特許第6600372号(P6600372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6600372
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】精米機
(51)【国際特許分類】
   B02B 7/00 20060101AFI20191021BHJP
   B02B 3/06 20060101ALI20191021BHJP
   B02B 5/02 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   B02B7/00 101A
   B02B3/06 101Z
   B02B3/06 104
   B02B5/02 107
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-23179(P2018-23179)
(22)【出願日】2018年2月13日
(62)【分割の表示】特願2014-187945(P2014-187945)の分割
【原出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2018-103182(P2018-103182A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2018年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】391055025
【氏名又は名称】株式会社タイワ精機
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
(72)【発明者】
【氏名】成川 栄一
(72)【発明者】
【氏名】里 至博
(72)【発明者】
【氏名】堀 武雄
(72)【発明者】
【氏名】藤原 健二
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−248600(JP,A)
【文献】 特開2008−080202(JP,A)
【文献】 特開2006−150286(JP,A)
【文献】 米国特許第04357864(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02B 1/00−7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜型の研削式精米部と、傾斜型の摩擦式精米部と、水平移送式の供給装置を備え、摩擦式精米部の上側に研削式精米部を配設し、研削式精米部の上側に供給装置を配設してあり、
研削式精米部は、主軸が前側に向けて下方に傾斜していて、後側に設けた研削部供給口と、前側に設けた研削部排出口と、研削部排出口に設けた研削部抵抗板を有しており、摩擦式精米部は、主軸が前側に向けて下方に傾斜していて、後側に設けた摩擦部供給口と、前側に設けた摩擦部排出口と、摩擦部排出口に設けた摩擦部抵抗板を有しており、研削部排出口が摩擦部供給口の略真上に位置していて相互に接続してあり、
供給装置は、米を前後の任意の方向に移送可能なものであって、玄米供給口と、前側排出口と、後側排出口を有しており、後側排出口が研削部供給口の略真上に位置していて相互に接続してあり、前側排出口が摩擦部供給口の略真上に位置していて相互に接続してあり、供給装置の前端は摩擦式精米部の前端よりも後側に位置し、供給装置の後端は研削式精米部の後端よりも前側に位置し、
米の経路について、研削式精米部を通してから摩擦式精米部を通すか、研削式精米部を通さずに摩擦式精米部のみを通すかを選択でき、
摩擦部抵抗板の抵抗値を、所定の値より小さく低分搗きに相当する値に設定した場合に、自動的に研削式精米部を通さない経路が選択されるものであり、
または、研削式精米部を通す経路を選択した場合に、摩擦部抵抗板の抵抗値を低分搗きに相当する所定の値より小さい値には設定できなくなるものであることを特徴とする精米機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削式精米部と摩擦式精米部を備える精米機に関する。
【背景技術】
【0002】
