(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6600206
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/00 20150101AFI20191021BHJP
A63B 53/04 20150101ALI20191021BHJP
【FI】
A63B53/00 H
A63B53/04 D
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-184298(P2015-184298)
(22)【出願日】2015年9月17日
(65)【公開番号】特開2017-56043(P2017-56043A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】和田 梢
【審査官】
谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3158662(JP,U)
【文献】
特開2014−180555(JP,A)
【文献】
特開2005−160947(JP,A)
【文献】
特開2007−275253(JP,A)
【文献】
特表2006−505367(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0323815(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00−53/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェース部と、クラウン部と、ソール部とを備えた中空のゴルフクラブヘッドであって、
錘部材と、
前記ソール部に形成され、前記錘部材が取り付けられる円形の取付穴を形成するボス部と、を備え、
前記ボス部が楕円錐形状を有している、
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のゴルフクラブヘッドであって、
前記ボス部の長軸方向が短軸方向よりも、前記ソール部の一次振動モードの腹の位置に近い位置を通っている、
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載のゴルフクラブヘッドであって、
前記ソール部が、一次振動モードの振幅が所定値以上の大振動領域を含み、
前記長軸方向は前記大振動領域を通過し、前記短軸方向は前記大振動領域を通過しない、
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
請求項1に記載のゴルフクラブヘッドであって、
前記ボス部が、トウ−ヒール方向の中央部に位置し、
前記ボス部の長軸方向が短軸方向よりもフェース−バック方向を指向している、
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
請求項1に記載のゴルフクラブヘッドであって、
前記ソール部に形成され、トウ−ヒール方向に延設されたリブを更に備え、
前記リブの延設方向と、前記ボス部の長軸方向とが交差している、
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
フェース部と、クラウン部と、ソール部とを備えた中空のゴルフクラブヘッドであって、
複数の錘部材と、
前記ソール部に形成され、前記複数の錘部材が取り付けられる円形の取付穴を形成する複数のボス部と、を備え、
前記複数のボス部のうちの少なくとも一つのボス部が楕円錐形状を有している、
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載のゴルフクラブヘッドであって、
前記複数のボス部のうちの複数のボス部が楕円錐形状を有し、かつ、長軸方向が互いに交差している、
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
請求項6に記載のゴルフクラブヘッドであって、
前記複数のボス部のうちの複数のボス部が楕円錐形状を有し、かつ、それらの長軸方向が短軸方向よりも、前記ソール部の一次振動モードの腹の位置に近い位置を通っている、
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は錘部材を取り付け可能な中空のゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバヘッドに代表される中空のゴルフクラブヘッドでは、重心位置によって性能が変化する。重心位置の調整方法の一つとして、ソール部に錘部材を取り付け可能なゴルフクラブヘッドが知られている。特許文献1〜3には錘部材の取付構造が開示されている。一般的な取付構造の一つは、ネジ構造であり、ネジ穴を構成する取付穴に、ネジ軸を有する錘部材が螺着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−183972号公報
【特許文献2】米国特許第8753225号明細書
【特許文献3】米国特許第8858362号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
錘部材の取付部位には重量が集中するため、振動の拘束度合が低下する。このため、ゴルフボールの打撃時の打音が低音となる傾向にあり、高打音を好むゴルファーからは、より高打音を発するゴルフクラブヘッドが望まれる。錘部材の取付部位の拘束度合を高めるために取付穴の周囲の肉厚を一律に厚くするとゴルフクラブヘッドの重量増を招くことになる。
