【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち、本発明の第1の態様では、金属支持型固体酸化物燃料電池用の電解質を形成する方法であって、工程a〜d:
a.ドープセリア粉末を必要に応じて焼結助剤及び溶媒と組み合わせてスラリーを形成する工程;
b.前記スラリーをアノード層に適用する工程;
c.乾燥させてグリーン電解質を形成する工程;及び
d.前記グリーン電解質を焼成して焼結電解質を形成する工程;
のうちの1つまたは2つ以上を含み、工程bにおけるスラリーが、二峰性粒度分布、15〜40m
2/gの範囲内のBET表面積、球状形態、または、それらの組み合わせから選ばれた物理的特性を有するドープセリア粉末を含む方法が提供される。
【0017】
多くの場合、当該方法は、工程aおよびbを含み、必要に応じて工程cまたはdのうちの1つも含み、多くの場合、緻密で気密なドープセリア電解質を提供するために工程a〜工程dのうちのいずれか2つまたは3つ以上の組み合わせ、あるいは、工程a〜dの全てを使用する。さらに、工程bのスラリー中に存在するドープセリア粉末は、多くの場合、二峰性粒度分布、20〜40m
2/gの範囲内のBET表面積、および球状形態から選択される1つより多くの物理的特性を有し、多くの場合、電界質の最適な緻密化をもたらすために、これらの物理的特性の3つすべてが存在する。
【0018】
より具体的には、理論密度の95%を超える密度を有する電解質を製造することが可能であり、例えば95〜100%の範囲内、多くの場合95.1、97または98〜100%の密度を、特許請求の範囲に記載の方法を使用して達成することができる。これにより、空隙率が減少し、そのため、ガス透過性が低下し、したがって、電解質は気密である。さらに、理論密度に対してそのような高い百分率である電解質密度を達成することによって、電解質が非常に低いレベルにすぎない微視的な空隙を有することになり、その結果、焼結時にクラック(したがって破損)が生じにくくなる。
【0019】
ドープセリアグリーン電解質(doped-ceria green electrolyte)は、多くの場合、例えばガドリニウムドープセリア(例えばCe
0.9Gd
0.1O
1.95(CGO10)など)またはサマリウムドープセリア(例えばCe
0.9Sm
0.1O
1.95など)などの高い酸素伝導度を有するドープセリアから形成される。多くの場合、ドープセリアのグリーン電解質はCGO(ガドリニウムドープセリア)から形成される。多くの場合、ドープセリアは、最初は粉末の形態にあり、そのため、初期プロセス工程はドープセリア粉末の提供であろう。多くの場合、粉末は、1つのピークがおよそ0.45μmに位置し、1つのピークがおよそ1.6μmに位置する二峰性粒度分布を有する。
【0020】
ドープセリア粉末は、多くの場合、形成されるグリーン電解質層の良好な焼結を確実にするために、所定の表面積を有する。多くの場合、ドープセリア粉末は、15〜40m
2/gの範囲内のBET表面積を有し、より多くの場合20〜35m
2/g、より一層多くの場合24〜28m
2/gの範囲内のBET表面積を有する。ミリング(milling)が使用される場合でも、粉末のBET表面積はこの範囲内にあることが一般的である。表面積の減少は系のエネルギー状態を低下させるため、グリーン電解質層の焼結のための熱力学的駆動力は、利用可能な表面積によって大きく駆動される。そのため、より大きな比表面積を有する粉末ほど、任意の所定温度で、より容易に焼結する。しかしながら、大きな比表面積を有する粉末はかなりのナノスケール空隙率を有する傾向があり、そのため、充填が不十分であり、その結果、低いグリーン密度をもたらす。セラミック加工において、グリーン密度は、焼結前の、セラミックへの前駆体として使用される粉末成形体の密度を指す。グリーン密度は、通常、同じ質量の空隙率のないセラミック材料の理論密度の百分率として表される。低いグリーン密度を有するグリーン粉末成形体は、より収縮して最大限の密度を達成する。これは、部分的に焼結されたセラミックが収縮する際に部分的に焼結されたセラミック中に発生する高い応力のために問題を引き起こすおそれがあり、潜在的にクラック発生による破損をもたらす可能性がある。そのため、高いBET比表面積を有する粉末を使用すること、ひいては焼結性と、収縮を最低限に抑えてクラック発生を防止するのに必要な高いグリーン密度を達成することとの間でとるべきバランスがある。粉末のBET表面積の範囲は、粉末の十分な焼結性を可能にするのに十分高いが、サイズが小さすぎる(個々の表面積が大きすぎる)粒子の間に現れる隙間を最低限に抑えるのに十分に低く、理論密度の少なくとも50%のグリーン電解質の密度を確実に得ることができるように選択される。
