(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の部品保持部を周方向に間隔を空けて保持し、回転軸を中心に前記複数の部品保持部を周方向に旋回させるように回転する回転体を備えた部品実装装置における部品の実装方法であって、
前記回転体の回転角度の目標値である目標回転角度に対応する前記部品保持部の理想位置と実際の位置との周方向のずれ角度から前記回転体の1周分の補正角度を補正データとして予め記憶しておき、
前記回転体を回転させる前に、前記補正データから前記目標回転角度に対応する前記補正角度を特定し、前記回転体の回転角度を補正することによって前記部品保持部の位置を補正する部品の実装方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
実施形態1について
図1から
図15を参照して説明する。
本実施形態は、プリント基板(「基板」の一例)B上に電子部品(「部品」の一例)Eを実装する表面実装機10を例示している。表面実装機10は、
図1に示すように、基台12と、基台12上に配置される搬送コンベア(「基板搬送装置」の一例)13と、プリント基板B上に電子部品Eを実装するための部品実装装置20と、部品実装装置20に電子部品Eを供給するための部品供給装置14と、部品実装装置20を備えて構成されている。
【0017】
基台12は、
図1に示すように、平面視略矩形状をなしている。また、基台12における搬送コンベア13の下方には、プリント基板B上に電子部品Eを実装する際に、そのプリント基板Bをバックアップするための図示しないバックアッププレート等が設けられている。なお、以下の説明では、基台12の長辺方向および搬送コンベア13の搬送方向である
図1の左右方向をX方向とし、基台12の短辺方向である
図1の上下方向をY方向とし、部品実装装置20の上下方向である
図2の上下方向をZ方向として説明する。
【0018】
搬送コンベア13は、
図1に示すように、基台12のY方向の略中央部に配されており、プリント基板BをX方向に沿って搬送する。また、搬送コンベア13は、X方向に循環駆動する一対のコンベアベルト15を備えており、一対のコンベアベルト15には、プリント基板Bが架設する形でセットされる。そして、プリント基板Bは、X方向の右側からコンベアベルト15に沿って基台12上におけるX方向略中央部の実装範囲に搬入され、電子部品Eの実装作業がされた後、コンベアベルト15に沿ってX方向の左側に搬出される。
【0019】
部品供給装置14は、
図1に示すように、フィーダ型とされ、搬送コンベア13の上下方向両側においてX方向に2つずつ並べることで、合計4箇所に配されている。これらの部品供給装置14には、複数のフィーダ16がX方向に整列した状態で取り付けられている。各フィーダ16は、複数の電子部品Eが収容された部品供給テープをリールから引き出す図示しない電動式の送出装置などを備えており、各フィーダ16における搬送コンベア13側の端部から電子部品Eが一つずつ供給されるようになっている。
【0020】
部品実装装置20は、
図1に示すように、基台12のX方向の両側に配される一対の支持フレーム21と、ロータリー型のロータリヘッド50と、ロータリヘッド50を移動させるヘッド駆動装置40とを備えて構成されている。各支持フレーム21は、Y方向に延びる細長い形態をなし、基台12のX方向両側にそれぞれ配されている。
【0021】
ヘッド駆動装置40は、Y軸サーボ機構41とX軸サーボ機構46とを有しており、一対の支持フレーム21に架設するように設けられている。
Y軸サーボ機構41は、
図1に示すように、Y方向に延びた形態で各支持フレーム21に沿って設けられた一対のY軸ガイドレール42と、図示しないボールナットが螺合されたY軸ボールねじ43と、Y軸ボールねじ43の端部に設けられたY軸サーボモータ44とを有しており、一対のY軸ガイドレール42には、ボールナットに固定されたヘッド支持体45が架設する形で取り付けられている。そして、Y軸サーボモータ44が通電制御されると、Y軸ボールねじ43に沿ってボールナットが進退し、その結果、ボールナットに固定されたヘッド支持体45およびヘッド支持体45に装着されたロータリヘッド50がY軸ガイドレール42に沿ってY方向に移動するようになっている。
【0022】
