド性に対するこのような間隔の効果の点で、メッシュ中の間隔は、シールドされる電磁放射線の波長より小さいかまたは実質的に小さい(例えば、電子システムに干渉する破壊性電磁放射線の波長より実質的に小さい)ことが好ましい。
【0072】
しかし、メッシュ中のインクジェットで印刷された導電線の配置は限定的ではない。すなわち、メッシュ(すなわち、インクジェットで印刷された複数の導電線)は、パターンまたはモザイク細工の任意の形態で配置することができる。例えばメッシュは、正方形の格子、三角形のタイル、六角形のタイル、または直線、波線、正弦波線、またはジグザグの線から形成される格子として配置してもよい。メッシュは、均一、不均一、繰り返し、またはランダムパターンの任意の形態で配列することができる。インクジェットで印刷された複数の導電線の正方形格子配置の例示的態様は、
図2に示した導電性メッシュの模式図に見られる。
図2から明らかなように、インクジェットで印刷された複数の導電線は直線で示され、これは、インクジェットで印刷された導電線間の正方形の繰り返しパターンを定義する。この具体的な態様において、インクジェットで印刷された導電線の各々は、約25μmの幅を有するが、これらに限定されない。さらに、この具体的な態様において、インクジェットで印刷された導電線間の各正方形は、約250μmの幅を有するが、これらに限定されない。
【0073】
本発明の態様による透明体の追加のフィルムおよび層が、以下に記載される。具体的な態様に依存して、これらの追加のフィルムおよび/または層は、透明体中に存在しても存在しなくてもよい。例えば、本発明の態様による透明体は
図3に示される。さらに、この態様による透明体の分解透視図が
図4に示される。
図3および
図4から明らかなように、透明体300は、被覆層60と、第1の結合フィルム50と、ポリマーフィルム42上のインクジェットで印刷された複数の導電線により形成された導電性メッシュと、第2の結合フィルム30と、基材20とを含む。被覆層60と、第1の結合フィルム50と、ポリマーフィルム42と、第2の結合フィルム30とは、基材20上に1回積み重ねられるか、または、これらは複数回繰り返されて、多重積み重ね構造を形成してもよい。さらに、これらのフィルムおよび層は、基材20の両側にあってサンドイッチ構造を形成してもよい。基材20の両側にあるフィルムおよび層は、1回積み重ねられるか、または、これらは複数回繰り返されて、多重積み重ね構造を形成してもよい。
【0074】
被覆層60は、透明体を保護する。これは、耐久性があり、引掻きまたは他の形態の物理的損傷に対して抵抗できることが好ましい。被覆層はまた、気候による損傷または化学攻撃の他の形態に対しても抵抗できることが好ましい。例えば、被覆層60は、任意の適切な有機樹脂、例えばポリアクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリカーボネート(例えば、ビスフェノールAポリカーボネート)、またはポリウレタン、ガラス、または適切な透過性および防御性を有する任意の他の材料を含んでよい。ある態様において、被覆層のポリウレタンはOPTICORであり、これは、PPG Industries Inc.から得ることができる。OPTICORは、PPG Industries Inc.の商標である。例えば、被覆層のポリウレタンは、米国特許出願公開第2009/0280329A1号明細書(この全ての内容を参照により本明細書中に取り込む)に記載されている任意のポリウレタンでよい。被覆層は、約0.1インチ〜約0.75インチの厚さを有することができる。
【0075】
第1の結合フィルム50は、被覆層60中の不完全性をカバーし、ポリマーフィルム42への被覆層60の接着を促進する。例えば、第1の結合フィルム50は、被覆層60をポリマーフィルム42に結合させ、そして、そこに結合することができるはずである。ある態様において、第1の結合フィルム50は、ポリウレタン、ポリビニルブチラール(PVB)、シリコーン、または適切な接着性を有する他の材料を含む。ポリウレタンは、100,000〜300,000g/molの範囲の分子量を有することができるが、これに限定されない。ポリビニルブチラールは、200,000〜300,000の範囲の分子量を有することができるが、これに限定されない。第1の結合フィルム50は、約0.003〜約0.100インチの範囲の厚さを有することができる。
【0076】
第1の結合フィルム50と同様に、第2の結合フィルム30は、基材20中の不完全性をカバーし、ポリマーフィルム42への基材20の接着を促進する。従って、第2の結合フィルム30は、基材20をポリマーフィルム42に結合させ、そしてそこに結合することができるはずである。ある態様において、第2の結合フィルム30は、ポリウレタン、ポリビニルブチラール(PVB)、シリコーン、または適切な接着性を有する他の材料を含む。ポリウレタンは、100,000〜300,000g/molの範囲の分子量を有することができるが、これに限定されない。ポリビニルブチラールは、200,000〜300,000の範囲の分子量を有することができるが、これに限定されない。第2の結合フィルム30は、約0.003〜約0.100インチの範囲の厚さを有することができる。
