特許第6600685号(P6600685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6600685プローブアダプタ、超音波撮像装置、超音波撮像方法、および、超音波撮像プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6600685
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】プローブアダプタ、超音波撮像装置、超音波撮像方法、および、超音波撮像プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
   A61B8/14ZDM
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-528328(P2017-528328)
(86)(22)【出願日】2016年6月7日
(86)【国際出願番号】JP2016066819
(87)【国際公開番号】WO2017010193
(87)【国際公開日】20170119
【審査請求日】2018年4月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-139908(P2015-139908)
(32)【優先日】2015年7月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】新井 竜雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 悟史
(72)【発明者】
【氏名】河尻 武士
【審査官】 宮川 哲伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−284136(JP,A)
【文献】 特開昭59−111744(JP,A)
【文献】 特開2005−137581(JP,A)
【文献】 特開2011−217927(JP,A)
【文献】 特開2012−029718(JP,A)
【文献】 特開2004−229958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被撮像物の凸状の膨らみを有する横断面の外周に沿う、凹状の当接面と、
超音波送受面を有するプローブを所定の角度で固定し、前記プローブの超音波送受面を前記当接面側に露出させ、前記超音波送受面を前記被撮像物の表面に接触させて前記プローブを前記横断面の外周に沿って動かす場合に、前記当接面と前記被撮像物の表面との接触面積が前記超音波送受面と前記被撮像物の表面との接触面積よりも大きい状態で前記被撮像物の表面に対する前記プローブの角度を一定に保つ固定部と、を備えた、
プローブアダプタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプローブアダプタであって、
前記当接面は、前記固定部に固定される前記プローブの超音波送受面に対して傾いている、プローブアダプタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプローブアダプタであって、
前記当接面側の部分が着脱自在に構成された、プローブアダプタ。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のプローブアダプタであって、
前記固定部が設けられた筐体部を備え、
前記当接面が前記筐体部に対して回動自在に構成された、プローブアダプタ。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のプローブアダプタであって、
前記超音波送受波面が前記被撮像物の表面に対して回動自在に構成された、プローブアダプタ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のプローブアダプタと、前記プローブアダプタに所定の角度で固定されるプローブと、
前記プローブから前記被撮像物の内部に超音波を繰り返し送信し、前記超音波を送信するたびに前記被撮像物の内部で反射した超音波を前記プローブで受信する送受処理部と、
前記プローブで受信した前記超音波に基づいて前記被撮像物の内部を部分的に撮像した断片画像を生成する断片画像生成部と、
を備えた、超音波撮像装置。
【請求項7】
被撮像物の凸状の膨らみを有する横断面の外周に沿う、凹状の当接面と、前記当接面側に露出した超音波送受面と、を有し、前記超音波送受面を前記被撮像物の表面に接触させて前記横断面の外周に沿って動かす場合に、前記当接面と前記被撮像物の表面との接触面積が前記超音波送受面と前記被撮像物の表面との接触面積よりも大きい状態で前記被撮像物の前記表面に対する前記プローブの角度を一定に保つプローブと、
前記プローブから前記被撮像物の内部に超音波を繰り返し送信し、前記超音波を送信するたびに前記被撮像物の内部で反射した超音波を前記プローブで受信する送受処理部と、
前記プローブで受信した前記超音波に基づいて前記被撮像物の内部を部分的に撮像した断片画像を生成する断片画像生成部と、
を備えた、超音波撮像装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の超音波撮像装置であって、
前記断片画像生成部が生成した複数の前記断片画像を合成する画像合成部を更に備えた、
超音波撮像装置。
【請求項9】
請求項8に記載の超音波撮像装置であって、
前記送受処理部は、前記超音波送受面から帯状に延びる範囲を撮像するリニアスキャンモードで前記プローブを駆動させる状態と、前記超音波送受面から扇状に広がる範囲を撮像するセクタスキャンモードで前記プローブを駆動させる状態と、を繰り返し切り替える、
超音波撮像装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の超音波撮像装置であって、
前記超音波送受面が向く方向を検出する角度センサを更に備え、
前記画像合成部は、前記角度センサが検出した角度に基づいて、前記複数の断片画像を部分的に重ね合わせた画像を合成する、