玄米から糠を取り除くための精米方法には、金剛砂砥石などにより玄米の表面を削る研削式精米と、圧力をかけて玄米相互で粒々摩擦を作用させる摩擦式精米がある。従来、主に業務用の精米機において、研削式精米部と摩擦式精米部の両方を備え、研削式精米部で玄米の表面を削った後、摩擦式精米部で仕上げるものがあった。このような精米機によれば、研削式精米部を通すことで、摩擦式精米部の圧力を小さくできるので、高水分米や特定米穀(くず米)など、割れやすい米を精米する場合でも、砕粒の発生を抑えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、低分搗きの精米において、研削式精米部を通した後に摩擦式精米部を通すと、摩擦部抵抗板の抵抗がかかっていなくても、ある程度精米が進行してしまい、過搗精となってしまうという問題があった。
【0004】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、研削式精米部と摩擦式精米部を有するものであって、誤った操作を防ぎ、常に設定どおりの精白度の米が得られる精米機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、傾斜型の研削式精米部と、傾斜型の摩擦式精米部と、水平移送式の供給装置を備え、摩擦式精米部の上側に研削式精米部を配設し、研削式精米部の上側に供給装置を配設してあり、研削式精米部は、主軸が前側に向けて下方に傾斜していて、後側に設けた研削部供給口と、前側に設けた研削部排出口と、研削部排出口に設けた研削部抵抗板を有しており、摩擦式精米部は、主軸が前側に向けて下方に傾斜していて、後側に設けた摩擦部供給口と、前側に設けた摩擦部排出口と、摩擦部排出口に設けた摩擦部抵抗板を有しており、研削部排出口が摩擦部供給口の略真上に位置していて相互に接続してあり、供給装置は、米を前後の任意の方向に移送可能なものであって、玄米供給口と、前側排出口と、後側排出口を有しており、後側排出口が研削部供給口の略真上に位置していて相互に接続してあり、前側排出口が摩擦部供給口の略真上に位置していて相互に接続してあり、供給装置の前端は摩擦式精米部の前端よりも後側に位置し、供給装置の後端は研削式精米部の後端よりも前側に位置し、米の経路について、研削式精米部を通してから摩擦式精米部を通すか、研削式精米部を通さずに摩擦式精米部のみを通すかを選択でき、摩擦部抵抗板の抵抗値を、所定の値より小さく低分搗きに相当する値に設定した場合に、自動的に研削式精米部を通さない経路が選択されるものであり、または、研削式精米部を通す経路を選択した場合に、摩擦部抵抗板の抵抗値を低分搗きに相当する所定の値より小さい値には設定できなくなるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、低分搗きの精米においては、研削式精米部を通した後に摩擦式精米部を通すと、摩擦部抵抗板の抵抗がかかっていなくても、ある程度精米が進行してしまい、過搗精となってしまう。そこで、摩擦部抵抗板の抵抗値を、所定の値より小さく低分搗きに相当する値に設定した場合には、自動的に研削式精米部を通さない経路を選択し、逆に、研削式精米部を通す経路を選択した場合には、摩擦部抵抗板の抵抗値を低分搗きに相当する所定の値より小さい値には設定できないようにすることで、誤った操作を防ぎ、常に設定どおりの精白度の米が得られる。なお、低分搗きの精米では、摩擦部抵抗板の抵抗値を小さくして、低圧力で精米するので、研削式精米部を通さなくても、砕粒の発生は抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】精米機の全体図である。
図2】供給装置および研削式精米部の拡大図である。
図3】摩擦式精米部の拡大図である。
図4】精米機の動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の精米機の具体的な構成について、各図面に基づいて説明する。図1に示すように、この精米機は、研削式精米部1と、摩擦式精米部2と、供給装置3を備え、これらを筐体5の内部に納めてあり、筐体5の前側面には、操作制御部6を設けてある。
【0009】
