(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、格納式のヘッドレストは、使用位置や格納位置にある頭受け部材が車両の急停車等で前方に回動してしまうことがあると、その機能を発揮できなくなる虞がある。頭受け部材の前後位置を回動機構により調整可能としたヘッドレスト(回動調整式のヘッドレスト)では、通常、頭受け部材を後方に付勢するバネが設けられているが、上記の格納式のヘッドレストでは、通常、頭受け部材を前方に付勢するバネが設けられており、この問題が特に生じやすい。このため、格納式のヘッドレストでは、使用位置や格納位置にある頭受け部材が僅かな力では回動しないように、頭受け部材を各位置で保持する必要がある。したがって、従来の格納式のヘッドレストは、ボタン操作やワイヤ操作等を行わなければ、使用位置から格納位置への回動や、格納位置から使用位置への回動を行うことができないようになっていた(例えば、特許文献1の
図4の「ワイヤ手段68」を参照。)。よって、従来の格納式のヘッドレストは、操作が煩わしいという欠点を有していた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、使用位置や格納位置にある頭受け部材を、僅かな力が加えられた程度では回動しないようにしっかりと保持できるものでありながら、ボタン操作やワイヤ操作等を行うことなく、手等で頭受け部材に所定以上の力を加えるだけで、他の位置に回動させることができる格納式のヘッドレストを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、
使用位置と格納位置との間で回動可能な構造を有する格納式のヘッドレストであって、
左右一対の側壁部を有する回動ブラケットと、
回動ブラケットに固定されたヘッドレストフレームと、
ヘッドレストフレームに取り付けられる頭受け部材と、
回動ブラケットが回動可能に支持された主軸と、
係止部A
1が設けられた左右一対の側壁部を有し、主軸に対して固定された固定ブラケットと、
回動ブラケットを格納位置側へ付勢するための回動ブラケット付勢バネと、
係止部B
1を有し、回動ブラケットの側壁部に対して回動又はスライド可能な状態で支持されたロック部材と、
ロック部材の係止部B
1が固定ブラケットの係止部A
1に係止するロック側へとロック部材を付勢するためのロック部材付勢バネと、
を備え、
係止部A
1の係止側への傾斜角度θ
1が20〜40°(20〜40°の範囲内におけるいずれかの角度)とされたことにより、
係止部A
1と係止部B
1とが係止しているときに頭受け部材の中心に加えられる力が100N(例えば、頭受け部材の高さが200mmの場合において、頭受け部材の回動トルクで表すと、100N×0,1m=10N・m)以下の場合には、係止部A
1と係止部B
1との係止が解除されない一方、
係止部A
1と係止部B
1とが係止しているときに頭受け部材の中心に加えられる力が200N(例えば、頭受け部材の高さが200mmの場合において、頭受け部材の回動トルクで表すと、200N×0,1m=20N・m)以上の場合には、係止部A
1に対して係止部B
1が滑って、係止部A
1と係止部B
1との係止が外れ、回動ブラケットが回動可能な状態となるようにした
ことを特徴とするヘッドレスト
を提供することによって解決される。
【0007】
ここで、「係止部A
1の係止側への傾斜角度θ
1」とは、
図3に示すように、係止部A
1と係止部B
1とが係止した状態のヘッドレストを主軸の中心線と平行な方向に見た場合において、主軸の中心点を点P
1とし、係止部A
1における係止部B
1との接触点を点P
2としたときに、係止部A
1の係止面(係止部B
1を係止する面)が直線P
1P
2に対して係止側(係止部B
1が係止部A
1に押し当たる側)に為す角度のことを云う。以下においては、ロック部材の係止部B
1を係止する係止部であって、その係止面が係止側(回動ブラケットの回動を規制する側)に傾斜された係止部A
1を「傾斜型係止部A
1」と呼ぶことがある。
【0008】
頭受け部材にどの程度の力を加えれば傾斜型係止部A
1と係止部B
1との係止が解除されるか、換言すると、頭受け部材の回動トルクがどの程度になれば傾斜型係止部A
1と係止部B
1との係止が解除されるかは、傾斜型係止部A
1の傾斜角度θ
1に影響されるところ、この傾斜角度θ
1を上記の範囲とすることによって、頭受け部材の回動トルクを最小で20N・m程度に設定することができるようになる。このため、使用位置や格納位置にある頭受け部材を、僅かな力が加えられた程度では回動しないようにしっかりと保持しながらも、手等で頭受け部材に所定以上の力を加えただけで、他の位置に回動させることができるようになる。
【0009】
ところで、頭受け部材の回動トルクがどの程度になれば傾斜型係止部A