超音波撮像装置。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の超音波撮像装置であって、
前記画像合成部は、前記複数の断片画像それぞれに含まれている部分同士のマッチングに基づいて、前記複数の断片画像同士を部分的に重ね合わせた画像を合成する、
超音波撮像装置。
【請求項12】
被撮像物の凸状の膨らみを有する横断面の外周に沿う、凹状の当接面と、超音波送受面を有するプローブを固定し、前記プローブの超音波送受面を前記当接面側に露出させ、前記超音波送受面を前記被撮像物の表面に接触させて前記プローブを前記横断面の外周に沿って動かす場合に、前記当接面と前記被撮像物の表面との接触面積が前記超音波送受面と前記被撮像物の表面との接触面積よりも大きい状態で前記被撮像物の表面に対する前記プローブの角度を一定に保つ固定部とを備えたプローブアダプタに固定されるプローブから、前記被撮像物の内部に超音波を繰り返し送信し、前記超音波を送信するたびに前記被撮像物の内部で反射した超音波をプローブで受信する送受処理ステップと、
前記送受処理ステップで受信した前記超音波に基づいて前記被撮像物の内部を部分的に撮像した断片画像を生成する断片画像生成ステップと、
前記断片画像生成ステップで生成した複数の前記断片画像を合成する画像合成ステップと、を実行する超音波撮像方法。
【請求項13】
被撮像物の凸状の膨らみを有する横断面の外周に沿う、凹状の当接面と、前記当接面側に露出した超音波送受面とを有し、前記超音波送受面を前記被撮像物の表面に接触させて前記横断面の外周に沿って動かす場合に、前記当接面と前記被撮像物の表面との接触面積が前記超音波送受面と前記被撮像物の表面との接触面積よりも大きい状態で前記被撮像物の前記表面に対する前記プローブの角度を一定に保つプローブから、前記被撮像物の内部に超音波を繰り返し送信し、前記超音波を送信するたびに前記被撮像物の内部で反射した超音波をプローブで受信する送受処理ステップと、
前記送受処理ステップで受信した前記超音波に基づいて前記被撮像物の内部を部分的に撮像した断片画像を生成する断片画像生成ステップと、
前記断片画像生成ステップで生成した複数の前記断片画像を合成する画像合成ステップと、を実行する超音波撮像方法。
【請求項14】
被撮像物に送信した超音波が前記被撮像物の内部で反射して得られる超音波から前記被撮像物の内部を撮像する処理をコンピュータに実行させる超音波撮像プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記被撮像物の凸状の膨らみを有する横断面の外周に沿う、凹状の当接面と、超音波送受面を有するプローブを所定の角度で固定し、前記プローブの超音波送受面を前記当接面側に露出させ、前記超音波送受面を前記被撮像物の表面に接触させて前記プローブを前記横断面の外周に沿って動かす場合に、前記当接面と前記被撮像物の表面との接触面積が前記超音波送受面と前記被撮像物の表面との接触面積よりも大きい状態で前記被撮像物の表面に対する前記プローブの角度を一定に保つ固定部とを備えたプローブアダプタに固定されるプローブから、前記被撮像物の内部に超音波を繰り返し送信し、前記超音波を送信するたびに前記被撮像物の内部で反射した超音波をプローブで受信する送受処理ステップと、
前記送受処理ステップで受信した前記超音波に基づいて前記被撮像物の内部を部分的に撮像した断片画像を生成する断片画像生成ステップと、
前記断片画像生成ステップで生成した複数の前記断片画像を合成する画像合成ステップと、
を実行させる超音波撮像プログラム。
【請求項15】
被撮像物に送信した超音波が前記被撮像物の内部で反射して得られる超音波から前記被撮像物の内部を撮像する処理をコンピュータに実行させる超音波撮像プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記被撮像物の凸状の膨らみを有する横断面の外周に沿う、凹状の当接面と、前記当接面側に露出した超音波送受面とを有し、前記超音波送受面を前記被撮像物の表面に接触させて前記横断面の外周に沿って動かす場合に、前記当接面と前記被撮像物の表面との接触面積が前記超音波送受面と前記被撮像物の表面との接触面積よりも大きい状態で前記被撮像物の表面に対する前記プローブの角度を一定に保つプローブから、前記被撮像物の内部に超音波を繰り返し送信し、前記超音波を送信するたびに前記被撮像物の内部で反射した超音波をプローブで受信する送受処理ステップと、
前記送受処理ステップで受信した前記超音波に基づいて前記被撮像物の内部を部分的に撮像した断片画像を生成する断片画像生成ステップと、
前記断片画像生成ステップで生成した複数の前記断片画像を合成する画像合成ステップと、
を実行させる超音波撮像プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を送受するプローブを用いて、人体の大腿部、上腕部、腹部等の横断面を撮像する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
大腿四頭筋は、太ももを引き上げる、膝関節を延ばす等の動きを司る大腿部の筋肉である。大腿四頭筋は高齢化に伴って筋量が著しく減少するため、大腿四頭筋の減少が高齢者の歩行難や転倒の要因となる。したがって、高齢者の歩行難や転倒についての診療時には、大腿四頭筋の筋量などを把握する必要がある。そこで、従来、CT(Computed Tomography)装置やMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置を用いて、大腿部の横断面全体が撮像されることがあった。
【0003】
ただし、CT装置やMRI装置は高価かつ撮像時間が長いことから、より簡便な撮像技術が望まれていた。そこで、超音波を用いて人体の横断面を広範囲に撮像する技術や、超音波を用いて筋量を測定する技術が各種考案されている(例えば、特許文献1乃至3および非特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1に開示された超音波撮像装置は、大腿部の周面に沿って配置される複数のプローブを備え、各プローブ近傍を撮像した複数の断片画像を生成する。そして、生成した複数の断片画像を合成することにより、人体の横断面を広範囲に撮像した画像を生成する。