研削式精米部1は、図1および図2に示すように、略円筒形の研削部外筒15の中心軸に沿って主軸11を軸支してあり、主軸11が前側に向けて下方に傾斜するように配設してあって、主軸11の後側端には、研削部モータ20を接続してある。主軸11には、研削部外筒15内に納まるように、送穀ロール17と研削ロール18を外挿して取り付けてあり、研削ロール18の外周側部分が搗精室16となっている。送穀ロール17は、スクリュー状のものであり、研削ロール18は、砥石状のものであって、送穀ロール17の前側(下流側)に位置しており、何れも主軸11と一体となって回転する。また、研削ロール18の外周部には、筒状の除糠金網19を設けてある。そして、研削部外筒15の後部の上側面(送穀ロール17の上側部分)には、開口部を形成してあって、研削部供給口12としてあり、研削部外筒15の前部の下側面(研削ロール18の前端部の下側部分)にも、開口部を形成してあって、研削部排出口13としてある。さらに、研削部排出口13には、研削部抵抗板14を設けてある。研削部抵抗板14には、研削部抵抗装置7を取り付けてあり、研削部排出口13を開閉自在となっているとともに、その抵抗値を自在に設定できる。より詳しくは、研削部抵抗装置7は、研削部抵抗板14から前側に向けて延びる軸71と、軸71に取り付けた分銅72からなり、軸71は、後端部に主軸11と直交する向きの回転軸73を有する。分銅72は、軸71の前後方向に任意の位置に手動で移動可能であり、分銅72の位置が前側になるほど、回転軸73から離れてモーメントアームが長くなるので、研削部抵抗板14の抵抗値(研削部抵抗板14を研削部排出口13に押さえつける力の強さ)が大きくなる。
【0010】
摩擦式精米部2は、図1および図3に示すように、略円筒形の摩擦部外筒25の中心軸に沿って主軸21を軸支してあり、主軸21が前側に向けて下方に傾斜するように配設してあって、主軸21の後側端には、摩擦部モータ30を接続してある。主軸21には、摩擦部外筒25内に納まるように、送穀ロール27と摩擦ロール28を外挿して取り付けてあり、摩擦ロール28の外周側部分が搗精室26となっている。送穀ロール27は、スクリュー状のものであり、摩擦ロール28は、送穀ロール27の前側(下流側)に位置しており、何れも主軸21と一体となって回転する。また、摩擦ロール28の外周部には、筒状の除糠金網29を設けてある。そして、摩擦部外筒25の後部の上側面(送穀ロール27の上側部分)には、開口部を形成してあって、摩擦部供給口22としてあり、摩擦部外筒25の前端面(摩擦ロール28の前端部の前側部分)にも、開口部を形成してあって、摩擦部排出口23としてある。さらに、摩擦部排出口23には、摩擦部抵抗板24を設けてある。摩擦部抵抗板24には、摩擦部抵抗装置8を取り付けてあり、摩擦部排出口23を開閉自在となっているとともに、その抵抗値を自在に設定できる。より詳しくは、摩擦部抵抗装置8は、摩擦部抵抗板24から上側に向けて延びるアーム81と、抵抗部モータ82と、抵抗部モータ82の軸に直結するネジ軸83と、ネジ軸83に螺合したナット体84を備える。アーム81は、上端部をネジ軸83が貫通しており、摩擦部抵抗板24とネジ軸83の中間位置に、主軸21と直交する向きの回転軸85を有する。そして、アーム81とナット体84の間には、ネジ軸83に外挿したスプリング86を設けてある。このように構成した摩擦部抵抗装置8において、抵抗部モータ82によりネジ軸83を回転させると、ナット体84が前後に移動する。ナット体84が前側に移動するほど、スプリング86が押し縮められるので、アーム81を介して取り付けた摩擦部抵抗板24の抵抗値(摩擦部抵抗板24を摩擦部排出口23に押さえつける力の強さ)が大きくなる。なお、摩擦部排出口23は、筐体5の外側に向けて開口しており、精米が終了した米を取り出すことができる。
【0011】
供給装置3は、図1および図2に示すように、略円筒形の供給部外筒35の中心軸に沿って主軸36を軸支してあり、主軸36が前後方向(水平方向)を向くように配設してあって、主軸36の前側端には、供給部モータ37を接続してある。主軸36には、供給部外筒35内に納まるように、スクリュー体38を取り付けてある。そして、供給部外筒35の前後方向中央部の上側面には、開口部を形成してあって、玄米供給口31としてあり、供給部外筒35の前部および後部の下側面にも、開口部を形成してあって、それぞれ前側排出口32および後側排出口33としてある。また、玄米供給口31は、玄米の有無を検出する玄米検出器34を設けてある。この供給装置3によれば、主軸36(スクリュー体38)の回転方向を変えることにより、玄米供給口31から供給された玄米を、前後の任意の方向に移送することができる。また、主軸36の回転速度を変えることにより、米の供給量を調整できる。
