特許第6600448号(P6600448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6600448無線周波数パワー増幅器用のバイアス増強バイアス回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6600448
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】無線周波数パワー増幅器用のバイアス増強バイアス回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/24 20060101AFI20191021BHJP
   H03F 3/343 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   H03F3/24
   H03F3/343 210
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-166384(P2014-166384)
(22)【出願日】2014年8月19日
(65)【公開番号】特開2015-46876(P2015-46876A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2017年8月18日
(31)【優先権主張番号】14/011,315
(32)【優先日】2013年8月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599034594
【氏名又は名称】コーボ ユーエス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、シフェン
(72)【発明者】
【氏名】バーガー、ケリー
(72)【発明者】
【氏名】ノーラ、ジョージ
【審査官】 石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0139120(US,A1)
【文献】 特開2004−312705(JP,A)
【文献】 特開2002−198752(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02375565(EP,A1)
【文献】 米国特許第06486739(US,B1)
【文献】 特開2009−165100(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0085130(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00− 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数(RF)入力信号を増幅するように構成され、RF入力信号を受信するように構成されるゲート端子を含む増幅器トランジスタを有するRFパワー増幅器と、
前記増幅器トランジスタのゲート端子に接続され、前記増幅器トランジスタのゲート端子に直流(DC)バイアス電圧を提供するように構成されるバイアス回路と、を備え、
前記バイアス回路は、
ゲート端子、ドレイン端子およびソース端子を有し、当該ゲート端子が前記増幅器トランジスタのゲート端子に接続されてカレントミラーを形成するバイアストランジスタを含むウィルソン・カレントミラーと、
前記バイアストランジスタのゲート端子およびドレイン端子の間に接続され、前記バイアストランジスタのゲート端子からのRF信号を遮断する第1抵抗と、
前記バイアストランジスタのドレイン端子と前記増幅器トランジスタのゲート端子の間に接続される第2抵抗であって、前記バイアス回路により供給される直流(DC)バイアス電圧のバイアス増強量が前記第2抵抗のインピーダンス値に基づく第2抵抗と、を備え回路。
【請求項2】
前記バイアストランジスタのゲート端子とグランド電位の間に接続され、RF信号用の放電路を提供するコンデンサをさらに備える、請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記バイアストランジスタのドレイン端子に接続される電流源をさらに備える、請求項1に記載の回路。
【請求項4】
前記第2抵抗のインピーダンス値は、前記電流源のインピーダンス値の1/100以下である、請求項3に記載の回路。