【0005】
特許文献2に開示された超音波撮像装置は、大腿部が投入される水槽と、水槽の外周面に沿って設けた単一のプローブと、プローブを水槽の外周面に沿って移動させるモータと、を備え、プローブを移動させながら複数の断片画像を生成する。そして、生成した複数の断片画像を合成することにより、人体の横断面を広範囲に撮像した画像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−137581号公報
【特許文献2】特開2001−087267号公報
【特許文献3】実開平3−29111号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】福永哲夫、音波測定法による筋の単位面積当たりの筋力の算出、体育學研究、1969
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2で示した従来の超音波撮像装置は、構成が複雑かつ大規模であり、また、プローブの装着等の手間がかかるために、人体の横断面の撮像に比較的長い時間がかかる。
【0009】
また、一般的な構成の超音波撮像装置を用いてオペレータがプローブを把持し、プローブを動かすことで人体の横断面を広範囲に撮像することが考えられる。ただし、このようにして人体の横断面を広範囲に撮像するためには、オペレータが、プローブの角度を人体の表面に対して適切な角度となるように維持しながら、撮像しようとする横断面に沿ってプローブを動かす必要がある。しかしながら、オペレータにとって、プローブを動かしながら適切な角度を維持し続けることは容易でなかった。
【0010】
一回の撮像で出来るだけ広範囲の撮像を行うためには、一般的に、人体の表面と接触する先端面の幅が広いプローブを用いることが有効である。しかしながら、対象となる部位が曲面である場合、先端面の幅が広いプローブは、先端面の端の部分が人体の表面から離れやすくなるため、プローブの先端面を人体の表面に強く押し当てる必要が生じてしまう。すると、人体の表面や内部組織に変形が生じてしまうために、内部組織の形状を正確に撮像することが困難になってしまう。
【0011】
そこで、本発明の目的は、オペレータが超音波撮像装置のプローブを把持してプローブを動かす際に、被撮像物に対してプローブを強く押しつけないで、プローブを適切な角度に維持することを容易化する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係るプローブアダプタは、被撮像物の横断面の外周に沿う形状の当接面を備えている。該プローブアダプタは、超音波送受面を有するプローブを所定の角度で固定し、超音波送受面を当接面側に露出させる。
【0013】
このプローブアダプタをプローブに取り付けることにより、大腿部のような曲面を有する被撮像物に対して、プローブを当接させた状態で被撮像物の表面に沿って動かす場合でも、プローブアダプタによってプローブと被撮像物との接触面積を大きく維持した状態とすることができる。このため、被撮像物の表面に超音波送受面の全面が接触するような幅狭なプローブを用いて、被撮像物の表面に対するプローブの角度を一定に保ちながらプローブを動かすことが容易になる。したがって、プローブを被撮像物の表面に強く押しつけずに、被撮像物の内部組織の形状を正確に撮像することができる。
【0014】
また、この発明に係る超音波撮像装置は、上述したプローブアダプタおよびプローブ、またはプローブアダプタと同等の当接面を有するプローブを備えている。該超音波撮像装置は、プローブから被撮像物の内部に超音波を繰り返し送信し、超音波を送信するたびに被撮像物の内部で反射した超音波をプローブで受信する。そして、該超音波撮像装置は、受信した超音波に基づいて被撮像物の内部を部分的に撮像した断片画像を生成する。また、該超音波撮像装置は、断片画像生成部が生成した複数の断片画像を合成することが好ましい。ここで、断片画像とは、1回のリニアスキャンモードまたはセクタスキャンモードでの撮像により得られる画像であり、一般的な構成の超音波診断装置(超音波撮像装置)で得られる画像と同等のものである。
【0015】
この構成では、オペレータがプローブを動かす際にプローブの角度を容易に安定させることができるので、被撮像物の内部を一定の角度条件下で様々な方向から撮像することができる。このため、被撮像物の内部を様々な方向から鮮明に撮像した複数の断片画像を生成することができる。また、このような断片画像を合成すれば、被撮像物の内部を鮮明かつ広範囲に撮像した画像を得ることができる。
【0016】
また、上記超音波撮像装置は、超音波送受面から帯状に延びる範囲を撮像するリニアスキャンモードでプローブを駆動させる状態と、超音波送受面から扇状に広がる範囲を撮像するセクタスキャンモードでプローブを駆動させる状態と、を繰り返し切り替えることが好ましい。
【0017】
リニアスキャンモードでは、超音波送受面から帯状に延びる範囲を鮮明に撮像することができる。ただし、被撮像物の内部組織の輪郭部分が被撮像物の表面から垂直に延びていると、リニアスキャンモードではその輪郭部分を鮮明に撮像することが難しい。一方、セクタスキャンモードでは、超音波送受面から帯状に延びる範囲よりも広い角度範囲で撮像することができるために、内部組織における被撮像物の表面から垂直に延びる輪郭部分を撮像することが可能である。したがって、リニアスキャンモードで得られる断片画像と、セクタスキャンモードで得られる断片画像とを合成することにより、プローブの近傍を鮮明に撮像し、また、内部組織の表面に垂直な輪郭部分も撮像した画像を得ることができる。
【0018】
上記超音波撮像装置は、超音波送受面が向く方向を検出する角度センサを更に備え、角度センサが検出した角度に基づいて、複数の断片画像を合成することが好ましい。
【0019】
