(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
撮像素子と照明光を出射する照明光学系とが配設された先端部と、前記先端部から延設された軟性部と、を有する挿入部と、前記挿入部から延設された操作部と、前記軟性部を挿通している、前記先端部を冷却するための液体の循環流路を構成している少なくとも2本のチューブと、前記液体を循環するポンプと、前記液体を冷却する熱交換部と、を具備する内視鏡と、前記内視鏡と接続される前記照明光を発生する光源と、を含む内視鏡システムであって、
少なくとも1本の前記チューブが、前記液体がコアに充填されている液体コア型の光ファイバであることを特徴とする内視鏡システム。
【背景技術】
【0002】
半導体技術の進展によって、内視鏡の撮像素子のフレームレートおよび画素数が向上し、高品質の画像による患部観察が実現している。一方、撮像素子は、高性能化により発熱の増大を引き起こし、サーマルノイズの増大によって画像品質の向上が妨げられる問題が生じている。このため、内視鏡の撮像素子が配設されている先端部を冷却する機構が検討されている。
【0003】
また、高品質の画像を伝送するために、撮像素子が出力する電気撮像信号を光撮像信号に変換して光ファイバを介して伝送する内視鏡の開発が進んでいる。
【0004】
一方、光源が発生した照明光を、光ファイバを介して伝送し、照明光学系から出射する光伝送システムは、照明光学系が照明光により加熱され温度が上昇することがある。逆に、ズーム機能等の可動部を有する照明光学系は低温では可動部の動きが悪くなるおそれがあった。このため、光伝送システムは照明光学系が配設されている先端部を冷却したり加熱したりすることが検討されている。
【0005】
日本国特開2014−4228号公報には、挿入部の先端部に撮像素子を冷却するための冷却ブロックを配設した内視鏡が開示されている。冷却ブロックの流路は、挿入部を挿通する2本のチューブ(往路チューブおよび復路チューブ)と接続されている。2本のチューブの内部を循環する流体は、撮像素子の熱が伝熱する冷却ブロックで温度が上昇するが、循環する間に環境温度まで温度が低下する。
【0006】
しかし、上記内視鏡では先端部の冷却のために挿入部に2本のチューブを挿通するため、挿入部の外径が大きくなるおそれがあった。
【0007】
一方、日本国特開2010−194037号公報には、撮像素子が出力する電気信号を光信号に変換し、挿入部を挿通する光ファイバを介して光信号を伝送する内視鏡が開示されている。
【0008】
また、日本国特開平7−27927号公報には、コアが液体からなる液体コア型光ファイバが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1に本実施形態の光伝送システム1を示す。なお、以下の説明において、各実施形態に基づく図面は、模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、および夫々の部分の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係および比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、一部の構成要素の図示を省略する場合がある。
【0017】
光伝送システム1は、液体コア型の光ファイバ10と、チューブ20と、光源90から発生し光ファイバ10によって伝送した光を出射する照明光学系30と、ポンプ50と、熱交換部40と、を、具備する。すなわち、光伝送システム1は、先端部1Xに前方循環部15が配設されており、基端部1Zに後方循環部16およびポンプ50が配設されており、中間部1Yを光ファイバ10およびチューブ51が挿通している。
【0018】
なお、キセノンランプ、発光ダイオード、レーザーダイオード(LD)または垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)を有する光源90は、光伝送システム1の外部の構成要素であってもよい。
【0019】
液体コア型の光ファイバ10は、クラッド13を構成する透明チューブの内部(コア11)に透明な液体12が充填されている。例えば、屈折率1.34のフッ素樹脂からなるクラッド13は、可撓性を有する。液体12は、クラッド13よりも屈折率が高い、例えば、屈折率1.49のシリコーンオイルである。チューブ20は光ファイバ10のクラッド13と略同じ長さであるが、透明でなくともよい。なお、クラッド13の内径とチューブ20の内径とは、同じである必要はなく、仕様に応じて、それぞれ適宜、選択される。
【0020】