1と係止部B
1との係止が解除されるかは、傾斜型係止部A
1の傾斜角度θ
1だけでなく、ロック部材付勢バネの付勢力にも影響される。このため、ロック部材付勢バネの付勢力は、傾斜型係止部A
1の傾斜角度θ
1を20〜40°の範囲内における所定の値に設定した場合に、頭受け部材の回動トルクが最小で20N・mとなる値に設定される。ロック部材付勢バネの付勢力は、通常、ロック部材にかかるトルクが0.5〜1.0N・m程度になるように設定される。
【0010】
本発明のヘッドレストには、後述するロック解除ワイヤのように、傾斜型係止部A
1と係止部B
1との係止を解除するロック解除用操作手段を別途設けることもできるが、このようなロック解除用操作手段を別途設けなくても機能させることが可能なものとなっている。ロック解除用操作手段を設けない場合には、ヘッドレストを構成する部品の点数を削減して、コストを削減することが可能になる。また、ロック解除用操作手段の配置スペースを設ける必要がなくなるため、ヘッドレストの外観の自由度を高めることも可能になる。
【0011】
本発明のヘッドレストにおいて、上記の傾斜型係止部A
1と係止部B
1とに係る構成は、頭受け部材が使用位置にあるときと、頭受け部材が格納位置にあるときとのいずれに採用してもよい。しかし、上記の傾斜型係止部A
1と係止部B
1とに係る構成は、頭受け部材が使用位置にあるときの後方回動を規制するもの(以下「使用時の後方回動規制」と呼ぶことがある。)以外で採用すると好ましい。換言すると、上記の傾斜型係止部A
1と係止部B
1とに係る構成は、
使用時の後方回動規制には採用しないことが好ましい。というのも、車両が追突された際等の衝撃で頭受け部材が使用位置から後方回動するようなことがあると、使用者がムチ打ちになる虞があるところ、上記の傾斜型係止部A
1と係止部B
1とに係る構成を使用時の後方回動規制で採用すると、車両が追突された際等には、上記の回動最小トルクを超えるトルクが発生する虞があるからである。具体的には、以下の構成を採用することが好ましい。
【0012】
第一に、
ヘッドレストを、使用位置から前方回動(頭受け部材の回動端(支軸に支持されていない側の端部)が前方に変位する側の回動。以下同じ。)させると格納位置になる構造を有するものとし、
回動ブラケット及び固定ブラケットを左右一対に設けるとともに、
それぞれの回動ブラケットにおける左右一対の側壁部の間に、その下部を当接部C
1とされた後壁部を設けて、
それぞれの固定ブラケットにおける左右一対の側壁部の間に、その上部を当接部D
1とされた後壁部を設け、
傾斜型係止部A
1と係止部B
1とを、使用位置にあるときの前方回動を規制するもの(以下「使用時の前方回動規制」と呼ぶことがある。)とする一方、
使用位置にあるときの後方回動を、当接部C
1と当接部D
1とが当接することにより、規制する
構成である。
【0013】
第二に、
ヘッドレストを、使用位置から後方回動(頭受け部材の回動端(支軸に支持されていない側の端部)が後方に変位する側の回動。以下同じ。)させると格納位置になる構造を有するものとし、
回動ブラケット及び固定ブラケットを左右一対に設けるとともに、それぞれの固定ブラケットの左右一対の側壁部に、傾斜型係止部A
1に加えて係止部A
2を設けて、
係止部A
1と係止部B
1とを、格納位置にあるときの使用位置側への移動を規制するものとする一方、
使用位置にあるときの後方回動を、係止部A
2と係止部B
1とが係止することにより、規制する
構成である。
【0014】
これらのヘッドレストでは、いずれも、上記の傾斜型係止部A
1と係止部B
1とに係る構成を、使用時の後方回動規制には採用していない。前者(第一)のヘッドレストでは、ロック部材によらない他の機構(固定ブラケットと回動ブラケットに別途設けた当接部C
1と当接部D
1とによる機構等)で、頭受け部材が使用位置にあるときの後方回動を規制し、後者(第二)のヘッドレストでは、係止部A
2と係止部B
1とによる機構で、頭受け部材が使用位置にあるときの後方回動を規制している。前者(第一)のヘッドレストでは、使用時の後方回動規制を、計2箇所(計2組)の当接部C
1と当接部D
1とで受けることができるため、100kg重程度の大きな負荷も分散させてしっかりと受け止めることが可能である。また、後者(第二)のヘッドレストでも、使用時の後方回動規制を、計4箇所(計4組)の係止部A
2と係止部B
1とで受けることができるため、100kg重程度の大きな負荷も分散させてしっかりと受け止めることが可能である。
【0015】
本発明のヘッドレストは、上述したように、ロック解除用操作手段を設けなくてもよいが、ロック解除用操作手段を設けることもできる。
例えば、
傾斜型係止部A
1と係止部B
1との
係止を外すことが可能なロック解除位置に変位可能なロック解除部材と、
