(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記尻下部は、前記着座面からの深さが前記第1部と同じであって前記ヒップポイントより後方に位置する第3部の硬さが、前記第1部の硬さより大きく設定されていることを特徴とする請求項1記載のクッションパッド。
前記尻下部は、前記着座面からの深さが前記第1部と同じであって前記ヒップポイントより前方に位置する第4部の硬さが、前記第1部の硬さより大きく設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクッションパッド。
前記腿部サポート部は、前記着座面を含む部位の硬さより前記底面側の部位の硬さが大きく設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のクッションパッド。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施の形態におけるクッションパッド20が装着されたシート10の一部を切断して示した部分断面図である。なお、
図1の矢印U−D,L−R,F−Bは、シート10が搭載された車両(図示せず)の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
【0014】
図1に示すようにシート10は、クッションパッド20(シートクッション)と、シートクッションの後端部に傾倒可能に連結されるシートバック30と、シートバック30の上端部に連結されるヘッドレスト31とを備えている。クッションパッド20は着座者40が着座するシートクッションの基材であり、軟質ポリウレタンフォーム等の発泡体から構成されている。なお、
図1では、クッションパッド20を覆う表皮の図示や、クッションパッド20とシートフレーム32との間に介設される補強布の図示、着座者40の側面に面するサイドサポート部の図示を省略する。
【0015】
クッションパッド20は、着座者40のヒップポイント44の下方に位置し臀部41を支持する尻下部21と、尻下部21の前部に連設されると共に着座者40の大腿部42を支持する腿部サポート部22とを備え、腿部サポート部22は、着座者40の小腿(ふくらはぎ)43に面する前端部23を備えている。なお、ヒップポイント44は、JIS D4607又はJIS D0024に定められた三次元マネキン(人体模型)をシート10に着座させた場合の三次元マネキンのH点(ヒップポイント、股関節に相当する点)である。
【0016】
クッションパッド20は、着座者40に面する着座面24の反対側の底面25が、シートフレーム32によって支持されている。シートフレーム32は、フロントフレーム33及びリアフレーム34が左右方向(
図1L−R方向)に架け渡されており、フロントフレーム33とリアフレーム34との間にクッションスプリング25が架け渡されている。クッションパッド20は、尻下部21の後端部がリアフレーム34により下方から支持され、腿部サポート部22がフロントフレーム33により下方から支持される。尻下部21の前後方向の中央部分がクッションスプリング25により下方から支持される。フロントフレーム33は、前端部23により前面が覆われる。
【0017】
クッションパッド20は、尻下部21及び腿部サポート部22の上下方向(矢印U−D方向)及び左右方向(矢印L−R方向)の硬さ分布に特徴を有している。本実施の形態では尻下部21及び腿部サポート部22(いずれも成形品)から採取した小さな試験片を用いて硬さを測定し、硬さ分布を求めている。まず、
図2を参照して尻下部21における試験片の採取位置を説明する。
図2は尻下部21を等分に分割した試験片をクッションパッド20の断面図(
図1参照)に重ねた模式図である。尻下部21は、硬さ測定のために、着座面24を基準にして上下方向(深さ方向)及び前後方向に等分に分割され、複数の試験片が採取される。
【0018】
本実施の形態では、尻下部21が、着座面24から底面25へ向かって等分に4層に区分され(厚さ各20mm)、それらの前後方向(
図1矢印F−B方向)が等分に15個(長さ各20mm)に区分される。各層の幅方向(
図2紙面垂直方向)の幅が20mmにされることで、1辺が20mmの四角柱状(立方体)の試験片が採取される。なお、試験片は、尻下部21の着座面24又は底面25と交差して一部が欠損するもの(定められた四角柱状(立方体)にならないもの)を除く。
【0019】
尻下部21は、着座面24から底面25へ向かって重なる4層に区画されている。その4層は、着座面24を含む着座部51、着座部51の下に位置する中央上部52、中央上部52の下に位置する中央下部53、中央下部53の下に位置すると共に底面25を含む底面部54であり、それぞれ着座面24からの深さが前後方向に亘って略等しい部位である。着座部51及び中央上部52は、ヒップポイント44の下方に位置する部位における尻下部21の厚さ方向の中央である厚さ中央26より着座面24側に位置し、中央下部53及び底面部54は、厚さ中央26より底面25側に位置する。なお、着座部51は着座面24に沿って形成されるので、着座面24が曲面の場合には、着座部51は着座面24に倣って屈曲して形成され、それに倣って中央上部52、中央下部53及び底面部54も屈曲して形成される。但し、