【0012】
そして、これらの研削式精米部1、摩擦式精米部2および供給装置3について、摩擦式精米部2の上側に研削式精米部1を配設し、研削式精米部1の上側に供給装置3を配設してあり、研削式精米部1の主軸11と、摩擦式精米部2の主軸21と、供給装置3の主軸36が、垂直面上に位置している。そして、研削式精米部1の研削部排出口13が、摩擦式精米部2の摩擦部供給口22の略真上に位置していて、相互に接続してある。また、供給装置3の後側排出口33が、研削式精米部1の研削部供給口12の略真上に位置していて、相互に接続してあり、供給装置3の前側排出口32が、摩擦式精米部2の摩擦部供給口22の略真上に位置していて、相互に接続してある。
【0013】
なお、摩擦式精米部2の摩擦部供給口22と、供給装置3の前側排出口32の間には、定量供給装置9およびホッパ10を設けてある。定量供給装置9は、図3に示すように、摩擦部供給口22の直上に設けてあって、等間隔で放射状に複数枚形成された繰出し羽根91を有し、繰出し羽根91は中心軸にモータを接続してあって一定方向に回転する。隣り合う二枚の繰出し羽根91の間には空間部が形成され、各空間部の容積は同じであるから、繰出し羽根91の回転数を計測して制御することで、下流側に任意の量の米を供給することができる。さらに、ホッパ10は、定量供給装置9の直上に設けてあって、下方に向けてすぼまる形状となっている。このホッパ10の上部に供給装置3の前側排出口32が接続されているとともに、研削式精米部1の研削部排出口13も、ホッパ10内に向けて開口している。よって、研削式精米部1を通って研削部排出口13から排出される米と、研削式精米部1を通らずに供給装置3の前側排出口32から排出される米は、何れもまずホッパ10にたまり、定量供給装置9によって、順次、摩擦式精米部2に供給される。なお、定量供給装置9を連続的に運転した場合の供給量は、供給装置3の供給量より多くなっているので、連続精米の際にホッパ10に米がたまらない。
【0014】
また、摩擦式精米部2の下側には、吸引装置4を設けてある。吸引装置4は、ファン41と、ファン41を回転させる吸引部モータ42からなり、研削式精米部1の搗精室16と、摩擦式精米部2の搗精室26の両方と連通している。さらに、吸引装置4は、筐体5の外部に連通しており、ファン41の回転によって両搗精室16,26から排出される糠を吸引し、筐体5の外部へ排出する。
【0015】
さらに、操作制御部6には、タッチパネル式の操作盤を設けてあり、精米機の運転および停止や、研削式精米部1を通すか否かの選択、摩擦式精米部2の摩擦部抵抗板24の抵抗値の設定などを行うことができる。
【0016】
このように構成した本発明の精米機は、研削式精米部1と摩擦式精米部2が、何れも傾斜型のものであるからそれぞれの高さが低く、また供給装置3も、水平移送式のものであるから高さが低い。よって、これらを上下に並べて配設した装置全体も高さが低く、コンパクトであり、小規模な店舗などにも設置可能であって、メンテナンス性も良好である。そして、米の経路について、研削式精米部1を通すか否かを選択できるので、米の性状に合わせた精米を行うことができる。なお、研削式精米部1と摩擦式精米部2のそれぞれの主軸11,21の傾斜角度は、水平方向に対する角度が大きいほど、米を排出しやすいが、高さが高くなってしまうので、水平方向に対して40度以下であることが好ましく、20度〜30度が最も好ましい。
【0017】
次に、このように構成した精米機の動作について、図4のフローチャートに基づいて説明する。なお、この精米機によって行われる精米は、「初期精米」と、「連続精米」と、「終了精米」の三段階に分けられる。摩擦式精米部2においては、搗精室26内の米に圧力をかけて、米相互の粒々摩擦により精米が行われるが、先行する米がない精米の初期段階と、後続する米がない精米の終了段階においては、搗精室26内の米の充満率が低下して内部圧力が低くなり、十分な精米が行われない。そこで、精米を三段階に分けて、初期精米と終了精米においては、摩擦部抵抗板24の抵抗値を大きくして、十分な精米を行うものである。
【0018】
