(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光源からの光を参照光と測定光とに分割し、前記測定光を物体に照射し、その戻り光と前記参照光との干渉光を生成し、生成された前記干渉光を検出する干渉光学系を備えた光干渉計測装置であって、
前記参照光を第1参照光路及び第2参照光路に導く光路分割部材と、
前記第1参照光路及び前記第2参照光路の少なくとも一方である可変参照光路の長さを変更する第1参照光路長変更部と、
前記第1参照光路長変更部により前記可変参照光路の長さが変更された後に生成された前記第1参照光路からの戻り光と前記第2参照光路からの戻り光との第1干渉光を前記干渉光学系により検出して取得された第1検出データと、前記可変参照光路の長さが変更される前に生成された前記第1参照光路からの戻り光と前記第2参照光路からの戻り光との第2干渉光を前記干渉光学系により検出して取得された第2検出データとに基づいて、前記光源に関する校正量を求める校正量算出部と、
前記干渉光の検出結果と前記校正量とに基づいて、前記物体に関するデータを生成するデータ生成部と、
を含むことを特徴とする光干渉計測装置。
前記校正量算出部は、前記第1参照光路の長さと前記第2参照光路の長さとが略等しい状態でそれぞれ取得された前記第1検出データと前記第2検出データとに基づいて前記校正量を求める
ことを特徴とする請求項1に記載の光干渉計測装置。
光源からの光を参照光と測定光とに分割し、前記測定光を物体に照射し、その戻り光と前記参照光との干渉光を生成し、生成された前記干渉光を検出する干渉光学系を備えた光干渉計測装置であって、
前記参照光を第1参照光路及び第2参照光路に導く光路分割部材と、
前記第1参照光路の長さと前記第2参照光路の長さとを相対的に変更する第2参照光路長変更部と、
少なくとも前記第2参照光路長変更部を制御する制御部と、
前記第2参照光路長変更部により光路長が相対的に変更された後に生成された前記第1参照光路からの戻り光と前記第2参照光路からの戻り光との第1干渉光を前記干渉光学系により検出して取得された第1検出データと、前記第2参照光路長変更部により光路長が相対的に変更される前に生成された前記第1参照光路からの戻り光と前記第2参照光路からの戻り光との第2干渉光を前記干渉光学系により検出して取得された第2検出データとに基づいて、前記第2参照光路長変更部に関する校正量を求める校正量算出部と、
前記干渉光の検出結果と前記校正量とに基づいて、前記物体に関するデータを生成するデータ生成部と、
を含むことを特徴とする光干渉計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明に係る光干渉側装置の実施形態の例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書において引用された文献の記載内容や任意の公知技術を、以下の実施形態に援用することが可能である。
【0012】
以下、実施形態に係る光干渉計測装置が眼科装置に適用された場合について説明するが、実施形態に係る光干渉計測装置の適用対象は眼科装置に限定されるものではない。実施形態に係る光干渉計測装置は、光干渉計測により物体を測定する装置に適用することができる。実施形態に係る光干渉計測装置が適用された眼科装置は、他覚測定と自覚検査とを実行可能である。他覚測定は、被検者からの応答を参照することなく、主に物理的な手法を用いて被検眼に関する情報を取得する測定手法である。
【0013】
他覚測定には、被検眼の特性を取得するための測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とが含まれる。他覚測定には、他覚屈折測定、角膜形状測定、眼圧測定、眼底撮影、光干渉計測等がある。一方、自覚検査は、被検者からの応答を利用して情報を取得する測定手法である。自覚検査には、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査等の自覚屈折測定や、視野検査などがある。
【0014】
実施形態に係る眼科装置は、任意の自覚検査及び任意の他覚測定の少なくとも一方を実行可能である。光干渉計測は、眼軸長、角膜厚、前房深度、水晶体厚など、被検眼の構造を表す眼球情報を取得するために用いられる。また、被検眼の画像や解析データを取得するために光干渉計測を利用することもできる。
【0015】
<構成>
図1及び
図2に、実施形態に係る眼科装置の構成例を示す。眼科装置1000は、被検眼Eの検査を行うための光学系として、Zアライメント系1、XYアライメント系2、ケラト測定系3、視標投影系4、観察系5、レフ測定投影系6、レフ測定受光系7、及び眼内距離測定系8を含む。また、眼科装置1000は処理部9を含む。
【0016】
(処理部9)
処理部9は、眼科装置1000の各部を制御する。また、処理部9は、各種演算処理を実行可能である。処理部9はプロセッサを含む。プロセッサの機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路により実現される。処理部9は、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
【0017】
(観察系5)
観察系5は、被検眼Eの前眼部を動画撮影する。被検眼Eの前眼部からの光(赤外光)は、対物レンズ51を通過し、ダイクロイックミラー52及び53を透過し、絞り54の開口を通過する。絞り54の開口を通過した光は、ハーフミラー55を透過し、リレーレンズ56及び57を通過し、結像レンズ58により撮像素子59(エリアセンサ)の撮像面に結像される。撮像素子59は、所定のレートで撮像及び信号出力を行う。撮像素子59の出力(映像信号)は処理部9に入力される。処理部9は、この映像信号に基づく前眼部像E’を表示部10の表示画面10aに表示させる。前眼部像E’は、例えば赤外動画像である。観察系5は、前眼部を照明するための照明光源を含んでいてもよい。
【0018】
(Zアライメント系1)
Zアライメント系1は、観察系5の光軸方向(前後方向、Z方向)におけるアライメントを行うための光(赤外光)を被検眼Eに照射する。Zアライメント光源11から出力された光は、被検眼Eの角膜Kに照射され、角膜Kにより反射され、結像レンズ12によりラインセンサ13に結像される。角膜頂点の位置が前後方向に変化すると、ラインセンサ13に対する光の投影位置が変化する。処理部9は、ラインセンサ13に対する光の投影位置に基づいて被検眼Eの角膜頂点の位置を求め、これに基づきZアライメントを実行する。
【0019】
(XYアライメント系2)
XYアライメント系2は、観察系5の光軸に直交する方向(左右方向(X方向)、上下方向(Y方向))のアライメントを行うための光(赤外光)を被検眼Eに照射する。XYアライメント系2は、ハーフミラー55により観察系5から分岐された光路に設けられたXYアライメント光源21を含む。XYアライメント光源21から出力された光は、ハーフミラー55により反射され、観察系5を通じて被検眼Eに照射される。その角膜Kによる反射光は、観察系5を通じて撮像素子59に導かれる。
【0020】
この反射光の像(輝点像)は前眼部像E’に含まれる。処理部9は、
図1に示すように、輝点像Brを含む前眼部像E’とアライメントマークALとを表示画面10aに表示させる。手動でXYアライメントを行う場合、ユーザは、アライメントマークAL内に輝点像Brを誘導するように光学系の移動操作を行う。自動でアライメントを行う場合、処理部9は、アライメントマークALに対する輝点像Brの変位がキャンセルされるように、光学系を移動させるための機構を制御する。
【0021】
(ケラト測定系3)
ケラト測定系3は、角膜Kの形状を測定するためのリング状光束(赤外光)を角膜Kに投影する。ケラト板31は、対物レンズ51と被検眼Eとの間に配置されている。ケラト板31の背面側(対物レンズ51側)にはケラトリング光源32が設けられている。ケラトリング光源32からの光でケラト板31を照明することにより、角膜Kにリング状光束が投影される。その反射光(ケラトリング像)は撮像素子59により前眼部像とともに検出される。処理部9は、このケラトリング像を基に公知の演算を行うことで角膜形状パラメータを算出する。
【0022】
(視標投影系4)
視標投影系4は、固視標や自覚検査用視標等の各種視標を被検眼Eに呈示する。光源41から出力された光(可視光)は視標チャート42に照射される。視標チャート42は、例えば透過型の液晶パネルを含み、視標を表すパターンを表示する。視標チャート42を透過した光は、結像レンズ43及びVCCレンズ44を通過し、反射ミラー45により反射され、ダイクロイックミラー53により反射され、ダイクロイックミラー52を透過し、対物レンズ51を通過して眼底Efに投影される。光源41及び視標チャート42は、一体となって光軸方向に移動可能である。