【0077】
上記のように、ある態様において、導電性メッシュは、ポリマーフィルム42上のインクジェットで印刷された複数の導電線によって形成される。インクジェットで印刷された複数の導電線は、任意の適切なポリマーフィルム、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、またはポリウレタン上にインクジェットで印刷することができる。本発明の他の態様において、導電性メッシュは、ガラス、ポリアクリレート、ポリカーボネート、または任意の他の適切な基材上にインクジェットで印刷された複数の導電線により形成される。本発明の任意の態様において、複数の導電線は、Novacentrixから入手できるMETALON(商標)導電性インクなどのインクジェット印刷導電性インクにより調製することができる。ある態様において、インクジェットで印刷された複数の導電線は、任意の適切なインクジェットで印刷された金属、例えば、銅(Cu)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、およびそれらの組合せからなる群から選択される金属などを含む。例えば、インクジェットで印刷された複数の導電線は、Cuを含んでよい。複数の電導性インクジェットで印刷された線は、エポキシ、または適切な結合特性を有する任意の他の材料を、さらに含んでよい。
【0078】
さらに後述されるように、インクジェットで印刷された複数の導電線は、透明体がEMIシールドを提供するように構成されるように、形成することができる。さらに後述されるように、インクジェットで印刷された複数の導電線は、少なくとも1つのインクジェットで印刷された導電線を電流が通る場合に、透明体を加熱することにより、透明体から氷を除くように構成されることができる。例示的透明体のEMIシールド能力または氷除去能力は、導電性メッシュ40のシート抵抗から生じる。例えば、ある態様において、導電性メッシュ40は、約0.002Ω/□〜約1000Ω/□のシート抵抗を有してよい。他の態様において、導電性メッシュ40は、400Ω/□未満のシート抵抗を有してよい。さらに他の態様において、導電性メッシュ40は、100Ω/□未満のシート抵抗を有してよい。
【0079】
導電性メッシュ40は、ポリマーフィルム42の上にあってもよい。ポリマーフィルムは、任意の適切なポリマー、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、またはポリウレタンを含んでよいが、本発明はこれらに限定されない。ある態様において、複数の導電線は物理的にポリマーフィルムに接触する。例えば、インクジェットで印刷された複数の導電線は、ポリマーフィルム上にインクジェット印刷することができる(例えば、インクジェット印刷によりポリマーフィルム上に堆積される)。ポリマーフィルムは、約70μm〜約1,000μmの範囲の厚さを有することができる。インクジェットで印刷された複数の導電線は、それぞれ約20μm〜約50μmの範囲の幅を有することができる。インクジェットで印刷された複数の導電線は、それぞれ約50nm〜約5μmの範囲の厚さを有することができる。導電線の厚さおよび/または幅を変化させて、透明体のEMIシールド性、氷除去性、および/または曇り除去性を変化させることができる。
【0080】
被覆層60と同様に、基材20は透明体300を保護する。従って基材20は、耐久性があり、かつ引掻きまたは他の形態の物理的損傷に対して抵抗できることが好ましい。基材はまた、気候による損傷または化学攻撃の他の形態に抵抗することが好ましい。例えば、基材20は、任意の適切な有機樹脂、例えばポリカーボネート(例えば、ビスフェノールAポリカーボネート)、ポリアクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、またはポリウレタン、ガラス、または適切な透過性および防御性を有する任意の他の材料を含んでよい。ある態様において、基材のポリウレタンはOPTICORであり、これは、PPG Industries Inc.から得ることができる。OPTICORは、PPG Industries Inc.の商標である。例えば、基材のポリウレタンは、米国特許出願公開第2009/0280329A1号明細書(この全ての内容を参照により本明細書中に取り込む)に記載されている任意のポリウレタンでよい。基材は、約0.125インチ〜約0.75インチの厚さを有することができる。
【0081】
