【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、環境省、CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業(集光型太陽熱発電(CSP)システムに関する技術開発)委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の太陽熱発電システム及び太陽熱発電方法の実施の形態を図面を用いて説明する。
[第1の実施の形態]
まず、本発明の太陽熱発電システムの第1の実施の形態のシステム構成を
図1を用いて説明する。
図1は本発明の太陽熱発電システムの第1の実施の形態を示す構成図である。
図1中、矢印は、本発電システムにおける各種の熱媒体の流れの方向を示している。
【0014】
図1において、太陽熱発電システムは、太陽熱を集熱して液体の熱媒体である第1熱媒体を加熱する太陽熱集熱系1と、第2熱媒体としての空気を太陽熱集熱系1の加熱された第1熱媒体との熱交換により加熱し、この加熱された空気を第3熱媒体としての水と熱交換させることで過熱蒸気を生成する空気ボイラ系2と、空気ボイラ系2により生成された過熱蒸気を用いて発電する蒸気タービン発電系3とを備えている。破線の各枠はそれぞれ、太陽熱集熱系1、空気ボイラ系2、蒸気タービン発電系3を示している。本太陽熱発電システムの特徴は、燃料を用いることなく、太陽熱を利用して過熱蒸気を生成して発電するものであり、太陽熱で加熱された液体の熱媒体を加熱源として空気を加熱し、この加熱された高温空気を水と熱交換させることで過熱蒸気を生成するものである。したがって、本太陽熱発電システムは、燃料の投入により過熱蒸気を生成して発電する従来の発電システムや太陽熱で加熱された液体の熱媒体を水と熱交換させることで過熱蒸気を生成して発電する従来の発電システムとは異なる。
【0015】
具体的には、太陽熱集熱系1は、太陽熱を集熱して第1熱媒体を加熱する集熱装置10を備えている。第1熱媒体は、空気ボイラ系2の後述する熱媒体熱交換器72における空気の加熱源であり、例えば、溶融塩である。集熱装置10は、例えば、タワー型の集熱装置であり、太陽Sからの日射光を多数のヘリオスタット(太陽光反射鏡)11で反射してタワー受熱器12に集光し、タワー受熱器12内を流れる第1熱媒体を加熱するものである。ヘリオスタット11は、反射鏡の向きや角度を太陽の移動に伴い変更することが可能である。集熱装置10は、直射日光による日射量を測定する直達日射計53を更に備えている。直達日射計53が測定した直達日射強度信号は、後述する制御装置4に入力される。
【0016】
太陽熱集熱系1は、集熱装置10に第1熱媒体を循環させる循環セクション13を更に備えている。循環セクション13は、集熱装置10に供給する第1熱媒体を収容する第1タンク14と、集熱装置10で加熱された第1熱媒体を収容するバッファタンクとしての第2タンク15と、空気ボイラ系2の後述する熱媒体熱交換器72からの第1熱媒体を収容する第3タンク16とを備えている。
【0017】
第1タンク14の出口とタワー受熱器12の入口には、受熱器入口配管18が接続されている。タワー受熱器12の出口には、受熱器出口配管19の一端が接続されている。受熱器出口配管19の他端には、第2タンク15の入口に一端が接続されている第2タンク入口配管20が接続されている。第2タンク15の出口には、第2タンク出口配管21の一端が接続されている。第2タンク出口配管21の他端は、空気ボイラ系2の熱媒体熱交換器72の熱媒体入口に一端が接続されている熱交換器入口配管22に接続されている。熱媒体熱交換器72の熱媒体出口と第3タンク16の入口には、第3タンク入口配管23が接続されている。第3タンク16の出口と第1タンク14の入口には、第3タンク出口配管24が接続されている。
【0018】
受熱器入口配管18には、第1移送ポンプ26、熱媒体流量調整弁27、及び熱媒体流量計28が下流方向に向かって順に設けられている。第1移送ポンプ26は、第1タンク14に収容されている第1熱媒体をタワー受熱器12に送出するものである。熱媒体流量調整弁27は、タワー受熱器12に供給される第1熱媒体の流量を調整するものである。熱媒体流量計28は、タワー受熱器12に供給される熱媒体の流量を検出するものである。
【0019】
熱交換器入口配管22には、第2移送ポンプ30及び熱交換器入口弁32が下流方向に向かって順に設けられている。第3タンク入口配管23には、熱交換器出口弁33が設けられている。第3タンク出口配管24には、第3移送ポンプ35が設けられている。第2移送ポンプ30は、第2タンク15に一時的に保持されている高温の第1熱媒体を空気ボイラ系2の熱媒体熱交換器72に送出するものである。熱交換器入口弁32及び熱交換器出口弁33は、後述する熱交換器バイパス系統54の熱交換器バイパス弁56と共に、熱媒体熱交換器72に供給する第1熱媒体の流量を調整するものである。第3移送ポンプ35は、第3タンク16に収容されている第1熱媒体を第1タンク14に送出するものである。
【0020】
第1タンク14の入口側及び出口側の配管24、18にはそれぞれ、第1タンク入口弁37及び第1タンク出口弁38が設けられている。同様に、第2タンク15の入口側及び出口側の配管20、21にはそれぞれ、第2タンク入口弁39及び第2タンク出口弁40が設けられている。また、第3タンク16の入口側及び出口側の配管23、24にはそれぞれ、第3タンク入口弁41及び第3タンク出口弁42が設けられている。
【0021】
受熱器出口配管19には、第2タンクバイパス配管44の一端が接続されており、第2タンクバイパス配管44の他端は熱交換器入口配管22に接続されている。第2タンクバイパス配管44には、第2タンクバイパス弁45が設けられている。本循環セクション13は、第2タンク15から第1熱媒体が漏洩した場合に、第2タンクバイパス弁45を開放し、第2タンク入口弁39及び第2タンク出口弁40を閉止することで、第1熱媒体が第2タンク15を迂回して集熱装置10に循環するように構成されている。
【0022】
第1タンク14、第2タンク15、第3タンク16にはそれぞれ、各タンク14、15、16内の第1熱媒体の温度(第1、第2、第3タンク熱媒体温度)を検出する第1の温度計47、第2の温度計48、第3の温度計49が設置されている。受熱器出口配管19には、集熱装置10から流出する高温の第1熱媒体の温度(集熱装置出口熱媒体温度)を検出する第4の温度計50が設置されている。熱交換器入口配管22における熱交換器入口弁32の下流側の位置には、熱媒体熱交換器72に導入される第1熱媒体の温度(熱交換器入口熱媒体温度)を検出する第5の温度計51が設置されている。第3タンク入口配管23における熱交換器出口弁33の上流側の位置には、熱媒体熱交換器72から流出する第1熱媒体の温度(熱交換器出口熱媒体温度)を検出する第6の温度計52が設置されている。第4及び第5の温度計50、51が検出した温度信号は、それぞれ制御装置4へ入力される。
