(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6600515
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】マーキングペン
(51)【国際特許分類】
B43K 8/02 20060101AFI20191021BHJP
B43K 27/08 20060101ALI20191021BHJP
A45D 34/04 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
B43K8/02 150
B43K27/08
A45D34/04 530
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-179898(P2015-179898)
(22)【出願日】2015年9月11日
(65)【公開番号】特開2017-52248(P2017-52248A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】小林 武
【審査官】
砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−176527(JP,A)
【文献】
実公昭34−5310(JP,Y1)
【文献】
実公昭34−1019(JP,Y1)
【文献】
実開昭50−27934(JP,U)
【文献】
特開2002−120491(JP,A)
【文献】
米国特許第4610556(US,A)
【文献】
特開2002−283787(JP,A)
【文献】
特開2009−184299(JP,A)
【文献】
実開昭59−146183(JP,U)
【文献】
特開平7−290888(JP,A)
【文献】
特開平10−151890(JP,A)
【文献】
実開昭50−102442(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 5/00− 8/24
B43K 19/02
B43K 21/00−27/12
B43K 29/02
A45D 33/00−40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のペン体を有し、軸筒に設けたインク貯蔵部内のインクをペン体に供給するマーキングペンにおいて、
ペン体はインクを導通する材料からなり、
複数のペン体同士が直接接して前記インク貯蔵部内のインクがペン体に導通可能に連結され、複数のペン体がペン体毎にキャップによってペン先を隠蔽・開放するようになっており、複数のペン体のうちで一つがキャップを軸筒に対して回転方向に捻ることによりペン先が開放し、複数のペン体のうちで他の一つが軸筒から軸線方向に引くことによりペン先が開放する構造になっていると共にキャップの外周には稜線を突出形成されていることを特徴とするマーキングペン。
【請求項2】
前記複数のペン体の毛細管力を異ならせ、インク貯蔵部に近いペン体の毛細管力をインク貯蔵部から遠いペン体の毛細管力より高いものとすることを特徴とする請求項1に記載のマーキングペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペン体にインクを送って筆記する筆記具や化粧品を塗布する塗布具等のマーキングペンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マーキングペンには、ペン体を複数備えて、ペン先の劣化などに応じてペン体を交替し使用できるようにしたものがある。
【0003】
例えば、実開平1−48294号公報(特許文献1)記載の筆や実公平5−28069号公報(特許文献2)記載の筆記具においては、インク吸蔵体とペン体を短い軸筒体に収容して、その軸筒体を縦列に接続し、所望するペン体を先端部に繋いで使用できるようにしている。しかしながら、各筆記体では乾燥等により、部分的に筆記不能となってしまうことがあり、使い勝手が悪い。
【0004】
特開昭60−94398号公報(特許文献3)記載の筆記具では、ペン体が直結しているが、ボールペン等ではインク導通供給が十分でないおそれがある。
【0005】
また、特開2000−238489号公報(特許文献4)記載の筆記具では、ペン体を取り外す際に、持つ場所によっては、使用者の予期せぬペン先を選択するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平1−48294号公報
