(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のフィルタ層において、前記第1帯域と前記第2帯域とは、前記複数の発光部から出射された各色光に対応する波長帯域をそれぞれ狭めて透過させるように設定されている
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。尚、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(不要光除去用および視野角補正用のフィルタ層を有する光学フィルタを備えた表示装置の例)
2.適用例(電子機器の例)
【0016】
<実施の形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る表示装置1の断面構成を表したものである。表示装置1は、駆動基板11上に、複数の有機電界発光(EL:Electro luminescence)素子10R,10G,10Bを備えたものである。有機EL素子10Rは、第1電極12上に、赤色発光層13Rおよび第2電極14をこの順に有している。有機EL素子10Gは、第1電極12上に、緑色発光層13Gおよび第2電極14をこの順に有している。有機EL素子10Bは、第1電極12上に、青色発光層13Bおよび第2電極14をこの順に有している。有機EL素子10R,10G,10Bは、例えば上面発光方式(トップエミッション方式)の発光装置である。但し、下面発光方式(ボトムエミッション方式)の発光装置であってよい。
【0017】
有機EL素子10R,10G,10Bはそれぞれ、互いに異なる色、例えばR(赤),G(緑),B(青)の3原色の色光(光LR,LG,LB)を出射するものである。この表示装置1は、これらの有機EL素子10R,10G,10Bを含むR,G,Bの3つ画素(サブピクセル)の組を1ピクセルとして、加法混色によりカラーの映像表示を行うものである。尚、本実施の形態における有機EL素子10R,10G,10Bが、本開示の「発光部」の一具体例に相当する。以下、各部の構成について説明する。
【0018】
駆動基板11は、例えばガラスやプラスチックなどの基板上に、有機EL素子10R,10G,10Bを駆動するための電子回路が形成されたものである。
【0019】
第1電極12は、例えば有機EL素子10R,10G,10B毎に(画素毎に)設けられ、例えば赤色発光層13R、緑色発光層13Gおよび青色発光層13Bのそれぞれに正孔を注入する電極として機能するものである。第1電極12は、光反射性を有する導電材料、例えば銀(Ag)およびアルミニウム(Al)などの金属元素の単体または合金から構成されている。この第1電極12は、駆動基板11の電子回路内に形成された画素回路と電気的に接続されている。第1電極12上の画素間の領域には、絶縁膜13が形成されている。この絶縁膜13により、画素毎に設けられた第1電極12同士が電気的に分離されている。
【0020】
赤色発光層13R、緑色発光層13Gおよび青色発光層13Bはそれぞれ、第1電極12および第2電極14を通じて注入される電子と正孔との再結合により励起子を生じて発光する有機化合物を含むものである。尚、ここでは図示していないが、これらの赤色発光層13R、緑色発光層13Gおよび青色発光層13Bと第1電極12とのそれぞれの間には、例えば正孔輸送層(HTL:Hole Transport Layer)および正孔注入層(HIL:Hole Injection Layer)が形成されていてもよい。また、赤色発光層13R、緑色発光層13Gおよび青色発光層13Bと第2電極14とのそれぞれの間には、電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer)および電子注入層(EIL:Electron Injection Layer)などが形成されていても構わない。
【0021】
第2電極14は、例えば、各画素に共通の層として設けられ、赤色発光層13R、緑色発光層13Gおよび青色発光層13Bのそれぞれに電子を注入する電極として機能するものである。この第2電極14の構成材料としては、光透過性を有する導電材料、例えばインジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)およびインジウム・ガリウム・亜鉛酸化物(IGZO)などの透明導電膜が挙げられる。
