(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記第1調整弁を全閉状態に保っている間に、前記第2圧力計で検出される気化ガスの圧力が閾値を上回ったときに、前記第2調整弁を全閉状態から所定開度まで開く、請求項2または3に記載の船舶。
【背景技術】
【0002】
従来から、推進用の主ガスエンジンと発電用の副ガスエンジンを含む船舶が知られている。例えば、特許文献1には、
図4に示すような船舶100が開示されている。
【0003】
具体的に、船舶100は、液化天然ガスを貯留するタンク110と、推進用の主ガスエンジン130と、発電用の副ガスエンジン140を含む。主ガスエンジン130は、燃料ガス噴射圧が高圧のディーゼルサイクル方式のエンジンであり、副ガスエンジン140は、燃料ガス噴射圧が低圧の二元燃料エンジンである。
【0004】
タンク110は、送気ライン101により高圧圧縮機120と接続されており、高圧圧縮機120は、第1供給ライン102により主ガスエンジン130と接続されている。送気ライン101は、タンク110内で発生するボイルオフガスを高圧圧縮機120へ導き、高圧圧縮機120は、ボイルオフガスを高圧(例えば、約30MPa)に圧縮する。第1供給ライン102は、高圧圧縮機120から吐出される高圧のボイルオフガスを主ガスエンジン130へ導く。
【0005】
また、高圧圧縮機120の中間からは第2供給ライン103が副ガスエンジン140につながっている。そして、ボイルオフガスの発生量が主ガスエンジン130の燃料ガス消費量よりも多い場合には、余剰ガスが第2供給ライン103を通じて副ガスエンジン140へ供給される。
【0006】
さらに、
図4に示す船舶100では、ボイルオフガスの発生量が主ガスエンジン130の燃料ガス消費量よりも少ない場合にも、主ガスエンジン130へ十分な量の燃料ガスを供給するための構成が採用されている。具体的に、タンク110内にポンプ150が配置され、このポンプ150が第1補給ライン104によりサクションドラム160と接続されている。サクションドラム160は第2補給ライン105により高圧ポンプ170と接続され、高圧ポンプ170は第3補給ライン106によりガスヒータ180と接続され、ガスヒータ180からは第4補給ライン107が第1供給ライン102につながっている。
【0007】
また、第1供給ライン102からは、第4補給ライン107がつながる位置よりも下流側で連絡ライン190が分岐しており、この連絡ライン190は第2供給ライン103につながっている。連絡ライン190には、圧力調整機能付の逆止弁191が設けられている。つまり、第1供給ライン102における高圧ガスは、減圧された後に副ガスエンジン140へも供給可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、
図4に示す船舶100では、ボイルオフガスの発生量が主ガスエンジン130の消費量よりも少ない場合には、高圧圧縮機120に加え、高圧ポンプ170を稼働させる必要がある。また、大気汚染防止の観点からは、二元燃料エンジンである副ガスエンジン140において燃料油の消費量を可能な限り少なくすることが望まれるが、これを実現する場合にも高圧ポンプ170を稼働させる必要がある。
【0010】
そこで、本発明は、高圧ポンプを用いることなく主ガスエンジンおよび副ガスエンジンへ十分な量の燃料ガスを供給できる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明の船舶は、推進用の主ガスエンジンと、液化天然ガスを貯留するタンクと、前記タンク内で発生するボイルオフガスを圧縮機へ導く送気ラインと、前記圧縮機から吐出されるボイルオフガスを前記主ガスエンジンへ導く第1供給ラインと、発電用の副ガスエンジンと、前記タンク内に配置されたポンプから吐出される液化天然ガスを強制気化器へ導く送液ラインと、前記強制気化器にて生成される気化ガスを前記副ガスエンジンへ導く第2供給ラインと、前記第2