【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層を有し、かつ、前記気体発生剤を含有する粘着剤層の表面に該粘着剤層の端部に達する線状の離型処理部を有する粘着テープである。
また、本発明は、被着体から粘着テープを剥離する方法であって、前記粘着テープは、被着体に貼付した側に刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層を有し、かつ、前記気体発生剤を含有する粘着剤層の表面に該粘着剤層の端部に達する線状の離型処理部を有するものであり、前記被着体に貼付された粘着テープに刺激を与えて、前記気体発生剤から気体を発生させる工程と、前記気体発生後の粘着テープが貼付された被着体を液体で処理して、被着体から粘着テープを剥離する工程を有する粘着テープの剥離方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの該気体発生剤を含有する粘着剤層の表面に線状の離型処理部を設けることにより、気体発生時の剥離態様を制御できることを見出した。更に、該粘着テープを貼付した被着体において、気体を発生させた後に液体で処理することにより、高い粘着力で被着体に貼付された粘着テープであっても、容易に剥離することができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明の粘着テープは、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層(以下、「気体発生粘着剤層」ともいう。)を有する。
本発明の粘着テープは、上記気体発生粘着剤層のみからなるノンサポートテープであってもよく、基材の片面に気体発生粘着剤層を有する片面粘着テープであってもよく、基材の両面に粘着剤層を有する両面粘着テープであってもよい。なお、上記粘着テープが両面粘着テープである場合、少なくとも一方の面の粘着剤層が気体発生粘着剤層であればよい。
また、本発明の粘着テープが基材を有する場合、上記基材は特に限定されないが、光を透過又は通過するものであることが好ましく、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の透明な樹脂からなるシート、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート等が挙げられる。また、上記基材は、コロナ処理等の粘着剤層との接着性を向上させるための処理が施されていてもよい。
【0010】
上記気体発生粘着剤層を構成する粘着剤は特に限定されないが、光照射により架橋、硬化する光硬化型粘着剤成分を含有する光硬化型粘着剤や、加熱により架橋、硬化する熱硬化型粘着剤成分を含有する熱硬化型粘着剤等の硬化型粘着剤が好適である。このような硬化型接着剤は、光の照射又は加熱により接着剤の全体が均一にかつ速やかに重合架橋して一体化するため、重合硬化による弾性率の上昇が著しくなり、接着力が大きく低下する。また、弾性率の上昇した硬い硬化物中で上記気体発生剤から気体を発生させると、発生した気体の大半は外部に放出される。本発明の粘着テープにおいては、上記気体発生粘着剤層の表面に線状の離型処理部を有することから、発生した気体は特に該離型処理部に放出され、特に該離型処理部において粘着テープと被着体との剥離が生じる。
【0011】
上記光硬化型粘着剤としては、例えば、重合性ポリマーを主成分として、光重合開始剤を含有する光硬化型粘着剤が挙げられる。
上記熱硬化型粘着剤としては、例えば、重合性ポリマーを主成分として、熱重合開始剤を含有する熱硬化型粘着剤が挙げられる。
【0012】
上記重合性ポリマーは、例えば、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマー(以下、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーという)をあらかじめ合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物という)と反応させることにより得ることができる。
【0013】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、常温で粘着性を有するポリマーとして、一般の(メタ)アクリル系ポリマーの場合と同様に、アルキル基の炭素数が通常2〜18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルを主モノマーとし、これと官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られるものである。上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常20万〜200万程度である。
【0014】
上記官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマー;アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
【0015】
上記共重合可能な他の改質用モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル系ポリマーに用いられている各種のモノマーが挙げられる。