【0023】
自覚検査を行う場合、処理部9は、他覚測定の結果に基づき視標チャート42、光源41及びVCCレンズ44を制御する。処理部9は、検者又は処理部9により選択された視標を視標チャート42に表示させる。それにより、当該視標が被検者に呈示される。被検者は視標に対する応答を行う。応答内容の入力を受けて、処理部9は、更なる制御や、自覚検査値の算出を行う。例えば、視力測定において、処理部9は、ランドルト環等に対する応答に基づいて、次の視標を選択して呈示し、これを繰り返し行うことで視力値を決定する。
【0024】
(レフ測定投影系6及びレフ測定受光系7)
レフ測定投影系6及びレフ測定受光系7は他覚屈折測定(レフ測定)に用いられる。レフ測定投影系6は、他覚測定用のリング状光束(赤外光)を眼底Efに投影する。レフ測定受光系7は、このリング状光束の被検眼Eからの戻り光を受光する。
【0025】
レフ測定光源61は光軸方向に移動可能であり、眼底Efと光学的に共役な位置に配置される。レフ測定光源61から出力された光は、コンデンサレンズ62を通過し、反射ミラー63により反射され、円錐プリズム64A及びリレーレンズ64Bを透過し、リング絞り64Cのリング状透光部を通過してリング状光束となる。リング絞り64Cにより形成されたリング状光束は、孔開きプリズム65の反射面により反射され、ロータリープリズム66を通過し、クイックリターンミラー67に導かれる。
【0026】
ロータリープリズム66は、眼底Efの血管や疾患部位に対するリング状光束の光量分布を平均化させるために用いられる。また、クイックリターンミラー67は、他覚屈折測定と眼内距離測定との切り換えに用いられる。他覚屈折測定を行う場合、クイックリターンミラー67の反射面は、ダイクロイックミラー52により観察系5の光路から分岐された光路(分岐光路)に配置される。それにより、レフ測定投影系6の光路及びレフ測定受光系7の光路の双方が観察系5の光路に結合される。一方、眼内距離測定を行う場合、クイックリターンミラー67は、この分岐光路から退避される。それにより、眼内距離測定系8の光路が観察系5の光路に結合される。
【0027】
他覚屈折測定では、ロータリープリズム66を通過したリング状光束は、クイックリターンミラー67により反射され、ダイクロイックミラー52に反射され、対物レンズ51を通過して眼底Efに投影される。
【0028】
眼底Efに投影されたリング状光束の戻り光は、対物レンズ51を通過し、ダイクロイックミラー52及びクイックリターンミラー67により反射される。クイックリターンミラー67により反射された戻り光は、ロータリープリズム66を通過し、孔開きプリズム65の孔部を通過し、リレーレンズ71及び合焦レンズ72を透過し、結像レンズ73により撮像素子74の撮像面に結像される。撮像素子74の出力は処理部9に入力される。処理部9は、撮像素子74からの出力を基に公知の演算を行うことで被検眼Eの球面度数S、乱視度数C及び乱視軸角度Aを算出する。
【0029】
処理部9は、算出された屈折値に基づいて、レフ測定光源61と眼底Efと撮像素子74とが共役となる位置に、レフ測定光源61と合焦レンズ72とをそれぞれ光軸方向に移動させる。更に、処理部9は、合焦レンズ72及びレフ測定光源61の移動に連動して眼内距離測定系8の合焦レンズ85をその光軸方向に移動させる。処理部9は、レフ測定光源61、合焦レンズ72及び合焦レンズ85、光源41及び視標チャート42を一体的に移動させることも可能である。
【0030】
(眼内距離測定系8)
眼内距離測定系8は眼球情報としての眼内距離測定のための光干渉計測を行う。光干渉計測が行われるとき、クイックリターンミラー67が上記分岐光路から退避される。また、光干渉計測よりも前にレフ測定が実施され、光ファイバ80aの端面が眼底Efと共役となるように合焦レンズ85の位置が調整される。
【0031】
図2に示すように、干渉計ユニット80において、干渉計光源81から出力された光(赤外光、広帯域光)L0は、光ファイバ80bを通じて導かれたファイバカプラ82により測定光LSと参照光LRとに分割される。測定光LSは、光ファイバ80aを通じてコリメータレンズ84に導かれる。一方、参照光LRは、光ファイバ80cを通じて参照光路長変更ユニット90に導かれる。
【0032】
参照光路長変更ユニット90は、参照光LRの光路長を変更する。参照光路長変更ユニット90に導かれた参照光LRは、コリメータレンズ91により平行光束とされてビームスプリッタ92に入射する。ビームスプリッタ92の透過方向には網膜・前房深度用シャッター93と網膜・前房深度用参照ミラーユニット94と網膜側校正用ユニット97とが設けられている。ビームスプリッタ92の反射方向には角膜用シャッター95と角膜用参照ミラーユニット96と角膜側校正用ユニット98とが設けられている。網膜・前房深度用参照ミラーユニット94は、結像レンズ94Aと網膜・前房深度用参照ミラー94Bとを含む。角膜用参照ミラーユニット96は、結像レンズ96Aと角膜用参照ミラー96Bとを含む。網膜側校正用ユニット97は、測定部位に対応した校正用光学部材を含む1以上の透光部材を光路に対して挿脱可能である。角膜側校正用ユニット98もまた、測定部位に対応した校正用光学部材を含む1以上の透光部材を光路に対して挿脱可能である。校正用光学部材は、例えば、屈折率及び透過方向(光軸方向)の厚さの双方が既知であるガラス(硝材)である。
【0033】
網膜側校正用ユニット97は、少なくとも前述の1以上の透光部材が円周方向に沿った配列で嵌め込まれた円板状の部材であり、その中心軸の回りに回転可能なターレット板と、ターレット板を中心軸の回りに回転させる駆動力を発生する駆動部とを含む。角膜側校正用ユニット98も同様に、少なくとも前述の1以上の透光部材が円周方向に沿った配列で嵌め込まれた円板状の部材であり、その中心軸の回りに回転可能なターレット板と、ターレット板を中心軸の回りに回転させる駆動力を発生する駆動部とを含む。なお、上記の2つのターレット板の少なくとも一方は、透光部材が嵌め込まれない孔部と前述の1以上の透光部材とが円周方向に沿った配列で嵌め込まれた円板状の部材であってよい。また、ソレノイドを用いて透光部材を光路に対して挿脱する構造であってもよい。
【0034】
参照光LRは、50:50のビームスプリッタ92により2つの光束(網膜・前房深度用、角膜用)に分割される。網膜・前房深度用シャッター93は、ビームスプリッタ92と網膜・前房深度用参照ミラー94Bとの間の網膜・前房深度用光束の光路(網膜・前房深度用参照光路)に対して挿脱可能である。網膜側校正用ユニット97は、1以上の透光部材のいずれかを網膜・前房深度用シャッター93と網膜・前房深度用参照ミラー94Bとの間の光路(網膜・前房深度用参照光路)に対して挿脱可能である。角膜用シャッター95は、ビームスプリッタ92と角膜用参照ミラー96Bとの間の角膜用光束の光路(角膜用参照光路)に対して挿脱可能である。角膜側校正用ユニット98は、1以上の透光部材のいずれかを角膜用シャッター95と角膜用参照ミラー96Bとの間の光路(角膜用参照光路)に対して挿脱可能である。
【0035】
(校正時)
校正時には、網膜・前房深度用シャッター93及び角膜用シャッター95の双方が光路から退避されている。網膜・前房深度用光束は、網膜側校正用ユニット97により光路に配置された透光部材(又は孔部)を通過し、結像レンズ94Aにより網膜・前房深度用参照ミラー94Bの反射面に結像され、網膜・前房深度用参照ミラー94Bにより反射され、結像レンズ94A及び当該透光部材(又は孔部)を通過してビームスプリッタ92に戻る。角膜用光束は、角膜側校正用ユニット98により光路に配置された透光部材(又は孔部)を通過し、結像レンズ96Aにより角膜用参照ミラー96Bの反射面に結像され、角膜用参照ミラー96Bにより反射され、結像レンズ96A及び当該透光部材(又は孔部)を通過してビームスプリッタ92に戻る。ビームスプリッタ92は、網膜・前房深度用参照ミラー94Bからの参照光の反射光と角膜用参照ミラー96Bからの参照光の反射光とを干渉させる。それにより生成された干渉光は、校正用の干渉光として、光ファイバ80cによりファイバカプラ82に導かれる。
【0036】