まず、使用者は、操作制御部6の操作盤を操作して、希望する精白度を設定する。精白度は、摩擦部抵抗板24の抵抗値により定まり、抵抗値を大きくすれば精白度が高くなり、抵抗値を小さくすれば精白度は低くなるものであって、玄米から糠を完全に除去する無洗米から、ほとんどの糠を残す一分搗き米まで、自在に設定できる。次に、使用者は、操作制御部6の操作盤を操作して、運転経路を設定する。これはすなわち、研削式精米部1を通すか否かの設定であり、ここでは、図2に示すように、研削式精米部1を通す場合を経路A、通さない場合を経路Bとする。使用者は、米の性状に応じて何れかの経路を選択するものであり、たとえば、高水分米、特定米穀(くず米)や、インディカ米などの長粒種の場合、割れやすいので、研削式精米部1を通す(経路Aを選択する)ことが望ましい。
【0019】
なお、精白度の設定と、運転経路の設定は、どちらを先に行ってもよい。ここで、精白度を先に設定した場合において、摩擦部抵抗板24の抵抗値が所定の値より小さく、一分搗きから三分搗きまでの低分搗きに相当する場合、自動的に研削式精米部1を通さない経路Bが選択され、経路Aを選択することはできなくなっている。一方、運転経路を先に設定した場合において、研削式精米部1を通す経路Aを選択した場合、摩擦部抵抗板24の抵抗値を低分搗きに相当する所定の値より小さい値には設定できなくなっている。これは、低分搗きの精米において、研削式精米部1を通した後に摩擦式精米部2を通すと、摩擦部抵抗板24の抵抗がかかっていなくても、ある程度精米が進行してしまい、過搗精となってしまうので、低分搗きに設定した場合には、自動的に研削式精米部1を通さない経路Bを選択し、研削式精米部1を通す経路Aを選択した場合には、低分搗きにできないようにすることで、誤った操作を防ぎ、常に設定どおりの精白度の米が得られるようにしたものである。なお、低分搗きの精米では、摩擦部抵抗板24の抵抗値を小さくして、低圧力で精米するので、研削式精米部1を通さなくても、砕粒の発生は抑えられる。
【0020】
これらの設定を終えたら、使用者は、供給装置3の玄米供給口31から、玄米を供給し、操作制御部6の操作盤を操作して、運転を開始する。すると、まず、摩擦部モータ30および吸引部モータ42が起動し、摩擦ロール28とファン41が回転する。また、摩擦部抵抗装置8の抵抗部モータ82が起動して、摩擦部抵抗板24の抵抗値を初期値に設定する。初期値は、初期精米において、未精白米を排出しないように摩擦式精米部2の摩擦部排出口23を塞ぐため、希望の精白度に基づく設定値よりも大きい値となっている。そして、玄米供給口31に設けた玄米検出器34が玄米を検出すると、経路A(研削式精米部1を通す経路)が選択されている場合、研削部モータ20が起動するとともに、供給部モータ37も起動して、供給装置3のスクリュー体38が玄米を後側へ移送する向きに回転する。この場合、研削部抵抗板14の抵抗値については、予め軸71に取り付けた分銅72の位置を調整しておく。玄米は、供給装置3の後側排出口33から研削式精米部1の研削部供給口12へと供給される。そして、送穀ロール17によって搗精室16に送られ、搗精室16を通過する際に、研削ロール18によって表面が削られる。研削式精米部1では、玄米から糠層の約5%〜30%を取り除き、取り除いた糠は、吸引装置4により吸引されて除糠金網19を通り抜け、筐体5の外部に排出される。一方、経路B(研削式精米部1を通さない経路)が選択されている場合、供給部モータ37が起動して、供給装置3のスクリュー体38が玄米を前側へ移送する向きに回転し、玄米は前側排出口32から排出される。何れの場合も、所定の時間(T1)が経過すると、供給装置3が停止する。摩擦式精米部2の摩擦部供給口22の直上に設けた定量供給装置9はまだ起動していないので、これまでに研削式精米部1の研削部排出口13(経路Aの場合)または供給装置3の前側排出口32(経路Bの場合)から排出された米は、ホッパ10にたまった状態となる。この米によって、摩擦式精米部2で初期精米が行われる。なお、初期精米が行われている間は、摩擦式精米部2への米の供給が停止されるが、この際に供給装置3が運転したままだと、ホッパ10に米がたまることになり、その分の容積を確保するために、装置が大型化してしまう。そこで、供給装置3を停止することで、ホッパ10に米がたまることがなくなるので、装置をコンパクトにすることができる。
【0021】