【請求項5】
前記RFパワー増幅器は、相補型金属酸化物半導体(CMOS)増幅器である、請求項1に記載の回路。
【請求項6】
前記バイアストランジスタは、RF増幅器により増幅されるRF入力信号のRF電力が増加するにつれてDCバイアス電圧を増加させるように構成される、請求項1に記載の回路。
【請求項7】
無線周波数(RF)入力信号を増幅するように構成され、RF入力信号を受信するように構成されるゲート端子を含む第1増幅器トランジスタを有するRFパワー増幅器であって、前記RFパワー増幅器が相補型金属酸化物半導体(CMOS)増幅器であり、前記RFパワー増幅器が前記第1増幅器トランジスタのドレイン端子に接続されるソース端子を有する第2増幅器トランジスタをさらに含む積層パワー増幅器である、RFパワー増幅器と、
前記第1増幅器トランジスタのゲート端子に接続され、前記第1増幅器トランジスタのゲート端子に直流(DC)バイアス電圧を提供するように構成されるバイアス回路と、を備え、
前記バイアス回路は、
ゲート端子、ドレイン端子およびソース端子を有し、当該ゲート端子が前記第1増幅器トランジスタのゲート端子に接続されてカレントミラーを形成するバイアストランジスタを含むウィルソン・カレントミラーと、
前記バイアストランジスタのゲート端子およびドレイン端子の間に接続され、前記バイアストランジスタのゲート端子からのRF信号を遮断する第1抵抗と、
記バイアストランジスタのドレイン端子と前記第1増幅器トランジスタのゲート端子の間に接続される第2抵抗と、を含み、
前記バイアス回路は、RF増幅器により増幅されるRF入力信号のRF電力が増加するにつれてDCバイアス電圧を増加させるように構成され、DCバイアス電圧の増強量が前記第2抵抗のインピーダンス値に基づくシステム。
【請求項8】
前記バイアス回路は、前記バイアストランジスタのドレイン端子に接続される電流源をさらに含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2抵抗のインピーダンス値は、前記電流源のインピーダンス値の1/100以下である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記RFパワー増幅器に接続され、前記RF入力信号を前記RFパワー増幅器に提供する送信器をさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記バイアストランジスタのゲート端子とグランド電位の間に接続され、RF信号用の放電路を提供するコンデンサをさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
無線周波数(RF)入力信号を増幅するように構成され、RF入力信号を受信するように構成されるゲート端子を含む増幅器トランジスタを有するRFパワー増幅器と、
前記増幅器トランジスタのゲート端子に接続され、前記増幅器トランジスタのゲート端子に直流(DC)バイアス電圧を提供するように構成されるバイアス回路と、を備え、
前記バイアス回路は、
ゲート端子、ドレイン端子およびソース端子を有し、当該ゲート端子が前記増幅器トランジスタのゲート端子に接続されてカレントミラーを形成するバイアストランジスタを含むウィルソン・カレントミラーと、
前記バイアストランジスタのゲート端子およびドレイン端子の間に接続され、前記バイアストランジスタのゲート端子からのRF信号を遮断する第1抵抗と、
前記バイアストランジスタのゲート端子とグランド電位の間に接続され、RF信号用の放電路を提供するコンデンサと、
前記バイアストランジスタのドレイン端子と前記増幅器トランジスタのゲート端子の間に接続される第2抵抗と、を含み、
前記バイアス回路は、RF増幅器により増幅されるRF入力信号のRF電力が増加するにつれてDCバイアス電圧を増加させるように構成され、DCバイアス電圧の増強量が前記第2抵抗のインピーダンス値に基づシステム。
【請求項13】