一方、被検眼Eからの測定光LSの戻り光による干渉光が発生しないよう、クイックリターンミラー67は前述の分岐光路に挿入される。また、被検眼Eからの測定光LSの戻り光の光路長が、干渉が発生しないよう十分長くなるように被検眼Eが対物レンズ51(眼内距離測定系8)から十分に離れた位置に配置されるようにしてもよい。ファイバカプラ82は、光ファイバ80cにより導かれてきた校正用の干渉光を光ファイバ80dに導く。光ファイバ80dは、校正用の干渉光を分光器83に導く。校正用の干渉光には、網膜側校正用ユニット97又は角膜側校正用ユニット98による透光部材の挿脱により変化した参照光路の長さに関する情報が含まれる。処理部9は、分光器83から出力された信号にFFT(Fast Fourier Transform)等の公知の信号処理を施すことにより、透光部材の挿脱により変化した参照光路の長さに対応して変位する信号を取得する。この信号の変位量に基づいて、校正が行われる。
【0037】
(測定時)
網膜・前房深度用シャッター93が光路から退避されている場合、網膜・前房深度用光束は、結像レンズ94Aにより網膜・前房深度用参照ミラー94Bの反射面に結像され、網膜・前房深度用参照ミラー94Bにより反射され、結像レンズ94Aを通過してビームスプリッタ92に戻る。角膜用シャッター95が光路から退避されている場合、角膜用光束は、結像レンズ96Aにより角膜用参照ミラー96Bの反射面に結像され、角膜用参照ミラー96Bにより反射され、結像レンズ96Aを通過してビームスプリッタ92に戻る。
【0038】
一方、干渉計ユニット80から出力された測定光LSは、コリメータレンズ84により平行光束とされる。平行光束とされた測定光LSは、光スキャナ87bにより偏向され、合焦レンズ85及びリレーレンズ86を通過し、ミラー87aにより偏向される。ミラー87aにより偏向された測定光LSは、瞳レンズ88を通過し、ダイクロイックミラー52により反射され、対物レンズ51を通過して被検眼Eに照射される。被検眼Eからの測定光LSの戻り光は、対物レンズ51を通過し、往路と同じ経路を通じて干渉計ユニット80に導かれる。光スキャナ87bは、例えば1以上のガルバノミラーを含み、処理部9による制御を受けて測定光LSの偏向方向を変化させる。光スキャナ87bは、瞳孔と光学的に共役な位置に配置される。
【0039】
ファイバカプラ82は、参照光路長変更ユニット90を経由した参照光と、測定光LSの戻り光とを干渉させる。それにより生成された干渉光LCは、光ファイバ80dにより分光器83に導かれる。分光器83は、干渉光LCを空間的に波長分離し、これら波長成分をラインセンサで検出する。処理部9は、分光器83から出力された信号にFFT等の公知の信号処理を施すことにより、深さ方向の情報を取り出す。
【0040】
本例ではスペクトラルドメインOCTが適用されているが、他のタイプのOCTを適用することも可能である。例えばスウェプトソースOCTが適用される場合、低コヒーレンス光源(干渉計光源81)の代わりに波長掃引光源(波長可変光源)が設けられ、且つ、分光器83の代わりにバランスドフォトダイオード等の光検出器が設けられる。
【0041】
処理部9は、深さ方向の所定位置に干渉信号が配置されるように、網膜・前房深度用参照ミラーユニット94と角膜用参照ミラーユニット96とを移動させることが可能である。FFTにより得られる干渉信号の強度の深さ方向における変化の例を
図3に示す。点線で示す干渉信号SC0が得られた状態において、
図4に示すように網膜・前房深度用参照ミラーユニット94をビームスプリッタ92に近接させることにより、
図3に示す所定範囲内に干渉信号SC0(網膜に相当)を移動させることができる。つまり、結像レンズ94A及び網膜・前房深度用参照ミラー94Bを点線で示す位置から実線で示す位置に移動させることにより、所望の範囲内に干渉信号SC0を移動させることができる。
【0042】
Zアライメント系1を用いて検出される角膜頂点の位置を利用することで、被検眼Eに対する対物レンズ51の距離(作動距離)を一定に保つことができる。ここで、角膜用シャッター95が光路から退避されると、角膜Kに相当する干渉信号も分光器83により同時に検出される。角膜用参照ミラー96Bは、網膜に相当する干渉信号SC1に重ならないように、角膜Kから所定距離dだけ離れた位置に配置される(
図5)。これにより、
図6に示すように、網膜に相当する干渉信号SC1と角膜に相当する干渉信号SC2の双方を、深さ方向における計測範囲Rにおいて同時に取得できる。
【0043】
図6に示すように計測範囲Rにおいて信号感度SCが変化する場合、比較的信号が弱い干渉信号SC1を比較的高感度の計測範囲R1で検出し、比較的信号が強い干渉信号SC2を比較的低感度の計測範囲R2で検出することができる。それにより、双方の干渉信号の検出精度が向上される。
【0044】
この実施形態では、被検眼Eの眼内距離を測定するとき、処理部9は、角膜用参照ミラーユニット96を固定した状態で網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を移動させる。それにより、基準部位としての角膜頂点を基準に被検眼Eの各種の眼内距離を測定することが可能になる。
図5に示すように、眼軸長を測定する場合、網膜に相当する干渉信号を検出できるように網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を移動させて角膜頂点と眼底(網膜)との距離D1を求める。前房深度を測定する場合、水晶体前面に相当する干渉信号を検出できるように網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を移動させて角膜頂点と水晶体前面との距離D2を求める。水晶体厚を測定する場合、水晶体後面に相当する干渉信号を検出できるように網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を移動させて角膜頂点と水晶体後面との距離(D2+D3)を求め、距離(D2+D3)から前述の距離D2を差し引いて距離D3を求める。角膜厚を測定する場合、角膜後面に相当する干渉信号を検出して角膜頂点と角膜後面との距離を求める。
【0045】
(情報処理系の構成)
眼科装置1000の情報処理系について説明する。眼科装置1000の情報処理系の機能的構成の例を
図7及び
図8に示す。
図7は、眼科装置1000の情報処理系の機能ブロック図の一例を表したものである。
図8は、
図7の演算処理部120の機能ブロック図の一例を表したものである。処理部9は、制御部110と演算処理部120とを含む。また、眼科装置1000は、表示部170と、操作部180と、通信部190とを含む。
【0046】
(制御部110)
制御部110は、プロセッサを含み、眼科装置1000の各部を制御する。制御部110は、主制御部111と、記憶部112とを含む。主制御部111は、校正制御部111Aを含む。
【0047】
主制御部111は、測定制御部として眼科装置1000の各部を制御する。主制御部111は、合焦制御部として、光源41及び視標チャート42、合焦レンズ72、85及びレフ測定光源61のそれぞれを移動する移動機構を駆動する駆動部のそれぞれに対して制御信号を出力することによりそれぞれの移動を制御する。合焦レンズ72及びレフ測定光源61は、共通の移動機構により移動されてもよい。この場合、主制御部111は、当該共通の移動機構を駆動する駆動部に対して制御信号を出力することにより合焦レンズ72及びレフ測定光源61の一体的な移動を制御する。同様に、合焦レンズ85は、合焦レンズ72及びレフ測定光源61と一体となって移動されてもよい。
【0048】
校正制御部111Aは、装置の各部を制御することにより、干渉計光源81の校正と、少なくとも網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を移動する移動機構を駆動するパルスモータ(駆動部、駆動手段)の校正とを行う。具体的には、校正制御部111Aは、クイックリターンミラー67を前述の分岐光路に挿入させる。次に、校正制御部111Aは、網膜・前房深度用シャッター93及び角膜用シャッター95の双方を光路から退避させる。続いて、校正制御部111Aは、網膜側校正用ユニット97及び角膜側校正用ユニット98の少なくとも一方を制御することにより、ビームスプリッタ92により分割された参照光路に所望の透光部材を配置させる。それにより、ビームスプリッタ92は、網膜・前房深度用参照ミラー94Bからの参照光の反射光と角膜用参照ミラー96Bからの参照光の反射光との干渉光を生成する。
【0049】
(演算処理部120)
演算処理部120は、例えば、眼屈折力の算出、眼内距離(眼軸長、前房深度、水晶体厚、角膜厚等)の算出、IOL度数の算出、光干渉計測画像(OCT画像)の生成、光干渉計測画像の解析など、各種の演算を実行する。演算処理部120は、眼屈折力算出部121と、眼内距離算出部122と、IOL度数算出部123と、校正量算出部124と、データ生成部125とを含む。眼内距離算出部122は、眼軸長算出部122Aと、前房深度算出部122Bと、水晶体厚算出部122Cと、角膜厚算出部122Dとを含む。