X軸サーボ機構46は、
図1に示すように、X方向に延びた形態でヘッド支持体45に設けられた図示しないX軸ガイドレールと、図示しないボールナットが螺合されたX軸ボールねじ47と、X軸ボールねじ47の端部に設けられたX軸サーボモータ48とを有している。X軸ガイドレールには、X方向に沿ってロータリヘッド50が移動自在に取り付けられており、X軸サーボモータ48が通電制御されると、X軸ボールねじ47に沿ってボールナットが進退し、その結果、ボールナットに固定されたロータリヘッド50がX軸ガイドレールに沿ってX方向に移動するようになっている。
これにより、ロータリヘッド50は一定の可動領域内でX方向及びY方向に移動可能とされている。
【0023】
ロータリヘッド50は、
図2および
図3に示すように、Z方向に延びるヘッド本体部51がカバー52によって覆われたアーム状をなしており、部品供給装置14によって供給される電子部品Eを吸着により保持してプリント基板B上に実装する。
【0024】
また、ロータリヘッド50は、
図6から
図8に示すように、複数(本実施形態では、18本)のノズルシャフト53をZ方向に移動可能に保持する回転体60を有している。
【0025】
回転体60は、
図6および
図7に示すように、Z方向に延びる軸状をなす軸部61と、ロータリヘッド50の下端部において軸部61の周りに設けられたシャフト保持部63とを有している。回転体60の軸部61は、ヘッド本体部51によって軸部61の軸線の周りにおいて双方向に回転可能に支持されている。
【0026】
また、軸部61は二重構造となっており、
図7および
図8に示すように、軸部61のうち内側に配された内側軸部61Aの上部には内側軸部61Aの軸線の周りにN軸被駆動ギア(「回転体ギア」の一例)62Nが設けられ、外側に配された外側軸部61Bの上部には外側軸部61Bの軸線の周りにR軸被駆動ギア62Rが設けられている。
【0027】
一方、ヘッド本体部51の後部におけるZ方向の略中央部には、
図3および
図4に示すように、回転体60を回転駆動するためのN軸駆動装置(「駆動部」の一例)65が設けられている。N軸駆動装置65には、
図5に示すように、内側軸部61AのN軸被駆動ギア62Nに噛み合わされたN軸駆動ギア(「駆動ギア」の一例)66が設けられており、N軸被駆動ギア62NとN軸駆動ギア66とのギア比は、9:1とされている。そして、N軸駆動装置65が動作してN軸駆動ギア66が回転すると、N軸駆動装置65の動力がN軸被駆動ギア62Nを介して、内側軸部61Aに伝わり、回転体60が軸部61を中心に任意の角度で回転するようになっている。なお、
図5においては、N軸駆動ギア66とN軸被駆動ギア62Nとの関係を分かりやすくするために、一部を図示省略している。
【0028】
回転体60のシャフト保持部63は、
図8に示すように、外側軸部61Bより大径な略円柱状をなしており、シャフト保持部63の外周縁部には、シャフト保持部63をZ方向に貫通する貫通孔63Aが周方向に等しい間隔を空けて複数(本実施形態では18個)形成されている。各貫通孔63A内には、
図7に示すように、Z方向に延びるノズルシャフト53が、筒状のシャフトホルダ54を介してシャフト保持部63を貫通した状態で保持されており、シャフトホルダ54とノズルシャフト53とは、ボールスプライン結合されている。
【0029】
言い換えると、複数のノズルシャフト53がシャフト保持部63の外周縁部において周方向に間隔を空けた状態で回転体60に保持されており、N軸駆動装置65が動作してN軸駆動ギア66が回転すると、N軸被駆動ギア62Nを介して、回転体60および複数のノズルシャフト53が回転軸Nを中心に周方向に旋回するようになっている。
【0030】
各ノズルシャフト53のうちシャフト保持部63から下方に突出する下端部には、
図7および
図8に示すように、電子部品Eを吸着する吸着ノズル(「部品保持部」の一例)55がそれぞれ設けられている。したがって、各吸着ノズル55は、回転体60がN軸駆動装置65によって回転されると、
図8に示すように、回転体60および軸部61の軸心である回転軸Nを中心に、各ノズルシャフト53と共に周方向に旋回するようになっている。
【0031】