ロック解除部材をロック解除位置に変位させるロック解除ワイヤと、
をさらに備え、
ロック解除ワイヤの操作によっても、傾斜型係止部A
1と係止部B
1との
係止を外すことができるようにする
ことが可能である。
【0016】
これにより、使用位置や格納位置にある頭受け部材を、手等で掴んで操作する方法と、ロック解除ワイヤ等のロック解除用操作手段を操作する方法のいずれでも、他の位置へ回動させることが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によって、使用位置や格納位置にある頭受け部材を、僅かな力が加えられた程度では回動しないようにしっかりと保持できるものでありながら、ボタン操作やワイヤ操作等を行うことなく、手等で頭受け部材に所定以上の力を加えるだけで、他の位置に回動させることができる格納式のヘッドレストを提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のヘッドレストの好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、第一実施態様から第五実施態様までの5つの実施態様を例に挙げて、本発明のヘッドレストを説明するが、本発明のヘッドレストの技術的範囲は、これらの実施態様に限定されることなく、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0020】
以下で説明する
図1〜8においては、説明の便宜上、xyz座標系を示している。以下の説明においては、x軸方向を「左右方向」と呼び、x軸方向正側を「左」側と呼び、x軸方向負側を「右」側と呼んでいる。また、y軸方向を「前後方向」と呼び、y軸方向正側を「後」側と呼び、y軸方向負側を「前」側と呼んでいる。さらに、z軸方向を「上下方向」と呼び、z軸方向正側を「上」側と呼び、z軸方向負側を「下」側と呼んでいる。
【0021】
1.第一実施態様のヘッドレスト
まず、第一実施態様のヘッドレストについて説明する。
図1は、第一実施態様のヘッドレストの内部機構を示した斜視図である。
図2は、第一実施態様のヘッドレストの内部機構を前方及び側方から見た状態を示した図である。
図3は、第一実施態様のヘッドレストにおける回動中心付近を回動中心線に垂直な面で切断した状態を示した断面図であって、(a)使用位置にあるときと、(b)格納位置にあるときとをそれぞれ示した図である。
【0022】
第一実施態様のヘッドレストは、
図3に示すように、使用位置(
図3(a))と格納位置(
図3(b))との間で回動可能な構造を有する格納式のものとなっており、使用位置から前方回動させると格納位置になり、格納位置から上方回動させると使用位置になる構造を有するものとなっている。第一実施態様のヘッドレストは、
図1及び
図2に示すように、回動ブラケット10と、ヘッドレストフレーム20と、頭受け部材30と、主軸40と、固定ブラケット50と、回動ブラケット付勢バネ60と、ロック部材70と、ロック部材付勢バネ80とを備えたものとなっている。
【0023】
また、以下においては、「前方回動」及び「後方回動」という語句を用いているが、
図3(a)の太矢印で示した向きの回動が「前方回動」となり、その逆向きの回動が「後方回動」となる。さらに、以下においては、「上方回動」及び「下方回動」という語句を用いているが、第一実施態様のヘッドレストにおいては、
図3(b)の太矢印で示した向きの回動が「上方回動」となり、その逆向きの回動が「下方回動」となる。
【0024】
頭受け部材30(
図2)は、ヘッドレストの使用者の後頭部を支持するためのものとなっており、ヘッドレストフレーム20に取り付けられる。この頭受け部材30は、通常、その外面を形成する表皮と、表皮の内側に収容又は充填されるクッション材とで構成される。主軸40は、回動ブラケット10を回動可能な状態で支持するためのものとなっている。このため、ヘッドレスト(回動ブラケット10)の回動中心は、主軸40の中心線に一致する。主軸40の両端部は、左右の固定ブラケット50に対して溶接等により固定される。回動ブラケット付勢バネ60は、回動ブラケット10を格納位置側(第一実施態様のヘッドレストにおいては前方)へ付勢するためのものとなっている。ロック部材70は、回動ブラケット10における後述する側壁部12に対して回動又はスライド可能な状態で支持されている。このロック部材70には、後述する使用時前方回動規制用係止部52a、格納時上方回動規制用係止部52b及び格納時下方回動規制用係止部52cに係止するための係止部B
1が設けられている。第一実施態様のヘッドレストにおいて、ロック部材70は、係止部52a,52b,52cに係止するロック用軸部71と、ロック用軸部71に略平行に配されてロック用軸部71の回動中心となる支持用軸部72とからなる、略U字状に折り曲げた鋼線材によって形成している。ロック部材付勢バネ80は、ロック部材70の係止部B
