特許第6600249号(P6600249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6600249-粘着テープ及び粘着テープの剥離方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6600249
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】粘着テープ及び粘着テープの剥離方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/00 20180101AFI20191021BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20191021BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20191021BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20191021BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20191021BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20191021BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   C09J7/00
   C09J201/00
   C09J11/06
   C09J5/00
   H01L21/68 N
   H01L21/304 622J
   H01L21/78 P
   H01L21/78 M
   H01L21/304 622P
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-248752(P2015-248752)
(22)【出願日】2015年12月21日
(65)【公開番号】特開2017-114944(P2017-114944A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 洸造
(72)【発明者】
【氏名】麻生 隆浩
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−231872(JP,A)
【文献】 特開2011−153203(JP,A)
【文献】 特開昭63−238184(JP,A)
【文献】 特開2012−077121(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/121547(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
H01L 21/301
H01L 21/304
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層を有し、かつ、前記気体発生剤を含有する粘着剤層の表面に該粘着剤層の端部に達する線状の離型処理部を有し、前記線状の離型処理部の線幅が0.5〜10mmであり、前記粘着テープは被着体に貼付された後、液体処理により剥離されることを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
被着体から粘着テープを剥離する方法であって、
前記粘着テープは、被着体に貼付した側に刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層を有し、かつ、前記気体発生剤を含有する粘着剤層の表面に該粘着剤層の端部に達する線状の離型処理部を有し、前記線状の離型処理部の線幅が0.5〜10mmであるものであり、
前記被着体に貼付された粘着テープに刺激を与えて、前記気体発生剤から気体を発生させる工程と、前記気体発生後の粘着テープが貼付された被着体を液体で処理して、被着体から粘着テープを剥離する工程を有することを特徴とする粘着テープの剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い粘着力で被着体に貼付しても容易に剥離することができる粘着テープ、及び、該粘着テープの剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、プラスチック、ガラス、金属、木材、陶器、ゴム、紙、布、皮等あらゆる被着体に対して用いられており、粘着テープを貼付された被着体があらゆる分野に用いられている。
粘着テープの用途によっては、いったん貼着した粘着テープを、被着体を損傷したり糊残りしたりすることなく、被着体から剥離することが求められる。例えば、半導体チップの製造工程においては、研削工程やダイシング工程等の加工時に取扱いを容易にし、破損したりしないようにするために、ウエハに粘着テープを貼付して補強したり、粘着テープを介してウエハに支持板を貼付して補強したりすることが行われる。
このような用途において粘着テープには、加工工程中にウエハを強固に固定できるだけの高い粘着性とともに、工程終了後にはウエハを損傷することなく剥離できる剥離性とが求められる(以下、「高接着易剥離」ともいう。)。
【0003】
高接着易剥離を実現した粘着テープとして特許文献1には、アゾ化合物等の刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する接着層を有する両面接着テープを用いたウエハの処理方法が記載されている。特許文献1に記載されたウエハの処理方法では、まず、両面接着テープを介してウエハを支持板に固定する。その状態で研削工程等を行った後に刺激を与えると、気体発生剤から発生した気体がテープの表面とウエハとの界面に放出され、その圧力によって少なくとも一部が剥離される。特許文献1の両面接着テープを用いれば、ウエハを損傷することなく、かつ、糊残りもすることなく剥離できる。
