特許第6600510号(P6600510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6600510
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】塗布方法および塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/26 20060101AFI20191021BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20191021BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20191021BHJP
   B05C 9/14 20060101ALI20191021BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20191021BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20191021BHJP
   G03F 7/16 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   B05D1/26 Z
   B05D3/00 D
   B05C5/00 101
   B05C9/14
   B41J2/01 401
   H01L21/30 564Z
   G03F7/16 501
【請求項の数】10
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2015-170553(P2015-170553)
(22)【出願日】2015年8月31日
(65)【公開番号】特開2017-47344(P2017-47344A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祐司
(72)【発明者】
【氏名】川上 司
(72)【発明者】
【氏名】重山 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】手島 千尋
(72)【発明者】
【氏名】上屋 浩市郎
(72)【発明者】
【氏名】大河原 聡史
(72)【発明者】
【氏名】石原 治彦
(72)【発明者】
【氏名】木下 静雄
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−110209(JP,A)
【文献】 特開2007−001035(JP,A)
【文献】 特開2008−194576(JP,A)
【文献】 特開2008−302637(JP,A)
【文献】 特開2012−064640(JP,A)
【文献】 特開2003−019790(JP,A)
【文献】 特開2007−021957(JP,A)
【文献】 特開2000−094668(JP,A)
【文献】 石原 治彦,新たなモノづくりを可能にする高粘度インクジェットヘッド,東芝レビュー,日本,2012年,Vol.67, No.11,pp.64-65
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B05C 5/00 − 5/04
B05D 1/00 − 7/26
B41J 2/01
2/165− 2/20
2/21 − 2/215
11/00 −11/70
DB等 JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布面を有する塗布対象物をステージ上に載置する工程と、
複数のノズルと、前記複数のノズルから25℃における粘度が50mPa・s以上の塗布液を吐出させる圧電素子とを備える塗布ヘッドを、前記塗布対象物の前記塗布面上に配置する工程と、
前記複数のノズルから吐出される前記塗布液の量が前記圧電素子に印加する電圧に対応した量となるように、前記複数のノズルから吐出される塗布液の粘度を50mPa・s以上に維持しつつ、前記塗布液の温度を調整する工程と、
前記圧電素子に電圧を印加し、前記温度が調整された前記塗布液を前記複数のノズルから吐出させる工程と、
前記複数のノズルから吐出された前記塗布液を前記塗布面に塗布するように、前記ステージおよび前記塗布ヘッドを相対的に移動させる工程と
を具備し、
前記圧電素子への印加電圧および前記塗布液の温度を、前記圧電素子への印加電圧と前記ノズルから吐出される前記塗布液の量との関係が、前記圧電素子への印加電圧をx軸とし、前記ノズルから吐出される前記塗布液の量をy軸としたグラフにおいて、
式(1):x=A
式(2):x=B
式(3):y=F1(t,ρ)x+F2(ρ)
式(4):y=F1(t,ρ)x+F3(ρ)
(式中、Aは前記ノズルからの前記塗布液の吐出量が零を超える最小の印加電圧値、Bは前記塗布液の吐出量の推移に変曲点が出現する印加電圧値、F1(t,ρ)は前記塗布液の温度と粘度の関数から前記塗布液の温度を一定とした場合に定まる定数、F2(ρ)およびF3(ρ)は前記塗布液の粘度の関数から定まる定数であって、F3(ρ)=(1.13/0.87)F2(ρ)の関係を満たす定数である。)
で規定される4つの直線で囲われる領域内となるように調整する塗布方法。
【請求項2】
前記塗布液の25℃における粘度が50mPa・s以上1000mPa・s以下であり、かつ前記複数のノズルから吐出される前記塗布液の粘度が50mPa・s以上300mPa・s以下となるように、前記塗布液の温度を調整する、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
前記複数のノズルから吐出される前記塗布液の温度を28℃以上60℃以下の範囲に調整する、請求項1または請求項2に記載の塗布方法。
【請求項4】
前記塗布ヘッドは、前記複数のノズルに個々に対応させて設けられた複数の前記圧電素子を備える、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項5】
塗布面を有する塗布対象物が載置されるステージと、
前記塗布対象物の前記塗布面上に配置される複数のノズルと、前記複数のノズルから25℃における粘度が50mPa・s以上の塗布液を吐出させる圧電素子とを備える塗布ヘッドと、
前記圧電素子に電圧を印加して駆動させる駆動部と、
前記塗布ヘッドの温度を調整する温度調整機構と、
前記複数のノズルから吐出された前記塗布液を前記塗布面に塗布するように、前記ステージおよび前記塗布ヘッドを相対的に移動させる移動機構と、
前記駆動部および前記温度調整機構の動作を制御する制御部とを具備し、
前記制御部は、前記複数のノズルから吐出される前記塗布液の粘度を50mPa・s以上に維持しつつ、前記塗布ヘッドの温度を設定温度に調整するように、前記温度調整機構の動作を制御し、前記複数のノズルから吐出される前記塗布液の量は、前記温度調整機構の動作により前記圧電素子への印加電圧に対応した量に制御され、
前記制御部は、前記圧電素子への印加電圧と前記ノズルから吐出される前記塗布液の量との関係が、前記圧電素子への印加電圧をx軸とし、前記塗布液の吐出量をy軸としたグラフにおいて、
式(1):y=A
式(2):y=B
式(3):y=F1(t,ρ)x+F2(ρ)
式(4):y=F1(t,ρ)x+F3(ρ)
(式中、Aは前記ノズルからの前記塗布液の吐出量が零を超える最小の印加電圧値、Bは前記塗布液の吐出量の推移に変曲点が出現する印加電圧値、F1(t,ρ)は前記塗布液の温度と粘度の関数から前記塗布液の温度を一定とした場合に定まる定数、F2(ρ)およびF3(ρ)は前記塗布液の粘度の関数から定まる定数であって、F3(ρ)=(1.13/0.87)F2(ρ)の関係を満たす定数である。)
で規定される4つの直線で囲われる領域内となるように、前記駆動部および前記温度調整機構の動作を制御する、塗布装置。
【請求項6】
前記塗布液の25℃における粘度が50mPa・s以上1000mPa・s以下であり、
前記温度調整機構は、前記複数のノズルから吐出される前記塗布液の粘度が50mPa・s以上300mPa・s以下となるように、前記塗布ヘッドの温度を調整する、請求項5に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記温度調整機構は、前記塗布ヘッドの温度を28℃以上60℃以下の温度に調整する、請求項5または請求項6に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記塗布ヘッドは前記複数のノズルに個々に対応させて設けられた複数の前記圧電素子を備え、前記駆動部は前記複数の圧電素子毎に印加電圧を制御する駆動回路を備える、請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記圧電素子の印加電圧に基づく前記塗布ヘッドの温度変化を抑制するように、前記温度調整機構の動作を制御する、請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記複数の圧電素子に対する個々の印加電圧、および前記複数の圧電素
子の駆動タイミングに基づく前記塗布ヘッドの温度変化を抑制するように、前記温度調整
機構の動作を制御する、請求項8に記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、塗布方法および塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程や液晶パネルの製造工程等においては、半導体ウエーハやガラス基板等の塗布対象物に塗布膜を形成する技術が用いられている。例えば、半導体ウエーハの表面には、塗布液としてレジスト材料を塗布して保護膜が形成される。レジスト材料の塗布には、一般的にスピンコート法が用いられており、その厚さは10μm未満である。近年の半導体回路の高機能化や高電圧化に伴って、保護膜に高い耐電圧が求められており、厚さ10μm以上の保護膜、具体的には50μm程度の厚膜の保護膜が要求されている。スピンコート法で1回に塗布できる膜厚は数μm程度であるため、10μm以上の膜厚を得るためには塗布と焼成(200℃〜300℃程度の加熱処理)とを複数回繰り返し行わなければならない。さらに、50μm程度の厚膜を形成するためには、塗布と焼成を20〜30回程度繰り返し行わなければならない。
【0003】
レジスト材料の塗布と焼成とを繰り返し行った場合、積層される保護膜の焼成の度にその下の保護膜は焼成されることになり、下層側の保護膜が上層側の保護膜より焼成回数が多くなるため、下層側では焼成回数が多い分だけ硬くなるという難点がある。半導体ウエーハ上に形成された保護膜に対しては、ウエーハダイシング時におけるダイシングブレードへの保護膜の付着を防ぐ目的で、ダイシングする位置に溝パターンを形成するエッチング工程が実施される。この際、レジスト材料の塗布と焼成とを繰り返し行って形成した保護膜では、下層側の硬くなった保護膜がエッチングされ難くなる。このため、下層側の保護膜ほどエッチングされる領域が狭くなり、溝の底部側では必要な幅を得ることができないという問題が生じる。
【0004】
ところで、スピンコート法は、供給された塗布液の大半が飛散してしまうため、塗布液の使用効率が悪い。また、遠心力で塗布液が中央側から外周側へ広がるので、外周領域の膜厚が中央領域よりも厚くなりやすく、膜厚の制御性が悪い。特に、基板が矩形状の場合には、回転中心から外周縁までの距離が一定でないため、さらに膜厚の制御性が悪くなる。そこで、レジスト材料等の塗布に、塗布液の使用効率が高く、膜厚制御性に優れたインクジェット方式が用いられるようになってきている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
現在のインクジェット方式の塗布ヘッドでは、吐出可能な塗布液の粘度範囲が数mPa・s〜20mPa・s程度であるため、1回の塗布で形成可能な保護膜の厚さは数μm程度である。10μm以上の膜厚を得ようとすると、スピンコート法と同様に塗布と焼成とを繰り返す必要があり、上述と同様の問題が生じる。このような点に対し、ウエーハ上に塗布液を厚く塗ることができれば、1回あるいは少ない回数の焼成で厚膜な保護膜を形成することが可能になる。しかし、従来の低粘度の塗布液では、塗布液を厚く塗ろうとしても、塗布液がウエーハ上で濡れ広がってしまい、厚く塗ることができない。
