特許第6600554号(P6600554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6600554
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】波形シート材の裁断方法
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/44 20060101AFI20191021BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20191021BHJP
   B26F 1/40 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   B26F1/44 B
   B26D3/00 601E
   B26F1/44 J
   B26F1/40 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-256705(P2015-256705)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-119334(P2017-119334A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】金田 弘明
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 直也
(72)【発明者】
【氏名】小原 義弘
【審査官】 山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−118364(JP,A)
【文献】 特開昭60−221293(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3089399(JP,U)
【文献】 特開2002−154173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 1/40、1/44
B26D 1/00
B26D 3/00
B60R 5/00、13/02、13/08
C08J 9/00 − 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続波形の凹凸部が少なくとも片面に形成されたゴム様弾性体のシート材をカット刃で裁断する方法であって、
前記カット刃を平面視で連続した波形とし、固定された前記カット刃あるいは前記シート材に対して、前記シート材あるいは前記カット刃を押し付けることによって前記シート材を所定形状に裁断することを特徴とする波形シート材の裁断方法。
【請求項2】
前記カット刃の波形はのこぎり波でその波の谷から山までの垂直距離(波高)を、前記シート材に形成された波形の波の谷から山までの垂直距離以上にしたことを特徴とする請求項1に記載の波形シート材の裁断方法。
【請求項3】
前記カット刃の波の谷から山まで上昇して延びる角度を10度以上90度未満にしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の波形シート材の裁断方法。
【請求項4】
前記カット刃の波形に含まれる略直線状部の1辺長さを、前記シート材に発生可能な、ひげ状の切れ残り部分の許容限界長さ以下にしたことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の波形シート材の裁断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形シート材の裁断方法に関する。より詳細には、連続波形の凹凸部が少なくとも片面に設けられたゴム様弾性体のシート材をカット刃で裁断する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車ドアのインナーパネルと、その車内側に設けられるドアトリムとの間には、防音性能を高めるとともに良好な防水性を確保するためにドアホールシール1が設けられている。
ドアホールシール1のタイプとして、図4乃至図6に示すように、材質がゴム様弾性体からなり、しかも表面に波形の凹凸部10が連続的に形成されたものが知られている(特許文献1)。
【0003】
このようなドアホールシール1は、図4に示すように、表面に凹凸部10が連続的に形成された板状のシート材100を、図7及び図8に示すように、直線状のカット刃2と曲線状のカット刃3を組合わせて打ち抜いて目的とする形状を得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−145637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このとき、カット刃2が、波形の凹凸部10の波の進行方向(y方向)に対して略平行な角度の場合には特に問題はないが、凹凸部10の波の進行方向(y方向)に直交する方向(x方向)に対して水平方向に0度〜10度程度の小さい角度で裁断する場合には、図5に示したように、裁断端部に細長い三角のひげ状の切れ残り部分Jが発生する場合がある。
切れ残り部分Jが発生すると外観上見栄えが悪いので、従来は切れ残り部分Jがあるか否か一枚一枚検査するとともに切れ残り部分Jがあるとその長さLが15mm以下になるように手作業で取り除いていた。
【0006】
そこで、本発明の目的とするところは、特に連続波形の凹凸部が設けられたゴム様弾性体のシート材を外観上見栄えを悪くすることなく綺麗に裁断しうる波形シート材の裁断方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の波形シート材の裁断方法は、連続波形の凹凸部(10)が少なくとも片面(100a)に形成されたゴム様弾性体のシート材(100)をカット刃(200)で裁断する方法であって、
