特許第6600745号(P6600745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーロン インダストリーズ インクの特許一覧

<>
  • 特許6600745-インフレーションフィルムの製造方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6600745
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】インフレーションフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20191021BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20191021BHJP
   B60C 5/14 20060101ALI20191021BHJP
   C09J 161/12 20060101ALI20191021BHJP
   C09J 7/22 20180101ALI20191021BHJP
   C09J 7/32 20180101ALI20191021BHJP
【FI】
   C08J5/18CES
   C08J7/04 ECFG
   B60C5/14 A
   C09J161/12
   C09J7/22
   C09J7/32
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-515768(P2018-515768)
(86)(22)【出願日】2016年9月29日
(65)【公表番号】特表2018-535288(P2018-535288A)
(43)【公表日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】KR2016010926
(87)【国際公開番号】WO2017057931
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2018年3月26日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0137720
(32)【優先日】2015年9月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユン−ジョ
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−088240(JP,A)
【文献】 特開2012−036244(JP,A)
【文献】 特表2014−523364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
B60C 5/14
C08J 7/04
C09J 7/22
C09J 7/32
C09J 161/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物;を含む溶融樹脂組成物を1.5〜3のブロー比(BUR)で膨張させる段階;を含む、インフレーションフィルムの製造方法であって、
インフレーションフィルムは、
ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物;を含む基材フィルムを含み、
前記基材フィルムを170℃の条件で30分間熱処理した後、伸度25%にて、前記基材フィルムの横方向へのモジュラスに対する機械流れ方向へのモジュラスの比率が0.8〜1.2である、インフレーションフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記溶融樹脂組成物を1.5〜3のブロー比(BUR)で膨張させる段階で、バブル直径は450〜2000mmであり、ダイ直径は300〜800mmである、請求項に記載のインフレーションフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記溶融樹脂組成物は、1〜20のドローダウン比(DDR)で膨張する、請求項に記載のインフレーションフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記溶融樹脂組成物を1〜20のドローダウン比(DDR)で膨張させる段階で、ダイギャップは0.5〜3.5mmであり、フィルム厚さが20〜300μmである、請求項に記載のインフレーションフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記溶融樹脂組成物が膨張する段階で形成される前記溶融樹脂組成物のバブル内部の温度が10℃〜60℃である、請求項に記載のインフレーションフィルムの製造方法。
【請求項6】
ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物;を200℃〜300℃で溶融および押出して前記溶融樹脂組成物を形成する段階;をさらに含む、請求項に記載のインフレーションフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記溶融樹脂組成物を、ニップロールによって折り畳まれ、冷却する段階;および
