特許第6600334号(P6600334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6600334宇宙環境試験装置、及び宇宙環境試験装置の運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6600334
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】宇宙環境試験装置、及び宇宙環境試験装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
   B64G 7/00 20060101AFI20191021BHJP
   F25D 3/10 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   B64G7/00 B
   F25D3/10 Z
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-124120(P2017-124120)
(22)【出願日】2017年6月26日
(65)【公開番号】特開2019-6264(P2019-6264A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2018年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊木 卓也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 淳
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−137200(JP,A)
【文献】 特開2011−189894(JP,A)
【文献】 米国特許第04625521(US,A)
【文献】 特開平06−174348(JP,A)
【文献】 実開昭63−046808(JP,U)
【文献】 特開平07−165200(JP,A)
【文献】 特開2014−199745(JP,A)
【文献】 特開平02−130375(JP,A)
【文献】 実開昭63−144564(JP,U)
【文献】 特開2003−086418(JP,A)
【文献】 特開2014−126283(JP,A)
【文献】 特表2009−500587(JP,A)
【文献】 特表2009−529239(JP,A)
【文献】 特許第3946984(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 7/00
F25D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側の空間を高真空状態に保持するチェンバーと、
前記チェンバーの内側に設けられたシュラウドと、
鉛直方向において前記シュラウドよりも高い位置に設けられたヘッドタンクと、
前記ヘッドタンクと前記シュラウドとの間に低温液化ガスを循環させる循環経路と、
前記低温液化ガスの供給圧力が、大気圧よりも高い第1目標圧力値に保持された状態で、前記シュラウドに液体状態の前記低温液化ガスを供給するとともに、前記低温液化ガスの供給圧力が、前記第1目標圧力値よりも高い第2目標圧力値に保持された状態で、前記シュラウドに気体状態の低温液化ガスを供給する、制御装置と、を備え
前記循環経路が、前記ヘッドタンクから前記シュラウドに気体状態の低温液化ガスを供給する気体状低温液化ガス導出経路と、前記ヘッドタンクから前記シュラウドに液体状態の低温液化ガスを供給する液状低温液化ガス導出経路とに分岐している、宇宙環境試験装置。
【請求項2】
前記低温液化ガスを貯留する低温液化ガス貯槽と、
前記低温液化ガス貯槽と前記ヘッドタンクとの間に設けられ、前記ヘッドタンクに液体状態の前記低温液化ガスを供給する液供給経路と、
前記低温液化ガス貯槽と前記循環経路との間に設けられ、前記シュラウドの一次側の前記循環経路に、気体状態の低温液化ガスを供給するガス供給経路と、を備える、請求項1に記載の宇宙環境試験装置。
【請求項3】
前記制御装置と前記低温液化ガス貯槽との間を電気的に接続する信号線をさらに備え、
前記低温液化ガス貯槽が、当該低温液化ガス貯槽内の圧力を調整する圧力調整機構を有するとともに、
前記制御装置は、前記シュラウドに液体状態の前記低温液化ガスを供給する際に、前記低温液化ガス貯槽内の圧力を前記第1目標圧力値に保持するとともに、前記ガス供給経路に気体状態の低温液化ガスを供給する際に、前記低温液化ガス貯槽内の圧力を前記第2目標圧力値に保持する、請求項2に記載の宇宙環境試験装置。
【請求項4】
前記ヘッドタンク内の液面の位置を測定する液面計と、
前記制御装置と前記液面計との間を電気的に接続する信号線をさらに備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の宇宙環境試験装置。
【請求項5】
前記低温液化ガスをそれぞれ貯留する第1及び第2低温液化ガス貯槽と、
前記第1低温液化ガス貯槽と前記ヘッドタンクとの間に設けられ、前記ヘッドタンクに液体状態の前記低温液化ガスを供給する液供給経路と、
前記第2低温液化ガス貯槽と前記循環経路との間に設けられ、前記シュラウドの一次側の前記循環経路に、気体状態の低温液化ガスを供給するガス供給経路と、を備える、請求項1に記載の宇宙環境試験装置。
【請求項6】
前記第1及び第2低温液化ガス貯槽が、当該第1及び第2低温液化ガス貯槽内の圧力を調整する圧力調整機構をそれぞれ有し、
前記第1低温液化ガス貯槽内の圧力が、前記第1目標圧力値に保持されるとともに、
前記第2低温液化ガス貯槽内の圧力が、前記第2目標圧力値に保持される、請求項5に記載の宇宙環境試験装置。
【請求項7】
チェンバーの内側に設けられたシュラウドに気体状態又は液体状態の低温液化ガスを供給し、前記チェンバー内の温度を制御する宇宙環境試験装置の運転方法であって、
前記チェンバー内を冷却する際、大気圧よりも高い第1目標圧力値に供給圧力を保持しながら、前記シュラウドに供給する低温液化ガスが一時的に貯留されるヘッドタンクから前記シュラウドに液体状態の低温液化ガスを供給し、