【0021】
グリーン密度が理論密度の少なくとも50%である場合、理論密度の95%を超える最終焼結電解質密度を達成することが容易であり、気密で堅牢な電解質の提供が確保される。上記所定範囲外のBET表面積を有するドープセリア粉末を使用すると、焼結層の不十分な緻密化またはクラックが生じることがある。
【0022】
多くの場合、粉末は、硝酸セリウムとドーパントの硝酸塩との溶液から、例えば炭酸アンモニウムなどの塩基を使用して、ドープセリアへの前駆体の共沈により製造される。次に、この前駆体(典型的にはドープされたヒドロキシ炭酸セリウム)を分離し、乾燥させ、か焼して、ヒドロキシ炭酸塩のアモルファス酸化物への熱分解とその後の結晶化を通じて、所望のドープセリア粉末を形成する。ドープセリアがCGOである場合、結晶化によって、単相立方晶蛍石型結晶が形成される。この方法は、ほぼ球状の形態を有し、不規則形状の粒子をほとんど有さない粉末を使用することが一般的に望ましいため、有利である。多くの場合、共沈法が使用されるが、ほぼ球状の形態を有する粒子を生成する任意の方法を使用することができる。代わりに、製造後に粉末を加工して粒子形状を改変し、球状粒子を製造してもよい。
【0023】
球状形態を有する粒子の1つの利点は、粒子の改善された充填であり、これは、本発明の方法で使用される低い(セラミック加工の標準で)焼結温度での高密度電解質の提供を助ける。この方法により製造された粉末は、ほぼ球状の形態を有するため、このドープセリア粉末製造方法が多くの場合採用される。本明細書で使用される場合、用語「ほぼ球状」は、全体的な形態を記述することを意図している。当業者によって理解されるように、かかる粒子は通常の公差内で球状であり、この形状から顕著に歪んでいない。さらに、粒子のほとんど全てが「ほぼ球状」であり、例えば、粒子の90〜100%が球状であり、多くの場合、バルク粒子の95〜100%または98〜100%のバルク粒子が「ほぼ球状」の形態を有する。
【0024】
スラリーは、一般的に焼結助剤を含み、多くの場合、焼結助剤は、遷移金属酸化物(TMO)粉末(多くの場合、Co
3O
4またはCuO)を含む。なぜなら、これらのTMOは優れた焼結促進性を提供するからである。焼結助剤は、全カチオンの0.5〜5モル%の範囲内、より多くの場合0.75〜3モル%の範囲内、より一層多くの場合1〜2モル%の範囲内のレベルで存在してもよい。このレベルは、材料の電気的特性を変えずに緻密化を増進する必要性の均衡を保つ。本発明の方法では、焼結助剤は、典型的には、粉末状であり、ドープセリアと混合される。この場合、典型的には、焼結助剤はCGOと同等の粒度を有するものであるか、あるいは、CGOよりも小さい粒度を有する。これによって、TMOをCGOと均一に混合することができ、焼結によって単一相の形成がもたらされる。しかし、焼結助剤の硝酸塩を硝酸セリウム及びドーパントの硝酸塩と共沈させることによりドープセリア製造プロセス中にドープセリア粉末に焼結助剤を組み込むことによって、焼結助剤をドープセリア粉末と組み合わせてもよい。あるいは、ドープセリアに、例えばエタノールなどの非水性溶媒中の焼結助剤の硝酸塩の溶液をドープした後、乾燥および熱分解して硝酸塩を焼結助剤に分解することによって、焼結助剤をドープセリアに添加することができる。このプロセスは、分解プロセス中に有毒な窒素酸化物が放出されるために好ましくないが、その利点が窒素酸化物の排出の問題を上回るような状況で使用できる。焼結助剤とドープセリアとを組み合わせる別の可能な方法は、ドープセリア粉末を焼結助剤の硝酸塩の水溶液と混合した後、例えば炭酸ナトリウムなどの適切な塩基を使用して焼結助剤の水酸化物又は炭酸塩を析出させることである。次に、粉末を洗浄し、乾燥させ、か焼して、焼結助剤の炭酸塩または水酸化物をその酸化物に分解させる。全ての場合において、焼結が均一に増進されるように、焼結助剤をドープセリアと均一に混合することを意図する。