【0016】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物としては、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基に応じて上述した官能基含有モノマーと同様のものを使用できる。例えば、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシル基の場合はエポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がヒドロキシル基の場合はイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がエポキシ基の場合はカルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが用いられ、同官能基がアミノ基の場合はエポキシ基含有モノマーが用いられる。
【0017】
上記光重合開始剤は、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられ、このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物;フォスフィンオキシド誘導体化合物;ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0018】
上記熱重合開始剤は、熱により分解し、重合を開始する活性ラジカルを発生するものが挙げられ、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。これら熱重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0019】
上記光硬化型粘着剤又は熱硬化型粘着剤は、更に、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有することが好ましい。ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有することにより、光硬化性又は熱硬化性が向上する。
上記多官能オリゴマー又はモノマーは、分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは加熱又は光の照射による粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2〜20個のものである。
【0020】
上記多官能オリゴマー又はモノマーは、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート又は上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。その他、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコール#700ジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0021】
上記気体発生剤は特に限定されず、例えば、アゾ化合物、アジド化合物等の従来公知の気体発生剤を用いることができる。
また、上記粘着テープを被着体に貼付した状態で高温処理等を行う場合には、上記気体発生剤は、TG−DTA(熱重量−示差熱分析)測定にて150℃で1時間保持したときの重量減少量が5%以下であることが好ましい。5%を超えると、加熱時に気体発生剤が消費され気体が発生してしまうため、所望の時期に気体を発生させることが困難となることがある。
なお、本明細書において、TG−DTA測定にて150℃で1時間保持したときの重量減少量が5%以下とは、気体発生剤単体を10℃/minの昇温速度で35℃から150℃まで加温し、150℃に達した時点から1時間経過時点までの間の重量減少量が5%以下であることをいう。
【0022】
上記重量減少量を満たす気体発生剤としては、具体的には例えば、3−アジドメチル−3−メチルオキセタン、テレフタルアジド、p−tert−ブチルベンズアジドや、3−アジドメチル−3−メチルオキセタンを開環重合することにより得られるグリシジルアジドポリマー(GAP)等のアジド基を有するポリマー等や、ケトプロフェンや2−キサントン酢酸等のカルボン酸化合物又はその塩や、1H−テトラゾール、5,5’−ビステトラゾールジアンモニウム塩、5,5’−ビステトラゾールアミンモノアンモニウム塩等のテトラゾール化合物又はその塩等が挙げられる。これらの気体発生剤は、主に波長400nm以下の紫外線領域の光を照射することにより窒素ガスを発生する。
【0023】
上記気体発生剤の含有量は特に限定されないが、上記粘着剤100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限は200重量部である。上記気体発生剤の含有量がこの範囲内であると、充分な粘着性と気体発生性とを両立することができる。より好ましい下限は3重量部、より好ましい上限は100重量部である。
【0024】
上記気体発生粘着剤層は、粘着剤としての凝集力の調節を図る目的で、所望によりイソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の一般の粘着剤に配合される各種の多官能性化合物を適宜配合してもよい。また、帯電防止剤、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の公知の添加剤を加えることもできる。