前記チェンバー内を加熱する際、前記第1目標圧力値よりも高い第2目標圧力値に供給圧力を保持しながら、前記ヘッドタンクから前記シュラウドに気体状態の低温液化ガスを供給する、宇宙環境試験装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宇宙環境試験装置、及び宇宙環境試験装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙空間の冷暗黒状態を模擬するための装置として、宇宙環境試験装置が知られている。一般的に、宇宙環境試験装置は、宇宙空間の冷暗黒状態を疑似的に再現するために、高真空状態に排気可能なチェンバーと、チェンバー内を極低温状態に保つためのシュラウドとを備えている。また、シュラウド内は、黒色の高輻射率塗料で塗装されており、低温液化ガスが循環される。
【0003】
特許文献1には、チェンバー内のシュラウドに液体状態の低温液化ガスを循環させる技術として、フリーボイリング式(サーモサイフォン式)による循環方法が開示されている。具体的には、チェンバー内のシュラウドよりも高い位置にヘッドタンクを設けて、循環流体を循環させる配管の一端をヘッドタンクの液相部に接続し、シュラウドに供給した後に配管の他端をヘッドタンクの気相部と接続する。これにより、液体状態の低温液化ガスは、シュラウドで気化することによって生じる液密度の差を利用して、ヘッドタンクとシュラウドとの間を循環する。
【0004】
また、宇宙環境試験装置では、チェンバー内の被試験物を加熱する場合に、チェンバー内のシュラウドに気体状態の低温液化ガスを循環させて、これを熱源として用いる場合もある。すなわち、チェンバー内のシュラウドには、気体状態又は液体状態の両方の低温液化ガスを循環供給する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3946984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、宇宙環境試験装置では、上述した熱制御を行うために、シュラウドによる長い流路がチェンバーの内壁に形成されている。そして、シュラウド内に気体状態、又は液体状態の大量の低温液化ガスを供給する必要があった。しかしながら、従来の宇宙環境試験装置では、チェンバー内を所定の温度環境とするには数時間かかるのが実状であり、特に液体状態の低温液化ガスを供給する際のフラッシュロスが大きいため、エネルギー効率の改善が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、チェンバー内に設けられたシュラウド内に、気体状態又は液体状態の低温液化ガスを効率よく供給することが可能な宇宙環境試験装置、及び宇宙環境試験装置の運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
[1] 内側の空間を高真空状態に保持するチェンバーと、
前記チェンバーの内側に設けられたシュラウドと、
鉛直方向において前記シュラウドよりも高い位置に設けられたヘッドタンクと、
前記ヘッドタンクと前記シュラウドとの間に低温液化ガスを循環させる循環経路と、
前記低温液化ガスの供給圧力が、大気圧よりも高い第1目標圧力値に保持された状態で、前記シュラウドに液体状態の前記低温液化ガスを供給するとともに、前記低温液化ガスの供給圧力が、前記第1目標圧力値よりも高い第2目標圧力値に保持された状態で、前記シュラウドに気体状態の低温液化ガスを供給する、制御装置と、を備える、宇宙環境試験装置。
[2] 前記低温液化ガスを貯留する低温液化ガス貯槽と、
前記低温液化ガス貯槽と前記ヘッドタンクとの間に設けられ、前記ヘッドタンクに液体状態の前記低温液化ガスを供給する液供給経路と、
前記低温液化ガス貯槽と前記循環経路との間に設けられ、前記シュラウドの一次側の前記循環経路に、気体状態の低温液化ガスを供給するガス供給経路と、を備える、[1]に記載の宇宙環境試験装置。
[3] 前記制御装置と前記低温液化ガス貯槽との間を電気的に接続する信号線をさらに備え、
前記低温液化ガス貯槽が、当該低温液化ガス貯槽内の圧力を調整する圧力調整機構を有するとともに、
前記制御装置は、前記シュラウドに液体状態の前記低温液化ガスを供給する際に、前記低温液化ガス貯槽内の圧力を前記第1目標圧力値に保持するとともに、前記ガス供給経路に気体状態の低温液化ガスを供給する際に、前記低温液化ガス貯槽内の圧力を前記第2目標圧力値に保持する、[2]に記載の宇宙環境試験装置。
[4] 前記ヘッドタンク内の液面の位置を測定する液面計と、
前記制御装置と前記液面計との間を電気的に接続する信号線をさらに備える、[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の宇宙環境試験装置。
[5] 前記低温液化ガスをそれぞれ貯留する第1及び第2低温液化ガス貯槽と、
前記第1低温液化ガス貯槽と前記ヘッドタンクとの間に設けられ、前記ヘッドタンクに液体状態の前記低温液化ガスを供給する液供給経路と、
前記第2低温液化ガス貯槽と前記循環経路との間に設けられ、前記シュラウドの一次側の前記循環経路に、気体状態の低温液化ガスを供給するガス供給経路と、を備える、[1]に記載の宇宙環境試験装置。
[6] 前記第1及び第2低温液化ガス貯槽が、当該第1及び第2低温液化ガス貯槽内の圧力を調整する圧力調整機構をそれぞれ有し、
前記第1低温液化ガス貯槽内の圧力が、前記第1目標圧力値に保持されるとともに、
前記第2低温液化ガス貯槽内の圧力が、前記第2目標圧力値に保持される、[5]に記載の宇宙環境試験装置。
[7] チェンバーの内側に設けられたシュラウドに気体状態又は液体状態の低温液化ガスを供給し、前記チェンバー内の温度を制御する宇宙環境試験装置の運転方法であって、
前記チェンバー内を冷却する際、大気圧よりも高い第1目標圧力値に供給圧力を保持しながら、前記シュラウドに液体状態の低温液化ガスを供給し、
前記チェンバー内を加熱する際、前記第1目標圧力値よりも高い第2目標圧力値に供給圧力を保持しながら、前記シュラウドに気体状態の低温液化ガスを供給する、宇宙環境試験装置の運転方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の宇宙環境試験装置、及び宇宙環境試験装置の運転方法によれば、チェンバー内に設けられたシュラウド内に、気体状態又は液体状態の低温液化ガスを効率よく供給することができるため、チェンバー内を所定の温度環境とする際のエネルギー効率の改善が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態である宇宙環境試験装置の構成を示す系統図である。