【0050】
眼屈折力の算出において、眼屈折力算出部121は、レフ測定受光系7からの出力(リング像)の形状を解析する。例えば、眼屈折力算出部121は、得られた画像における輝度分布からリング像の重心位置を求め、この重心位置から放射状に延びる複数の走査方向に沿った輝度分布を求め、この輝度分布からリング像を特定する。続いて、眼屈折力算出部121は、特定されたリング像の近似楕円を求め、この近似楕円の長径及び短径を公知の式に代入することによって球面度数S、乱視度数C及び乱視軸角度Aを求める。或いは、眼屈折力算出部121は、基準パターンに対するリング像の変形及び変位に基づいて眼屈折力のパラメータを求めることができる。
【0051】
眼屈折力算出部121は、眼内距離測定系8を用いた光干渉計測の結果から、少なくとも球面度数を求めることができる。例えば、眼屈折力算出部121は、合焦レンズ85の移動により干渉光LCの検出信号がピークになる合焦レンズ85の位置を特定し、0Dに相当する合焦レンズの位置と、特定されたピークになる合焦レンズ85の位置とに基づいて等価球面度数を求める。
【0052】
眼屈折力算出部121は、観察系5により取得されたケラトリング像に基づいて、角膜屈折力、角膜乱視度及び角膜乱視軸角度を算出する。例えば、眼屈折力算出部121は、ケラトリング像を解析することにより角膜前面の強主経線や弱主経線の角膜曲率半径を算出し、角膜曲率半径に基づいて上記パラメータを算出する。
【0053】
眼内距離算出部122は、眼内距離測定系8により取得された2つの干渉光の検出データに基づいて被検眼Eの1以上の眼内距離を算出する。眼内距離算出部122は、検出データに含まれる当該2つの干渉光に基づく2つの干渉信号(例えば
図6参照)の位置の間隔に基づいて被検眼Eの眼内距離を算出する。
【0054】
眼内距離算出部122は、被検眼Eの基準部位を基準に複数の眼内距離を算出することが可能である。基準部位として、被検眼Eからの測定光LSの戻り光の強度が強い部位が挙げられる。基準部位には、被検眼Eの角膜頂点(角膜前面)や網膜や内境界膜等がある。それにより、被検眼Eが動いてしまい、干渉信号の位置が変わってしまった場合でも、常に基準部位の干渉信号を基準にすることによって、常に高い精度で複数の眼内距離を算出することができる。
【0055】
眼軸長算出部122Aは、角膜頂点に相当する干渉信号の位置と網膜に相当する干渉信号の位置との間隔に基づいて眼軸長(眼内距離D1)を求める。前房深度算出部122Bは、角膜頂点に相当する干渉信号の位置と水晶体前面に相当する干渉信号の位置との間隔に基づいて前房深度(眼内距離D2)を求める。前房深度を求めるときの角膜頂点に相当する干渉信号の位置は、眼軸長を求めるときに用いた角膜頂点に相当する干渉信号の位置を流用できる。水晶体厚算出部122Cは、角膜頂点に相当する干渉信号の位置と水晶体後面に相当する干渉信号の位置との間隔に基づいて距離(D2+D3)を求め、求められた距離(D2+D3)から距離D2を差し引くことにより水晶体厚(距離D3)を求める。角膜厚算出部122Dは、角膜頂点(角膜前面)に相当する干渉信号の位置と角膜後面に相当する干渉信号の位置との間隔に基づいて角膜厚を求める。
【0056】
IOL度数の算出において、IOL度数算出部123は、ケラトの測定結果と眼内距離算出部122において求められた眼軸長、前房深度、水晶体厚及び角膜厚の少なくとも1つを公知の計算式に代入することによりIOL度数を求める。なお、IOL度数算出部123は、眼屈折力の算出結果と眼軸長の算出結果とを公知の計算式に代入することによりIOL度数を求めてもよい。
【0057】
校正量算出部124は、干渉計光源81に関する校正量及び網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を移動するためのパルスモータに関する校正量(調整量)を算出する。干渉計光源81に関する校正量は、網膜・前房深度用参照ミラーユニット94及び角膜用参照ミラーユニット96の双方の移動が伴わない状態で算出される。校正量算出部124は、網膜・前房深度用参照光路の長さと角膜用参照光路の長さとが略等しくされた後にいずれか一方の光路に透光部材が挿入されているときに取得された第1検出データと、当該光路から透光部材が退避されているときに取得された第2検出データとに基づいて干渉計光源81に関する校正量を算出する。第1検出データは、例えば、網膜側校正用ユニット97により参照光路の長さが変更された後に生成された、網膜・前房深度用参照光路からの反射光(戻り光)と角膜用参照光路からの反射光(戻り光)との第1干渉光を分光器83により検出することにより取得される。第2検出データは、網膜側校正用ユニット97により参照光路の長さが変更される前に生成された、網膜・前房深度用参照光路からの反射光と角膜用参照光路からの反射光との第2干渉光を分光器83により検出することにより取得される。
【0058】
2つの検出データにそれぞれ含まれる第1干渉光に基づく干渉信号と第2干渉光に基づく干渉信号との変位量は、分光器83に含まれるラインセンサのピクセル数に対応する。変位量からピクセル数を求めることで、透光部材の挿脱による光路長の変化分に相当するラインセンサのピクセル数がわかり、干渉計光源81に関する校正量を求めることが可能になる。
【0059】
また、網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を移動するためのパルスモータに関する校正量は、網膜・前房深度用参照光路の長さと角膜用参照光路の長さとを相対的に変更することにより算出される。校正量算出部124は、上記の光路長が相対的に変更された後に取得された第1検出データと、上記の光路長が相対的に変更される前に取得された第2検出データとに基づいて、当該パルスモータに関する校正量を算出する。第1検出データは、上記の光路長が相対的に変更された後に網膜・前房深度用参照光路からの戻り光と角膜側参照光路からの戻り光との第1干渉光を分光器83により検出することにより取得される。第2検出データは、上記の光路長が相対的に変更される前に生成された網膜・前房深度用参照光路からの戻り光と角膜用参照光路からの戻り光との第2干渉光を分光器83により検出することにより取得される。
【0060】
2つの検出データにそれぞれ含まれる第1干渉光に基づく干渉信号と第2干渉光に基づく干渉信号との変位量は、網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を移動するためのパルスモータに対する制御パルス数(制御量)に対応する。例えば、取得された変位量から前述の干渉計光源81に関する校正量に基づいて正確な変位量を求めることで、透光部材の挿脱による光路長の変化分に相当する制御パルス数がわかり、パルスモータに関する校正量を求めることが可能になる。なお、干渉計光源81に関する校正量を用いて干渉信号の変位量を換算することなく、取得された干渉信号の変位量をそのまま用いてパルスモータに関する校正量を求めてもよい。
【0061】
また、測定部位に応じて厚さが互いに異なる複数の透光部材を選択的に光路に挿脱させることにより、各測定部位の測定範囲での校正が可能になり、高精度な眼内距離の測定を維持することができる。
【0062】
この実施形態では、角膜用参照ミラーユニット96が固定された状態で前述の測定が行われるため、網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を移動するためのパルスモータに関する校正量だけが算出される。角膜用参照ミラーユニット96を移動するためのパルスモータに関する校正量も同様に算出することも可能である。
【0063】
データ生成部125は、光干渉計測による測定時に得られた干渉光の検出結果と校正時に取得された校正量とに基づいて、被検眼Eに関するデータを生成する。被検眼Eに関するデータには、光干渉計測画像、光干渉計測画像の解析結果などがある。データ生成部125は、眼内距離算出部122を含んでもよい。
【0064】
(表示部170、操作部180)
表示部170は、制御部110による制御を受けて情報を表示する。表示部170は表示部10を含む。操作部180は、眼科装置1000の操作や情報入力に使用される。操作部180は、各種のハードウェアキー(ジョイスティック、ボタン、スイッチなど)、及び/又は、表示部170に提示される各種のソフトウェアキー(ボタン、アイコン、メニューなど)を含む。