各吸着ノズル55には、ヘッド本体部51の上部に設けられた空気圧供給装置87から負圧又は正圧が供給されるようになっている。そして、吸着ノズル55に負圧が供給されると、吸着ノズル55の下端部に電子部品Eが吸着されて保持され、各吸着ノズル55に正圧が供給されると、吸着ノズル55に保持された電子部品Eが解放される。
【0032】
また、ヘッド本体部51の前部におけるZ方向の略中央部には、
図2から
図4に示すように、各ノズルシャフト53をその軸線の周りに回転駆動させるR軸駆動装置70が設けられている。R軸駆動装置70の下端部には、外側軸部61BのR軸被駆動ギア62Rと噛み合わされたR軸駆動ギア71Rが設けられており、外側軸部61BにおけるR軸被駆動ギア62Rよりも下方には、R軸被駆動ギア62Rの回転に伴って回動する図示しない共通ギアが設けられている。
【0033】
一方、各シャフトホルダ54の外周部には、
図6および
図7に示すように、R軸駆動装置70の共通ギアと噛み合わされたノズルギア53Rがそれぞれ設けられている。ノズルギア53Rは、R軸駆動装置70のR軸駆動ギア71Rが回転し、共通ギアがR軸被駆動ギア62Rを介して回転することに伴って回転するようになっている。つまり、R軸駆動装置70のR軸駆動ギア71Rを回転させることで、各シャフトホルダ54が回転し、ノズルシャフト53がその軸線周りを同方向同角度に一斉に回転するようになっている。
【0034】
また、各ノズルシャフト53の外面側には、
図7および
図8に示すように、巻ばね56が装着されており、各ノズルシャフト53の上端部には、ばね止めボルト57が螺合されている。巻ばね56は、ばね止めボルト57とシャフトホルダ54との間にてZ方向に圧縮されており、この巻ばね56は、各ノズルシャフト53を、弾性力によって上方に付勢している。
【0035】
また、ロータリヘッド50は、
図7および
図8に示すように、複数のノズルシャフト53のうちX方向の両側端部にあるノズルシャフト53を、回転体60に対してZ方向に昇降させるための箱形状をなす一対のZ軸駆動装置75を備えている。一対のZ軸駆動装置75は、回転体60における軸部61の上部を挟んでロータリヘッド50のZ方向の両側に配されており、各ノズルシャフト53の上方に配されている。
【0036】
Z軸駆動装置75は、Z方向に変位するZ軸可動部76を有しており、Z軸可動部76の下端部には、
図8に示すように、ノズルシャフト53のばね止めボルト57を下方に向けて押圧するカムフォロア77が設けられている。
このカムフォロア77は、Z軸駆動装置75のZ軸可動部76が上昇端位置から下降すると、ノズルシャフト53のばね止めボルト57に上方から当接し、巻ばね56の付勢力に抗してノズルシャフト53を下降させる。そして、ノズルシャフト53の下降に伴って吸着ノズル55が下降すると、吸着ノズル55が部品供給装置14の部品供給位置や作業位置にあるプリント基板Bに近接するようになっている。また、Z軸可動部76を上昇させると、これに伴ってカムフォロア77が上昇し、巻ばね56の弾性復帰力によってノズルシャフト53および吸着ノズル55が上昇するようになっている。
【0037】
また、ロータリヘッド50は、
図9に示すように、各吸着ノズル55に供給される圧力を負圧と正圧との間で切り替えるための複数の切替装置80を有している。複数の切替装置80は、隣接する2つのノズルシャフト53の間に位置する形でシャフト保持部63の外周縁部に等間隔で合計18箇所に設けられている。
【0038】
また、各切替装置80は、
図9に示すように、シャフト保持部63の上端部に装着される筒状のスリーブ81と、スリーブ81内に収容される軸状をなすバルブスプール82とを有している。
スリーブ81には、負圧をスリーブ81内に入力する負圧入力ポート84と、正圧をスリーブ81内に入力する正圧入力ポート85と、スリーブ81内に入力された負圧または正圧をスリーブ81から出力する出力ポート86とが設けられている。
【0039】
一方、バルブスプール82は、
図9に示すように、上端部に設けられた径方向外側に開口する略U字状の当接部83を露出させた状態でスリーブ81内に収容されており、Z方向に沿って移動可能とされている。
そして、バルブスプール82がZ方向に沿って移動することで、各吸着ノズル55に供給される圧力が負圧と正圧との間で切り替えられるようになっている。
【0040】