【0022】
この第2電極14上に、保護膜15と封止層16とを介して対向基板18が配置されている。
【0023】
保護膜15は、例えば窒化シリコンおよび酸化シリコンなどの無機材料を含んで構成されている。封止層16は、例えば熱硬化性または紫外線硬化性などの封止樹脂からなる。対向基板18は、ガラスやプラスチック等の光透過性を有する基板材料から構成されている。
【0024】
本実施の形態では、上記表示装置1における有機EL素子10R,10G,10Bの光出射側に光学フィルタ17が設けられている。光学フィルタ17は、ここでは、対向基板18と封止層16との間に設けられているが、この光学フィルタ17の設置位置は、これに限定されるものではない。有機EL素子10R,10G,10Bの光出射側であれば、いずれの位置に設けられていてもよい。例えば保護膜15と封止層16との間に設けられていてもよいし、対向基板18上に設けられていてもよい。また、光学フィルタ17は、後述するように複数の屈折率層を有するが、これら複数の屈折率層が、1箇所に(纏めて)設けられていてもよいし、2箇所以上にわたって(分割されて)設けられていてもよい。
【0025】
光学フィルタ17は、入射した光を、その波長帯域のうちの一部の帯域を選択的に除去しつつ、透過させる光学特性を有するものである。この光学フィルタ17は、各画素(有機EL素子10R,10G,10B)に共通の層として、全画素にわたって連続して配置されている。
【0026】
図2は、光学フィルタ17の具体的な構成例を表したものである。
図3は、光学フィルタ17を構成する各フィルタ層の詳細構成例を示したものである。
【0027】
図2に示したように、光学フィルタ17は、例えば、基板170上に、不要光除去用フィルタ層171(第1のフィルタ層)と、視野角補正用フィルタ層172(第2のフィルタ層)とを積層したものである。但し、これらの不要光除去用フィルタ層171と視野角補正用フィルタ層172との積層順序は特に限定されない。また、不要光除去用フィルタ層171と視野角補正用フィルタ層172とはそれぞれ、後述するように1または複数の誘電体多層膜ユニットUを含んで構成されるが、不要光除去用の誘電体多層膜ユニットUと、視野角補正用の誘電体多層膜ユニットUとが混在して積層されていてもよい。また、不要光除去用フィルタ層171と視野角補正用フィルタ層172とが、基板170を間にして(基板170を挟むように)設けられていてもよい。基板170は、対向基板18であってもよいし、対向基板18とは別途用意された基板であってもよい。
【0028】
(光学フィルタ17の構成)
不要光除去用フィルタ層171と視野角補正用フィルタ層172とはそれぞれ、1または複数の誘電体多層膜ユニットU(誘電体多層膜)を含んで構成され、光の干渉効果を利用して、後述する光学特性を発揮するものである。具体的には、誘電体多層膜ユニットUは、互いに屈折率の異なる複数の屈折率層が隣接して積層されたものである。一例としては、
図3に示したように、低屈折率材料からなる低屈折率層170aと高屈折材料からなる高屈折率層170bとがそれぞれ複数積層されている。より詳細には、例えば高屈折率層170bを低屈折率層170aで挟んだ構造を積層単位U1として、この積層単位U1が複数積み重ねられた構成を有している。
【0029】
ここで、積層単位U1における低屈折率層170aの光路長(光学的距離)d
1は、干渉光の中心波長λ
0の1/4(λ
0/4)に相当する低屈折率層170aの光路長をLとすると、例えば式(1)のように表すことができる。一方、高屈折率層170bの光路長d
2は、中心波長λ
0の1/4に相当する高屈折率層170bの光路長をHとすると、例えば式(2)のように表すことができる。不要光除去用フィルタ層171と視野角補正用フィルタ層172とでは、このような条件式を満たす積層単位U1が積層数(繰り返し数)kで積層されている。但し、n,m,kは、任意の整数とする。尚、光路長d
1が高屈折率層170bの光路長とされ、光路長d