透明体を調製するための方法が、以下に一般的に記載される。例えば、本発明のある態様において、透明体を調製する方法は、基材上にインクジェット印刷することを含み、ここで、少なくとも1つのインクジェットで印刷された導電線は、少なくとも1つの他のインクジェットで印刷された導電線と交差する。上記のように、基材は、ガラス、ポリアクリレート、ポリカーボネート、OPTICOR、または適切な透過性および防御性を有する任意の他の材料を含んでよい。ある態様において、基材のポリウレタンはOPTICORであり、これは、PPG Industries Inc.から得ることができる。OPTICORは、PPG Industries Inc.の商標である。例えば、基材のポリウレタンは、米国特許出願公開第2009/0280329A1号明細書(この全ての内容を参照により本明細書中に取り込む)に記載されている任意のポリウレタンでよい。インクジェットで印刷された導電線は、任意の適切なインクを基材上にインクジェット印刷することにより形成することができる。例えば、導電線は、基材上のNovacentrixから入手できるMETALON(商標)導電性インクなどのインクジェット印刷導電性インクにより調製することができる。インクジェット印刷は、例えば、Huang, Luらの“Graphene−based conducting inks for direct inkjet printing of flexible conductive patterns and their applications in electric circuits and chemical sensors”、Nano Research (2011),vol.4,issue 7,675−684(その全体の内容を参照により本明細書中に取り込む)に記載されているような、任意のインクジェット印刷法に従って実施することができる。
【0082】
インクジェット印刷は、低コストで、広範囲の基材に適合する非接触適用であるという利点を有する。さらに、インクジェット印刷はマスクパターン化を必要とせず、低温で実施でき、真空加工を必要としない。インクジェット印刷は、基材に接触することなく導電性流体を堆積することができる。インクジェット印刷は、コンピューターでデジタル操作して、正確に格子線を引くことができる。インクジェットプリンターは、約254ミクロンの距離で離れた数個のノズルを有することができ、約1〜約10ピコリットルの範囲のサイズの液滴を形成することができるが、本発明はこれに限定されない。ある態様において、ノズルは、圧電効果の結果として基材へインク液滴を適用する。例えば、Griggs, C. らの”Opportunities for Inkjet Printing in Industrial Applications”、INdustrial+Specialty Printing, May/June 2010(http://www.dimatix.com/files/isp05−0610p18−22.pdfで入手できる)(この全ての内容を参照により本明細書中に取り込む)に記載されているように、インクジェット印刷は、20μmという小さい形状を印刷するのに使用することができる。
【0083】
本発明の別の態様において、透明体を調製する方法は、ポリマーフィルムと基材とを共に積層させることを含み、ここで、導電性メッシュは、ポリマーフィルム上のインクジェットで印刷された複数の導電線により形成される。例えば
図5に示されるように、ポリマーフィルムと第2の結合フィルムと基材(例えば、ポリマーフィルム42と第2の結合フィルム30と基材20)とを共に、積層プロセス400で積層して、積層した基材70を形成することができる。この積層プロセスの模式図は
図6に示される。この積層プロセスは、ポリマーフィルムと第2の結合フィルムと基材とを、約200°F〜約300°Fの範囲の温度で加熱することを含んでよい。さらに、この積層プロセスは、ポリマーフィルムと第2の結合フィルムと基材とを、約50psi〜約250psiの範囲の圧力でプレスすることを含んでよい。ポリマーフィルムと第2の結合フィルムと基材とを共に積層させることは、約15分〜約5時間の範囲の時間で行うことができる。
【0084】
図7に示されるように、被覆層と第1の結合フィルム(例えば、被覆層60と第1の結合フィルム50)は、積層プロセス500で共に積層されて、積層した被覆層80を形成することができる。この積層プロセスの模式図は
図8に示される。この積層プロセスは、被覆層と第1の結合フィルムとを、約100°F〜約300°Fの範囲の温度で加熱することを含んでよい。さらに、この積層プロセスは、被覆層と第1の結合フィルムと基材とを、約100psi〜約250psiの範囲の圧力でプレスすることを含んでよい。被覆層と第1の結合フィルムとを共に積層させることは、約1時間〜約5時間の範囲の時間で行うことができる。
【0085】
図9に示されるように、積層した被覆層80と積層した基材70は、積層プロセス600で共に積層されて、透明体300を形成することができる。この積層プロセスの模式図は