前記バイアス回路は、前記バイアストランジスタのドレイン端子に接続される電流源をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記第2抵抗のインピーダンス値は、前記電流源のインピーダンス値の1/100以下である、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記RFパワー増幅器は、相補型金属酸化物半導体(CMOS)増幅器である、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施の形態は、広く回路の分野に関し、特に、無線周波数パワー増幅器用のバイアス増強バイアス回路に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの無線通信システムにおいて、送信信号のピーク対平均値比(PAR;peak-to-average ratio)は高い。例えば、直交周波数分割多重(OFDM;orthogonal frequency division multiplexing)変調方式を用いる無線ローカルエリアネットワーク(WLANs;wireless local area networks)において、通信信号のPARは、13.5dB程度に高いかもしれない。PARの高い信号を扱うために、無線周波数(RF;radio frequency)パワー増幅器は、一般的に大きなトランジスタを含む。RFパワー増幅器は、たいていの場合、増幅器のトランジスタをバイアスするためのバイアス回路を含む。しかしながら、バイアス回路は、高い信号パワーレベルにおいて利得圧縮を引き起こす可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0003】
実施の形態は、例示を目的とし、添付の図面の記載に制限されないことを目的として示される。添付の図面において、同様の符号は、同様の構成要素であることを示す。
【0004】
図1】様々な実施の形態に係る無線周波数(RF)パワー増幅器(PA)およびバイアス回路を含むRFパワー増幅モジュールを示す回路図である。
【0005】
図2】様々な実施の形態に係るRFパワー増幅モジュールの別の構成を示す図である。
【0006】
図3】様々な実施の形態に係るRFパワー増幅モジュールのさらに別の構成を示す図である。
【0007】
図4】様々な実施の形態に係る無線通信装置の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施例の様々な面は、他の当業者に本発明の要旨を伝えるために、当業者が一般に用いる用語を用いて記載される。しかしながら、記載されるいくつかの面のみを用いて代替的な実施の形態が実現されうることは、当業者にとって明らかであろう。説明を目的として、特定の装置および構成は、実施の形態の完全な理解を提供するために明らかにされる。しかしながら、代替的な実施の形態が、特定の詳細部分を用いることなく実現されうることは、当業者にとって明らかであろう。他の実施例において、周知な特徴は、実施例を不明瞭としないことを目的として、省略または単純化される。
【0009】
さらに、様々な工程は、複数の分離した工程として記載され、本開示の理解を最も助けるように順に記載される。しかしながら、記載の順序は、これらの工程が順序依存であることを示唆するものとして解釈されるべきではない。特に、これらの工程は、開示の順序で実行される必要はない。
【0010】
「一実施の形態において」の語は、繰り返し用いられる。この語は、一般には、同じ実施の形態を示さない。しかしながら、同じ実施の形態を示すこともある。「備える」、「有する」、「含む」の語は、文脈上別であると示さない限り、同義である。
【0011】
様々な実施の形態の結合に用いうる用語に対し、文脈上の明確性を与えるため、「A/B」および「Aおよび/またはB」の語は、(A)、(B)または(AおよびB)を意味することとする。また、「A、Bおよび/またはC」の語は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)または(A、BおよびC)を意味する。
【0012】
「接続される」の語は、ここでは、派生的に用いられる。「接続される」は、以下に示す一以上の内容を意味しうる。「接続される」は、二以上の要素が物理的または電気的に直接接触することを意味しうる。しかしながら、「接続される」は、二以上の要素が互いに間接的に接触しつつ互いに協働または相互作用することも意味し、また、一以上の他の要素が、上述の意味で互いに接続された要素間において結合または接続されることを意味しうる。
【0013】