また、ロータリヘッド50のX方向の両端部には、バルブスプール82の当接部83をZ方向に押圧するバルブ駆動装置90が、回転体60における軸部61の下部の両側にそれぞれ設けられている。バルブ駆動装置90は、
図7および
図8に示すように、Z軸方向に変位する可動部91を有しており、可動部91の上端部には、切替装置80におけるバルブスプール82の当接部83をZ軸方向に押圧するバルブ用カムフォロア92が設けられている。
【0041】
したがって、バルブ駆動装置90の可動部91が上方に移動すると、バルブスプール82の当接部83がバルブ用カムフォロア92によって押し上げられる。また、バルブ駆動装置90の可動部91が下方に移動すると、バルブスプール82の当接部83がバルブ用カムフォロア92によって押し下げられる。つまり、切替装置80と対応する吸着ノズル55に負圧が供給されることで電子部品Eが保持され、切替装置80と対応する吸着ノズル55に正圧が供給されることで電子部品Eが開放されてプリント基板Bに搭載されるようになっている。
【0042】
また、ロータリヘッド50には、図示しない基板認識カメラが設けられている。基板認識カメラは、ロータリヘッド50とともに一体的に移動するようになっており、作業位置に停止したプリント基板B上の任意の位置の画像を撮像する。また、基台12上における作業位置の近傍には、
図1に示すように、部品認識カメラCが固定されており、部品認識カメラCは、吸着ノズル55が部品供給装置14において保持した電子部品Eの画像を撮像する。
【0043】
次に、表面実装機10の電気的構成について、
図10を参照して説明する。
表面実装機10は、管理装置110によってその全体が制御統括されている。管理装置110は、CPU等により構成される制御部111と、記憶部112とを備えている。
【0044】
記憶部112には、制御部111が実行する実装プログラムや補正データプログラムなどの各種のプログラムや各種データが記憶されている。また、記憶部112には、各種プログラムによって取得されたデータが記憶される。
制御部111は、記憶部112に記憶されている各種プログラムにしたがって表面実装機10を制御し、例えば、実装プログラムよる実装処理に従って搬送コンベア13、ヘッド駆動装置40およびロータリヘッド50を駆動させると共に、部品供給装置14に取り付けられた各フィーダ16を制御する。
【0045】
また、制御部111には、基板認識カメラ及び部品認識カメラCから出力される撮像信号がそれぞれ取り込まれ、撮像信号に基づいて、部品画像の解析並びに基板画像の解析がそれぞれ行われる。
【0046】
また、制御部111は、実装プログラムによる電子部品Eの実装処理を開始する前に、ロータリヘッド50の回転軸Nの位置ずれを補正するための補正データ作成プログラムを実行し、補正データ作成プログラムによって作成された補正データ115を記憶部112に記録する。そして、制御部111は、電子部品Eの実装が指示されると実装プログラムを実行し、取得された補正データ115に基づいて各吸着ノズル55の位置ずれを補正し、各吸着ノズル55の位置制御を行う。
【0047】
次に、本実施形態の表面実装機10が、実装プログラムに基づいて、電子部品Eをプリント基板B上の所定の実装位置に搭載する実装処理について説明する。
【0048】
制御部111は、搬送コンベア13を駆動させ、搬送コンベア13によって運搬されてきたプリント基板Bを所定位置に停止させると、基板認識カメラによりプリント基板BのX方向及びY方向における位置を認識する。
【0049】
そして、制御部111により、ヘッド駆動装置40におけるY軸サーボモータ44と、X軸サーボモータ48とを駆動させると共に、ロータリヘッド50におけるN軸駆動装置65を駆動させることで、ロータリヘッド50を部品供給装置14上に移動させると共に、吸着ノズル55をフィーダ16の部品供給テープの電子部品Eの上方に移動させる。
【0050】
ところで、回転体60は、ヘッド本体部51のN軸駆動装置65におけるN軸駆動ギア66に対して回転体60の軸部61におけるN軸被駆動ギア62Nを噛み合わせて組み付け、N軸駆動装置65のN軸駆動ギア66を回転させることで、N軸被駆動ギア62Nを介して回転する。このため、N軸駆動ギア66とのN軸被駆動ギア62Nとの噛み合わせのギャップなどの影響により、N軸被駆動ギア62Nの軸心である回転軸Nが偏心し、回転体60の回転軸Nにおけるリニアリティにずれが生じてしまう場合がある。