供給ラインから前記送気ラインへ前記気化ガスを導く、開度変更が可能な第1調整弁が設けられたブリッジラインと、前記第2供給ラインから前記タンクにつながる、開度変更が可能な第2調整弁が設けられた返送ラインと、前記第1調整弁および前記第2調整弁を制御する制御装置と、を備える、ことを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、液化天然ガスが強制気化器で強制的に気化され、その気化ガスが副ガスエンジンへ供給されるので、高圧ポンプを用いることなく、副ガスエンジンへ十分な量の燃料ガスを供給することができる。これにより、副ガスエンジンでの燃料油の燃焼を不要とするか燃料油の消費量を抑制することができる。しかも、ボイルオフガスが主ガスエンジンの燃料ガス消費量に対して不足する場合には、強制気化器にて生成される気化ガスを、ブリッジラインを通じて、圧縮機に吸入されるボイルオフガスに合流させることができる。従って、高圧ポンプを用いることなく、主ガスエンジンへ十分な量の燃料ガスを供給することができる。なお、「高圧ポンプを用いることなく」という文言は、圧縮機の故障時の代替手段として高圧ポンプが船舶に装備されることを排除する趣旨ではない。
【0013】
ところで、ブリッジラインに気化ガスが流れている間、換言すればブリッジラインに設けられた第1調整弁が開かれている間に、第2供給ラインを通じて副ガスエンジンへ供給される気化ガスが余ることがある。この場合に、返送ラインに設けられた第2調整弁を開けば、余剰の気化ガスをタンクへ返送することができる。
【0014】
上記の船舶は、前記タンク内のボイルオフガスまたは前記送気ラインに流れるボイルオフガスの圧力を検出する第1圧力計と、前記第2供給ラインに流れる気化ガスの圧力を検出する第2圧力計と、をさらに備え、前記制御装置は、前記タンク内の液化天然ガスの量および前記第1圧力計で検出されるボイルオフガスの圧力からボイルオフガスの利用可能量を算出し、前記ボイルオフガスの利用可能量が前記主ガスエンジンの燃料ガス消費量よりも少ない場合には、前記第1調整弁を所定開度に開くとともに、前記第1調整弁を所定開度に開いている間に、前記第2圧力計で検出される気化ガスの圧力が閾値を上回ったときに、前記第2調整弁を全閉状態から所定開度まで開いてもよい。この構成によれば、強制気化器の応答遅れ、つまり発生させる気化ガス量の過不足に影響されることなく、第2供給ラインの圧力変化に追従できる。加えて、副ガスエンジンの燃料ガス消費量が減少しても、強制気化器の最小流量を維持することができる。
【0015】
上記の船舶は、前記タンク内のボイルオフガスまたは前記送気ラインに流れるボイルオフガスの圧力を検出する第1圧力計と、前記第2供給ラインに流れる気化ガスの圧力を検出する第2圧力計と、をさらに備え、前記制御装置は、前記タンク内の液化天然ガスの量および前記第1圧力計で検出されるボイルオフガスの圧力からボイルオフガスの利用可能量を算出し、前記ボイルオフガスの利用可能量が前記主ガスエンジンの燃料ガス消費量よりも少ない場合には、前記第1調整弁を所定開度に開くとともに、前記第1調整弁を所定開度に開いている間に、前記第2圧力計で検出される気化ガスの圧力が閾値を上回ったときに、前記第1調整弁の開度を前記所定開度からさらに大きくしてもよい。この構成によれば、上述した強制気化器の応答遅れに影響されることなく第2供給ラインの圧力変化に追従できるという効果および強制気化器の最小流量を維持できるという効果に加え、返送ラインを通じて余剰の気化ガスをタンクへ返送する場合に比べてタンクへの入熱量を抑制できるという効果を得ることができる。
【0016】