図2】本発明の一実施形態である宇宙環境試験装置の運転方法の説明するための模式図である。
図3】本発明の他の実施形態である宇宙環境試験装置の構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した一実施形態である宇宙環境試験装置の構成について、宇宙環境試験装置の運転方法と併せて、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0012】
<宇宙環境試験装置>
先ず、本発明を適用した一実施形態である宇宙環境試験装置の構成の一例について説明する。図1は、本発明の一実施形態である宇宙環境試験装置の構成を示す系統図である。図1に示すように、本実施形態の宇宙環境試験装置(以下、単に「試験装置」とも記す)1は、チェンバー2、シュラウド3、ヘッドタンク4、循環経路L1、液供給経路L2、ガス供給経路L3、低温液化ガス貯槽5、及び制御装置6を備えて、概略構成されている。
【0013】
本実施形態の試験装置1は、宇宙空間の冷暗黒状態を模擬するための装置である。具体的には、試験装置1は、高真空状態のチェンバー2内に設けられたシュラウド3に気体状態又は液体状態の低温液化ガスを供給して、チェンバー2内を目的の温度に制御するものである。
なお、本実施形態の試験装置1では、低温液化ガスとして液化窒素を用いた場合を一例として説明するが、これに限定されるものではなく、他の低温液化ガス(液体酸素、液体ヘリウム等)を用いてもよい。
【0014】
チェンバー2は、内側に空間(以下、「内部空間」という場合もある)を有しており、その空間に被試験物を載置することができる。チェンバー2の内部空間は、図示略の真空排気装置と連通されており、当該内部空間を高真空状態に保持することができる。チェンバー2の大きさや形状は、特に限定されず、内部空間に載置する被試験物に応じて適宜選択することができる。
【0015】
シュラウド3は、チェンバー2の内部空間を加熱又は冷却するために、チェンバー2の内側に設けられている。シュラウド3は、チェンバー2の内壁の一部あるいは全部を覆うように設けられている。このシュラウド3に気体状態又は液体状態の低温液化ガスを供給することにより、チェンバー2の内部空間、及び当該内部空間に載置された被試験物を、加熱又は冷却することができる。また、シュラウド3は、チェンバー2の内側において、2系統以上に分岐されていてもよいし、1系統であってもよい。
【0016】
ヘッドタンク4は、シュラウド3に供給する低温液化ガスを一時的に貯留するための容器である。ヘッドタンク4は、チェンバー2の外側であって、鉛直方向においてシュラウド3よりも高い位置に設けられている。ヘッドタンク4内において、低温液化ガスは、気相4Aと液相4Bとに分かれている。ヘッドタンク4の容量や形状は、特に限定されず、チェンバー2の大きさやシュラウド3の容量に応じて適宜選択することができる。
【0017】
ヘッドタンク4には、当該ヘッドタンク4の内側の液相4Bの液面高さを測定するために、液面計7が設けられている。この液面計7は、信号線C1を介して制御装置6と電気的に接続されている。これにより、液面計7によって測定した液相4Bの液面値を電気信号として制御装置6に送信することができる。
【0018】
循環経路L1は、ヘッドタンク4とシュラウド3との間に低温液化ガスを循環させるために設けられた、ループ状の流路である。この循環経路L1により、ヘッドタンク4からシュラウド3に、気体状態又は液体状態の低温液化ガスを供給するとともに、シュラウド3からヘッドタンク4に低温液化ガスを返送することができる。
また、循環経路L1は、ヘッドタンク4からシュラウド3に低温液化ガスを供給する経路が、気体状低温液化ガス導出経路L1Aと、液状低温液化ガス導出経路L1Bとに分岐されている。
【0019】
具体的には、ヘッドタンク4の頂部には、気体状低温液化ガス導出経路L1Aの一端が接続されている。これにより、気体状低温液化ガス導出経路L1Aとヘッドタンク4の気相4Aとが連通されて、気体状態の低温液化ガスをヘッドタンク4からシュラウド3に供給することができる。
また、ヘッドタンク4の底部には、液状低温液化ガス導出経路L1Bの一端が接続されている。これにより、液状低温液化ガス導出経路L1Bとヘッドタンク4の液相4Bとが連通されて、液体状態の低温液化ガスをヘッドタンク4からシュラウド3に供給することができる。
気体状低温液化ガス導出経路L1Aの他端と、液状低温液化ガス導出経路L1Bの他端とは、合流点Pにおいて合流して、循環経路L1を構成する。
循環経路L1は、分岐点Qにおいて再び分岐し、気体状態又は液体状態の低温液化ガスをシュラウド3,3にそれぞれ供給する。
また、循環経路L1は、シュラウド3,3の二次側からヘッドタンク4の頂部寄りの部分にそれぞれ接続される。これにより、シュラウド3に供給した後の低温液化ガスを、ヘッドタンク4の気相4A部分に返送することができる。
【0020】
気体状低温液化ガス導出経路L1Aには、液状低温液化ガス導出経路L1Bと合流する合流点Pまでに、遮断弁8、圧力計25、温度計26、ブロワ9、温調ユニット10、及び遮断弁11が設けられている。
【0021】
遮断弁8は、信号線C2を介して制御装置6と電気的に接続されており、制御装置6からの制御信号に応じて開状態又は閉状態が選択される。具体的には、遮断弁8は、ヘッドタンク4の気相4Aから気体状態の低温液化ガスをシュラウド3に供給する場合に開状態となる。
【0022】
圧力計25及び温度計26は、それぞれ信号線C15,16を介して制御装置6と電気的に接続されている。これにより、気体状低温液化ガス導出経路L1A内の低温液化ガスの圧力値、及び温度を電気信号として制御装置6に送信することができる。
【0023】
ブロワ9及び温調ユニット10は、それぞれ信号線C3及びC4を介して制御装置6と電気的に接続されており、制御装置6からの制御信号に応じて運転状態又は停止状態が選択される。具体的には、気体状態の低温液化ガスを循環したい場合にはブロワ9が、気体状態の低温液化ガスの温度を調整(温調)したい場合には温調ユニット10が、それぞれ運転状態となる。
【0024】
遮断弁11は、信号線C5を介して制御装置6と電気的に接続されており、制御装置6からの制御信号に応じて開状態又は閉状態が選択される。具体的には、遮断弁11は、気体状低温液化ガス導出経路L1Aに気体状態の低温液化ガスを循環させる場合に開状態となる。