【0006】
塗布液の濡れ広がりを抑えるためには、塗布液の粘度を高くすることが有効である。しかし、スピンコート法では粘度が高くなるほどウエーハ全面に均一に塗布液を塗布することが困難になる。インクジェット方式の塗布ヘッドを用いた保護膜等の形成工程においては、塗布液の粘度を高くすることで塗布液の濡れ広がりを抑えることかできる。本願発明者等の検討結果によれば、50mPa・s以上の粘度を有する塗布液であれば、インクジェット方式の塗布ヘッドを用いた塗布時に塗布液の流動を抑制し、1回の塗布で10μm以上の厚膜を形成することができることが分かった。しかしながら、従来のインクジェット方式の塗布ヘッドで50mPa・s以上の高粘度の塗布液を吐出させようとしても、圧電素子の出力が足りず、ノズルから塗布液を吐出させることができない。
【0007】
上述したような50mPa・s以上の粘度を有する塗布液をインクジェット方式の塗布ヘッドから吐出させるためには、圧電素子の大型化や高出力化が有効であると考えられる(非特許文献1参照)。そこで、本願発明者等は大型化および高出力化した圧電素子を備える塗布ヘッドを用いて、粘度が50mPa・s以上の塗布液を半導体ウエーハ上に塗布することを試みた。その結果、10μm以上の厚さで塗布液をウエーハ上に留めることができることが確認されたものの、塗布ヘッドによる塗布液の塗布方向に沿ったスジ状や帯状のムラが発生したり、また塗布液の塗布方向に対する厚さ変動が大きくなるという新たな問題が生じることが判明した。
【0008】
ここで、インクジェット方式の塗布方法においては、高粘度の塗布液のノズルからの吐出性を高めるために、ノズルから吐出する前の塗布液を加熱して低粘度化する技術が知られている。例えば、特許文献2には室温での粘度が20〜30mPa・sの塗布液の温度をヒータにより25〜50℃に加熱することによって、塗布液の粘度を5〜15mPa・sまで低下させることが記載されている。従来の塗布液の温度調整技術は、塗布液の粘度を低粘度化しているだけであり、これでは塗布液のウエーハ上での流動を抑制し、1回の塗布で形成することが可能な膜厚を増大させるという効果は得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−126760号公報
【特許文献2】特開2003−103207号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】東芝レビュー Vol.67 No.11 (2012) P.64−65
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、例えば膜厚が10μm以上というような厚膜を形成するために高粘度の塗布液を塗布することを可能にした上で、高粘度の塗布液を用いたことにより塗布膜に発生するスジ状や帯状のムラ、さらに膜厚変動の増大を抑制することを可能にした塗布方法および塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態の塗布方法は、塗布面を有する塗布対象物をステージ上に載置する工程と、複数のノズルと、複数のノズルから25℃における粘度が50mPa・s以上の塗布液を吐出させる圧電素子とを備える塗布ヘッドを、塗布対象物の塗布面上に配置する工程と、複数のノズルから吐出される塗布液の量が圧電素子に印加する電圧に対応した量となるように、複数のノズルから吐出される塗布液の粘度を50mPa・s以上に維持しつつ、塗布液の温度を調整する工程と、圧電素子に電圧を印加し、温度が調整された塗布液を複数のノズルから吐出させる工程と、複数のノズルから吐出された塗布液を塗布面に塗布するように、ステージおよび塗布ヘッドを相対的に移動させる工程とを具備し、 前記圧電素子への印加電圧および前記塗布液の温度を、前記圧電素子への印加電圧と前記ノズルから吐出される前記塗布液の量との関係が、前記圧電素子への印加電圧をx軸とし、前記ノズルから吐出される前記塗布液の量をy軸としたグラフにおいて、
式(1):x=A
式(2):x=B
式(3):y=F1(t,ρ)x+F2(ρ)
式(4):y=F1(t,ρ)x+F3(ρ)
(式中、Aは前記ノズルからの前記塗布液の吐出量が零を超える最小の印加電圧値、Bは前記塗布液の吐出量の推移に変曲点が出現する印加電圧値、F1(t,ρ)は前記塗布液の温度と粘度の関数から前記塗布液の温度を一定とした場合に定まる定数、F2(ρ)およびF3(ρ)は前記塗布液の粘度の関数から定まる定数であって、F3(ρ)=(1.13/0.87)F2(ρ)の関係を満たす定数である。)
で規定される4つの直線で囲われる領域内となるように調整する。
【0013】
実施形態の塗布装置は、塗布面を有する塗布対象物が載置されるステージと、塗布対象
物の塗布面上に配置される複数のノズルと、複数のノズルから25℃における粘度が50
mPa・s以上の塗布液を吐出させる圧電素子とを備える塗布ヘッドと、圧電素子に電圧
を印加して駆動させる駆動部と、塗布ヘッドの温度を調整する温度調整機構と、複数のノ
ズルから吐出された塗布液を塗布面に塗布するように、ステージおよび塗布ヘッドを相対
的に移動させる移動機構と、駆動部および温度調整機構の動作を制御する制御部とを具備
する。実施形態の塗布装置において、制御部は複数のノズルから吐出される塗布液の粘度
を50mPa・s以上に維持しつつ、塗布ヘッドの温度を設定温度に調整するように、温
度調整機構の動作を制御する。複数のノズルから吐出される塗布液の量は、温度調整機構
の動作により圧電素子への印加電圧に対応した量に制御され、前記制御部は、前記圧電素子への印加電圧と前記ノズルから吐出される前記塗布液の量との関係が、前記圧電素子への印加電圧をx軸とし、前記塗布液の吐出量をy軸としたグラフにおいて、
式(1):y=A
式(2):y=B
式(3):y=F1(t,ρ)x+F2(ρ)
式(4):y=F1(t,ρ)x+F3(ρ)
(式中、Aは前記ノズルからの前記塗布液の吐出量が零を超える最小の印加電圧値、Bは前記塗布液の吐出量の推移に変曲点が出現する印加電圧値、F1(t,ρ)は前記塗布液の温度と粘度の関数から前記塗布液の温度を一定とした場合に定まる定数、F2(ρ)およびF3(ρ)は前記塗布液の粘度の関数から定まる定数であって、F3(ρ)=(1.13/0.87)F2(ρ)の関係を満たす定数である。)
で規定される4つの直線で囲われる領域内となるように、前記駆動部および前記温度調整機構の動作を制御する、塗布装置。


【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の塗布装置の構成を示す正面図である。
図2図1に示す塗布装置の側面図である。
図3図1に示す塗布装置で用いた塗布ヘッドの構成を一部断面で示す図である。
図4図3に示す塗布ヘッドのノズルプレートを示す平面図である。
図5図3に示す塗布ヘッドの一部を拡大して示す断面図である。
図6】半導体ウエーハに塗布液を塗布する際のステージの移動状態を説明するための図である。
図7】塗布液の温度と粘度との関係の一例を示す図である。
図8】実施形態の塗布装置における圧電素子への印加電圧とノズルからの塗布液の吐出量との関係を示す図である。
図9】実施例1における圧電素子への印加電圧とノズルからの塗布液の吐出量との関係を示す図である。
図10】実施例1で形成した保護膜をエッチング後に断面観察した結果を示す図である。
図11】実施例2における圧電素子への印加電圧とノズルからの塗布液の吐出量との関係を示す図である。
図12】実施例3における圧電素子への印加電圧とノズルからの塗布液の吐出量との関係を示す図である。
図13】実施例4における圧電素子への印加電圧とノズルからの塗布液の吐出量との関係を示す図である。
図14】実施例1〜4における圧電素子への印加電圧とノズルからの塗布液の吐出量との関係を合成した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態の塗布方法および塗布装置について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、その説明を一部省略する場合がある。図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各部の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。説明中の上下等の方向を示す用語は、特に明記が無い場合には後述する塗布対象物の塗布面を上とした場合の相対的な方向を示し、重力加速度方向を基準とした現実の方向とは異なる場合がある。
【0016】
図1および図2は実施形態の塗布装置の構成を示す図である。図1および図2に示す塗布装置1は、塗布対象物である半導体ウエーハ2が載置されるステージ3と、半導体ウエーハ2の塗布面に塗布液を吐出して塗布する塗布ヘッド4と、塗布ヘッド4に塗布液を供給する送液機構5と、塗布ヘッド4の温度を調整する温度調整機構6と、半導体ウエーハ2および塗布ヘッド4を相対的に移動させる移動機構7とを具備している。塗布装置1における塗布対象物は、半導体ウエーハ2に限られるものではなく、半導体装置や液晶パネルの製造工程で用いられるガラス基板のような基板であってもよい。さらに、塗布対象物はフィルム等の柔軟な部材であってもよい。
【0017】
塗布ヘッド4はインクジェット方式の塗布ヘッドである。塗布ヘッド4は図3ないし図5に示すように、複数のノズル8を有するノズルプレート9と、複数のノズル8と給液流路10を介して連通された共通流路11を有するヘッド本体12と、ノズル8の容積を変化させるダイヤフラム13と、ダイヤフラム13を変形させてノズル8内の塗布液を吐出させる複数の圧電素子14と、複数の圧電素子14に電圧を印加して駆動させる駆動部15とを備えている。複数のノズル8は、それぞれ加圧室8aとそれに連通された吐出口8bとを有している。圧電素子14は複数のノズル8に対して個々に設置されている。圧電素子14は、加圧室8aと対向するようにダイヤフラム13に固着されている。
【0018】
ノズルプレート9には、半導体ウエーハ2の塗布膜の形成面積等に応じて、複数個のノズル8が所定のピッチで列状に設けられている。ノズル8の数は特に限定されるものではなく、30〜120個程度(例えば100個)のノズル8がノズルプレート9に列状に設けられる。ノズルプレート9は1列のノズル列に限らず、複数列のノズル列を有していてもよい。複数のノズル8の加圧室8aには、それぞれ給液流路10を介して共通流路11から塗布液が供給される。加圧室8a内に供給された塗布液は、圧電素子14を駆動させることによって、半導体ウエーハ2に向けて吐出口8bから吐出される。圧電素子14に電圧を印加すると圧電素子14が伸縮し、これによりダイヤフラム13が変形する。ダイヤフラム13の変形に応じて加圧室8a内の容積が増減することによって、加圧室8a内の塗布液が吐出口8bから半導体ウエーハ2に向けて吐出される。
【0019】
複数の圧電素子14は、複数のノズル8に応じて個々に駆動部15により駆動制御されることが可能とされている。駆動部15は、複数の圧電素子14毎に印加電圧を制御する制御回路を備えている。駆動部15の動作は、制御部16により制御される。後に詳述する25℃における粘度が50mPa・s以上の塗布液(以下、高粘度の塗布液とも言う。)をノズル8から吐出させるにあたって、大型で高出力な圧電素子(ピエゾ素子)14を適用することが好ましい。圧電素子14を高出力化するにあたって、積層型の圧電素子14を適用することが好ましい。積層型の圧電素子14は、同じ変位量が得られる単層型の圧電素子に比べて駆動電圧を低くすることができる。
【0020】
ノズルプレート9やヘッド本体12は、例えばステンレス合金で形成されている。ノズルプレート9とヘッド本体12は、それらの間にダイヤフラム13と図示を省略したフィルタプレートやリストリクタプレート等を介在させた状態で積層される。これらの積層物をノズル8の開口部側から複数のネジを用いて固定することによって、実施形態の塗布ヘッド4が構成されている。塗布ヘッド4は、架台17上に設けられた支持フレーム18に支持されている。架台17上には移動機構7が設置されており、移動機構7上に半導体ウエーハ2のステージ3が配置されている。