図2では便宜上、着座部51、中央上部52、中央下部53及び底面部54は直線状に図示される。
【0020】
採取された試験片は、JIS K6400−2(2012年版)に規定されるE法に準拠して25%圧縮時の力が測定される。この試験方法によれば、試験片より大きい支持板(図示せず)の上に上下方向(矢印U−D方向)を向けて置かれた試験片が、試験片の上面より大きい加圧面をもった加圧板(図示せず)により予備圧縮された後、厚さの75±2.5%まで加圧される。試験片が25±1%の厚さに加圧されたときの力が、その試験片の25%圧縮時の力S
25(単位:N)とされる。この明細書では25%圧縮時の力(以下「S
25」と称す)を「硬さ」と定義する。
【0021】
なお、底面部54から採取される試験片は、底面25に一体成形される補強布(図示せず)が除去された後、支持板(図示せず)側に底面25側を向けて置かれ、硬さが測定される。補強布の影響を小さくするためである。
【0022】
また、便宜上、ヒップポイント44の下方に位置する部位であって、厚さ中央26より
底面25側に位置する部位(試験片)を第1部55と称す。着座面24と直交して第1部55を通る直線上に位置する部位であって、着座面24を含む部位(試験片)を第2部56と称す。着座面24からの深さが第1部55と同じ(中央下部53内の部位)であって、ヒップポイント44より後方に位置する部位(試験片)を第3部57と称し、ヒップポイント44より前方に位置する部位(試験片)を第4部58と称す。
【0023】
次に
図3を参照して、各試験片のS
25(測定値)に基づく尻下部21の硬さ分布を説明する。
図3は尻下部21の硬さ分布を示す図である。なお
図3では、各試験片の硬さ(単位:N)を試験片の断面積(単位:cm
2)で除した値(単位:N/cm
2)を4つの区間に分け、その区間を試験片の採取位置に対応させて4段階の濃淡で表示した。
図3では、色が濃いほど硬さが大きいことを示している。
【0024】
図3に示すように尻下部21は、着座部51、中央上部52、中央下部53、底面部54の順に硬さが大きくなるように形成されている。また、中央上部52、中央下部53及び底面部54は、前後方向の中央より外側(
図3左右両側)の硬さが大きくなるように形成されている。その結果、尻下部21は、着座面24から底面25に向かうにつれて硬さが大きく、且つ、前後方向の中央より外側の硬さが大きい擂鉢状の硬さ分布を有している。
【0025】
このクッションパッド2(尻下部21)に着座者40(
図1参照)が着座すると、この着座者40の体重により尻下部21は上下方向(
図1矢印U−D方向)に圧縮される。尻下部21は、着座面24から底面25に向かうにつれて硬さが大きくなるように設定されているので(
図3参照)、主に着座部51及び中央上部52によりソフト感を発揮させながら、臀部41への密着感(フィット感)を発揮させることができる。さらに、着座部51、中央上部52、中央下部53及び底面部54が変形することによって臀部41の前後方向(
図1矢印F−B方向)のホールド性(拘束性)が確保されるので、着座姿勢を安定化できる。
【0026】
特に尻下部21は、中央上部52、中央下部53及び底面部54が、前後方向中央より前後方向外側の硬さが大きくなる擂鉢状の硬さ分布を有しているので、臀部41のホールド性を向上させることができる。
【0027】
次に
図4を参照して、クッションパッド2(尻下部21)の硬さ分布について詳細に説明する。
図4は尻下部21の硬さを示す図である。
図4では、第2部56(着座部51のヒップポイント44の下方の部位)の25%圧縮時の力S
25を1としたときの各試験片のS
25(第2部56の硬さに対する比率)をプロットした。
図4において、横軸(X軸)は尻下部21における各試験片の前後方向の採取位置(図の右側が前方、左側が後方)を示し、縦軸(Y軸)はS
25(比率)を示す。実線は着座部51の各試験片のS
25、一点鎖線は中央上部52の各試験片のS
25、二点鎖線は中央下部53の各試験片のS
25、破線は底面部54の各試験片のS
25を示す。なお、
図4では、尻下部21の底面25と交差して一部が欠損した試験片の硬さはプロットされていない。
【0028】