2が低屈折率層170aの光路長とされてもよい。
d
1=[(4n+1)/2]・L ………(1)
d
2=(2m+1)・H ………(2)
【0030】
一例を挙げると、n=m=1の場合には、積層単位U1を有する誘電体多層膜ユニットUは、光学フィルタ17によって選択的に除去される帯域(後述の帯域b2,b3)毎に設計することができる。この場合、不要光除去用フィルタ層171では、その分光透過率において設定される帯域b2の数と同数の誘電体多層膜ユニットUが積層される。同様に、視野角補正用フィルタ層172では、その分光透過率において設定される帯域b3の数に対応する誘電体多層膜ユニットUが積層される。但し、nおよびmの組み合わせによっては、1つの誘電体多層膜ユニットUにおいて、複数の帯域b2を含む分光透過率や、帯域b2および帯域b3の両方を含む分光透過率を設計することが可能である。
【0031】
光学フィルタ17には、上記の不要光除去用フィルタ層171と視野角補正用フィルタ層172とに加え、例えばリップル調整用フィルタ層が設けられていても構わない。このリップル調整用フィルタ層は、例えば、「λ
0/8」または「(2j+1)/2λ
0」の膜厚を有している。リップル調整用フィルタ層は、低屈折率層170aおよび高屈折率層170bと同一の材料から構成されていてもよいし、異なる材料から構成されていてもよい。
【0032】
上記積層構造により、各誘電体多層膜ユニットUでは、中心波長λ
0をボトムピークとする帯域b2,b3から透過帯域にかけての立ち上がりがシャープで(急峻で)、かつ透過帯域における透過率が高い(略100%となる)分光透過率を得ることができる。
【0033】
このような誘電体多層膜ユニットUでは、積層される複数の屈折率層(低屈折率層170aおよび高屈折率層170b)の体積平均屈折率が2.0以上であることが望ましい。ここで、干渉の中心波長λ
0は、視野角θの位置において、以下の式(3)で表されるΔλの分だけシフトする。尚、視野角θは、
図4に示したように、光出射面S1に直交する方向(正面方向)を0°として、この正面方向から傾斜した方向(斜め方向)の角度に相当する。また、式(3)中のθ’は、式(4)によって表されるものである。n
aveは、誘電体多層膜ユニットUを構成する各屈折率層の体積平均屈折率であり、式(5)によって表すことができる。但し、n
1を低屈折率層170aの屈折率、n
2を高屈折率層170bの屈折率とする。
Δλ=(cosθ’−1)λ
0 ………(3)
θ'=sin
-1(sinθ/n
ave) ………(4)
n
ave=(n
1・d
1+n
2・d
2)/(d
1+d
2) ………(5)
【0034】
ここで、
図5に模式的に示したように、光学フィルタ17の分光透過率では、視野角θ(>0°)での波形W1’が、視野角0°における波形W1からΔλのシフトを生じる。これは、干渉の中心波長が短波長側にシフトするためである。例えばB光では、視野角θが大きくなるに従って、波形W1が短波長側へシフトすると共に透過率自体も単調減少する。このシフト量Δλが大きくなり過ぎて、波形W1が、入射光(有機EL素子の出射光)の中心波長(波形W0のピーク)から大きく外れるほどシフトしてしまうと、後述する視野角補正用フィルタ層172による効果(視野角特性改善)を得にくくなる。このシフト量Δλを許容範囲内に抑え、視野角補正用フィルタ層172による効果を実効的なものとするために、各屈折率層の体積平均屈折率は、2.0以上であることが望ましい。また、十分な画品位を維持するためには、視野角45°における色度変化(Δu’v’)を0.040以下とすることが望まれるが、これは、体積平均屈折率を2.0以上とすることで実現することができる。
【0035】
誘電体多層膜ユニットUの各屈折率層の構成材料としては、誘電体成膜を可能とする材料、例えば蒸着法、CVD法およびスパッタ法などにより成膜可能なものが挙げられる。一例としては、窒化シリコン(SiN
x)、酸化シリコン(SiO
x)、光透過性を有する金属酸化膜などが挙げられる。例えば、窒化シリコンでは、成膜条件等に応じて、低屈折率から高屈折率まで様々な屈折率を調整することができる。また、金属酸化膜では、屈折率2.0以上の膜を調整し易い。