【0021】
ステージ3は、水平方向における一方向のx軸方向と水平方向においてx軸方向と直交するy軸方向とに、それぞれ移動機構7により移動可能とされている。移動機構7としては、例えばサーボモータを駆動源とする送りねじ式の移動装置やリニアモータを駆動源とするリニアモータ式の移動装置等が用いられる。ステージ3には、半導体ウエーハ2を加熱するヒータが内蔵されている。塗布ヘッド4は、支持フレーム18に支持された状態で、ノズル8の配列方向(ノズル列の方向)がx軸方向と平行となるように、ステージ3の移動可能な範囲内でステージ3の上方に位置している。なお、移動機構7はステージ3を移動させる機構に限らず、塗布ヘッド4を移動させる機構、もしくは塗布ヘッド4およびステージ3の両方を移動させる機構であってもよい。
【0022】
塗布ヘッド4から半導体ウエーハ2上に塗布液を塗布するにあたって、ステージ3は図6に示すように半導体ウエーハ2をy軸方向(矢印Y1方向)に移動させる。この際のステージ3の移動方向を塗布移動方向とも言う。塗布ヘッド4のノズル列(列状に配置された複数のノズル8)は、半導体ウエーハ2の半径相当の長さを有する。塗布液の塗布工程においては、まず図6(a)に示すように塗布ヘッド4から塗布液を吐出させつつ、半導体ウエーハ2をy軸方向(矢印Y1方向)に移動させることによって、半導体ウエーハ2の半分の表面(図6では半導体ウエーハ2の上半分の表面)に塗布液を塗布する。次いで、図6(b)に示すように、半導体ウエーハ2をx軸方向(矢印X方向)に移動させた後、半導体ウエーハ2をy軸方向(矢印Y2方向)に移動させて、半導体ウエーハ2の残りの半分の表面(図6では半導体ウエーハ2の下半分の表面)に塗布液を塗布する。
【0023】
塗布ヘッド4は、水平面内で回転可能なように、図示を省略した回転駆動機構を介して支持フレーム18に支持されている。塗布ヘッド4は、塗布液を塗布する際にステージ3が移動する方向(塗布移動方向/y軸方向)に対するノズル列の角度を調整可能とされている。このように構成することで、塗布移動方向とは直交する方向(x軸方向)におけるノズル8のピッチを可変にすることができ、x軸方向における塗布液の液滴の配置間隔をノズル8の形成ピッチ以下の間隔に調整することができる。ノズル8の形成ピッチ以上の間隔に調整したい場合には、ノズル8を1つ置きや2つ置きに使用すればよい。
【0024】
塗布移動方向(y軸方向)の塗布液の液滴の配置間隔は、ステージ3の移動速度を調整することで変えることができる。このため、上述したx軸方向における液滴の配置間隔の調整と合わせることによって、半導体ウエーハ2上に塗布する塗布液のx軸方向およびy軸方向の配置間隔を自由に調整することができる。従って、半導体ウエーハ2に塗布する塗布液の粘度や1滴の塗布液量等の条件に合わせて、半導体ウエーハ2上に例えば膜厚が50μmの塗布膜を形成するに必要な量(総量)の塗布液を、1回または複数回の塗布で供給できる塗布液の配置間隔に設定することが可能となる。
【0025】
塗布ヘッド4のヘッド本体12内に設けられた共通流路11には、送液機構5から塗布液が供給される。送液装置5は、塗布ヘッド4に供給する塗布液を貯留する供給タンク19と、供給タンク19に補給する塗布液を貯留する加圧タンク20とを有する。塗布ヘッド4の塗布液流入口21には、供給タンク19から供給管22が接続されている。塗布ヘッド4の塗布液流出口23に接続された排出管24は、加圧タンク20に連通している。加圧タンク20と供給タンク19とは、給液管25を介して接続されている。
【0026】
供給タンク19は、その内部に貯留された塗布液の液面と塗布ヘッド4のノズル8の開口端、つまり塗布ヘッド4の下端との間に所望の水頭差が得られる高さに配置される。供給タンク19内の液面の高さは、上記水頭差が維持されるように制御される。具体的には、供給タンク19にはその内部の液面の位置を検出するセンサ(図示せず)が設けられている。塗布ヘッド4のノズル8から塗布液が吐出されることで、供給タンク19内の塗布液の液面が低下したことを液面センサで検知すると、減少した分の塗布液が加圧タンク20から補給されるように構成されている。
【0027】
加圧タンク20と供給タンク19には、それぞれ加圧ライン(加圧気体供給管26)と大気開放ライン(大気開放管27)が接続されている。加圧気体供給管26は、図示しない気体供給源に接続されており、加圧タンク20および供給タンク19内に加圧された窒素ガス等の加圧気体を個別に供給する。例えば、加圧タンク20内に加圧気体を供給した状態で、給液管25の開閉弁(図示せず)を開状態にすることによって、加圧タンク20から供給タンク19へ塗布液を供給することができる。また、給液管25の開閉弁を閉じ、供給管22の開閉弁(図示せず)および排出管24の開閉弁(図示せず)を開いた状態で、供給タンク19へ加圧気体を供給することによって、供給タンク19内の塗布液を塗布ヘッド4へ強制的に供給することができる。
【0028】
大気開放管27は、加圧タンク20および供給タンク19内を個別に大気に連通させるものである。例えば、加圧タンク20および供給タンク19内への加圧気体の供給を停止させた後に、大気開放管27の開閉弁(図示せず)を開くことによって、加圧タンク20および供給タンク19内を個別に大気圧に戻すことができる。さらに、加圧タンク20には液補給ライン(液補給管28)が接続されている。液補給管28を介して加圧タンク20内に塗布液を補給することができる。塗布液の補給は、例えば作業者の手作業により行なわれる。
【0029】
塗布ヘッド4の温度は、温度調整機構6により調整される。温度調整機構6は、塗布ヘッド4を加温および冷却することが可能なように構成されている。温度調整機構6としては、例えば水や熱媒体の液温を管理しながら循環させて温度管理するチラーが用いられる。チラーに代えて電熱ヒータを用いることもできる。ただし、電熱ヒータは加熱に関しての温度応答性が良い反面、冷却は放熱に依存する。このため、塗布ヘッド4を周囲温度以下に冷却できない。一方、チラーは加熱もしくは冷却した水等の流体を循環させることで、塗布ヘッド4を加熱もしくは冷却する。流体を介して間接的に加熱および冷却するため、チラーは温度応答性に劣るものの、冷却も行えるという利点を有する。さらに、チラーに代えてあるいは補助的に、温度応答性のよいペルチェ素子を用いることもできる。
【0030】
実施形態の塗布装置1における温度調整機構6にとっては、塗布ヘッド4を加熱するだけでなく、冷却することもできることが重要である。塗布ヘッド4の温度は、チラーを適用した温度調整機構6によって、一定の温度(例えば28〜60℃の範囲内の所望温度)に維持される。チラーを適用した温度調整機構6は、循環用の水等の流体を収容する容器29と、容器29内に収容された水を冷却する冷却機構(図示せず)および加温する加熱機構(図示せず)と、塗布ヘッド4との間で熱交換を行なう熱交換部30と、容器29と熱交換部30との間で水を循環させる循環系(循環パイプとポンプ)31と、容器29内の水の温度を検出する温度センサ(図示せず)とを備えている。
【0031】
温度調整機構6の冷却機構、加熱機構、および循環ポンプは、制御部16により制御される。熱交換部30は、塗布ヘッド4の長手方向に沿う側壁面に装着されている。塗布ヘッド4の熱交換部30が装着された側壁面とは反対側の側壁面には、塗布ヘッド4の温度を検出する温度センサ(以下、ヘッド温度センサとも言う。)が設けられている。ヘッド温度センサ(図示せず)の測定値と塗布ヘッド4の設定温度とを比較し、これらの差を解消するように温度調整機構6を動作させる。温度調整機構6の動作は、制御部16により制御される。ヘッド温度センサにより検出された塗布ヘッド4の温度は、後述する塗布液の塗布工程において塗布ヘッド4内の塗布液の温度に相当する。
【0032】
塗布ヘッド4の全てのノズル8から1滴ずつ吐出させた塗布液量は、塗布ヘッド4内に充填されている塗布液の総量に対して極めて少ない。全てのノズル8から最大の駆動周波数で塗布液を吐出させた場合であっても、供給管22から塗布ヘッド4内に流入した塗布液がノズル8から吐出されるまでの間に、塗布液の温度は塗布ヘッド4の温度と同等になる。さらに、ヘッド温度センサは塗布ヘッド4の熱交換部30が装着された側壁面とは反対側の側壁面に、かつ塗布ヘッド4内の共通流路11に近い位置に設けられている。熱交換部30の熱(加熱または冷却)は、ヘッド温度センサに直接的に伝わることが防止されるため、塗布ヘッド4の温度を精度よく測定することができる。さらに、熱交換部30とヘッド温度センサの間に共通流路11が位置するため、熱交換部30の熱がヘッド温度センサに伝わるときには、共通流路11内の塗布液にも熱交換部30の熱が伝わっている。従って、ヘッド温度センサの測定値と塗布ヘッド4内の塗布液の温度はほぼ一致する。
【0033】
実施形態の塗布装置1は、半導体ウエーハ2の塗布面に25℃における粘度が50mPa・s以上の塗布液を塗布することによって、半導体ウエーハ2上に所望の塗布膜を形成するための装置である。前述したように、50mPa・s以上の粘度を有する塗布液であれば、塗布対象物上での塗布液の流動を抑制し、1回の塗布で10μm以上の厚膜を形成することができる。しかしながら、従来の塗布装置を用いて25℃における粘度が50mPa・s以上の高粘度の塗布液を塗布した場合、前述したように塗布ヘッドによる塗布液の塗布方向に沿ったスジ状や帯状のムラが発生したり、また塗布液の塗布方向に対する厚さ変動が増大するという問題が生じる。本願発明者等は、高粘度の塗布液を用いて形成した塗布膜に発生する問題について検討したところ、高粘度の塗布液を用いた場合には以下に示す現象が生じ、それらが問題点の発生原因であることを突き止めた。高粘度の塗布液を用いた場合の問題点の発生原因について以下に詳述する。
【0034】
(1.圧電素子の大型化に伴う発熱量の増大)
高粘度の塗布液を吐出させるためには、大型の圧電素子を用いて、塗布ヘッドのノズルが連通された加圧室内に大きな圧力変化を生じさせる必要がある。大型の圧電素子を用いると、圧電素子に供給される電力が大きくなる分だけ、圧電素子の発熱量が増加する。例えば、50μmの厚膜を形成する場合、1枚のウエーハに対して塗布液を塗布している間(だいたい2〜3分程度の間)に、塗布ヘッドの温度が平均で0.3℃程度上昇してしまうことが分かった。さらに、複数のウエーハに対して連続して塗布液を塗布すると、20〜30枚程度の塗布で、塗布ヘッドの温度が1℃程度上昇することが分かった。
【0035】
ここで、1枚のウエーハに対して塗布液を塗布する間に塗布ヘッドの温度が0.3℃上昇するのに対し、塗布ヘッドの温度が1℃上昇するまでには20〜30枚のウエーハに対する塗布を要するのは、1枚のウエーハに対する塗布を終えてから次のウエーハの塗布を開始するまでの間に、ウエーハの搬出、搬入が行なわれる。この間は、圧電素子の駆動は停止されており、この間に塗布ヘッドの温度が低下するためである。
【0036】
塗布液の粘度は、一般的に温度上昇に伴って低下する。この点に関して、塗布液の粘度が高くなるほど、温度変化に対する粘度の変化量が大きくなることを見出した。図7に塗布液の温度と粘度との関係の一例を示す。図7は後述する実施例で用いた塗布液(ポリアミド溶液)の固形分濃度を変えた場合の温度と粘度との関係を示している。図7からは、温度の上昇に伴って粘度が低下すること、さらにその割合は粘度が高い塗布液ほど大きくなる傾向にあることを読み取ることができる。具体的には、25℃での粘度が約90mPa・sの塗布液では、温度が1℃上昇すると粘度が2.0〜2.5mPa・s低下する。また、25℃での粘度が約130mPa・sの塗布液では、温度が1℃上昇すると粘度が3.5〜4.0mPa・s低下する。さらに、25℃での粘度が約230mPa・sの塗布液では、温度が1℃上昇すると粘度が約9.0〜9.5mPa・s低下する。
【0037】
そして、実験の結果、塗布液の粘度が2.0〜2.5mPa・s低下することによって、吐出量が約10%増加することが分かった。このことから、粘度90mPa・sの塗布液を用いて50μmの厚膜を形成する場合、複数枚のウエーハに対して連続して塗布液の塗布を実行しているうちに、ノズルからの塗布液の吐出量が10%程度増加してしまうことが判明した。本願発明者等の知見によれば、1℃程度の温度上昇であれば、吐出量が温度の上昇に対して比例的に増加することから、塗布ヘッドの温度が0.3℃上昇した場合には、吐出量が約3.3%増加することになると考えられる。