図4に示すように、着座部51は、前後方向に亘って硬さが略一定であるのに対し、中央上部52及び中央下部53は、前後方向外側に向かうにつれて硬さが次第に大きくなる硬さ勾配を有している。底面部54は、前方に向かうにつれて硬さが次第に大きくなる硬さ勾配を有している。なお、底面部54は、図示されていないが、後方に向かうにつれて硬さが次第に大きくなる傾向を示す。中央上部52の硬さ勾配と比較して、中央下部53及び底面部54の硬さ勾配が大きく設定されているので、着座者40に違和感のないホールド性を与えることができる。
【0029】
尻下部21は、厚さ中央26(
図2参照)より底面25側の第1部55の硬さより、着座面24を含む第2部56の硬さが小さく設定される。よって、臀部41の沈み込みを抑制しつつ尻下部21の風合いやフィット感を向上できる。また、尻下部21は、着座面24からの深さが第1部55と同じであってヒップポイント44より後方(
図4矢印B方向)に位置する第3部57の硬さが、第1部55の硬さより大きく設定されている。よって、尻下部21が支持する臀部41の安定感を向上できる。その結果、着座者40の着座姿勢を安定化できる。
【0030】
また、尻下部21は、着座面24からの深さが第1部55と同じであってヒップポイント44より前方(
図4矢印F方向)に位置する第4部58の硬さが、第1部55の硬さより大きく設定されている。その結果、クッションパッド20が乗物のシート10に装着される場合に、乗物の前面衝突時や制動時に着座者40がクッションパッド20に潜り込むような姿勢となる現象(いわゆるサブマリン現象)の発生を、フロントフレーム33(
図1参照)と相まって抑制できる。
【0031】
第1部55及び第2部56を通る直線上(着座面24に直交する直線上)に位置する各部位の硬さは、着座部51(中央上部52)、中央下部53、底面部54の順に次第に大きくなる。その結果、着座面24側によって着座時のソフト感を得つつ、底面25側によって臀部41の沈み込みを抑制できる。
【0032】
また、第3部57及び第4部58をそれぞれ通る直線上(着座面24に直交する直線上)に位置する各部位の硬さは、着座部51(中央上部22)、中央下部53、底面部54(第3部57に対する部位は図示せず)の順に次第に大きくなる。その結果、着座面24側によって着座時のソフト感を得つつ、底面25側によって臀部41のホールド性を向上できる。さらに、サブマリン現象の発生の抑制および臀部41の安定感の向上による着座姿勢の安定化を向上できる。
【0033】
なお、第1部55のある中央下部53の各試験片の硬さは、第1部55から前後方向外側へ向かうにつれて次第に大きくなる。その結果、尻下部21の底面25側(中央下部53)によって、着座者40の臀部41のホールド性を確保して、加減速時に生じる前後方向のぐらつき感を抑制できる。
【0034】
次に
図5を参照して、クッションパッド20の製造方法について説明する。
図5はクッションパッド20を成形する成形型60の断面図である。クッションパッド20は、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、発泡剤および触媒を含有する混合液(発泡原液)が成形型60(下型61)へ注入され、成形型60(下型61及び上型62)内で発泡成形されて製造される。成形型60の第1キャビティ63で尻下部21が成形され、第2キャビティ64で腿部サポート部22(
図1参照)が成形される。着座面24は成形型60の下型61で成形され、底面25は上型62で成形される。尻下部21及び腿部サポート部22は、単一の発泡合成樹脂材料により一体に成形されるので、クッションパッド20の製造工程において、硬さの大きいインサート材を埋設したり硬さの異なる複数の層を積層したりする工程を不要にできる。よって、クッションパッド20の製造コストを削減できる。
【0035】
なお、クッションパッド20は、粗毛布や不織布等の補強布を成形型60(上型62)に予め装着して、底面25に一体成形することができる。また、クッションパッド20の成形後に補強布を底面25に接着することもできる。
【0036】
クッションパッド20は、腿部サポート部22がフロントフレーム33(
図1参照)に設置され、前端部23が、下方へ向かって屈曲してシートフレーム32の前面に配置される。しかし、
図5に示すように、腿部サポート部22が成形される成形型60の第2キャビティ64は、前端部23の形状に対応する屈曲部が形成されておらず、直線状に形成されている。この成形型60により腿部サポート部22がマット状(平板状)に成形される。
【0037】
次に
図6及び
図7を参照して腿部サポート部22の硬さ分布について説明する。
図6は屈曲前(シートフレーム32に装着する前)の腿部サポート部22の一部を切断して示したクッションパッド20の部分断面図であり、
図7は腿部サポート部22(シートフレーム32に装着後)の一部を切断して示した部分断面図である。なお、
図6では尻下部21の図示が省略されている。
【0038】
本実施の形態では、腿部サポート部22が、着座面24から底面25へ向かって等分に2層に区分され(厚さ各20mm)、それらの前後方向(