【0023】
循環セクション13は、さらに、熱媒体熱交換器72に供給する第1熱媒体の一部又は全量を熱媒体熱交換器72に対して迂回させる熱交換器バイパス系統54を備えている。熱交換器バイパス系統54は、一端が熱交換器入口配管22における第2移送ポンプ30の下流側で熱交換器入口弁32の上流側の部分に接続されると共に他端が第3タンク入口配管23における熱交換器出口弁33の下流側で第3タンク入口弁41の上流側の部分に接続される熱交換器バイパス配管55と、熱交換器バイパス配管55に設けた熱交換器バイパス弁56とを備えている。熱交換器バイパス弁56は、熱交換器入口弁32及び熱交換器出口弁33と共に、熱媒体熱交換器72を迂回する第1熱媒体の流量を調整するものである。
【0024】
本実施の形態において、受熱器入口配管18が「第1タンク内の液体の熱媒体を集熱装置に供給する第1ライン」を構成する。また、受熱器出口配管19、第2タンク入口配管20、第2タンク出口配管21、及び熱交換器入口配管22が「集熱装置で加熱された液体の熱媒体を熱媒体熱交換器に供給する第2ライン」を構成し、「第2ライン」上に第2タンク15を設けた構成となっている。また、第3タンク入口配管23及び第3タンク出口配管24が「熱媒体熱交換器からの液体の熱媒体を第1タンクに供給する第3ライン」を構成し、「第3ライン」上に第3タンク16を設けた構成となっている。
【0025】
次に、空気ボイラ系2の構成を説明する。空気ボイラ系2は、蒸気タービン発電系3の発電に用いる過熱蒸気を生成するためのものであり、過熱蒸気を生成する加熱源の第2熱媒体として、液体の熱媒体よりも、熱交換器に対する腐食性が低く、かつ、比重が小さい空気を用いるものである。空気ボイラ系2は、空気を、大気から系内に取り込み、過熱蒸気の加熱源として利用した後、大気に放出する。大気(空気)は、本発電システムの周囲に無尽蔵に存在する。そのため、空気ボイラ系2は、第2熱媒体を循環させる必要がなく、第2熱媒体の貯留設備も不要となる。
【0026】
具体的には、空気ボイラ系2は、系内に空気である大気を取り込む押込ファン71と、押込ファン71により取り込まれた空気を太陽熱集熱系1からの熱媒体と熱交換させる熱媒体熱交換器72と、熱媒体熱交換器72からの空気を蒸気タービン発電系3から供給された水と熱交換させて過熱蒸気を生成する空気ボイラ73(
図1の二点鎖線の枠)とを備えている。熱媒体熱交換器72は、詳細な構造は後述するが、空気ボイラ73と一体構造とすることが可能である。空気ボイラ73は、詳細な構造は後述するが、蒸気タービン発電系3からの給水を熱媒体熱交換器72からの空気で予熱する節炭器74と、節炭器74からの水を熱媒体熱交換器72からの空気で加熱して飽和蒸気を生成する蒸発器75と、蒸発器75からの飽和蒸気を熱媒体熱交換器72からの空気で加熱して過熱蒸気を生成する過熱器76とを備えている。
【0027】
空気ボイラ系2は、さらに、押込ファン71により取り込まれた低温の吸込み空気(大気)と空気ボイラ73から排出された高温の排出空気との間で熱交換を行う空気加熱器78を備えている。空気加熱器78として、例えば、伝熱エレメント等の蓄熱体を内蔵したロータを備えた回転再生式のものや鋼板を一定間隔に並べた鋼板式のものなどがある。回転再生式は、空気ボイラ73から排出される高温の排出空気の熱エネルギを回転する蓄熱体に蓄熱させ、さらに回転する蓄熱状態の蓄熱体が低温の吸込み空気(大気)に対して熱エネルギを放出することで大気を予熱するものである。鋼板式は、空気ボイラ73から排出される高温の排出空気と低温の吸込み空気とを鋼板1枚おきに流通させることで熱交換を行うものである。
【0028】
空気ボイラ系2は、一端が大気吸込口であり、他端が空気加熱器78の低温側入口に接続された吸気ダクト80と、空気加熱器78の低温側出口と熱媒体熱交換器72の空気側入口とに接続された熱交換器入口ダクト81と、熱媒体熱交換器72の空気側出口と空気ボイラ73の過熱器76とに接続された空気ボイラ入口ダクト82と、空気ボイラ73の節炭器74と空気加熱器78の高温側入口とに接続された空気ボイラ出口ダクト83と、一端が空気加熱器78の高温側出口に接続され、他端が大気排出口である排気ダクト84とを更に備えている。これらのダクト80、81、82、83、84は、空気が流通する流路を構成している。吸気ダクト80には、押込ファン71及び吸気側ダンパ86が空気の流れの下流方向に向かって順に設けられている。排気ダクト84には、排気側ダンパ87が設けられている。吸気側ダンパ86及び排気側ダンパ87は、相互に関連して、熱媒体熱交換器72及び空気ボイラ73に供給する空気の流量を調整するものである。
【0029】
吸気ダクト80の大気吸込口には、取り込まれる大気の温度(吸込口空気温度)を検出する第7の温度計90が設置されている。空気ボイラ入口ダクト82における熱媒体熱交換器72の出口近傍には、熱媒体熱交換器72から流出する空気の温度(熱交換器出口空気温度)を検出する第8の温度計91が設置されている。熱交換器入口ダクト81における空気加熱器78の低温側出口近傍には、空気加熱器78の低温側出口から流出する空気の温度(空気加熱器低温側出口空気温度)を検出する第9の温度計92、空気ボイラ出口ダクト83における空気加熱器78の高温側入口近傍には、空気加熱器78の高温側入口へ流入する空気の温度(空気加熱器高温側入口空気温度)を検出する第10の温度計93、排気ダクト84における空気加熱器78の高温側出口近傍には、空気加熱器78の高温側出口から流出する空気の温度(空気加熱器高温側出口空気温度)を検出する第11の温度計94がそれぞれ設置されている。第8の温度計91が検出した温度信号は、制御装置4へ入力される。
【0030】
次に、蒸気タービン発電系3の構成を説明する。蒸気タービン発電系3は、過熱蒸気により駆動される蒸気タービン141と、蒸気タービン141の作動流体である水/水蒸気(第3熱媒体)を蒸気タービン141に循環させる循環系統と、蒸気タービン141に機械的に連結された発電機142と、発電機142が生成した電力を外部系統200に送電する電気系統とを備えている。
【0031】