【0004】
しかしながら、粘着テープにおいて粘着性と剥離性とはトレードオフの関係にあり、高い粘着性を発揮しながら、同時に高い剥離性を発揮させることは困難である。例えば、特許文献1に記載された両面接着テープを半導体チップの製造工程に用いた場合においても、研削工程やダイシング工程時の歩留りを向上させようとすれば、更に高い粘着性を有する粘着テープを用いて強固に固定することが必要となる。しかしながら、粘着テープにそれほど高い粘着性を付与した場合には、その後に気体発生剤から気体を発生させても充分には剥離できないことがあり、かえって歩留りを低下させてしまうことがあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−231872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、高い粘着力で被着体に貼付しても容易に剥離することができる粘着テープ、及び、該粘着テープの剥離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層を有し、かつ、前記気体発生剤を含有する粘着剤層の表面に該粘着剤層の端部に達する線状の離型処理部を有する粘着テープである。
また、本発明は、被着体から粘着テープを剥離する方法であって、前記粘着テープは、被着体に貼付した側に刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層を有し、かつ、前記気体発生剤を含有する粘着剤層の表面に該粘着剤層の端部に達する線状の離型処理部を有するものであり、前記被着体に貼付された粘着テープに刺激を与えて、前記気体発生剤から気体を発生させる工程と、前記気体発生後の粘着テープが貼付された被着体を液体で処理して、被着体から粘着テープを剥離する工程を有する粘着テープの剥離方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの該気体発生剤を含有する粘着剤層の表面に線状の離型処理部を設けることにより、気体発生時の剥離態様を制御できることを見出した。更に、該粘着テープを貼付した被着体において、気体を発生させた後に液体で処理することにより、高い粘着力で被着体に貼付された粘着テープであっても、容易に剥離することができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明の粘着テープは、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層(以下、「気体発生粘着剤層」ともいう。)を有する。
本発明の粘着テープは、上記気体発生粘着剤層のみからなるノンサポートテープであってもよく、基材の片面に気体発生粘着剤層を有する片面粘着テープであってもよく、基材の両面に粘着剤層を有する両面粘着テープであってもよい。なお、上記粘着テープが両面粘着テープである場合、少なくとも一方の面の粘着剤層が気体発生粘着剤層であればよい。
また、本発明の粘着テープが基材を有する場合、上記基材は特に限定されないが、光を透過又は通過するものであることが好ましく、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の透明な樹脂からなるシート、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート等が挙げられる。また、上記基材は、コロナ処理等の粘着剤層との接着性を向上させるための処理が施されていてもよい。
【0010】
上記気体発生粘着剤層を構成する粘着剤は特に限定されないが、光照射により架橋、硬化する光硬化型粘着剤成分を含有する光硬化型粘着剤や、加熱により架橋、硬化する熱硬化型粘着剤成分を含有する熱硬化型粘着剤等の硬化型粘着剤が好適である。このような硬化型接着剤は、光の照射又は加熱により接着剤の全体が均一にかつ速やかに重合架橋して一体化するため、重合硬化による弾性率の上昇が著しくなり、接着力が大きく低下する。また、弾性率の上昇した硬い硬化物中で上記気体発生剤から気体を発生させると、発生した気体の大半は外部に放出される。本発明の粘着テープにおいては、上記気体発生粘着剤層の表面に線状の離型処理部を有することから、発生した気体は特に該離型処理部に放出され、特に該離型処理部において粘着テープと被着体との剥離が生じる。
【0011】
上記光硬化型粘着剤としては、例えば、重合性ポリマーを主成分として、光重合開始剤を含有する光硬化型粘着剤が挙げられる。
上記熱硬化型粘着剤としては、例えば、重合性ポリマーを主成分として、熱重合開始剤を含有する熱硬化型粘着剤が挙げられる。
【0012】
上記重合性ポリマーは、例えば、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマー(以下、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーという)をあらかじめ合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物という)と反応させることにより得ることができる。
【0013】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、常温で粘着性を有するポリマーとして、一般の(メタ)アクリル系ポリマーの場合と同様に、アルキル基の炭素数が通常2〜18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルを主モノマーとし、これと官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られるものである。上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常20万〜200万程度である。