初期精米に際しては、まず、定量供給装置9が起動して、所定量の米を、摩擦部供給口22へ供給する。ここで、研削式精米部1を通さない場合(経路B)、供給されるのは玄米であるが、研削式精米部1を通す場合(経路A)、供給されるのは研削式精米部1においてある程度精米された米であり、玄米に比べて、容積重が低下している。容積重が低下すると、搗精室26内の圧力が低くなるので、玄米の場合と同じ米の取込量および同じ時間で精米を行うと、白度不足となってしまう。そこで、この精米機では、研削式精米部1を通す場合には、自動的に、初期精米における米の取込量を増やす。米の取込量は、定量供給装置9の繰出し羽根91の回転数を計測し、所定の回転数だけ回転させることで制御しており、取込量を増やすには、回転数を増加させればよい。これにより、研削式精米部1を通すか否かにかかわらず、均一な精白度の精白米が得られる。
【0022】
また、白度不足を補う別の方法として、研削式精米部1を通す場合には、自動的に、精米時間を延長することにしてもよい。なお、取込量を増やす方法と、精米時間を延長する方法の何れによっても、白度不足を防止することができるが、取込量を増やす方法の方が、精米時間に影響がない点が好ましい。しかしながら、必要となる米の増加分が、定量供給装置9の最小取込量(繰出し羽根91の間の空間部の容積)よりも少ない場合には、取込量の増加による調整が困難なので、精米時間を延長すればよい。
【0023】
このようにして取り込んだ米は、送穀ロール27によって搗精室26に送られ、搗精室26を通過する際に、米同士の粒々摩擦によって精米される。取り除いた糠は、吸引装置4により吸引されて除糠金網29を通り抜け、筐体5の外部に排出される。初期精米を開始してから所定の時間(T2)が経過すると、再度、定量供給装置9が起動して、米を追加供給する。これは、精米の進行に伴って糠が取り除かれ、容積重が低下して搗精室26内の圧力が低くなるので、これを補うためのものであり、当初の取込量の10%程度の米を追加するため、繰出し羽根91を所定の回転数だけ回転させて、停止する。その後、さらに所定の時間(T3)が経過すると、摩擦部抵抗装置8の抵抗部モータ82が起動して、摩擦部抵抗板24の抵抗値を、希望の精白度に基づく設定値(使用者が操作盤で設定した値)に設定し、抵抗部モータ82が停止して、初期精米が終了する。
【0024】
続いて、定量供給装置9が起動するとともに、供給装置3も起動して、連続精米が行われる。経路Aが選択されていれば、玄米は供給装置3により後側に移送され、研削式精米部1を通ってから、定量供給装置9により摩擦式精米部2に供給され、摩擦部排出口23から精白米として排出される。一方、経路Bが選択されていれば、玄米は供給装置3により前側に移送され、研削式精米部1を通らずに、定量供給装置9により摩擦式精米部2に供給され、摩擦部排出口23から精白米として排出される。こうして順次精米が行われ、供給装置3の玄米供給口31に設けた玄米検出器34が、玄米がないことを検出すると、供給装置3内の残りの米がすべて排出されるのに十分な時間(T4)が経過した後、供給装置3が停止して、連続精米が終了する。
【0025】
その後、終了精米に移行するが、経路A(研削式精米部1を通す経路)が選択されている場合、吸引装置4の吸引部モータ42が停止する。研削部モータ20はまだ運転中であり、吸引装置4が停止することで、吸引抵抗がなくなって、研削式精米部1から米が速やかに排出される。よって、研削式精米部1の搗精室16からすべての米が排出されるのに要する時間(T5)が短くて済み、その後の摩擦式精米部2における終了精米の時間を適正にとることができ、過搗精米や半搗き米の混入を防ぐことができる。そして、この時間(T5)が経過すると、研削部モータ20が停止し、吸引部モータ42が再起動する。さらに、研削式精米部1からすべての米が排出されることで、ホッパ10内に米がなくなるので、定量供給装置9が停止する。また、経路B(研削式精米部1を通さない経路)が選択されている場合、連続精米の終了後、定量供給装置9が停止する。そしていずれの場合も、摩擦部抵抗装置8の抵抗部モータ82が起動して、摩擦部抵抗板24の抵抗値を終了値に設定する。終了値は、終了精米において、未精白米を排出しないように摩擦式精米部2の摩擦部排出口23を塞ぐため、希望の精白度に基づく設定値よりも大きい値となっている。ここで、経路A(研削式精米部1を通す経路)が選択されている場合、研削式精米部1において米の表面が削られてある程度精米が進んだ状態となっているので、摩擦式精米部2において、研削式精米部1を通さない場合と同様の抵抗値と時間で終了精米を行うと、過搗精となってしまう。