【0036】
尚、この光学フィルタ17では、外光などの表示光以外の光が入射した場合、そのうちの一部帯域の光が反射されてしまうことから、視認性を低下させることがある。このため、円偏光板が用いられることが望ましい。例えば、表示装置1の光学フィルタ17よりも上方の位置、例えば光学フィルタ17と対向基板18との間の位置(
図1中の位置S1)、または対向基板18上の位置(
図1中の位置S2)に円偏光板が設けられるとよい。但し、表示装置1が、外光が入らない用途で使用されるものであるならば、円偏光板は配置されなくともよい。
【0037】
(光学フィルタ17の光学特性)
図6は、光学フィルタ17の光学特性を説明するための特性図である。不要光除去用フィルタ層171は、上述した誘電体多層膜ユニットUの積層構造により、有機EL素子10R,10G,10Bからそれぞれ出射される色光(LR,LG,LB)のうちの各中心波長を含む帯域(帯域b1)を透過させ、この帯域b1以外の帯域の少なくとも一部に対応する帯域(帯域b2)を選択的に除去する(帯域b2の透過率を低減させる場合も含む)ものである。例えば、可視帯域のうち、Rに対応する波長帯域(620nm以上)と、Gに対応する波長帯域(495nm以上570nm以下程度)と、Bに対応する波長帯域(495nm以下)のうちの中心波長以外の一部の帯域を、干渉効果を利用してブロックするものである。
【0038】
この不要光除去用フィルタ層171の分光透過率は、
図6に示したように、上記のような帯域b1と帯域b2とを含む波形W1(実線)を有している。帯域b1は、有機EL素子10R(または有機EL素子10G,10B)から出射した色光LR(またはLG,LB)の分光スペクトルの波長帯域b0よりも狭い幅を有する(b1<b0)。帯域b2は、波長帯域b0の一部(例えば波形W0の裾野部分)に相当する。また、上述したように、波形W1において、帯域b1,b2間における透過率の立ち上がりはシャープである。このように、不要光除去用フィルタ層171の分光透過率において帯域b1,b2は、例えば、R,G,Bの各色光に対応する波長帯域b0の裾野部分(不要光)を除去し、各波長帯域b0を狭めるように設定されている。
【0039】
帯域b2は、R,G,Bの各波長帯域b0に対してそれぞれ1箇所(中心波長を挟んで左右のどちらかの裾野部分)または2箇所(左右両方の裾野部分)に設定される。従って、不要光除去用フィルタ層171の分光透過率において、帯域b2は、例えば1〜6箇所に設定することができる。帯域b2は、色光LR,LG,LBのスペクトル形状等に応じて、適切な箇所に設定されていればよい。尚、波形W1のうちの帯域b2のボトムピークとなる波長が、上述の誘電体多層膜における干渉の中心波長λ
0に相当する。
【0040】
視野角補正用フィルタ層172は、上記のような不要光除去用フィルタ層171を透過する、複数の色光(ここではR,G,Bの3色の色光)のうちの少なくとも1つの色光の帯域(帯域b1)のうちの一部に対応する帯域(帯域b3)の透過率を低減させるものである。
【0041】
即ち、視野角補正用フィルタ層172の分光透過率は、
図6に示したように、不要光除去用フィルタ層171を透過する帯域b1の一部に対応する帯域b3の透過率を低減させる波形W2(一点鎖線)を有している。
【0042】
帯域b3は、光学フィルタ17の分光透過率において、1または2箇所以上に設定することができる。不要光除去用フィルタ層171の出射光では、視野角が大きくなるに従って、3刺激値(X,Y,Z)のうちの少なくとも1つの成分が変動する(増加または減少する)が、この特定の成分が変動することに起因して色度が変化してしまう。視野角補正用フィルタ層172では、そのような視野角変化に伴う成分の変動分を相殺する(打ち消す、あるいは補完する)ように、帯域b3が設定されている。尚、3刺激値(X,Y,Z)のうちのどの成分を補完する場合にも、視野角補正用フィルタ層172の分光透過率において透過率の低い帯域、即ち帯域b3が形成される。また、どの成分を補完するかに応じて、帯域b3の透過率および位置が設定される。帯域b3の透過率および位置は、誘電体多層膜ユニットUにおける屈折率差および積層数等を調整することにより、制御することが可能である。