前記冷却された溶融樹脂組成物を巻き取る段階;をさらに含む、請求項に記載のインフレーションフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記溶融樹脂組成物から形成された基材フィルムの少なくとも一面に形成され、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む、接着層を形成する段階をさらに含む、請求項に記載のインフレーションフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2015年9月30日付の韓国特許出願第10−2015−0137720号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、インフレーションフィルムおよびその製造方法に関し、より詳細には、全方向にわたって均一で優れた物性を示し、相対的に高い引張強度および衝撃強度を有するとともに、低いモジュラスを有し、薄い厚さでも優れた気密性を実現してタイヤを軽量化し、自動車の燃費を向上させることができるインナーライナー用インフレーションフィルムとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
タイヤは自動車の荷重を支え、路面から受ける衝撃を緩和し、自動車の駆動力または制動力を地面に伝達する役割を果たす。一般に、タイヤは繊維/鋼鉄/ゴムの複合体であって、図1のような構造を有するのが一般的である。
【0004】
トレッド(Tread)1:路面と接触する部分であり、制動、駆動に必要な摩擦力を与え、耐摩耗性が良好でなければならず、外部衝撃に耐えられなければならず、発熱が少なくなければならない。
【0005】
ボディプライ(Body Ply)(またはカーカス(Carcass))6:タイヤ内部のコード層であり、荷重を支持し、衝撃に耐え、走行中の屈伸運動に対する耐疲労性が強くなければならない。
【0006】
ベルト(Belt)5:ボディプライの間に位置しており、ほとんどの場合に鋼線(Steel Wire)で構成され、外部の衝撃を緩和させることはもちろんのこと、トレッドの接地面を広く維持して走行安定性を優れたものにする。
【0007】
サイドウォール(Side Wall)3:ショルダー2の下の部分からビード9の間のゴム層をいい、内部のボディプライ6を保護する役割を果たす。
【0008】
インナーライナー(Inner Liner)7:チューブの代わりにタイヤの内側に位置しているものであり、空気漏れを防止して空気入りタイヤを可能にする。
【0009】
ビード(BEAD)9:鋼線にゴムを被覆した四角または六角形状の鋼線束(Wire Bundle)であり、タイヤをリム(Rim)に載置し固定させる役割を果たす。
【0010】
キャッププライ(CAP PLY)4:一部の乗用車用ラジアルタイヤのベルトの上に位置した特殊コード地であり、走行時、ベルトの動きを最小化する。
【0011】
ビードエイペックス(APEX;ビードフィラー)8:ビードの分散を最小化し、外部の衝撃を緩和してビードを保護し、成形時、空気の流入を防止するために用いる三角形状のゴム充填材である。
【0012】
最近は、チューブを用いずに、内部には30〜40psi程度の高圧空気が注入されたチューブレス(tube−less)タイヤが、通常用いられるのであるが、車両の運行過程で内側の空気が外部に流出するのを防止するために、カーカスの内層に気密性の高いインナーライナーが配置される。
【0013】
従来は、比較的空気透過性が低いブチルゴムまたはハロブチルゴムなどのゴム成分を主要成分とするタイヤインナーライナーが用いられていたが、このようなインナーライナーでは、十分な気密性を得るために、ゴムの含有量またはインナーライナーの厚さを増加させなければならなかった。しかし、前記ゴム成分の含有量およびタイヤの厚さが増加すると、タイヤの総重量が増加し、自動車の燃費が低下するという問題があった。
【0014】
また、前記ゴム成分は、相対的に低い耐熱性を有していて、高温条件で繰り返し変形が生じるタイヤの加硫過程または自動車の運行過程で、カーカス層の内面ゴムとインナーライナーとの間に空気ポケットが発生したり、インナーライナーの形態や物性が変化したりするという問題点があった。そして、前記ゴム成分をタイヤのカーカス層に結合するためには、加硫剤を使用したり加硫工程を適用したりしなければならず、これによっても十分な接着力が確保されることは難しかった。
【0015】
そこで、インナーライナーの厚さおよび重量を減少させて燃費を節減し、タイヤの成形または運行過程などで発生するインナーライナーの形態や物性の変化を低減するために、多様な方法が提案された。
【0016】
しかし、従来知られたいずれの方法も、インナーライナーの厚さおよび重量を十分に減少させながら、優れた空気透過性およびタイヤの成形性を維持するには限界があった。また、従来知られた方法で得られたインナーライナーは、高温の繰り返し成形が行われるタイヤの製造過程または繰り返し変形が生じて高い熱が発生する自動車の運行過程などで、それ自体の物性が低下したり、フィルムに亀裂が発生したりするなどの現象が現れた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、全方向にわたって均一で優れた物性を示し、相対的に高い引張強度および衝撃強度を有するとともに、低いモジュラスを有し、薄い厚さでも優れた気密性を実現してタイヤを軽量化し、自動車の燃費を向上させることができるインナーライナー用インフレーションフィルムを提供する。
【0018】