前記制御装置は、前記第1調整弁を全閉状態に保っている間に、前記第2圧力計で検出される気化ガスの圧力が閾値を上回ったときに、前記第2調整弁を全閉状態から所定開度まで開いてもよい。この構成によれば、ブリッジラインに気化ガスが流れていないときに、第2供給ラインを通じて副ガスエンジンへ供給される気化ガスが余った場合でも、その余剰の気化ガスをタンクへ返送することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高圧ポンプを用いることなく主ガスエンジンおよび副ガスエンジンへ十分な量の燃料ガスを供給できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に、本発明の一実施形態に係る船舶1Aを示す。この船舶1Aは、液化天然ガス(以下、LNGという)を貯留するタンク11と、推進用の主ガスエンジン13と、発電用(すなわち、船内電源用)の副ガスエンジン16を含む。
【0020】
図例では、タンク11が1つだけ設けられているが、タンク11は複数設けられていてもよい。本実施形態では、船舶1AがLNG運搬船であり、船舶1Aには複数のカーゴタンクが装備されている。つまり、
図1に示すタンク11は、複数のカーゴタンクのそれぞれである。また、図例では、主ガスエンジン13および副ガスエンジン16が1つずつ設けられているが、主ガスエンジン13が複数設けられていてもよいし、副ガスエンジン16が複数設けられていてもよい。
【0021】
本実施形態では、船舶1Aが機械推進式であり、主ガスエンジン13がスクリュープロペラ(図示せず)を直接的に回転駆動する。ただし、船舶1Aが電気推進式であり、主ガスエンジン13がスクリュープロペラを発電機およびモータを介して回転駆動してもよい。
【0022】
主ガスエンジン13は、燃料ガス噴射圧が例えば20〜35MPa程度と高圧なディーゼルサイクル方式の2ストロークエンジンである。ただし、主ガスエンジン13は、燃料ガス噴射圧が例えば1〜2MPa程度と中圧なオットーサイクル方式の2ストロークエンジンであってもよい。あるいは、電気推進の場合は、主ガスエンジン13が、燃料ガス噴射圧が例えば0.5〜1MPa程度と低圧なオットーサイクル方式の4ストロークエンジンであってもよい。また、主ガスエンジン13は、燃料ガスのみを燃焼させるガス専焼エンジンであってもよいし、燃料ガスと燃料油の一方または双方を燃焼させる二元燃料エンジンであってもよい(二元燃料エンジンの場合、燃料ガスを燃焼させるときがオットーサイクル、燃料油を燃焼させるときがディーゼルサイクルであってもよい)。
【0023】
副ガスエンジン16は、燃料ガス噴射圧が例えば0.5〜1MPa程度と低圧なオットーサイクル方式の4ストロークエンジンであり、発電機(図示せず)と連結されている。副ガスエンジン16は、燃料ガスのみを燃焼させるガス専焼エンジンであってもよいし、燃料ガスと燃料油の一方または双方を燃焼させる二元燃料エンジンであってもよい。
【0024】
主ガスエンジン13の燃料ガスは、主に、自然入熱によりタンク11内で発生するボイルオフガス(以下、BOGという)であり、副ガスエンジン16の燃料ガスは、主に、LNGが強制的に気化された気化ガス(以下、VGという)である。
【0025】
具体的に、タンク11は、送気ライン21により圧縮機12と接続されており、圧縮機12は、第1供給ライン31により主ガスエンジン13と接続されている。また、タンク11内には、ポンプ14が配置されており、ポンプ14は、送液ライン41により強制気化器15と接続されている。強制気化器15は、第2供給ライン51により副ガスエンジン16と接続されている。
【0026】
送気ライン21は、タンク内で発生するBOGを圧縮機12へ導く。本実施形態では、圧縮機12が多段式の高圧圧縮機である。圧縮機12は、BOGを高圧に圧縮する。第1供給ライン31は、圧縮機12から吐出される高圧のBOGを主ガスエンジン13へ導く。ただし、圧縮機12は、例えば主ガスエンジン13の燃料ガス噴射圧が低圧の場合は、低圧圧縮機であってもよい。
【0027】
送液ライン41は、ポンプ14から吐出されるLNGを強制気化器15へ導く。送液ライン41には、開度変更が可能な調整弁42が設けられている。強制気化器15は、例えばボイラにて生成される蒸気を熱源として用い、LNGを強制的に気化してVGを生成する。第2供給ライン51は、強制気化器15にて生成されるVGを副ガスエンジン16へ導く。