【0025】
場合によっては、このプロセスは、さらに、インクからドープセリアのグリーン電解質を形成する追加の工程を含む。多くの場合、インクはスクリーン印刷可能なインクであるが、当業者は、加圧ジェット適用またはフロー適用を含む多岐にわたる方法を使用してインクを適用できることを理解するであろう。これは、多くの場合、ドープセリア粉末と焼結助剤(焼結助剤が存在しなくてもよいが)との混合と、その後のスラリー形成を通じて行われる。必要に応じて、溶媒の分散を高めるために、分散剤も存在する。分散剤は、多くの場合、CGOの質量に対して5〜15%の範囲内で存在する。スラリー中に使用される溶媒は、無機顔料を含むスクリーン印刷インクを製造するのに好適な多岐にわたる溶媒から選択することができるが、多くの場合、低い揮発性(そのため、インクは付着前に乾燥しない)、限られた極性、及びインクに必要なレオロジー特性を付与するのに必要なポリマーとの良好な混和性を有する溶媒である。適切な溶媒としては、テキサノール(Texanol)(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)、テルピネオール、ブチルカルビトール、水およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、粒子表面上での水と水酸基との間の水素結合形成により金属酸化物粉末の分散が困難であり、粒子の凝集を引き起こすので、水が最も好ましくない。
【0026】
スラリーは、およそ0.15μm、多くの場合、0.1〜0.4μmまたは0.15〜0.35μmの範囲内の1つのピークと、およそ1.0μm、多くの場合、0.5〜1.5μmまたは0.75〜1.25μmの範囲内の1つのピークとを有する二峰性(bimodal)粒度分布(Malvernマスターサイザー(mastersizer)を使用して、テキサノール(Texanol)中に分散された粉末を測定した場合)を有することができる。多くの場合、支配的なピークがあり、多くの場合、これはおよそ0.3μmにあるピークであり、支配的なピークが存在する場合、二次ピークは、多くの場合、およそ1.0μmにあるピークである。二峰性粒度分布は、グリーン電解質の焼結を増進し、緻密でクラックのない電解質層をもたらす。理論に束縛されるわけではないが、これは、より大きな粒子の集団の存在が粒子の堆積を助長し、それによりグリーン電解質層の充填および強度を助長するため、単峰性粒度分布によるよりも二峰性粒度分布によって、達成するのがより容易であると考えられる。
【0027】
いくつかの例では、二峰性粒度分布は、スラリーをミリングすることによってもたらされる。典型的には、これはアトリッションミリング(attrition milling)によるものである。スラリーをミリングすることのさらなる利点としては、ドープセリア粉末の粒度の減少、および存在する任意の焼結助剤の粒度の減少が挙げられる。ミリングプロセスは、存在する任意の焼結助剤をドープセリア粉末と共に均一に分散させるという利点も有する。焼結助剤は、存在する場合、粒度が、多くの場合、例えば0.1〜0.9μmの範囲内、多くの場合、0.3〜0.6μmの範囲内のサブミクロンレベルまで減少する。
【0028】
したがって、本発明の方法は、必要に応じて二峰性粒度分布を生成させるために、スラリーをミリングする追加の工程を含んでもよい。好適なミリングプロセスとしては、ビーズミリング、振動ミリング、バスケットミリング、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。これらは全て、非常に硬いセラミックビーズをスラリーに加え、ビーズが互いに連続的に衝突するように機械的エネルギーを加え、衝突するビーズ間に粉末が捕捉されたときに粉末を分解することを伴う。ビーズが存在する場合、ミリングが完了した後にビーズをスラリーから除去する工程が存在してもよい。
【0029】