【0038】
上述したように、高粘度の塗布液を塗布する場合には、1枚のウエーハに対する塗布液の塗布中に、塗布ヘッドの温度が約0.3℃上昇する。このため、1枚のウエーハに塗布液を塗布している間に、ノズルからの塗布液の吐出量が3.3%増加してしまうことになる。従って、ウエーハ上において、最初に塗布液が塗布された部分と、最後に塗布液が塗布された部分とでは、塗布液の塗布量に3%以上の差が生じることになる。
【0039】
(2.圧電素子の駆動頻度差に基づくヘッド内の温度差)
図6に示すように、外形が円形のウエーハに塗布液を塗布する場合、ウエーハの中央領域に位置しているノズルの圧電素子と、当該ノズルよりもウエーハの外周領域に位置しているノズルの圧電素子とでは、ウエーハの中央領域に位置しているノズルの圧電素子の方が、ウエーハの表面に対向している距離が長い分だけ駆動頻度が多くなる。このため、塗布ヘッド内に設置された複数の圧電素子において、駆動頻度の多い圧電素子が位置する部分の方が、駆動頻度の少ない圧電素子が位置する部分よりも温度が高くなる。このため、塗布ヘッド内において温度の不均一が生じる。
【0040】
具体的には、50μmの塗布膜を形成するために塗布液をウエーハに塗布する間に、ウエーハの中央領域に位置する圧電素子とウエーハの外周領域に位置する圧電素子とでは、0.2〜0.3℃程度の温度差が生じる。各加圧室内の塗布液は、ダイヤフラムを介して圧電素子に接しているため、ウエーハの中央領域に位置する加圧室内の塗布液とウエーハの外周領域に位置する加圧室内の塗布液とでは、上述の温度に応じた温度差が発生する。その結果、ウエーハの中央領域に対応するノズルと外周領域に対応するノズルとの間で吐出量に、2〜3%程度のバラツキが発生していることが分かった。
【0041】
このように、塗布ヘッド内のノズル列における中央領域と外側領域とで吐出量に差が生じた状態で、ウエーハ上に塗布液を塗布すると、ノズル列の中央領域に位置するノズルで塗布液が塗布された部分と外側領域に位置するノズルで塗布液が塗布された部分とでは、塗布液の塗布量にやはり2〜3%程度の差が生じる。
【0042】
(3.不吐出ノズルの発生)
低粘度の塗布液を塗布する塗布ヘッドでは、一般的に1〜30kHz程度の高い周波数で各ノズルから塗布液を吐出させている。これは、ノズルから吐出される塗布液の1滴の量が数ng〜数10ngと極めて微量である塗布ヘッドにおいて、塗布に要する時間の短縮を図るためには単位時間当たりの吐出回数を極力多くする必要があるためである。このことは、高粘度の塗布液を使用する場合でも同じであり、やはり1kHzもしくはそれ以上の周波数で塗布液を吐出させることが望まれる。
【0043】
そこで、大型の圧電素子を有する塗布ヘッドを用いて、粘度が90mPa・sの塗布液を1kHzの吐出周波数で吐出させ、そのときにノズルから吐出される塗布液の状態を観察した。その結果、いくつかのノズルから塗布液が吐出されない状態が不規則に発生することが確認された。塗布液の粘度が高くなると、その分だけ塗布液が動き難くなる。そのため、前述のような1kHzという高い周波数でノズルから塗布液を吐出させようとした場合、共通流路側から加圧室内への塗布液の補充が追いつかなくなることがある。このような現象が生じると、塗布液を吐出できないノズルが発生するものと推測される。このため、各ノズルから吐出される塗布液の総量が異なるものとなってしまう。
【0044】
従来の塗布装置を用いて25℃における粘度が50mPa・s以上の高粘度の塗布液を塗布した場合、圧電素子の大型化に伴う発熱量の増大に基づいて1つのノズルに関して塗布量に3%以上の差が生じ、また圧電素子の駆動頻度の差に基づくヘッド内の温度差に基づいてノズル位置により塗布量に3%以上の差が生じる。さらに、高粘度の塗布液を使用した場合、塗布液を吐出できないノズルが不規則に発生する。これらによって、従来の塗布装置を用いて25℃における粘度が50mPa・s以上の塗布液を塗布した場合、塗布ヘッドによる塗布液の塗布方向に沿ったスジ状や帯状のムラが発生したり、また塗布液の塗布方向に対して厚さが変動するという問題が生じることが判明した。
【0045】
上述したような数%の吐出量の増減であっても、後述するように同じ領域に対して複数回重ねて塗布して厚膜を形成する場合には、塗布毎の吐出量のバラツキが累積されることになる。このため、形成される保護膜に、その許容範囲である±20%を超える膜厚のバラツキを生じさせるおそれがある。また、スジ状や帯状のムラは、保護膜の膜厚のバラツキの大きさが小さい場合、例えば数%のバラツキでも生じることがある。このようなムラは目視で認識され、光学製品等の視認性が要求される製品の場合には改善が必要となる。ただし、ムラが生じていても保護膜の機能には支障がないことがあるため、視認性が要求されない製品であれば問題視する必要はない。
【0046】
実施形態の塗布装置1は、塗布ヘッド4の温度を調整する温度調整機構6を具備している。なお、ここでは温度調整についての概略的な説明にとどめ、具体的な説明は後述する。温度調整機構6は、複数のノズル8から吐出される塗布液の量が圧電素子14に印加する電圧に対応した量となるように、塗布液の粘度を50mPa・s以上に維持しつつ、塗布液の温度を設定温度に調整する。温度調整機構6の動作は、圧電素子14を駆動する駆動部15の動作と共に制御部16により制御される。温度調整機構6は、複数のノズル8から吐出される塗布液の粘度を50mPa・s以上に維持しつつ、塗布液の温度が設定温度になるように、制御部16により動作制御される。複数のノズル8から吐出される塗布液の量は、温度調整機構6の動作に基づいて圧電素子14への印加電圧に対応した量(設定温度に基づく設定量)に制御される。
【0047】
実施形態の塗布装置1においては、25℃における粘度が50mPa・s以上の高粘度の塗布液を塗布する際に、塗布ヘッド4の温度変化に伴う塗布液の粘度変化を抑制するように、塗布ヘッド4の温度を温度調整機構6により調整する。具体的には、圧電素子14の大型化等に伴う発熱量の増大に基づいて生じる塗布ヘッド4の温度変化や、複数の圧電素子14の駆動頻度の差に基づく塗布ヘッド4内の温度差を抑制するように、塗布ヘッド4の温度を温度調整機構6により調整する。前述したように、塗布ヘッド4内の塗布液の温度は塗布ヘッド4の温度とほぼ等しい。従って、塗布ヘッド4の温度を調整することによって、塗布液の温度変化およびそれに基づく塗布液の粘度変化が抑制される。塗布ヘッド4の温度変化およびそれに伴う塗布液の粘度変化を抑制することによって、塗布液の粘度変化に伴う吐出量の経時的な変動やノズル位置に基づく吐出量の変動を抑制することができる。これらによって、塗布液の塗布方向に沿ったスジ状や帯状のムラ、また半導体ウエーハ2上に塗布された塗布液(塗布膜)の厚さ変動を抑制することが可能になる。
【0048】
実施形態の塗布装置1において、圧電素子14への印加電圧と塗布ヘッド4の温度およびそれに基づく塗布ヘッド4内の塗布液の温度は、圧電素子14への印加電圧とノズル8から吐出される塗布液の量との関係が、圧電素子14への印加電圧をx軸とし、ノズル8から吐出される塗布液の量をy軸とした、図8に示すグラフにおいて、
式(1):x=A
式(2):x=B
式(3):y=F(t,ρ)x+F(ρ)
式(4):y=F(t,ρ)x+F(ρ)
で規定される4つの直線で囲われる領域内となるように調整することが好ましい。図8において、交点aは式(1)で規定される直線1と式(3)で規定される直線3との交点、交点bは直線1と式(4)で規定される直線4との交点、交点cは式(2)で規定される直線2と直線4との交点、交点dは直線2と直線3との交点である。
【0049】
式(1)で規定される直線1において、Aはノズル8からの塗布液の吐出量が零を超える圧電素子14への最小の印加電圧値である。圧電素子14への印加電圧がA未満であると、ノズル8から塗布液を安定的に吐出させることができない。式(2)で規定される直線2において、Bは塗布液の吐出量の推移に変曲点が出現する圧電素子14への印加電圧値である。圧電素子14への印加電圧がBを超えると、圧電素子14に印加した電圧に対するノズル8からの塗布液の吐出量が変動しやすくなる。印加電圧値A、Bは、圧電素子14の仕様や塗布液の粘度等に基づいて定められる。
【0050】
式(3)および式(4)において、F(t,ρ)は塗布液の温度と粘度の関数から塗布液の温度を一定とした場合に定まる定数であり、式(3)および式(4)で規定される直線3および直線4の傾きを示す。式(3)および式(4)において、F(ρ)およびF(ρ)は塗布液の粘度の関数から定まる定数であって、F(ρ)=(1.13/0.87)F(ρ)の関係を満足する負の値であり、式(3)および式(4)で規定される直線3および直線4のy切片を示す。塗布液の粘度は、前述したように温度に依存して変化する。式(3)および式(4)は、塗布液の温度と粘度の関数、およびF(ρ)とF(ρ)との関係から求められる。塗布液の温度と粘度との相関関係のデータは、例えば異なる2つの温度(t1、t2)の塗布液の粘度(ρ1、ρ2)を測定することで求められる。この測定結果から塗布液の温度と粘度の関係を表す式が求められる。
【0051】
圧電素子14への印加電圧に対する塗布液の吐出量が直線3および直線4で規定される領域を超えるということは、印加電圧から想定される塗布液の吐出量からの変動量が大きいことを意味する。このような場合には、塗布膜の厚さ変動を抑制することができない。言い換えると、直線3および直線4で規定される領域内となるように、塗布ヘッド4の温度およびそれに基づく塗布液の温度を調整することによって、塗布膜の厚さ変動を抑制することができる。圧電素子14への印加電圧と塗布ヘッド4の温度およびそれに基づく塗布ヘッド4内の塗布液の温度は、式(1)、式(2)、式(3−1)、および式(4−1)で規定される4つの直線で囲われる領域内となるように調整することがより好ましく、さらに式(1)、式(2)、式(3−2)、および式(4−2)で規定される4つの直線で囲われる領域内となるように調整することが望ましい。
【0052】
式(3−1):y=F(t,ρ)x+F21(ρ)
式(4−1):y=F(t,ρ)x+F31(ρ)
21(ρ)およびF31(ρ)は塗布液の粘度の関数から定まる定数であって、F31(ρ)=(1.07/0.93)F21(ρ)の関係を満足する負の値である。
式(3−2):y=F(t,ρ)x+F22(ρ)
式(4−2):y=F(t,ρ)x+F32(ρ)
22(ρ)およびF32(ρ)は塗布液の粘度の関数から定まる定数であって、F32(ρ)=(1.03/0.97)F22(ρ)の関係を満足する負の値である。
【0053】
塗布ヘッド4の温度およびそれに基づく塗布液の温度は、上述した式(1)〜(4)で規定される領域を満足する温度に調整される。さらに、塗布ヘッド4の温度およびそれに基づく塗布液の温度は、ノズル8から吐出される塗布液の粘度(以下、吐出時粘度とも言う。)を50mPa・s以上に維持し得る範囲内で、28℃以上60℃以下の一定の温度に調整することが好ましい。さらに、塗布ヘッド4の温度およびそれに基づく塗布液の温度は、複数のノズル8から吐出される塗布液の粘度(吐出時粘度)が50mPa・s以上300mPa・s以下となるように調整することが好ましい。
【0054】
塗布ヘッド4の温度およびそれに基づく塗布液の温度を28℃以上の一定温度に調整することによって、塗布液のノズル8からの吐出性を高めることができる。これによって、半導体ウエーハ2上に形成された塗布膜の厚さ変動をより一層抑制することが可能になる。さらに、塗布液の高粘度化による共通流路11から加圧室8a内への塗布液の補充不良が抑制されるため、全てのノズル8から塗布液を良好に吐出させることができる。これによっても、塗布膜の厚さ変動をより効果的に抑制することができる。
【0055】
塗布ヘッド4の温度およびそれに基づく塗布液の温度が60℃を超えると、塗布ヘッド4のノズル8が目詰まりを起こしやすくなり、塗布液を吐出できないノズル8の数が増えるおそれがある。保護膜等を形成する塗布液の場合、温度が高くなるほど粘度が低下する一方で、塗布液中の揮発成分が蒸発しやすくなる。揮発成分が蒸発すると、塗布液が固まるおそれがある。保護膜形成用の塗布液の場合、その温度が60℃を超えると1枚のウエーハへの塗布が完了してから次のウエーハへの塗布を開始するまでの間に、塗布ヘッド4のノズル開口部の塗布液が乾燥して固まってしまうおそれがある。