様々な実施の形態は、無線周波数(RF)パワー増幅器(PA;power amplifier)およびバイアス回路を含むRFパワー増幅回路を提供しうる。バイアス回路は、直流(DC;direct current)バイアス回路をRFパワー増幅器に提供しうる。バイアス回路は、ゲート端子、ドレイン端子、ソース端子を有するバイアストランジスタを含み、RFパワー増幅器は、増幅器トランジスタを含みうる。様々な実施の形態において、バイアストランジスタは、増幅器トランジスタとともにカレントミラーを形成しうる。バイアス回路は、バイアストランジスタのゲート端子およびドレイン端子の間に接続され、バイアストランジスタのゲート端子からのRF信号を遮断する第1抵抗をさらに含みうる。
【0014】
様々な実施の形態において、バイアス回路は、DCバイアス電圧のためのバイアス増強を提供しうる。つまり、バイアス回路は、RF増幅器により増幅されるRF入力信号のRF電力(例えば、平均電力)が増加するにつれて、DCバイアス電圧を増加させうる。バイアス回路は、バイアストランジスタのドレイン端子と、RFパワー増幅器(例えば、増幅器トランジスタのゲート端子)の間に接続される第2抵抗をさらに含みうる。バイアス回路により実現されるDCバイアス電圧のバイアス増強量は、第2抵抗のインピーダンス値に基づいてもよい。いくつかの実施の形態において、バイアス回路は、バイアストランジスタのゲート端子とグランド電位の間に接続され、RF信号用の放電路(例えば、ゲート端子からグランド電位に向かう)を提供するコンデンサをさらに含みうる。
【0015】
図1は、様々な実施の形態に係るRFパワー増幅回路100を示す。RFパワー増幅回路100は、RFパワー増幅器102と、RFパワー増幅器102に接続されるバイアス回路104とを含んでもよい。RFパワー増幅器102は、RF入力信号(RF入力)を入力端子108で受信し、増幅されたRF出力信号(RF出力)を出力端子112に生成してもよい。RFパワー増幅器102は、例えば、無線通信ネットワークへの送信に用いられるRF入力を増幅するために用いられてもよい。
【0016】
様々な実施の形態において、RFパワー増幅器102は、増幅器トランジスタ116(例えば、Q1)を含んでもよい。いくつかの実施の形態において、RFパワー増幅器102は、相補型金属酸化物半導体(CMOS)増幅器であってもよい。例えば、いくつかの実施の形態において、増幅器トランジスタ116は、n型の電界効果トランジスタ(FET)であってもよい。他の実施の形態において、RFパワー増幅器102は、別のタイプの増幅器であってもよく、および/または、増幅器トランジスタ116は、別のタイプのトランジスタであってもよい。
【0017】
増幅器トランジスタ116は、ゲート端子と、ソース端子と、ドレイン端子とを含んでもよい。増幅器トランジスタ116のゲート端子は、RF入力信号を受信するため、RFパワー増幅器102の入力端子108に(例えば、コンデンサ118を介して)接続されてもよい。増幅器トランジスタ116のドレイン端子は、RF出力信号を提供するため、出力端子112に接続されてもよい。増幅器トランジスタ116のドレイン端子は、DC電源電圧(Vcc)を供給するため、電源線120にさらに接続されてもよい。インダクタ124(例えば、L1)は、電源線120へ向かうRF信号を遮断するため、電源線120と、出力端子112および/または増幅器トランジスタ116のドレイン端子の間に接続されてもよい。いくつかの実施の形態において、増幅器トランジスタ116のソース端子は、グランド電位144に接続されてもよい。
【0018】
いくつかの実施の形態において、RFパワー増幅器102は、増幅器トランジスタ116に加えて、入力端子108と出力端子112の間に接続される別のトランジスタを含んでもよい。例えば、RFパワー増幅器102は、増幅器トランジスタ116と出力端子112の間に増幅器トランジスタ116と直列に接続される他のトランジスタ(不図示)を備える、積層増幅器であってもよい(例えば、他のトランジスタのソース端子は、増幅器トランジスタ116のドレイン端子に接続される)。代替的または追加的に、RFパワー増幅器102は複数の増幅段を有してもよく、増幅器トランジスタ116は複数の増幅段の一つに含まれてもよい。
【0019】
いくつかの実施の形態において、RFパワー増幅回路100は、他の要素(例えば、無線通信装置を構成する要素)とのインピーダンス整合のために、入力端子108および/または出力端子112に接続される入力整合ネットワーク(不図示)をさらに含んでもよい。