図6左右方向)が等分に10個(長さ各20mm)に区分される。各層の幅方向(
図6紙面垂直方向)の幅が20mmにされることで、1辺が20mmの四角柱状(立方体)の試験片が採取される。採取された試験片は、前述のJIS K6400−2(2012年版)に規定されるE法に準拠して25%圧縮時の力が測定される。底面25を含む試験片は、補強布(図示せず)が除去された後、支持板(図示せず)側に底面25側を向けて置かれ、硬さが測定される。
【0039】
図6は、各試験片の硬さ(単位:N)を試験片の断面積(単位:cm
2)で除した値(単位:N/cm
2)を区間(
図3の区間と同じ)に分け、その区間を試験片の採取位置に対応させて濃淡で表示した。
図3と同様に、
図6は色が濃いほど硬さが大きいことを示している。
図6に示すように腿部サポート部22は、着座面24側が底面25側より硬さが小さく、端部(
図6左端)側が尻下部21側(
図6右側)より硬さが大きく形成される。
【0040】
図7に示すように腿部サポート部22は、前端部23を屈曲させてシートフレーム32(
図1参照)に設置される。その結果、底面25側より硬さの小さい着座面24が大腿部42及び小腿(ふくらはぎ)43に面する。前端部23を屈曲させることで、硬さの大きい腿部サポート部22の端部(
図7下部)が下向きに配置される。腿部サポート部22は、大腿部42及び小腿43に面する着座面24によってソフト感を発揮させることができる。その結果、大腿部42の圧迫感を抑制できる。また、硬さの大きい端部を大腿部42及び小腿43に接触させ難くできるので、着座者40に違和感を与え難くすることができる。さらに、アクセルペダルやブレーキペダルを着座者40が操作する場合に、大腿部42が上下に可動し難くなることを防ぎつつ大腿部42を支持できる。よって、ペダルの操作による疲労の蓄積を抑制できる。
【0041】
次に、クッションパッド20を成形する発泡原液(ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、発泡剤および触媒を含有する混合液)について説明する。
【0042】
ポリオール成分としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ラクトン系ポリオールが挙げられ、このうちの1種または2種以上の混合物を使用することができる。この中でも、原料費が安価で耐水性に優れている点で、ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0043】
必要に応じて、ポリマーポリオールを併用できる。ポリマーポリオールとしては、例えば、ポリアルキレンオキシドからなるポリエーテルポリオールにポリアクリルニトリル、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のポリマー成分をグラフト共重合させたものが挙げられる。
【0044】
ポリオール成分の重量平均分子量は6000〜10000であることが好ましい。重量平均分子量が6000未満の場合、得られるフォームの柔軟性が失われ、物性の悪化や弾性性能の低下が発生しやすい。重量平均分子量が10000を超える場合は、フォームの硬度が低下しやすい。
【0045】
ポリイソシアネート成分としては、公知の各種多官能性の脂肪族、脂環族および芳香族のイソシアネートを用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、オルトトルイジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等を挙げることができ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0046】
ジフェニルメタンジイソシアネートに代表されるMDI系イソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(ピュアMDI)、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、これらのポリメリック体、これらのウレタン変性体、ウレア変性体、アロファネート変性体、ビウレット変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体、更にこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。
【0047】
また、末端イソシアネートプレポリマーを用いることも可能である。末端イソシアネートプレポリマーは、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール等のポリオールとポリイソシアネート(TDI系イソシアネートやMDI系イソシアネート等)とを予め反応させたものである。末端イソシアネートプレポリマーを用いることにより、混合液(発泡原液)の粘度やポリマーの一次構造、相溶性を制御することができるので好適である。