この構成では、複数の断片画像を適切に合成することができ、被撮像物の内部をより高精度に撮像した画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
これらの発明によれば、オペレータが超音波撮像装置のプローブを把持して動かす際に、被撮像物に対してプローブを強く押しつけないで、被撮像物に対してプローブを適切な角度に容易に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施形態に係る超音波撮像装置の構成図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るプローブアダプタの展開図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るプローブの操作態様を説明する図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る超音波撮像装置の制御フローを示す図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る超音波撮像装置の画像合成処理における制御フローを示す図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る超音波撮像装置におけるスキャンモードについて説明する図である。
図7図7は、リニアスキャンモードおよびセクタスキャンモードで得られる断片画像を例示する図である。
図8図8は、断片画像を合成して得られる画像を例示する図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係るプローブの変形例を示す構成図である。
図10図10は、本発明の他の実施形態に係るプローブアダプタの変形例を示す構成図である。
図11図11は、本発明の他の実施形態に係るプローブアダプタの当接面の設定例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る超音波撮像装置、超音波撮像方法、および超音波撮像プログラムについて、図を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る超音波撮像装置の構成図である。超音波撮像装置1は、プローブ2、プローブアダプタ3、角度センサ4、および、画像処理装置11を備えている。
【0024】
プローブ2は、概略柱状であり、オペレータが把持して動かすことができるように構成されている。該プローブ2は、超音波送受面23を備えている。超音波送受面23は、プローブ2の下端面に設けられている。該プローブ2は、上端に接続されたケーブルを介して画像処理装置11の送受処理部5に接続されている。プローブ2は、画像処理装置11から送信信号が入力されることで、超音波送受面23から超音波を送信し、超音波送受面23で超音波を受信することで、超音波の受信レベルに応じた受信信号を画像処理装置11に出力する。
【0025】
より具体的には、プローブ2は、先端部21と把持部22とを備えている。超音波送受面23は、先端部21の下面に設けられている。なお、プローブ2は図1に記載のもの以外の他の形状にしてもよい。
【0026】
また、超音波送受面23は、例えば複数の超音波振動子25が1次元状に配列されたアレイ型に構成している。各超音波振動子25はケーブルを介して画像処理装置11の送受処理部5に接続されている。送受処理部5は、隣接する超音波振動子25の入出力する信号の位相差を制御することにより、超音波送受面23が送受信する超音波のビーム形状を調整するものである。なお、超音波送受面23は1つの超音波振動子のみを備える単素子型に構成してもよい。この場合には、超音波送受面23が送受信する超音波のビーム形状は一意に定まる。
【0027】
角度センサ4は、プロープ2とともにプローブアダプタ3に取り付けられて、プローブ2の鉛直方向からの傾きを検出するものである。角度センサ4は、上端に接続されたケーブルを介して画像処理装置11のインターフェース10に接続されている。なお、角度センサ4は、必ずしも設けなくてもよい。
【0028】
プローブアダプタ3は、手に収まる程度の大きさであり、プローブ2の下端側の周囲に取り付けられる。該プローブアダプタ3は、当接面33と、固定部32と、を備えている。当接面33は、大腿部等の被撮像物の横断面の外周に沿う形状である。固定部32は、プローブ2を所定の角度で固定し、プローブ2の超音波送受面23を当接面33側に露出させるものである。
【0029】
プローブアダプタ3が上記のような当接面33を有しているために、被撮像物の表面に沿ってプローブ2を動かす場合に、プローブアダプタ3によって被撮像物との接触面積を大きく維持した状態とすることができる。このため、プローブ2が、超音波送受面23の幅が狭いものであっても、被撮像物の表面に対してプローブ2の角度を一定に保ちながらプローブ2を動かすことが容易になる。
【0030】
また、プローブアダプタ3は、図2に示す構成を有している。図2(A)は、プローブアダプタ3を正面側から見た側面図である。図2(B)は、プローブアダプタ3を上面側から見た平面図である。図2(C)は、プローブアダプタ3を下面側から見た平面図である。図2(D)は、プローブアダプタ3を右側面側から見た側面図である。
【0031】
プローブアダプタ3は、筐体部31を備えている。筐体部31は、プローブアダプタ3の上面側の部分を構成する部材である。また、プローブアダプタ3は、収容部34を備えている。収容部34は、筐体部31の上面に開口して設けられた角柱状の凹みであり、角度センサ4を収容する。
【0032】
固定部32は、プローブアダプタ3の上面から垂直に延びる貫通孔からなり、貫通孔の内部でプローブ2の把持部22に接することでプローブ2を固定する。
【0033】