【0051】
したがって、回転体60の回転軸Nにおけるリニアリティにずれが生じたまま、実装プログラムを実行すると、
図11に示すように、回転体60を回転させた際に、吸着ノズル55の理想位置P1と、吸着ノズル55の実際の位置である実測位置P2との間に回転軸Nの軸角度のずれ(以下「ずれ角度dθ」と称す)が生じてしまう。
【0052】
そこで、この対策として、本実施形態では、制御部111において、
図12に示すように、まず初めに、ロータリヘッド50の回転軸Nにおけるリニアリティの補正が行われているか判定し(S100)、補正が行われていない場合には、
図13に示すように、補正データ作成プログラムによる補正処理(S10)によって、吸着ノズル55の位置制御を行う。なお、本実施形態の制御部111が「補正部」に相当する。
【0053】
補正データ作成プログラムによる補正処理では、まず、回転体60における1周(360°)分の吸着ノズル55の回転角度の目標値である目標回転角度Rと、目標回転角度Rに対応する実際の位置P2の実座標(Xobs,Yobs)とからずれ角度dθを算出し、それぞれの目標回転角度Rでの補正角度を(−dθ)として取得する。そして、回転体60の1周(360°)分の補正角度(−dθ)を補正データ115として記憶し、補正データ115に基づいて各吸着ノズル55のずれ角度dθを補正し、各吸着ノズル55の位置制御を行う。
【0054】
補正データ115を作成する詳細な手順としては、ロータリヘッド50のノズルシャフト53の下端部に吸着ノズル55に替えて指標となる部品治具を取り付けた後、ロータリヘッド50を部品認識カメラC上に配し、補正データ作成プログラムを実行する。
【0055】
補正データ作成プログラムは、まず初期設定として、回転体60の部品治具が初期位置P0に配されたところで、R軸駆動装置70によってノズルシャフト53を90°ずつ4回に亘って1回転させ、部品認識カメラCにより各角度における部品治具を撮影する。そして、部品治具の4角度の撮像データから部品治具の中心座標を認識させ、部品治具の実座標を、吸着ノズル55の初期座標(X
0,Y
0)として取得する(S11)。
【0056】
部品治具の初期座標(X
0,Y
0)が取得できたところで、回転フラグnに「1」をセット(S12)し、回転体60の目標回転角度Rを、所定の角度r(本実施形態では1°)と回転フラグnとの積(r×n)として、N軸駆動装置65のN軸駆動ギア66を回転させる(S13)。
【0057】
次に、回転体60を回転させたところで、R軸駆動装置70によってノズルシャフト53を90°ずつ4回に亘って1回転させ、部品認識カメラCにより各角度における部品治具を撮影する。そして、部品治具の4角度の撮像データから部品治具の中心座標を認識させ、部品治具の実座標(Xobs,Yobs)として取得する(S14)。
【0058】
次に、回転体60の回転軸Nの座標(0,0)と、部品治具の初期座標(X
0,Y
0)と、部品治具の実座標(Xobs,Yobs)とから部品治具の実際の回転角度である実回転角度Robsを算出し、目標回転角度Rと実回転角度Robsとの差(Robs−R)をずれ角度dθとして取得する(S15)。つまり、実回転角度Robsは、目標回転角度Rとずれ角度dθの和(R+dθ)として表現することもできる。
【0059】
そして、このずれ角度dθを基に、回転体60の目標回転角度Rにおける補正角度を(−dθ)として記憶する(S16)。
【0060】
また、目標回転角度Rの補正角度(−dθ)を記憶したところで、回転フラグnに「1」を加え(S17)、目標回転角度Rが360°を超えるまで(回転体60が1周するまで)、S13からS17までの処理を繰り返す(S18)。
このようにして、回転体60の回転軸Nにおける所定角度毎の目標回転角度Rに対応する補正角度(−dθ)が取得され、回転体60の1周(360°)分の補正角度(−dθ)を補正データ115として記憶する(S19)。
【0061】
そして、予め得られたこの補正データ115に基づいて各吸着ノズル55のずれ角度dθを補正し、各吸着ノズル55の位置制御を行う。
具体的には、回転体60において、所定の角度rが20°で、かつ回転フラグnが2の場合、目標回転角度Rは40°となり、その時の補正角度(−dθ)は、以下のようにして取得される。