【0025】
また、気体状低温液化ガス導出経路L1Aは、分岐点Rにおいて排気経路L7と分岐されている。排気経路L7には、圧力調節弁24が設けられている。
【0026】
圧力調整弁24は、信号線C14を介して制御装置6と電気的に接続されており、制御装置6からの制御信号に応じて、開度が全閉から全開まで制御される。本実施形態の試験装置1は、制御装置6によって圧力調整弁24の開度と、後述する圧力調整弁23の開度とを連動して制御し、ブロワ9の吸入温度に応じて吸入圧力を調節することができるため、ブロワ9の吸入側の気体状態の低温液化ガスの密度を一定に制御することができる。これにより、ブロワ9から一定の質量流量をシュラウド3に供給することができる。
【0027】
液状低温液化ガス導出経路L1Bには、気体状低温液化ガス導出経路L1Aと合流する合流点Pまでに、遮断弁12が設けられている。
遮断弁12は、信号線C6を介して制御装置6と電気的に接続されており、制御装置6からの制御信号に応じて開状態又は閉状態が選択される。具体的には、遮断弁12は、液状低温液化ガス導出経路L1Bに液体状態の低温液化ガスを循環させる場合に開状態となる。
【0028】
合流点Pにおいて合流した循環経路L1は、シュラウド3の下部にある分岐点Pよりもさらに下方に位置する分岐点Vにおいて、排気経路L8と分岐されている。
排気経路L8は、主として、シュラウド3、ヘッドタンク4、及び循環経路L1に貯留している液体状の低温液化ガスを抜くために設けられている。排気経路L8には、遮断弁27が設けられている。
【0029】
遮断弁27は、信号線C17を介して制御装置6と電気的に接続されており、制御装置6からの制御信号に応じて、開状態又は閉状態が選択される。具体的には、制御装置6により、遮断弁8,11,14が閉状態、液面調整弁21が閉状態、流量調整弁13が開状態に制御された上で、遮断弁27が開状態となることで、シュラウド3,ヘッドタンク4,循環経路L1、L1Bに貯留している液体状の低温液化ガスを系外に排出することができる。
【0030】
分岐点Qにおいて分岐された循環経路L1には、流量調整弁13,13がそれぞれ設けられている。
流量調整弁13は、信号線C7を介して制御装置6と電気的に接続されており、制御装置6からの制御信号に応じて、開度が全閉から全開まで制御される。これにより、シュラウド3への、気体状態又は液体状態の低温液化ガスの供給量を調節することができる。
【0031】
本実施形態の試験装置1は、シュラウド3とヘッドタンク4との間に低温液化ガスを循環させる循環経路L1を設けるとともに、ヘッドタンク4を鉛直方向においてシュラウド3よりも高い位置に設ける構成である。これにより、本実施形態の試験装置1では、シュラウド3とヘッドタンク4との間に低温液化ガスを循環させる際、フリーボイリング式(サーモサイフォン式)を採用することができる。
【0032】
循環経路L1には、ヘッドタンク4の気相4Aと連通する排気経路L4が設けられている。具体的には、排気経路L4は、遮断弁8の一次側の分岐点Sにおいて、気体状低温液化ガス導出経路L1Aと分岐するように設けられている。
【0033】
排気経路L4には、一次側から順に、遮断弁14、及び加温器15が設けられている。
遮断弁14は、信号線C8を介して制御装置6と電気的に接続されている。これにより、ヘッドタンク4の内圧(すなわち、気相4A部分の圧力)が規定値以上に上昇した場合に、制御装置6からの制御信号を受信した遮断弁14が開状態となり、ヘッドタンク4内の気体状態の低温液化ガスが排気経路L4を介して外部に放出される。また、排気経路L4を通過する際、加温器15によって低温液化ガスを温めることができる。
【0034】
低温液化ガス貯槽5は、ヘッドタンク4を介してシュラウド3に供給する低温液化ガスを貯留するための容器である。低温液化ガス貯槽5内において、低温液化ガスは、気相5Aと液相5Bとに分かれている。低温液化ガス貯槽5の容量や形状は、特に限定されず、チェンバー2の大きさやシュラウド3の容量に応じて適宜選択することができる。
【0035】
低温液化ガス貯槽5には、低温液化ガス貯槽5内の圧力を測定する圧力計16、低温液化ガス貯槽5内の圧力を調整する圧力調整機構17が設けられている。
【0036】
圧力計16は、気相5Aと連通するように低温液化ガス貯槽5の上方寄りに接続されている。圧力計16は、信号線C9を介して制御装置6と電気的に接続されている。これにより、圧力計16によって測定した低温液化ガス貯槽5内の圧力値P(MPaG)を電気信号として制御装置6に送信することができる。
【0037】
圧力調整機構17は、低温液化ガス貯槽5の気相5Aと液相5Bとを連通するように設けられた経路L5と、経路L5の液相5B側から順に設けられた気化器18、及び圧力調整弁19と、圧力調整弁19の二次側の分岐点Tにおいて経路L5と分岐するように設けられた排気経路L6と、排気経路L6に設けられた圧力調整弁20とによって構成されている。なお、圧力調整機構17の構成は一例であって、これに限定されるものではない。
【0038】
気化器18は、経路L5から供給される液体状態の低温液化ガスを加温して気化することによって、気体状態の低温液化ガスを二次側に供給するために設けられている。
【0039】
圧力調整弁19は、信号線C10を介して制御装置6と電気的に接続されており、制御装置6からの制御信号に応じて、開度が全閉から全開まで制御される。これにより、経路L5から低温液化ガス貯槽5の気相5Aへの、気体状態の低温液化ガスの供給量を調節することができる。なお、圧力調整弁19を全閉状態から開状態とすることにより、液相5B側から液体状態の低温液化ガスが経路L5内に導入され、気化器18によって気体状態とされた後に気相5A側に導出されることで、低温液化ガス貯槽5内の圧力が昇圧される。
すなわち、本実施形態の試験装置1では、圧力計16と、圧力調整機構17のうち、経路L5、気化器18、及び圧力調整弁19と、信号線C9,C10と、制御装置6とによって、加圧機構が構成されている。
【0040】
圧力調整弁20は、信号線C11を介して制御装置6と電気的に接続されており、制御装置6からの制御信号に応じて、開度が全閉から全開まで制御される。これにより、排気経路L6から外部への、気体状態の低温液化ガスの放出量を調節することができる。なお、圧力調整弁20を全閉状態から開状態とすることにより、低温液化ガス貯槽5内の気相5A部分の低温液化ガスが排気経路L6から外部に放出されることで、低温液化ガス貯槽5内の圧力が減圧される。