1が固定ブラケット50の係止部52a,52b,52cに係止する側(ロック側)へ押し付けられる向きに、ロック部材70を付勢するためのものとなっている。
【0025】
また、第一実施態様のヘッドレストには、左右一対のヘッドレストステー90も設けられている。このヘッドレストステー90は、シートバックの上部に設けられたステーホルダ(図示省略)に対して、上下位置を調節可能な状態で挿通される。このため、第一実施態様のヘッドレストは、頭受け部材30の高さを調節することが可能なものとなっている。頭受け部材30を高さ調節可能とする構造を採用しない場合には、ヘッドレストは、ヘッドレストステー90を介することなく、シートバック内部のシートバックフレーム等に対して固定することもできる。
【0026】
ヘッドレストフレーム20は、左右一対の縦フレーム部21と、左右一対の縦フレーム部21の上端部を連結する横フレーム部22とで構成されている。回動ブラケット10及び固定ブラケット20は、左側の縦フレーム部21の下端部近傍と右側の縦フレーム部21の下端部近傍とに、それぞれ1つずつ設けられており、左右一対に設けられている。
図2に示すように、回動ブラケット10は、後壁部11と左右一対の側壁部12とで構成されている。それぞれの縦フレーム部21の下端部は、回動ブラケット10の後壁部11と側壁部12の上部でその3方を囲まれた状態となっており、溶接等で回動ブラケット10に固定される。後壁部11の下縁部は、当接部C
1(
図3)となっている。
【0027】
一方、固定ブラケット50は、後壁部51と左右一対の側壁部52とで構成されている。それぞれのヘッドレストステー90の上端部は、固定ブラケット50の後壁部51と側壁部52の上部でその3方を囲まれた状態となっており、溶接等で固定ブラケット50に固定される。後壁部11の上縁部は、当接部D
1(
図3)となっている。この当接部D
1は、
図3(a)に示すように、ヘッドレストが使用位置にあるときに、回動ブラケット10の当接部C
1に当接して、ヘッドレストの後方回動を規制するためのものとなっている。
【0028】
また、固定ブラケット50におけるそれぞれの側壁部52の外縁部には、使用時前方回動規制用係止部52aと格納時上方回動規制用係止部52bと格納時下方回動規制用係止部52cとが設けられている。第一実施態様のヘッドレストにおいて、使用時前方回動規制用係止部52aは、
図3(a)に示すように、ヘッドレストが使用位置にあるときに、ロック部材70の係止部B
1を係止して、ヘッドレストの前方回動を規制するためのものとなっている。格納時上方回動規制用係止部52bは、
図3(b)に示すように、ヘッドレストが格納位置にあるときに、ロック部材70の係止部B
1を係止して、ヘッドレストの後方回動を規制するためのものとなっている。格納時下方回動規制用係止部52cは、
図3(b)に示すように、ヘッドレストが格納位置にあるときに、ロック部材70の係止部B
1を係止して、ヘッドレストの下方回動を規制するためのものとなっている。
【0029】
ところで、第一実施態様のヘッドレストにおいては、固定ブラケット50の係止部52a,52b,52cのうち、使用時前方回動規制用係止部52aは、
図3(a)に示すように、その係止側への傾斜角度θ
1が20〜40°とされた「傾斜型係止部A
1」となっている。加えて、ロック部材付勢バネ80の付勢力を30〜60Nの範囲に設定している。
【0030】
このため、使用時前方回動規制用係止部52a(傾斜型係止部A
1)と係止部B
1とが係止しているときに、頭受け部材30の中心に対して前方に加えられる力が100N以下の場合には、使用時前方回動規制用係止部52a(傾斜型係止部A
1)と係止部B
1との係止が解除されない一方、その力が200N以上である場合には、使用時前方回動規制用係止部52a(傾斜型係止部A
1)に対して係止部B
1が滑って、使用時前方回動規制用係止部52a(傾斜型係止部A
1)と係止部B
1との係止が外れ、回動ブラケット10が前方回動可能な状態となるようになっている。したがって、使用位置にある頭受け部材30を、僅かな力が加えられた程度では回動しないようにしっかりと保持しながらも、手等で頭受け部材30に所定以上の力を加えただけで(ボタン操作やワイヤ操作等を行うことなく)、格納位置に回動させることができるようになっている。
【0031】
加えて、第一実施態様のヘッドレストでは、
図3(a)に示すように、当接部C
1と当接部D
1との当接により、使用時の後方回動が規制されるようになっている。この当接部C
1と当接部D
1は、左右一対の回動ブラケット10及び固定ブラケット50のそれぞれに設けられているため、100kg重程度の大きな負荷も分散させてしっかりと受け止めることができるようになっている。また、第一実施態様のヘッドレストでは、