【0062】
まず、回転体60の目標回転角度Rが40°となるように、N軸駆動装置65のN軸駆動ギア66を回転させ、目標回転角度(R=40°)に基づく部品治具の実座標(X40obs,Y40obs)を取得する。
【0063】
次に、回転体60の回転軸Nの座標(0,0)と、部品治具の初期座標(X
0,Y
0)と、部品治具の実座標(X40obs,Y40obs)とから、部品治具の実回転角度Robsを算出する。例えば、実回転角度Robsが、例えば、40.05°だった場合、目標回転角度(R=40°)とのずれ角度dθは、40.05−40=0.1°となり、そのときの補正角度(−dθ)は(−0.05°)として取得される。このようにして、所定の角度r間隔毎の補正角度(−dθ)を取得することで、
図14に示すように、補正データ115が完成する。
【0064】
そして、電子部品Eの実装時の吸着ノズル55の位置制御では、回転体60の吸着ノズル55を初期位置P0から40°回転させる場合、
図14に示すように、補正データ115から目標回転角度(R=40°)に対応する補正角度(−0.05)を特定し、目標回転角度(R=40°)に補正角度((−dθ)=(−0.05))を加える。これにより、回転体60の目標回転角度Rが39.95°に変更され、N軸駆動装置65のN軸駆動ギア66によって回転する回転体60の回転角度がぼほ40°に補正される。つまり、回転体60の吸着ノズル55は、回転体60における回転軸Nのリニアリティ誤差の影響を受けつつも、位置ずれすることが抑制される。
【0065】
このように、本実施形態によると、吸着ノズル55における回転体60の所定の角度における回転軸Nの移動に伴う位置ずれが抑制され、電子部品Eに対する吸着ノズル55の位置精度を向上させることができるようになっている。
【0066】
なお、本実施形態の回転体60は、回転軸Nを中心に、左右のいずれの方向にも回転可能となっているため、例えば、右回りの補正データ115が取得できたところで、左回りの補正データ115を取得する。これにより、例えば、右回転から左回転に逆回転する場合に、回転する方向に依存する位置ずれが生じたとしても、吸着ノズル55の位置ずれを確実に抑制することができるようになっている。
【0067】
また、本実施形態における吸着ノズル55の補正データ115は、回転体60における複数の吸着ノズル55の全てにおいて作成され、吸着ノズル55毎に位置ずれを補正することができるようになっている。つまり、吸着ノズル55毎に依存する位置ずれを補正することができから、各吸着ノズル55の位置精度をさらに向上させることができる。
【0068】
したがって、
図12に示すように、吸着ノズル55の位置ずれが補正データ115により補正可能となったところで(S10)、吸着ノズル55を電子部品Eの上方に移動させる。そして、ノズルシャフト53を下降すると共に吸着ノズル55に空気圧供給装置87から負圧が供給されることで、電子部品Eが吸着ノズル55に保持される(S101)。なお、このとき、ロータリヘッド50のX方向両側に配された吸着ノズル55の一方もしくは双方において電子部品Eを保持してもよく、ロータリヘッド50の回転体60を回転させることで、複数の吸着ノズル55おいて電子部品Eを連続して保持してもよい。
【0069】
次に、電子部品Eが吸着ノズル55に保持されたところで、ノズルシャフト53を上昇させ、ロータリヘッド50を部品認識カメラC上に移動させる。電子部品Eが部品認識カメラC上に移動すると、電子部品Eが部品認識カメラCによって撮像され、電子部品Eが認識されると共に、電子部品Eの撮像データが制御部111へ出力される。
【0070】
そして、制御部111は、電子部品Eの撮像データから電子部品EのXY方向の寸法を取得し、この寸法と吸着ノズル55の中心位置とに基づいて電子部品Eの中心位置を取得する(S102)。
【0071】
ここで、電子部品Eを認識させる際にも、補正データ115の補正角度(−dθ)に基づいてその回転角度が補正され、部品認識カメラCによる部品認識時に位置ずれが生じることを抑制することができる。
【0072】