水/水蒸気の循環系統は、蒸気タービン141の入口に一端が接続されると共に、空気ボイラ系2の空気ボイラ73の過熱器76に他端が接続される主蒸気配管144と、蒸気タービン141の出口に一端が接続された蒸気タービン排気ダクト145と、蒸気タービン排気ダクト145の他端に一端が接続されると共に空気ボイラ系2の空気ボイラ73の節炭器74に他端が接続される復水給水系統とを有している。主蒸気配管144は、空気ボイラ系2の空気ボイラ73で生成された過熱蒸気を蒸気タービン141に供給するものである。主蒸気配管144には、第12の温度計147及び蒸気タービン制御弁148が下流方向に向かって順に設けられている。第12の温度計147は、蒸気タービン141に導入される過熱蒸気の温度(蒸気タービン入口主蒸気温度)を検出するものであり、温度信号を制御装置4に出力する。蒸気タービン制御弁148は、蒸気タービン141に導入される過熱蒸気の流量を調整するものである。
【0032】
復水給水系統は、蒸気タービン141からの排気蒸気を冷却することで凝縮させ水に戻す復水器151と、復水器151からの復水を加熱脱気する脱気器152とを備えている。復水器151は、例えば、空冷式のものであり、冷却ファン151aを有する。復水給水系統は、また、復水器151の出口と脱気器152の入口とに接続された復水配管154と、脱気器152の出口と空気ボイラ73の節炭器74とに接続された給水配管155とを備えている。脱気器152には、蒸気タービン141からの抽気を供給する抽気配管156が接続されている。復水配管154には、復水ポンプ158が設けられている。復水ポンプ158は、復水器151で生じた水を脱気器152に送出するものである。給水配管155には、給水ポンプ159、給水流量調整弁161及び給水流量計162が下流方向に向かって順に設けられている。給水ポンプ159は、脱気器152の給水を空気ボイラ73の節炭器74に送出するものである。給水流量調整弁161は、節炭器74への給水の流量を調整するものである。給水流量計162は、節炭器74への給水の流量を検出するものであり、給水流量信号を制御装置4へ出力する。
【0033】
蒸気タービン発電系3の電気系統は、発電機142と外部系統200とを接続する主回路171と、主回路171上に設けられ、発電機142の出力を検出する発電機出力検出器172と、発電機出力検出器172の下流側に配置され、発電機142の出力電圧を外部の系統電圧まで昇圧する主変圧器173と、主変圧器173の高圧側に配置され、外部系統200との接続/遮断を行う主遮断器174とを備えている。発電機出力検出器172の検出した発電機出力信号は、制御装置4へ入力される。また、主遮断器174が接続状態である閉から遮断状態の開に切換えられた場合には、主遮断器174の開信号が制御装置4へ出力される。
【0034】
太陽熱発電システムは、さらに、蒸気タービン発電系3の発電量の制御やシステム運転の停止を行う制御装置4を備えている。制御装置4は、基本的には、各種機器からの信号を読み込み、発電機142の出力が計画出力値となるように各種操作端を制御するものである。
【0035】
制御装置4は、発電機出力検出器172の検出した発電機出力信号、直達日射計53が検出した直達日射強度信号、第4の温度計50が検出した集熱装置出口熱媒体温度信号と、第5の温度計51が検出した熱交換器入口熱媒体温度信号、第8の温度計91で検出した熱交換器出口空気温度信号、第12の温度計147が検出した蒸気タービン入口主蒸気温度信号、給水流量計162が検出した給水流量信号、主遮断器174の開信号を読み込む。
【0036】
制御装置4は、発電機142の出力を増減させる場合、各種機器からの信号に基づき、蒸気タービン制御弁148、給水流量調整弁161、吸気側ダンパ86、熱交換器入口弁32及び熱交換器出口弁33、熱交換器バイパス弁56、熱媒体流量調整弁27、へリオシュタット11を制御する。
【0037】
次に、本発明の太陽熱発電システムの第1の実施の形態の一部を構成する空気ボイラ系2の熱媒体熱交換器及び空気ボイラの詳細な構造を
図1及び
図2を用いて説明する。
図2は
図1に示す本発明の太陽熱発電システムの第1の実施の形態の一部を構成する空気ボイラ系の熱媒体熱交換器及び空気ボイラを示す概略構造図である。
図2中、矢印は、本システムにおける各種の熱媒体の流れの方向を示している。なお、
図2において、
図1に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0038】
図2において、熱媒体熱交換器72は、筒状のケーシング101と、ケーシング101の内部に配設された複数の熱交換器伝熱管102と、複数の熱交換器伝熱管102の入口端が接続された熱交換器入口ヘッダ103と、複数の熱交換器伝熱管102の出口端が接続された熱交換器出口ヘッダ104とを備えている。ケーシング101は、空気ボイラ73の後述するボイラケーシング111と1つに統合された一体構造とされており、開口部が熱交換器入口ダクト81に接続されている。ケーシング101は、内部が空気の流路となるものであり、大気圧よりも少し高い圧力の空気が流通する。このため、ケーシング101は、炭素鋼等の低級材料で成形し、板厚の比較的薄い構造物とすることが可能である。複数の熱交換器伝熱管102は、空気の流れ方向に並ぶように配置される。熱交換器入口ヘッダ103は、熱交換器出口ヘッダ104よりも空気の流れ方向の下流側に配置されている。熱交換器入口ヘッダ103及び熱交換器出口ヘッダ104にはそれぞれ、太陽熱集熱系1の熱交換器入口配管22及び第3タンク入口配管23が接続されている。複数の熱交換器伝熱管102、熱交換器入口ヘッダ103、熱交換器出口ヘッダ104には、太陽熱集熱系1からの第1熱媒体が流通する。
【0039】
空気ボイラ73は、節炭器74、蒸発器75、過熱器76で構成されており、空気の上流方向に向かって順に配置されている。節炭器74、蒸発器75、過熱器76は、1つに統合された一体構造の筒状のボイラケーシング111を備えている。ボイラケーシング111は、さらに、熱媒体熱交換器72のケーシング101と1つに統合された一体構造とされており、開口部が空気ボイラ出口ダクト83に接続されている。ボイラケーシング111は、熱媒体熱交換器72のケーシング101と共に空気の流路の一部を構成しており、熱媒体熱交換器72のケーシング101と同様に、炭素鋼等の低級材料で成形し、板厚の比較的薄い構造物とすることが可能である。
【0040】