図3(b)に示すように、ロック部材70の係止部B
1が格納時上方回動規制用係止部52bと格納時下方回動規制用係止部52cとに係止することにより、格納時の後方回動(上方回動)と下方回動とがそれぞれ規制されるようになっている。これらの格納時上方回動規制用係止部52bと格納時下方回動規制用係止部52cは、左右一対の固定ブラケット50における左右の側壁部52のそれぞれに設けられており、計4箇所に設けられているため、格納時の後方回動や前方回動の際の負荷も分散させて受け止めることができるようになっている。
【0032】
2.第二実施態様のヘッドレスト
続いて、第二実施態様のヘッドレストについて説明する。
図4は、第二実施態様のヘッドレストにおける回動中心付近を回動中心線に垂直な面で切断した状態を示した断面図であって、(a)使用位置にあるときと、(b)格納位置にあるときとをそれぞれ示した図である。第二実施態様のヘッドレストについては、主に、第一実施態様のヘッドレストと異なる部分を説明する。第二実施態様のヘッドレストにおいて特に言及しない部分の構成については、第一実施態様のヘッドレストと同様の構成を採用することができる。
【0033】
既に述べた第一実施態様のヘッドレストでは、
図3に示すように、固定ブラケット50に設けられた3つの係止部52a,52b,52cのうち、使用時前方回動規制用係止部52aのみが「傾斜型係止部A
1」となっていた。これに対し、第二実施態様のヘッドレストでは、
図4に示すように、使用時前方回動規制用係止部52a(
図4(a))に加えて、格納時上方回動規制用係止部52b(
図4(b))も、その係止面が係止側(後方回動側)へ傾斜角度θ
1で傾斜された「傾斜型係止部A
1」となっている。格納時上方回動規制用係止部52bの傾斜角度θ
1は、使用時前方回動規制用係止部52aの傾斜角度θ
1に一致させる必要はないが、通常、使用時前方回動規制用係止部52aの傾斜角度θ
1と同程度とされる。したがって、第二実施態様のヘッドレストでは、使用位置にある頭受け部材30を格納位置に移動させる際だけでなく、格納位置にある頭受け部材30を使用位置に移動させる際にも、ボタン操作やワイヤ操作等を行うことなく、手等で頭受け部材30に所定以上の力を加えるだけで済むようになっている。
【0034】
また、第一実施態様のヘッドレストでは、
図1に示すように、ロック部材70を、ロック用軸部71と支持用軸部72のみで構成していた。これに対し、第二実施態様のヘッドレストでは、
図4に示すように、ロック解除レバー73をロック部材70に設けている。ロック解除レバー73は、ロック部材70における支持用軸部72に固定されており、それを操作することにより、支持用軸部72を中心としてロック用軸部71を回動させることができるようになっている。このため、第二実施態様のヘッドレストでは、手等で頭受け部材に力を加えるだけでなく、ロック解除レバー73を操作することによっても、ロック部材70の係止部B
1と係止部52a,52b,52cとの
係止を解除することができるようになっている。
【0035】
3.第三実施態様のヘッドレスト
続いて、第三実施態様のヘッドレストについて説明する。
図5は、第三実施態様のヘッドレストにおける回動中心付近を回動中心線に垂直な面で切断した状態を示した断面図であって、(a)使用位置にあるときと、(b)格納位置にあるときとをそれぞれ示した図である。
図5では、同様の図面である
図3及び
図4で図示していたロック部材付勢バネ80を、図示の便宜上、省略している(第三実施態様のヘッドレストでも、ロック部材付勢バネ80自体は存在する。)。第三実施態様のヘッドレストについては、主に、第一実施態様のヘッドレストと異なる部分を説明する。第三実施態様のヘッドレストにおいて特に言及しない部分の構成については、第一実施態様のヘッドレスト等と同様の構成を採用することができる。
【0036】
第三実施態様のヘッドレストは、
図5に示すように、ロック解除部材100と、ロック解除ワイヤ110と、ロック解除部材付勢バネ120とを備えたものとなっている。ロック解除部材100は、その中間部を主軸40に対して回動自在に支持された側面視V字状の部材となっており、その一端側にロック解除用カム面101を、その他端側にワイヤ固定部102を備えたものとなっている。ロック解除ワイヤ110は、外側チューブ111と、外側チューブ111内にスライド可能な状態で挿通された内側ワイヤ112とで構成されている。ロック解除ワイヤ110は、左右一対のヘッドレストステー90のうち、いずれか一方の内部に挿通されて、シートバックの内部を通り、シートの側方等に設けられたレバー等の操作手段に連結される。外側チューブ111は、その上端部付近を、ヘッドレストステー90の上端部付近に固定されたワイヤ固定部91に固定され、内側ワイヤ112は、その一端部(