【特許文献2】実公平5−28069号公報
【特許文献3】特開昭60−94398号公報
【特許文献4】特開2000−238489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、複数のペン体を縦列で設けて、ペン先を簡単に交換でき、ペン先のインクが乾きにくいマーキングペンを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数のペン体を有し、軸筒に設けたインク貯蔵部内のインクをペン体に供給するマーキングペンにおいて、
ペン体はインクを導通する材料からなり、
複数のペン体同士が直接接して前記インク貯蔵部内のインクがペン体に導通可能に連結されていることを特徴とするマーキングペンである。
【0009】
本発明において、複数のペン体がペン体毎にキャップによってペン先を隠蔽・開放するようになっており、
ペン先を閉鎖する各キャップが互いに異なる方向で開放する構造になっていることが好適である。
【0010】
また、本発明において、複数のペン体のうちで一つがキャップを軸筒に対して回転方向に捻ることによりペン先が開放し、複数のペン体のうちで他の一つが軸筒から軸線方向に離して引くことによりペン先が開放する構造になっていることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明において、複数のペン体同士が直接接して前記インク貯蔵部内のインクがペン体に導通可能に連結されているので、インクを十分に導通可能として乾きにくくなる。
【0012】
また、本発明において、複数のペン体のうちで一つがキャップを軸筒に対して回転方向に捻ることによりペン先が開放し、複数のペン体のうちで他の一つが軸筒から軸線方向に離して引くことによりペン先が開放する構造になっているものとして、取り外し方向を変える構造にすれば、ペン先の選択が容易かつ取り外し間違えを無くすことができる等の優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るマーキングペンのキャップした状態の構成説明図であり、(a)が側面図、(b)が同状態の縦断面図、(c)が(a)から軸中心に90°回転させた状態の側面図、(d)が(c)の状態の縦断面図である。
【
図2】
図1のマーキングペンの先端のキャップを回転させて外し、第1のペン先が露出した状態の説明図であり、(a)〜(d)は
図1の各図と同様状態を示す。
【
図3】
図2の状態から先軸キャップを外して第2のペン先を露出した状態の説明図であり、(a)〜(d)は
図1の各図と同様状態を示す。
【
図4】
図1の状態から、キャップ及び先軸キャップを先軸から引き離して、第2のペン先を露出させた状態を示す図である。(a)〜(d)は
図1の各図と同様状態によって示す。
【
図5】
図2で外したキャップの部品図であり、(a)が軸線方向の前方からの視図、(b)が前方からの斜視図、(c)が稜線を下にした側面図、(d)が稜線側から見た側面図、(e)が稜線を上にした断面図、(f)が(e)の状態の側面図、(g)が後方からの視図、(h)が後方からの斜視図である。
【
図6】
図3で外した先軸キャップの部品図であり、(a)が軸線方向の前方からの視図、(b)が前方からの斜視図、(c)が稜線を手前側にした側面図、(d)が縦断面図、(e)が稜線を上にした側面図、(f)が(e)の状態の縦断面図、(g)後方からの視図、(h)が後方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を添付図面の参照にて説明する。
【0015】
図1〜
図4は、実施形態のマーキングペンの説明図、
図5がキャップ体、
図6が先軸キャップの部品図である。
【0016】
図1〜
図4に示すようにマーキングペンは、二つ(複数の例)ペン体10、12を有し、軸筒14内空間に設けたインク貯蔵部16内のインクを各ペン体10、12に供給するものである。
【0017】
実施形態では、軸筒14
の先端部14aに設ける先軸キャップ20は、先軸22を覆って着脱自在に嵌着している。該先軸22の後部が軸筒14の先端部14aに被せて螺合・結合して固定している。軸筒14の先端部14a内に弁構造24が装着されている。
【0018】