節炭器74は、ボイラケーシング111の内部に配設された複数の節炭器伝熱管112と、複数の節炭器伝熱管112の入口端が接続された節炭器入口ヘッダ113と、複数の節炭器伝熱管112の出口端が接続された節炭器出口ヘッダ114とを更に備えている。複数の節炭器伝熱管112は、空気の流れ方向に並ぶように配置される。節炭器入口ヘッダ113は、節炭器出口ヘッダ114よりも空気の流れ方向下流側に配置されている。節炭器入口ヘッダ113には、蒸気タービン発電系3の給水配管155が接続されており、蒸気タービン発電系3からの水が供給される。節炭器出口ヘッダ114には、節炭器出口配管115の一端が接続されており、節炭器出口配管115の他端は、蒸発器75の後述する蒸発器入口ヘッダ123に接続されている。
【0041】
蒸発器75は、ボイラケーシング111の内部に配設された複数の蒸発器伝熱管122と、複数の蒸発器伝熱管122の入口端が接続された蒸発器入口ヘッダ123と、複数の蒸発器伝熱管122の出口端が接続された蒸発器出口ヘッダ124と、ボイラケーシング111の外部に配設され、飽和蒸気と飽和水の気液二相流体を飽和蒸気と飽和水に分離する汽水分離器125と、一端が蒸発器出口ヘッダ124に接続されると共に他端が汽水分離器125の入口側に接続された汽水分離器入口管126と、一端が汽水分離器125の蒸気出口側に接続された汽水分離器出口管127と更に備えている。汽水分離器出口管127の他端は、過熱器76の後述する過熱器入口ヘッダ133に接続されている。複数の蒸発器伝熱管122は、空気の流れ方向に並ぶように配置される。蒸発器入口ヘッダ123は、蒸発器出口ヘッダ124よりも空気の流れ方向下流側に配置されている。蒸発器75は、さらに、一端が汽水分離器125の飽和水出口側に接続される共に他端が蒸発器入口ヘッダ123に接続された戻り管128と、戻り管128に設けた循環ポンプ129とを備えている。
【0042】
過熱器76は、ボイラケーシング111の内部に配設された複数の過熱器伝熱管132と、複数の過熱器伝熱管132の入口端が接続された過熱器入口ヘッダ133と、複数の過熱器伝熱管132の出口端が接続された過熱器出口ヘッダ134とを更に備えている。複数の過熱器伝熱管132は、空気の流れ方向に並ぶように配置される。過熱器入口ヘッダ133は、過熱器出口ヘッダ134よりも空気の流れ方向下流側に配置されている。過熱器出口ヘッダ134には、蒸気タービン発電系3の主蒸気配管144が接続されている。
【0043】
なお、
図2に示すように、熱媒体熱交換器72と空気ボイラ73が一体構造となるように構成されている場合、
図1に示す熱媒体熱交換器72の空気出口側と空気ボイラ73の空気入口側を接続する空気ボイラ入口ダクト82が不要となり、構成の簡素化を図ることができる。
【0044】
本実施の形態においては、過熱蒸気を生成するための装置として、空気を加熱源とする空気ボイラ73を採用している。この空気ボイラ73は、空気の流路であるボイラケーシング111を共通とし、ボイラケーシング111内に各種伝熱管を配置した構造の節炭器74、蒸発器75、過熱器76で構成されている。このため、構成の簡素化が図られている。
【0045】
それに対して、過熱蒸気を生成するための装置として、液体の熱媒体、例えば、溶融塩を加熱源とする蒸気発生器を採用する場合でも、節炭器、蒸発器、過熱器で構成することが可能である。だたし、その構造は上記のものとは異なるものである。溶融塩を加熱源とする節炭器及び過熱器としては、一般的に、シェルアンドチューブ型の熱交換器が採用され、伝熱管には水/水蒸気が流れ、胴体部には溶融塩が流れる。胴体部を流れる溶融塩は、圧送されるものであり、空気よりも比重が大きいので、胴体部を厚肉化する必要がある。また、溶融塩を加熱源とする蒸発器としては、一般的に、ケトル型が採用され、伝熱管には溶融塩が流れ、胴体部には水/水蒸気が流れる。すなわち、蒸発器の溶融塩及び水/水蒸気の流路は、節炭器及び過熱器のものと反転する。このため、溶融塩を加熱源とする節炭器、蒸発器、過熱器は、胴体部の共通化ができず、個々にそれぞれ分離した構成とする必要がある。したがって、溶融塩等の液体の熱媒体を加熱源とする蒸気発生器は、上記した空気ボイラ73よりも、構成が複雑である。
【0046】
また、液体の熱媒体を加熱源とする場合、蒸気発生器に対する腐食の影響を考慮して高級な合金鋼材料を用いることが必要な場合がある。それに対して、空気を加熱源とする場合、空気による腐食に対して特別な考慮は不要であり、液体の熱媒体を加熱源とする場合よりも低級な材料を用いることができる。
【0047】
次に、本発明の太陽熱発電システムの第1の実施の形態の太陽熱発電方法を
図1を用いて説明する。
図1に示す太陽熱集熱系1において、第1熱媒体としての第1熱媒体が第1タンク14に収容されている。この第1熱媒体の温度は第1の温度計47により検出され、集熱装置10へ供給する第1熱媒体の温度を確認することができる。
第1熱媒体が硝酸塩系の溶融塩の場合、溶融塩の固化を防止するために、最低温度を約260℃以上に確保する。
【0048】
第1タンク14内の第1熱媒体は、第1移送ポンプ26により受熱器入口配管18を介してタワー受熱器12に移送される。このとき、タワー受熱器12に供給される第1熱媒体の流量は、熱媒体流量調整弁27により調整されると共に熱媒体流量計28により検出される。この第1熱媒体は、タワー受熱器12を通過する間に、ヘリオスタット11により反射された太陽Sの日射光により加熱されて昇温する。
【0049】
加熱されて高温の第1熱媒体は、受熱器出口配管19及び第2タンク入口配管20を介してバッファタンクとしての第2タンク15に一時的に収容される。タワー受熱器12から流出する第1熱媒体の温度は第4の温度計50により検出され、第2タンク15内の第1熱媒体は第2の温度計48により検出される。第4の温度計50の検出温度と第1の温度計47の検出温度とを比較することで、集熱装置10により集熱した太陽熱が第1熱媒体に伝達されていることを確認できる。
【0050】
第2タンク15に保持されている第1熱媒体は、第2移送ポンプ30により昇圧され、第2タンク出口配管21及び熱交換器入口配管22を介して空気ボイラ系2の熱媒体熱交換器72に送られる。熱媒体熱交換器72に供給される第1熱媒体の流量は、例えば、熱媒体熱交換器入口弁32及び熱媒体熱交換器出口弁33により調整される。また、熱媒体熱交換器72に供給される第1熱媒体の温度は、第5の温度計51により検出される。熱媒体熱交換器72内を流れる第1熱媒体は、空気ボイラ系2の空気を加熱して降温する。
【0051】