光源90が発生した光は、光ファイバ29で導光されて、透明な後方循環部16の光路を介して光ファイバ10の後方端面のコア11に入射する。光ファイバ10は、後方端面から入射した光を前方端面までコア11を介して効率良く伝送する。光ファイバ10の前方端面から出射された光は、前方循環部15の透明な光路15Gおよび照明光学系30を介して被写体(不図示)に照射される。液体コア型の光ファイバ10は、コアが固体の光ファイバよりも可撓性を有し、大光量の光を伝送しやすい。
【0021】
そして、光ファイバ10は、チューブ20と、前方循環部15と、後方循環部16と、チューブ51と、ポンプ50と、ともに閉ループの循環流路を構成している。
【0022】
すなわち、ポンプ50から吐出された液体12は、チューブ51および後方循環部16を介してチューブ20に流入する。そして、前方循環部15を介して、光ファイバ10のコア11に流入する。そして、後方循環部16に戻ってきた液体12は、チューブ51を介してポンプ50に流入する。
【0023】
なお、液体12の流れる方向は逆方向、すなわち、光ファイバ10からチューブ51に向かって流れてもよい。流路の途中に配設されている脱泡部(defoamer)52は、必須の構成要素ではないが、液体12に発生した泡を、例えば、浮力により液体12から分離する。
【0024】
照明光学系30で発生した熱は、照明光学系30が配設されている前方循環部15を介して液体12に伝熱される。そして、前方循環部15で加熱された液体12が流入する後方循環部16には、液体12を冷却する熱交換部である冷却部、例えばペルチェ素子が配設されている。
【0025】
熱交換部40は、例えば温度センサ(不図示)によって検出される液体12の温度が所定温度になるように制御される。後方循環部16で冷却された液体12は、チューブ20を介して再び前方循環部15に送液される。
【0026】
光伝送システム1は、光を伝送する光ファイバ10が冷媒である液体12の循環流路の一部を構成している。言い替えれば、光伝送システム1は、冷媒である液体12が循環する2本のチューブの一方が、光ファイバ10である。このため、導光のための光ファイバに加えて、さらに循環流路のためにチューブを2本配設する必要がない。このため、光伝送システム1の中間部1Yは細径である。
【0027】
液体12は、光ファイバ10のコア11としての特性と、冷媒としての特性とを、共に満たす必要がある。コア11としての特性は、既に説明したように、光透過率が高く、かつ、クラッド13よりも屈折率が高いことである。なお、冷媒として用いられるために、液体12は温度が変化する。このため、温度により屈折率が大きく変化しないことも液体12の重要な特性である。少なくとも、温度により屈折率が変化し小さくなっても、その屈折率が、その温度におけるクラッド13の屈折率よりも高い液体が選択される。例えば、40℃から90℃に温度が上昇しても、屈折率の低下が2%以下であることが好ましい。
【0028】
また、冷媒としては、熱伝導率および比熱が高く、粘度が低いことが好ましい。
【0029】
このため、液体12としては、塩化ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、エチレングリコール等の有機溶媒、シリコーンオイル等から、流路長等を考慮して選択される。特に、シリコーンオイルは、無色透明で、耐熱性、耐寒性、消泡性に優れる。また、シリコーンオイルは、広い温度範囲にわたって粘度変化および屈折率変化が少ない。シリコーンオイルは、例えば、40℃から90℃に温度が上昇しても、屈折率の低下は、1.3%程度である。
【0030】
クラッド13は、低屈折率透明プラスチック、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、含フッ素シリコーン樹脂、含フッ素アクリル樹脂または、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、などを用いる。なお、クラッド13は、少なくとも内壁が所定の厚さだけ透明であれば、それよりも外周部は不透明でもよい。
【0031】
光伝送システム1では、後方循環部16は、全体が透明材料、例えば、ガラスで構成されている。これに対して前方循環部15は光路部分15Gがガラス等の透明材料で構成されているが、それ以外の部分は金属等の不透明材料で構成されている。しかし、後方循環部16が前方循環部15と同じ構成でもよいし、逆に前方循環部15が後方循環部16と同じ構成でもよい。なお、特に光路部分の屈折率が液体12の屈折率と略同じであることが、反射損失が少ないため好ましい。
【0032】
前方循環部15および後方循環部16(以下、「前方循環部15等」という)は、光ファイバ10のチューブ51よりも熱伝導率の高い材料で構成されていることが好ましい。例えば、クラッド13が、熱伝導率が、0.25W/mKのフッ素樹脂からなる場合、前方循環部15等は、熱伝導率が、1W/mKのガラスからなることが効率的な伝熱のために好ましい。