【0056】
前述したように、塗布液の吐出時粘度が50mPa・s未満であると、塗布液を厚膜状に塗布することができなくなり、例えば膜厚が10μm以上というような厚膜を1回の塗布で形成することができなくなる。塗布液の25℃における粘度は1000mPa・s以下であることが好ましく、塗布液の吐出時粘度は300mPa・s以下であることが好ましい。塗布液の粘度がこれらを超えると、塗布ヘッド4の温度を調整しても複数のノズルから塗布液を良好に吐出できないおそれがある。
【0057】
塗布液の吐出時粘度は、塗布ヘッド4の温度に基づいてノズル8から吐出される塗布液の粘度を推定した値であり、以下では塗布液の推定粘度とも言う。塗布液の吐出時粘度は、塗布液の温度と粘度との相関関係を予め実験により求めておくことによって、ノズル8から吐出される塗布液の粘度を塗布ヘッド4の測定温度から推定することができる。なお、塗布ヘッド4の温度に代えて、塗布ヘッド4内の塗布液の温度を測定するようにしてもよい。この場合、塗布ヘッド4の共通流路11等の流路内の温度センサを配置し、塗布液の温度を測定することができる。
【0058】
実施形態の塗布装置1を用いた塗布液の塗布工程は、以下のようにして実施される。ここでは、塗布装置1を用いて半導体ウエーハ2の表面に保護膜を形成する工程について述べる。まず、準備動作として、塗布ヘッド4の温度調整を行う。準備動作においては、温度調整機構(チラー)6の管理温度と塗布ヘッド4の管理温度に基づいて、塗布ヘッド4の温度が設定された温度となるように、温度調整機構6の動作が制御される。
【0059】
準備動作が開始されると、温度調整機構6の加熱機構(もしくは冷却機構)が作動して容器29内の水が加熱(もしくは冷却)されると共に、循環系31が作動して容器29内の水が熱交換部30との間で循環される。容器29内の水の温度は、温度センサにより予め設定されたサンプリング周期で検出され、その検出結果は温度調整機構6が備える制御機構において、制御部16から送られた管理温度と比較される。制御機構は、検出温度が管理温度に達するまでは、加熱機構による加熱温度を維持する。検出温度が管理温度に達したら加熱機構を停止させるか、出力を低下させて加熱温度を抑え、検出温度が管理温度を超過することを防ぐ。なお、検出温度が管理温度を超えた場合には、加熱機構を停止させると共に、冷却機構を作動させて容器29内の水の温度を低下させる。
【0060】
温度調整機構6の温度制御と並行して、塗布ヘッド4の温度制御が行なわれる。温度調整機構6の水の循環が開始されると、制御部16は塗布ヘッド4に設けられたヘッド温度センサで、予め設定されたサンプリング周期で塗布ヘッド4の温度検出を開始する。制御部16は、ヘッド温度センサによる検出温度が塗布ヘッド4の管理温度に達したら、準備動作が完了した旨の信号を出力し、ステージ3に対するウエーハ2の供給を開始する。
【0061】
ウエーハ2に対する塗布液の塗布が開始され、塗布ヘッド4の圧電素子14が駆動されると、圧電素子14の発熱により塗布ヘッド4が加熱される。このため、ヘッド温度センサによる検出温度が塗布ヘッド4の管理温度を超えてしまうことがある。このような場合には、制御部16が温度調整機構6の管理温度を下方修正した値に変更する。このときの修正量は、予め実験等で求めて設定しておけばよい。また、ウエーハ2に対する塗布液の塗布中において、圧電素子14が塗布開始からの経過時間毎にどの程度発熱するかは、ウエーハ2に対する塗布液の塗布パターンからシミュレーションや実験によって予め予測することも可能である。この予測値に基づいて、塗布ヘッド4の温度が管理温度で一定となるように、温度調整機構6の管理温度を変更するようにしてもよい。
【0062】
準備動作が完了したら、ウエーハ2の搬入搬出位置に位置付けられているステージ3にウエーハ2が供給される。ステージ3へのウエーハ2の供給、搬出は、ロボットハンド型の搬入搬出装置を用いて自動で行なってもよいし、作業者が手作業で行なってもよい。作業者が手作業で行なう場合には、前述の準備動作が完了した旨は、モニタ表示やスピーカ等によって作業者に報知されるようにするとよい。
【0063】
ステージ3上にウエーハ2が供給されると、図示しない位置検出機構によりステージ3上に供給されたウエーハ2の位置を検出する。位置検出機構としては、撮像カメラを用いた装置が用いられる。撮像カメラでウエーハ2上に設けられた特定のパターン、ウエーハ2の外周縁、外周縁に設けられたノッチ等を撮像し、撮像画像に基づいてウエーハ2の位置を検出する。ウエーハ2の供給に先立って、ステージ3は所定の温度、例えばウエーハ2を65〜80℃程度に加熱可能な温度に加熱される。ウエーハ2の位置が検出されると、制御装置の記憶部に予め設定されている塗布条件に基づいてステージ32が移動すると共に、塗布ヘッド4が駆動されて、ウエーハ2に対する塗布液の塗布が開始される。
【0064】
実施形態の塗布装置1においては、塗布ヘッド4のノズル列はウエーハ2上における塗布領域の直径の半分の長さを有する。ステージ3の往動時にウエーハ2上の塗布領域の半分の領域に塗布液を塗布し、複動時に残りの半分の領域に塗布液を塗布する。この動作を複数回、例えば8回繰り返し、ウエーハ2上に所望の膜厚を有する塗布液の膜(塗布膜)を形成する。ウエーハ2上に塗布される塗布液の粘度は50mPa・s以上に維持されているため、ウエーハ2上に塗布された塗布液が流れ落ちることなく、ウエーハ2上に塗布膜が形成される。しかも、ウエーハ2が塗布液の揮発(乾燥)を促進させる温度(例えば65℃以上)に加熱されているため、塗布液の流れ落ちがなおさら抑制される。
【0065】
ウエーハ2に対する塗布液の塗布は、ウエーハ2上の同じ位置に複数回繰り返して塗布するようにしてもよいし、往動および複動の塗布毎に、塗布ヘッド14とウエーハ2とをノズル列に沿う方向(X軸方向)に、ノズル8の配置ピッチより小さい移動距離ずつ、例えば1/8ピッチずつ、相対移動させるようにしてもよい。複数回往復させて塗布する代わりに、ステージ3の移動速度を遅く設定し、1回の往復移動で複数回の往複動分の塗布量の塗布液をウエーハ2上に塗布するようにしてもよい。
【0066】
塗布液の塗布が完了したら、ステージ3は供給搬出位置へと位置付けられる。塗布液が塗布されたウエーハ2は、搬送装置により次工程である、塗布液の乾燥装置へと搬送される。乾燥装置においては、例えば100℃〜150℃程度の温度で、10分程度のプリベークが行なわれる。このようにして、半導体ウエーハ2上に保護膜が形成される。なお、塗布膜の乾燥(加熱処理)は1回に限られるものではない。例えば、エッチングにより形成される溝の幅を許容範囲内にすることができれば、保護膜の形成工程は塗布膜の加熱処理工程を2回以上含んでいてもよい。
【0067】
実施形態の塗布装置1およびそれを用いた塗布方法によれば、インクジェット方式の塗布ヘッド4の複数のノズル8から吐出される塗布液の量が圧電素子14への印加電圧に対応した量となるように、塗布液の粘度を50mPa・s以上に維持しつつ、塗布ヘッド4の温度およびそれに基づく塗布液の温度を設定温度に調整しているため、塗布動作の進行に伴う圧電素子14の発熱や圧電素子14の駆動タイミングによる発熱変動等に基づく塗布液の粘度変化およびそれに基づく吐出量の変動を抑制することができる。
【0068】
さらに、塗布ヘッド4の圧電素子14への印加電圧とノズル8から吐出される塗布液の吐出量との関係を、式(1)〜(4)で規定される4つの直線で囲われる領域内となるように調整することによって、高粘度の塗布液の吐出量と圧電素子14への印加電圧との関係に直線性を持たせることができる。そのため、高粘度の塗布液を吐出させる場合であっても、吐出量の制御性が向上し、各ノズル8からの塗布液の吐出量を、バラツキを防止した状態で、精度よく設定することができる。
【0069】
それらの結果、例えばウエーハ2の表面に10μm以上の膜厚の保護膜を形成する場合において、ウエーハ2上に塗布された塗布液が高粘度であるため、ウエーハ2上での塗布液の流動が抑制され、ウエーハ2上に塗布液を厚く塗ることができる。しかも、高粘度の塗布液を適正な吐出量で吐出させることができるため、ウエーハ2上に塗布液を厚く塗り重ねたときでも、塗布液の膜(塗布膜)を均一な厚さとすることができる。これらによって、膜厚の均一性に優れる厚膜を再現性よく形成することが可能になる。
【0070】
ここで、塗布膜の厚さが均一であるとは、例えば形成された保護膜をエッチングして溝等を形成する場合において、形成した溝の壁面に段差が生じるような、膜厚方向において保護膜の硬さの不均一が抑制された状態のことである。また、ウエーハ2上における塗布液の分布を均一なものとすることができるから、保護膜を例えば±20%以内の膜厚のバラツキで形成することができる。保護膜の膜厚のバラツキを±20%以内としているのは、保護膜の膜厚のバラツキが±20%を超えると、エッチングによって保護膜に溝パターン等を形成したときに、エッチング部分においてウエーハ2の表面まで十分に保護膜が除去できずに残ってしまったり、反対にウエーハ2の表面までエッチングが進んでしまったりするといった不具合を生じるおそれがあるためである。
【0071】
ウエーハ2上に形成した保護膜に、例えばウエーハ2のダイシングラインに合わせて溝パターンをエッチングで形成する場合に、保護膜における膜厚方向の硬さが均一であるため、厚膜であっても溝パターンの壁面に段差を生じさせることなく、垂直もしくは垂直に近い状態で形成することができる。また、保護膜の膜厚のバラツキが±20%以内に抑えられていることから、エッチング部分において保護膜が除去しきれずに残るエッチング不良や、ウエーハ2の表面までエッチングが進んでしまうエッチング不良を生じることなく、エッチング部分で保護膜をきれいに除去することができる。
【0072】
ここでは、エッチングが良好に行なえることを例に挙げて効果を説明したが、実施形態の塗布装置1の効果はエッチングの状態のみで評価されるものではない。また、ポリアミド溶液の塗布によって形成する保護膜を例に上げたが、これに限られるものではなく、設定された領域内に所望のバラツキの精度内で塗布液を塗布するものに好適に適用可能である。例えば、ポリイミド溶液によって形成するものであってもよい。塗布液としては、25℃における粘度が50mPa・s以上の樹脂液等の各種の高粘性液体を用いることができる。例えば、チキソトロピーを有する非ニュートン液体からなる高粘性流体を用いることができる。ナノ金属粒子含有インクを用いた配線形成、半田ボールの下地に用いられるフラックスの塗布、湿布薬等を不織布等の基材上に膜塗布する貼り薬の製造、可食シートにサプリメントインクを膜塗布する経口薬の製造、UV硬化インクを用いて文字や画像を曲面に塗布する加飾用途、セラミック粒子含有インクを用いたタイルへの下地膜塗布、化粧液を不織布等の基材に塗布する化粧シートの製造等にも適用することができる。
【0073】
さらに、実施形態の塗布装置1においては、塗布ヘッド4の温度を一定の温度、例えば28〜60℃の範囲内の所定の温度に保つように制御しているため、圧電素子14の発熱に起因する塗布液の温度上昇を抑制することができる。これによって、個々のノズル8からの吐出量のバラツキが抑制され、各ノズル8からの吐出量を精度よく設定することができる。圧電素子14毎に印加電圧の制御が可能であるため、ノズル8毎に吐出量が異なる場合であっても、ノズル8毎に吐出量の調整が可能となる。従って、複数のノズル8からの塗布液の吐出量をより高精度に調整することができる。
【0074】
例えば、単層型の圧電素子に比べて、積層型の圧電素子14は圧電素子を積層している分だけ、製造工程や部品点数が多くなる。そのため、製造誤差が生じる機会が多く、個体差が大きくなる。圧電素子14毎に個体差があると、各圧電素子14に同じ大きさの電圧を印加したとしても、圧電素子14毎に変位量が異なるため、各ノズル8から吐出される塗布液の吐出量がばらつくことになる。実施形態の塗布装置1においては、各圧電素子14への印加電圧と塗布液の吐出量との関係を制御しているため、個々の圧電素子14の駆動によって吐出される塗布液の吐出量の制御性を向上させることができる。このため、ウエーハ2の表面に10μm以上の厚膜の保護膜を均一に形成することができる。