熱媒体熱交換器72から流出した第1熱媒体は、第3タンク入口配管23を介して第3タンク16に流入する。熱媒体熱交換器72から流出する第1熱媒体の温度は第6の温度計52により検出され、第3タンク16内の第1熱媒体の温度は第3の温度計49により検出される。第3の温度計49の検出温度により、集熱装置10により集熱した太陽熱が空気ボイラ系2の空気に伝達されていることを確認できる。第3タンク16内の第1熱媒体は、第3移送ポンプ35により第1タンク14に送られる。第1タンク14に送られて収容された第1熱媒体は、集熱装置10に再度移送されて、上記のように循環する。
【0052】
一方、空気ボイラ系2においては、押込ファン71により、太陽熱集熱系1の第1熱媒体により加熱される空気(大気)が吸気ダクト80内に吸い込まれる。吸込み空気の温度は、第7の温度計90により検出される。この吸込み空気は、略大気温度の低温で、かつ、押込ファン71により大気圧よりも十数パーセント程度昇圧された状態で空気加熱器78に流入する。空気加熱器78に流入する流量は、吸込側ダンパ86により調整される。空気加熱器78に流入した低温の吸込み空気は、空気ボイラ73から排出された高温の排気空気との熱交換により予熱されて昇温する。
【0053】
空気加熱器78で昇温した空気は、熱交換器入口ダクト81を介して熱媒体熱交換器72に導入され、そこで、太陽熱集熱系1からの高温の第1熱媒体との熱交換により加熱されて昇温する。熱媒体熱交換器72から流出した高温空気は、空気ボイラ73に導入される。熱媒体熱交換器72に導入される空気の温度は第9の温度計92により、熱媒体熱交換器72から流出する高温空気の温度は第8の温度計91により検出される。これらの温度は、監視されてシステム運用に活用されている。
【0054】
高温空気は、空気ボイラ73の過熱器76、蒸発器75、節炭器74を順次通過し、蒸気タービン発電系3からの給水を加熱する。これにより、空気ボイラ73において過熱蒸気が生成される。
【0055】
給水を加熱して空気ボイラ73から排出された排気空気は、加熱した分、温度が降下しているが、大気温度よりも高温である。この排気空気は、空気ボイラ出口ダクト83を介して空気加熱器78に流入して吸込み空気を加熱した後、排気側ダンパ87を通過し排気ダクト84の大気排出口を介して大気に戻される。空気加熱器78における低温の吸込み空気と高温の排気空気との熱交換により、太陽熱の有効利用を図ることができる。空気加熱器78に流入する排気空気及び空気加熱器78から流出する排気空気の温度は、それぞれ第10及び第11の温度計93、94により検出される。第10の温度計93の空気加熱器高温側入口空気温度は監視されており、システムの運用に役立てられている。第11の温度計94の空気加熱器高温側出口空気温度は、空気加熱器78の低温空気のリーク量(回転再生式の場合において構造上生じる漏れ流れの量)の影響に関係するものであり、監視されてシステムの運用に役立てられている。
【0056】
このとき、蒸気タービン発電系3において、空気ボイラ系2の空気ボイラ73から流出した過熱蒸気は、主蒸気配管144を介して蒸気タービン141に導入され、蒸気タービン141を回転駆動する。蒸気タービン141の回転駆動により発電機142が駆動されて発電する。蒸気タービン141に導入される過熱蒸気の流量は、蒸気タービン制御弁148により調整される。また、この過熱蒸気の温度は、第12の温度計147により検出される。
【0057】
蒸気タービン141を駆動して排出された蒸気は、蒸気タービン排気ダクト145を介して復水器151に流入し、そこで、冷却ファン151aにより送出された大気空気を冷却空気として冷却されて水に戻る。復水器151の復水は、復水ポンプ158により昇圧されて復水配管154を介して脱気器152に供給される。そこで、蒸気タービン141から抽気配管156を介して供給された抽気蒸気により加熱され脱気される。脱気器152で脱気された給水は、給水ポンプ159により昇圧されて給水配管155を介して空気ボイラ系2の空気ボイラ73に供給される。給水の流量は、給水流量調整弁161により調整され、給水流量計162により検出される。
【0058】
空気ボイラ73に供給された給水は、空気ボイラ73の節炭器74、蒸発器75、過熱器76を順次通過し、そこで、空気ボイラ系2の高温空気により加熱される。節炭器74では給水が予熱され、蒸発器75では節炭器74からの予熱された給水から飽和蒸気が生成され、過熱器76では蒸発器75からの飽和蒸気から過熱蒸気が生成される。この過熱蒸気は、蒸気タービン141に再度導入され、上記のように循環する。
【0059】
また、蒸気タービン発電系3の発電機142が発電した電力は、主変圧器173により系統電圧まで昇圧され、主回路171を介し主遮断器174を通過して外部系統200に送られる。このとき、発電機142の出力は、発電機出力検出器172により検出される。
【0060】
次に、本発明の太陽熱発電システムの第1の実施の形態を構成する空気ボイラ系の熱媒体熱交換器及び空気ボイラの作用を
図2及び
図3を用いて説明する。
図3は
図2に示す本発明の太陽熱発電システムの第1の実施の形態の一部を構成する空気ボイラ系の熱媒体熱交換器及び空気ボイラにおける各種の熱媒体の温度変化を示す特性図である。
図3中、縦軸Tは温度を、横軸は熱媒体熱交換器及び空気ボイラの位置をそれぞれ示している。なお、
図3において、
図1及び
図2に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0061】
図2に示す空気ボイラ系2の熱媒体熱交換器72では、空気加熱器78(
図1参照)からの空気が熱交換器入口ダクト81を介してケーシング101内を流通している。このとき、太陽熱集熱系1の高温の第1熱媒体が熱交換器入口配管22を介して熱媒体熱交換器72に導入される。この高温の第1熱媒体は、熱交換器入口ヘッダ103を経由してケーシング101内に配設されている複数の熱交換器伝熱管102内を流通する。各熱交換器伝熱管102を流通する第1熱媒体は、ケーシング101内を流れる空気との熱交換により熱を放出して、熱交換器出口ヘッダ104で合流する。熱交換器出口ヘッダ104に集められた第1熱媒体は、第3タンク入口配管23を介して熱媒体熱交換器72から流出する。熱交換器伝熱管102を流通する第1熱媒体の温度は、
図3に示すように、第1熱媒体が熱交換器入口ヘッダ103から熱交換器出口ヘッダ104に向かう間に空気に放熱することで、徐々に低下していく。
【0062】
それに対して、空気ボイラ系2の空気は、各熱交換器伝熱管102の外表面側を流れるので、各熱交換器伝熱管102を流通する高温の第1熱媒体との熱交換により加熱される。この空気の温度は、
図3に示すように、下流側に向かって徐々に上昇し計画空気温度に到達する。これにより、熱媒体熱交換器72の後段に位置する空気ボイラ73の加熱源として、この空気を用いることができる。
