特許第6600567号(P6600567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6600567真空バルブの真空度監視装置および監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6600567
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】真空バルブの真空度監視装置および監視方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/668 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
   H01H33/668 Z
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-9056(P2016-9056)
(22)【出願日】2016年1月20日
(65)【公開番号】特開2017-130353(P2017-130353A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(72)【発明者】
【氏名】藤井 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】長 広明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 純一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 恵一
(72)【発明者】
【氏名】樽井 将邦
(72)【発明者】
【氏名】宮内 康寿
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−210851(JP,A)
【文献】 特開2014−216208(JP,A)
【文献】 特開2002−184275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/60 〜 33/68
G01L 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空バルブに所定間隔を保って配置された電磁波検出センサと、
前記電磁波検出センサに接続された真空度判定装置とを有し、
前記真空度判定装置は、電磁波検出センサで検出された電磁波のピーク電圧値と第1波の立ち上り時間とを求める電磁波検出部と、
前記ピーク電圧値と前記第1波の立ち上り時間とを予め求めておいた真空度曲線と比較する波形比較部と、
前記波形比較部での判定に基づき前記真空バルブの真空度を判定する真空度判定部と、で構成されることを特徴とする真空バルブの真空度監視装置。
【請求項2】
前記電磁波検出センサは、周波数帯域が30kHz〜200MHzのループアンテナであることを特徴とする請求項1に記載の真空バルブの真空度監視装置。
【請求項3】
前記ピーク電圧値が所定値以下で、前記第1波の立ち上り時間が所定値以上において、前記真空バルブの真空度を判定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空バルブの真空度監視装置。
【請求項4】
前記真空バルブの軸方向に対して前記電磁波検出センサの断面を所定角度でねじれ配置することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の真空バルブの真空度監視装置。
【請求項5】
前記真空バルブに所定間隔を保って運転電圧の電圧要素を取出す分圧器を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の真空バルブの真空度監視装置。
【請求項6】
真空バルブに所定間隔を保って電磁波検出センサを配置し、
先ず、前記電磁波検出センサで検出した電磁波のピーク電圧と第1波の立ち上り時間とを求め、
次に、前記ピーク電圧と前記第1波の立ち上り時間とを予め求めておいた真空度曲線と比較して前記真空バルブの真空度を判定することを特徴とする真空バルブの真空度監視装置の真空度監視方法。
【請求項7】
前記ピーク電圧値が20mV以下、前記第1波の立ち上り時間が0.5μS以上において真空度を良好とすることを特徴とする請求項6に記載の真空バルブの真空度監視装置の真空度監視方法。
【請求項8】
前記電磁波検出センサの断面を前記真空バルブの軸方向に対して±8度以内で配置したことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の真空バルブの真空度監視装置の真空度監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、接離自在の一対の接点を有する真空バルブの真空度を監視する真空バルブの真空度監視装置および監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
受配電設備に用いられる真空遮断器には、優れた遮断性能と絶縁性能を有する真空バルブが用いられている。しかしながら、真空度が劣化すると、これらの性能を発揮することが困難となる。
【0003】
このため、従来から真空度を監視する提案が多々なされている。例えば、真空度の劣化に伴って発生する放電をアンテナで検出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、放電の連続性や継続時間を検出してノイズ除去をしているものの、外来ノイズが重畳し易く真空バルブ内の放電との区分けが困難であり検出感度の向上には限界があった。また、アンテナで検出した信号に閾値を設けてノイズ除去を行うものが知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、閾値を下回る微弱な放電を検出することが困難であり、検出感度の向上には限界があった。