【0028】
本実施形態では、第2供給ライン51に、上流側から順に、冷却器52、気液分離器53および加熱器54が設けられている。冷却器52は、強制気化器15にて生成されるVGを冷却し、メタン以外の成分を主成分とする液成分を生成する。生成された液成分は、気液分離器53によって収集される。これにより、VGから重質分の多く(例えば、エタン、プロパン、ブタンなど)が除去されるので、メタン価の高いVGを副ガスエンジン16へ供給することができる。気液分離器53で収集された液成分は、ドレンラインを通じてタンク11へ返送される。気液分離器53を通過したVGは、加熱器54により加熱される。これにより、副ガスエンジン16へ適切な温度のVGを供給することができる。
【0029】
冷却器52に関し、より詳しくは、冷却器52には抽出ライン44がつながっている。抽出ライン44は、調整弁42の上流側で送液ライン41から分岐している。抽出ライン44には、開度変更が可能な調整弁45が設けられている。冷却器52は、抽出ライン44から供給されるLNGをVG中に噴射することにより、VGを冷却する。
【0030】
さらに、第2供給ライン51からは、第1ブリッジライン61が送気ライン21につながっている。本実施形態では、第1ブリッジライン61の上流端が冷却器52と気液分離器53の間で第2供給ライン51に接続されているが、第1ブリッジライン61の上流端は、冷却器52の上流側、気液分離器53と加熱器54の間、または加熱器54の下流側で第2供給ライン51に接続されていてもよい。第1ブリッジライン61は、BOGが主ガスエンジン13の燃料ガス消費量Q1に対して不足するときに、第2供給ライン51から送気ライン21へVGを導く。その結果、主ガスエンジン13へは、燃料ガスとしてBOGおよびVGが供給される。
【0031】
圧縮機12の中間からは、第2ブリッジライン63が第2供給ライン51につながっている。本実施形態では、第2ブリッジライン63の下流端が加熱器54の下流側で第2供給ライン51に接続されているが、第2ブリッジライン63の下流端は、加熱器54の上流側で第2供給ライン51に接続されていてもよい。第2ブリッジライン63は、BOGが主ガスエンジン13の燃料ガス消費量Q1に対して余るときに、圧縮機12から第2供給ライン51へBOGを導く。その結果、副ガスエンジン16へは、燃料ガスとしてVGおよびBOG(場合によっては、BOGのみ)が供給される。
【0032】
第1ブリッジライン61には、開度変更が可能な調整弁62(本発明の第1調整弁に相当)が設けられており、第2ブリッジライン63には、開度変更が可能な調整弁64が設けられている。本実施形態では、調整弁62,64のそれぞれがブリッジライン(61または63)を開放したり遮断したりする役割を果たす。ただし、第1ブリッジライン61および第2ブリッジライン63のそれぞれには、調整弁(62または64)とは別に開閉弁が設けられていてもよい。
【0033】
本実施形態では、ポンプ14が、強制気化器15にて生成されるVGの圧力(換言すれば、強制気化器15の出口圧力)が副ガスエンジン16の燃料ガス供給圧よりも高くなるように、LNGを吐出する。つまり、第2供給ライン51に流れるVGの圧力は、タンク11内のBOGの圧力よりも高い。このため、調整弁62は、第1ブリッジライン61を開放するときは、VGの圧力をタンク11内のBOGの圧力と同程度まで低減する。また、送気ライン21には、第1ブリッジライン61がつながる位置よりも上流側に逆止弁22が設けられている。これにより、第1ブリッジライン61からのVGがタンク11へ流入することが防止される。
【0034】
さらに、本実施形態では、第2供給ライン51からタンク11に返送ライン71がつながっている。本実施形態では、返送ライン71の上流端が気液分離器53と加熱器54の間で第2供給ライン51に接続されているが、返送ライン71の上流端は、冷却器52と気液分離器53の間で第2供給ライン51に接続されていてもよい。返送ライン71の下流端は、タンク11内のLNGの液面よりも上方に位置していてもよいし、液面よりも下方に位置していてもよい。