図5では上端部)を、ロック解除部材100のワイヤ固定部102に固定されている。ロック解除部材付勢バネ120は、ワイヤ固定部91とワイヤ固定部102との間に固定され、ロック解除部材100を
図5における反時計回りに付勢するものとなっている。
【0037】
この第三実施態様のヘッドレストは、
図5(a)に示す状態から、シートの側方等に設けられたレバー等を操作すると、ロック解除ワイヤ110の内側ワイヤが下側に引かれて、ロック解除部材100のワイヤ固定部102がロック解除部材付勢バネ120の付勢力に抗って下方に移動することで、ロック解除部材100がロック解除側(
図5では時計回り)に回動するようになっている。ロック解除部材100がロック解除側へ回動すると、ロック解除カム101がロック部材70の係止部B
1を押すことで、係止部B
1がロック解除側(
図5では上側)に移動し、使用時前方回動規制用係止部52a(傾斜型係止部A
1)と係止部B
1との係止が外れた状態となる。このため、第三実施態様のヘッドレストは、手等で頭受け部材に力を加えるだけでなく、シートの側方等に設けられたレバー等を操作することによっても、ロック部材70の係止部B
1の
係止を解除することができるようになっている。
【0038】
4.第四実施態様のヘッドレスト
続いて、第四実施態様のヘッドレストについて説明する。
図6は、第四実施態様のヘッドレストにおける回動中心付近を回動中心線に垂直な面で切断した状態を示した断面図であって、(a)使用位置にあるときと、(b)格納位置にあるときとをそれぞれ示した図である。第四実施態様のヘッドレストについては、主に、第一実施態様のヘッドレストと異なる部分を説明する。第四実施態様のヘッドレストにおいて特に言及しない部分の構成については、第一実施態様のヘッドレスト等と同様の構成を採用することができる。
【0039】
既に述べた第一実施態様のヘッドレストは、
図2(b)に示すように、頭受け部材30の下端部(使用位置にある頭受け部材30の下端部)に回動中心(支軸40)が設けられて、頭受け部材30の上端側が回動する「上振り式」のものとなっていた。これに対し、第四実施態様のヘッドレストは、
図6(a)に示すように、頭受け部材30の上端部(使用位置にある頭受け部材30の上端部)に回動中心(支軸40)が設けられて、頭受け部材30の下端側が回動する「下振り式」のものとなっている。これに伴い、第四実施態様のヘッドレストでは、使用位置(
図6(a))から前方回動させると格納位置(
図6(b))になり、格納位置(
図6(b))から下方回動させると使用位置(
図6(a))になるようになっており、係止部(使用時前方回動規制用係止部52a、格納時上方回動規制用係止部52b及び格納時下方回動規制用係止部52c)の配置も、第一実施態様のヘッドレストとは異なっている。また、第一実施態様のヘッドレストでは、頭受け部材30が枕型の形態を有していたが、第四実施態様のヘッドレストでは、頭受け部材30が鞍型(側面視逆L字状)の形態を有している。
【0040】
さらに、第一実施態様のヘッドレストでは、係止部52a,52b,52cのうち、使用時前方回動規制用係止部52aのみが「傾斜型係止部A
1」となっていたが、第四実施態様のヘッドレストでは、使用時前方回動規制用係止部52a(
図6(a))に加えて、格納時下方回動規制用係止部52c(
図6(b))も、その係止面が係止側(後方回動側)へ傾斜角度θ
1で傾斜された「傾斜型係止部A
1」となっている。格納時下方回動規制用係止部52cの傾斜角度θ
1は、使用時前方回動規制用係止部52aの傾斜角度θ
1に一致させる必要はないが、通常、使用時前方回動規制用係止部52aの傾斜角度θ
1と同程度とされる。したがって、第四実施態様のヘッドレストでは、使用位置にある頭受け部材30を格納位置に移動させる際だけでなく、格納位置にある頭受け部材30を使用位置に移動させる際にも、ボタン操作やワイヤ操作等を行うことなく、手等で頭受け部材30に所定以上の力を加えるだけで済むようになっている。
【0041】
さらにまた、第一実施態様のヘッドレストでは、
図1に示すように、鋼線材をU字状に折り曲げることにより、ロック部材70を形成していた。これに対し、第四実施態様のヘッドレストでは、
図6に示すように、ロック部材70がプレート状のものとなっている。具体的には、ロック用プレート部74と、ロック用プレート部74の一端側(
図6(a)では上端側)を回動可能に支持するための支持用軸部72とで、ロック部材70を構成している。ロック用プレート部74は、その他端側(
図6(a)では下端側)に、左右に突き出る一対の突片部を有しており、それぞれの突片部が係止部B
1となるようになっている(
図6では、左側の突片部のみを示している。)。それぞれの突片部における係止部B