【0033】
また、既に説明したように、前方循環部15は、光路部分15Gがガラスからなり、それ以外の部分がガラスよりも更に熱伝導率の高い不透明材料、例えば、熱伝導率が、15W/mKのステンレス、220W/mKのアルミニウム、285W/mKの窒化アルミニウム等で構成されている。
【0034】
前方循環部15等の内部の流路は、熱交換を効率的に行うために、光路となる部分を確保したうえで、内壁面積を増加するために、分岐していたり、凹凸が形成されていたりしてもよい。
【0035】
ポンプ50は、液体12を送液できれば、公知の各種のポンプを用いることができる。特に、圧電振動子を駆動源とする圧電ポンプは小型で送液圧力が高いため、好ましく用いることができる。
【0036】
また、液体12として、デカンニ酸ジブチル(dibutyl decanedioate)等の電解共役流体(Electro-conjugate Fluid)を用いた場合には、液体に電圧を印加する一対の電極がポンプ50となる。
【0037】
なお、熱交換部40は、空冷による冷却部でもよい。また効率的に空冷するために、後方循環部16には、例えば表面積を増加するための金属からなるフィンが配設されていてもよい。
【0038】
また、光ファイバ10およびチューブ51(以下、「光ファイバ10等」という。)を収納している外装部材(不図示)が、高熱伝導率材料からなる場合には、光ファイバ10等の外面を外装部材の内面と接触させておくことで、外装部材を介して外部に放熱するようにしてもよい。
【0039】
また、光ファイバ10とチューブ51とを束ねる結束部材により、循環路の間、すなわち、光ファイバ10とチューブ51との間で伝熱されるようにしてもよい。また、結束部材を高熱伝導率材料により構成し、結束部材を介して放熱するようにしてもよい。さらに、光ファイバ10等の外面を高熱伝導率材料によりコーティングすることで、光ファイバ10等の外面からの放熱を促進することもできる。
【0040】
<第1実施形態の変形例>
次に第1実施形態の変形例の光伝送システム1A、1Bについて説明する。光伝送システム1A、1Bは、光伝送システム1と類似し同じ効果を有しているので同じ構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0041】
<第1実施形態の変形例1>
図2に示すように、変形例1の光伝送システム1Aは、光伝送システム1が有するチューブ20に替えて、光ファイバ10と同じ構成の液体コア型の光ファイバ20Aを有する。そして、光ファイバ10、20Aが、閉ループの循環流路を構成している。
【0042】
光伝送システム1Aは、発光ダイオード(LED)からなる2つの光源90A1、90A2を有する。光源90A1が発生した照明光は光ファイバ29を介して、後方循環部16に入射する。光源90A2が発生した照明光は光ファイバ29Aを介して、後方循環部16に入射する。
【0043】
光ファイバ10は光源90A1が発生した照明光を伝送し、照明光は、前方循環部15A、照明光学系30A1およびミラー31Aを介して被写体(不図示)に照射される。一方、光ファイバ20Aは光源90A2が発生した照明光を伝送し、照明光は、前方循環部15A、照明光学系30A2およびミラー31Bを介して被写体(不図示)に照射される。
【0044】
照明光学系30A1および照明光学系30A2は、前方循環部15Aに配設されている。このため、照明光学系30A1および照明光学系30A2が発生した熱は、前方循環部15Aに伝熱される。先端部1Xの前方循環部15Aは冷媒である液体12で冷却される。
【0045】
このため、照明光学系30A1および照明光学系30A2の温度が過度に上昇することはない。また、冷媒の循環流路専用のチューブを配設する必要がないため、光伝送システム1Aは冷媒が循環する中間部1Yが細径である。
【0046】
すなわち、光伝送システム1Aは、光伝送システム1の効果を有し、さらに、2つの光源90A1、90A2の発生した照明光を、それぞれの光ファイバ10、20Aが伝送するため、より強い照明光を被写体に照射できる。
【0047】
また、例えば、2つの光源90A1、90A2が異なる波長の照明光を発生し、ミラー31A、31Bの操作等により、被写体に照射する照明光の波長を切り替えるように構成されていてもよい。
【0048】
なお、光源90A1だけを点灯し、光源90A2を消灯した場合には、光ファイバ20Aは照明光を導光することなく、液体12の循環流路としてだけ機能する。同様に光源90A1だけを有する光伝送システムでは、光ファイバ20Aは、光伝送システム1のチューブ20(