すなわち、本実施形態の試験装置1では、圧力計16と、圧力調整機構17のうち、経路L5、排気経路L6、及び圧力調整弁20と、信号線C9,C11と、制御装置6とによって、減圧機構が構成されている。
【0041】
液供給経路L2は、ヘッドタンク4に液体状態の低温液化ガスを供給するために、低温液化ガスの供給源である低温液化ガス貯槽5とヘッドタンク4との間にわたって設けられている。具体的には、液供給経路L2は、一端が液相5Bと連通するように低温液化ガス貯槽5の底部寄りに接続されており、他端が気相4Aと連通するようにヘッドタンク4の中央又は中央よりも上側の部分に接続されている。また、液供給経路L2には、液面調整弁21が設けられている。
【0042】
液面調整弁21は、信号線C12を介して制御装置6と電気的に接続されており、制御装置6からの制御信号に応じて、開度が全閉から全開まで制御される。これにより、低温液化ガス貯槽5からヘッドタンク4への、液体状態の低温液化ガスの供給量を調節することができる。
【0043】
ガス供給経路L3は、シュラウド3に気体状態の低温液化ガスを供給するために、低温液化ガスの供給源である低温液化ガス貯槽5と循環経路L1との間に設けられている。具体的には、ガス供給経路L3は、一端が液相5Bと連通するように低温液化ガス貯槽5の底部寄りに接続されており、他端が循環経路L1を構成する気体状低温液化ガス導出経路L1Aの、遮断弁8とブロワ9との間の合流点Uに接続されている。また、ガス供給経路L3には、気化器22と、圧力調整弁23とが設けられている。
【0044】
気化器22は、低温液化ガス貯槽5の液相部分から供給される液体状態の低温液化ガスを加熱して気化することによって、気体状態の低温液化ガスを気体状低温液化ガス導出経路L1Aに供給するために設けられている。
【0045】
圧力調整弁23は、信号線C13を介して制御装置6と電気的に接続されており、制御装置6からの制御信号に応じて、開度が全閉から全開まで制御される。これにより、低温液化ガス貯槽5からシュラウド3への、気体状態の低温液化ガスの供給量を調節することができる。
【0046】
制御装置6は、上述したように、液面計7、ブロワ9、温調ユニット10、圧力計16,25、遮断弁8,11,12,14、及び流量調整弁13,圧力調整弁19,20,液面調整弁21,圧力調整弁23,24と、温度計26と、信号線C1〜C17を介して電気的に接続されている。
【0047】
制御装置6は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、制御プログラムを実行する。制御プログラムの実行によって、制御装置6は、図示略の弁制御部、取得部、設定値情報記憶部、決定部を備える装置として機能する。なお、制御装置6の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、制御プログラムは、電気通信回線を介して送受信されてもよい。
【0048】
弁制御部は、決定部によって決定された制御プログラムに基づいて、各遮断弁8,11,12,14の開閉と、流量調整弁13、圧力調整弁19,20,23,24、及び液面調整弁21の開度とを、それぞれ制御する。
取得部は、液面計7によって検出されたヘッドタンク4の液面値、圧力計16によって検出された低温液化ガス貯槽5内の圧力値P,圧力計25及び温度計26によって検出された気体状低温液化ガス導出経路L1A内の低温液化ガスの圧力値、及び温度の情報のいずれか又は全てを含む検出データを取得する。
【0049】
設定値情報記憶部は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。設定値情報記憶部は、液面高さの目標値(液面値L)、シュラウド3に液体状態の低温液化ガスを供給する際の低温液化ガス貯槽5の第1目標圧力値P、シュラウド3に気体状態の低温液化ガスを供給する際の低温液化ガス貯槽5の第2目標圧力値P、並びにこれらの上限値P、下限値P等の、各種目標値及び規定値を記憶している。
決定部は、各種目標値及び規定値を参照し、取得部によって取得された検出データに含まれる各測定値との比較演算した結果に基づいて、最適な制御プログラムを決定する。
【0050】
具体的には、制御装置6は、圧力計16によって測定した低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pが、設定した第1目標圧力値P、又は第2目標圧力値Pの許容される下限値未満となった場合に、圧力調整弁19に制御信号を送信して全閉状態から開状態(所定の開度)に制御する。これにより、液相5B側から液体状態の低温液化ガスが経路L5内に導入され、気化器18によって気体状態とされた後に気相5A側に導出されて、低温液化ガス貯槽5内の圧力が上昇する。そして、制御装置6は、圧力計16によって測定した圧力値Pが、第1目標圧力値P、あるいは第2目標圧力値Pの許容される下限値以上に回復した場合に、圧力調整弁19に制御信号を送信して開状態から全閉状態に制御する。
【0051】
一方、制御装置6は、圧力計16によって測定した低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pが、第1目標圧力値P、あるいは第2目標圧力値Pの許容される上限値を超えた場合に、圧力調整弁20に制御信号を送信して全閉状態から開状態に制御する。これにより、低温液化ガス貯槽5内の気相5A部分の低温液化ガスが排気経路L6から外部に放出されて、低温液化ガス貯槽5内の圧力が減少する。そして、制御装置6は、圧力計16によって測定した圧力値Pが、第1目標圧力値P、あるいは第2目標圧力値Pの許容される上限値以下に回復した場合に、圧力調整弁20に制御信号を送信して開状態から全閉状態に制御する。
【0052】
なお、制御装置(設定値情報記憶部)6に設定する第1目標圧力値Pとしては、大気圧よりもやや高い値とすることが好ましい。具体的には、第1目標圧力値Pは、0.1〜0.3MPaGとすることができ、0.2〜0.3MPaGとすることが好ましい。第1目標圧力値Pに供給圧力が保持された低温液化ガス貯槽5から液供給経路L2を介して液体状態の低温液化ガスを循環経路L1に供給することにより、循環経路L1におけるフラッシュロスを低減することができる。したがって、シュラウド3とヘッドタンク4との間に液体状態の低温液化ガスを効率よく循環させることができる。