【0075】
産業用インクジェット方式の塗布ヘッドは、耐薬品性に優れたステンレス鋼を用いて作製することが好ましい。例えば、ノズルプレートでは、2〜3mmの厚さのステンレス板に、直径100〜1000μmの加圧室と、加圧室の底部からノズルプレートの下面に貫通する、直径20〜100μm、長さ20〜100μmのノズルを、200〜2000μm間隔で50〜200個形成している。ところで、ステンレス鋼は難加工材であるため、このような微細な加工は自動化が困難であり、熟練した職人の手作業によって行なわれる。そのため、1つ1つのノズルの大きさに、加工誤差が生じることは避けられない。職人の熟練度の違いによる個人差も加工精度に加わる。
【0076】
このように、ノズル径に加工誤差がある場合、各圧電素子に同じ電圧を印加したとしても、ノズル径の大きなノズルは、ノズル径の小さなノズルよりも塗布液の吐出量が多くなる。ノズル径にバラツキを有する塗布ヘッドを用いてウエーハに対して塗布液を塗布した場合、ウエーハ上に塗布される塗布液の量が、ノズル位置毎に異なることになる。実施形態の塗布装置1においては、各圧電素子14への印加電圧と塗布液の吐出量との関係を制御しているため、個々の圧電素子14の駆動によって吐出される塗布液の吐出量の制御性を向上させることができる。このため、ウエーハ2の表面に10μm以上の厚膜の保護膜を均一に形成することができる。
【実施例】
【0077】
次に、実施例およびその評価結果について述べる。
【0078】
(実施例1)
まず、塗布液として25℃における粘度が90mPa・sであるポリアミド溶液(固形分濃度:26.5%)を用意した。このような塗布液を用いて、塗布ヘッドの設定温度を30℃(実管理温度:29.7℃)として、温度調整機構により塗布ヘッドの温度を調整しつつ、圧電素子に対する印加電圧とノズルから吐出される塗布液の吐出量との関係を実測した。塗布ヘッドとしては、100個のノズルおよび圧電素子を有するものを使用した。その結果を図9に示す。図9に示すグラフにおいて、x軸(横軸)は圧電素子への印加電圧、y軸(縦軸)は1つのノズルから吐出される1滴の塗布液の吐出量(単位:ng/dot)である。x軸の印加電圧は、圧電素子の耐電圧(PZT耐圧)に対する比で表している。使用した圧電素子のPZT耐圧は50Vである。他の実施例も同様である。
【0079】
圧電素子の駆動周波数は1kHzに設定した。塗布液の吐出量については、100個のノズルから同時に50000滴ずつ吐出(1kHz、50秒間)させた塗布液の総量を電子天秤で測定し、その測定値を50000×100で割った値を、各ノズルから吐出される1滴の塗布液の吐出量として算出した。塗布液の吐出量は、塗布ヘッドの真下に液受け用のトレーをセットし、このトレーに向けて全てのノズルから塗布液を50000滴同時に吐出させ、トレーで受けた塗布液の質量を電子天秤により測定した。
【0080】
100個のノズルから液滴が吐出されているかどうかについては、以下のようにして判断した。塗布液の吐出量の測定(50000滴の塗布液の吐出)した後、トレーに代えてガラス基板をセットし、各ノズルからそれぞれガラス基板上の同一位置に、例えば60滴の塗布液を吐出させる。液滴数は液滴の集合体が目視できる大きさとなるように設定した。ガラス基板上にノズル数分である100個の液滴が付着しているか否かで、全てのノズルから塗布液が吐出されているか否かを判定した。圧電素子への印加電圧と塗布液の吐出量との関係を示すグラフ(図9および後述する図11ないし図13)において、液滴の付着数が100個の場合には塗りつぶしたプロットで、液滴の付着数が100個未満の場合には白抜きのプロットで示した。白抜きのプロットは、塗布ヘッドが備える100個のノズルのうち、塗布液を吐出していないノズルが存在することを表している。
【0081】
図9に示す圧電素子への印加電圧と塗布液の吐出量との実測データにおいて、A値は61.7、B値は80.1であった。さらに、実測データのグラフから近似直線を求めたところ、y=9.39x−155.2であった。この近似直線の式からy切片を+13%とした式とy切片を−13%とした式を求めた。これらの結果を式(1)〜(4)に当てはめると、以下の通りとなる。
式(1):x=61.7
式(2):x=80.1
式(3):y=9.39x−135.0
式(4):y=9.39x−175.4
【0082】
図9から明らかなように、塗布ヘッドの設定温度を30℃とし、温度調整機構により実管理温度29.7℃で塗布ヘッドの温度を一定に調整した場合、圧電素子に対する印加電圧とノズルから吐出される塗布液との関係が式(1)〜(4)で規定される4つの直線で囲われる領域内に制御されていることが分かる。なお、図9のグラフ中の交点a〜dの吐出量の値は、圧電素子のPZT耐圧に対する比で表された値を電圧値に変換し、各式に代入して算出した値である。他の実施例においても同様である。
【0083】
(実施例1−1)
上述した実施例1の塗布装置(塗布ヘッドの実管理温度:29.7℃)を用いて、ウエーハ上に目標膜厚を50μmとした保護膜(ポリアミドを主成分とする保護膜)を形成した。ヘッド温度(29.7℃)における塗布液の推定粘度は79mPa・sである。実施例1−1においては、圧電素子への印加電圧は64%に設定した。印加電圧64%での吐出量は、142.6ng/dotであった。塗布時のステージ3の移動速度(「塗布速度」という。)は、18mm/sに設定した。圧電素子の駆動周波数は、吐出量の測定と同様に、1kHzに設定した。このような条件で得られた保護膜の厚さを測定した。その結果を表1に示す。実施例1−1で得られた保護膜の平均厚さは50.8μmであり、また膜厚の均一性は±7.1%であった。なお、塗布速度vは、v=(f×S×w)/Lにより求めた。ここでは、fは圧電素子の駆動周波数(1kHz)、Sは繰り返し塗布回数(8回)、wは吐出量(142.6ng/dot)、Lは50μmの厚保を得るために必要な単位長さ当たりの塗布量(64000ng)である。塗布量Lは実験より求めた。
【0084】
【表1】
【0085】
保護膜の厚さは以下のようにして測定した。ウエーハの外縁から内側へ2mm以内の範囲(外縁領域)は、製品として用いられない部分であるため、この範囲の膜厚は算出データから除外した。上述の外縁領域よりも内側の領域(内側領域)、具体的にはx、y方向それぞれにおいて、位置3mm〜197mmの範囲における13箇所において膜厚を測定した。これら合計26箇所の膜厚測定値の平均値を保護膜の平均厚さとした。膜厚の測定には、非接触式白色干渉計(ZYGO社製、型式SER5136A−00)を用いた。膜厚の均一性は、内側領域における測定値の最大値(Y方向、位置170mmの55.9μm)と最小値(X方向、位置130mmの48.7μm)との差(7.2μm)から、平均値に対する膜厚のバラツキ(14.2%)を求め、その半分の値(7.1%)とした。
【0086】
次に、得られた保護膜にi線(=波長365nmの紫外光)を2500mJ/cmの積算照射量となるように照射して露光した。露光後の保護膜を、ポジ型フォトレジスト用現像液(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH))で、パドル式現像法を用いて210秒×4回のエッチングを行なった。その結果、図10に示すように、段の無い側壁面を有する溝を形成することができた。溝の底部に残った保護膜の厚さは0〜0.030μm程度であり、無視することができる値であった。溝底部の保護膜の膜厚測定には、非接触式白色干渉計(ZYGO社製、型式SER5136A−00)を用いた。
【0087】
上述の保護膜のエッチングは、後工程のダイシングの際にダイシングブレードに保護膜が付着するのを防ぐ目的で、ウエーハのダイシングライン上に形成された保護膜を予め除去するために行なわれるものである。そのため、残膜の厚さはダイシングブレードに不具合を与えない程度の厚さであれば問題はなく、その厚さは経験上、数十nm以下(0.1μm未満)であれば良いことが分かっている。従って、残膜の厚さが数nmであるこの実施例1−1は、良好にエッチングが行なえたものと言える。本実施例においては、膜厚およびエッチング状態共に良好な結果を得ることができた。
【0088】
(実施例1−2)
上述した実施例1の塗布装置(塗布ヘッドの実管理温度:29.7℃)を用いて、ウエーハ上に目標膜厚を50μmとした保護膜(ポリアミドを主成分とする保護膜)を形成した。実施例1−2においては、圧電素子への印加電圧は70%に設定した。印加電圧70%での吐出量は、173.4ng/dotであった。塗布速度は、22mm/sに設定した。圧電素子の駆動周波数は、1kHzに設定した。このような条件で得られた保護膜の厚さを測定した。その結果、実施例1−2で得られた保護膜の平均厚さは50.8μmであり、また膜厚の均一性は±9.2%であった。得られた保護膜に対して実施例1−1と同様にして露光およびエッチングを行った。その結果、段の無い側壁面を有する溝が得られ、溝の底部に残った保護膜の厚さは0〜0.030μm程度であった。本実施例においては、膜厚およびエッチング状態共に良好な結果を得ることができた。
【0089】
(実施例1−3)
上述した実施例1の塗布装置(塗布ヘッドの実管理温度:29.7℃)を用いて、ウエーハ上に目標膜厚を50μmとした保護膜(ポリアミドを主成分とする保護膜)を形成した。実施例1−3においては、圧電素子への印加電圧は76%に設定した。印加電圧76%での吐出量は、199.9ng/dotであった。塗布速度は、25mm/sに設定した。圧電素子の駆動周波数は、1kHzに設定した。このような条件で得られた保護膜の厚さを測定した。その結果、実施例1−3で得られた保護膜の平均厚さは52.8μmであり、また膜厚の均一性は±9.8%であった。得られた保護膜に対して実施例1−1と同様にして露光およびエッチングを行った。その結果、段の無い側壁面を有する溝が得られ、溝の底部に残った保護膜の厚さは0〜0.050μm程度であった。本実施例においては、膜厚およびエッチング状態共に良好な結果を得ることができた。
【0090】
(比較例1−1)
上述した実施例1の塗布装置(塗布ヘッドの実管理温度:29.7℃)を用いて、ウエーハ上に目標膜厚を50μmとした保護膜(ポリアミドを主成分とする保護膜)の形成工程を実施した。ただし、比較例1−1においては、圧電素子への印加電圧を上述した式(1)で規定される印加電圧よりも低い電圧である60%に設定した。印加電圧60%での吐出量は、式(1)〜(4)に囲まれる領域から外れているので、近似直線から算出した126.5ng/dotとし、塗布速度は16mm/sに設定した。圧電素子の駆動周波数は、1kHzに設定した。その結果、比較例1−1では塗布ヘッドのノズルから塗布液を吐出させることができず、保護膜を形成することができなかった。
【0091】
(比較例1−2)
上述した実施例1の塗布装置(塗布ヘッドの実管理温度:29.7℃)を用いて、ウエーハ上に目標膜厚を50μmとした保護膜(ポリアミドを主成分とする保護膜)の形成工程を実施した。ただし、比較例1−2においては、圧電素子への印加電圧を上述した式(2)で規定される印加電圧よりも高い電圧である82%に設定した。印加電圧82%での吐出量は、式(1)〜(4)で囲まれる領域からから外れているので、近似直線から算出した229.8ng/dotとし、塗布速度は29mm/sに設定した。圧電素子の駆動周波数は、1kHzに設定した。その結果、比較例1−2ではウエーハ上に平均厚さが48.7μmの保護膜を形成できたものの、膜厚の均一性は±28.3%にとどまり、要求される均一性を満たすことができなかった。得られた保護膜に実施例1−1と同様にして露光およびエッチングを行った。その結果、溝の側壁面に段が形成されることはなかったものの、溝の底部に残った保護膜の厚さは0.523〜5.063μmであった。本比較例においては、膜厚およびエッチング状態共に良好に得ることができなかった。
【0092】
(比較例1−3)