【0035】
返送ライン71には、開度変更が可能な調整弁72(本発明の第2調整弁に相当)が設けられている。本実施形態では、調整弁72が返送ライン71を開放したり遮断したりする役割を果たす。ただし、返送ライン71には、調整弁72とは別に開閉弁が設けられていてもよい。
【0036】
上述した調整弁42,45,62,64,72は、制御装置8により制御される。なお、
図1では、図面の簡略化のために一部の信号線のみを描いている。また、制御装置8には、送気ライン21に設けられた第1圧力計81、第2供給ライン51に設けられた第2圧力計82、第1ブリッジライン61に設けられた流量計83および第2供給ライン51に設けられた温度計84が接続されている。
【0037】
第1圧力計81は、送気ライン21に流れるBOGの圧力Pbを検出する。第1圧力計81は、送気ライン21における第1ブリッジライン61がつながる位置よりも上流側に位置していれば、逆止弁22の上流側と下流側のどちらに設けられていてもよい。ただし、第1圧力計81は、タンク11に設けられ、タンク11内のBOGの圧力Ptを検出してもよい。
【0038】
第2圧力計82は、第2供給ライン51に流れるVGの圧力Pvを検出する。第2圧力計82は、第2供給ライン51における第2ブリッジライン63がつながる位置よりも下流側に位置している。ただし、第2圧力計82が後述する返送ライン71に設けられる調整弁72の制御にのみ使用される場合は、第2圧力計82は、第2供給ライン51における第2ブリッジライン63がつながる位置よりも上流側に位置していてもよい。流量計83は、第1ブリッジライン61に流れるVGの流量Fvを検出する。温度計84は、冷却器52の出口温度を検出する。
【0039】
制御装置8へは、主ガスエンジン13の燃料ガス噴射タイミングなどを制御する第1ガスエンジン制御器(図示せず)および副ガスエンジン16の燃料ガス噴射タイミングなどを制御する第2ガスエンジン制御器(図示せず)から各種の信号が送信される。そして、制御装置8は、第1ガスエンジン制御器から送信される信号から主ガスエンジン13の燃料ガス消費量Q1を算出するとともに、第2ガスエンジン制御器から送信される信号から副ガスエンジン16の燃料ガス消費量Q2を算出する。ただし、制御装置8は、第1ガスエンジン制御器から燃料ガス消費量Q1を直接的に取得してもよいし、第2ガスエンジン制御器から燃料ガス消費量Q2を直接的に取得してもよい。
【0040】
制御装置8は、まず、タンク11内のLNGの量および第1圧力計81で検出されるBOGの圧力PbからBOGの利用可能量Qaを算出する。具体的に、制御装置8は、第1圧力計81で検出されるBOGの圧力Pbに、送気ライン21の上流端から第1圧力計81の位置までの圧力損失を加算して、タンク11内のBOGの圧力Ptを算出する。
図2に示すように、BOGの利用可能量Qaは、タンク11内のBOGの圧力Ptと設定圧力Psとの偏差ΔP(=Pt−Ps)が大きくなるにつれて多くなる。ここで、設定圧力Psとは、BOGの利用可能量QaがBOGの発生量Qnと等しくなるときの圧力である。なお、BOGの発生量Qnは、タンク11内のBOGの圧力により変化するものの、タンク11内のLNGの量にほぼ依存する。また、カーゴタンクであるタンク11の容量は非常に大きいために、BOGおよび/またはLNGが燃料ガスとして使用されても、タンク11内のLNGの液面の高さはそれほど変化しない。このため、本実施形態では、タンク11内のLNGの量は変数ではなく一定値(満載時と空載時とで異なる)として扱われる。そして、制御装置8は、タンク11内のLNGの量および算出したタンク11内のBOGの圧力Ptと設定圧力Psとの偏差ΔPから、BOGの利用可能量Qaを算出する。ただし、タンク11の容量が小さい場合には、タンク11にタンク11内のLNGの量を検出するレベル計が設けられ、タンク11内のLNGの量が変数として扱われてもよい。