【0014】
上記官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマー;アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
【0015】
上記共重合可能な他の改質用モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル系ポリマーに用いられている各種のモノマーが挙げられる。
【0016】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物としては、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基に応じて上述した官能基含有モノマーと同様のものを使用できる。例えば、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシル基の場合はエポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がヒドロキシル基の場合はイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がエポキシ基の場合はカルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが用いられ、同官能基がアミノ基の場合はエポキシ基含有モノマーが用いられる。
【0017】
上記光重合開始剤は、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられ、このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物;フォスフィンオキシド誘導体化合物;ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0018】
上記熱重合開始剤は、熱により分解し、重合を開始する活性ラジカルを発生するものが挙げられ、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。これら熱重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0019】
上記光硬化型粘着剤又は熱硬化型粘着剤は、更に、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有することが好ましい。ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有することにより、光硬化性又は熱硬化性が向上する。
上記多官能オリゴマー又はモノマーは、分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは加熱又は光の照射による粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2〜20個のものである。
【0020】
上記多官能オリゴマー又はモノマーは、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート又は上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。その他、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコール#700ジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0021】
上記気体発生剤は特に限定されず、例えば、アゾ化合物、アジド化合物等の従来公知の気体発生剤を用いることができる。
また、上記粘着テープを被着体に貼付した状態で高温処理等を行う場合には、上記気体発生剤は、TG−DTA(熱重量−示差熱分析)測定にて150℃で1時間保持したときの重量減少量が5%以下であることが好ましい。5%を超えると、加熱時に気体発生剤が消費され気体が発生してしまうため、所望の時期に気体を発生させることが困難となることがある。
なお、本明細書において、TG−DTA測定にて150℃で1時間保持したときの重量減少量が5%以下とは、気体発生剤単体を10℃/minの昇温速度で35℃から150℃まで加温し、150℃に達した時点から1時間経過時点までの間の重量減少量が5%以下であることをいう。
【0022】
上記重量減少量を満たす気体発生剤としては、具体的には例えば、3−アジドメチル−3−メチルオキセタン、テレフタルアジド、p−tert−ブチルベンズアジドや、3−アジドメチル−3−メチルオキセタンを開環重合することにより得られるグリシジルアジドポリマー(GAP)等のアジド基を有するポリマー等や、ケトプロフェンや2−キサントン酢酸等のカルボン酸化合物又はその塩や、1H−テトラゾール、5,5’−ビステトラゾールジアンモニウム塩、5,5’−ビステトラゾールアミンモノアンモニウム塩等のテトラゾール化合物又はその塩等が挙げられる。これらの気体発生剤は、主に波長400nm以下の紫外線領域の光を照射することにより窒素ガスを発生する。
【0023】
上記気体発生剤の含有量は特に限定されないが、上記粘着剤100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限は200重量部である。上記気体発生剤の含有量がこの範囲内であると、充分な粘着性と気体発生性とを両立することができる。より好ましい下限は3重量部、より好ましい上限は100重量部である。
【0024】