【0063】
熱媒体熱交換器72で加熱された高温の空気は、
図2に示すように、空気ボイラ73のボイラケーシング111内を流通し、過熱器76、蒸発器75、節炭器74を順次通過する。この高温空気は、過熱器76、蒸発器75、節炭器74の各々の伝熱管132、122、112の外表面を順次通過する際に、蒸気タービン発電系3からの給水から過熱蒸気を生成する加熱源として放熱する。そのため、空気の温度は、
図3に示すように、空気ボイラ73の下流側に向かって徐々に降下していく。
【0064】
一方、空気ボイラ73には、蒸気タービン発電系3の給水配管155を介して給水が導入される。この給水は、先ず、節炭器74の節炭器入口ヘッダ113を経由してボイラケーシング111内に配設されている複数の節炭器伝熱管112内を流通する。各節炭器伝熱管112を流通する給水は、ボイラケーシング111内を流れる空気との熱交換により加熱され、節炭器出口ヘッダ114で合流する。節炭器出口ヘッダ114に集められた加熱された給水は、節炭器出口管115を介して蒸発器75へ流入する。節炭器伝熱管112を流通する給水の温度は、
図3に示すように、給水が節炭器入口ヘッダ113から節炭器出口ヘッダ114に向かう間に高温空気の加熱により徐々に上昇していく。
【0065】
節炭器74からの給水は、蒸発器入口ヘッダ123を経由してボイラケーシング111内に配設されている複数の蒸発器伝熱管122内を流通する。各蒸発器伝熱管122を流通する給水は、ボイラケーシング111内を流れる空気との熱交換により加熱されて、飽和蒸気と飽和水とが混合した状態の二相流体となり、蒸発器出口ヘッダ124で合流する。蒸発器伝熱管122を流通する給水の温度は、
図3に示すように、給水が蒸発器入口ヘッダ123から蒸発器出口ヘッダ124に向かう間に高温空気からの加熱により飽和蒸気が生成され略一定である。
【0066】
この二相流体は、汽水分離器入口配管126を介して汽水分離器125に流入し、そこで、飽和蒸気と飽和水に分離される。汽水分離器125で分離された飽和水は、循環ポンプ129で昇圧されて戻り管128を介して節炭器74からの給水と合流し、再び蒸発器入口ヘッダ123に戻る。この飽和水は、節炭器74からの給水と共に蒸発器75内を再循環して空気との熱交換により加熱され、再度二相流体となる。一方、汽水分離器125で分離された飽和蒸気は、汽水分離器出口配管127を介して過熱器76へ流入する。
【0067】
蒸発器75からの飽和蒸気は、過熱器入口ヘッダ133を経由してボイラケーシング111内に配設されている複数の過熱器伝熱管132内を流通する。各過熱器伝熱管132を流通する飽和蒸気は、ボイラケーシング111内を流れる空気との熱交換により加熱されて過熱蒸気となり、過熱器出口ヘッダ134で合流する。過熱器出口ヘッダ134に集められた過熱蒸気は、主蒸気配管144を介して蒸気タービン141へ導入され発電に利用される。過熱器伝熱管132を流通する過熱蒸気の温度は、
図3に示すように、過熱器入口ヘッダ133から過熱器出口ヘッダ134に向かう間に高温空気の加熱により徐々に上昇し計画蒸気温度に到達する。
【0068】
次に、本発明の太陽熱発電システムの第1の実施の形態の各種の状態における太陽熱発電方法を
図1及び
図4を用いて説明する。
図4は某地点における直達日射強度の実測値の一例を示す図である。
図4中、縦軸Iは直達日射強度を、横軸tは時間をそれぞれ示している。
【0069】
本実施の形態において、
図1に示す制御装置4は、原則、発電機142の出力が計画出力値となるように制御する。そのため、発電機出力検出器91の検出した発電機出力信号を読み込み、発電機142の142の出力変化を常に監視している。
【0070】
制御装置4は、発電機142の出力を増減させる場合、例えば、太陽熱集熱系1の熱交換器入口弁32及び熱交換器出口弁33の開度を制御し、空気ボイラ系2の空気の加熱源としての第1熱媒体の熱媒体熱交換器72への供給量を調整する。さらに、空気ボイラ系2の吸気側ダンパ86を制御し、空気ボイラ系2の空気ボイラ73の加熱源としての空気の流量を調整する。加えて、蒸気タービン発電系3の給水流量調整弁161の開度を制御し、空気ボイラ73への給水量を調整する。これらの相互の流量調整により空気ボイラ73で生成される過熱蒸気の生成量を調整する。最終的には、蒸気タービン制御弁148の開度を制御し、蒸気タービン141に導入される過熱蒸気の流量を調整する。これにより、蒸気タービン141の出力値を目標出力値に追従させることができ、発電機142の出力が増減する。
【0071】
この時、制御装置4は、第12の温度計147の検出した蒸気タービン入口主蒸気温度が蒸気タービン141の運用温度幅内(計画蒸気温度)であるか否かを判定(監視)する。運用温度の範囲外であると判定した場合、例えば、蒸気タービン入口の主蒸気温度の急激な低下が生じたような場合には、蒸気タービン141を緊急停止させる。また、第8の温度計91の検出した熱交換器出口空気温度が計画空気温度であるか否かを判定(監視)する。空気ボイラ73において、第8の温度計91の熱交換器出口空気温度は、一般的な化石燃料をボイラ火炉内で燃焼させて高温ガスを生み出し蒸気を発生させる時の火炉出口ガス温度に相当するので、発生する蒸気の温度変化に大きな影響を及ぼす。そこで、制御装置4は、第8の温度計91の検出した熱交換器出口空気温度信号を入力信号とし、発生蒸気の温度変化の予想制御に活用する。
【0072】
また、発電機の出力を増減させる場合、制御装置4は、太陽熱集熱系1の熱交換器入口弁32及び熱交換器出口弁33の開度を制御する代わりに、太陽熱集熱系1の熱交換器バイパス弁56の開度を制御することも可能である。この場合、熱交換器バイパス弁56の開度制御により、第2タンク15から熱媒体熱交換器72を迂回する第1熱媒体の流量を調整することで、熱媒体熱交換器72への第1熱媒体の供給量を調整する。つまり、熱交換器バイパス弁56は、熱交換器入口弁32及び熱交換器出口弁33と同様な機能を発揮する。例えば、発電機142の発電量を低下させる場合、第2タンク15から熱媒体熱交換器72を迂回する第1熱媒体の流量が増加するように熱交換器バイパス弁56を制御する。
【0073】