また、プローブアダプタ3は、筐体部31に対して着脱可能な着脱部36を更に備えている。着脱部36は、プローブアダプタ3の下面側の部分を構成する部材である。着脱部36は、磁石等を用いて、プローブアダプタ3に着脱自在に構成されている。着脱部36の下面は、当接面33として構成されている。当接面33は、溝状に凹んでいて、大腿部のような峰状の膨らみを有する撮像対象の表面と略一致する形状を有している。また、着脱部36は、図2(D)に示すように、正面側から背面側にかけて厚みが次第に薄くなるように構成されている。このため、当接面33は、プローブアダプタ3の上面に対して傾いた方向に延びている。そして、前述したようにプローブ2はプローブアダプタ3の上面に対して垂直に固定されているので、当接面33は、プローブ2に対して非垂直になっている。
【0034】
このように着脱部36をプローブアダプタ3から着脱自在に構成することによって、着脱部36を別の形状のものと交換したり、着脱部36の正面側と背面側とを入れ替えて装着したりすることができる。したがって、当接面33の曲率や傾きなどが異なる複数の着脱部36を用意しておけば、被撮像物の形状に応じた着脱部36をプローブアダプタ3に装着することが可能である。
【0035】
ここで、大腿部における大腿四頭筋の形状や筋量(大腿四頭筋の厚みや筋断面積)を把握するために、大腿部の横断面を撮像する場合を例に、プローブアダプタ3およびプローブ2の操作態様について説明する。図3(A)は大腿部の横断面を垂直な方向から見た模式図であり、図3(B)は大腿部を側方から見た模式図である。
【0036】
大腿部100は、内部に大腿四頭筋102を備えている。大腿四頭筋102は、大腿部100の前面側で膝関節付近から股関節付近まで延びる筋肉である。このような大腿部100の横断面101を撮像する場合、まず、大腿部100の表面には、オペレータにより音響カップリング材となるジェル109が塗布される。また、大腿部100の表面の形状に応じた適切な着脱部36が選択され、プローブアダプタ3に装着される。
【0037】
この状態で、オペレータが、プローブ2に取り付けたプローブアダプタ3の当接面33を、大腿部100の表面に当接させる。そして、オペレータが、プローブ2およびプローブアダプタ3を、撮像しようとする横断面101の外周に沿って動かす。
【0038】
この際、当接面33が大腿部100の横断面101の外周に沿う形状を有するので、当接面33と大腿部100の表面との接触面積が、プローブ2の超音波送受面23と大腿部100の表面との接触面積よりも大きくなる。したがって、図3(A)に示すように横断面101を垂直な方向から見て、横断面101の外周に対するプローブ2の角度をほぼ垂直に維持したまま、超音波送受面23と大腿部100の表面との接触面積が大きく維持された状態で、オペレータはプローブ2を容易に動かすことができる。また、図3(B)に示すように大腿部100を側方から見て、大腿部100の表面に対してプローブ2を一定の角度で傾いた状態に維持したまま、オペレータはプローブ2を容易に動かすことができる。
【0039】
また、図1に示す画像処理装置11は、送受処理部5、画像表示部8、制御部9、およびインターフェース10を備えている。制御部9は、断片画像生成部6、および、画像合成部7を備えている。制御部9は、CPUや記憶部から構成されている。断片画像生成部6および画像合成部7は、記憶部(図示せず)にインストールされた超音波撮像プログラムを、CPUで実行することにより、ソフトウェアとして実行される。
【0040】
送受処理部5は、超音波領域の周波数を有する信号にディレイを与えて送信信号を生成し、プローブ2に出力する。送受処理部5は、ディレイを制御することによって、プローブ2の駆動方式やビーム形状を制御することができる。また、送受処理部5は、プローブ2から受信信号が入力される。送受処理部5は、入力された受信信号にアナログデジタル変換などの処理を行い、処理を行った受信信号を制御部9に出力する。図3で示すように、プローブ2が大腿部100の表面に沿って動かされる間に、送受処理部5は、一定の時間間隔で繰り返し送信信号の出力を行い、送信信号を出力する度に、プローブ2で受信する超音波の受信信号を取得する。
【0041】
断片画像生成部6は、送受処理部5が出力する受信信号に基づいて、プローブ2の駆動方式に応じた画像変換処理により、撮像対象を部分的に撮像した断片画像を生成する。図3で示すように、プローブ2が大腿部100の表面に沿って動かされる間に、断片画像生成部6は、送受処理部5から繰り返し入力される受信信号に基づいて、大腿部100の横断面101を様々な方向から撮像した複数の断片画像を角度情報と共に生成する。
【0042】
画像合成部7は、断片画像生成部6が生成した複数の断片画像を部分的に重ね合わせて合成する。具体的には、画像合成部7は、複数の断片画像それぞれに含まれる領域同士で、特徴量を検出してマッチングすることにより、複数の断片画像を重ね合わる位置を決定する。なお、この際に、画像合成部7は、角度センサ4から得られた検出角度に基づいて断片画像を回転させ、回転させた断片画像に基づいてマッチングを行うことが好ましい。このようにすることで、各断片画像の回転角度を正確に補正することができ、より高い精度で断片画像の重ね合わせ位置を決定することができる。
【0043】
画像表示部8は、画像合成部7が合成した画像の画像信号を制御部9から受け取り、当該画像を表示する。
【0044】
図3(B)で示したように大腿部100の表面に沿ってプローブ2を動かす場合には、プローブ2が送受する超音波の方向が大腿部100の表面に対して非垂直な所定の角度方向(例えば、垂直方向から3°乃至10°傾いた方向)である場合に最も鮮明な断片画像を撮像することができる。したがって、この超音波撮像装置1では、プローブアダプタ3によってプローブ2を所定の角度方向に傾けた状態で、横断面101の鮮明な断片画像を得て、複数の断片画像を合成するので、横断面101を鮮明に撮像した断片画像を得ることができる。したがって、複数の断片画像を合成して得られる画像は、横断面101を鮮明かつ広範囲に撮像したものになる。更には、プローブアダプタ3を用いることで、プローブ2を大腿部100に強く押し付けることなく、断片画像を生成することができるので、大腿四頭筋102が変形した状態で撮像されることがなく、大腿四頭筋102を正確な形状で撮像することができる。
【0045】
次に、プローブ2の駆動方式とビーム形状について説明する。
【0046】