上記気体発生粘着剤層は、粘着剤としての凝集力の調節を図る目的で、所望によりイソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の一般の粘着剤に配合される各種の多官能性化合物を適宜配合してもよい。また、帯電防止剤、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の公知の添加剤を加えることもできる。
また、樹脂の安定性を高めるために熱安定剤、酸化防止剤を配合させてもよい。このような添加剤は、例えばフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、有機スズ系安定剤、鉛系安定剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0025】
本発明の粘着テープは、上記気体発生粘着剤層の表面に線状の離型処理部を有する。このような離型処理部を有することにより、本発明の粘着テープに刺激を与えて上記気体発生剤から気体を発生させたときに、発生した気体は特に該離型処理部に放出され、特に該離型処理部において粘着テープと被着体との剥離が生じる。
【0026】
上記線状の離型処理部は、粘着剤層の端部に達している。これにより、発生した気体により線状の離型処理部において粘着テープと被着体との剥離が生じたときに、該剥離部は粘着剤層の端部において開口することとなり、後述する液体処理を行ったときに該開口部から剥離部に液体が流入することができる。
なお、上記線状の離型処理部は、線の少なくとも一方の端が粘着剤層の端部に達していればよいが、線の両端が粘着剤層の端部に達していることが好ましい。
【0027】
上記線状の離型処理部は、上記気体発生粘着剤層の一方の表面に施されていてもよく、両面に施されていてもよい。
上記線状の離型処理部は、上記気体発生粘着剤層の被着体に接する側の表面に施されていてもよく、(基材を有する場合には)基材に接する側の表面に施されていてもよい。上記線状の離型処理部が被着体に接する側の表面に施されている場合には、剥離は主に気体発生粘着剤層と被着体との界面において生じる。また、上記線状の離型処理部が基材に接する側の表面に施されている場合には、剥離は主に気体発生粘着剤層と基材との界面において生じる。
【0028】
上記線状の離型処理部は、上記気体発生粘着剤層の表面の全面にわたって施されていることが好ましい。表面の全面にわたって施されることにより、より確実に被着体から粘着テープを剥離することができる。
図1に上記線状の離型処理部のパターンの具体例を示した。上記線状の離型処理部のパターンとしては、例えば、平行線状(図1(a))、格子状(図1(b))、渦巻き状(図1(c))、波状(図1(d))等が挙げられる。
【0029】
上記線状の離型処理部の線幅は特に限定されないが、好ましい下限は0.5mm、好ましい上限は10mmである。上記線幅がこの範囲内であると、特に高い粘着性と剥離性とを両立させることができる。上記線幅が0.5mm未満であると、気体を発生させて離型処理部において粘着テープと被着体との剥離が生じさせ、液体処理を行っても、液体を剥離部に充分に流入させることができずに、剥離性が低下することがある。上記線幅が10mmを超えると、粘着性が低下することがある。上記線幅のより好ましい下限は1mm、より好ましい上限は5mmである。
【0030】
上記粘着剤層の被着体に貼付する側の表面全体における上記線状の離型処理部の面積の比率は特に限定されないが、好ましい下限は5%、好ましい上限は50%である。上記線状の離型処理部の面積の比率がこの範囲内であると、特に高い粘着性と剥離性とを両立させることができる。上記線状の離型処理部の面積の比率が5%未満であると、気体を発生させ、液体処理を行っても充分に剥離できないことがある。上記線状の離型処理部の面積の比率が50%を超えると、粘着性が低下することがある。上記線状の離型処理部の面積の比率のより好ましい下限は10%、より好ましい上限は30%である。
【0031】
上記粘着剤層の表面に離型処理部を形成する方法は特に限定されないが、離型剤をグラビア印刷等の印刷方法により処理する方法が簡便であり好ましい。
上記離型剤は特に限定されず、例えば、シリコン系、長鎖アルキル系、フッ素系の離型剤等を用いることができる。
上記長鎖アルキル系離型剤は、例えば、一方社油脂工業社製のピーロイル1050、ピーロイル406等が挙げられる。
上記シリコン系離型剤は、例えば、信越化学工業社製のKM722T、KF412SP等が挙げられる。
上記フッ素系離型剤は、例えば、スリーエム社製のEGC−1720、日進化成社製のダイフリー等が挙げられる。
【0032】
本発明の粘着テープの剥離方法は、本発明の粘着テープの貼付した被着体から、粘着テープを剥離する方法である。
本発明の粘着テープの剥離方法では、まず、被着体に貼付された粘着テープに刺激を与えて、気体発生剤から気体を発生させる工程を行う。
刺激を与えることにより上記気体発生剤から発生した気体は、特に該離型処理部に放出され、特に該離型処理部において粘着テープと被着体との剥離が生じる。
【0033】
本発明の粘着テープの剥離方法では、次いで、上記気体発生後の粘着テープが貼付された被着体を液体で処理して、被着体から粘着テープを剥離する工程を行う。
上述のように気体発生剤後には、特に上記離型処理部において粘着テープと被着体とが剥離している。また、上記離型処理部が上記粘着剤層の端部に達していることから、該剥離部は粘着剤層の端部において開口している。このような状態において液体で処理することにより、毛細管現象により該開口部から剥離部内に液体が流れ込み、該液体の圧力によって被着体から粘着テープが確実に剥離される。
【0034】
上記液体で処理する具体的な方法は特に限定されず、粘着テープが貼付された被着体に液体をかける方法や、粘着テープが貼付された被着体を液体中に浸漬する方法等が挙げられる。