スラリーをスクリーン印刷可能なインクに変換するために、必要に応じて、ミリング後に有機ポリマーをスラリーに加えてもよい。典型的に使用される有機ポリマーとしては、バインダー(多くの場合1〜5質量%の範囲内)、分散剤(ミリング段階で添加されない場合)、プリントのレベリングを促進するため並びに製造中および印刷中のインクからの気泡の放出を促進するために界面活性剤(多くの場合0.05〜5質量%の範囲内)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。バインダーは、有効な印刷にとって重要な、インクのチキソトロピー性を増加させるためにインクの流動性を変えることと、印刷層が乾燥する際に印刷層中の粒子を結合してクラック発生を防いで乾燥したグリーン粉末成形体にある程度の強度を与えることの2つの役割を果たす。好適なバインダーとしては、ポリビニルブチラール(PVB)およびエチルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。好適な分散剤および界面活性剤は、一般的に、Byk−Chemie、BASF、TEGOまたはSchwegmannなどの会社によって供給されている専売の添加剤である。インクの形成は、多くの場合、添加剤の溶解を必要とする。これは、例えば高速分散機(HSD)などの適切な高剪断分散混合プロセスの使用によるものであり得るが、他の方法を使用してもよい。三本ロールミルを使用してインクをさらに均質化することができる。インクの形成は、アノード層上へのドープセリアの堆積をより容易にする。
【0030】
多くの場合、電解質/スラリーの堆積に先立って、アノード層が金属基材に適用される。金属は、金属支持型SOFCに一般的に使用されているいかなる金属基材であってもよいが、本発明では、金属基材は、多くの場合、英国特許第2,368,450号明細書に記載されているような非穿孔領域によって囲まれた穿孔領域を含む。英国特許第2,368,450号明細書の開示内容、特に、このタイプの金属支持型SOFCの基本的な構成に関する開示内容は、引用により本明細書に援用する。これらの設計では、アノードは、穿孔領域上に配置され、この構成は、穿孔(多くの場合レーザー穿孔)領域を介してアノードへのガスアクセスを提供する。多くの場合、金属基材は、ステンレススチール基材であり、多くの場合、フェライト系ステンレススチールである。なぜなら、フェライト系ステンレススチールは、最も一般的に使用されているドープセリアであるGDCに類似の熱膨張係数を有し、それにより加熱/冷却サイクルの間の半電池内の応力を減少させるからである。
【0031】
グリーン電解質層は、多くの場合、アノード層上へのインクの堆積によって形成される。多くの場合、これは、インクをアノード層上にスクリーン印刷することによって行われる。典型的には、スクリーン印刷された電解質層は、アノード層を覆い、アノード層の縁部と重なり、電解質層が、アノード層によって覆われていない金属基材の一部または全部を覆う。
【0032】
アノード層も、典型的には、インクとしてアノード材料を配合することによって形成され、多くの場合、スクリーン印刷によって堆積される。必要に応じて、電解質堆積前にアノード層を焼結して多孔質セラミック複合体(アノード)を形成する。しかし、本発明は、グリーンアノード上へのグリーン電解質の堆積や、アノード層がグリーンアノード層であり、グリーンアノード層とグリーン電解質が単一焼成工程で焼結されるというような両層の共焼結を排除しない。共焼結は、高品質の電解質層を形成することを困難にし得るので、多くの場合、逐次焼結が使用されるが、共焼結は、製造コストの観点から有利であり得る。場合によっては、グリーン電解質は、アノード層上にドープセリア電解質を層状に適用し、各層の適用の間に乾燥させることによって形成された複数の電解質層を含む。これは、単一の「厚い」層をアノード層上に適用することによって生じる構造的制御の損失なしに、より厚い電解質を形成することをもたらす。典型的には、電解質層は1〜20μmの範囲内にある。
【0033】