プローブ2は、リニアスキャンモードで駆動することができる。図4(A)は、リニアスキャンモードで駆動させたプローブ2で大腿部100の横断面101を撮像する場合を説明する図である。プローブ2がリニアスキャンモードで駆動される場合、プローブ2が有する送受処理部5は、各超音波振動子25が入出力する信号の位相をそろえることにより、プローブ2のビーム形状を超音波送受面23に対面する帯状領域103を指向するように設定することができる。このようなリニアスキャンモードでプローブ2を駆動させると、超音波撮像装置1では、帯状領域103を鮮明に撮像した断片画像を生成することができる。なお、リニアスキャンモードは、上記した方法とは別の方法で実現することもできる。例えば、送受処理部5が、超音波のビームが向く方向を、帯状領域103の内側でスイープすることによって、帯状領域103を鮮明に撮像した断片画像を生成することもできる。
【0047】
また、プローブ2は、セクタスキャンモードで駆動することもできる。図4(B)は、セクタスキャンモードで駆動させたプローブ2で大腿部100の横断面101を撮像する場合を説明する図である。プローブ2がセクタスキャンモードで駆動される場合、送受処理部5は、各超音波振動子25が入出力する信号に所定の位相差を持たせることにより、プローブ2のビーム形状を超音波送受面23に直交する方向を中心とした扇状領域104を指向するように設定することができる。このようなセクタスキャンモードでプローブ2を駆動させると、超音波撮像装置1では、扇状領域104を撮像した断片画像を生成することができる。すなわち、セクタスキャンモードでプローブを駆動させる場合には、リニアスキャンモードでプローブ2を駆動させる場合と比べると、よりも広い角度範囲を撮像することができる。
【0048】
図4(C)は、リニアスキャンモードとセクタスキャンモードとで撮像することができる内部組織102の違いを説明する図である。リニアスキャンモードでは、特定条件にある内部組織(大腿四頭筋)102の輪郭部分を撮像することが難しい場合がある。具体的には、リニアスキャンモードでは、プローブ2に直交する方向のみで超音波が送受されるために、内部組織102の輪郭部分が超音波の送受方向に対して平行な方向、すなわち大腿部100の表面に垂直な方向に延びていれば、その輪郭部分に超音波があたりにくく、またその輪郭部分での超音波の反射方向が超音波の送受方向とは異なる方向になり易い。このため、リニアスキャンモードでは、プローブ2近傍であっても、内部組織の輪郭部分が皮膚表面に対して垂直な方向に延びていれば、その輪郭部分を撮像することが困難である。
【0049】
一方、セクタスキャンモードでは、プローブ2に直交する方向を中心とする一定の角度範囲で超音波を送受するため、皮膚表面に対して垂直な方向に延びる内部組織102の輪郭部分に対しても、その輪郭部分に対して非平行な方向から超音波を送受することができる。したがって、セクタスキャンモードでは、内部組織102の輪郭部分が皮膚表面に対して垂直な方向に延びていても、その輪郭部分を撮像することが可能である。
【0050】
そこで、本実施形態においては、超音波撮像装置1でリニアスキャンモードを用いた複数の断片画像のみを合成して横断面101を広い範囲で撮像するだけでなく、セクタスキャンモードを用いた断片画像も合成することにより、皮膚表面に対して垂直な方向に延びる内部組織102の輪郭部分まで撮像された画像を得る。
【0051】
図5は、超音波撮像装置1の制御フローを例示するフローチャートである。
【0052】
超音波撮像装置1は、まず、送受処理部5によりリニアスキャンモードでプローブ2を駆動する(S101)。このときのプローブ2の駆動周波数は例えば約6MHzに設定する。これにより、プローブ2が皮膚表面から垂直方向に帯状のビーム形状で超音波を送信する。そして、プローブ2で受信した超音波の受信信号を、送受処理部5で取得する(S102)。
【0053】
また、送受処理部5は、リニアスキャンモードでのプローブ2の駆動を行った直後に、プローブ2がほぼ同じ位置にある状態で、セクタスキャンモードでプローブ2を駆動する(S103)。このときのプローブの駆動周波数は例えば約3MHzとし、リニアスキャンモードの場合よりもプローブから離れた遠方まで超音波が到達するように設定する。これにより、プローブ2が皮膚表面から垂直方向を中心とする扇状のビーム形状で超音波を送信する。そして、プローブ2で受信した超音波の受信信号を、送受処理部5で取得する(S104)。なお、セクタスキャンモードでのプローブ2の駆動と、リニアスキャンモードでのプローブ2の駆動との順番は逆であってもよい。
【0054】
次に、断片画像生成部6は、リニアスキャンモードで取得された受信信号から、帯状の断片画像を生成する(S105)。図7(A)は、リニアスキャンモードで得られる断片画像を例示する図である。また、断片画像生成部6は、セクタスキャンモードで取得された受信信号から、扇状の断片画像を生成する(S106)。図7(B)は、セクタスキャンモードで得られる断片画像を例示する図である。これらの断片画像を生成する際には、例えば、受信信号の時間軸を超音波の送信方向の位置に変換し、受信信号の振幅(反射強度)を輝度情報に変換して、断片画像を生成するとよい。
【0055】
次に、超音波撮像装置1は、先の処理で生成されたリニアスキャンモードの断片画像とセクタスキャンモードの断片画像とに基づいて、画像合成部7により大腿部100の横断面101を広範囲に撮像した画像を合成する(S107)。そして、超音波撮像装置1は、合成された画像を、画像表示部8に表示させる(S108)。
【0056】
以上のような制御フローを超音波撮像装置1は離散的な時間間隔で繰り返し、画像表示部8に表示する画像を更新する。例えば、超音波撮像装置1は、オペレータがプローブ2を大腿部100の周囲を半周程度動かす間に、上記制御フローを100〜400回程度繰り返して、画像表示部8に表示される横断面101上での領域を徐々に拡げ、最終的に画像表示部8に横断面101の全体を表示させる。
【0057】
図6は、画像合成部7での画像合成処理についてのより詳細な制御フローを示すフローチャートである。