【0004】
また、真空バルブにアンテナを近接して設置し、電磁波を検出するものが知られている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、信号処理にバンドパスフィルタを用い、真空度の劣化に伴って発生するマイクロ波帯を検出するようにしているので、検出する周波数帯が限定され、検出感度の向上には限界があった。また、ノイズとなる外部放電をローパスフィルタで減衰させ、真空バルブからの内部放電をアンテナで受信するものが知られている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、数MHz〜数100MHzと高い周波数帯域を検出し、真空度の劣化判定に閾値を設けているので、閾値を下回るような放電を検出することが困難であり、検出感度の向上には限界があった。
【0005】
更には、真空バルブからの電磁波をアンテナで検出し、その信号を周波数分析し、真空度の推定を行うものが知られている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、主回路に印加した電圧の位相を複数に分割し、分割した位相においてそれぞれ周波数解析をしているので、解析装置が複雑になっていた。
【0006】
このため、印加電圧の位相を分割するような複雑な装置を用いることなく、アンテナで検出した電磁波を簡素な方法で周波数解析するとともに、ノイズ除去のために回路にフィルタなどを接続したり、判定に閾値などを設けたりせず、真空バルブの真空度を高感度で検出することができるものが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−184275号公報
【特許文献2】特開2005−302331号公報
【特許文献3】特開平7−318447号公報
【特許文献4】特許第5597311号公報
【特許文献5】特開2015−15172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、真空バルブから発生する電磁波をフィルタや閾値などを設けたりせず、微弱な電磁波を直接、アンテナにて高感度で検出し、真空度を監視することができる真空バルブの真空度監視装置および監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、実施形態の真空バルブの真空度監視装置は、真空バルブに所定間隔を保って配置された電磁波検出センサと、前記電磁波検出センサに接続された真空度判定装置とを有し、前記真空度判定装置は、電磁波検出センサで検出された電磁波のピーク電圧値と第1波の立ち上り時間とを求める電磁波検出部と、前記ピーク電圧値と前記第1波の立ち上り時間とを予め求めておいた真空度曲線と比較する波形比較部と、前記波形比較部での判定に基づき前記真空バルブの真空度を判定する真空度判定部と、で構成されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1に係る真空バルブの真空度監視装置の構成を示す概略図。
図2】本発明の実施例1に係る真空度と信号のピーク電圧値の関係を説明する図。
図3】本発明の実施例1に係る真空度と信号の立ち上り時間の関係を説明する図。
図4】本発明の実施例1に係る信号のピーク電圧値と立ち上り時間の関係を説明する図。
図5】本発明の実施例1に係る電磁波の測定例。
図6】本発明の実施例1に係る電磁波検出センサの角度を説明する図。
図7】本発明の実施例1に係る電磁波検出センサの角度と出力電圧の関係を説明する図。
図8】本発明の実施例2に係る真空バルブの真空度監視装置の構成を示す概略図。
図9】本発明の実施例2に係る印加電圧と放電パルスの関係を説明する図。
図10】本発明の実施例3に係る真空バルブの真空度監視装置の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0012】
先ず、本発明の実施例1に係る真空バルブの真空度監視装置を図1図7を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1に係る本発明の実施例1に係る真空バルブの真空度監視装置の構成を示す概略図、図2は、本発明の実施例1に係る真空度と信号のピーク電圧値の関係を説明する図、図3は、本発明の実施例1に係る真空度と信号の立ち上り時間の関係を説明する図、図4は、本発明の実施例1に係る信号のピーク電圧値と立ち上り時間の関係を説明する図、図5は、本発明の実施例1に係る電磁波の測定例、図6は、本発明の実施例1に係る電磁波検出センサの角度を説明する図、図7は、本発明の実施例1に係る電磁波検出センサの角度と出力電圧の関係を説明する図である。
【0013】
図1に示すように、金属製の箱体1内には、真空遮断器に搭載された真空バルブ2が収納されている。真空バルブ2には、これに近接してループアンテナのような電磁波検出センサ3が配置されている。電磁波検出センサ3の出力は、箱体1外に設けられた真空度判定装置4に接続されている。真空度判定装置4は、電磁波検出センサ3の出力に接続された電磁波のピーク電圧値と第1波の立ち上り時間を検出する電磁波検出部5、電磁波検出部5で検出した電磁波を真空度曲線と比較する波形比較部6、波形比較部6での情報に基づき真空度の劣化を判定する真空度判定部7で構成されている。
【0014】
次に、電磁波検出センサで検出される電磁波と真空度の関係を図2図4を参照して説明する。各図は、両対数目盛である。
【0015】
真空バルブ2の容器内の真空度を変化させ、放電による電磁波をループアンテナで検出すると、図2に示すように、真空度が劣化して大気圧に近づくと、電磁波のピーク電圧値は上昇する。ピーク電圧値は、第1波に形成され易いものの、第1波に限定されるものではない。また、図3に示すように、真空度が劣化して大気圧に近づくと、第1波の立ち上り時間は短くなる。
【0016】