上記液体は特に限定されず、水の他、酸、アルカリ又は有機溶剤を用いることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、高い粘着力で被着体に貼付しても容易に剥離することができる粘着テープ、及び、該粘着テープの剥離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】線状の離型処理部のパターンの具体例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
(1)支持板側粘着剤層用粘着剤の調製
下記の化合物を酢酸エチルに溶解させ、紫外線を照射して重合を行い、重量平均分子量60万のアクリル共重合体を得た。
・2−エチルへキシルアクリレート 97.5重量部
・2−ヒドロキシエチルアクリレート 1.5重量部
・アクリル酸 1.0重量部
・光重合開始剤 0.2重量部
更に、反応後のアクリル共重合体を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ベンゾフェノン0.5重量部、ポリイソシアネート2重量部、グリシジルアジドポリマー(GAP5003、日油社製)を10重量部、2,4−ジエチルチオキサントン5重量部を混合して、気体発生剤(アジド化合物)を含有する支持板側粘着剤層用粘着剤の酢酸エチル溶液を調製した。
【0039】
(2)ウエハ側粘着剤層用粘着剤の調製
下記の化合物を酢酸エチルに溶解させ、紫外線を照射して重合を行い、重量平均分子量70万のアクリル共重合体からなる光硬化性粘着剤の酢酸エチル溶液を得た。
・2エチルヘキシルアクリレート 83重量部
・ブチルアクリレート 10重量部
・アクリル酸 2重量部
・2−ヒドロキシエチルアクリレート 5重量部
・光重合開始剤 0.2重量部
(イルガキュア651、50%酢酸エチル溶液)
・ラウリルメルカプタン 0.01重量部
得られた光硬化性粘着剤の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2−イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させ、更に、反応後の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、光重合開始剤(イルガキュア651)5重量部、ポリイソシアネート1.0重量部を混合しウエハ側粘着剤層用粘着剤の酢酸エチル溶液を調製した。
【0040】
(3)両面粘着テープの作製
支持板側粘着剤層用粘着剤の酢酸エチル溶液を、片面にコロナ処理を施した厚さ50μmの透明なポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムのコロナ処理面上に、乾燥皮膜の厚さが約30μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。
得られた支持板側粘着剤層の表面に、長鎖アルキル系離型剤ピーロイル1050をグラビア方式で印刷して、図1(a)に示したような平行線状の離型処理部を形成した。
該離型処理部の線幅は2mm、支持板側粘着剤層の表面全体における平行線状の離型処理部の面積の比率は20%であった。
離型処理部形成後の支持板側粘着剤層の表面に離型処理が施されたPETフィルムをラミネートした。
【0041】
次に、ウエハ側粘着剤層用粘着剤の酢酸エチル溶液を、表面に離型処理が施されたPETフィルムの上に乾燥皮膜の厚さが約40μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後のウエハ側粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。
次いで、支持板側粘着剤層を設けた基材の支持板側粘着剤層のないコロナ処理を施した面と、ウエハ側粘着剤層を設けた離型処理が施されたPETフィルムのウエハ側粘着剤層の面とを貼り合わせた。その後、40℃、3日間静置して養生を行った。これにより両面に粘着剤層が設けられ、気体発生剤を含む支持板側粘着剤層の支持板に貼付する側の表面に平行線状の離型処理部を有する両面粘着テープを得た。
【0042】
(実施例2)
支持板側粘着剤層の表面に、長鎖アルキル系離型剤ピーロイル1050をグラビア方式で印刷して、図1(b)に示したような格子状の離型処理部を形成した以外は実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
該離型処理部の線幅は1mm、支持板側粘着剤層の表面全体における格子状の離型処理部の面積の比率は20%であった。
【0043】
(比較例1)
支持板側粘着剤層の表面の全面に、長鎖アルキル系離型剤ピーロイル1050をグラビア方式で印刷して離型処理部を形成した以外は実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0044】
(比較例2)
支持板側粘着剤層の表面に離型処理部を形成しなかった以外は実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0045】
(評価)
実施例1、2及び比較例1、2で得られた両面粘着テープについて、以下の方法により評価を行った。
結果を表1に示した。
【0046】
(1)粘着性の評価
両面粘着テープのウエハ側粘着剤層を保護するPETフィルムを剥がし、直径20cm、厚さ約750μmであって回路が形成されたシリコンウエハに貼り付け、一方、支持板側粘着剤層を保護するPETフィルムを剥がし、直径20.4cmのガラス板を、真空プレス機を用いて粘着剤層に貼り付けて積層体を得た。
得られた積層体のウエハ側を、グラインド研削及び研磨を行い、厚み50μmまで研削した。
同様の操作を10枚のシリコンウエハについて行い、研削時に剥離してしまった枚数を計数した。10枚中、剥離が発生した枚数が1枚以下である場合を「○」と、1枚を超えた場合を「×」と評価した。
【0047】
(2)剥離性の評価