【0020】
様々な実施の形態において、バイアス回路104は、増幅器トランジスタ116および/またはRFパワー増幅器102にDCバイアス電圧を供給するために、増幅器トランジスタ116のゲート端子に接続されてもよい。例えば、DCバイアス電圧は、RFパワー増幅器102および/または増幅器トランジスタ116を増幅モードにバイアスしうる。いくつかの実施の形態において、DCバイアス電圧は、RFパワー増幅器102をAB級増幅動作モードにバイアスしてもよい。
【0021】
バイアス回路104は、ゲート端子と、ドレイン端子と、ソース端子とを有するバイアストランジスタ128(例えば、Q2)を含んでもよい。いくつかの実施の形態において、バイアストランジスタ128は、n型FETであってもよい。バイアストランジスタ128は、バイアストランジスタ128と増幅器トランジスタ116の間でカレントミラーを形成するために、増幅器トランジスタ116に接続されてもよい。いくつかの実施の形態において、このカレントミラーは、シンプル・カレントミラーであってもよい。例えば、バイアストランジスタ128のゲート端子は、増幅器トランジスタ116のゲート端子に接続されてもよい。電流源148(例えば、I1)は、カレントミラーに電流を供給するために、バイアストランジスタ128のドレイン端子に接続されてもよい。いくつかの実施の形態において、バイアストランジスタ128は、増幅器トランジスタ116よりも小さくてもよい。例えば、一つの限定されない実施の形態において、増幅器トランジスタ116とバイアストランジスタ128の比率は、約16対1であってもよい。
【0022】
様々な実施の形態において、バイアス回路104は、バイアストランジスタ128のゲート端子およびドレイン端子の間に接続される第1抵抗132(例えば、R1)をさらに含んでもよい。第1抵抗132は、バイアストランジスタ128のゲート端子からのRF信号を遮断しうる。例えば、第1抵抗132は、バイアストランジスタ128のドレイン端子からゲート端子へのRF信号の通過を妨げてもよい。
【0023】
いくつかの実施の形態において、バイアス回路104は、RF信号用の放電路(例えば、バイアストランジスタ128のゲート端子からグランド電位144へ向かう)を提供するために、バイアストランジスタ128のゲート端子とグランド電位144の間に接続されるコンデンサ140(例えば、C1)をさらに含んでもよい。コンデンサ140は、第1抵抗132に実現される分離機能に加えて、バイアストランジスタ128のゲート端子へ向かうRF信号をフィルタおよび/または分離する機能をさらに実現してもよい。
【0024】
バイアストランジスタ128のゲート端子からRF信号を遮断することで、RF入力信号のRF電力レベルがより高い場合において、顕著な利得圧縮を発生させることなく、バイアス回路104によるDCバイアス電圧のバイアス増強を助けてもよい。したがって、バイアス回路104は、1dB利得圧縮点(P1dB)において、従来型のバイアス回路と比べて拡張された出力電力をRFパワー増幅器102に供給しうる。
【0025】
バイアス回路104は、バイアストランジスタ128のゲート端子とRFパワー増幅器102(例えば、RFパワー増幅器102の増幅器トランジスタ116)との間に接続される第2抵抗136(例えば、R2)をさらに含んでもよい。バイアス回路104により実現されるDCバイアス電圧のバイアス増強量は、第2抵抗136のインピーダンス値に基づいてもよい。例えば、バイアス回路104により実現されるDCバイアス電圧のバイアス増強量は、電流源148のインピーダンス値と比較される第2抵抗136の相対値に基づいてもよい。第2抵抗136が電流源148のインピーダンス値と比べて相対的に低いインピーダンス値を有することで、バイアス回路104は、第2抵抗136の相対インピーダンス値がより高い一実施の形態と比べて、より大きなバイアス増強を提供する。したがって、バイアス回路104により実現されるバイアス増強量は、RFパワー増幅器102のニーズおよび/またはRFパワー増幅器102により機能する無線通信のタイプに応じて選択されうる。例えば、直交周波数分割多重(OFDM)を利用する無線通信向けに用いられるRFパワー増幅器102には、いくつかの他の通信タイプ向けに用いられるものと比べて、より高いバイアス増強が用いられてもよい。