図1参照)の替りに使用される。また、1つの光源だけを有する光伝送システムにおいて、光源が発生した照明光を2分岐して、一方の照明光を、光ファイバ10を介して伝送し、他方の照明光を、光ファイバ20Aを介して伝送してもよい。
【0049】
<第1実施形態の変形例2>
図3に示すように、変形例2の光伝送システム1Bは、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)を有する光源90A3と、照明光学系30A3と、ミラー33と、受光光学系70と、PD等の受光素子71と、を有する。光源90A3が発生した照明光は、光ファイバ29、後方循環部16、光ファイバ10、前方循環部15Aおよび照明光学系30A3を介してミラー33に到達する。ミラー33は、照明光学系30A3から出射されるスポット照明光をスキャン走査する。スポット照明光によりスキャン照射された被写体からの反射光は、受光光学系70、前方循環部15A、光ファイバ20A、後方循環部16および光ファイバ29Aを介して受光素子71に伝送される。受光素子71が出力する信号は、プロセッサ(不図示)において照射光の走査パターンに応じて処理され、被写体の画像が作成される。
【0050】
熱交換部40Bは、熱媒体(heating medium)である液体12を加熱するヒータ等を有する加熱部である。すなわち、光伝送システム1Bでは、光ファイバ10、20Aを循環する液体12は、部材の温度を下げるための冷媒ではなく、部材の温度を上げるための熱媒に用いられる。
【0051】
受光光学系70は可動レンズを有するズーム光学系である。そして、受光光学系70は前方循環部15を介して加熱される。
【0052】
光伝送システム1Bは、光伝送システム1、1Aの効果を有し、さらに、先端部1Xの受光光学系70を、循環流路を循環する液体12により加熱できるため、例えば、低温環境であっても効率良く可動レンズを駆動できる。
【0053】
なお、光伝送システム1Bと類似した構成で、受光だけを行う光伝送システムであっても、光伝送システム1Bと同じように、先端部1Xを加熱できることは明らかである。
【0054】
また、先端部1Xに受光素子を配設し、反射光を電気信号に変換し、基端部1Zまで信号ケーブルを介して伝送を行ってもよい。
【0055】
実施形態の光伝送システムは、その仕様に応じて、3本以上の液体コア型の光ファイバを有していてもよい。さらに、例えば、2本の液体コア型の光ファイバで循環流路の往路を構成し、1本のチューブで循環流路の復路を構成してもよい。
【0056】
以上の説明のように、実施形態または変形例の光伝送システムは、光を出射する照明光学系、光を受光する受光光学系、及び、光を発生する発光素子、の少なくともいずれかが配設された先端部と、前記先端部を加熱または冷却する熱媒体である液体を加熱または冷却する熱交換部と、前記液体を循環するポンプと、が配設された基端部と、前記基端部から前記先端部に前記液体を送液する第1の流路と、前記先端部から前記基端部に前記液体を送液する第2の流路と、が挿通している中間部と、を具備する光伝送システムであって、前記第1の流路または前記第2の流路の少なくともいずれかが、前記先端部と前記基端部との間で光を伝送する、液体コア型の光ファイバである。
【0057】
<第2実施形態>
次に第2実施形態の内視鏡2および内視鏡システム9について説明する。内視鏡2および内視鏡システム9は、光伝送システム1と類似した光伝送システムを有しているので、同じ構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0058】
図4に示すように、内視鏡システム9は、内視鏡2と、光源92と、プロセッサ93と、を有する。光源92は、キセノンランプ等から照明光を出射する。プロセッサ93は、内視鏡システム全体の制御を行うと同時に、内視鏡2からの撮像信号を処理し内視鏡画像を生成する。
【0059】
内視鏡2は、挿入部60と、挿入部60の基端部側に配設された操作部64と、操作部64から延設されたユニバーサルコード66と、ユニバーサルコード66の基端部側に配設されたコネクタ67と、を具備する。
【0060】
挿入部60は、先端部61と、先端部61の方向を変えるための湾曲部62と、湾曲部62から連設された可撓性の細長い軟性部63と、からなる。操作部64には湾曲部62を操作するアングルノブ65が配設されている。コネクタ67は光源92およびプロセッサ93と接続される。なお、内視鏡2としては、湾曲部62および軟性部63に替えて非可撓性の細長い直管を有する硬性鏡であってもよい
【0061】
光源92が発生した照明光はユニバーサルコード66を挿通している。光ファイバ29を介して操作部64まで伝送される。光ファイバ29は複数の細い光ファイバが束ねられた光ファイババンドルであってもよい。