これより、電磁波のピーク電圧値と第1波の立ち上り時間の関係は、図4に示すように、第1波の立ち上り時間が短くなるにつれてピーク電圧値が上昇する。即ち、真空度の変化によって、第1波の立ち上り時間とピーク電圧値が変化する真空度曲線を得ることができる。この真空度曲線上に、公知のパッセェン曲線から放電開始電圧が上昇して安定する真空度(10−1Pa以下)での値をプロットするとA点(20mV、0.5μS)となる。A点は、代表的な真空バルブ2からの電磁波である。
【0017】
図5(a)(b)に示すような真空度を変化させたときの値を図4の真空度曲線上にプロットすると、よく一致している。これらのデータは、フィルタなどを用いず、電磁波検出センサ3で直接検出した電磁波のピーク電圧と立ち上り時間を求めたものである。電磁波検出センサ3は、指向性を有し、また、電界と比較して高周波でシールドされ難い磁界成分を検出するので、高感度となる。周波数帯域は、真空放電(低真空から高真空)を基準とする30kHz〜200MHzである。
【0018】
なお、真空度の変化に伴って発生する電磁波のピーク電圧値と第1波の立ち上り時間は、アークシールドや電極など放電部位によって変化するので、予め代表的な放電部位での真空度曲線を求めておくものとする。一般的な真空バルブ2では、立ち上り時間0.5μS以上、ピーク電圧値20mV以下において良好な真空度となる。ここで、電磁波が発生しない場合は、極めて良好な真空度である。
【0019】
次に、電磁波検出センサ3の出力変化を図6図7を参照して説明する。
【0020】
図6に示すように、真空バルブ2の軸方向に対し、電磁波検出センサ3のループ全体の断面を直交させて配置し、角度θを変化させると、図7に示すように出力電圧はコサイン曲線となる。ここで、一般的にノイズが重畳され易いこの種のものでは、測定誤差を1%に抑えれば充分であり、出力電圧をこの測定誤差内に収めようとすると、電磁波検出センサ3の角度はθ=±8度変化させてもよいことになり、作業性を向上させることができる。また、真空バルブ2の軸方向に対する電磁波検出センサ3のループ全体の断面も±8度で配置することができる。なお、電磁波検出センサ3は、真空バルブ2から放電が点弧しない程度に充分に距離を確保した。
【0021】
これらを、電磁波検出センサ3の断面を真空バルブ2の軸方向に対して所定角度でねじれ配置すると称する。
【0022】
上記実施例1の真空バルブの真空度監視装置によれば、真空バルブ2の放電に伴って発生する電磁波を電磁波検出センサ3で検出し、真空度測定装置4でピーク電圧値と第1波の立ち上り時間を求め、予め求めておいた真空度曲線と比較して真空度を判定しているので、ノイズ除去用のフィルタなどを必要とせず、高感度で真空バルブ2の真空度を監視することができる。また、真空度測定装置4では、ピーク電圧値と第1波の立ち上り時間だけの検出でよいので、解析装置を簡素化させることができる。
【実施例2】
【0023】
次に、本発明の実施例2に係る真空バルブの真空度監視装置を図8図9を参照して説明する。図8は、本発明の実施例2に係る真空バルブの真空度監視装置の構成を示す概略図、図9は、本発明の実施例2に係る印加電圧と放電パルスの関係を説明する図である。なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、主回路に変流器を設けて放電の判定をするようにしたことである。図8において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0024】
図8に示すように、真空バルブ2の周りには、所定の間隔を保って環状のCT8を設け、分圧器9を介して真空度判定装置4に接続している。真空度判定装置4では、図9に示すように、主回路の運転電圧要素を取出し、CT8で検出される放電による重畳電流信号を検出する。
【0025】
これにより、真空度の監視とともに、放電による重畳信号を検出しているので、真空度を確実に監視することができる。三相回路では、運転電圧の位相が異なるので、相を特定することができる。また、真空バルブ2の放電では、運転電圧の零クロス位相付近で同極性のパルス状の重畳信号が出るので、真空度の劣化を判定し易くなる。
【0026】
上記実施例2の真空バルブの真空度監視装置によれば、実施例1による効果のほかに、真空度をより確実に検出することができる。
【実施例3】
【0027】
次に、本発明の実施例3に係る真空バルブの真空度監視装置を図10を参照して説明する。図10は、本発明の実施例3に係る真空バルブの真空度監視装置の構成を示す概略図である。なお、この実施例3が実施例1と異なる点は、主回路に分圧器を設けて放電の判定をおこなうようにしたことである。図10において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0028】
図10に示すように、真空バルブ2の周りには、所定の間隔を保ってVT10を設け、C分担のような分圧器9を介して真空度判定装置4に接続している。真空度判定装置4では、図9と同様に主回路の運転電圧要素を取出し、VT10で検出される放電による重畳信号を検出する。
【0029】
上記実施例3の真空バルブの真空度監視装置によれば、実施例2と同様の効果を得ることができる。
【0030】
以上述べたような実施形態によれば、真空バルブから放電に伴って発生する電磁波のピーク電圧値と第1波の立ち上り時間を電磁波検出センサで直接検出し、予め求めておいた真空度曲線に乗せて真空度を判定しているので、ノイズが重畳し難く、フィルタなどを不要とした簡素な装置で真空度を高感度で監視することができる。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
1 箱体
2 真空バルブ
3 電磁波検出センサ
4 真空度判定装置
5 電磁波検出部
6 波形比較部
7 真空度判定部
8 CT
9 分圧器
10 VT
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10