図10に示される。この積層プロセスは、積層した被覆層と積層した基材とを、約100°F〜約300°Fの範囲の温度で加熱することを含んでよい。さらに、この積層プロセスは、積層した被覆層と積層した基材とを、約100psi〜約250psiの範囲の圧力でプレスすることを含んでよい。積層した被覆層と積層した基材とを共に積層させることは、約1時間〜約5時間の範囲の時間で行うことができる。上記積層プロセスの1つまたはそれ以上は、真空にした気密真空プラスチックバッグ中で行うことができる。さらに、上記積層プロセスの1つまたはそれ以上は、オートクレーブ中で行うことができる。
【0086】
本発明の態様による透明体は、平らな透明体または成形された透明体でもよい。したがって、透明体を調製する上記方法はまた、透明体を成形することを含んでよい。透明体は、上記調製プロセスのいずれかの前、その最中、または後に成形することができる。例えば基材は、基材上への複数の導電線のインクジェット印刷の前、その最中、または後に成形することができる。さらに基材は、基材とポリマーフィルムとを共に積層させる前、その最中、または後に成形することができる。例えば基材は、ポリマーフィルムと第2の結合フィルムと基材とを共に積層して、積層した基材を形成する前または後に成形することができるか、または、これは積層プロセス中に成形することができる。さらに基材は、被覆層と第1の結合フィルムが共に積層されて、積層した被覆層を形成する前または後に成形することができるか、またはこれは積層プロセス中に成形することができる。同様に基材は、積層した被覆層と積層した基材とを共に積層して透明体を形成する前または後に成形することができるか、または、これは積層プロセス中に成形することができる。
【0087】
本発明の態様による透明体は、既存の航空機透明体および装甲グレード透明体に対して顕著な利点を有する。例えば、本明細書に記載の導電性メッシュを使用することにより、本発明の透明体は、既存の航空機透明体や装甲グレード透明体を調製するのに必要な何百万ドルもする蒸着チャンバーを使用することなく、生成することができる。従って、本明細書に記載の透明体は、既存の航空機透明体や装甲グレード透明体よりもはるかに低いコストで製造することができる。
【0088】
導電性メッシュは有用であるが、これらは、宇宙産業用途(例えば、航空機透明体)で使用されておらず、このような導電性メッシュは、装甲グレード透明体と組合せて使用されていない。これらの用途(例えば、宇宙産業および装甲グレード透明体用途)は、具体的な要件(さらに後述される)を有し、本発明の態様による導電性メッシュがこれらの要件を満足するであろうことは、以前は知られていなかった。実際本発明者らは、宇宙産業および装甲グレード透明体用途における、本明細書に記載の透明体と導電性メッシュの顕著な性能に驚かされた。しかし、これらの導電性メッシュおよび透明体を試験して、本発明者らは、これらが優れた耐久性、EMIシールド能力、氷除去能力、および/または曇り除去能力を示すことを、予想外に発見した。
【0089】
導電性メッシュはまた、例えばディスプレイ装置での使用にも適している可能性があるが、本発明の導電性メッシュは、宇宙産業および装甲グレード透明体用途の具体的な要件に関する。例えば、本発明の態様による導電性メッシュは、本明細書に記載の特定の厚さ、材料、構成、および/またはシート抵抗を含む。ディスプレイ装置などの他の用途についての導電性メッシュは、宇宙産業および装甲グレード透明体用途の要件について構成されることはできない。例えば、ほこりが主要な関心事であるディスプレイ装置用の導電性メッシュは、宇宙産業および装甲グレード透明体用途には薄すぎるかまたはシート抵抗が高すぎる。さらに。ディスプレイ装置の導電性メッシュは、氷除去または曇り除去用に構成されていない。
【0090】
本発明の例示的透明体は、航空機透明体または装甲グレード透明体に必要なEMIシールドを提供するように構成されることができる。すなわち、透明体は、透明体を通した破壊性電磁放射線(すなわち、電子システムに干渉する電磁放射線)の伝搬を防ぐかまたは低下させるように構成されることができる。透明体を通した破壊性電磁放射線の伝搬を防ぐかまたは低下させることにより、透明体は、電子システム、例えば航空機の電子システムに対する電磁気干渉の影響を防ぐかまたは低下させる。さらに、透明体のEMIシールドは、航空機内の電子システムから航空機の外の電子システムに放出される電磁気干渉の影響を防ぐかまたは低下させる。
【0091】
導電性メッシュのEMIシールド特性は、少なくとも部分的には、その導電性から生じる。例えば導電性メッシュの片側への電界の適用は、導電性メッシュにおいて電流を誘導し、これは導電性メッシュ内の電荷の移動を引き起こし、従って透明体の反対側の電界を打ち消す。誘導された電流の結果として、電磁放射線(例えば、電子システムに干渉する電磁放射線)は、少なくとも部分的には導電性メッシュにより反射され、こうして透明体を通した電磁放射線の伝搬を防ぐまたは低下させる。振動磁界は、実質的に同様の方法で導電性メッシュと相互作用するが、静磁界は相互作用しない。