【0043】
上記のような光学特性を有する光学フィルタ17の一例を、
図7および
図8に示す。
図7は、不要光除去用フィルタ層171における分光透過率(波形W1)を示し、
図8は、その不要光除去用フィルタ層171に視野角補正用フィルタ層172を組み合わせた後の分光透過率(波形W2)を示している。尚、
図8には、
図7に示した不要光除去用フィルタ層171の分光透過率(波形W1)も示している。
【0044】
図7に示したように、不要光除去用フィルタ層171は、R,G,Bの各色光の各波長帯域を狭めるように帯域b1,b2が設定されている。この例では、帯域b2が2箇所に設定されている。また、波形W1のうちの透過帯域である帯域b1(b1(R),b1(G),b1(B))では、100%(1.00)に近い透過率となっている。加えて、帯域b2から帯域b1にかけての立ち上がりはシャープである。尚、この例では、2箇所に帯域b2を設定する(帯域b2を選択的に除去する)ために、不要光除去用フィルタ層171は、1または複数の誘電体多層膜ユニットUを含んで構成されている。
【0045】
このような分光透過率を有する不要光除去用フィルタ層171に対して、視野角補正用フィルタ層172を組み合わせた場合の分光透過率(即ち、光学フィルタ17の分光透過率)は、例えば
図8に示したように設定することができる。尚、
図8では、
図7に示した不要光除去用フィルタ層171(単独)の分光透過率の波形W1を破線で示している。このように、視野角補正用フィルタ層172は、不要光除去用フィルタ層171を透過する帯域b1のうちの一部の帯域b3の透過率を低減するように構成されている。この例では、帯域b3が1箇所に設定されている。具体的には、帯域b3は、R光に対応する帯域b1(R)の一部に対応する帯域とされ、詳細には、3刺激値(X,Y,Z)のうちのX成分を多く含む帯域のうちの660nm付近の帯域とされる。この例において、X成分を最も多く含むのは、600nm付近である。但し、尚、この例では、1つの帯域b3を設定するために、視野角補正用フィルタ層172は、例えば1つの誘電体多層膜ユニットUを含んで構成される。また、この視野角補正用フィルタ層172を組み合わせることにより、波形W2では、例えばZ成分を多く含む420nm付近の帯域b3’も選択的に除去されている。上記の帯域b2,b3の数、位置等は一例であり、これに限定されるものではない。
【0046】
[作用,効果]
表示装置1では、有機EL素子10R,10G,10Bの各発光層(赤色発光層13R,緑色発光層13G,青色発光層13B)に、第1電極12と第2電極14とを通じて駆動電流が注入されると、各発光層において正孔と電子とが再結合して励起子を生じ、発光が起こる。これにより、有機EL素子10Rから上方に向けて赤色の光LRが、有機EL素子10Gから上方へ向けて緑色の光LGが、有機EL素子10Bから上方に向けて青色の光LBが、それぞれ出射される。これらの光LR,LG,LBは、例えば保護膜15、封止層16、光学フィルタ17および対向基板18を順に通過して、対向基板18の上方へ出射する。これらの3原色に対応する光LR,LG,LBの加法混色により、様々な色がピクセル毎に再現され、カラーの映像表示がなされる。
【0047】
ところが、有機EL素子10R,10G,10Bなどの自発光デバイスから出射された光LR,LG,LBはそれぞれ、ブロードなスペクトル形状を有する。このため、光LR,LG,LBそのものを混色させた場合、十分な色再現範囲を確保することが難しい。
【0048】
これに対し、本実施の形態では、有機EL素子10R,10G,10Bの光出射側に、光学フィルタ17が設けられ、この光学フィルタ17が所定の分光透過率を有する不要光除去用フィルタ層171を有している。これにより、