前記カット刃(200)を平面視で連続した波形とし、固定された前記カット刃(200)あるいは前記シート材(100)に対して、前記シート材(100)あるいは前記カット刃(200)を押し付けることによって前記シート材(100)を所定形状に裁断することを特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記カット刃(200)の波形はのこぎり波でその波の谷(201)から山(202)までの垂直距離(波高)Tを、前記シート材(100)に形成された波形の波の谷(101)から山(102)までの垂直距離(100H)以上にしたことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記カット刃(200)の波の谷(201)から山(202)まで上昇して延びる角度(θ)を10度以上90度未満にしたことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記カット刃(200)の波形に含まれる略直線状部の1辺長さ(200K)を、前記シート材(100)に発生可能な、ひげ状の切れ残り部分(J)の許容限界長さ(L)以下にしたことを特徴とする。
【0011】
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、連続波形の凹凸部が片面あるいは表裏両面に形成されたゴム様弾性体のシート材を、固定されたカット刃に対して押し付けるか、あるいはカット刃を固定されたシート材に対して押し付けるもので、しかもカット刃は平面視で連続した波形としているので、カット刃は、シート材に形成された凹凸部の波の進行方向(y方向)に直交する方向(x方向)に対して水平方向には線で接するのではなく点で接するようになっている。
よってゴム様弾性体といった柔らかい素材の表面に連続波形の凹凸部が形成されたものであってもひげ状の切れ残り部分が裁断端部に発生することを抑制して綺麗に裁断することができる。
したがって、製品となる裁断後のシート材、例えばドアホールシールなどを一枚ごとに入念に検査することや、発見した切れ残り部分を手作業で取り除くような煩雑な作業を抑えることができる。
【0013】
なお、カットする側に波形を形成したものは、例えば、実開昭49−19393号公報,特許第5023629号公報,特許第4485748号公報,実用新案登録第3089399号公報,特開2011−16215号公報などに開示されているが、本発明のように、連続波形の凹凸部が形成されたゴム様弾性体のシート材を、連続した波形のカット刃を使用して裁断する方法は、従来から一切存在するものではない。
【0014】
また本発明のように、カット刃の波形をのこぎり波としその波の谷から山までの垂直距離をシート材に形成された波形の谷から山までの垂直距離以上にしたり、カット刃の波の谷から山まで上昇して延びる角度を10度以上90度未満にしたり、あるいは、カット刃の波形に含まれる略直線状部の1辺長さを、シート材に発生可能な、ひげ状の切れ残り部分の許容限界長さ以下にすることによって、シート材に切れ残りが発生することをより一層抑え、製造される製品の外観を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態(実施形態1)に係る波形シート材の裁断方法に使用されるカット刃の先端を示す平面図である。
図2図1のZ部拡大平面図である。
図3】本発明の実施形態(実施形態1)に係る波形シート材の裁断方法によって裁断されたドアホールシールを示す平面図である。
図4】裁断前の波形シート材を示す平面図である。
図5】従来例に係る波形シート材の裁断方法によって裁断されたドアホールシールを示す平面図である。
図6図4のA−A線における部分断面拡大斜視図である。
図7】従来例に係る波形シート材の裁断方法に使用されるカット刃の先端を示す平面図である。
図8】従来例に係わる波形シート材の裁断方法に使用される湾曲したカット刃の先端を示す平面図である。
図9】本発明の別の実施形態(実施形態2)に係る波形シート材の裁断方法に使用されるカット刃の先端を示す平面図である。
図10図9のA部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1乃至図4を参照して、本発明の実施形態(実施形態1)に係る波形シート材の裁断方法について説明する。これは、図6で示したような、連続波形の凹凸部10が片面100aに形成されたゴム様弾性体のシート材100を、図1及び図2で示したカット刃200を部分的に使用して所定形状に裁断する方法であり、ここではシート材100を裁断して自動車ドア内に設けられるドアホールシール5を製造するものである。従来例で示したものと同一部分には同一符号を付した。
【0017】
カット刃200は、図1及び図2に示すように、刃の先端が平面視で連続した波形をしている。
より具体的には、カット刃200の先端の波形はのこぎり波でその波の一つは平面視で二等辺三角形をしている。また、波の谷201から山202までの垂直距離、すなわち波高Tを、シート材100に形成された波形の谷から山までの垂直距離100H(図6)以上にして一度の裁断でシート材100の波形の1サイクル分をカットできるようにしている。また、カット刃200の波の谷201から山202まで上昇して延びる角度θを10度以上90度未満にするようにして切れ残り部分Jが発生することを抑制している。ここでは35度に設定している。なお、角度θが90度に近づけば切れ残り部分Jが発生することはないが裁断後には角度の大きい波形がドアホールシール5の端部に数多く形成されるため見栄えが悪い。逆に角度θが10度に近づけば切れ残り部分Jが発生する度合いは上がるが角度の小さい波形がドアホールシール5の端部に形成されるので見栄えはよい。よって、外観上の見栄えがよくしかも切れ残り部分Jが発生する度合いを低くするといった観点から、この角度θは20度以上70度以下がよく、さらに好ましくは25度以上60度以下であることが好ましい。
さらに、カット刃200の波形にある略直線状部の1辺長さ200Kを、シート材100に発生可能な、ひげ状の切れ残り部分Jの許容限界長さL、ここでは15mm以下にして、万一、切れ残り部分Jが発生したとしても許容限界長さL以下にして著しく見栄えを悪くしないようにしている。
【0018】