【0053】
また、制御装置(設定値情報記憶部)6に設定する第2目標圧力値Pとしては、上述した第1目標圧力値Pよりも大きな値とすることが好ましい。具体的には、第2目標圧力値Pは、0.4〜0.65MPaGとすることができ、0.5〜0.65MPaGとすることが好ましい。第2目標圧力値Pに供給圧力が保持された低温液化ガス貯槽5からガス供給経路L3及び循環経路L1に供給することで、シュラウド3への気体状態の低温液化ガスの供給量を増加することができる。したがって、液体状態と比較して気体状態の低温液化ガスは比熱が小さいにも関わらず、チェンバー2内の温度制御を効率よく行うことができる。
【0054】
<宇宙環境試験装置の運転方法>
次に、本発明を適用した一実施形態である宇宙環境試験装置(すなわち、上述した試験装置1)の運転方法の一例について説明する。図2は、本発明の一実施形態である宇宙環境試験装置の運転方法を説明するためのタイムチャートである。なお、図2中、X軸は試験装置1の運転開始からの時間Tを示しており、Y軸は低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pを示している。
【0055】
本実施形態の宇宙環境試験装置1の運転方法(以下、単に「運転方法」とも記す)は、チェンバー2の内側に設けられたシュラウド3に、気体状態又は液体状態の低温液化ガスを供給して、チェンバー2内の温度を制御するにあたって、チェンバー2内を冷却する際、大気圧よりも高い第1目標圧力値Pに供給圧力を保持しながら、シュラウド3に液体状態の低温液化ガスを供給するとともに、チェンバー2内を温調する際、第1目標圧力値Pよりも高い第2目標圧力値Pに供給圧力を保持しながら、シュラウド3に気体状態の低温液化ガスを供給する方法である。
【0056】
以下、本実施形態の運転方法として、(1)液体状態の低温液化ガスの供給モードがオフの状態(以下、「第1の状態」という)、及び(2)液体状態の低温液化ガスの供給モードがオンの状態(以下、「第2の状態」という)を、交互に行う場合を一例として、図2を参照しながら説明する。
【0057】
(第1の状態)
先ず、本実施形態の運転方法では、時刻tまで、第1の状態の運転を行う。第1の状態の運転では、第2目標圧力値Pに供給圧力を保持しながら、シュラウド3に気体状態の低温液化ガスを供給して、チェンバー2内を温調する。すなわち、低温液化ガス貯槽5内の圧力を、第2目標圧力値Pに維持する。
【0058】
具体的には、第1の状態の運転では、先ず、制御装置6により、遮断弁12、14が閉状態、遮断弁8,11が開状態に制御される。これにより、循環経路L1において、液体状低温液化ガス供給経路L1Bが閉塞され、気体状低温液化ガス導出経路L1Aが開放される。
次に、制御装置6により、低温液化ガス貯槽5内の圧力が、PID制御(フィードバック制御)される。これにより、圧力調整機構17の加圧機構および減圧機構が運転状態(ON状態)となり、低温液化ガス貯槽5内の圧力が、目標値(設定値;SV値)である第2目標圧力値P(例えば、0.6MPaG)に維持される。
次に、制御装置6により、流量調整弁13、圧力調整弁23が閉状態から適切な開度に制御される。これにより、低温液化ガス貯槽5内の圧力が第2目標圧力値Pに保持された状態で、シュラウド3に気体状態の低温液化ガスが供給される。
【0059】
(第2の状態)
次に、図2に示すように、運転開始から時刻tになった際、第1の状態から第2の状態への移行を開始し、時刻tにおいて移行が完了した後、時刻tまで、第2の状態の運転を行う。
【0060】
先ず、移行状態の運転では、第2目標圧力値Pから第1目標圧力値Pに供給圧力を低下させながら、シュラウド3に液体状態の低温液化ガスを供給して、チェンバー2内を冷却する。
なお、本実施形態の運転方法において、移行状態とは、シュラウド3に液体状態の低温液化ガスの供給を開始し、低温液化ガス貯槽5内の圧力が、第2目標圧力値Pから第1目標圧力値Pまで移行するまでの状態をいうものとする。
【0061】
具体的には、第1の状態から第2の状態への移行は、先ず、制御装置6により、遮断弁8,11が閉状態、遮断弁12,14が開状態に制御される。これにより、循環経路L1において、遮断弁8から遮断弁11までの間の気体状低温液化ガス導出経路L1Aが遮断され、液体状低温液化ガス供給経路L1Bが開放される。また、シュラウド3内、ヘッドタンク4内、低温液化ガス供給経路L1内の圧力は、L4、遮断弁14、加温器15を経由して系外に放出され、大気圧まで減圧される。
次に、制御装置6により、流量調整弁13、液面調整弁21が閉状態から適切な開度に制御される。これにより、低温液化ガス貯槽5からヘッドタンク4を介してシュラウド3に液体状態の低温液化ガスが供給される。
なお、移行状態の運転では、低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pに対して、制御装置6によるPID制御を停止した状態(OFF状態)とする。すなわち、圧力調整機構17の加圧機構および減圧機構は、停止状態(OFF状態)とする。
一方、移行状態の運転の初期では、チェンバー2内を冷却するために、低温液化ガス貯槽5からヘッドタンク4を介して多量の低温液化ガスをシュラウド3に供給する必要がある。低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pは、ヘッドタンク4の液相4B及び低温液化ガス貯槽5の液相5Bを消費するにともない、自然に低下することとなる。
【0062】
このように、本実施形態の運転方法では、移行状態の運転の際、PID制御を停止した状態で、シュラウド3への液体状態の低温液化ガスの供給を開始し、低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pが自然に低下するように運転するため、排気経路L6から気体状態の低温液化ガスを排出して強制的に低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pを制御する場合と比較して、低温液化ガスの消費量を低減することができる。
【0063】