【0048】
本実施の形態では、ポリイソシアネート成分として、TDI系イソシアネートによる弾性フォームに比べて反発弾性の小さい弾性フォームを成形できるMDI系イソシアネートが好適に用いられる。MDI系イソシアネートとTDI系イソシアネートとの混合物を用いる場合、その質量比はMDI系:TDI系=100:0〜75:25好ましくは100:0〜80:20とされる。ポリイソシアネート成分中のTDI系の質量比が20/100より大きくなるにつれ、得られる製品のぐらつき感が低下する傾向がみられ、TDI系の質量比が25/100より大きくなると、その傾向が著しくなる。なお、ポリイソシアネート成分のイソシアネートインデックス(活性水素基に対するイソシアネート基の等量比の百分率)は、例えば85〜130に設定される。
【0049】
発泡剤としては、主に水が用いられる。必要に応じて、少量のシクロペンタンやノルマルペンタン、イソペンタン、HFC−245fa等の低沸点有機化合物を併用することや、ガスローディング装置を用いて原液中に空気、窒素ガス、液化二酸化炭素等を混入溶解させて成形することもできる。発泡剤の好ましい添加量は、得られる製品の設定密度によるが、通常、ポリオール成分に対して0.5〜15質量%である。
【0050】
触媒としては、当該分野において公知である各種ウレタン化触媒が使用できる。例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N′,N′,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル等の反応性アミン、又は、これらの有機酸塩;酢酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸金属塩、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、ナフテン酸亜鉛等の有機金属化合物等が挙げられる。また、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン等の活性水素基を有するアミン触媒も好ましい。触媒の好ましい添加量は、ポリオール成分に対して、0.01〜10質量%である。
【0051】
必要に応じて、低分子量の多価活性水素化合物が架橋剤として使用される。架橋剤により、クッションパッドのばね特性の調整が容易になる。架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の多価アルコール類、並びにこれらの多価アルコール類を開始剤としてエチレンオキシドやプロピレンオキシドを重合させて得られる化合物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等が挙げられる。これらの化合物は単独で、又は2種以上を混合して使用される。
【0052】
また、必要に応じて整泡剤が使用される。整泡剤としては当該分野において公知である有機珪素系界面活性剤が使用可能である。整泡剤の好ましい添加量は、ポリオール成分に対して0.1〜10質量%である。さらに必要に応じて、難燃剤、可塑剤、セルオープナー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、各種充填剤、内部離型剤、その他の加工助剤が用いられる。
【0053】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。実施例および比較例におけるクッションパッドを成形する混合液(発泡原液)の配合を表1及び表2に示す。表1及び表2の配合を示す数値は単位質量(質量比率)である。また、表1及び表2のイソシアネート量は、ポリオールに対するイソシアネートの(ポリオール100に対する)質量比率であり、イソシアネート1〜3は、全イソシアネートに対する構成比率である。
【0056】
なお、表1及び表2に示す各成分は以下のとおりである。
ポリオール1:ポリエーテルポリオール EP828(三井化学株式会社製)、重量平均分子量6000
ポリオール2:ポリエーテルポリオール EP330N(三井化学株式会社製)、重量平均分子量5000
ポリオール3:ポリマーポリオール POP3623(三井化学株式会社製)
架橋剤1:ジエタノールアミン
架橋剤2:EL980(旭硝子株式会社製)
セルオープナー:EP505S(三井化学株式会社製)
整泡剤1:SZ1336(東レダウコーニングシリコン株式会社製)
整泡剤2:SZ1325(東レダウコーニングシリコン株式会社製)
触媒1:TEDA L33(東ソー株式会社)
触媒2:ToyocatET(東ソー株式会社)
イソシアネート1:トリレンジイソシアネート TDI−80(三井化学株式会社製)