また、樹脂の安定性を高めるために熱安定剤、酸化防止剤を配合させてもよい。このような添加剤は、例えばフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、有機スズ系安定剤、鉛系安定剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0025】
本発明の粘着テープは、上記気体発生粘着剤層の表面に線状の離型処理部を有する。このような離型処理部を有することにより、本発明の粘着テープに刺激を与えて上記気体発生剤から気体を発生させたときに、発生した気体は特に該離型処理部に放出され、特に該離型処理部において粘着テープと被着体との剥離が生じる。
【0026】
上記線状の離型処理部は、粘着剤層の端部に達している。これにより、発生した気体により線状の離型処理部において粘着テープと被着体との剥離が生じたときに、該剥離部は粘着剤層の端部において開口することとなり、後述する液体処理を行ったときに該開口部から剥離部に液体が流入することができる。
なお、上記線状の離型処理部は、線の少なくとも一方の端が粘着剤層の端部に達していればよいが、線の両端が粘着剤層の端部に達していることが好ましい。
【0027】
上記線状の離型処理部は、上記気体発生粘着剤層の一方の表面に施されていてもよく、両面に施されていてもよい。
上記線状の離型処理部は、上記気体発生粘着剤層の被着体に接する側の表面に施されていてもよく、(基材を有する場合には)基材に接する側の表面に施されていてもよい。上記線状の離型処理部が被着体に接する側の表面に施されている場合には、剥離は主に気体発生粘着剤層と被着体との界面において生じる。また、上記線状の離型処理部が基材に接する側の表面に施されている場合には、剥離は主に気体発生粘着剤層と基材との界面において生じる。
【0028】
上記線状の離型処理部は、上記気体発生粘着剤層の表面の全面にわたって施されていることが好ましい。表面の全面にわたって施されることにより、より確実に被着体から粘着テープを剥離することができる。
図1に上記線状の離型処理部のパターンの具体例を示した。上記線状の離型処理部のパターンとしては、例えば、平行線状(
図1(a))、格子状(
図1(b))、渦巻き状(
図1(c))、波状(
図1(d))等が挙げられる。
【0029】
上記線状の離型処理部の線幅は特に限定されないが、好ましい下限は0.5mm、好ましい上限は10mmである。上記線幅がこの範囲内であると、特に高い粘着性と剥離性とを両立させることができる。上記線幅が0.5mm未満であると、気体を発生させて離型処理部において粘着テープと被着体との剥離が生じさせ、液体処理を行っても、液体を剥離部に充分に流入させることができずに、剥離性が低下することがある。上記線幅が10mmを超えると、粘着性が低下することがある。上記線幅のより好ましい下限は1mm、より好ましい上限は5mmである。
【0030】
上記粘着剤層の被着体に貼付する側の表面全体における上記線状の離型処理部の面積の比率は特に限定されないが、好ましい下限は5%、好ましい上限は50%である。上記線状の離型処理部の面積の比率がこの範囲内であると、特に高い粘着性と剥離性とを両立させることができる。上記線状の離型処理部の面積の比率が5%未満であると、気体を発生させ、液体処理を行っても充分に剥離できないことがある。上記線状の離型処理部の面積の比率が50%を超えると、粘着性が低下することがある。上記線状の離型処理部の面積の比率のより好ましい下限は10%、より好ましい上限は30%である。
【0031】
上記粘着剤層の表面に離型処理部を形成する方法は特に限定されないが、離型剤をグラビア印刷等の印刷方法により処理する方法が簡便であり好ましい。
上記離型剤は特に限定されず、例えば、シリコン系、長鎖アルキル系、フッ素系の離型剤等を用いることができる。
上記長鎖アルキル系離型剤は、例えば、一方社油脂工業社製のピーロイル1050、ピーロイル406等が挙げられる。
上記シリコン系離型剤は、例えば、信越化学工業社製のKM722T、KF412SP等が挙げられる。
上記フッ素系離型剤は、例えば、スリーエム社製のEGC−1720、日進化成社製のダイフリー等が挙げられる。
【0032】
本発明の粘着テープの剥離方法は、本発明の粘着テープの貼付した被着体から、粘着テープを剥離する方法である。
本発明の粘着テープの剥離方法では、まず、被着体に貼付された粘着テープに刺激を与えて、気体発生剤から気体を発生させる工程を行う。
刺激を与えることにより上記気体発生剤から発生した気体は、特に該離型処理部に放出され、特に該離型処理部において粘着テープと被着体との剥離が生じる。
【0033】
本発明の粘着テープの剥離方法では、次いで、上記気体発生後の粘着テープが貼付された被着体を液体で処理して、被着体から粘着テープを剥離する工程を行う。
上述のように気体発生剤後には、特に上記離型処理部において粘着テープと被着体とが剥離している。また、上記離型処理部が上記粘着剤層の端部に達していることから、該剥離部は粘着剤層の端部において開口している。このような状態において液体で処理することにより、毛細管現象により該開口部から剥離部内に液体が流れ込み、該液体の圧力によって被着体から粘着テープが確実に剥離される。
【0034】
上記液体で処理する具体的な方法は特に限定されず、粘着テープが貼付された被着体に液体をかける方法や、粘着テープが貼付された被着体を液体中に浸漬する方法等が挙げられる。
上記液体は特に限定されず、水の他、酸、アルカリ又は有機溶剤を用いることができる。