多くの例において、グリーン電解質からいかなる溶媒および有機物も除去する工程が存在するが、典型的には、かかる除去は、グリーン電解質を形成するための乾燥後であり、溶媒を蒸発させることを含む。この工程は、多くの場合、堆積がインクまたはスラリーを堆積させるものである場合に存在する。これは、多くの場合、100〜250℃または150〜200℃の範囲内の温度で、多くの場合5〜20分間の範囲内の時間で行われ、この後では、溶媒が除去されていることが多い。この方法のこの特徴は、使用される場合、バインダーを設定することのさらなる利点を有する。典型的には、熱を提供するためにオーブンが使用される。
【0034】
この工程は、追加的にまたは代替的に、有機物が分解するまでグリーン電解質を加熱する工程を含んでもよい。当業者は、これを達成する方法を理解するであろうが、加熱は、多くの場合、250〜500℃または300〜400℃の範囲内の温度で行われ、分解が起こるまで温度がこの温度範囲内に維持される(ほぼ一定の温度またはこの範囲内での可変)。これは、多くの場合、10〜60分間の範囲内の時間であり、この後では、有機物が燃焼/昇華してグリーン電解質から除去されている。典型的には、オーブンまたは炉が熱を供給するために使用される。有機物は、典型的には、バインダー、分散剤ポリマーおよび界面活性剤ポリマーであり、これらは、ドープセリア粒子や、存在する場合には焼結助剤の粒子を被覆する。有機物を分解し(「燃焼」)、これをインクから除去してドープセリアおよび存在する任意の焼結助剤だけを残存させることによって、電解質をより緻密にすることができる。これは、他の材料が存在しない場合、ドープセリア粒子を互いにより接近させることができるからである。
【0035】
グリーン電解質をプレスしてグリーン層、ひいては焼成電解質の密度を高めるプレス工程があってもよい。この工程は、50〜500MPa、多くの場合100〜400MPa、より多くの場合250〜350MPaの範囲内の圧力の適用を含み得る。特許請求の範囲に記載の1つ以上の物理的特性を有する堆積されたグリーン電解質の初期密度は、約20〜40%の範囲内であることができる。使用される場合、プレスは、グリーン電解質が確実に理論密度の50〜60%の範囲内(例えば50〜55%の範囲内)の密度を有するのに必要な時間で行われる(適切な形態、粒度分布および/または表面積を有する粒子の単純な提供によってまだ得られていない場合)。当業者は、適用される圧力に適切な時間を選択することができるであろうが、圧力は、多くの場合、0〜5分間の範囲内の時間にわたって印加される。グリーン電解質を焼成する前に、堆積されたグリーン電解質の初期密度が理論密度の30〜60%の範囲内に達していない場合には、プレスだけが考慮される。なぜなら、グリーン電解質の焼成前にこれらの密度に達していない場合、多くの場合、電解質が気密性であり、かつ、クラック発生に対して堅牢であるのに十分に電解質が緻密でない場合があることが見出されたからである。気密で堅牢なシステムを得るには、上記のように、理論密度の95%超の密度を焼成後に有することが望ましい。多くの場合、冷間静水圧プレス、一軸ブラダープレス、またはこれらの組み合わせを使用して圧力が加えられる。これらの方法は、均一な密度が達成されることを保証して、グリーン電解質の表面にわたって均一な圧力を印加する。プレス工程は、高度に圧縮されたグリーン層を提供する。
【0036】
多くの場合、焼成工程は炉内で、多くの場合、空気雰囲気で行われる。場合によっては、800〜1000℃の温度範囲内の間に昇温の加熱速度が5〜20℃/分の範囲内であることがある。なぜなら、電解質の形成に有利であることが見出されたからである。多くの場合、この速度は少なくとも5℃/分である。多くの場合、この加熱速度は、900〜1100℃、より多くの場合950〜1050℃、さらに一層多くの場合990〜1030℃の温度範囲内の間に適用される。多くの場合、全加熱時間は、20〜120分間、多くの場合、30〜90分間、さらに一層多くの場合35〜60分間または35〜40分間の範囲内にある。800〜1000℃の温度範囲内で5〜20℃/分の温度上昇速度は、電解質層を焼結する際に金属基材(特にスチール基材)上の電解質層中で競合プロセスが起こるために利点をもたらすことが見出された。望ましいプロセスは、セラミックが緻密化する際のセラミック中の粒界への揮発性焼結助剤カチオンの移動であり、そこでそれらは焼結を促進する。