図6に示したように、不要光除去用フィルタ層171において、有機EL素子10R,10G,10Bから出射された光LR,LG,LBの各波長帯域b0のうちの中心波長を含む帯域b1が透過され、帯域b1以外の帯域の少なくとも一部に対応する帯域b2が除去される。このとき、不要光除去用フィルタ層171が1または複数の誘電体多層膜ユニットUにより構成されることで、その分光透過率(W1)において、帯域b2から帯域b1にかけての透過率の立ち上がりがシャープなものとなる。このような不要光除去用フィルタ層171により、光LR,LG,LBの各波長帯域b0のうち、例えばその裾野部分(不要光)に対応する帯域b2が選択的に除去され、光LR,LG,LBの各中心波長を含む3つの帯域b1を含む光が高い透過率で透過される。
【0049】
この結果、光LR,LG,LBにおける色純度が高まり、色再現範囲(色域)を拡大することができる。
【0050】
また、不要光除去用フィルタ層171を有する光学フィルタ17は、表示装置1の各画素の発光部(各有機EL素子10R,10G,10B)に対して共通の層として設けられている。このため、製造プロセスにおいては、基板170上に
光学フィルタ17をベタ膜として形成することができる。また、各発光部との精細なアライメントも不要である。ここで、各色光の色純度を高めるために、画素毎にR,G,Bの色材がパターニングされてなるカラーフィルタが用いられる場合、隣接画素への光漏れ等を防止するために、発光部とフィルタ部分との精細なアライメントを要する。このため、基板の大型化あるいは画素の高精細化等に対応することが困難である。これに対し、本実施の形態の光学フィルタ17では、パターニングやアライメントが不要であることから、基板の大型化や画素の高精細化にも対応可能である。
【0051】
一方で、上記のような不要光除去用フィルタ層171の出射光では、視野角(
図4に示した視野角θ)が大きくなるに従って、3刺激値(X,Y,Z)のうちの少なくとも1つの成分が変動する。このため、視野角の増加に伴って色バランスが崩れ、色度が変化してしまう。これは、干渉の中心波長が、視野角の変化に伴って短波長かつ透過率の低い方向に向かってシフトする傾向(
図5)があるためである。
【0052】
そこで、本実施の形態では、光学フィルタ17が更に、所定の分光透過率を有する視野角補正用フィルタ層172を有している。具体的には、
図6に示したように、不要光除去用フィルタ層171を透過する帯域b1(R,G,Bの各色光のちの少なくとも1つの色光の中心波長を含む帯域)の一部に対応する帯域b3の透過率を低減させる。これにより、上記のような視野角変化に伴って増加した成分が打ち消され、色バランスを保持することができる。よって、視野角の変化に伴う色度の変化を抑制することができる。
【0053】
ここで、一例として、
図9に、不要光除去用フィルタ層171の出射光における視野角に対する、白(W)の色度変化(Δu’v’)について示す。このように、不要光除去用フィルタ層171を単独で用いた場合には、視野角が大きくなるに従って色度が変化してしまう。また、視野角45°における色度変化は0.055となるが、この数値はディスプレイの画品位としては十分ではない。これは、例えば
図7に示した分光透過率が視野角変化に伴って短波長側にシフトすることにより、3刺激値(X,Y,Z)のうち、例えばGのX成分が変動(ここでは、増加)するためである。
【0054】
そこで、
図8に示したように、視野角補正用フィルタ層172により、660nm付近に帯域b3を設定することで、RのX成分を減少させることができ、GのX成分の増加分を打ち消すことができる。
図10に、この帯域b3が設定された分光透過率を有する視野角補正用フィルタ層172と不要光除去用フィルタ層171とを用いた光学フィルタ17の出射光における視野角に対する、白(W)の色度変化(Δu’v’)について示す。このように、視野角が増大した場合も、色度変化は0.020以下まで抑制される。
【0055】
尚、上記例では、視野角変化に伴ってX成分が増加する場合について述べたが、減少する場合もある。また、増加または減少する成分は、X成分に限らず、光学フィルタ17の設計に応じて、Y成分またはZ成分となることもある。したがって、3刺激値のうちの変動する成分に応じて、視野角補正用フィルタ層172の分光透過率における帯域b3の位置および透過率を設定することが望ましい。
【0056】
ここで、