1は、左右一対の固定ブラケット50にそれぞれ設けられた一対の側壁部52の係止部52a,52b,52cにそれぞれ係止されるようになっている。
【0042】
5.第五実施態様のヘッドレスト
続いて、第五実施態様のヘッドレストについて説明する。
図7は、第五実施態様のヘッドレストにおける回動中心付近を回動中心線に垂直な面で切断した状態を示した断面図であって、(a)使用位置にあるときと、(b)格納位置にあるときとをそれぞれ示した図である。第五実施態様のヘッドレストは、
図7に示すように、ロック解除部材100とロック解除ワイヤ110とロック解除部材付勢バネ(図示省略)とを備えたものとなっており、このロック解除ワイヤ110の操作でロック部材70のロック解除をできる点においては、第三実施態様のヘッドレストと同様である。このため、第五実施態様のヘッドレストについては、主に、第三実施態様のヘッドレストと異なる部分を説明する。第五実施態様のヘッドレストにおいて特に言及しない部分の構成については、第三実施態様のヘッドレスト等と同様の構成を採用することができる。
【0043】
既に述べた第三実施態様のヘッドレストでは、
図5に示すように、使用位置(
図5(a))から前方回動させると格納位置(
図5(b))になり、格納位置(
図5(b))から上方回動させると使用位置(
図5(a))になるようになっており、使用位置と格納位置との間でヘッドレストが略90°回動するようになっていた。これに対し、第五実施態様のヘッドレストでは、
図7に示すように、使用位置(
図7(a))から後方回動させると格納位置(
図7(b))になり、格納位置(
図7(b))から後方回動させると使用位置になるようになっており、使用位置と格納位置との間でヘッドレストが略180°回動するようになっている。シートバック200の背面(後面)には、格納位置にある頭受け部材30を収納するための背面凹部201が設けられている。
【0044】
このように、第五実施態様のヘッドレストは、第三実施態様のヘッドレストと比較して、使用位置と格納位置との前後関係や回動方向が異なっている。このため、第五実施態様のヘッドレストでは、第三実施態様のヘッドレストにおける使用時前方回動規制用係止部52a、格納時上方回動規制用係止部52b及び格納時下方回動規制用係止部52cの代わりに、使用時後方回動規制用係止部52d、格納時後方回動規制用係止部52e及び格納時前方回動規制用係止部52fが設けられている。使用時後方回動規制用係止部52dは、
図7(a)に示すように、頭受け部材30が使用位置にあるときに、ロック部材70の係止部B
1を係止し、頭受け部材30の後方回動を規制するためのものとなっている。格納時後方回動規制用係止部52eは、
図7(b)に示すように、頭受け部材30が格納位置にあるときに、ロック部材70の係止部B
1を係止し、頭受け部材30の後方回動を規制するためのものとなっている。格納時前方回動規制用係止部52fは、
図7(b)に示すように、頭受け部材30が格納位置にあるときに、ロック部材70の係止部B
1を係止し、頭受け部材30の前方回動を規制するためのものとなっている。
【0045】
第五実施態様のヘッドレストでは、係止部52d,52e,52fのうち、格納時後方回動規制用係止部52eは、その係止側への傾斜角度θ
1が20〜40°とされた「傾斜型係止部A
1」となっている。このため、
図7(b)に示すように、格納時後方回動規制用係止部52e(傾斜型係止部A
1)と係止部B
1とが係止しているときに、頭受け部材30の中心に対して後方に加えられる力が100N以下の場合には、格納時後方回動規制用係止部52e(傾斜型係止部A
1)と係止部B
1との係止が解除されない一方、その力が200N以上である場合には、格納時後方回動規制用係止部52e(傾斜型係止部A
1)に対して係止部B
1が滑って、格納時後方回動規制用係止部52e(傾斜型係止部A
1)と係止部B
1との係止が外れ、回動ブラケット10が後方回動可能な状態となるようになっている。したがって、格納位置にある頭受け部材30を、僅かな力が加えられた程度では回動しないようにしっかりと保持しながらも、手等で頭受け部材30に所定以上の力を加えただけで(ボタン操作やワイヤ操作等を行うことなく)、使用位置に回動させることができるようになっている。
【0046】
ところで、第三実施態様のヘッドレストでは、
図5(a)に示すように、使用時の後方回動規制を、回動ブラケット10の当接部C
1と固定ブラケット50の当接部D
1との当接で行うようになっていた。これに対し、第五実施態様のヘッドレストでは、
図7(a)に示すように、使用時の後方回動規制を、使用時後方回動規制用係止部52d(上記の「係止部A
2」に相当)と係止部B
1との係止により行うようにしている。使用時後方回動規制用係止部52d(係止部A