【0092】
導電性メッシュのEMIシールドは、少なくとも部分的には、導電性メッシュ中の誘導電流から生じるため、導電性メッシュのシールド有効性は、少なくとも部分的には導電性メッシュの抵抗(またはシート抵抗、すなわち導電性)に依存する。例えば、導電性メッシュの抵抗(またはシート抵抗)が上昇すると、導電性メッシュ内で電流を誘導することがより困難になる。従って、導電性メッシュの抵抗を上昇させることは、典型的には導電性メッシュのEMIシールド有効性を低下させる。従って透明体は、導電性メッシュの導電性(またはシート抵抗)を適切に選択することにより、EMIシールドを提供するように構成されることができる。例えば、ポリカーボネート構造体とポリカーボネート被覆層との間に導電性メッシュ例を含む例示的透明体のEMIシールド有効性は、
図11に示されるグラフで見ることができる。
図11から明らかなように、透明体は、約1GHz〜約18GHzの範囲の周波数を有する電磁放射線について約20dB〜約50dBの範囲のEMIシールドを提供し、18GHzでの平均シールド有効性は25dBである。航空機透明体または装甲グレード透明体に必要なEMIシールドを提供するように構成されると、透明体は、電気接続、例えば母線(bus bar)を含むが、このような電気接続はEMIシールドを提供するのに必要ない場合がある。
【0093】
さらに、導電性メッシュの導電性は、本来降水(precipitation)攻撃および/または稲妻攻撃から生じるであろう透明体の静電荷の蓄積を防ぐまたは低下させることを可能にする。例えば、導電性メッシュは低シート抵抗(すなわち、高導電性)を有することができ、従って、本来透明体上で蓄積するであろう静電荷を失わせるかまたは散らす。低シート抵抗を有する導電性メッシュはまた、レーダー減衰などの追加の利点を提供することができる。従って導電性メッシュは、約0.02Ω/□〜約1,000Ω/□の範囲のシート抵抗を有することができる。例えば導電性メッシュは、400Ω/□未満、または100Ω/□未満のシート抵抗を有することができる。本発明の態様とは対照的に、連続的な酸化インジウムスズ(ITO)導電性コーティングでは0.3Ω/□未満のシート抵抗は達成できないが、これは、特殊な航空機透明体には必要となる場合がある。
【0094】
導電性メッシュの抵抗(またはシート抵抗)に加えて、導電性メッシュのEMIシールドもまた、導電性メッシュの組成(例えば、インクジェットで印刷された導電線の組成)、インクジェットで印刷された各導電線の厚さ、シールドされた容積サイズ、シールドされている電磁放射線の周波数とサイズ、および導電性メッシュ中のインクジェットで印刷された導電線間の間隔に依存する。
【0095】
EMIシールド能力を提供するように構成されることに加えて、またはその代わりに、透明体は、導電性メッシュの少なくとも1つのインクジェットで印刷された導電線を電流が通る場合に、透明体を加熱することにより、前記透明体から氷を除くかまたは曇りを除くように構成されることができる。すなわち、曇りの除去または氷の除去は、導電性メッシュの少なくとも一部に電流を印加して透明体(航空機の天蓋、窓または風防ガラス、または装甲グレードの風防ガラスまたは窓)を加熱することにより達成することができ、こうして、結露または氷の形成を防ぐまたは低下させ、または透明体上にすでに形成された結露または氷を蒸発させるかまたは融解させることができる。
【0096】
例えば、本発明の例示的態様による透明体の加熱パターンは、
図12に示される赤外線サーモグラフで見ることができる。赤外線サーモグラフは、電磁線スペクトルの赤外線範囲の放射線を検知し、風防ガラス/窓の熱画像を生成する熱イメージングカメラを使用して得られた。風防ガラス/窓は、風防ガラス/窓の表面温度が100°F〜150°Fに達するまで14/18DCボルトを使用して電力供給され、次に風防ガラス/窓の熱画像が記録された。これらの赤外線サーモグラフに見られるように、例示的透明体は、導電性メッシュの非常に低いシート抵抗(例えば、約0.02Ω/□〜約4Ω/□)にもかかわらず、航空機の天蓋、窓または風防ガラスの曇りを除くかまたは氷を除くのに適した優れた加熱パターンを示した。
図12で観察される加熱パターンは、例示的透明体が、いくつかの既存の透明体と比較して、より均一な加熱を示したという点で、既存の航空機透明体および装甲グレード透明体に対して、予想外で望ましい結果を提供する。
【0097】
さらに、例示的透明体の具体的な氷除去能力および/または曇り除去能力は、特定の用途に合わせて調整することができる。典型的には、航空機操縦席の風防ガラスは、航空機操縦席の側面の窓より大きな氷除去能力を必要とし、従って、航空機操縦席の風防ガラスは、航空機操縦席の側面の窓(例えば、約1W/in.
2〜約2W/in.
2)より大きなワット/インチ数(例えば、約4W/in.
2〜約5W/in.