図11に、CIE(Commission Internationale de l'Eclairage)表色系色度図を示す。図中のA1(破線)で表される三角形は、有機EL素子10R,10G,10Bから出射される光LR,LG,LBに基づく色再現範囲を示したものである。A2(一点鎖線)で表される三角形は、不要光除去用フィルタ層171を単独で用いた場合(帯域b2を除去後)の色再現範囲を示したものである。A3(実線)で表される三角形は、その不要光除去用フィルタ層171に視野角補正用フィルタ層172を組み合わせてなる光学フィルタ17により帯域b2,b3を除去後の色再現範囲を示したものである。このように、不要光除去用フィルタ層171を用いた場合の色再現範囲A2は、光LR,LG,LBに基づく色再現範囲A1よりも拡大される。また、不要光除去用フィルタ層171に視野角補正用フィルタ層172を組み合わせた場合の色再現範囲A3においても、色再現範囲A2と略同等の範囲が維持される。あるいは、色再現範囲A2から色再現範囲A3へ、画品位に影響を与えにくいごく僅かなシフト量で縮小する。
【0057】
以上のように本実施の形態では、有機EL素子10R,10G,10Bの光出射側に、不要光除去用フィルタ層171および視野角補正用フィルタ層172を含む光学フィルタ17が配置される。不要光除去用フィルタ層171により、色光LR,LG,LBに対応する波長帯域b0のうちの各中心波長を含む帯域b1を透過し、この帯域b1以外の帯域の少なくとも一部に対応する帯域b2を除去することができる。これにより、各色光LR,LG,LBの色純度を高め、色再現範囲を拡大することができる。また、光学フィルタ17の視野角補正用フィルタ層172により、1または2以上の色光に対応する帯域b1のうちの一部に対応する帯域b3の透過率を低減することができる。これにより、色再現範囲の縮小を抑えながら、視野角の変化に伴って生じる色度変化を抑制することができる。よって、色再現範囲を確保しつつ、視野角特性を向上させることが可能となる。
【0058】
図12は、上記実施の形態において説明した表示装置1の機能ブロック構成を表すものである。
【0059】
表示装置1は、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、映像として表示するものであり、例えばタイミング制御部21と、信号処理部22と、駆動部23と、表示画素部24とを備えている。
【0060】
タイミング制御部21は、各種のタイミング信号(制御信号)を生成するタイミングジェネレータを有しており、これらの各種のタイミング信号を基に、信号処理部22等の駆動制御を行うものである。信号処理部22は、例えば、外部から入力されたデジタルの映像信号に対して所定の補正を行い、それにより得られた映像信号を駆動部23に出力するものである。駆動部23は、例えば走査線駆動回路および信号線駆動回路などを含んで構成され、各種制御線を介して表示画素部24の各画素を駆動するものである。表示画素部24は、例えば有機EL素子(上述の有機EL素子10R,10G,10B)等の表示素子と、表示素子を画素毎に駆動するための画素回路とを含んで構成されている。
図1は、この表示画素部24のうちの3画素に対応する領域の断面構成を表している。
【0061】
<適用例>
上記実施の形態の表示装置1は、様々なタイプの電子機器に用いることができる。
図13に、電子機器3の機能ブロック構成を示す。電子機器3としては、例えばテレビジョン装置、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン、タブレット型PC、携帯電話機、デジタルスチルカメラおよびデジタルビデオカメラ等が挙げられる。
【0062】
電子機器3は、例えば上述の表示装置1(または撮像装置2)と、インターフェース部30とを有している。インターフェース部30は、外部から各種の信号および電源等が入力される入力部である。このインターフェース部30は、また、例えばタッチパネル、キーボードまたは操作ボタン等のユーザインターフェースを含んでいてもよい。
【0063】
以上、実施の形態等を挙げて説明したが、本開示は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、有機EL素子の光出射側に光学フィルタを配置した構成を例に挙げたが、光学フィルタは、有機EL素子以外の光源にも適用可能である。