2)は、左右一対の固定ブラケット50における左右の側壁部52のそれぞれに設けられており、計4箇所に設けられているため、使用位置での後方負荷を分散させて受け止めることができるようになっている。
【0047】
6.用途
以上で述べた本発明のヘッドレストは、各種の座席に設けることができ、その用途を特に限定されるものではないが、自動車等の車両の座席のシートバックに設けるものとして好適であり、特に、2列目や3列目の座席のシートバックに設けるものとして好適である。中でも、
図7に示した第五実施態様のヘッドレストは、ハッチバック型の自動車における最後列のシートで採用するものとして好適である。
図8は、第五実施態様のヘッドレストを備えたシート(ハッチバック型の自動車における最後列のシート)を側方から見た状態を示した図であって、(a)シートバック200が起立しているときと、(b)シートバック200が前方倒伏の途中にあるときと、(c)シートバック200が前方倒伏を完了したときとをそれぞれ示した図である。
【0048】
第五実施態様のヘッドレストを、ハッチバック型の自動車における最後列のシートで採用すると、
図8(a)から
図8(c)に示すように、当該シートを前方倒伏させて折り畳む際に、シートバック200の前方倒伏動作と頭受け部材30の格納動作とが連動するようにすることで、頭受け部材70をハッチバックラインL
1や前方座席のシートバックラインL
2に干渉させることなく、当該折り畳み操作を容易に行うことが可能になる。また逆に、
図8(c)から
図8(a)に示すように、シートバックを折り畳み状態から起立位置へと起こす際にも、頭受け部材70をハッチバックラインL
1や前方座席のシートバックラインL
2に干渉しないようにすることが可能になる。
【0049】
すなわち、
図8(a)に示すように、シートバック200が起立した状態において、頭受け部材30を後方回動させようとしても、頭受け部材30がハッチバックラインL
1に干渉し、
図8(b)に示すように、シートバック200が前方倒伏の途中にある状態において、シートバック200をさらに前方回動させようとしても、頭受け部材30が前方座席のシートバックラインL
2に干渉するようになるところ、シートバック200が
図8(a)に示す起立位置から、
図8(b)に示す30〜45°前方倒伏した位置(前方座席のシートバックラインL
2に頭受け部材30が当たる手前の位置)までの間は、頭受け部材30を使用位置のままとし、
図8(b)に示す位置を超えると、頭受け部材30が格納位置へと後方回動するようにすることで、頭受け部材30をハッチバックラインL
1やシートバックラインL
2に干渉させることなく、シートを
図8(c)に示す前方倒伏位置まで折り畳むことが可能になる。
【0050】
上記の動作は、
図8に示すように、ロック解除ワイヤ110の外側チューブ111の下端を、シートバック200内に設けたワイヤ固定部202に固定し、ロック解除ワイヤ110の内側ワイヤ112の下端を、シートバック200内に動かない状態(回動しない状態)で設けた固定部材400に固定することによって実現することができる。外側チューブ111の下端を固定したワイヤ固定部202は、シートバック200の前方倒伏動作に伴って、前方に移動するのに対し、内側ワイヤ112の下端を固定した固定部材400は移動しないため、シートバック200の前方倒伏動作に伴って、内側ワイヤ112が相対的に下方へ引っ張られた状態となるようにすることができ、これにより、
図7(a)に示す使用時後方回動規制用係止部52d(係止部A
2)と係止部B
1との係止を解除し、回動ブラケット付勢バネ(図示省略)の付勢力により、頭受け部材30が格納位置まで自動的に回動するようにすることが可能になる。
【0051】
シートバック200内には、
図8に示すように、シートバックロック部材203を設け、このシートバックロック部材203が、固定部材400に設けた係止部401(
図8(a))や係止部402(
図8(c))に係止するようにしてもよい。これにより、シートバック200を起立位置や前方倒伏位置において、しっかりと保持することが可能になる。
【0052】
また、
図8(c)に示すように、シートバック200が前方倒伏した状態において、頭受け部材30を使用位置まで回動させようとしても、頭受け部材30が前方座席のシートバックラインL
2に干渉するようになるところ、
図8(c)に示す前方倒伏位置から、
図8(b)に示す30〜45°前方倒伏した位置(ロック解除部材100(
図7)がロックを解除しない状態となる位置)までシートバック200を起こした後、頭受け部材30を手等で掴む等して格納位置から使用位置まで回動させ、シートバック200をさらに起こすことで、頭受け部材30をシートバックラインL
2に干渉させることなく、シートバック200を
図8(a)に示す起立位置まで起こすことが可能になる。