【0041】
制御装置8は、主ガスエンジン13の燃料ガス消費量Q1と副ガスエンジン16の燃料ガス消費量Q2の合計である燃料ガス総消費量QtからBOGの利用可能量Qaを差し引いた不足量のLNGが送液ライン41を通じて強制気化器15へ供給されるように、送液ライン41に設けられた調整弁42を制御する。なお、送液ライン41からは調整弁42の上流側で返送ライン43が分岐しており、ポンプ14から吐出されたLNGのうち調整弁42で制限される分は、返送ライン43を通じてタンク11内に返送される。また、制御装置8は、温度計84で検出される冷却器52の出口温度に基づいて、抽出ライン44に設けられた調整弁45を制御する。
【0042】
また、制御装置8は、BOGの利用可能量Qaが主ガスエンジン13の燃料ガス消費量Q1よりも多い場合(BOGが主ガスエンジン13の燃料ガス消費量Q1に対して余る場合)、第1ブリッジライン61に設けられた調整弁62を全閉とするとともに、第2ブリッジライン63に設けられた調整弁64を所定開度に開く。
【0043】
逆に、BOGの利用可能量Qaが主ガスエンジン13の燃料ガス消費量Q1よりも少ない場合(BOGが主ガスエンジン13の燃料ガス消費量Q1に対して不足する場合)、制御装置8は、第2ブリッジライン63に設けられた調整弁64を全閉とするとともに、第1ブリッジライン61に設けられた調整弁62を所定開度に開く。このとき、制御装置8は、流量計83で検出されるVGの流量Qvが主ガスエンジン13の燃料ガス消費量Q1とBOGの利用可能量Qaとの偏差ΔA(=Q1−Qa)となるように、調整弁62を制御する。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の船舶1Aでは、LNGが強制気化器15で強制的に気化され、そのVGが副ガスエンジン16へ供給されるので、高圧ポンプを用いることなく、副ガスエンジン16へ十分な量の燃料ガスを供給することができる。これにより、副ガスエンジン16での燃料油の燃焼を不要とするか燃料油の消費量を抑制することができる。しかも、BOGが主ガスエンジン13の燃料ガス消費量Q1に対して不足する場合には、強制気化器15にて生成されるVGを、第1ブリッジライン61を通じて、圧縮機12に吸入されるBOGに合流させることができる。従って、高圧ポンプを用いることなく、主ガスエンジン13へ十分な量の燃料ガスを供給することができる。
【0045】
ところで、第1ブリッジライン61にVGが流れている間、換言すれば第1ブリッジライン61に設けられた調整弁62が開かれている間に、第2供給ライン51を通じて副ガスエンジン16へ供給されるVGが余ることがある。これに対し、本実施形態では返送ライン71が設けられているので、そのようなVGが余る場合に、返送ライン71に設けられた調整弁72を開けば、余剰のVGをタンク11へ返送することができる。
【0046】
特に、強制気化器15が蒸気を熱源として用いるものであり、強制気化器15の下流側に冷却器52が設けられる場合は、冷却器52の出口温度の制御性を確保するために、強制気化器15にはある程度の流量のLNGを供給する必要がある。換言すれば、強制気化器15には最小流量が存在する。このような構成では、副ガスエンジン16の負荷低減に伴って一時的に余剰のVGが発生するだけでなく、副ガスエンジン16の燃料ガス消費量が強制気化器15の最小流量を下回る場合に余剰のVGが定常的に発生する。従って、返送ライン71は、このような構成に特に有用である。
【0047】
具体的に、本実施形態では、制御装置8が、調整弁62を所定開度に開いている間に、第2圧力計82で検出されるVGの圧力Pvが閾値αを上回ったときに、返送ライン71に設けられた調整弁72を全閉状態から所定開度まで開く。このような制御であれば、強制気化器15の応答遅れ、つまり発生させるVG量の過不足に影響されることなく、第2供給ライン51の圧力変化に追従できる。加えて、副ガスエンジン16の燃料ガス消費量が減少しても、強制気化器15の最小流量を維持することができる。