【0065】
(通信部190)
通信部190は、外部装置と通信する機能を持つ。通信部190は、外部装置との接続形態に応じた通信インターフェイスを備える。外部装置の例として、レンズの光学特性を測定するための眼鏡レンズ測定装置がある。眼鏡レンズ測定装置は、被検者が装用する眼鏡レンズの度数などを測定し、この測定データを眼科装置1000に入力する。また、外部装置は、任意の眼科装置、記録媒体から情報を読み取る装置(リーダ)や、記録媒体に情報を書き込む装置(ライタ)などでもよい。更に、外部装置は、病院情報システム(HIS)サーバ、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)サーバ、医師端末、モバイル端末、個人端末、クラウドサーバなどでもよい。
【0066】
<動作例>
実施形態に係る眼科装置1000の動作について説明する。眼科装置1000の動作の一例を
図9〜
図12に示す。
図9に、眼科装置1000を用いた測定フローを示す。
【0067】
(S1)
眼科装置1000は、検者等のユーザによる電源オン操作により通常動作モードで起動される。
【0068】
(S2)
眼科装置1000は、眼内距離を測定するための校正量を算出する。
【0069】
(S3)
眼科装置1000は、眼内距離測定を含む他覚測定と自覚検査とを実行する。S3では、眼内距離測定において、S2において算出された校正量を用いて測定値が求められる。
【0070】
(S4)
ユーザにより電源オフ操作が行われたとき(S4:Y)、眼科装置1000の動作は終了する(エンド)。ユーザにより電源オフ操作が行われないとき(S4:N)、眼科装置1000の動作はS5に移行する。
【0071】
(S5)
ユーザにより一定時間内に操作部180に対して操作が行われなかったとき(S5:Y)、眼科装置1000の動作はS6に移行する。ユーザにより一定時間内に操作部180に対して操作が行われたとき(S5:N)、眼科装置1000の動作はS3に移行する。
【0072】
(S6)
ユーザにより一定時間内に操作部180に対して操作が行われなかったとき(S5:Y)、眼科装置1000は通常動作モードからスリープモードに移行する。スリープモードでは、光源の点灯がオフにされたり、表示部130の表示がオフにされたりする。
【0073】
(S7)
スリープモードにおいてユーザにより操作部180に対して操作を行われなかったとき(S7:N)、眼科装置1000の動作はS6に移行する。スリープモードにおいてユーザにより操作部180に対して操作が行われたとき(S7:Y)、眼科装置1000の動作はS2に移行する。
【0074】
図9のS2では、網膜側校正用ユニット97及び角膜側校正用ユニット98の少なくとも一方を用いて、干渉計光源81に関する校正量と、パルスモータに関する校正量とが算出される。
図9のS3では、網膜側校正用ユニット97を用いて、参照光路に被検眼Eの分散を補償するための分散補償部材が挿入される。
【0075】
図10Aは、角膜側校正用ユニット98の構成の概要を模式的に表したものである。
図10Bは、網膜側校正用ユニット97の構成の概要を模式的に表したものである。
図10Cは、実施形態の動作説明図を表したものである。
【0076】
角膜側校正用ユニット98は、孔部981と、厚さt1を有するガラス(厚)(透光部材)982と、厚さt2を有するガラス(中)983とが円周方向に沿って設けられたターレット板98aを含む(
図10A参照)。厚さt1は、眼軸長に相当する厚さである。厚さt2(t1>t2)は、前房深度に相当する厚さである。網膜側校正用ユニット97は、分散補償部材971と、孔部972と、厚さt3を有するガラス(薄)973とが、円周方向に沿って設けられたターレット板97aを含む(
図10B参照)。厚さt3(t1>t2>t3)は、角膜厚に相当する厚さである。
【0077】
図10Cに示すように、干渉計光源81に関する校正量の算出時には、角膜側校正用ユニット98により角膜用参照光路に孔部981が配置され、網膜側校正用ユニット97により網膜・前房深度用参照光路にガラス(薄)973が配置される。それにより、干渉計光源81の経時変化の影響を受けた信号の変位量に基づく校正量が算出される。なお、干渉計光源81に関する校正量の算出時には、角膜用参照光路にガラス(薄)が配置され、網膜・前房深度用参照光路に孔部が配置されてもよい。
【0078】
前房深度及び水晶体厚の測定時に使用されるパルスモータに関する校正量の算出時には、角膜側校正用ユニット98により角膜用参照光路にガラス(中)983が配置され、網膜側校正用ユニット97により網膜・前房深度用参照光路に孔部972が配置される。それにより、前房深度及び水晶体厚の測定範囲でパルスモータの経時変化の影響を受けた信号の変位量に基づく校正量が算出される。眼軸長の測定時に使用されるパルスモータに関する校正量の算出時には、角膜側校正用ユニット98により角膜用参照光路にガラス(厚)982が配置され、網膜側校正用ユニット97により網膜・前房深度用参照光路に孔部972が配置される。それにより、眼軸長の測定範囲でパルスモータの経時変化の影響を受けた信号の変位量に基づく校正量が算出される。
【0079】
光干渉計測測定時には、角膜側校正用ユニット98により角膜用参照光路に孔部981が配置され、網膜側校正用ユニット97により網膜・前房深度用参照光路に分散補償部材971が配置される。それにより、分散補償部材を個別に設ける必要がなくなる。
【0080】
図11に、
図9のS2の校正の動作例のフロー図を示す。S11〜S17では、干渉計光源81に関する校正量が求められる。S18〜S21では、前房深度及び水晶体厚の測定時に使用されるパルスモータに関する校正量が求められる。S22〜S25では、眼軸長測定時に使用されるパルスモータに関する校正量が求められる。
【0081】
(S11)
校正制御部111Aは、干渉計光源81から出力される光L0の光量を所定の校正用の光量まで低下させる。校正制御部111Aは、例えば、パルス幅変調制御により点灯時間を短くすることにより干渉計光源81からの光L0の光量を低下させる。校正制御部111Aは、光L0の光路にND(Neutral Density)フィルタを挿入したり、図示しない光減衰器の減衰率を制御したりすることによりファイバカプラ82に導かれる光L0の光量を低下させてもよい。また、校正制御部111Aは、クイックリターンミラー67を前述の分岐光路に挿入させると共に、網膜・前房深度用シャッター93及び角膜用シャッター95の双方を光路から退避させる。
【0082】
(S12)
校正制御部111Aは、網膜・前房深度用参照ミラー94Bからの参照光の反射光と角膜用参照ミラー96Bからの参照光の反射光とが干渉する位置に、網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を移動する。校正制御部111Aは、分光器83により得られる干渉光の検出結果に基づいて網膜・前房深度用参照ミラーユニット94の移動を制御することができる。
【0083】
(S13)
校正制御部111Aは、S12で移動された網膜・前房深度用参照ミラーユニット94の位置における2つの参照光路の反射光の干渉光に基づく干渉信号を取得する。校正量算出部124は、取得された干渉信号の重心位置をガラス未挿入時の信号位置として求める。
【0084】
(S14)
校正制御部111Aは、
図10Cに示すように、角膜側校正用ユニット98により角膜用参照光路に孔部981を配置させ、網膜側校正用ユニット97により網膜・前房深度用参照光路にガラス(薄)973を配置させる。
【0085】
(S15)
校正制御部111Aは、S14で網膜・前房深度用参照光路にガラス(薄)973が挿入されたときの2つの参照光路の反射光の干渉光に基づく干渉信号を取得する。校正量算出部124は、取得された干渉信号の重心位置をガラス(薄)挿入時の信号位置として求める。
【0086】
(S16)
校正量算出部124は、S13で取得された干渉信号の重心位置とS15で取得された干渉信号の重心位置との位置ずれ(重心間距離)を求める。
【0087】
(S17)
校正量算出部124は、S16において求められた位置ずれ分に相当する分光器83のラインセンサのピクセル数pを求め、ガラス(薄)973による光路長の変化分T3を用いて、干渉計光源81に関する校正量(T3/p(μm/ピクセル))を算出する。T3は、ガラス(薄)973の厚さt3と既知の屈折率を用いて特定することが可能である。
【0088】
(S18)
次に、校正制御部111Aは、
図10Cに示すように、角膜側校正用ユニット98により角膜用参照光路にガラス(中)983を配置させ、網膜側校正用ユニット97により網膜・前房深度用参照光路に孔部972を配置させる。