次に制御部111は、ヘッド駆動装置40におけるY軸サーボモータ44と、X軸サーボモータ48とを駆動させると共に、ロータリヘッド50におけるN軸駆動装置65を駆動させることで、ロータリヘッド50をプリント基板B上に移動させると共に、吸着ノズル55が保持した電子部品Eをプリント基板Bにおける実装位置に移動させる。そして、ノズルシャフト53をプリント基板Bに向けて降下させ、吸着ノズル55に空気圧供給装置87から正圧が供給されることで、電子部品Eが吸着ノズル55から開放され、電子部品Eがプリント基板B上の所定の実装位置に搭載される(S103)。
【0073】
ここで、吸着ノズル55が保持した電子部品Eをプリント基板Bにおける実装位置に移動させる際にも、補正データ115の補正角度(−dθ)に基づいてその回転角度が補正され、プリント基板Bへの電子部品Eの実装時の位置精度を向上させることができるようになっている。
【0074】
そして、電子部品Eがプリント基板B上に搭載されたら、ノズルシャフト53を上昇させる。なお、このとき、ロータリヘッド50のX方向両側に配された吸着ノズル55の一方もしくは双方において電子部品Eをプリント基板Bの実装位置に搭載してもよく、ロータリヘッド50の回転体60を回転させることで、複数の吸着ノズル55おいて電子部品Eをプリント基板Bの実装位置に連続して搭載してもよい。
【0075】
こうして電子部品Eの部品搭載動作が終了すると(S103)、ロータリヘッド50は、次に搭載される電子部品Eがある場合には、再びロータリヘッド50を部品供給装置14へ移動させ、次に搭載される電子部品Eの吸着による保持を行う。
【0076】
<実施例>
本発明の実施例について
図15および
図16を参照して説明する。
本実施例は、回転体60の回転角度と、回転体60の中心位置であるN軸からのずれとの関係を
図15および
図16に示したものである。
【0077】
図15に示したグラフにおいて、横軸は回転体60の回転角度の大きさを表したものであり、縦軸は、回転体60のN軸からのX方向のずれを表したものである。また、
図16に示したグラフにおいて、横軸は回転体60の回転角度の大きさを表したものであり、縦軸は、回転体60のN軸のY方向のずれを表したものである。
【0078】
ここで、補正前L1と、補正後L2とのデータを比較すると、補正後L2は補正前L1に比べて、X方向およびY方向のいずれも位置ずれ量が小さくなっている。このように、本実施形態によると、吸着ノズル55における回転体60の回転軸Nの移動に伴う位置ずれが抑制され、電子部品Eに対する吸着ノズル55の位置精度を向上させることができる。
【0079】
以上のように本実施形態によると、回転体60の回転軸Nにおけるリニアリティにずれが生じたとしても、実装プログラムを実行する前に、補正データ作成プログラムによって所定の角度間隔における補正角度(−dθ)を有する補正データ115を作成し、この補正データ115に基づいて各吸着ノズル55のずれ角度dθを補正するから、所定の角度間隔におけるいずれの回転角度においても、各吸着ノズル55の位置ずれを抑制することができる。
【0080】
また、本実施形態によると、回転体60の双方向の回転に対する補正データ115を取得するから、回転体60が逆回転することで、回転する方向に依存する位置ずれが生じたとしても吸着ノズル55の位置ずれを確実に抑制することができるようになっている。
【0081】
また、本実施形態によると、回転体60における全ての吸着ノズル55について補正データ115を取得するから、吸着ノズル55毎に依存する位置ずれを補正することができ、各吸着ノズル55の位置精度をさらに向上させることができるようになっている。
【0082】
<実施形態2>
次に、実施形態2について、
図11および
図17を参照して説明する。
実施形態2の補正データ115は、実施形態1の補正データ115の内容を変更したものであって、実施形態1と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0083】
実施形態2は、実施形態1と異なり、
図11に示すように、吸着ノズル55の理想位置P1と実測位置P2との間のずれをX,Y座標の座標値として取得し、それぞれの目標回転角度Rでの補正量(−dx,−dy)を補正データ115として取得する。なお、ここで、X,Y座標とは、プリント基板Bに沿うように基台12の長辺方向に沿う方向をX方向とし、プリント基板Bに沿うと共にX方向と直交する方向をY方向とした場合の座標である。