【0062】
操作部64にはポンプ50が配設され、先端部61には照明光学系が配設され、光ファイバ10およびチューブ20が挿入部60を挿通している。なお、ポンプおよび後方循環部は、コネクタ67または光源92に配設されていてもよい。
【0063】
図5に示すように、内視鏡2の先端部61には、受光光学系70と撮像素子であるイメージセンサ72と、が配設されている。イメージセンサ72は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサであるが、CCD(Charge Coupled Device)を用いてもよい。イメージセンサ72が出力する撮像信号は、メタル配線である信号ケーブル73を介してプロセッサ93に伝送される。
【0064】
光伝送システム1と同じように、光ファイバ10は、チューブ20と、前方循環部15Dと、後方循環部16と、チューブ51と、ポンプ50と、ともに閉ループの循環流路を構成している。熱交換部40は、ペルチェ素子等を有する冷却部である。
【0065】
ポンプ50から吐出された液体12は、チューブ51および後方循環部16を介してチューブ20に流入する。そして、前方循環部15Dを介して、光ファイバ10のコア11に流入する。そして、後方循環部16に戻ってきた液体12は、チューブ51を介してポンプ50に流入する。
【0066】
光源92が発生した照明光は、光ファイバ29、後方循環部16、光ファイバ10、前方循環部15D、レンズ39、照明光学系30を介して被写体に照射される。被写体からの反射光は、受光光学系70を介してあるイメージセンサ72に入射する。
【0067】
イメージセンサ72は、それ自体が発熱素子であるが、イメージセンサ72は温度が上昇するとサーマルノイズの増大によって画像品質の向上が妨げられる。また、先端部61に配設された照明光学系も、光散乱により発熱する。イメージセンサ72および照明光学系の発熱による先端部61の温度上昇は、内視鏡の適用範囲を限定する。例えば、医療用の内視鏡では、生体を損傷しないように先端部の最高温度が規定されている。
【0068】
内視鏡2では、先端部61および先端部61に配設されたイメージセンサ72は前方循環部15Dを介して熱が効率的に伝熱される。
【0069】
そして、冷媒である液体12が循環する循環流路のチューブとして、光ファイバ10を用いている。
【0070】
すなわち、実施形態の内視鏡2は、撮像素子が配設された先端部と軟性部とを有する挿入部と、前記挿入部から延設された操作部と、前記軟性部を挿通している、前記先端部を冷却するための液体の循環流路を構成している少なくとも2本のチューブと、前記液体を循環するポンプと、前記液体を冷却する熱交換部と、を具備し、少なくとも1本の前記チューブが、前記液体がコアに充填されている液体コア型の光ファイバであることを特徴とする内視鏡。
【0071】
このため、内視鏡2は、循環流路のためだけに2本のチューブを配設する必要がない。このため、内視鏡2および内視鏡2を有する内視鏡システム9は、効率的に内視鏡2の先端部61を冷却できるが、挿入部60は細径である。
【0072】
なお、
図6に示すように、イメージセンサ72は受光面と対向している裏面が、例えば、シリコン粒子を含む高熱伝導率接着層72Aにより前方循環部15Dに接着されている。前方循環部15Dは、光路となる透明部材(ガラス)15Gの部分を除いてアルミニウム等の導電性材料で構成されている。
【0073】
なお、
図7に示すように、先端部61に駆動ICのような発熱部品75を有する場合には、前方循環部15Eに発熱部品75が実装される配線層75Aを形成し、発熱部品75が発生する熱を、前方循環部15Eを介して冷媒である液体に12に伝熱するようにしてもよい。なお、配線層75Aが形成される部分が導電体からなる前方循環部15Eの場合には、絶縁層を介して配線層75Aが形成される。
【0074】
また、実施形態の内視鏡では、光伝送システム1A等のように、2本の液体コア型の光ファイバを用いて光源92からの照明光を導光してもよいし、2つの光源からの照明光を導光してもよいし、さらに、波長の異なる2種類の照明光を導光してもよい。
【0075】
<第2実施形態の変形例>
次に第2実施形態の変形例の内視鏡について説明する。変形例の内視鏡は、第2実施形態の内視鏡2と類似しているので、同じ構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。なお、
図8等では、照明光関係の構成要素は図示していない。
<第2実施形態の変形例1>