〔第1のペン体10、第2のペン体12〕
二つのペン体(第1のペン体10、第2のペン体12)はインクを導通する材料からなる。第1のペン体10は先端が弾頭形状に先細の形状であり、第2のペン体12は左右両側が削られて板状に先細になる先端形状である。第1のペン体10及び第2のペン体12は、材質は天然繊維、合成繊維の束や連続多孔体や樹脂製の成形芯等種々に使用することができる。
【0019】
先軸キャップ20を先軸22に嵌めた状態では、二つのペン体(第1のペン体10、第2のペン体12)同士が直接接して前記インク貯蔵部16内のインクがペン体(第1のペン体10、第2のペン体12)に導通可能に連結されている。
【0020】
また、二つのペン体(第1のペン体10、第2のペン体12)毎にキャップ(キャップ18、先軸キャップ20)によってペン先(第1のペン先10a、第2のペン先12a)を隠蔽・開放するようになっており、各ペン先を閉鎖する各キャップ(キャップ18、先軸キャップ20)が互いに異なる方向で開放する構造になっている。
【0021】
上記の互いに異なる方向で開放する構造として、実施形態においては、上記ペン体(第1のペン体10、第2のペン体12)のうちで一つの第1のペン体10について、キャップ18を軸筒14に対して回転方向に捻ることにより当該ペン先10aを開放する構造とし、また、上記ペン体のうちで他の一つの第2のペン体12について、先軸キャップ20を軸筒14から軸線方向に離して引くことによりペン先12aを開放する構造として実現している。
【0022】
各部を詳細に説明する。
〔キャップ18〕
キャップ18は、
図5に示すように、外側が筒状の外筒で、その外筒の内側に外筒よりも短い筒状の内筒が設けられ、外筒と内筒が先端部の底部で共通して一体になった二重筒状を呈している。また、外筒には、外周面の一部に軸線方向に沿う稜線18aが突出形成されていて、この稜線18aは指にて捻る際の滑り止めの機能を有する。また、外筒の後端18bは中心軸に対して斜めの端縁形状を呈している。
【0023】
なお、キャップ18の内筒と外筒の内部は気密を保つための嵌着部が形成されている。
図1に示すように、当該内筒が先軸キャップ20の先端に嵌着して第1のペン体10の気密を保持し、外筒が先軸キャップ20の外周に嵌着する。
【0024】
〔先軸キャップ20〕
先軸キャップ20は、
図6に示すように、先細い先後に貫通する中空の筒体であり、先端部20aが細く先端部20a内に第1のペン体10を支持するリブが形成されている。第1のペン体10は先軸キャップ20内で進退動可能に設置されている。また、先軸キャップ20の後端部20bが一番太径に段状に太くなる部分であり、その段状面20cは中心軸に対して斜めの端縁形状を呈している。後端部20bの外周には、稜線20dが形成されている。
【0025】
前記キャップ18を先軸キャップ20に嵌めているときに、キャップ18の後端18bが先軸キャップ20の段状面20cに当接している。前記キャップ18を先軸キャップ20に対して捻ることで、キャップ18の後端18bが先軸20の段状面20cに対して滑り当たりキャップ18が先軸キャップ20から離れる方向に力が生じてそれらが離れる。
図2に示すように、キャップ18が外れると、第1のペン体10のペン先10aが露出する。
先軸キャップ20の後端部20bは、先軸22全体の外周に着脱自在に嵌着している。
【0026】
〔先軸22、弁構造24〕
先軸22は、
図3に示すように、先端部22a、中央部22b、後端部22cが順に段状に拡径した、概略管状構造であり、先端部22aに第2のペン体12が突出して進退動可能に設置されている。中央部22b内には、インクを含浸可能なインク保留体26があり、後端部22c内に弁構造24が配置される。
【0027】
弁構造24は、
図2、
図3に示すように、先後の開口が連通する弁座24aと、その弁座24aに対して進退動して開閉する弁体24bと、当該弁体24bを先方に付勢するスプリング24cとを有している。
【0028】
弁体24bは、先端に前記第2のペン体12の後端部が当接しており、第2のペン体12が後方に移動すると、弁座24aが開口して、その弁座24a内をインクが流通して第2のペン体12に供給されるようになっている。
【0029】
〔インク貯蔵部16〕