図14に示したように、R,G,Bの色光をそれぞれ出射する発光部(光源)30R,30G,30Bを持つデバイスの光出射側に配置されればよく、上述したような有機EL表示装置に限定されるものではない。例えば、発光部30R,30G,30Bとしては、有機EL素子の他にも、例えば発光ダイオード(LED)などが挙げられる。
【0064】
また、上記実施の形態等では、カラーフィルタを配置しない構成としたが、本開示の光学フィルタは、カラーフィルタが搭載されたデバイスにも適用可能である。例えば、
図15に示したように、発光部(光源)30R,30G,30Bの光出射側にカラーフィルタ層31を介して光学フィルタ17が設けられていてもよい。カラーフィルタ層31において十分な色域が確保されていない場合等には、光学フィルタ17を更に積層させることによって、カラーフィルタ層31のみを設けた場合よりも、更に色純度を高めることができる。
【0065】
更に、上記実施の形態等では、R,G,Bの3原色の画素を1ピクセルとして用いた例に挙げたが、本開示の表示装置は、必ずしも3原色の画素のみを備えた構成に限定されない。例えば、R,G,Bとは異なる色光を発する画素を更に備えていてもよく、即ちR,G,B,W(白)あるいはR,G,B,Y(黄)などの4色の画素を備えていても構わない。
【0066】
加えて、表示装置では、上述した全ての層を備えている必要はなく、あるいは上述した各層に加えて更に他の層を備えていてもよい。また、上記実施の形態等において説明した効果は一例であり、本開示の効果は、他の効果であってもよいし、更に他の効果を含んでいてもよい。
【0067】
尚、本開示は以下のような構成であってもよい。
(1)
互いに異なる色光をそれぞれ出射する複数の発光部と、
前記複数の発光部の光出射側に配置されると共に、各色光をその波長帯域のうちの一部を選択的に除去しつつ透過させる光学フィルタと
を備え、
前記光学フィルタは、
各色光に対応する波長帯域のうちの各色光の中心波長を含む第1帯域を透過させると共に、前記第1帯域以外の帯域の少なくとも一部に対応する第2帯域を除去する第1のフィルタ層と、
複数の前記色光のうちの少なくとも1つの色光の第1帯域の一部に対応する第3帯域の透過率を低減させる第2のフィルタ層と
を有する表示装置。
(2)
前記複数の発光部の光出射側に円偏光板を更に備えた
上記(1)に記載の表示装置。
(3)
前記第1および第2のフィルタ層はそれぞれ、誘電体多層膜を含む
上記(1)または(2)に記載の表示装置。
(4)
前記誘電体多層膜は、隣接して積層されると共に互いに屈折率の異なる複数の屈折率層を含む
上記(3)に記載の表示装置。
(5)
前記複数の屈折率層の体積平均屈折率は2.0以上である
上記(4)に記載の表示装置。
(6)
前記第1のフィルタ層において、前記第1帯域と前記第2帯域とは、前記複数の発光部から出射された各色光に対応する波長帯域をそれぞれ狭めて透過させるように設定されている
上記(1)ないし(5)のいずれか1つに記載の表示装置。
(7)
前記第2のフィルタ層において、前記第3帯域は、3刺激値(X,Y,Z)のうちの視野角の増大に伴って変動する、少なくとも1つの成分の該変動分を相殺するように設定されている
上記(1)ないし(6)のいずれか1つに記載の表示装置。
(8)
前記光学フィルタは、前記複数の発光部の光出射側に前記各発光部に共通の層として配置されている
上記(1)ないし(7)のいずれか1つに記載の表示装置。
(9)
互いに異なる色光をそれぞれ出射する複数の発光部と、
前記複数の発光部の光出射側に配置されると共に、各色光をその波長帯域のうちの一部を選択的に除去しつつ透過させる光学フィルタと
を備え、
前記光学フィルタは、
各色光に対応する波長帯域のうちの各色光の中心波長を含む第1帯域を透過させると共に、前記第1帯域以外の帯域の少なくとも一部に対応する第2帯域を除去する第1のフィルタ層と、
複数の前記色光のうちの少なくとも1つの色光の第1帯域の一部に対応する第3帯域の透過率を低減させる第2のフィルタ層と
を有する
表示装置を備えた電子機器。