2)がそこに適用される。従って、透明体の氷除去能力および/または曇り除去能力は、導電性メッシュのシート抵抗を適切に選択することにより、特定の用途に合わせて調整することができる。さらに透明体は、氷除去または曇り除去を達成するために、母線などの電気接続を含むことができる。
【0098】
本発明の態様による透明体は、氷除去能力またはEMIシールド能力を独立して有するように構成されることができるが、本発明者らはまた、本発明の態様による透明体が、氷除去能力とEMIシールド能力の両方(例えば、航空機透明体に有利な能力)を有するように構成されることができることを、驚くべきことに発見した。本発明の態様による透明体の氷除去能力とEMIシールド能力の組合せは、既存の航空機透明体に対して、予想外の望ましい結果を提供する。
【0099】
氷除去能力および/またはEMIシールド能力に加えて、本発明の態様による透明体はまた、非常に高い可視光線透過率を有する。例えば、そのような透明体は、60%超、65%超、70%超、または84%超の可視光線透過率を有することができる。
図13に示されるグラフから明らかなように、本発明の例示的態様による透明体は、可視光線範囲(例えば、約400nm〜約750nmの波長)並びに近赤外線範囲(例えば、約700nm〜約900nmの波長)で、高い光透過率を有する。例えば、
図13のグラフは、本発明の例示的態様による透明体が、約700nm〜約900nmの波長で約74%の光透過率を有したことを示す。近赤外線は、近赤外線光を可視光に変換する装置を使用することにより肉眼で観察できるものより、広いスペクトルの電磁放射線を使用して使用者が画像を見ることを可能にする暗視用途に特に有用である。
【0100】
さらに本発明の態様は、可変の光透過性を有するスマート窓または切替可能窓などの透明体に関する。例えば本発明の態様は、エレクトロクロミック装置、懸濁粒子装置、および液晶装置に関する。上記導電性メッシュは、上記装置のいずれにおいても、1種またはそれ以上の透明の電極として使用することができる。例えば、エレクトロクロミック装置、懸濁粒子装置、または液晶装置は、インクジェットで印刷された複数の導電線により形成された導電性メッシュを含む透明電極を含むことができ、ここで、少なくとも1つのインクジェットで印刷された導電線は、少なくとも1つの他のインクジェットで印刷された導電線と交差する。これらの装置で透明電極として使用される場合、導電性メッシュは、本発明の他の態様に上記したポリマーフィルムでも、または基材でもよい。導電性メッシュの操作または構成は、前記例示的態様と実質的に同様であり、従って、このさらなる説明は提供されない。
【0101】
ある態様において、スマート窓は、透明基材と、前記透明基材上の第1の透明電極と、前記第1の透明電極上の透過率制御層であって、スマート窓の光透過率を変化させるように構成されている透過率制御層と、前記透過率制御層上の第2の透明電極とを含み、ここで、前記第1および第2の透明電極の1つは、前記透明基材上のインクジェットで印刷された複数の導電線により形成された導電性メッシュを含み、ここで、少なくとも1つのインクジェットで印刷された導電線は、少なくとも1つの他のインクジェットで印刷された導電線と交差する。
図14は、本発明の例示的態様による導電性メッシュを含むスマート窓の分解断面図である。
図14から明らかなように、スマート窓は、基材720と、第1の透明電極791と、透過率制御層793と、第2の電極794とを含む。前記第1および第2の透明電極791と794のいずれかまたは両方は、それぞれ導電性メッシュを含んでよい。基材720は、前記例示的態様について記載された基材を含む任意の適切な基材でもよい。透過率制御層793は、任意のエレクトロクロミック材料、懸濁粒子、またはスマート窓の透過率を変化させるのに適した液晶を含んでよい。
【0102】
ある態様において、スマート窓はまたポリマーフィルムを含む。例えば、
図15は、基材720と第1の透明電極791との間にポリマーフィルム792を含む例示的スマート窓の分解断面図である。さらに、
図16は、第2の透明電極794上にポリマーフィルム792を含む例示的スマート窓の分解断面図である。前記ポリマーフィルムは、上記した任意の適切なポリマーフィルムでもよい。上記のように導電性メッシュは、前記ポリマーフィルム792上に直接インクジェット印刷されるか、または前記透明基材720上に直接インクジェット印刷され得る。
【0103】
透明電極として、導電性メッシュは、エレクトロクロミック材料、懸濁粒子、ポリマー、または透過率制御層の液晶中に変化を引き起こすことにより、装置の透明性および/または色の変化を引き起こすための電気シグナルを提供するように構成されることができる。装置は、任意の適切なエレクトロクロミック材料、例えばエレクトロクロミックポリマー(例えばポリアニリン)、ビオロゲン、ポリオキソタングステン酸塩、酸化タングステン、酸化ニッケル、および/または二酸化タングステンを含むことができる。例示的エレクトロクロミック装置は、米国特許出願公開第7256923号明細書(この全ての内容を参照により本明細書中に取り込む)により詳細に記載されている。追加の例示的スマート窓は、Niklasson, G.A., and Granqvist, C.G., ”Electrochromics for smart windows: thin films of tungsten oxide and nickel oxide, and devices based on these”、J,. Mater. Chem., 17,127−156(2007)(この全ての内容を参照により本明細書中に取り込む)に、より詳細に記載されている。