イソシアネート2:ポリメリックMDI 2,4′−MDI・4,4′−MDI混合物
イソシアネート3:ポリメリックMDI MR200(日本ポリウレタン株式会社製)。
【0057】
これらの各成分を表1及び表2に示す質量比率で常法にて配合し、均一に混合した後、所定量を所定形状のクッションパッドの成形型(下型)に注入し、キャビティ内で発泡硬化させて実施例1〜6、比較例1〜3におけるクッションパッドを得た。
【0058】
なお、表1に示す実施例1〜4及び比較例1〜3は
図8に示す成形型65によって成形し、表2に示す実施例5及び6は
図5に示す成形型60によって成形した。
図8は実施例1〜4及び比較例1〜3のクッションパッドを成形する成形型65の断面図である。成形型65は、キャビティを形成する下型66及び上型67を備え、腿部サポート部22(
図1参照)の前端部23を成形する屈曲部68を有している。屈曲部68は、下型66の端部が上方へ向けて屈曲する部位であり、下型66の屈曲に伴い、上型67も上方へ向けて屈曲している。
【0059】
成形型60,65によって成形された全てのクッションパッドは、JIS K6400−2(2012年版)D法に基づき、ヒップポイント44に相当する尻下部21上の点を直径200mmの加圧板で25%定圧縮した後の力(単位:N)を求めた(25%ILD)。また、クッションパッドをシートフレーム32(
図1参照)に装着した後、被験者が着座して行う官能試験によりペダル操作性および尻下落ち込み感を評価した。ペダル操作性は、ブレーキペダル及びアクセルペダルの操作性を評価するものであり、「◎:大腿部の支持および可動が非常に良好、○:大腿部の可動が良好、△:大腿部の可動が少し制限される、×:大腿部に圧迫感がある」の4段階である。尻下落ち込み感は、着座したときの臀部の安定感を評価するものであり、「○:安定感がある、×:落ち込み感がある」の2段階である。それらの結果を表1及び表2に記した。
【0060】
さらに、実施例3におけるクッションパッドは、尻下部21を等分に区分して複数の試験片(縦20mm横20mm高さ20mmの大きさの四角柱)を採取し(
図2参照)、JIS K6400−2(2012年版)に規定されるE法に準拠して25%圧縮時の力S
25を測定した。
図3及び
図4は実施例3におけるクッションパッドの硬さを示す図である。
【0061】
表1に示すように、実施例1から4は尻下落ち込み感の評価は○、ペダル操作性の評価は○〜△であった。一方、実施例3及び4と硬度がほぼ同じ比較例1は、ペダル操作性の評価は×であった。実施例3におけるクッションパッドは、
図3及び
図4に示すように着座面24側が底面25側より軟らかいので、同等の硬度をもつ比較例1と比べて、ペダル操作性が良好であった。
【0062】
表2に示すように、実施例5及び6は、それぞれ同じ発泡原液で成形された実施例1及び4(表1参照)と比較して、ペダル操作性の評価が高かった。実施例1及び4は屈曲部68が形成された成形型65(
図8参照)で成形されているが、実施例5及び6は成形型60(
図5参照)で成形されている。成形型60は屈曲部68(
図8参照)を有しない点で、成形型65と相違する。実施例5及び6は、成形型60によってクッションパッド20(腿部サポート部22)を成形した後(
図6参照)、クッションパッド20をシートフレーム32に装着するときに前端部23を屈曲する。
【0063】
一方、実施例1及び4は、成形型65の屈曲部68によって前端部23が屈曲した状態に作られる。前端部23が成形型65内で屈曲した状態に成形されることで、実施例1及び4は実施例5及び6と比較して、前端部23の着座面24の硬さが大きくなる。これは、実施例1から6における発泡原液で成形されたクッションパッドは、着座面24側より底面25側が硬く、底面25側では中央より周囲が硬いという性質があるからである。従って、成形型65の屈曲部68によって前端部23が成形されると(実施例1及び4)、成形型60によるクッションパッド(実施例5及び6)と比較して、前端部23の着座面24側の硬さが増し、ペダル操作性が劣る結果になる。これに対し成形型60で成形される実施例5及び6によれば、成形後に屈曲して前端部23が作られるので、前端部23の着座面24側の軟らかさを確保することができ、ペダル操作性を向上できる。
【0064】
次に
図9を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、軟質ポリウレタンフォームにより一体的に形成されるクッションパッドについて説明した。これに対し第2実施の形態では、複数の層状の部材を積層して形成されるクッションパッドについて説明する。
図9は第2実施の形態におけるクッションパッド70の断面図である。なお、第1実施の形態と同様に、着座者40の側面に面するサイドサポート部の図示を省略する。
【0065】
図9に示すようにクッションパッド70は、尻下部21及び腿部サポート部22とを備えている。尻下部21は、着座者40(