【0026】
様々な実施の形態において、電流源148は、電流源148および/またはバイアス回路104に電力を供給するために、電源線152に接続されてもよい。いくつかの実施の形態において、電流源148は、電流を供給するために抵抗(不図示)に接続される電圧源(不図示)を含んでもよい。いくつかの実施の形態において、電源線152は、電源線120に接続されてもよいし、および/または、電源線120と同じ電圧であってもよい。
【0027】
上述したように、バイアストランジスタ128および増幅器トランジスタ116は、RFパワー増幅器102にバイアスをかけるカレントミラーを形成してもよい。いくつかの実施の形態において、カレントミラーは、図1に示すようなシンプル・カレントミラーであってもよい。様々な実施の形態において、第2抵抗136は、第1抵抗132のインピーダンス値および/または電流源148のインピーダンス値よりも著しく小さいインピーダンス値を有してもよい。例えば、第2抵抗のインピーダンス値は、第1抵抗132のインピーダンス値および/または電流源148のインピーダンス値の1/100以下、例えば、1/1000以下であってもよい。一つの限定されない実施の形態において、第1抵抗132のインピーダンス値は約10kΩであってもよく、第2抵抗136のインピーダンス値は約10Ωであってもよく、電流源のインピーダンス値は約2.63kΩであってもよい。上述したように、バイアス回路104により実現されるバイアス増強量は、第2抵抗136のインピーダンス値(例えば、電流源148および/または第1抵抗132のインピーダンス値に対する相対値)に基づいてもよい。したがって、第2抵抗136のインピーダンス値は、DCバイアス電圧にとって望ましいバイアス増強量を実現するように調整されてもよい。
【0028】
インピーダンス値が比較的小さい第2抵抗136を用いることで、増幅器トランジスタ116のゲート端子に(例えば、入力端子108を介して)RF信号が到達したときに、RF信号の大部分がバイアストランジスタ128のドレイン端子にも生じる。RF信号が特定のRFパワーレベルにある場合において、RF信号の振幅が負の半周期となる間、RF信号は0Vを下回りうる。RF信号が正の半周期となる間、バイアストランジスタ128はオンとなり、バイアストランジスタ128のドレイン端子は、第2抵抗136を介して、ある充電時定数で充電されうる。バイアストランジスタ128のドレイン端子は、バイアストランジスタ128のドレイン端子およびソース端子の間に接続される寄生コンデンサCds(不図示)を介しても充電されうる。Cdsの容量値は、コンデンサ140の容量値より極めて小さくてもよい。RF信号の負の半周期の間にRF信号の振幅が0Vを下回るとき、バイアストランジスタ128はオフとなり、バイアストランジスタ128のドレイン端子は、第1抵抗132およびコンデンサ140を介して、ある放電時定数で放電されうる。
【0029】
第1抵抗132のインピーダンス値およびコンデンサ140の容量値は、充電時定数よりも放電時定数が大きくなるように選択されてもよい。例えば、一つの限定されない実施の形態において、第1抵抗132のインピーダンス値は約10kΩであってもよく、コンデンサ140の容量値は約10pFであってもよい。その結果、RF信号のRFパワーレベルが増えるにつれて、バイアストランジスタ128のドレイン端子に電荷が蓄積されうる。この電荷蓄積により、バイアストランジスタ128のドレイン端子においてDC電圧が増加する結果となる。バイアストランジスタ128のドレイン端子におけるDC電圧の増加は、つづいて、増幅器トランジスタ116のゲート端子におけるDCバイアス電圧の増加につながる。これは、増幅器トランジスタ116のゲート端子およびバイアストランジスタ128のドレイン端子が第2抵抗136を介して互いに接続されており、かつ、第2抵抗136を通過するDC電流が存在しないためである。したがって、バイアス回路104は、RF入力信号のRFパワーレベルが増加するにつれてDCバイアス電圧を増加させて、増幅器トランジスタ116のゲート端子におけるDCバイアス電圧を増強する。このバイアス増強は、RFパワー増幅器102の1dB利得圧縮点(P1dB)を拡張し、RFパワー増幅器102が高いRFパワーレベルで動作できるようにする。
【0030】