シート材100の材質となるゴム様弾性体としては、EPDMゴムなどの各種ゴム材や熱可塑委エラストマーなどが含まれるがゴムのような弾性体であればよい。また、スポンジ材であってもソリッド材であってもよいが、裁断時に、図5に示したような切れ残り部分Jが発生しやすいスポンジ材であって、比重が0.01〜0.4の柔軟な材質に対して特に有効的である。
【0019】
カット刃200はシート材100を裁断する際に設置するベース面(図示しない)から突出するように埋め込まれて固定されるが、波形のカット刃200で裁断された端部は波形になるため、本実施形態例では、目的とするドアホールシール5の全周に対してカット刃200を使用するのではなく部分的に使用し、残りの部分は直線状のカット刃2や曲線状のカット刃3を組合せて線状に接続し、全体として閉領域になるようにしてこれらを一体的に前記ベース面に埋め込んだものである。
【0020】
つまり、シート材100からドアホールシール5を裁断するにあたり、波形の凹凸部10の波の進行方向(y方向)に対して略平行な角度の場合には、図7及び図8で示したような、直線状のカット刃2で裁断しても切れ残り部分Jが発生しないので、直線状のカット刃2をそのままの状態で、あるいは多少湾曲させて曲線状のカット刃3で使用し(図3において、S1,S2,S3,S4で示した範囲)、シート材100に形成された凹凸部10の波の進行方向(y方向)に直交する方向(x方向)に対しては切れ残り部分Jが発生しやすいのでここに波形のカット刃200をそのままの状態で、あるいは多少湾曲させた状態で使用した(図3において、N1,N2,N3,N4で示した範囲)。
【0021】
これによれば、カット刃200は、シート材100に形成された凹凸部10の波の進行方向(y方向)に直交する方向(x方向)に対して水平方向には線で接するのではなく、点で接するようになっているので、ゴム様弾性体といった柔らかい素材の表面に連続波形の凹凸部10が形成されたものであってもひげ状の切れ残り部分Jが裁断端部に発生することを抑制して綺麗に裁断することができる。
したがって、製品となる裁断後のドアホールシール5を一枚ごとに入念に検査することや、切れ残り部分Jを手作業で取り除くような煩雑な作業を抑えることができる。
【0022】
なお、本実施形態では、カット刃200の波の谷201から山202まで上昇して延びる角度θを35度にしたが、10度以上であるが35度より小さくしても、カット刃200の1辺長さ200Kを許容限界長さL以下とすれば、ひげ状の切れ残り部分Jが仮に発生しても問題は無く、これによってドアホールシール5の裁断端状に形成される波形の部分を目立たせなくすることができる。また、35度よりも大きくすると、ひげ状の切れ残り部分Jは発生し難くなるが、見栄えを悪くしてしまう。従って、サイズの異なる様々なカット刃200と直線状のカット刃2を種々組合せることも可能である。
【0023】
ここで、実施形態2について説明する。
実施形態1では、カット刃200の先端の波形が、カット刃200の延長方向に対して常に交差する鋭利な角度を持って折れ曲っているが、実施形態2では、実施形態1のこぎり波に部分的にカット刃200の延長方向に略平行な平行部位203を組合せている。例えば、図9では、先端が鋭利なのこぎり刃と交互に平行部位203を設けている。このようにすることで、図1に示すような連続して鋭利な角を持ったのこぎり刃で裁断した場合と比較して、鋭利に角ばった箇所が少なくなることから裁断されたシート100の見栄えを良くすることができる。この場合であっても、図10のとおり、波の谷から山までの垂直距離、すなわち波高Tを、シート材100に形成された波形の谷から山までの垂直距離100H(図10)以上にしている。また、平行部位203の刃長203Kを、シート材100に発生可能な、ひげ状の切れ残り部分Jの許容限界長さL以下にしている。従って、仮に平行部位203でひげ状の切れ残り部分Jが発生しても問題にはならない。また、略直線状の斜辺部の1辺長さ200Kも、実施形態1(図2)と同様にシート材100に発生可能な、ひげ状の切れ残り部分Jの許容限界長さL以下にしている。この斜辺部の1辺長さ200Kの長さを許容限界長さL以下とするのは、特には、角度θを小さくした場合に有効である。
【0024】
なお、図1図2図9、および図10に示した、のこぎり波は、その波の一つが平面視で二等辺三角形としたが、二等辺三角形である必要はなく、波の一つに見られる2つの角度θは異なる角度になっていてもよい。またカット刃200の延長方向に延びる波の形も同じ形状が連続する必要はなく、異なる形状が組み合わさっていてもよい。
また、実施形態1および実施形態2の折れ曲り箇所は直線的に交差した角があるが、これを滑らかな円弧状にしてもよい。
【0025】
また、シート材100を、固定されたカット刃200に対して押し付けるようにしたが、逆にカット刃200を移動して固定されたシート材100に対して押し付けるようにすることもできる。
【0026】
また、本実施形態では、連続波形の凹凸部10が片面に設けられたゴム様弾性体のシート材100から、自動車ドアのインナーパネルと、その車内側に設けられるドアトリムとの間に設けられるドアホールシール5を裁断する方法について説明したが、これに限定されるものではなく、連続波形の凹凸部10が少なくとも片面(よって両面でもよい)に設けられたゴム様弾性体のシート材100を裁断して何らかの製品(自動車に使用されるものに限定されない)を製造するものに適用可能であり、これによれば、裁断後の製品の裁断端部に切れ残り部分Jが発生することを抑制することができる。
【0027】
なお、前記した実施形態はシート材100を所定形状に裁断して製品外形を整える内容であったが、裁断とは、単にシート材100にスリットを入れるだけの行為も含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1 ドアホールシール
2 カット刃
5 ドアホールシール
10 凹凸部
100 シート材
100a 表面(片面)
100b 裏面
100H シート谷深さ(シートの垂直距離)
200 カット刃
200K 波形にある略直線状部の1辺長さ
201 谷
202 山
203 平行部位
203K 平行部位の波長
J 切れ残り部分
L 長さ
T 垂直距離(波高)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10