上述した実施例1の塗布装置を用いて、ウエーハ上に目標膜厚を50μmとした保護膜(ポリアミドを主成分とする保護膜)の形成工程を実施した。ただし、比較例1−3においては、保護膜の形成前に塗布ヘッドの温度を30℃に設定したものの、保護膜の形成工程中は塗布ヘッドの温度管理を実施しなかった。ただし、塗布ヘッドの温度測定のみは実施した。圧電素子への印加電圧は70%に設定した。印加電圧70%での吐出量は173.4ng/dotであった。この吐出量をもとに、塗布速度は22mm/sに設定した。圧電素子の駆動周波数は、1kHzに設定した。
【0093】
比較例1−3においては、ウエーハに塗布液を塗布している間に、圧電素子の発熱の影響を受けて塗布ヘッドが加熱された結果、塗布ヘッドの温度(最大温度)は31.7℃まで上昇した。その際に、塗布ヘッド内の塗布液の粘度、つまり塗布液の吐出時の粘度が低下し、ノズルからの塗布液の吐出量が式(3)で規定される上限を超えてしまった。その温度における塗布液の推定粘度は74.8mPa・sである。さらに、そのときの吐出量は203.0ng/dotであった。
【0094】
その結果、比較例1−3ではウエーハ上に形成された保護膜の平均厚さが53.4μmとなり、さらに膜厚の均一性は±26.1%にとどまり、要求される均一性を満たすことができなかった。得られた保護膜に対して実施例1−1と同様にして露光およびエッチングを行った。その結果、溝の側壁面に段が形成されることはなかったものの、溝の底部に残った保護膜の厚さは1.021〜6.472μmであった。本比較例においては、膜厚およびエッチング状態共に良好に得ることがでなかった。
【0095】
(実施例2)
実施例1と同様に、塗布液として25℃における粘度が90mPa・sであるポリアミド溶液(固形分濃度:26.5%)を用意した。このような塗布液を用いて、塗布ヘッドの設定温度を35℃(実管理温度:35.2℃)として、温度調整機構により塗布ヘッドの温度を調整しつ、圧電素子に対する印加電圧とノズルから吐出される塗布液の吐出量との関係を実測した。塗布ヘッドとしては、100個のノズルおよび圧電素子を有するものを使用した。その結果を図11に示す。塗布液の吐出量は実施例1同様に測定した。
【0096】
図11に示す圧電素子への印加電圧と塗布液の吐出量との実測データにおいて、A値は54.0、B値は70.9であった。さらに、実測データのグラフから近似直線を求めたところ、y=9.92x−148.1であった。この近似直線の式からy切片を+13%とした式とy切片を−13%とした式を求めた。これらの結果を式(1)〜(4)に当てはめると、以下の通りとなる。
式(1):x=54.0
式(2):x=70.9
式(3):y=9.92x−128.8
式(4):y=9.92x−167.4
【0097】
図11から明らかなように、塗布ヘッドの設定温度を35℃とし、温度調整機構により実管理温度35.2℃で塗布ヘッドの温度を一定に調整した場合、圧電素子に対する印加電圧とノズルから吐出される塗布液との関係が式(1)〜(4)で規定される4つの直線で囲われる領域内に制御されていることが分かる。
【0098】
(実施例2−1)
上述した実施例2の塗布装置(塗布ヘッドの実管理温度:35.2℃)を用いて、ウエーハ上に目標膜厚を50μmとした保護膜(ポリアミドを主成分とする保護膜)を形成した。ヘッド温度(35.2℃)における塗布液の推定粘度は66mPa・sである。実施例2−1においては、圧電素子への印加電圧は54%に設定した。印加電圧54%での吐出量は、122.4ng/dotであった。塗布速度は、15mm/sに設定した。圧電素子の駆動周波数は、1kHzに設定した。このような条件で得られた保護膜の厚さを測定した。その結果、実施例2−1で得られた保護膜の平均厚さは50.9μmであり、また膜厚の均一性は±13.4%であった。得られた保護膜に対して実施例1−1と同様にして露光およびエッチングを行った。その結果、段の無い側壁面を有する溝が得られ、溝の底部に残った保護膜の厚さは0.006〜0.052μmであり、無視できる程度の膜厚とすることができた。本実施例においては、膜厚およびエッチング状態共に良好な結果を得ることができた。
【0099】
(実施例2−2)
上述した実施例2の塗布装置(塗布ヘッドの実管理温度:35.2℃)を用いて、ウエーハ上に目標膜厚を50μmとした保護膜(ポリアミドを主成分とする保護膜)を形成した。実施例2−2においては、圧電素子への印加電圧は64%に設定した。印加電圧64%での吐出量は、168.5ng/dotであった。塗布速度は、21mm/sに設定した。圧電素子の駆動周波数は、1kHzに設定した。このような条件で得られた保護膜の厚さを測定した。その結果、実施例2−2で得られた保護膜の平均厚さは50.3μmであり、また膜厚の均一性は±12.1%であった。得られた保護膜に対して実施例1−1と同様にして露光およびエッチングを行った。その結果、段の無い側壁面を有する溝が得られ、溝の底部に残った保護膜の厚さは0.004〜0.047μmであり、無視できる程度の膜厚とすることができた。本実施例においては、膜厚およびエッチング状態共に良好な結果を得ることができた。
【0100】
(実施例2−3)
上述した実施例2の塗布装置(塗布ヘッドの実管理温度:35.2℃)を用いて、ウエーハ上に目標膜厚を50μmとした保護膜(ポリアミドを主成分とする保護膜)を形成した。実施例2−3においては、圧電素子への印加電圧は70%に設定した。印加電圧70%での吐出量は、207.7ng/dotであった。塗布速度は、26mm/sに設定した。圧電素子の駆動周波数は、1kHzに設定した。このような条件で得られた保護膜の厚さを測定した。その結果、実施例2−3で得られた保護膜の平均厚さは50.7μmであり、また膜厚の均一性は±14.7%であった。得られた保護膜に対して実施例1−1と同様にして露光およびエッチングを行った。その結果、段の無い側壁面を有する溝が得られ、溝の底部に残った保護膜の厚さは0.009〜0.063μmであり、無視できる程度の膜厚とすることができた。本実施例においては、膜厚およびエッチング状態共に良好な結果を得ることができた。
【0101】
(比較例2−1)
上述した実施例2の塗布装置(塗布ヘッドの実管理温度:35.2℃)を用いて、ウエーハ上に目標膜厚を50μmとした保護膜(ポリアミドを主成分とする保護膜)の形成工程を実施した。ただし、比較例2−1においては、圧電素子への印加電圧を上述した式(1)で規定される印加電圧よりも低い電圧である52%に設定した。印加電圧52%での吐出量は、式(1)〜(4)に囲まれる領域から外れているので、近似直線から算出した109.8ng/dotとし、塗布速度は14mm/sに設定した。圧電素子の駆動周波数は、1kHzに設定した。その結果、比較例2−1では塗布ヘッドのノズルから塗布液を吐出させることができず、保護膜を形成することができなかった。
【0102】
(比較例2−2)
上述した実施例2の塗布装置(塗布ヘッドの実管理温度:35.2℃)を用いて、ウエーハ上に目標膜厚を50μmとした保護膜(ポリアミドを主成分とする保護膜)の形成工程を実施した。ただし、比較例2−2においては、圧電素子への印加電圧を上述した式(2)で規定される印加電圧よりも高い電圧である72%に設定した。印加電圧72%での吐出量は、式(1)〜(4)に囲まれる領域から外れているので、近似直線から算出した209.0ng/dotとし、塗布速度は26mm/sに設定した。圧電素子の駆動周波数は、1kHzに設定した。その結果、比較例2−2ではウエーハ上に平均厚さが47.7μmの保護膜を形成できたものの、膜厚の均一性は±27.9%にとどまり、要求される均一性を満たすことができなかった。得られた保護膜に対して実施例1−1と同様にして露光およびエッチングを行った。その結果、溝の側壁面に段が形成されることはなかったものの、溝の底部に残った保護膜の厚さは1.809〜6.263μmであった。本比較例においては、膜厚およびエッチング状態共に良好に得ることがでなかった。
【0103】
(比較例2−3)
上述した実施例2の塗布装置を用いて、ウエーハ上に目標膜厚を50μmとした保護膜(ポリアミドを主成分とする保護膜)の形成工程を実施した。ただし、比較例2−3においては、保護膜の形成前に塗布ヘッドの温度を35℃に設定したものの、保護膜の形成工程中は塗布ヘッドの温度管理を実施しなかった。ただし、塗布ヘッドの温度測定のみは実施した。圧電素子への印加電圧は64%に設定した。印加電圧64%での吐出量は168.5ng/dotであった。この吐出量をもとに、塗布速度は21mm/sに設定した。圧電素子の駆動周波数は、1kHzに設定した。
【0104】
比較例2−3においては、ウエーハに塗布液を塗布している間に、圧電素子の発熱の影響を受けて塗布ヘッドが加熱された結果、塗布ヘッドの温度(最大温度)は36.6℃まで上昇した。その際に、塗布ヘッド内の塗布液の粘度、つまり塗布液の吐出時の粘度が低下し、ノズルからの塗布液の吐出量が式(3)で規定される上限を超えてしまった。その温度における塗布液の推定粘度は62.5mPa・sである。さらに、そのときの吐出量は196.4ng/dotであった。
【0105】
その結果、比較例2−3ではウエーハ上に形成された保護膜の平均厚さが53.1μmとなり、さらに膜厚の均一性は±25.1%にとどまり、要求される均一性を満たすことができなかった。得られた保護膜に対して実施例1−1と同様にして露光およびエッチングを行った。その結果、溝の側壁面に段が形成されることはなかったものの、溝の底部に残った保護膜の厚さは0.973〜4.873μmであった。本比較例においては、膜厚およびエッチング状態共に良好に得ることがでなかった。
【0106】
(実施例3)
実施例1と同様に、塗布液として25℃における粘度が90mPa・sであるポリアミド溶液(固形分濃度:26.5%)を用意した。このような塗布液を用いて、塗布ヘッドの設定温度を40℃(実管理温度:39.4℃)として、温度調整機構により塗布ヘッドの温度を調整しつ、圧電素子に対する印加電圧とノズルから吐出される塗布液の吐出量との関係を実測した。塗布ヘッドとしては、100個のノズルおよび圧電素子を有するものを使用した。その結果を図12に示す。塗布液の吐出量は実施例1同様に測定した。
【0107】
図12に示す圧電素子への印加電圧と塗布液の吐出量との実測データにおいて、A値は49.4、B値は66.5であった。さらに、実測データのグラフから近似直線を求めたところ、y=10.52x−145.2であった。この近似直線の式からy切片を+13%とした式とy切片を−13%とした式を求めた。これらの結果を式(1)〜(4)に当てはめると、以下の通りとなる。
式(1):x=49.4
式(2):x=66.5
式(3):y=10.52x−126.3
式(4):y=10.52x−164.1
【0108】
図12から明らかなように、塗布ヘッドの設定温度を40℃とし、温度調整機構により実管理温度39.4℃で塗布ヘッドの温度を一定に調整した場合、圧電素子に対する印加電圧とノズルから吐出される塗布液との関係が式(1)〜(4)で規定される4つの直線で囲われる領域内に制御されていることが分かる。
【0109】
(実施例3−1)
上述した実施例3の塗布装置(塗布ヘッドの実管理温度:39.4℃)を用いて、ウエーハ上に目標膜厚を50μmとした保護膜(ポリアミドを主成分とする保護膜)を形成した。ヘッド温度(39.4℃)における塗布液の推定粘度は57mPa・sである。実施例3−1においては、圧電素子への印加電圧は52%に設定した。印加電圧52%での吐出量は、125.1ng/dotであった。塗布速度は、16mm/sに設定した。圧電素子の駆動周波数は、1kHzに設定した。このような条件で得られた保護膜の厚さを測定した。その結果、実施例3−1で得られた保護膜の平均厚さは48.8μmであり、また膜厚の均一性は±19.5%であった。得られた保護膜に対して実施例1−1と同様にして露光およびエッチングを行った。その結果、段の無い側壁面を有する溝が得られ、溝の底部に残った保護膜の厚さは0.008〜0.038μmであり、無視できる程度の膜厚とすることができた。本実施例においては、膜厚およびエッチング状態共に良好な結果を得ることができた。
【0110】
(実施例3−2)