上述したように、RFパワー増幅器102は、CMOSパワー増幅器であってもよい。バイアス回路104は、特にCMOS増幅器のバイアス用に適していてもよい。これは、図1に示すCMOSトランジスタ116および128のゲート端子の間にDC通路がないためである。したがって、第1抵抗132と第2抵抗136の比率は、増幅器トランジスタ116とバイアストランジスタ128の比率と必ずしも同じでなくてもよい。対照的に、バイポーラジャンクショントランジスタ(BJT;bipolar junction transistor)用では、R1とR2の比率は、Q1とQ2の比率と同じでなければならない。さもないと、回路がカレントミラー回路を形成しないであろう。さらに、回路100は、従来型と比べて、バイアス回路(例えば、バイアストランジスタ128)において、わずかなトランジスタしか必要としないかもしれない。これは、BJT型と比べて、回路100をより経済的にしうる。
【0031】
他の実施の形態において、回路100は、増幅器トランジスタ116および/またはバイアストランジスタ128に代えてBJTトランジスタを用いてもよい。いくつかの実施の形態において、バイアストランジスタ128のベースと第1抵抗132の間に、バイアストランジスタ128のベースへ向かうRF信号を遮断するための値の大きなインダクタが含まれてもよい。その結果、R1とR2の比率を、Q1とQ2の比率と同じにできるかもしれない。
【0032】
図2は、様々な実施の形態に係る、RFパワー増幅回路200の別の実施の形態を示す。RFパワー増幅回路200において、バイアス回路204は、バイアストランジスタ228のドレイン端子と電流源248の間に接続されるダイオード接続トランジスタ256を含む。RFパワー増幅回路200は、増幅器トランジスタ216を有するRFパワー増幅器202を含んでもよい。RFパワー増幅器202は、入力端子208においてRF入力信号を受信し、出力端子212においてRF出力信号を生成してもよい。RFパワー増幅回路200は、バイアストランジスタ228を有するバイアス回路204をさらに含んでもよい。バイアス回路204は、上述した図1に示される第1抵抗132、第2抵抗136およびコンデンサ140のそれぞれと同様に構成される、第1抵抗232、第2抵抗236およびコンデンサ240をさらに含んでもよい。
【0033】
様々な実施の形態において、バイアス回路204は、バイアストランジスタ228のドレイン端子と電流源248の間に接続されるダイオード接続トランジスタ256をさらに含んでもよい。デカップリングコンデンサ258は、ダイオード接続トランジスタ256のドレイン端子(およびゲート端子)とグランド電位244の間に接続されてもよい。ダイオード接続トランジスタ256は、RF入力信号のパワーがある閾値よりも高くなる場合にオフになってもよい。これにより、増幅器トランジスタ216のゲート端子に追加的なバイアス増強を提供してもよい。
【0034】
図3は、様々な実施の形態に係る、RFパワー増幅回路300のさらに別の実施の形態を示す。RFパワー増幅回路300は、バイアストランジスタ328を有するウィルソン・カレントミラーを含むバイアス回路304を有する。RFパワー増幅回路300は、バイアス回路304に接続されるRFパワー増幅器302をさらに含んでもよい。RFパワー増幅器302は、増幅器トランジスタ316を含み、入力端子308においてRF入力信号を受信し、出力端子312においてRF出力信号を生成してもよい。バイアス回路304は、上述した図1に示される第1抵抗132、第2抵抗136およびコンデンサ140のそれぞれと同様に構成される、第1抵抗332、第2抵抗336およびコンデンサ340をさらに含んでもよい。
【0035】
様々な実施の形態において、ウィルソン・カレントミラーは、バイアストランジスタ328に加えて、トランジスタ360、トランジスタ364およびトランジスタ368をさらに含んでもよい。電流源348は、トランジスタ368のドレイン端子と電源線352の間に接続されてもよい。コンデンサ372は、トランジスタ368のドレイン端子とグランド電位344の間に接続されてもよい。バイアス回路304のウィルソン・カレントミラーは、バイアス回路104の電流源148の値と比べて、電流源348の必要値を低減しうる。
【0036】