しかし、様々な競合する望ましくないプロセスが生じる。これらのうちの1つは、炉雰囲気中への蒸発、あるいは、アノード中への拡散のいずれかにより、高温での揮発性焼結助剤種の完全な喪失である。別の望ましくないプロセスは、スチールから蒸発する揮発性遷移金属酸化物種(特に酸化クロム)による電解質層の汚染である。他で開示されているように(英国特許第2,400,486号)、クロムイオンはCGOのようなドープセリアの焼結を妨げることが知られている。電解質を、800℃を超えるが完全に緻密化する温度(典型的には>980℃)よりも低い温度で過ごす時間が長過ぎると、焼結助剤が蒸発しやすくなり、クロム汚染のレベルが、電解質が完全に緻密化しないようなレベルになってしまう。この急速な昇温を達成するために、電解質焼結のために連続ベルト炉が典型的には使用されるが、焼結保持中の温度の過度な広がりをもたらさずに800℃超で十分に迅速な加熱が可能である限り、バッチ炉を使用してもよい。これによって、グリーン電解質は、理論密度の少なくとも95%の密度の緻密なガス不透過性セラミックに焼結される。当業者によって理解されるように、ガス不透過性電解質層の製造は、典型的には、電解質内の残留非連結空隙の存在をもたらし、従って、理論値の100%に近い密度の電解質を提供することは非常に困難であり、しばしば理論値の50〜85%の範囲内の密度にしかならない。本明細書に記載の方法、特に選択された粒子特性(粒度分布、表面積および/または形態)は、この問題を改善し、極めて低い空隙率、すなわち高密度の電解質を与え、当該技術分野で知られているものよりもはるかにクラックを発生しにくい気密な電解質層をもたらす。
【0037】
さらに、この方法は、電解質の焼成前にアノードも電極材料も適用されていない金属支持体の部分の少なくとも一部の上に素材(mass)を適用して、電解質および/又はアノードの焼結中に金属支持体の少なくともその部分を平坦に保つ工程を含んでもよい。上記素材は、炉条件に対して堅牢であり、金属支持体の変形を防止するために十分に大きな質量を有するいかなる物質であってもよい。多くの場合、上記素材は、炉条件下で不活性であるためにアルミニウムであるが、いかなる不活性セラミックも、あるいは、被覆された金属部分も機能する。多くの場合、焼結後に金属支持体が平坦のままであるように、グリーン電解質の周囲のもし全てでない場合には大部分の周りで、上記素材は、金属支持体上に配置される。例えば、上記素材は、グリーン電解質の周囲の30〜100%、または必要な場合には50〜95%、しばしば70〜90%または90〜99%を覆ってもよい。当業者によって理解されるように、被覆の程度は、金属支持体の性質、および、アノード/電解質の焼結中に金属支持体にかかる応力の程度に依存する。場合によっては、完全な周囲被覆が必要とされることがあり、いくつかの場合には、ほんの部分的な被覆が必要とされる。
【0038】
上記素材の使用は、金属支持型SOFC上に大きな高品質の電解質層を繰り返し堆積することを可能にすることが実証されているが、焼結温度での金属支持体の塑性変形のために金属支持体上での電解質層の焼結は完全に拘束された焼結でないから、より大きな層が可能である。これは、セラミック層の焼結応力が金属支持体の変形によって緩和されることをもたらす傾向がある。焼結中に金属支持体にピン止め素材(pinning mass)を適用して平坦に保つことが有利であるのはこの理由からである。さもなければ電解質から金属支持体に加わった焼結応力が、金属支持体の塑性変形による基材の大きな屈曲をもたらすのに十分なものとなることがある。そのため、この方法は、電解質の焼成前にアノードも電極材料も適用されていない金属支持体の部分の少なくとも一部に素材を適用して、電解質の焼結中に金属支持体の少なくともその部分を平坦に保つ追加の工程を含んでもよい。
【0039】
本発明の第2の態様において、本発明の第1の態様の方法を使用して金属支持型アノード層上に電解質を形成すること、および、電解質にカソード材料を適用することを含む、燃料電池の形成方法が提供される。
【0040】
本発明の第3の態様において、本発明の第1の態様に従う方法によって得られる電解質が提供される。
【0041】