上述した実施例3の塗布装置(塗布ヘッドの実管理温度:39.4℃)を用いて、ウエーハ上に目標膜厚を50μmとした保護膜(ポリアミドを主成分とする保護膜)を形成した。実施例3−2においては、圧電素子への印加電圧は57%に設定した。印加電圧57%での吐出量は、153.7ng/dotであった。塗布速度は、19mm/sに設定した。圧電素子の駆動周波数は、1kHzに設定した。このような条件で得られた保護膜の厚さを測定した。その結果、実施例3−2で得られた保護膜の平均厚さは50.4μmであり、また膜厚の均一性は±18.8%であった。得られた保護膜に対して実施例1−1と同様にして露光およびエッチングを行った。その結果、段の無い側壁面を有する溝が得られ、溝の底部に残った保護膜の厚さは0.008〜0.033μmであり、無視できる程度の膜厚とすることができた。本実施例においては、膜厚およびエッチング状態共に良好な結果を得ることができた。
【0111】
(実施例3−3)
上述した実施例3の塗布装置(塗布ヘッドの実管理温度:39.4℃)を用いて、ウエーハ上に目標膜厚を50μmとした保護膜(ポリアミドを主成分とする保護膜)を形成した。実施例3−3においては、圧電素子への印加電圧は62%に設定した。印加電圧62%での吐出量は、178.5ng/dotであった。塗布速度は、22mm/sに設定した。圧電素子の駆動周波数は、1kHzに設定した。このような条件で得られた保護膜の厚さを測定した。その結果、実施例3−3で得られた保護膜の平均厚さは49.1μmであり、また膜厚の均一性は±19.1%であった。得られた保護膜に対して実施例1−1と同様にして露光およびエッチングを行った。その結果、段の無い側壁面を有する溝が得られ、溝の底部に残った保護膜の厚さは0.011〜0.056μmであり、無視できる程度の膜厚とすることができた。本実施例においては、膜厚およびエッチング状態共に良好な結果を得ることができた。
【0112】
(比較例3−1)
上述した実施例3の塗布装置(塗布ヘッドの実管理温度:39.4℃)を用いて、ウエーハ上に目標膜厚を50μmとした保護膜(ポリアミドを主成分とする保護膜)の形成工程を実施した。ただし、比較例3−1においては、圧電素子への印加電圧を上述した式(1)で規定される印加電圧よりも低い電圧である48%に設定した。印加電圧48%での吐出量は、式(1)〜(4)に囲まれる領域から外れているので、近似直線から算出した107.3ng/dotとし、塗布速度は13mm/sに設定した。圧電素子の駆動周波数は、1kHzに設定した。その結果、比較例3−1では塗布ヘッドのノズルから塗布液を吐出させることができず、保護膜を形成することができなかった。
【0113】
(比較例3−2)
上述した実施例3の塗布装置(塗布ヘッドの実管理温度:39.4℃)を用いて、ウエーハ上に目標膜厚を50μmとした保護膜(ポリアミドを主成分とする保護膜)の形成工程を実施した。ただし、比較例3−2においては、圧電素子への印加電圧を上述した式(2)で規定される印加電圧よりも高い電圧である68%に設定した。印加電圧68%での吐出量は、式(1)〜(4)に囲まれる領域から外れているので、近似直線から算出した212.5ng/dotとし、塗布速度は27mm/sに設定した。圧電素子の駆動周波数は、1kHzに設定した。その結果、比較例3−2ではウエーハ上に平均厚さが48.2μmの保護膜を形成できたものの、膜厚の均一性は±26.9%にとどまり、要求される均一性を満たすことができなかった。得られた保護膜に対して実施例1−1と同様にして露光およびエッチングを行った。その結果、溝の側壁面に段が形成されることはなかったものの、溝の底部に残った保護膜の厚さは0.928〜6.038μmであった。本比較例においては、膜厚およびエッチング状態共に良好に得ることができなかった。
【0114】
(比較例3−3)
上述した実施例3の塗布装置を用いて、ウエーハ上に目標膜厚を50μmとした保護膜(ポリアミドを主成分とする保護膜)の形成工程を実施した。ただし、比較例3−3においては、保護膜の形成前に塗布ヘッドの温度を40℃に設定したものの、保護膜の形成工程中は塗布ヘッドの温度管理を実施しなかった。ただし、塗布ヘッドの温度測定のみは実施した。圧電素子への印加電圧は57%に設定した。印加電圧57%での吐出量は153.7ng/dotであった。この吐出量をもとに、塗布速度は19mm/sに設定した。圧電素子の駆動周波数は、1kHzに設定した。
【0115】
比較例3−3においては、ウエーハに塗布液を塗布している間に、圧電素子の発熱の影響を受けて塗布ヘッドが加熱された結果、塗布ヘッドの温度(最大温度)は41.7℃まで上昇した。その際に、塗布ヘッド内の塗布液の粘度、つまり塗布液の吐出時の粘度が低下し、ノズルからの塗布液の吐出量が式(3)で規定される上限を超えてしまった。その温度における塗布液の推定粘度は52.8mPa・sである。さらに、そのときの吐出量は180.9ng/dotであった。
【0116】
その結果、比較例3−3ではウエーハ上に形成された保護膜の平均厚さが52.7μmとなり、さらに膜厚の均一性は±23.3%にとどまり、要求される均一性を満たすことができなかった。得られた保護膜に対して実施例1−1と同様にして露光およびエッチングを行った。その結果、溝の側壁面に段が形成されることはなかったものの、溝の底部に残った保護膜の厚さは2.008〜7.038μmであった。本比較例においては、膜厚およびエッチング状態共に良好に得ることができなかった。
【0117】
(実施例4)
実施例1と同様に、塗布液として25℃における粘度が90mPa・sであるポリアミド溶液(固形分濃度:26.5%)を用意した。このような塗布液を用いて、塗布ヘッドの設定温度を25℃(実管理温度:24.3℃)として、温度調整機構により塗布ヘッドの温度を調整しつ、圧電素子に対する印加電圧とノズルから吐出される塗布液の吐出量との関係を実測した。塗布ヘッドとしては、100個のノズルおよび圧電素子を有するものを使用した。その結果を図13に示す。塗布液の吐出量は実施例1同様に測定した。
【0118】
図13に示す圧電素子への印加電圧と塗布液の吐出量との実測データにおいて、A値は73.3、B値は95.2であった。さらに、実測データのグラフから近似直線を求めたところ、y=9.11x−189.4であった。この近似直線の式からy切片を+13%とした式とy切片を−13%とした式を求めた。これらの結果を式(1)〜(4)に当てはめると、以下の通りとなる。
式(1):x=73.3
式(2):x=95.2
式(3):y=9.11x−164.8
式(4):y=9.11x−214.0
【0119】
図13から明らかなように、塗布ヘッドの設定温度を25℃とし、温度調整機構により実管理温度24.3℃で塗布ヘッドの温度を一定に調整した場合、圧電素子に対する印加電圧とノズルから吐出される塗布液との関係が式(1)〜(4)で規定される4つの直線で囲われる領域内に制御されていることが分かる。ただし、一部のノズルで塗布液の不吐出が認められた。不吐出の状態は、塗布ヘッドに形成されている100個のノズル全てにおいて発生しているものではなく、1〜6個程度のノズルで発生しているものである。
【0120】
(実施例4−1)
上述した実施例4の塗布装置(塗布ヘッドの実管理温度:24.3℃)を用いて、ウエーハ上に目標膜厚を50μmとした保護膜(ポリアミドを主成分とする保護膜)を形成した。実施例4−1においては、圧電素子への印加電圧は80%に設定した。印加電圧80%での吐出量は、175.3ng/dotであった。塗布速度は、22mm/sに設定した。圧電素子の駆動周波数は、1kHzに設定した。このような条件で得られた保護膜の厚さを測定した。その結果、実施例4−1で得られた保護膜の平均厚さは51.3μmであり、また膜厚の均一性は±19.6%であった。
【0121】
実施例1〜3と較べると膜厚の均一性が劣っている。これは一部のノズルで不吐出が発生しているためと考えられる。このような点から、保護膜の形成に用いる塗布ヘッドにおいては、100個全てのノズルから塗布液が吐出でき、連続した吐出性を満足させることがより好ましいことが分かる。ただし、実施例4−1で得た保護膜の膜厚均一性は、前述した比較例より優れており、保護膜の形成装置および形成工程として実用可能なレベルであることが分かる。また、得られた保護膜に対して実施例1−1と同様にして露光およびエッチングを行った。その結果、段の無い側壁面を有する溝が得られ、溝の底部に残った保護膜の厚さは0.031〜0.083μmであり、おおむね無視できる程度の膜厚とすることができた。よって、本実施例においては、膜厚およびエッチング状態共に良好な結果を得ることができた。
【0122】
上述した実施例1〜4および比較例1〜3における塗布液の塗布条件を表2に、また得られた塗布膜の測定結果を表3にまとめて示す。
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
表3から明らかなように、実施例1〜4で形成した塗布膜は、いずれも目標膜厚(50μm)に近い膜厚を有していると共に、膜厚の均一性に優れていることが分かる。さらに、得られた塗布膜(保護膜)のエッチング後の残厚も良好である。これらに対して、比較例1−1、2−1、3−1では塗布膜を形成することができず、また比較例1−2、2−2、3−2では塗布膜を形成することができたものの、膜厚バラツキが大きいものであった。温度管理をしていない比較例1−3、2−3、3−3ではヘッド温度が変化し、これにより吐出量の変動およびそれに基づく膜厚バラツキが発生した。比較例1〜3においては、いずれも膜厚の均一性に優れる塗布膜を得ることはできなかった。
【0125】
次に、上限式(式(3)に相当)および下限式(式(4)に相当)について、図14を用いて説明する。図14は、実施例1〜4で得た圧電素子への印加電圧と塗布液の吐出量の実測データを標準化したグラフである。なお、標準化は、実施例1〜4の印加電圧と吐出量の実測データの中で、共通して得られた吐出量とその時の印加電圧を零点に置き換えることで行った。そして、これら標準化したデータから近似直線を求め、この近似直線から最も離れたデータより上限式(式(3)に相当)および下限式(式(4)に相当)を求めた。図14において、近似直線から最も離れたデータは(4.81,67.2)のデータである。よって、この点(4.81,67.2)を通り、近似直線に平行な直線の式を上限式とする。近似直線は、y=10.25x−1.8である。従って、上限式は、y=10.25x+17.9となる。一方、下限式の直線は、上限式で規定される直線に対して近似直線と線対象の位置関係にある直線とする。よって、下限式は、y=10.25x−21.5となる。
【0126】
次に、実施例1〜4の実測データから得られた近似直線のy切片の平均値(y切片ave)を求める。y切片ave=(−155.2+(−148.1)+(−145.2)+(−189.4))/4=−159.5である。この平均値(y切片ave)を標準化したデータから得られる近似直線の仮想のy切片とする。また、上限式および下限式と近似直線のy切片の値から近似直線と上限式の差、および近似直線と下限式との差は、19.7である。標準化したデータの近似直線の仮想のy切片は、−159.5であるから、上限式および下限式は、近似直線のy切片の値に対して、19.7/159.5×100=12.4%の位置にある。つまり、標準化した全てのデータは、近似直線に対して±13%以内の領域に入っていることとなる。
【0127】
本願発明者等は、実施例1〜4の実測データを標準化することにより、上述の実施例で説明したように、印加電圧と吐出量との関係が制御性よく良好に得られる上限式と下限式の幅、つまり式(3)と式(4)の幅を見出したのである。すなわち、圧電素子に対する印加電圧とノズルから吐出される塗布液との関係を式(1)〜(4)で規定される4つの直線で囲われる領域内に制御することによって、1回の塗布で10μm以上の塗布膜を得た上で、膜厚の均一性を向上させることが可能になる。
【0128】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0129】
1…塗布装置、2…半導体ウエーハ、3…ステージ、4…塗布ヘッド、5…給液機構、6…温度調整機構、7…移動機構、8…ノズル、9…ノズルプレート、11…共通流路、12…ヘッド本体、13…ダイヤフラム、14…圧電素子、15…駆動部、16…制御部、19…供給タンク、29…容器、30…熱交換部、31…循環系。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14