【0048】
あるいは、制御装置8は、調整弁62を所定開度に開いている間に、第2圧力計82で検出されるVGの圧力Pvが閾値αを上回ったときに、調整弁72を全閉状態から所定開度まで開く代わりに、調整弁62の開度を前記所定開度からさらに大きくしてもよい。このような制御であれば、上述した強制気化器15の応答遅れに影響されることなく第2供給ライン51の圧力変化に追従できるという効果および強制気化器15の最小流量を維持できるという効果に加え、返送ライン71を通じて余剰のVGをタンク11へ返送する場合に比べてタンク11への入熱量を抑制できるという効果を得ることができる。
【0049】
さらに、制御装置8は、調整弁62を全閉状態に保っている間にも、第2圧力計82で検出されるVGの圧力Pvが閾値αを上回ったときに、調整弁72を全閉状態から所定開度まで開いてもよい。このようにすれば、第1ブリッジライン61にVGが流れていないときに、第2供給ライン51を通じて副ガスエンジン16へ供給されるVGが余った場合でも、その余剰のVGをタンク11へ返送することができる。
【0050】
(変形例)
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0051】
例えば、ポンプ14が強制気化器15までLNGを汲み上げるだけの機能を有し、第2供給ライン51に圧縮機が設けられていてもよい。ただし、前記実施形態のようにポンプ14によって副ガスエンジン16の燃料ガス噴射圧が確保されれば、第2供給ライン51に圧縮機を設ける必要がなく、コストを低減することができる。
【0052】
また、
図3に示す変形例の船舶1Bのように、第1供給ライン31から返送ライン91が分岐しており、この返送ライン91がタンク11につながっていてもよい。返送ライン91の先端は、タンク11内のLNGの液面よりも上方に位置していてもよいし、液面よりも下方に位置していてもよい。また、返送ライン91には、膨張弁などの膨張装置92が設けられる。返送ライン91が採用される場合、第2ブリッジライン63は省略されてもよい。
【0053】
さらに、返送ライン91および送液ライン41には、熱交換器93が設けられる。熱交換器93は、膨張装置92の上流側で返送ライン91に流れるBOG(タンク11へ返送されるBOG)を、送液ライン41に流れるLNGによって冷却する。この冷却の後に膨張されることによって、タンク11へ返送されるBOGは部分的に再液化される。一方、送液ライン41に流れるLNGは、BOGから熱を奪うことによって、部分的に気化してもよい。
【0054】
また、第1ブリッジライン61に設けられる調整弁62は、必ずしも流量計83で検出されるVGの流量Qvに基づいて制御される必要はない。例えば、第1ブリッジライン61がつながる位置よりも上流側で送気ライン21に流量計(図示せず)が設けられ、この流量計で検出されるBOGの流量がBOGの利用可能量Qaとなるように、調整弁62が制御されてもよい。
【0055】
あるいは、第1ブリッジライン61に、調整弁62の下流側で第1ブリッジライン61の圧力を検出する第3圧力計(図示せず)が設けられ、第1圧力計81で検出されるBOGの圧力Pbと第3圧力計で検出される第1ブリッジライン61の圧力との偏差が所定の値となるように、調整弁62が制御されてもよい。
【0056】
また、第1ブリッジライン61には、調整弁62の代わりに、一次圧が変動しても一定の二次圧を出力する減圧弁と、逆止弁が設けられていてもよい。この構成によれば、送気ライン21に流れるBOGの圧力が減圧弁の二次圧を下回ったときに、VGが自動的に補給される。
【0057】
また、副ガスエンジン16がメタン価の制約を受けない場合には、第2供給ライン51に冷却器52、気液分離器53および加熱器54が設けられていなくてもよい。
【0058】
また、主ガスエンジン13および副ガスエンジン16の一方または双方は、必ずしもレシプロエンジンである必要はなく、ガスタービンエンジンであってもよい。