【実施例】
【0104】
以下の例は、例示目的でのみ提示され、決して本発明の範囲を限定するものと見なしてはならない。
例1
【0105】
本発明の態様に従って、いくつかの例示的透明体が調製された。この透明体は、ポリマーフィルム上のインクジェットで印刷された複数の導電線と第2の結合フィルムとガラス基材とを共に積層して、積層した基材を形成することにより調製された。ポリマーフィルム上の例示的導電性メッシュは、CIMA Nanotech, Inc., Dontech, Inc.、Applied Nanotech HOldings, Inc., IanoMas Technolgies, Inc.およびFUJIFILM Dimatix, Inc.から得ることができる。積層前に、2つの導電性母線(幅1cm)を導電性メッシュ上に縦に適用して、ブレイド用の適用部位を提供した。これらのブレイド(braids)は、積層した透明性の抵抗を記録するために使用された。この具体例において、第2の結合層はポリウレタンを含有した。ポリマーフィルム上のインクジェットで印刷された複数の導電線により形成された導電性メッシュ、第2の結合フィルム、および基材を気密真空プラスチックバッグに入れ、次にこれを真空にした。ポリマーフィルム上のインクジェットで印刷された複数の導電線により形成された導電性メッシュと、第2の結合フィルムと、基材とを共に、約200°F〜約250°Fの範囲の温度で、約50psi〜約100psiの範囲の圧力で、約60分〜約90分の時間で積層して、積層した基材を形成した。
【0106】
被覆層と第1の結合フィルムとを共に積層して、積層した被覆層を形成した。この具体例において、被覆層はポリカーボネートを含み、第1の結合層はポリウレタンを含有した。被覆層と第1の結合フィルムとを気密真空プラスチックバッグに入れ、次にこれらを真空にした。被覆層と第1の結合フィルムとを共に、約200°F〜約250°Fの範囲の温度で、約120psi〜約150psiの範囲の圧力で、約1時間〜約2時間の時間で積層して、積層した被覆層を形成した。
【0107】
積層した被覆層と積層した基材を共に積層させて、例示的透明体を形成した。積層した被覆層と積層した基材とを気密真空プラスチックバッグに入れ、次にこれらを真空にした。積層した被覆層と積層した基材とを共に、約125°F〜約175°Fの範囲の温度で、約100psi〜約200psiの範囲の圧力で、約1時間〜約2時間の時間で積層して、例示的透明体を形成した。
【0108】
例1で調製した積層した試験片について、環境耐久性試験を実施した。各積層した試験片は、航空機の風防ガラスの特性を近似している。試験片の光学的特性も抵抗特性も実質的な劣化を示さなかった。環境耐久性試験の結果は、以下の表1に示される。試験片について行ったQUV試験と湿度試験は、抵抗と光透過率に実質的な劣化を示さない。さらに、インクジェットで印刷されたフィルムを有する積層した窓の結合引張強度は、1200psiであると測定された。結合強度を解析する目的で、各積層した試験片を2インチ×2インチの試料に切断した。エポキシ接着剤(9460 HYSOL)を使用して、各試料を2つのアルミニウムの立方体ブロック(2立方インチのサイズ)の間に付着させた。HYSOLは、Henkel Corporationの商標である。アルミニウムの立方体ブロックのそれぞれを、United Calibration Corp.の引張試験機を使用して、結合が破壊されるまで結合境界に垂直の方向に引っ張ることにより、結合強度が測定された。試験引っ張り速度は0.05インチ.粉であり、パソコンを使用して、引っ張り速度とデータ採取を制御した。
曇価と視感透過率試験
【0109】
例1で調製された6インチ×12インチの試験片を、ASTM D1003に従ってHaze−Gard Plus装置を使用して試験した。曇価(Haze)は、透明体の清澄性と透明性の尺度(透明体は多量の光を拡散してはならない)であり、視感透過率または可視光線透過率は、試料を通って透過する可視光線の量を示す。試験片は、68〜70%の可視光線透過率と3〜4%の曇価を示した。試験結果によると、この試験片は、天蓋、風防ガラス、および窓に必要な可視光線透過率と曇価(これらは、それぞれ65%以上と10%以下である)を満足する。
シート抵抗試験
【0110】
例1で調製された6インチ×12インチの試験片を、Guardian Manufacturing Inc.からの4点プローブ表面抵抗計を使用して試験した。導電性メッシュのシート抵抗は、積層前に0.15〜0.3Ω/□で、積層後に0.5〜0.48Ω/□であると測定された。
湿度試験
【0111】
例1で調製された6インチ×12インチの試験片を、122℃(50℃)で13週間、100%の結露湿度に暴露させた。湿度試験の前に、上記曇価および視感透過率試験により測定すると、試験片は69.3%の可視光線透過率と3.65%の曇価を示した。湿度試験後、上記曇価と視感透過率試験により測定すると、試験片は70%の可視光線透過率と3.61%の曇価を示した。試験結果によると、試験片の可視光線透過率と曇価は、湿度試験により大きくは変化しなかった。
湿度と太陽放射線(QUV)試験
【0112】
例1で調製された6インチ×12インチの試験片を、158°F(70℃)で8時間、紫外線(UV)に暴露させた。次に、試験片を122°F(50℃)で4時間、結露に暴露させた。このサイクルを全部で2,184時間(10週間)繰り返した。QUV試験の前に、試験片は、68.9%の可視光線透過率と3.87%の曇価を示した。QUV試験後、上記曇価と視感透過率試験により測定すると、試験片は、68.7%の可視光線透過率と3.76%の曇価を示した。表1から明らかなように、QUV試験は、この試験片の可視光線透過率と曇価を大きくは変化させなかった。