【0089】
(S19)
S18において角膜用参照光路の長さが長くなるため、網膜・前房深度用参照光路の長さを長くすることで、2つの参照光路の反射光の干渉光を生成することができる。そのため、校正制御部111Aは、網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を移動して、網膜・前房深度用参照ミラー94Bからの参照光の反射光と角膜用参照ミラー96Bからの参照光の反射光とを干渉させる。このとき、校正制御部111Aは、網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を所望の位置まで移動するパルスモータを制御するための制御パルス数である移動パルス数をカウントし、カウントした移動パルス数PL1を取得する。
【0090】
(S20)
校正制御部111Aは、S19で移動された網膜・前房深度用参照ミラーユニット94の位置における2つの参照光路の反射光の干渉光に基づく干渉信号を取得する。校正量算出部124は、取得された干渉信号の重心位置をガラス(中)挿入時の信号位置として求める。
【0091】
(S21)
校正量算出部124は、S19の移動前の干渉信号の重心位置からS20において求められた干渉信号の重心位置までの分光器83のラインセンサのピクセル数p´を求める。校正量算出部124は、S17において算出された校正量を用いて、ピクセル数p´に相当する移動距離D´(μm)を求める。校正量算出部124は、求められた移動距離D´と、ガラス(中)983による光路長の変化分T2と、S19で取得された移動パルス数PL1とを用いて、網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を移動するパルスモータに関する校正量((D´+T2)/PL1(μm/パルス))を算出する。S21において求められた校正量は、前房深度及び水晶体厚の測定時に使用される。
【0092】
(S22)
次に、校正制御部111Aは、
図10Cに示すように、角膜側校正用ユニット98により角膜用参照光路にガラス(厚)982を配置させ、網膜側校正用ユニット97により網膜・前房深度用参照光路に孔部972を配置させる。
【0093】
(S23)
S23では、S19と同様に、校正制御部111Aは、網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を移動して、網膜・前房深度用参照ミラー94Bからの参照光の反射光と角膜用参照ミラー96Bからの参照光の反射光とを干渉させる。このとき、校正制御部111Aは、網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を所望の位置まで移動するパルスモータを制御するための制御パルス数である移動パルス数をカウントし、カウントした移動パルス数PL2を取得する。
【0094】
(S24)
校正制御部111Aは、S23で移動された網膜・前房深度用参照ミラーユニット94の位置における2つの参照光路の戻り光の干渉光に基づく干渉信号を取得する。校正量算出部124は、取得された干渉信号の重心位置をガラス(厚)挿入時の信号位置として求める。
【0095】
(S25)
校正量算出部124は、S23の移動前の干渉信号の重心位置からS24において求められた干渉信号の重心位置までの分光器83のラインセンサのピクセル数p´´を求める。校正量算出部124は、S17において算出された校正量を用いて、ピクセル数p´´に相当する移動距離D´´(μm)を求める。校正量算出部124は、求められた移動距離D´´と、ガラス(厚)982による光路長の変化分T1と、S23で取得された移動パルス数PL2とを用いて、網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を移動するパルスモータに関する校正量((D´´+T1)/PL2(μm/パルス))を算出する。S25において求められた校正量は、眼軸長の測定時に使用される。以上で、
図9のS2の校正の動作は終了する(エンド)。
【0096】
図12に、
図9のS3の測定の動作例のフロー図を示す。
【0097】
(S31)
検者等のユーザが操作部180に対して所定の操作を行うことで、眼科装置1000は、アライメントを実行する。具体的には、主制御部111は、Zアライメント光源11やXYアライメント光源21や光源41を点灯させる。処理部9は、撮像素子59の撮像面上に結像された前眼部像の撮像信号を取得し、表示部170(表示部10の表示画面10a)に前眼部像E’を表示させる。その後、
図1に示す光学系が被検眼Eの検査位置に移動される。検査位置とは、被検眼Eの検査を行うことが可能な位置である。前述のアライメント(Zアライメント系1及びXYアライメント系2と観察系5とによるアライメント)を介して被検眼Eが検査位置に配置される。光学系の移動は、ユーザによる操作若しくは指示又は制御部110による指示にしたがって、制御部110によって実行される。
【0098】
また、主制御部111は、レフ測定光源61、合焦レンズ72、合焦レンズ85、光源41及び視標チャート42を連動させて、光軸に沿って原点、例えば、0Dの位置に移動させる。原点への移動は、ユーザによる操作若しくは指示又は主制御部111による指示にしたがって、主制御部111によって実行される。
【0099】
(S32)
主制御部111は、ケラト測定を実行させる。すなわち、主制御部111は、ケラトリング光源32を点灯させる。ケラトリング光源32から光が出力されると、角膜Kに角膜形状測定用のリング状光束光が投影される。眼屈折力算出部121は、撮像素子59によって取得された像に対して演算処理を施すことにより、角膜曲率半径を算出し、算出された角膜曲率半径から角膜屈折力、角膜乱視度及び角膜乱視軸角度を算出する。制御部110では、算出された角膜屈折力などが記憶部112に記憶される。
【0100】
(S33)
主制御部111は、ダイクロイックミラー52により観察系5の光路から分岐された光路にクイックリターンミラー67の反射面を配置させ、レフ測定を実行させる。すなわち、主制御部111は、前述のようにレフ測定のためのリング状の測定パターン光束を被検眼Eに投影する。被検眼Eからの測定パターン光束の戻り光に基づくリング像が、撮像素子74の結像面に結像される。主制御部111は、撮像素子74により検出された眼底Efからの戻り光に基づくリング像を取得できたか否かを判定する。例えば、主制御部111は、撮像素子74により検出された戻り光に基づく像のエッジの位置(画素)を検出し、像の幅(外径と内径との差)が所定値以上であるか否かを判定する、或いは強度が所定の高さ以上の点(像)に基づいてリングを形成できるか否かを判定することにより、リング像を取得できたか否かを判定する。
【0101】
リング像を取得できたと判定されたとき、眼屈折力算出部121は、被検眼Eに投影された測定パターン光束の戻り光に基づくリング像を公知の手法で解析し、仮の球面度数S及び乱視度数Cを取得する。仮の球面度数及び乱視度数C基づき、レフ測定光源61、合焦レンズ72(合焦レンズ85)、光源41及び視標チャート42を等価球面度数(S+C/2)の位置へ移動させる。その位置から、雲霧を行った後、再度本測定としてリング像を取得し、前述と同様に得られたリング像の解析結果と合焦レンズの移動量から球面度数S、乱視度数C及び乱視軸角度Aが求める。制御部110では、合焦レンズ72(合焦レンズ85)の位置や算出された球面度数などが記憶部112に記憶される。
【0102】
リング像を取得できないと判定されたとき、まずは強度屈折異常眼である可能性を考慮してレフ測定光源61、合焦レンズ72をあらかじめ設定したステップでマイナス度数側(例えば−10D)、プラス度数側(例えば+10D)へ移動し各位置でリング像の検出を実施する。それでもリング像を取得できないと判定されたとき、眼科装置1000の動作はS34に移行する。制御部110では、レフ測定結果が得られなかったことを示す情報が記憶部112に記憶される。
【0103】
(S34)
主制御部111は、眼軸長測定を実行させる。具体的には、主制御部111は、干渉計光源81を点灯させた後、角膜用参照光路に対し角膜用シャッター95を挿入させ、網膜・前房深度用参照光路から網膜・前房深度用シャッター93を退避させる。次に、主制御部111は、ダイクロイックミラー52により観察系5の光路から分岐された光路からクイックリターンミラー67の反射面を退避させる。それにより、干渉計ユニット80と被検眼Eとの間に測定光LSの光路が形成され、光干渉計測経路が開放される。主制御部111は、S33において記憶部112に記憶された情報に基づいて、レフ測定結果があるか否かを判定する。