本発明の第4の態様において、本発明の第3の態様に従う電解質を含む燃料電池が提供され、本発明の第5の態様において、本発明の第4の態様に従う少なくとも2つの燃料電池を含む燃料電池スタックが提供される。
【0042】
さらに、本発明の第6の態様において、電気エネルギーの生成における本発明の第4または第5の態様に従う燃料電池または燃料電池スタックの使用が提供される。
【0043】
したがって、本発明は、金属支持型固体酸化物型燃料電池のための電解質を形成する方法を提供すると言うことができ、この方法は、必要に応じて、以下の1つ又は2つ以上を含む:
a.多くの場合15〜40m
2/gの範囲内のBET表面積および/またはほぼ球状の形態を有するドープセリア粉末(典型的にはガドリニウムドープセリア粉末)を、焼成助剤、典型的にはTMO焼結助剤であって、必要に応じて1〜10μmの範囲内の粒度を有する焼結助剤、及び、溶媒と組み合わせて、スラリーを形成する工程;
b.必要に応じて、スラリーをミリングして二峰性粒度分布のドープセリア粉末を生成させる工程;
c.必要に応じて、分散剤、バインダーおよび界面活性剤のうちの1種または2種以上を必要に応じてスラリーに添加することによって、インク、典型的にはスクリーン印刷可能なインクを形成する工程;
d.必要に応じて、金属基材にアノード層を適用する工程、前記金属基材は、必要に応じて非穿孔領域により囲まれた穿孔領域を含み、独立に必要に応じてスチール基材である;
e.必要に応じて、アノード層を焼成する工程;
f.スラリーを、必要に応じて複数層で、アノード層に適用する工程;
g.乾燥させてグリーン電解質を形成する工程;
h.必要に応じて、グリーン電解質からいかなる溶媒及び有機物も除去する工程であって、必要に応じて100〜250℃の範囲内の温度で必要に応じて溶媒の蒸発によって、必要に応じて250〜500℃の範囲内の温度に必要に応じて5〜20分間の範囲内の時間加熱することより必要に応じて有機物の分解によって、グリーン電解質から溶媒及び有機物を除去する工程;
i.必要に応じて、グリーン電解質をプレスしてグリーン電解質の密度を増加させる工程であって、必要に応じて50〜500MPaの範囲内の圧力を印加することによりグリーン電解質をプレスしてグリーン電解質の密度を増加させ、圧力が必要に応じて冷間等方圧プレス、一軸ブラダープレスまたはこれらの組み合わせを使用して印加される工程;
j.必要に応じて、アノードも電極材料も適用されていない金属支持体の部分の少なくとも一部に素材を適用して電解質の焼結中に金属支持体の少なくともその部分を平坦に保つ工程;および
k.グリーン電解質を焼成して焼結電解質を形成する工程であって、必要に応じて800〜1000℃の温度範囲内の間に5〜20℃/分の範囲内の昇温速度で、必要に応じて20〜120分間の範囲内の全加熱時間で、グリーン電解質を焼成して焼結電解質を形成する工程。
【0044】
特に言及しない限り、記載された整数の各々は、当業者によって理解されるように、他の任意の整数と組み合わせて使用されてもよい。さらに、本発明の全ての態様は、好ましくは、その態様に関連して記載された特徴を「含む(comprise)」が、それらは特許請求の範囲に記載された特徴「から成る(“consist”of)」または「から本質的に成る(“consist essentially”of)」ことが具体的に想定される。さらに、本明細書において特に定義されていない限り、すべての用語は、当該技術分野で一般的に理解されているそれらの意味を有することが意図されている。
【0045】
さらに、本発明の議論において、逆のことが述べられていない限り、パラメータの許容範囲の上限または下限についての代替値の開示は、前記パラメータの各中間値が、代替値のうちの小さい方と大きい方の間にあり、それ自体がパラメータの可能な値として開示されていることを暗に意味すると理解されるべきである。
【0046】
さらに、特に断らない限り、本出願で現れる全ての数値は、用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。
【0047】
本発明をより容易に理解できるようにするために、以下に図面および特定の実施例を参照してさらに説明する。