また、蒸気タービン発電系3が外部系統200から切り離された場合、制御装置4は、発電機出力検出器172の検出した発電機出力信号又は主遮断器174の開信号を読み込み、発電機142が緊急遮断されたと判定する。この場合、熱交換器バイパス弁56を全開させる制御を行う。これにより、第2タンク15からの第1熱媒体の大部分が熱交換器バイパス配管55を通過して熱媒体熱交換器72を迂回し第3タンク16に流入するので、熱媒体熱交換器72に供給される第1熱媒体の流量を急減させることができる。このため、熱媒体熱交換器72で生じる高温空気の温度が低下し、空気ボイラ73での蒸気発生量を急激に減少させることができる。さらに、給水流量調整弁161を全閉させる制御を行う。これにより、空気ボイラ73への給水が停止され、最終的に、蒸気の生成が停止される。制御装置4は、さらに、ヘリオスタット11に集光停止信号を出力する。これにより、ヘリオスタット11では、タワー受熱器12への集光量が0となるように平面鏡の向きや角度を調整され、太陽熱の集熱が停止される。以上により、集熱装置10、空気ボイラ73、蒸気タービン141、発電機142を安全に停止することができる。
【0074】
ところで、
図4の符号Xで示すように直達日射強度が数分間のみ急減したような場合、例えば、雲が太陽の前を一時的に横切った場合、
図1に示す集熱装置10による太陽熱の集熱量はそれに応じて急減する。この場合、集熱装置10から第2タンク15に流入する第1熱媒体の温度は低下するが、第2タンク15内に収容されている第1熱媒体の容量の大きさ(保有する熱量)に応じて第2タンク15内の第1熱媒体の温度低下が軽減される。すなわち、第2タンク15内に一時的に所定以上の容量の第1熱媒体を保持しておくことで、直達日射強度が数分程度急減した場合であっても、第2タンク15内の第1熱媒体の温度を略一定に保つことができる。したがって、直達日射強度の変動によらず、熱媒体熱交換器72に供給される第1熱媒体の温度を略一定に維持することができ、過熱蒸気の発生量や温度の影響を低減することができる。
【0075】
一方、直達日射強度が数時間低下することが想定される場合、集熱装置10による太陽熱の集熱量が低下した状態が継続することになる。この場合、温度の低下した第1熱媒体が第2タンク15に流入し続けることになり、第2タンク15内の第1熱媒体の温度が低下する虞がある。この場合、制御装置4は、第4の温度計50の受熱器出口熱媒体温度信号、第2の温度計48の第2タンク熱媒体温度信号、第5の温度計51の熱交換器入口熱媒体温度を入力信号として、熱媒体流量調整弁27の絞り制御を行う。これにより、第1タンク14から集熱装置10に供給される第1熱媒体の流量が絞られ、タワー受熱器12から流出する第1熱媒体の温度を所定の温度に維持することができる。第2タンク15は第1熱媒体を一時的に収容しているので、第2タンク15に供給される第1熱媒体の流量が減少しても、第2タンク15から熱媒体熱交換器72に供給する第1熱媒体の流量を一定量に維持することができる。したがって、直達日射強度が長時間低下した場合であっても、所定の温度の第1熱媒体を熱媒体熱交換器72に供給することができるので、過熱蒸気の発生量を維持できる。そのため、発電機142の出力を略一定に維持することができる。
【0076】
上述したように、本発明の太陽熱発電システム及び太陽熱発電方法の第1の実施の形態によれば、過熱蒸気生成のための加熱源として高温の空気を用いるので、過熱蒸気生成のための空気ボイラ(熱交換器)73は、液体の熱媒体を加熱源とする場合と異なり、空気による腐食の懸念がなく、空気の流通部分には炭素鋼等の一般的な低級材料を使用可能である。また、空気の比重は液体の熱媒体よりも小さく、空気ボイラ(熱交換器)73を流れる空気は、液体の熱媒体の場合よりも摩擦が小さく低圧状態での流通が可能なので、空気ボイラ(熱交換器)73の構成部品の強度や板厚を、液体の熱媒体を加熱源とする場合よりも小さくすることが可能である。したがって、発電システムの設備コストを低減することができる。
【0077】
また、本実施の形態によれば、燃料を用いることなく、太陽熱を利用して過熱蒸気を生成して発電するので、燃料の投入により過熱蒸気を生成して発電するシステムと比較して、発電コストを低減することができる。
【0078】
さらに、本実施の形態によれば、大気を押込みファンで系内に取り込み、この大気(空気)を空気ボイラ73の加熱源として利用するので、加熱源としての空気を循環させる必要がなく、空気の貯留設備も不要となる。
【0079】
また、本実施の形態によれば、熱媒体熱交換器72のケーシング101と空気ボイラ73のボイラケーシング111を一体構造としたので、構造の簡素化を図ることができる。
【0080】
さらに、本実施の形態によれば、空気ボイラ系2の空気加熱器78において、大気から吸込まれた低温の吸込み空気が空気ボイラ73から排出された高温の排出空気により予熱されるので、大気に排出される排気空気の熱が吸込み空気に回収される。したがって、太陽熱の有効利用を図ることができる。
【0081】
さらにまた、本実施の形態によれば、液体の熱媒体が熱媒体熱交換器72を迂回する熱交換器バイパス系統54を太陽熱集熱系1に設けたので、熱媒体熱交換器72へ供給する第1熱媒体の流量を調整することができる。特に、蒸気タービン141を緊急停止させる場合には、第1熱媒体を熱交換器バイパス系統54に流通させることで、熱媒体熱交換器72に供給される第1熱媒体の流量を容易に急減させることができる。
【0082】
加えて、本実施の形態によれば、熱媒体熱交換器72を迂回した高温の第1熱媒体を第3タンク16で収容するように構成したので、集熱装置10に供給する第1熱媒体を収容する第1タンク14を、高温熱媒体の収容を考慮せずに、低温熱媒体を収容する仕様で設計すればよい。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の太陽熱発電システム及び太陽熱発電方法の第2の実施の形態を
図5を用いて説明する。
図5は本発明の太陽熱発電システムの第2の実施の形態を示す構成図である。
図5中、矢印は、本発電システムにおける各種の熱媒体の流れの方向を示している。なお、
図5において、
図1乃至
図4に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0083】
図5に示す太陽熱発電システム及び太陽熱発電方法の第2の実施の形態は、第1の実施の形態の太陽熱集熱系1の構成に対して、夜間の放熱運転による発電を可能とする蓄熱セクション60を追加すると共に、新たなセクションの追加に伴い不要な構成を削除したものである。
【0084】
具体的には、太陽熱集熱系1Aは、第1の実施の形態と同様の集熱装置10と、第1の実施の形態とは構成が一部異なる循環セクション13Aと、集熱装置10で加熱した第1熱媒体を循環させずに貯留する蓄熱セクション60とを備えている。循環セクション13Aは、第1の実施の形態の循環セクション13のうち、第2タンク15、第2タンク入口配管20、第2タンク出口配管21、及び第2移送ポンプ30を削除する。その代わり、受熱器出口配管19から分岐して熱交換器入口配管22に接続された循環配管58と、循環配管58に設けられた循環流量調整弁59とを備えている。