【0104】
レフ測定結果があると判定されたとき、主制御部111は、S33において記憶部112に記憶された合焦レンズ72(合焦レンズ85)の位置から眼軸長測定時の合焦レンズ85の位置を決定し、決定された位置に合焦レンズ85を移動する。すなわち、S34では、S33のレフ測定を行うために被検眼Eに対する合焦において求められた合焦レンズ72の位置から合焦レンズ85の位置が決定される。具体的には、レフ測定は被検眼Eに雲霧させた状態で実行されるため、レフ測定時は、被検眼Eに対する合焦において求められた合焦レンズ72の位置から所定の距離ΔDだけ移動される。したがって、S34において移動された合焦レンズ85の位置は、レフ測定時の合焦レンズ85(合焦レンズ72)の位置から距離(−ΔD)だけ移動された位置となる。レフ測定系の移動部(レフ測定光源61、合焦レンズ72)と眼内距離測定系8の合焦レンズ85は一体で移動可能であってもよいし、個別に移動可能であってもよい。一体で移動する場合、S33のレフ測定時には合焦レンズ85は既に雲霧位置にあるので雲霧分のみ戻せばよい。個別に移動される場合や、一体となっていても基準位置や倍率が異なる場合は上記のように移動する。主制御部111は、網膜に相当する干渉信号の位置が所定の位置となるように網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を移動する。
【0105】
一方、レフ測定結果がないと判定されたとき、主制御部111は、網膜に相当する干渉信号の位置が所定の位置となるように網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を移動する。次に、主制御部111は、網膜に相当する干渉信号の強度が最も高くなるように合焦レンズ85を移動する。
【0106】
以上のように、レフ測定結果に応じて合焦レンズ85の移動と網膜・前房深度用参照ミラーユニット94の移動とが行われると、主制御部111は、角膜用参照光路から角膜用シャッター95を退避させる。それにより、角膜頂点に相当する干渉信号と網膜に相当する干渉信号とを同時に検出することが可能になる。眼軸長算出部122Aは、同時に検出可能になった角膜頂点に相当する干渉信号の位置と網膜に相当する干渉信号の位置との間隔に基づいて眼軸長を算出する。このとき、S17で求められた干渉計光源81に関する校正量を用いた干渉信号の重心位置の移動距離と、S25で求められたパルスモータに関する校正量を用いた網膜・前房深度用参照ミラーユニット94の移動距離とを加味して、眼軸長が求められる。制御部110では、算出された眼軸長が記憶部112に記憶される。
【0107】
(S35)
主制御部111は、前房深度測定を実行させる。具体的には、主制御部111は、干渉計光源81を点灯させ、角膜用参照光路に対し角膜用シャッター95を挿入させ、網膜・前房深度用参照光路から網膜・前房深度用シャッター93を退避させる。次に、主制御部111は、水晶体前面に相当する干渉信号の位置が所定の位置となるように網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を移動する。主制御部111は、水晶体前面に相当する干渉信号の強度が最も高くなるように合焦レンズ85を移動し、角膜用参照光路から角膜用シャッター95を退避させる。それにより、角膜頂点に相当する干渉信号と水晶体前面に相当する干渉信号とを同時に検出することが可能になる。前房深度算出部122Bは、同時に検出可能になった角膜頂点に相当する干渉信号の位置と水晶体前面に相当する干渉信号の位置との間隔に基づいて前房深度を算出する。このとき、S17で求められた干渉計光源81に関する校正量を用いた干渉信号の重心位置の移動距離と、S21で求められたパルスモータに関する校正量を用いた網膜・前房深度用参照ミラーユニット94の移動距離とを加味して、前房深度が求められる。制御部110では、算出された前房深度が記憶部112に記憶される。
【0108】
(S36)
主制御部は、水晶体厚測定を実行させる。具体的には、主制御部111は、干渉計光源81を点灯させ、角膜用参照光路に対し角膜用シャッター95を挿入させ、網膜・前房深度用参照光路から網膜・前房深度用シャッター93を退避させる。次に、主制御部111は、水晶体後面に相当する干渉信号の位置が所定の位置となるように網膜・前房深度用参照ミラーユニット94を移動する。主制御部は、水晶体後面に相当する干渉信号の強度が最も高くなるように合焦レンズ85を移動し、角膜用参照光路から角膜用シャッター95を退避させる。それにより、角膜頂点に相当する干渉信号と水晶体後面に相当する干渉信号とを同時に検出することが可能になる。水晶体厚算出部122Cは、同時に検出可能になった角膜頂点に相当する干渉信号の位置と水晶体後面に相当する干渉信号の位置との間隔に基づいて、角膜頂点と水晶体後面との距離を求める。水晶体厚算出部122Cは、求められた角膜頂点と水晶体後面との距離からS35において求められた前房深度を差し引くことにより、水晶体厚を算出する。このとき、S17で求められた干渉計光源81に関する校正量を用いた干渉信号の重心位置の移動距離と、S21で求められたパルスモータに関する校正量を用いた網膜・前房深度用参照ミラーユニット94の移動距離とを加味して、水晶体厚が求められる。制御部110では、算出された水晶体厚が記憶部112に記憶される。
【0109】
(S37)
主制御部111は、角膜厚測定を実行させる。具体的には、主制御部111は、干渉計光源81を点灯させ、角膜用参照光路から角膜用シャッター95を退避させ、網膜・前房深度用参照光路に対し網膜・前房深度用シャッター93を挿入させる。次に、主制御部111は、角膜後面に相当する干渉信号の強度が最も高くなるように合焦レンズ85を移動する。角膜頂点に相当する干渉信号と角膜後面に相当する干渉信号とが同時に検出することが可能であるため、角膜厚算出部122Dは、角膜頂点に相当する干渉信号の位置と角膜後面に相当する干渉信号の位置との間隔に基づいて角膜厚を算出する。このとき、S17で求められた干渉計光源81に関する校正量を用いた干渉信号の重心位置の移動距離を加味して、角膜厚が求められる。制御部110では、算出された角膜厚が記憶部112に記憶される。
【0110】
(S38)
IOL度数算出部123は、S31〜S37で求められた角膜屈折力(ケラト値)、眼軸長測定、前房深度、水晶体厚及び角膜厚の少なくとも1つを用いてIOLの度数を求める。制御部110では、求められたIOL度数が記憶部112に記憶される。
【0111】
(S39)
制御部110は、例えば、操作部180に対するユーザの指示に基づき、視標チャート42を制御することにより所望の視標を表示させる。また、制御部110は、他覚測定の結果に応じた位置に光源41及び視標チャート42を移動する。被検者は、眼底Efに投影された視標に対する応答を行う。例えば、視力測定用の視標の場合には、被検者の応答により被検眼の視力値が決定される。視標の選択とそれに対する被検者の応答が、検者又は制御部110の判断により繰り返し行われる。
【0112】
或いは、制御部110は、他覚測定で得られた被検眼Eの乱視状態(乱視度数、乱視軸角度)に基づいて、この乱視状態が矯正されるようにVCCレンズ44を制御する。被検者は、眼底Efに投影された視標に対する応答を行う。被検者の応答に基づきVCCレンズを制御することも可能である。例えば、視力測定用の視標の場合には、被検者の応答により被検眼の視力値が決定される。視標の選択とそれに対する被検者の応答が、検者又は制御部110の判断により繰り返し行われる。検者又は制御部110は、被検者からの応答に基づいて視力値或いは処方値(S、C、A)を決定し、眼科装置1000の動作は終了する(エンド)。
【0113】
この実施形態では、干渉計光源81の特性及びパルスモータの駆動特性の双方の経時変化を考慮して眼軸長、前房深度及び水晶体厚を求める場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、干渉計光源81の特性の経時変化だけを考慮して眼軸長、前房深度及び水晶体厚を求めてもよいし、パルスモータの駆動特性の経時変化だけを考慮して眼軸長、前房深度及び水晶体厚を求めてもよい。
【0114】
[作用・効果]
実施形態に係る光干渉計測装置の作用及び効果について説明する。
【0115】