インク貯蔵部16は、軸筒14内部の空間にインクを貯留する構造であり、当該空間内には、攪拌ボール28を内装してインクの沈降を防止している。顔料等の沈降する成分を含むインクが十分に攪拌できるようにしている。
【0030】
〔マーキングペンの作用〕
本実施形態のマーキングペンにおいては、第1のペン体10の使用以前には、
図1に示すように、キャップ18が先軸キャップ20に被せられていて、第1のペン体10のペン先10aが露出していない。第1のペン体10は第2のペン体12に接しており、インクが流通するようになっている。
【0031】
そして、第1のペン体10の使用に際して、キャップ18を捻って先軸キャップ20から取り去り、
図2に示すように、第1のペン体10のペン先10aを露出させる。
【0032】
この場合、複数のペン体10,12同士が直接接して、具体的には、第1のペン体10後端が第2のペン体12先端に接しており、インクが流通するようになっている。インクを流通させるには、第1のペン体10を紙面等の当接面に押圧して第1のペン体10を後退させて第2のペン体12を介して、弁機構24の弁体24bが弁座24aに対して後退させ開弁させる。インクは弁体24aの先方の第2のペン体12から第1のペン芯10に含浸・誘導されてペン先10aから筆記や塗布が可能なる。
【0033】
上記構成によって前記インク貯蔵部16内のインクが第2のペン体12を介して第1のペン体10に導通可能に連結されているので、第1のペン体10にインクを十分に導通可能とすることができる。したがって、ペン体10のペン先10aとペン体12のペン先12aが共に乾きにくい。
【0034】
また、軸筒14に対して先軸キャップ20を軸線方向に離れる方向に引くことにより、
図3に示すように、先軸キャップ20が先軸22から離れて、取り去られる。先軸22は、軸筒14に対してネジ結合しているので、固定状態になっている。
【0035】
インクを流通させるには、第2のペン体12を紙面等の当接面に押圧して第1のペン体12を後退させて、弁機構24の弁体24bが弁座24aに対して後退させ開弁させる。インクは弁体24aの先方の第2のペン体12に含浸・誘導されてペン先10aから筆記や塗布が可能なる。
【0036】
また、実施形態では、複数のペン体(第1のペン体10、第2のペン体12)のうちで一つの第1のペン体10について、キャップ18を軸筒14に対して回転方向に捻ることにより当該ペン先10aを開放する構造とし、キャップ18を軸筒14に対して回転方向に捻ることによりペン先10aが開放し、複数のペン体のうちで他の一つが軸筒14から軸線方向に離して引くことによりペン先12aが開放する構造になっているので、取り外し方向を変える構造であるので、ペン先10a、12aの選択が容易かつ取り外し間違えを無くすことができる。
【0037】
なお、上記実施形態においては、複数のペン体として第1のペン体10と第2のペン体2と二つのペン体を上げたが、これは一例であり、三つ以上のペン体を設けてもよい。また、各ペン体の毛細管力を異ならせて筆記の際に違いを分かりやすくしてもよい。さらにインク貯蔵部に近いペン体の毛細管力をインク貯蔵部から遠いペン体の毛細管力より高いものとすることで、インク貯蔵部から遠いペン体のインク供給を安定させることができる。
【0038】
また、複数のペン体を互いに異なる方向で開放する構造として、上記ペン体(第1のペン体10、第2のペン体12)のうちで一つの第1のペン体10について、キャップ18を軸筒14に対して回転方向に捻ることにより当該ペン先10aを開放する構造とし、また、上記ペン体のうちで他の一つの第2のペン体12について、先軸キャップ20を軸筒14から軸線方向に離して引くことによりペン先12aを開放する構造として実現している。
【0039】
もちろんこの構造は一例であり、捻る構造と引く構造を逆に設定しても良い。また、両者とも捻ると開放する構造であって、逆の回転方向に捻ると開放する構造としたり、両者とも引く構造として、キャップ18及び先軸キャップ20の間の摩擦係数と、先軸キャップ20及び先軸26間の摩擦係数を異なる構造としたりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のマーキングペンは、筆記用、塗布用以外にも化粧品と塗布する化粧用等種々に使用できる。
【符号の説明】
【0041】
10 第1のペン体
12 第2のペン体
14 軸筒
16 インク貯蔵部
18 キャップ
20 先軸キャップ
22 先軸
24 弁機構