【0058】
まず、画像合成部7は、角度センサ4の出力信号を取得して、プローブ2の鉛直方向からの傾き角を取得する(S111)。次に、画像合成部7は、断片画像生成部6から取得するリニアスキャンモードで得た断片画像を、上記傾き角に基づいて回転させる(S112)。
【0059】
次に、画像合成部7は、過去の画像合成処理で得た画像を記憶部等から取得し、当該画像に対して、上記処理で回転させた断片画像を合成する(S113)。この合成に際しては、過去に合成した画像と、回転させた断片画像とに含まれる部分ごとに輝度分布等の特徴量を検出し、特徴量同士のマッチングスコアを算出することにより、過去に合成した画像に対して断片画像を重ね合わせるべき位置を特定する。そして、特定された位置に、断片画像における輝度情報を上書きする。なお、過去に合成した画像における輝度情報と、断片画像における輝度情報とに基づいて、演算等によって、上書きする輝度情報を得るようにしてもよい。
【0060】
次に、画像合成部7は、断片画像生成部6から取得するセクタスキャンモードで得た断片画像を、先に取得した傾き角に基づいて回転させる(S114)。次に、画像合成部7は、先にリニアスキャンモードの断片画像が合成された画像に対して、上記処理で回転させたセクタスキャンモードの断片画像を合成する(S115)。この合成も、前述した合成の処理と同様に、輝度分布等の特徴量のマッチングを用いるとよい。なお、プローブ近傍での鮮明度はセクタスキャンモードでの断片画像よりもリニアスキャンモードでの断片画像のほうが優れるため、セクタスキャンモードで得られる断片画像の全体を合成するのではなく、リニアスキャンモードでは鮮明に撮像することが困難な深度が高い領域や、皮膚表面に対して垂直に延びる輪郭部分のみを合成するようにしてもよい。また、この合成処理の後に、内部組織の輪郭部分を強調するための画像処理を行ってもよい。
【0061】
図8(A)は、リニアスキャンモードで取得される断片画像のみを合成した場合の画像を例示する図である。図8(B)は、図8(A)に示した画像に対して、セクタスキャンモードで取得される断片画像を合成した場合の画像を例示する図である。図8(A)に示すリニアスキャンモードでの画像では、大腿部100の表面に平行な大腿四頭筋の輪郭部分のみが表示されているが、図8(B)に示すセクタスキャンモードの画像を合成した画像では、大腿部100の表面に平行な大腿四頭筋の輪郭部分だけでなく、大腿部100の表面に対して垂直な方向に延びる大腿四頭筋等の輪郭部分(矢示部分)まで鮮明に撮像できている。
【0062】
以上のような処理により、超音波撮像装置1では、超音波を用いて被撮像物の横断面を広範囲に撮影することができ、また、被撮像物の横断面において、外周に対して垂直な方向に延びる内部組織(大腿四頭筋等)の輪郭部分まで鮮明に撮像した画像を合成することができる。したがって、この画像に基づいて、被撮像物における内部組織(大腿四頭筋等)の形状や厚み(筋量)を正確に把握することが可能である。
【0063】
なお、上記の実施形態においては、画像合成処理において、角度センサで検出した断片画像の傾き量を、断片画像の合成に利用する例を示したが、その他の処理で断片画像の傾き量を利用することもできる。例えば、全ての断片画像を合成するのではなく、傾き量が一定量を超えて変化した時の断片画像を抽出して、抽出した断片画像のみを合成するようにしてもよい。このようにすれば、画像合成の回数を削減でき、超音波撮像装置における計算コストや画像の記憶容量を抑制することが可能になる。
【0064】
また、上記した画像合成処理においては、リニアスキャンモードで得られた断片画像の合成時と、セクタスキャンモードで得られた断片画像の合成時とのそれぞれで、特徴量のマッチングを行う例を示したが、後に行う断片画像の合成時には、先に行ったマッチングの結果を利用して断片画像を合成する位置を決定するようにしてもよい。
【0065】
また、上記した角度センサとしては、センサの検出値から演算等で角度を算出することができるものであれば、どのようなセンサを用いてもよい。例えば、加速度センサを利用して、プローブの角度を求めることもできる。
【0066】
また、上記した超音波撮像装置では、プローブに対してプローブアダプタを取り付ける構成例を示したが、プローブに対してプローブアダプタを一体化して構成してもよい。図9は、プローブアダプタを一体化した場合のプローブの構成例を示す図である。図9に示すプローブ2Aは、当接面33Aと超音波送受面35Aとを備えている。このようなプローブ2Aを用いて、本発明の超音波撮像装置を構成することもできる。
【0067】
次に、その他の実施形態に係るプローブアダプタの構成例について説明する。
【0068】
上記した超音波撮像装置では、プローブアダプタに着脱自在な着脱部を設けて、当接面を構成する部材を交換可能にしたが、着脱部を設けず単に当接面の向く方向を可変にすることもできる。図10(A)は、当接面33Bの向く方向を可変にした場合のプローブアダプタ3Bの構成例を示す図である。
【0069】
図10(A)に示すプローブアダプタ3Bは、筐体部31Bと角度可変部36Bとを備えている。角度可変部36Bは、下面が被撮像物の横断面の外周に沿う形状の当接面33Bとして構成されていて、筐体部31Bの下端部に取り付けられている。角度可変部36Bを筐体部31Bに取り付ける位置には、軸部39Bが設けられている。軸部39Bは、角度可変部36Bを筐体部31Bに軸支する部分であり、角度可変部36Bは、軸部39Bにより筐体部31Bに対して回動可能にされていて、また、任意の角度に傾けた状態で固定可能に構成されている。
【0070】
より具体的には、ここでの当接面33Bは、短手方向と長手方向とを有する概略長方形状であり、長手方向に沿って湾曲している。軸部39Bは、この当接面33Bが湾曲する方向(長手方向)と略一致する方向を軸として、角度可変部36Bを筐体部31Bに軸支している。したがって、角度可変部36Bは、この軸部39Bを中心にして、当接面33Bが湾曲する方向(長手方向)に垂直な当接面33Bの方向(短手方向)に沿って傾けることが可能である。