【0005】
本発明の目的は、重量増を抑えながら、錘部材の周囲の拘束度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、フェース部と、クラウン部と、ソール部とを備えた中空のゴルフクラブヘッドであって、錘部材と、前記ソール部に形成され、前記錘部材が取り付けられる円形の取付穴を形成するボス部と、を備え、前記ボス部が楕円錐形状を有している、ことを特徴とするゴルフクラブヘッドが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、重量増を抑えながら、錘部材の周囲の拘束度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(A)は本発明の一実施形態のゴルフクラブヘッドの斜視図、(B)は
図1(A)のゴルフクラブヘッドをソール部側から見た図。
【
図4】(A)は
図3の線L1に沿う断面図、(B)は
図3の線L2に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1(A)は本発明の一実施形態のゴルフクラブヘッド1の斜視図、
図1(B)はゴルフクラブヘッド1をソール部13側から見た図である。ゴルフクラブヘッド1は、ヘッド本体10と錘部材21、22とを備える。
【0010】
ヘッド本体10は中空体をなしており、その周壁が、フェース部11、クラウン部12、ソール部13及びサイド部14を構成している。フェース部11は、その表面(正面)がフェース面(打撃面)を形成する。フェース面にはバルジ及びロールを形成することができる。クラウン部12はゴルフクラブヘッド1の上部を形成する。ソール部13はゴルフクラブヘッド1の底部を形成する。サイド部14はソール部13と、クラウン部12との間の部分を形成する。また、ヘッド本体10はシャフトが取付けられるホゼル部15を備える。
【0011】
図1(A)の矢印d1はフェース−バック方向を示し、矢印d2はトウーヒール方向を示す。フェース−バック方向は、通常は、飛球線方向(打球の目標方向)となる。トウ−ヒール方向は、ソール部13のトウ側端とヒール側端とを結ぶ方向とする。
【0012】
ゴルフクラブヘッド1はドライバ用のゴルフクラブヘッドである。しかし、本発明はドライバ以外のフェアウエイウッド等も含むウッド型のゴルフクラブヘッド等、他の種類の中空ゴルフクラブヘッドに適用可能である。
【0013】
ヘッド本体10は、金属材料から作成することができ、そのような金属材料としては、チタン系金属(例えば、6Al−4V−Tiのチタン合金等)、ステンレス、ベリリウムカッパー等の銅合金が挙げられる。
【0014】
ヘッド本体10は、複数のパーツを接合して組み立てることができる。本実施形態の場合、本体部材とフェース部材とから構成されている。本体部材は、クラウン部12、ソール部13、サイド部14及びフェース部11の周縁部分を構成し、フェース部11に相当する部分の一部に開口部が形成される。フェース部材は本体部材の開口部に接合される。
【0015】
ヘッド本体10は、ソール部13に形成された取付部131、132を備える。取付部131には錘部材21が取付けられ、取付部132には錘部材22が取付けられる。取付部131と取付部132とは、d1方向及びd2方向の双方に離間した位置に形成されている。しかし、取付部131、132はd1方向のみ離間した位置に形成することも可能であり、また、d2方向のみ離間した位置に形成することも可能である。
【0016】
取付部131は、d2方向で言うと中央部に位置し、d1方向で言うとフェース部11側に偏った位置に位置している。取付部132は、d2方向で言うとヒール側に偏った位置に位置し、d1方向で言うとバック側に偏った位置に位置している。
【0017】
図2〜
図4(B)を参照して取付部131、132及びソール部13の構造を更に説明する。
図2は
図1(B)のI-I線に沿うヘッド本体10の断面図であり、特に本体部材の断面図である。
図3は
図2のII-II線に沿う断面図であり、ソール部13の内面を平面視した図である。
図2及び
図3において、本体部材の開口部11’は、フェース部11が形成される部分であり、フェース部材で塞がれる。
図4(A)は
図3の線L1に沿う断面図、図(B)は
図3の線L2に沿う断面図である。
【0018】
取付部131は錘部材21が取付けられる円形の取付穴21を有する。また、取付部132は錘部材22が取付けられる円形の取付穴22を有する。本実施形態では、錘部材21及び22の取付構造は、ネジ構造としている。
図2には錘部材22の外観が図示されており、ネジ軸と、ネジ軸の端部の頭部とを有している。錘部材21も同様の構造である。したがって、取付穴21、22は本実施形態の場合ネジ穴であるが、採用する取付構造に応じて適宜変更可能である。
【0019】
取付部131は、また、取付穴131aを形成するボス部131bを備える。ボス部131bは楕円垂形状を有している。
図3において、線L1はボス部131bの楕円の長軸方向を示し、線L2は短軸方向を示している。断面が円形である取付穴131aが、楕円錐形状のボス部131bに形成されているので、取付穴131aの周囲のボス部131bの肉厚は
図4(A)及び
図4(B)に示すように不均一となる。
図4(A)は長軸方向でのボス部131bの断面を示し、
図4(B)は短軸方向でのボス部131bの断面を示している。