また、本発明は、インフレーションフィルムの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本明細書では、ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物;を含む基材フィルムを含み、前記基材フィルムを170℃の条件で30分間熱処理した直後には、伸度25%にて、前記基材フィルムの横方向(幅方向;transverse direction)へのモジュラスに対する機械流れ方向(machine direction)へのモジュラスの比率が0.8〜1.2である、インフレーションフィルムが提供される。
【0020】
また、本明細書では、ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物;を含む溶融樹脂組成物を、1.5〜3のブロー比(BUR; blow up ratio)で膨張させる段階;を含む、前記インフレーションフィルムの製造方法が提供される。
【0021】
以下、発明の具体的な実現例による、インフレーションフィルムおよびインフレーションフィルムの製造方法に関して、より詳細に説明する。
【0022】
発明の一実現例によれば、ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物;を含む基材フィルムを含み、前記基材フィルムを170℃の条件で30分間熱処理した直後には、伸度25%にて、前記基材フィルムの横方向へのモジュラスに対する機械流れ方向へのモジュラスの比率が0.8〜1.2である、インフレーションフィルムが提供される。
【0023】
本発明者らの研究結果、前記ポリアミド系樹脂、前記特定のセグメントを含む共重合体、および前記オレフィン系高分子化合物を共に含む原料を、インフレーション成形して製造されるフィルムが、通常の平板フィルム(cast)とは異なって、フィルムの横方向(TD;Transverse Direction)に溶融状態で引張させることによって、高温の熱処理後にも、フィルムの横方向(TD)に対して安定した物性を維持可能であり、フィルムの機械流れ方向(MD)と横方向(TD)との間の物性の偏差をより低下させることができるという点を、実験を通して確認することで、発明を確認した。
【0024】
前記インフレーションフィルムは、高温の熱処理後にも、基材フィルムの機械流れ方向(MD)と横方向(TD)において均一な物性を有することによって、タイヤの成形過程中および加硫工程中にフィルムに加えられる応力を均一に分散させることができて成形性に優れ、基材フィルムの機械流れ方向(MD)および横方向(TD)に対する物性バランス(Balance)特性によって、外部から加えられるストレス(Stress)に対して分散が容易に行われ、一方向にストレス(Stress)が集中してクラック(Crack)の発生および成長(Propagation)が加速化される現象を遅延させることによって、耐久性をさらに向上させることができる。
【0025】
前記インフレーションフィルムは、上述したポリアミド系樹脂、前記特定のセグメントを含む共重合体、および前記オレフィン系高分子化合物を共に含む原料を溶融した状態で、押出機のダイを介して連続的に生成されるチューブ状のバブルを形成する段階、前記バブル内部に所定の空気を吹き込んでフィルムの幅方向に膨張させる段階;ニップロールなどの装置部によって前記バブルが折り畳まれ、折り畳まれた両辺部を切開(Cutting)して2つの平板状態に分ける段階;平板形態のフィルム両辺部のエッジを切り出した(Edge−Triming)後、フィルムロール(Roll)状態に巻き取られる段階などにより製造される。
【0026】
前記インフレーションフィルムは、タイヤのインナーライナーに使用できる。前記インフレーションフィルムが、インナーライナーへの使用時、薄い厚さでも優れた気密性を実現してタイヤを軽量化し、自動車の燃費を向上させることができ、高い耐熱特性を有しながらも、優れた成形性と共に高い耐久性および耐疲労性などの機械的物性を示すことができる。
【0027】
前記一実現例のインフレーションフィルムは、構造的に、ハードドメイン(Hard Domain)にソフトドメイン(Soft Domain)が島(Island)状に形成されている海島(Sea−Island)モルフォロジー(Morphology)を有しており、フィルムの機械流れ方向(MD)および横方向(TD)のソフトドメインの大きさが均一になることによって、全方向に対して均一な物性を有することができ、外部から加えられるストレス(Stress)を分散させて応力集中化現象を緩和させることができる。
【0028】
上述のように、前記一実現例のインフレーションフィルムは、全方向にわたって均一で優れた物性を示し、相対的に高い引張強度および衝撃強度を有するとともに、低いモジュラスを有しており、具体的には、前記基材フィルムを170℃の条件で30分間熱処理した後、伸度25%にて、前記基材フィルムの横方向へのモジュラスに対する機械方向へのモジュラスの比率が0.8〜1.2であってもよい。
【0029】
つまり、前記基材フィルムを170℃の条件で30分間熱処理し、伸度25%を適用して前記基材フィルムの機械流れ方向(MD;Machine Direction)および横方向(TD;Transverse Direction)へのモジュラスをそれぞれ測定したとき、前記基材フィルムの横方向へのモジュラスに対する機械流れ方向へのモジュラスの比率が、0.8〜1.2であってもよい。
【0030】