【0071】
また、ここでは軸部39Bをねじ状に構成していて、筐体部31Bに設けられたねじ穴にはめ合わせるようにしている。そして、軸部39Bを絞め込むことで角度可変部36Bの角度を固定し、軸部39Bを緩めることで角度可変部36Bの角度が可変(回動自在)となるように構成している。なお、角度可変部36Bを固定する具体的な機構は、上記したようなねじ機構に限らず、その他の周知の機構、例えばラッチ機構などを用いて実現することもできる。
【0072】
以上のように構成したプローブアダプタ3Bを用いれば、当接面33Bが向く方向を、プローブ2の超音波送受面23Bが向く方向から傾けることができ、その傾きの角度を任意のものに調整して設定することができる。これにより、このプローブアダプタ3Bを用いて大腿部等の被撮像物の横断面の画像を撮像する際には、当接面33Bの角度をより精緻に調整することで、より鮮明な断片画像や全体画像を得ることができる。
【0073】
なお、プローブアダプタにおける当接面の角度を調整する他、プローブアダプタに取り付けるプローブ2の角度自体を調整することで、当接面33Bと超音波送受面23Bとの角度を調整するようにしてもよい。図10(B)は、プローブ2を取り付ける角度自体を調整可能にした場合のプローブアダプタ3Cの構成例を示す図である。
【0074】
図10(B)に示すプローブアダプタ3Cは、筐体部31Cと固定部39Cとを備えている。筐体部31Cは、下面が被撮像物の横断面の外周に沿う形状の当接面33Cとして構成されている。この筐体部31Cは、プローブ2を取り付ける開口のサイズに余裕があり、プローブ2を単に開口に挿入するだけで、プローブ2を任意の角度に動かすことができるように構成されている。そして、固定部39Cは、開口内に挿入されたプローブ2を、任意の角度のまま固定できるように構成されている。
【0075】
固定部39Cは、例えば、筐体部31C内に設けられた図示していないクランプ機構と、該クランプ機構を絞め込むためのねじ等により構成することができる。なお、固定部39Cの具体的な機構は、上記したようなクランプ機構に限らず、その他の周知の機構、例えばラッチ機構などを用いて実現することもできる。
【0076】
以上のように構成したプローブアダプタ3Cを用いれば、プローブアダプタ3Cに取り付ける際のプローブ2の角度を任意に調整することができ、プローブアダプタ3Cの当接面33Cが向く方向と、プローブ2の超音波送受面23Cが向く方向とを、任意の角度に傾けることができる。これにより、このプローブアダプタ3Cを用いて大腿部等の被撮像物の横断面の画像を撮像する際にも、超音波送受面23Cと当接面33Cとの角度を精緻に調整するができ、より鮮明な断片画像や全体画像を得ることができる。
【0077】
なお、ここでは、プローブアダプタに角度可変部や固定部を設ける構成例について説明したが、プローブアダプタを用いずに、プローブ自体に上述の角度可変部や固定部を設け、プローブ自体で当接面と超音波送受面との角度を調整できるように構成することもできる。
【0078】
次に、当接面の具体的な形状設定例について説明する。
【0079】
図11(A)は、プローブアダプタ3Dを正面側から見た側面図である。図11(B)は、プローブアダプタ3Dを下面(当接面)側から見た平面図である。図11(C)は、プローブアダプタ3Dを側面側から見た断面図である。
【0080】
プローブアダプタ3Dは、筐体部31Dと着脱部36Dとを備えている。筐体部31Dは、プローブアダプタ3Dの上面側の部分を構成する部材である。着脱部36Dは、プローブアダプタ3Dの下面側の部分を構成する部材であり、下面が被撮像物の横断面の外周に沿う形状の当接面33Dとして構成されている。
【0081】
着脱部36Dの当接面33Dには、プローブの超音波送受面を露出させる開口32Dと、溝部39Dとが設けられている。溝部39Dは、図3(A)にて示したジェル109を適量、プローブの周囲に導くために設けられている。このため、溝部39Dは、図3(A)および図3(B)に示すようにプローブ2を動かす方向に沿って延びるように、すなわち、図11(B)において当接面33Dが湾曲して延びる方向(長手方向)に沿って延び、開口32Dを通過するように設けられている。
【0082】
このように、溝部39Dを当接面33Dに設けることで、プローブアダプタ3Dを被撮像物の表面に沿って動かす際に、ジェル109が被撮像物の表面からプローブアダプタ3Dによって掻き除かれることを防ぐことができる。そして、プローブアダプタ3Dの溝部39Dに沿ってプローブの周囲までジェル109を導くことができる。したがって、ジェル109を介して適切な状態で、被撮像物の横断面を撮像できる。
【0083】
なお、このプローブアダプタ3Dにおいては、当接面33Dから落ち込む角部分を面取りしている。これにより、プローブアダプタ3Dの角部分が被撮像物表面と接触して、被撮像物表面に傷がついたり、プローブアダプタ3Dのスムーズな操作が妨げられたりすることを防ぐことができる。また、プローブアダプタ3Dの溝部39Dの両端部は、特に幅を拡げており、これにより、ジェル109をより多く、プローブの周囲に導くことができる。
【0084】
このように、プローブアダプタ3Dの当接面33Dを構成することで、プローブのみを用いて被撮像物の横断面を撮像する場合よりも、プローブ先端の周囲に適量のジェル109を保持することができる。したがって、作業者にとっては、ジェル109の分量に注意しながら撮像作業を行う必要が無くなり、プローブの操作性をより高めることができる。
【0085】
以上の各実施形態や各変形例に示したように、本発明は実施することができる。ただし、上述の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
1:超音波撮像装置
2:プローブ
3,3B,3C,3D:プローブアダプタ
4:角度センサ
5:送受処理部
6:断片画像生成部
7:画像合成部
8:画像表示部
23:超音波送受面
32:固定部
33:当接面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11