図4(B)において、破線は長軸方向の断面の輪郭を示している。
【0020】
図4(A)及び
図4(B)から理解されるように、取付穴131aの周囲のボス部131bの肉厚は長軸方向で相対的に厚く、短軸方向で相対的に薄くなる。したがって、ボス部131bには、その剛性の方向性があり、長軸方向で相対的に剛性が高く、短軸方向で相対的に剛性が低くなる。
【0021】
錘部材21によって取付部131には重量が集中するため、振動の拘束度合が低下する。そこで、振動を拘束したい方向に長軸方向が向くようにボス部131bを形成することで、錘部材21の周囲の拘束度を高めることができる。ボス部131bの肉厚を一律に厚くするよりも重量増を抑制できる。また、リブ等でボス部の周囲を補強するよりも、楕円錐形状の方が鋳造性がよく、生産性も向上する。
【0022】
ソール部13の打撃時の振動は、通常は、d1方向に進行する。
図3に示すようにボス部131bの長軸方向L1を、短軸方向L2よりもd1方向に指向させることで、打撃時の振動を拘束でき、打音の高音化を図れる。
【0023】
図3において、位置Pはソール部13の一次振動モードの腹の位置を示し、領域Rは一次振動モードの振幅が所定値以上(例えば一時振動モードの腹の位置の振幅の60%以上、好ましくは80%以上)の大振動領域を示している。これらはコンピュータ上でゴルフクラブヘッドのモデルを作成し、その振動解析を行うことで特定可能である。
【0024】
長軸方向L1が短軸方向L2よりも腹の位置Pに近い位置を通過していることで、ボス部131bによってソール部13の一次振動の拘束度を高めることができる。
図3の例では、長軸方向L1が腹の位置Pを通過しているが、離れていてもよい。
【0025】
同様の考えで、長軸方向L1が大振動領域Rを通過し、短軸方向L2が大振動領域Rを通過しない構成でもよい。この場合も、ボス部131bによってソール部13の一次振動の拘束度を高めることができる。
【0026】
本実施形態の場合、ソール部13には、d2方向に延設されたリブ16が設けられている。リブ16はソール部13の上面に一体的に形成されており、その両端部はサイド部14の内面に接続されている。このリブ16もソール部13の一次振動の拘束度を高めることに寄与する。本実施形態では、リブ16の延設方向と、ボス部131bの長軸方向L1とが交差している。これにより、リブ16の延設方向と、ボス部131bの長軸方向L1との双方について、一次振動の拘束度を高めることができ、ソール部13の拘束度を高めることができる。
【0027】
取付部132も、取付部131と同様の構成であり、取付穴132aを形成するボス部132bを備える。ボス部132bも楕円垂形状を有している。
図3において、線L11はボス部132bの楕円の長軸方向を示し、線L12は短軸方向を示している。断面が円形である取付穴132aが、楕円錐形状のボス部132bに形成されているので、取付穴132aの周囲のボス部132bの肉厚は不均一となり、長軸方向L11で相対的に剛性が高く、短軸方向L12で相対的に剛性が低くなる。
【0028】
図3の例の場合、長軸方向L11が短軸方向L12とで、腹の位置Pや大振動領域Rに対する通過位置の差はほとんどない。d1方向で見ると、長軸方向L11が短軸方向L12よりもd1方向に指向している。したがって、ボス部132bにも、一次振動の拘束度を高める効果が期待できる。
【0029】
なお、短軸方向L12よりも長軸方向L11が腹の位置Pに近い位置を通過していたり、或いは、大振動領域Rを長軸方向L11が通過し、短軸方向L12が通過しない構成も採用可能である。この場合、一次振動の拘束度を更に高める効果が期待できる。
【0030】
<他の実施形態>
上記実施形態では、錘部材及びその取付部を二組設けたが、一組であってもよいし、三組以上であってもよい。また、錘部材及びその取付部を複数組設ける場合、全てのボス部の形状を楕円錐形状としてもよいし、一部のボス部の形状のみを楕円錐形状とし、残りのボス部は、例えば、円錐形状としてもよい。錘部材は取付部に対して交換自在に固定されてもよく、ゴルファーが複数種類の錘部材の中から、取付部に固定する錘部材の種類を選択可能であってもよい。
【0031】
楕円錐形状のボス部が複数ある場合、全てのボス部の長軸方向が短軸方向よりも腹の位置Pに近い位置を通過してもよいし、一部のボス部の長軸方向が短軸方向よりも腹の位置Pに近い位置を通過してもよい。同様に、楕円錐形状のボス部が複数ある場合、全てのボス部の長軸方向が大振動領域Rを通過し、短軸方向が通過しなくてもよいし、一部のボス部の長軸方向が大振動領域Rを通過し、短軸方向が通過しなくてもよい。
【0032】
ソール部の拘束度が高まると、打音が高すぎる場合がある。よって、
図3の例のように、一部の取付部(132)については、長軸方向(L11)を拘束度の向上に有効な方向に指向させず、拘束度を弱めて打音が高くなりすぎないように、或いは、低めるようにしてもよい。同様の考えで、例えば、
図3の例で、ボス部131bの短軸方向L2が長軸方向L1よりも腹の位置Pに近い位置を通過している構成や、短軸方向L2が大振動領域Rを通過し、長軸方向L1が大振動領域Rを通過しない構成でもよい。これにより取付部131におけるd1方向の拘束度が弱まり、打音が高くなりすぎないように、或いは、低めるようにすることができる場合がある。
【符号の説明】
【0033】
10 ゴルフクラブヘッド
13 ソール部
21、22
131a、132a 取付穴
131b、132b ボス部