さらに、研削式精米部1からの米の排出時間(T5)があるため、摩擦式精米部2における終了精米の開始を遅らせる必要があるが、その分、実質的な終了精米の時間が長くなるため、過搗精となってしまう。そこで、この精米機では、研削式精米部1を通す場合には、自動的に、終了精米における摩擦部抵抗板24の抵抗値を小さくする(希望の精白度に基づく設定値よりは大きい値である)。これにより、研削式精米部1を通すか否かにかかわらず、均一な精白度の精白米が得られる。また、過搗精を防ぐ別の方法として、研削式精米部1を通す場合には、自動的に、精米時間を短縮することにしてもよい。そして、残りの米がすべて精米されるのに十分な時間(T6)が経過することで、終了精米が終了する。
【0026】
その後、摩擦部抵抗装置8の抵抗部モータ82が起動し、摩擦部抵抗板24の抵抗値を「0」にして、抵抗部モータ82が停止する。これにより、摩擦部抵抗板24が開放状態となり、さらに吸引装置4の吸引部モータ42が停止することで、吸引抵抗がなくなって、摩擦式精米部2から米が速やかに排出される。摩擦式精米部2の搗精室26からすべての米が排出されるのに十分な時間(T7)が経過すると、摩擦部モータ30が停止する。そして、吸引部モータ42が再起動し、研削式精米部1や摩擦式精米部2から残った糠を吸引して、所定の時間(T8)が経過したら、吸引部モータ42が停止する。以上でこの精米機の運転が終了する。
【0027】
なお、上記の実施形態において、研削部抵抗装置7は、軸71に取り付けた分銅72を手動で前後に移動させて研削部抵抗板14の抵抗値を設定するものであるが、これに、分銅72の位置を検出する検出器を設けてもよい。また、分銅72の位置をモータの動作で移動させるようにしてもよいし、摩擦部抵抗装置8と同様に、モータとスプリングを用いた構造としてもよい。そしてこれらの場合、研削部抵抗板14の抵抗値の検出も可能となるので、研削式精米部1を通す場合において、研削部抵抗板14の抵抗値に応じて、摩擦式精米部2の初期精米における米の取込量や精米時間を自動的に設定することができる。具体的には、研削式精米部1を通した米は、玄米に比べて、容積重が6%〜16%程度低下しており(研削部抵抗板14の抵抗値が大きいほど、容積重の低下率も大きくなる)、そのままでは摩擦式精米部2の搗精室26内の圧力が低くなって白度不足となるので、研削部抵抗板14の抵抗値が大きいほど、米の取込量を増やすか、精米時間を長くする。たとえば、研削式精米部1から排出される米の仕上がりが三分搗き程度の場合、容積重は約10%低下するため、摩擦式精米部2における米の取込量を、約10%増加させる。また、仕上がりが一分搗き程度の場合、容積重は約6%低下するため、摩擦式精米部2における米の取込量を、約6%増加させる。これにより、初期精米中の搗精室26内の圧力の低下を防ぎ、白度不足を防止する。なお、米の取込量を増加させる替わりに、精米時間を延長してもよい。特に、研削部抵抗板14の抵抗値が小さく、必要となる米の増加分が、定量供給装置9の最小取込量(繰出し羽根91の間の空間部の容積)よりも少ない場合には、取込量の増加による調整が困難なので、精米時間を延長すればよい。
【0028】
また、同様に終了精米においても、研削部抵抗板14の抵抗値に応じて、摩擦式精米部2における摩擦部抵抗板24の抵抗値や精米時間を自動的に設定することができる。具体的には、研削部抵抗板14の抵抗値が大きいほど、摩擦部抵抗板24の抵抗値を小さくするか、または精米時間を短くする。
【0029】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、研削式精米部や摩擦式精米部は、傾斜型で高さが低いものであれば、細部の構造などはどのようなものであってもよい。また、供給装置は、米を水平方向に移送可能なものであれば、どのようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 研削式精米部
2 摩擦式精米部
3 供給装置
4 吸引装置
11 主軸(研削式精米部)
12 研削部供給口
13 研削部排出口
14 研削部抵抗板
21 主軸(摩擦式精米部)
22 摩擦部供給口
23 摩擦部排出口
24 摩擦部抵抗板
31 玄米供給口
32 前側排出口
33 後側排出口
34 玄米検出器


図1
図2
図3
図4