図1参照)に面する着座部71と、着座部71の下部に配置される中央上部72と、中央上部72の下部に配置される中央下部73と、中央下部73の下部に配置される底面部74とを備えている。着座部71、中央上部72、中央下部73及び底面部74は、互いに接着され積層される。
【0066】
腿部サポート部22は、着座者40(
図1参照)に面する着座部81と、着座部81の下部に配置される中央上部82と、中央上部82の下部に配置される中央下部83と、中央下部83の下部に配置される底面部84とを備えている。着座部81、中央上部82、中央下部83及び底面部84は、互いに接着され積層される。腿部サポート部22は、端部側を下向きに屈曲して前端部23が形成される。腿部サポート部22は、着座面85及び底面86が表皮(図示せず)で覆われることで前端部23が拘束され、形状が保持される。
【0067】
着座部71,81、中央上部72,82、中央下部73,83及び底面部74,84は、この順にそれぞれ25%圧縮時の力S
25が大きくなるように材質が選択される。本実施の形態では、着座部71,81、中央上部72,82、中央下部73,73及び底面部74,84は、いずれも軟質ポリウレタンフォーム(モールドウレタン)により平板状に形成される。着座部71,81、中央上部72,82、中央下部73,83及び底面部74,84の硬さ分布は、第1実施の形態におけるクッションパッド20の硬さ分布と同様に設定されるので、説明を省略する。第2実施の形態におけるクッションパッド70によれば、第1実施の形態におけるクッションパッド20と同様の作用・効果を実現できる。
【0068】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた形状は一例であり、他の形状を採用することは当然可能である。
【0069】
上記各実施の形態では、車両(自動車)に搭載されるクッションパッド20,70について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。クッションパッド20,70を自動車以外の他の車両(例えば鉄道車両)や船舶、航空機等の乗物に装備されるクッション材に適用したり、家具等のクッション材に適用したりすることは当然可能である。
【0070】
上記第1実施の形態では、便宜上、一体に成形された発泡合成樹脂製(軟質ポリウレタンフォーム製)のクッションパッド20(尻下部21)を上下方向に4層に区分して、その各層を左右方向に15個に区分し、試験片を採取して硬さを測定する場合について説明したが、試験片の数(層数や左右方向の区分数)や大きさはこれに限られるものでない。試験片の大きさは、硬さを測定可能な大きさに適宜設定することができる。また、試験片の数は、硬さを測定可能な試験片の大きさを勘案して、その大きさの試験片を採取できる数に適宜設定できる。なお、クッションパッド20の大きさを考慮すると、尻下部21を4層または5層に区分するのが適当である。また、試験片の大きさは、四角柱の1辺の長さを20〜25mmにするのが好適である。これは腿部サポート部22から採取される試験片についても同様である。
【0071】
また、上記第1実施の形態では、便宜上、第1部55、第3部57及び第4部58が中央下部53に設けられる場合について説明した。しかし、第1部55、第3部57及び第4部58の位置は、これに限られるものではない。これらの位置は、クッションパッド20(尻下部21)を上下方向に区分する層数に応じて、適宜設定される。
【0072】
上記各実施の形態では、クッションパッド20,70にサイドサポート部(図示せず)が設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、サイドサポート部を省略することは可能である。
【0073】
上記第2実施の形態では、着座部71,81、中央上部72,82、中央下部73,83及び底面部74,84が、いずれも所定形状の成形型で成形された軟質ポリウレタンフォーム(モールドウレタン)により形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の材質を採用することは当然可能である。他の材質としては、例えば、成形された軟質ポリウレタンフォームを切断して形成されるスラブウレタン、軟質ポリウレタンフォームの製造工程で生じる端材等を粉砕して形成されたチップウレタン、3次元的に絡み合う複数の合成樹脂製繊維で構成される立体網状体、固綿等の繊維体、ウレタンゴムや熱可塑性エラストマー等の合成樹脂製の弾性体が挙げられる。これらを積層することで、所定の硬さ分布を得ることができる。着座部71,81、中央上部72,82、中央下部73,83及び底面部74,84の硬さや密度、形状は、材質を選択すると共に、成形型のキャビティ形状の設計や裁断、切削等により適宜設定できる。