図4は、いくつかの実施の形態に係る無線通信装置400の例を示すブロック図である。無線通信装置400は、RFパワー増幅回路100、200および/または300と同様でありうる一以上のRFパワー増幅回路408を含むRFパワー増幅モジュール404を有してもよい。RFパワー増幅モジュール404に加えて、無線通信装置400は、少なくとも図示されるように互いに接続される、アンテナ構造414、送受信スイッチ418、送受信機422、メインプロセッサ426およびメモリ430を有してもよい。無線通信装置400は、送信および受信機能を有するように示されているが、他の実施の形態では、送信のみまたは受信のみの機能を有する装置を含んでもよい。
【0037】
様々な実施の形態において、無線通信装置400は、携帯電話、ページングデバイス、パーソナルデジタルアシスタント、テキストメッセンジャー装置、ポータブルコンピュータ、デスクトップコンピュータ、基地局、加入者局、アクセスポイント、レーダ、衛星通信装置、その他、これらに限定されないRF信号を無線により送受信できるいかなる他の装置であってもよい。
【0038】
メインプロセッサ426は、無線通信装置400の全体的な動作を制御するために、メモリ430に記憶される基本的なOS(operating system)プログラムを実行してもよい。例えば、メインプロセッサ426は、送受信機422による信号の受信および送信を制御してもよい。メインプロセッサ426は、メモリ430に常駐する他のプロセスやプログラムを実行する能力を有してもよく、実行するプロセスの要求に応じて、データをメモリ430に移動したり、メモリ430から取り出したりしてもよい。
【0039】
送受信機422は、送信用データ(例えば、音声データ、ウェブデータ、Eメール、通信用データなど)をメインプロセッサ426から取得し、出力用データを意味するRF入力信号を生成し、RF入力信号をRFパワー増幅モジュール404に供給してもよい。送受信機422は、選択された帯域で動作させ、フルパワーモードもしくはバックオフパワーモードのいずれかで動作させるために、RFパワー増幅モジュール404を制御してもよい。いくつかの実施の形態において、送受信機422は、OFDM変調を用いるRF入力信号を生成してもよい。
【0040】
RFパワー増幅モジュール404は、上述したように、RF入力信号を増幅してRF出力信号を供給してもよい。RF出力信号は、送受信スイッチ418に転送され、その後、無線(OTA;over-the-air)伝送のためにアンテナ構造414に転送されてもよい。いくつかの実施の形態において、送受信スイッチ418は、送受信切替器(デュプレクサ)を含んでもよい。
【0041】
同様に、送受信機422は、アンテナ構造414からの入力無線信号を送受信スイッチ418を介して受信してもよい。送受信機422は、入力信号を処理し、さらなる処理のために入力信号をメインプロセッサ426に送信してもよい。
【0042】
様々な実施の形態において、アンテナ構造414は、ダイポールアンテナ、モノポールアンテナ、パッチアンテナ、ループアンテナ、マイクロストライプアンテナ、その他、RF信号のOTA送信および/または受信に適した、いかなる種類のアンテナを含む、一以上の方向性および/または無指向性のアンテナを有してもよい。
【0043】
当業者であれば、無線通信装置400が例示として示されており、簡潔性および明確性のため、無線通信装置400の大半の構成および動作が、実施の形態の理解のために必要とされる程度に示され、記載されていることが認識されるであろう。様々な実施の形態は、無線通信装置400に関連し、具体的なニーズに従う適切な目的を実行する、いかなる適切な要素または要素の結合を考慮する。さらに言えば、無線通信装置400は、具体的に実施されうる種類の装置に限定されるように解釈すべきではないことが理解されよう。
【0044】
特定の実施の形態は、好ましい実施の形態を示す目的で例示され、ここに記載されたが、本開示の範囲を逸脱しない限りにおいて、同様の目的を実現すると考えられるさまざまな代替的および/または等価な実施の形態により、上述した特定の実施の形態が置換されてもよいことは、当業者によって理解されるであろう。当業者であれば、本開示によって示された内容が、様々な実施の形態として実施されてもよいことは、すぐに理解されるであろう。本記載は、制限的ではなく例示的であるとみなされることを意図する。
図1
図2
図3
図4