【0085】
蓄熱セクション60は、蓄熱タンク61と、受熱器出口配管19から分岐して蓄熱タンク61の入口に接続された蓄熱タンク入口配管62と、蓄熱タンク61の出口と循環配管58に接続された蓄熱タンク出口配管63とを備えている。蓄熱タンク入口配管62には、蓄熱タンク流量調整弁64、蓄熱タンク入口弁65が下流側に向かって順に設けられている。蓄熱タンク出口配管63には、蓄熱タンク出口弁66、第4移送ポンプ67が下流側に向かって順に設けられている。蓄熱タンク61には、蓄熱タンク61内の熱媒体の温度(蓄熱タンク熱媒体温度)を検出する蓄熱タンク温度計68が設置されている。
【0086】
本実施の形態において、「第1ライン」及び「第3ライン」は第1の実施の形態と同じ構成である。また、「集熱装置で加熱された液体の熱媒体を熱媒体熱交換器に供給する第2ライン」を、受熱器出口配管19、循環配管58、及び熱交換器入口配管22が構成する。また、蓄熱タンク入口配管62及び蓄熱タンク出口配管63が「第2ラインの上流側と下流側の部分に接続される第4ライン」を構成し、「第4ライン」上に蓄熱タンク61を設けた構成となっている。
【0087】
太陽熱発電システムの制御装置4Aは、第1の実施の形態の制御装置4と同様に、蒸気タービン発電系3の発電量の制御やシステム運転の停止を行うものであるが、第1の実施の形態の制御装置4が読み込む信号の他に、蓄熱タンク温度計68が検出した蓄熱タンク熱媒体温度も読み込む。制御装置4は、また、第1の実施の形態の制御装置4が制御する操作端の他に、循環流量調整弁59、蓄熱タンク流量調整弁64、第4移送ポンプ67を制御する。
【0088】
次に、本発明の太陽熱発電システム及び太陽熱発電方法の第2の実施の形態の日中の発電及び蓄熱方法を説明する。まず、蓄熱タンク入口弁65を開状態にすると共に、蓄熱タンク出口弁66を閉状態にする。これにより、蓄熱セクション60を蓄熱モードにする。集熱装置10のタワー受熱器12から流出した高温の第1熱媒体は、蓄熱タンク入口配管62及び循環配管58に分流する。高温の第1熱媒体の一部は、蓄熱タンク入口配管62を介して蓄熱タンク61に流入し、そこで、放熱運転時まで貯留される。一方、残りの第1熱媒体は、循環配管58及び熱交換器入口配管22を介して熱媒体熱交換器72に供給される。熱媒体熱交換器72及び蓄熱タンク61に供給される第1熱媒体の流量は、発電量計画に従って発電量と蓄熱量のバランスを取って決められる。これらの流量は、制御装置4Aにより循環流量調整弁59及び蓄熱タンク流量調整弁64を相互に制御することによって調整される。つまり、制御装置4Aは、熱媒体熱交換器72及び蓄熱タンク61に供給する第1熱媒体の流量の分配制御を行う。
【0089】
具体的には、蓄熱量を減らす場合には、制御装置4Aが循環流量調整弁59の開度を大きくする制御を行い、通過流量を増加させる。蓄熱量を増加させる場合には、制御装置4Aが蓄熱タンク流量調整弁64の開度を大きくする制御を行い、通過流量を増加させる。熱媒体熱交換器72に供給される第1熱媒体の流量に応じて空気ボイラ73で生成される過熱蒸気の生成量が調整される。蓄熱タンク61内の第1熱媒体の温度は、蓄熱タンク温度計68により検出される。制御装置4Aは、蓄熱タンク温度計68の蓄熱タンク熱媒体温度信号を読み込み常時監視する。これにより、高温の第1熱媒体が蓄熱タンク61に蓄熱されていることを確認する。
【0090】
なお、日中の発電の際の空気ボイラ系2及び蒸気タービン発電系3の動作は、前述した第1の実施の形態と同様なものであり、その説明を省略する。
【0091】
次に、夜間等の放熱運転による発電方法を説明する。まず、蓄熱タンク入口弁65を全閉状態にすると共に、蓄熱タンク出口弁66を開状態にする。その後、制御装置4Aにより第4移送ポンプ67を駆動させる制御を行う。これにより、蓄熱タンク61内に貯留されている高温の第1熱媒体が第4移送ポンプ67により昇圧されて蓄熱タンク出口配管63及び熱交換器入口配管22を介して熱媒体熱交換器72に移送され、空気ボイラ系2の吸込み空気を加熱する。放熱運転による発電の場合でも、空気ボイラ系2及び蒸気タービン発電系3の動作は、前述した第1の実施の形態の空気ボイラ系2及び蒸気タービン発電系3の日中の発電時の動作と同様なものであり、その説明を省略する。
【0092】
なお、放熱運転時において、熱媒体熱交換器72に供給する第1熱媒体の流量を以下のように調整することが可能である。制御装置4Aにより循環流量調整弁59の開度を制御し、蓄熱タンク61から第4移送ポンプ67により吐出されて熱媒体熱交換器72に供給する第1熱媒体の一部を循環配管58を介して蓄熱タンク61に還流させる。つまり、循環流量調整弁59の開度を調整することで、熱媒体熱交換器72に供給する第1熱媒体及び蓄熱タンク61に再循環させる第1熱媒体の流量を調整する。
【0093】
上述したように、本発明の太陽熱発電システム及び太陽熱発電方法の第2の実施の形態によれば、前述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0094】
また、本実施の形態によれば、集熱装置10で加熱した液体の熱媒体を循環させずに貯留する蓄熱セクション60を備えているので、太陽熱を集熱できない夜間等に第1熱媒体の放熱による発電が可能となる。
【0095】
[その他の実施形態]
なお、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0096】
例えば、上述した第1及び第2の実施の形態においては、集熱装置10として、タワー型の装置を採用した例を示したが、トラフ型やフレネル型又はそれらの組み合わせた装置を採用可能である。
【0097】
また、上述した実施の形態においては、第1熱媒体として、溶融塩を用いた例を示したが、合成油等の各種の液体の熱媒体を用いることが可能である。
【0098】
なお、上述した実施の形態においては、太陽熱集熱系1、1Aが第3タンクを備えた例を示したが、第3タンクを省略した太陽熱集熱系も可能である。しかし、この場合、熱媒体熱交換器72を迂回した高温の第1熱媒体を第1タンク14により収容する必要があるので、高温熱媒体を収容する仕様で第1タンク14を設計する必要がある。また、第3タンクは、循環する第1熱媒体の圧力の変動を緩和するといる有利な効果を備えている。