実施形態に係る光干渉計測装置(眼科装置1000)は、光源(干渉計光源81)からの光(光L0)を参照光(参照光LR)と測定光(測定光LS)とに分割し、測定光を物体(被検眼E)に照射し、その戻り光と参照光との干渉光(干渉光LC)を生成し、生成された干渉光を検出する干渉光学系(干渉計ユニット80)を備えている。光干渉計測装置は、光路分割部材(ビームスプリッタ92)と、第1参照光路長変更部(網膜側校正用ユニット97)と、校正量算出部(校正量算出部124)と、データ生成部(データ生成部125)とを含む。光路分割部材は、参照光を第1参照光路(網膜・前房深度用参照光路)及び第2参照光路(角膜用参照光路)に導く。第1参照光路長変更部は、第1参照光路及び第2参照光路の少なくとも一方である可変参照光路(網膜・前房深度用参照光路)の長さを変更する。校正量算出部は、第1参照光路長変更部により可変参照光路の長さが変更された後に生成された第1参照光路からの戻り光と第2参照光路からの戻り光との第1干渉光を干渉光学系により検出して取得された第1検出データと、可変参照光路の長さが変更される前に生成された第1参照光路からの戻り光と第2参照光路からの戻り光との第2干渉光を干渉光学系により検出して取得された第2検出データとに基づいて、光源に関する校正量を求める。データ生成部は、干渉光の検出結果と校正量とに基づいて、物体に関するデータを生成する。
【0116】
このような構成によれば、物体に関するデータを生成するために用いられる干渉光学系において参照光路を分割して得られた2つの参照光路からの戻り光を干渉させた干渉光を用いるようにしたので、省スペースで光源に関する校正量を求めることができる。
【0117】
また、実施形態に係る光干渉計測装置では、校正量算出部は、第1参照光路の長さと第2参照光路の長さとが略等しい状態でそれぞれ取得された第1検出データと第2検出データとに基づいて校正量を求めてもよい。
【0118】
このような構成によれば、干渉光学系における参照光路を分割して得られた第1参照光路の長さと第2参照光路の長さとが略等しい状態で校正量を求めるようにしたので、光源の経時変化に基づく校正量を容易に求めることができる。
【0119】
また、実施形態に係る光干渉計測装置では、第1参照光路長変更部は、1以上の透光部材を含み、可変参照光路に1以上の透光部材を挿脱させることにより当該参照光路の長さを変更してもよい。
【0120】
このような構成によれば、透光部材を挿脱させることにより可変参照光路の長さを変更するようにしたので、校正用の光学系を別途に設けたり、光源からの光を校正用に分岐させたりすることなく、校正量を求めることができる。
【0121】
また、実施形態に係る光干渉計測装置では、1以上の透光部材は、分散補償部材を含んでもよい。
【0122】
このような構成によれば、干渉光学系による測定時に分散補償部材を別途に設ける必要がなくなり、装置の省スペース化を図ることができる。
【0123】
また、実施形態に係る光干渉計測装置は、第2参照光路長変更部と、制御部とを含んでもよい。第2参照光路長変更部は、第1参照光路の長さと第2参照光路の長さとを相対的に変更する。制御部は、少なくとも第2参照光路長変更部を制御する。校正量算出部は、第1検出データと第2検出データとの間の信号変位量と、信号変位量に対応する第2参照光路長変更部に対する制御量とに基づいて第2参照光路長変更部に関する校正量を求める。
【0124】
このような構成によれば、校正用の光学系を別途に設けることなく、第1参照光路の長さと第2参照光路の長さとを相対的に変更する手段の特性の経時変化に基づく校正量を高精度に求めることができる。
【0125】
また、実施形態に係る光干渉計測装置は、可変参照光路の長さの変更量が異なる2以上の透光部材を含み、校正量算出部は、2以上の透光部材のそれぞれに対応する校正量を求めてもよい。
【0126】
このような構成によれば、可変参照光路の長さの変更量に対応した測定範囲で校正量を求めることができ、より高精度な光干渉計測測定が可能になる。
【0127】
また、実施形態に係る光干渉計測装置は、光源からの光を参照光と測定光とに分割し、測定光を物体に照射し、その戻り光と参照光との干渉光を生成し、生成された干渉光を検出する干渉光学系を備える。光干渉計測装置は、光路分割部材と、第2参照光路長変更部と、制御部と、校正量算出部と、データ生成部とを含む。光路分割部材は、参照光を第1参照光路及び第2参照光路に導く。第2参照光路長変更部は、第1参照光路の長さと第2参照光路の長さとを相対的に変更する。制御部は、少なくとも第2参照光路長変更部を制御する。校正量算出部は、第2参照光路長変更部により光路長が相対的に変更された後に生成された第1参照光路からの戻り光と第2参照光路からの戻り光との第1干渉光を干渉光学系により検出して取得された第1検出データと、第2参照光路長変更部により光路長が相対的に変更される前に生成された第1参照光路からの戻り光と第2参照光路からの戻り光との第2干渉光を干渉光学系により検出して取得された第2検出データとに基づいて、第2参照光路長変更部に関する校正量を求める。データ生成部は、干渉光の検出結果と校正量とに基づいて、物体に関するデータを生成する。
【0128】
このような構成によれば、校正用の光学系を別途に設けることなく、第1参照光路の長さと第2参照光路の長さとを相対的に変更する手段の特性の経時変化に基づく校正量を求めることができる。
【0129】
<変形例>
実施形態に係る網膜側校正用ユニット97及び角膜側校正用ユニット98の構成は、
図10A及び
図10Bに示す構成に限定されるものではない。例えば、前述の実施形態では、測定時に網膜側校正用ユニット97により網膜・前房深度用参照光路に分散補償部材971が配置される場合について説明したが、処理部9がソフトウェア処理で分散補償を行ってもよい。
【0130】
図13Aは、実施形態の変形例に係る角膜側校正用ユニット98´の構成の概要を模式的に表したものである。
図13Aにおいて、
図10A及び
図10Bと同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
図13Bは、実施形態の変形例の動作説明図を表したものである。
【0131】
角膜側校正用ユニット98´は、孔部981と、厚さt1を有するガラス(厚)982と、厚さt2を有するガラス(中)983と、厚さt3を有するガラス(薄)973とが円周方向に沿って設けられたターレット板98aを含む。
【0132】
図13Bに示すように、網膜・前房深度用参照光路に透光部材等は配置されない。干渉計光源81に関する校正量の算出時には、角膜側校正用ユニット98´により角膜用参照光路にガラス(薄)973が配置される。前房深度及び水晶体厚の測定時に使用されるパルスモータに関する校正量の算出時には、角膜側校正用ユニット98´により角膜用参照光路にガラス(中)983が配置される。眼軸長の測定時に使用されるパルスモータに関する校正量の算出時には、角膜側校正用ユニット98´により角膜用参照光路にガラス(厚)982が配置される。光干渉計測測定時には、角膜側校正用ユニット98´により角膜用参照光路に孔部981が配置される。
【0133】
以上のように、本変形例によれば、網膜側校正用ユニット97を設けることなく、前述の実施形態と同様に校正量を算出することができる。
【0134】
<その他の変形例>
以上に示された実施形態又はその変形例は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
【0135】
前述の実施形態では、パルスモータについて測定部位に対応した測定範囲で校正量を算出する場合について説明したが、1つの透光部材を用いて求められた校正量を測定範囲にかかわらずに全範囲で用いてもよい。
【0136】
前述の実施形態では、算出された校正量をそのまま用いる場合について説明したが、公知の手法で補正係数を求め、取得された測定値に当該補正係数を適用するようにしてもよい。
【0137】
前述の実施形態では、角膜用参照光路に対してガラス等の透光部材を挿入することにより参照光路の長さを変更してパルスモータの駆動特性の経時変化に基づく校正量を算出する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、角膜用参照ミラーユニット96及び網膜・前房深度用参照ミラーユニット94の少なくとも一方を光軸に沿って移動することにより参照光路の長さを変更することも可能である。この場合、参照ミラーユニットの移動量は、ロータリーエンコーダ等の位置センサにより検出することができる。
【0138】
前述の実施形態では、測定前に校正を行う場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、電源投入直後、スリープモード解除直後、ユーザにより指定された任意のタイミング、自覚検査中、アライメント中、レフ測定中又はケラト測定中に、前述の校正量の算出を行うことが可能である。