ところで、移行状態の運転では、基本的にPID制御を停止した状態で行うため、低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pは、一定とはならず、試験装置1の運転状態に応じて変動することとなる。
そこで、移行状態の運転中において、低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pに異常上昇、あるいは異常低下が発生した場合について、説明する。
【0064】
先ず、移行状態の運転中、時刻tにおいて、低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pに異常上昇が発生した場合について説明する。
圧力計16によって測定した低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pが、第2目標圧力値Pよりも僅かな値(αMPa)だけ大きな圧力上限値Pを超えた場合、低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pが速やかに降下するように、圧力制御を行う。
具体的には、制御装置6によって、第2目標圧力値Pを目標値(SV値)としたPID制御(フィードバック制御)を行う。すなわち、圧力調整機構17の減圧機構が運転状態(ON状態)となり、圧力調整弁20の開度が制御されることで、低温液化ガス貯槽5の気相5Aの一部が排気経路L6から外部へ排出される。
圧力制御の実施により、時刻tにおいて、低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pが圧力上限値Pを下回った場合、上記PID制御を停止する。
【0065】
次に、移行状態の運転中、時刻tにおいて、低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pに異常低下が発生した場合について説明する。
圧力計16によって測定した低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pが、第1目標圧力値Pよりも僅かな値(βMPa)だけ小さな圧力下限値P超えた場合、低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pが速やかに上昇するように、圧力制御を行う。
具体的には、制御装置6によって、第1目標圧力値Pを目標値(SV値)としたPID制御(フィードバック制御)を行う。すなわち、圧力調整機構17の加圧機構が運転状態(ON状態)となり、圧力調整弁19の開度が制御されることで、低温液化ガス貯槽5の液相5Bの一部が気化器18で気化されて、経路L5から気相5Aへ供給される。
圧力制御の実施により、時刻tにおいて、低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pが圧力下限値Pを上回った場合、上記PID制御を停止する。
【0066】
ところで、移行状態の運転の終期では、チェンバー2内の冷却が進み、徐々にシュラウド3に液が溜まるため、シュラウド3への低温液化ガスの供給量が減少する。これに伴い、低温液化ガス貯槽5から供給される液体状態の低温液化ガスがヘッドタンク4内に溜まって液相4Bが形成される。
そして、時刻tにおいて、液面計7によって測定したヘッドタンク4内の液相4Bの液面高さの値が、予め制御装置6に設定した液面値L以上となったとき、移行状態の運転を完了し、第2の状態の低温定常運転を開始する。
【0067】
第2の状態の運転では、第1目標圧力値Pに供給圧力を保持しながら、シュラウド3に液体状態の低温液化ガスを供給して、チェンバー2内を冷却する。すなわち、低温液化ガス貯槽5内の圧力を、第1目標圧力値Pに維持する。
【0068】
具体的には、第2の状態の運転では、制御装置6により、低温液化ガス貯槽5内の圧力が、PID制御(フィードバック制御)される。これにより、圧力調整機構17の加圧機構および減圧機構が運転状態(ON状態)となり、低温液化ガス貯槽5内の圧力が、第1目標圧力値P(例えば、0.3MPaG)に維持される。
また、制御装置6により、流量調整弁13,21の開度が適切に制御される。これにより、低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pが第1目標圧力値Pに保持された状態で、シュラウド3に液体状態の低温液化ガスが供給される。
【0069】
(第1の状態)
次に、図2に示すように、時刻tになった際、第2の状態から再び第1の状態への移行を開始し、所定の時間まで第1の状態の運転を行う。この場合、先ず、シュラウド3,ヘッドタンク4,循環経路L1に貯留している液体状の低温液化ガスを抜く工程が行われる。
【0070】
具体的には、先ず、制御装置6により、遮断弁8,11,14を閉状態、液面調整弁21を閉状態、流量調整弁13を開状態に制御する。次に、シュラウド3の下方に位置する遮断弁27を開状態に制御することで、シュラウド3、ヘッドタンク4、及び循環経路L1,L1B内に貯留する液体状の低温液化ガスを系外に排出することができる。
【0071】
なお、さらなるエネルギー効率の向上のため、図示略の経路や手段を用いて、シュラウド3、ヘッドタンク4、及び循環経路L1,L1Bに貯留する液体状の低温液化ガスを抜き出して、低温液化ガス貯槽5に回収してもよい。
【0072】
次に、循環経路L1内に貯留する液体状の低温液化ガスを排出した後、第1の状態に移行する。具体的には、第1の状態の運転では、先ず、制御装置6により、遮断弁12、14が閉状態、遮断弁8,11が開状態に制御される。これにより、循環経路L1において、液体状低温液化ガス供給経路L1Bが閉塞され、気体状低温液化ガス導出経路L1Aが開放される。
【0073】
ここで、第2の状態から第1の状態への移行では、制御装置6により、低温液化ガス貯槽5内の圧力は直ちにPID制御される。これにより、圧力調整機構17の加圧機構および減圧機構が運転状態(ON状態)となり、低温液化ガス貯槽5内の圧力が第2目標圧力値Pに直ちに移行されて、維持される。なお、第2の状態から第1の状態への移行では、低温液化ガス貯槽5の気相5Aを外部に排出することがないため、直ちに圧力制御を行うことができる。
【0074】
次に、制御装置6により、流量調整弁13、圧力量調整弁23が閉状態から適切な開度に制御される。これにより、低温液化ガス貯槽5内の圧力が第2目標圧力値Pに保持された状態で、シュラウド3に気体状態の低温液化ガスが供給される。