図8に示すように、内視鏡システム9Aの内視鏡2Aの先端部61には、イメージセンサ72が出力する電気撮像信号を光撮像信号に変換する発光素子であるレーザーダイオード(LD)74が配設されている。イメージセンサ72が出力する電気撮像信号がアナログ信号の場合には、電気撮像信号はAD変換部(不図示)によりデジタル信号に変換され、更にLDドライバ(不図示)によりLD74を点滅するLD駆動信号に変換される。
【0076】
内視鏡2Aでは、電気撮像信号はLD74により光撮像信号に変換されて、レンズ76、前方循環部15、光ファイバ10、および後方循環部16を介して操作部64まで伝送される。そして、操作部64に配設された受光素子であるPD71により光撮像信号は再び電気撮像信号に変換され信号ケーブル79を介してプロセッサ93に伝送される。
【0077】
なお、レンズ76はLD74が発生する光撮像信号を効率良く、伝送するために配設されている。レンズは、PD71への入射経路にも配設されていてもよい。
【0078】
内視鏡2Aは、光ファイバ10を介して撮像信号を伝送するため大容量のデータを効率良く送信できる。また、内視鏡2と同じように、光ファイバ10が、イメージセンサ72を冷却するための循環流路の一部を構成しているため、挿入部60が細径である。
【0079】
<第2実施形態の変形例2>
図9に示すように、変形例2の内視鏡2Bは、光ファイバ10、20Aを有し、先端部61には、発光素子であるLD74および受光素子であるPD77が配設され、操作部64には受光素子であるPD71および発光素子であるLD78が配設されている。イメージセンサ72の裏面は前方循環部15Bに接着されている。
【0080】
プロセッサ93から信号ケーブル19Bを介して伝送された電気制御信号がLD78に入力する。LD78は、電気制御信号、例えば、クロック信号を、光制御信号(光クロック信号)に変換する。光クロック信号は、光ファイバ20A等を介して先端部61に伝送される。PD77は光クロック信号を、電気制御信号に光電変換し、TIA(Transimpedance Amplifier)およびLA(Limiting Amplifier) (ともに不図示)を経てイメージセンサ72に供給する。
【0081】
LD74は、イメージセンサ72から入力された電気撮像信号を光撮像信号に変換する。光撮像信号は、光ファイバ10等を介して操作部64に伝送される。PD71は、光撮像信号を電気撮像信号に光電変換し、電気撮像信号は信号ケーブル79を介してプロセッサ93に伝送される。
【0082】
内視鏡2Bは、光ファイバ10、20Aを介して光信号を送受信し、かつ、光ファイバ10、20Aを循環流路として、撮像素子であるイメージセンサ72を冷却する。挿入部60は、2つの機能を有する、光ファイバ10、20Aが挿通しているので細径である。
【0083】
なお、
図10および
図11に示す変形例2の前方循環部15Cのように、撮像素子ではなく、PD77、VCSEL74Aおよび発熱部品75を冷却するように構成されていてもよい。前方循環部15Cの構想およびPD77等の配置は、光伝送および伝熱を考慮して適宜、設定される。
【0084】
<第2実施形態の変形例3>
循環流路であるチューブ(光ファイバ)を熱交換部または補助熱交換部として用いてもよい。すなわち、環境温度よりも高い液体12は、循環中に冷却することも可能である。
【0085】
例えば、
図12に示す変形例3の光ファイバ10は、外面が熱伝導率の高い材料からなる放熱膜18で覆われている。放熱膜18は、例えば、アルミニウム、スズ等の延性に優れた金属からなるため、光ファイバ10の可撓性を損なうことがない。前方循環部15で環境温度以上に加熱された液体12は、復路の光ファイバ10においても放熱膜18を介して放熱される。
【0086】
<第2実施形態の変形例4>
図13に示す変形例4の2本の光ファイバ10、20Aは、結束部材18Aにより束ねられている。このため、光ファイバ10と光ファイバ20Aとの間、すなわち、前方循環部15で加熱された液体12と後方循環部16で冷却された液体12とは、循環流路において熱交換が行われる。
【0087】
<第2実施形態の変形例5>
図14に示す変形例5の光ファイバ10は、挿入部60において、外皮62Aの内側の金属からなる網状管と当接するように配設されている。
【0088】
<第2実施形態の変形例6>
図15に示す変形例6の光ファイバ10は、挿入部60において、外皮62Aの内側の金属からなる網状管と当接している固定部材68により固定されている。
【0089】
<第2実施形態の変形例7>
図12〜
図15に示す構成の変形例の内視鏡は、循環流路である光ファイバ10、20Aの外面を介しての伝熱を促進することで、より効率的に冷却を行うことができる。
【0090】
本発明は、上述した実施形態及び変形例等に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、組み合わせ及び応用が可能である。