上記研削後の積層体に、ガラス板側から超高圧水銀灯を用いて、365nmの紫外線をガラス板表面への照射強度が80mW/cmとなるよう照度を調節して1分間照射して、接着剤成分を架橋、硬化させるとともに、気体発生剤から気体を発生させた。次いで、紫外線照射後の積層体を蒸留水中に浸漬した。
同様の操作を10組の積層体について行い、蒸留水中に浸漬して、ガラス板を両面粘着テープから剥離できた組数を計数した。10組中、剥離できた組数が9組以上である場合を「○」と、8組以下である場合を「×」と評価した。
なお、同様の評価を、蒸留水に代えてスタンダードクリーン1(SC1)溶液、及び、スタンダードクリーン2(SC2)溶液を用いた場合についても行った。
なお、実施例において剥離は、ガラス板と支持板側粘着剤層との間で生じていることが確認できた。
【0048】
【表1】
【0049】
(実施例3)
支持板側粘着剤層用粘着剤の酢酸エチル溶液を、コロナ処理を施し、長鎖アルキル系離型剤ピーロイル1050をグラビア方式で印刷して、図1(a)に示したような平行線状の離型処理部を形成した厚さ50μmの透明なポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムの離型処理面上に、乾燥皮膜の厚さが約30μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。
該離型処理部の線幅は2mm、支持板側粘着剤層の表面全体における平行線状の離型処理部の面積の比率は20%であった。
離型処理部形成後の支持板側粘着剤層の表面に離型処理が施されたPETフィルムをラミネートした。
【0050】
次に、実施例1と同様の方法により調製したウエハ側粘着剤層用粘着剤の酢酸エチル溶液を、コロナ処理を施した厚さ50μmの透明なポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムのコロナ処理面上に、乾燥皮膜の厚さが約40μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後のウエハ側粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。
次いで、ウエハ側粘着剤層を設けた基材のウエハ側粘着剤層のないコロナ処理を施した面と、支持板側粘着剤層を設けた離型処理が施されたPETフィルムの支持板側粘着剤層の面とを貼り合わせた。その後、40℃、3日間静置して養生を行った。これにより両面に粘着剤層が設けられ、気体発生剤を含む支持板側粘着剤層の基材側の表面に平行線状の離型処理部を有する両面粘着テープを得た。
【0051】
(実施例4)
支持板側粘着剤層のポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム表面に、長鎖アルキル系離型剤ピーロイル1050をグラビア方式で印刷して、図1(b)に示したような格子状の離型処理部を形成した以外は実施例3と同様にして両面粘着テープを得た。
該離型処理部の線幅は1mm、支持板側粘着剤層の表面全体における格子状の離型処理部の面積の比率は20%であった。
【0052】
(比較例3)
支持板側粘着剤層のポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム表面の全面に、長鎖アルキル系離型剤ピーロイル1050をグラビア方式で印刷して離型処理部を形成した以外は実施例3と同様にして両面粘着テープを得た。
【0053】
(比較例4)
支持板側粘着剤層のポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム表面に離型処理部を形成しなかった以外は実施例3と同様にして両面粘着テープを得た。
【0054】
(評価)
実施例3、4及び比較例3、4で得られた両面粘着テープについて、以下の方法により評価を行った。
結果を表2に示した。
【0055】
(1)粘着性の評価
両面粘着テープのウエハ側粘着剤層を保護するPETフィルムを剥がし、直径20cm、厚さ約750μmであって回路が形成されたシリコンウエハに貼り付け、一方、支持板側粘着剤層を保護するPETフィルムを剥がし、直径20.4cmのガラス板を、真空プレス機を用いて粘着剤層に貼り付けて積層体を得た。
得られた積層体のウエハ側を、グラインド研削及び研磨を行い、厚み50μmまで研削した。
同様の操作を10枚のシリコンウエハについて行い、研削時に剥離してしまった枚数を計数した。10枚中、剥離が発生した枚数が1枚以下である場合を「○」と、1枚を超えた場合を「×」と評価した。
【0056】
(2)剥離性の評価
上記研削後の積層体に、ガラス板側から超高圧水銀灯を用いて、365nmの紫外線をガラス板表面への照射強度が80mW/cmとなるよう照度を調節して1分間照射して、接着剤成分を架橋、硬化させるとともに、気体発生剤から気体を発生させた。次いで、紫外線照射後の積層体を蒸留水中に浸漬した。
同様の操作を10組の積層体について行い、蒸留水中に浸漬して、ほとんど抵抗なくガラス板を両面粘着テープから剥離できた組数を計数した。10組中、剥離できた組数が9組以上である場合を「○」と、8組以下である場合を「×」と評価した。
なお、同様の評価を、蒸留水に代えてスタンダードクリーン1(SC1)溶液、及び、スタンダードクリーン2(SC2)溶液を用いた場合についても行った。
なお、実施例において剥離は、支持板側粘着剤層と基材との間で生じていることが確認できた。
【0057】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、高い粘着力で被着体に貼付しても容易に剥離することができる粘着テープ、及び、該粘着テープの剥離方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 気体発生粘着剤層
2 線状の離型処理部
図1