【0075】
以上説明したように、本実施形態の試験装置1によれば、気体状態又は液体状態に適した圧力に低温液化ガスの供給圧力を制御するため、気体状態あるいは液体状態の低温液化ガスを効率よくシュラウド3に供給することができる。したがって、チェンバー2内を所定の温度環境に制御する際のエネルギー効率を改善することができる。
【0076】
また、本実施形態の試験装置1によれば、低温液化ガス貯槽5が昇圧機構及び減圧機構を有する圧力調整機構17を備えており、制御装置6によって上記圧力調整機構17を制御するため、液体状態の低温液化ガスを供給する際の供給圧力と、気体状態の低温液化ガスを供給する際の供給圧力とを切り替えることができる。これにより、供給圧力に応じて複数の低温液化ガス貯槽を設ける必要がないため、装置全体を小型化することができる。
【0077】
本実施形態の宇宙環境試験装置1の運転方法によれば、チェンバー2内を冷却する際、大気圧よりも高い第1目標圧力値Pに供給圧力を保持しながら、シュラウド3に液体状態の低温液化ガスを供給するとともに、チェンバー2内を温調加熱する際、第1目標圧力値Pよりも高い第2目標圧力値Pに供給圧力を保持しながら、シュラウド3に気体状態の低温液化ガスを供給するため、チェンバー2内を所定の温度環境に制御する際のエネルギー効率を改善することができる。
【0078】
また、本実施形態の運転方法によれば、気体状態の低温液化ガスを供給する運転から、液体状態の低温液化ガスを供給する運転へと移行する際、低温液化ガス貯槽5の圧力制御を停止した状態で、シュラウド3への液体状態の低温液化ガスの供給を開始し、低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pが自然に低下するように運転するため、排気経路L6から気体状態の低温液化ガスを排出して強制的に低温液化ガス貯槽5内の圧力値Pを制御する場合と比較して、低温液化ガスの消費量を低減することができる。
【0079】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。上述した実施形態における試験装置1では、図1に示すように、液体状態の低温液化ガスを供給する場合と、気体状態の低温液化ガスを供給する場合とを、一つの低温液化ガス貯槽5の圧力値を制御装置6によって制御して運用する構成を一例として説明したが、これに限定されない。
【0080】
例えば、図3に示すように、異なる圧力にあらかじめ制御された2以上の低温液化ガス貯槽105,205を備える試験装置201であってもよい。
具体的には、試験装置201では、第1低温液化ガス貯槽105の圧力が、圧力調整機構117によって大気圧よりも高い第1目標圧力値Pに常時保持されており、第2低温液化ガス貯槽205の圧力が、圧力調整機構217によって第1目標圧力値Pよりも高い第2目標圧力値Pに常時保持されている。
【0081】
なお、試験装置201では、第1低温液化ガス貯槽105の圧力調整機構117、及び第2低温液化ガス貯槽205の圧力調整機構217は、制御装置206によって制御されるものではなく、制御装置206の制御から独立して運転されている。すなわち、試験装置201において、制御装置206は、低温液化ガスの供給圧力が第1目標圧力値Pに保持された状態で、シュラウド3に液体状態の低温液化ガスを供給するとともに、低温液化ガスの供給圧力が第2目標圧力値Pに保持された状態で、シュラウド3に気体状態の低温液化ガスを供給するものである。
【0082】
また、試験装置201では、第1低温液化ガス貯槽105とヘッドタンク4との間に、液体状態の低温液化ガスを供給する液供給経路L2が設けられるとともに、第2低温液化ガス貯槽205と循環経路(気体状低温液化ガス導出経路L1A)L1との間に、気体状態の低温液化ガスを供給するガス供給経路L3が設けられている。
【0083】
上述した構成の試験装置201によれば、液体状態の低温液化ガスを供給する場合と、気体状態の低温液化ガスを供給する場合とを、別々の低温液化ガス貯槽を用いて運用することができる。すなわち、シュラウド3に低温液化ガスを供給するに際し、第1目標圧力値Pに保持された低温液化ガス貯槽105と、第2目標圧力値Pに保持された低温液化ガス貯槽205とを適宜切り替えることで、低温液化ガスをロスすることなく、循環経路L1に循環させる低温液化ガスを直ちに変更することができる。
【0084】
また、上述した実施形態の試験装置1では、ヘッドタンク4の気相4Aと連通する気体状低温液化ガス導出経路L1Aと、ヘッドタンク4の液相4Bと連通する液状低温液化ガス導出経路L1Bとが合流して循環経路L1を構成する場合を一例として説明したが、これに限定されるものではない。気体状低温液化ガス導出経路L1Aと、液状低温液化ガス導出経路L1Bとが合流することなく、それぞれ独立した循環経路を形成する構成であってもよい。
【0085】
また、上述した実施形態の試験装置1では、ヘッドタンク4がチェンバー2の外側に設けられた構成を一例として説明したが、これに限定されるものではない。ヘッドタンク4は、鉛直方向においてシュラウド3よりも高い位置に設けられていればよく、チェンバー2の内側に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の宇宙環境試験装置及びその運転方法は、気体又は液体状態の低温液化ガスをチェンバー内のシュラウドに供給して、チェンバー内の温度を制御する宇宙環境試験装置と宇宙環境試験装置の運転方法に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0087】
1,201…宇宙環境試験装置(試験装置)
2…チェンバー
3…シュラウド
4…ヘッドタンク
5…低温液化ガス貯槽
6,206…制御装置
7…液面計
8,11,12,14,27…遮断弁
9…ブロワ
10…温調ユニット
15…加温器
13…流量調整弁
19,20,23,24…圧力調整弁
21…液面調整弁
16,25…圧力計
17,117,217…圧力調整機構
18,22…気化器
26…温度計
105…低温液化ガス貯槽(第1低温液化ガス貯槽)
205…低温液化ガス貯槽(第2低温液化ガス貯槽)
L1…循環経路
L1A…気体状低温液化ガス導出経路
L1B…液状低温液化ガス導出経路
L2…液供給経路
L3…ガス供給経路
L4,L6〜L8…排気経路
L5…経路
C1〜C17…信号線
図1
図2
図3