【0113】
上記試験結果の一部は以下の表1と表2に要約される。
【表1】
【表2】
熱サイクリングデータ
【0114】
積層した試験片の熱(温度)サイクリング試験を実施して、極端な気候条件(例えば−40°F〜150°F)下での試験片の環境耐久性を評価した。熱サイクリング試験において、導電性メッシュのバス対バス抵抗を、室温(RT)、20°F、0°F、−20°F、−40°F、室温、および150°Fで測定した。積層した試験片の−40°F〜150°Fの間の熱サイクリングは、20サイクル後に、シート抵抗への大きな影響は示さなかった。熱サイクリングの結果は、以下の表3に要約される。
【0115】
【表3】
【0116】
本発明をいくつかの例示的態様に関連して説明したが、本発明は開示された態様に限定されるものではなく、反対に、添付の特許請求の範囲の精神と範囲内に含まれる種々の変更態様および同等の構成およびその同等物を包含することが企図されると理解すべきである。
(態様)
(態様1)
基材と、
該基材上のポリマーフィルムと、
該ポリマーフィルム上のインクジェットで印刷された複数の導電線によって形成された導電性メッシュを含む、透明体であって、
少なくとも1つのインクジェットで印刷された導電線が、少なくとも1つの他のインクジェットで印刷された導電線と交差する、透明体。
(態様2)
該透明体が、電磁気干渉(EMI)シールドを提供するように構成されている、態様1に記載の透明体。
(態様3)
該インクジェットで印刷された複数の導電線が、少なくとも1つのインクジェットで印刷された導電線を電流が通る場合に、該透明体を加熱することによって、該透明体から氷を除く(de−ice)ように構成されている、態様1に記載の透明体。
(態様4)
該導電性メッシュが、約0.02〜約1、000Ω/□の範囲のシート抵抗を有する、態様1に記載の透明体。
(態様5)
該インクジェットで印刷された複数の導電線が、インクジェットで印刷された金属を含む、態様1に記載の透明体。
(態様6)
該インクジェットで印刷された複数の導電線が、Cu、Au、Ni、Agおよびそれらの組み合わせからなる群から選択された金属を含む、態様1に記載の透明体。
(態様7)
該ポリマーフィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、またはポリウレタンを含む、態様1に記載の透明体。
(態様8)
該基材が、ガラス、ポリアクリレート、ポリカーボネート、またはポリウレタンを含む、態様1に記載の透明体。
(態様9)
該ポリマーフィルム上の被覆層と、
該被覆層と該ポリマーフィルムとの間の第1の結合フィルムと、
該ポリマーフィルムと該基材との間の第2の結合フィルムと、
をさらに含む、態様1に記載の透明体。
(態様10)
該被覆層が、ガラス、ポリカーボネート、ポリアクリレート、またはポリウレタンを含む、態様9に記載の透明体。
(態様11)
該第1の結合フィルムが、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、またはシリコーンを含む、態様9に記載の透明体。
(態様12)
該第2の結合フィルムが、ポリウレタンまたはポリビニルブチラールを含む、態様9に記載の透明体。
(態様13)
該透明体が、約60%以上の可視光線透過率を有する、態様1に記載の透明体。
(態様14)
態様1に記載の透明体を含む、飛行体。
(態様15)
該導電性メッシュが第1の透明電極である、態様1に記載の透明体を含むスマート窓(smart window)であって、該スマート窓が、
該第1の透明電極上の透過率制御層であって、該スマート窓の該光線透過率を変えるように構成された透過率制御層と、
該透過率制御層上の第2の透明電極と、
をさらに含む、スマート窓。
(態様16)
基材であって、ガラス、ポリアクリレート、ポリカーボネート、またはポリウレタンを含む基材と、
該基材上のインクジェットで印刷された複数の導電線によって形成された導電性メッシュと、
を含む、透明体であって、
少なくとも1つのインクジェットで印刷された導電線が、少なくとも1つの他のインクジェットで印刷された導電線と交差する、透明体。
(態様17)
透明体を調製する方法であって、
ポリマーフィルムと基材とを共に積層させることを含み、
導電性メッシュが該ポリマーフィルム上にインクジェットで印刷された複数の導電線によって形成されている、方法。
(態様18)
該ポリマーフィルムと該基材とを共に積層させることが、被覆層と第1の結合フィルムと該ポリマーフィルムと第2の結合フィルムと該基材とを共に積層させることを含む、態様17に記載の方法。
(態様19)
該被覆層と該第1の結合フィルムと該ポリマーフィルムと該第2の結合フィルムと該基材とを共に積層させることが、
該ポリマーフィルムと該第2の結合フィルムと該基材とを共に積層させて積層した基材を形成させることと、
該被覆層と該第1の結合フィルムとを共に積層させて、積層した被覆層を形成させることと、
該積層した基材と該積層した被覆層とを共に積層させることと、
を含む、態様18に記載の方法。
(態様20)
該ポリマーフィルムと該基材とを共に積層させることが、約15分〜約5時間の範囲の時間で、約125°F〜約300°Fの範囲の温度で加熱することと、約50psi〜約220psiの範囲の圧力下でプレスすることとを含む、態様17に記載の方法。