【0084】
以下に、本実施形態における補正データ作成プログラムについて説明する。
補正データ作成プログラムは、
図17に示すように、まず初期設定として、回転体60の部品治具が初期位置P0に配されたところで、R軸駆動装置70によってノズルシャフト53を90°ずつ4回に亘って1回転させ、部品認識カメラCにより各角度における部品治具を撮影する。そして、部品治具の4角度の撮像データから部品治具の中心座標を認識させ、部品治具の実座標を、吸着ノズル55の初期座標(X
0,Y
0)として取得する(S21)。
【0085】
次に、回転フラグnに「1」をセット(S22)し、回転体60の目標回転角度Rを、所定の角度r(本実施形態では1°)と回転フラグnとの積(r×n)として、N軸駆動装置65のN軸駆動ギア66を回転させる(S23)。
【0086】
そして、回転体60を回転させたところで、R軸駆動装置70によってノズルシャフト53を90°ずつ4回に亘って1回転させ、部品認識カメラCにより各角度における部品治具を撮影する。そして、部品治具の4角度の撮像データから部品治具の中心座標を認識させ、部品治具の実測位置P2の実座標(Xobs,Yobs)を取得する(S24)。
【0087】
次に、回転体60の回転軸Nの座標(0,0)と、部品治具の初期座標(X
0,Y
0)と、回転目標角度Rとから部品治具の理想位置P1の座標(Xclac,Ycalc)を算出し、部品治具の理想位置P1の座標(Xclac,Ycalc)と、部品治具の実測位置P2の実座標(Xobs,Yobs)との間の座標の位置ずれ量(dx,dy)を取得する(S25)。
そして、この座標の位置ずれ量(dx,dy)を基に、回転体60の目標回転角度Rにおける補正量を(−dx,−dy)として記憶する(S26)。
【0088】
また、目標回転角度Rの補正量(−dx,−dy)を記憶したところで、回転フラグnに「1」を加え(S27)、目標回転角度Rが360°を超えるまで(回転体60が1周するまで)、S13からS17までの処理を繰り返す(S28)。
【0089】
このようにして、回転体60の回転軸Nにおける所定角度毎の目標回転角度Rの補正量(−dx,−dy)が取得され、回転体60の1周(360°)分の補正量(−dx,−dy)を補正データ115として記憶する(S29)。
【0090】
したがって、本実施形態によると、部品治具の理想位置P1の座標(Xclac,Ycalc)と、部品治具の実測位置P2の実座標(Xobs,Yobs)との間の座標のずれ(dx,dy)に基づいて補正量(−dx,−dy)を取得し、補正データ115とする。そして、補正データ115から目標回転角度Rに応じた補正量を特定し、各吸着ノズル55の位置制御を行う。これにより、各吸着ノズル55の位置ずれを抑制することができる。
【0091】
つまり、本実施形態によると、位置ずれ量が全てX,Y座標をもとに取得されているから、回転角度のずれだけでなく、N軸駆動ギア66やN軸被駆動ギア62Nのいずれか一方もしくは双方のギアの形状が真円ではなく、その軸心が偏心していたとしても、回転体60の回転軸Nに依存した位置ずれを補正することができるようになっている。
【0092】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
【0093】
(1)上記実施形態では、吸着ノズル55を部品保持部として構成した。しかしながら、これに限らず、電子部品Eを挟んで保持する一対の保持爪を部品保持部として構成してもよい。
(2)上記実施形態では、補正データ115を作成する際に、回転体60を1°ずつ360°回転させて補正データ115を構成した。しかしながら、これに限らず、回転体60を10°ずつ、また、20°ずつ360°回転させて補正データを構成してもよい。
(3)上記実施形態では、回転体60に18本の吸着ノズルを回転体60に組み付けた構成とした。しかしながら、これに限らず、回転体に9本や18本以上の吸着ノズルを組み付けた構成にしてもよい。
(4)上記実施形態では、全ての吸着ノズル55に対して補正データ115を作成する構成にした。しかしながら、これに限らず、回転体における複数の吸着ノズルのうちの1つを代表ノズルとして代表ノズルの補正データのみを作成し、代表ノズル以外の吸着ノズルについては代表ノズルの補正データをもとに位置ずれを補正してもよい。