具体的には、前記基材フィルムを170℃の条件で30分間熱処理し、伸度25%を適用して測定した機械方向および横方向へのそれぞれのモジュラスは、前記基材フィルムを23℃の温度および相対湿度50%の条件で24時間放置した後、170℃の熱風オーブン内に、前記基材フィルム層の一端をぶら下げて据え置き、無荷重および無接触の状態で30分間放置(熱処理)した直後に、30mmの試料長および30mmの試料幅の大きさの試験片に対して、万能引張試験機(Instron社、Tensile test machine)を用い、300mm/minの引張速度を適用して機械方向および横方向に、それぞれ伸び率25%で測定した強度値として定義することができる。
【0031】
また、前記基材フィルムを170℃の条件で1時間熱処理した後、前記基材フィルムの横方向への衝撃強度に対する機械方向への衝撃強度の比率が0.8〜1.2であってもよい。
【0032】
具体的には、前記基材フィルムを170℃の条件で1時間熱処理した後に測定した機械流れ方向および横方向へのそれぞれの衝撃強度は、前記基材フィルムを23℃の温度および相対湿度50%の条件で24時間放置した後、170℃の熱風オーブン内に前記基材フィルム層の一端をぶら下げて据え置き、無荷重および無接触の状態で1時間放置(熱処理)した直後に、23℃の温度および相対湿度50%の環境下、ISO8256 Method Aに準じてペンデュラムインパクト試験機(Pendulum Impact Tester、Zwick/Roell社、Model HIT5.5P)を用いて測定した、前記熱処理された基材フィルムの機械方向および横方向それぞれへの耐熱衝撃強度として定義することができる。
【0033】
前記一実現例のインフレーションフィルムが、上述した前記基材フィルムの横方向へのモジュラスに対する機械方向へのモジュラスの比率と、前記基材フィルムの横方向への衝撃強度に対する機械方向への衝撃強度の比率とを満足することによって、タイヤの成形過程中および加硫工程中にフィルムに加えられる応力を均一に分散させて、前記基材フィルムの残存応力を緩和することができるのであり、これにより、向上した成形性を確保しながら、自動車走行過程中の応力集中化現象による発熱および耐久性の低下を最小化することができる。
【0034】
一方、前記基材フィルムに含まれるポリアミド系樹脂は2.5〜4.0、好ましくは3.2〜3.8の相対粘度(硫酸96%溶液)を有することができる。このようなポリアミド系樹脂の粘度が2.5未満であれば、靭性(toughness)の低下によって十分な伸び率が確保されず、タイヤの製造時や自動車の運行時に破損が発生し得るのであり、基材フィルムが、インナーライナー用高分子フィルムとして有するべき気密性または成形性などの物性を、確保しにくいことがある。また、前記の、このようなポリアミド系樹脂の粘度が4.0を超える場合、製造される基材フィルムのモジュラスまたは粘度が不必要に高くなり得るのであって、タイヤインナーライナーが適切な成形性または弾性を有しにくいことがある。
【0035】
前記ポリアミド系樹脂の相対粘度は、常温で硫酸96%溶液を用いて測定した相対粘度を意味する。具体的には、一定のポリアミド系樹脂の試験片(例えば、0.025gの試験片)を、相異なる濃度で硫酸96%溶液に溶かして、2以上の測定用溶液を製造した後(例えば、ポリアミド系樹脂試験片を0.25g/dL、0.10g/dL、0.05g/dLの濃度となるように96%硫酸に溶かして3つの測定用溶液を作製)、25℃で粘度管を用いて前記測定用溶液の相対粘度(例えば、硫酸96%溶液の粘度管の通過時間に対する前記測定用溶液の平均通過時間の比率)を求めることができる。
【0036】
前記基材フィルムに使用可能なポリアミド系樹脂としては、ポリアミド系樹脂、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/66/610共重合体、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、およびナイロン66/PPS共重合体;またはこれらのN−アルコキシアルキル化物、例えば、6−ナイロンのメトキシメチル化物、6−610−ナイロンのメトキシメチル化物、または612−ナイロンのメトキシメチル化物があり、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、またはナイロン612を使用することが好ましいことがある。
【0037】
前記基材フィルムは、前記ポリアミド系樹脂と共に、前記ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体を含むことで、優れた気密性と共に相対的に低いモジュラスを有することができる。具体的には、前記基材フィルムに含まれるポリアミド系樹脂の固有分子鎖特性によって、前記一実現例のインフレーションフィルムは、タイヤに一般に用いられるブチルゴムなどに比べて、同一厚さで10〜20倍程度の気密性を示すことができ、前記共重合体は、前記ポリアミド系樹脂の間に結合または分散した状態で存在して、前記基材フィルムのモジュラスをより低下させることができ、前記基材フィルムの剛直度が上昇するのを抑制することができ、高温で結晶化されるのを防止することができる。
【0038】
前記ポリアミド系セグメントとポリエーテル系セグメントとを含む共重合体の重量平均分子量が30,000〜500,000、または70,000〜300,000、または90,000〜200,000であってもよい。前記共重合体の重量平均分子量が30,000未満であれば、製造される基材フィルムがインナーライナー用高分子フィルムへの使用に十分な機械的物性を確保できないことがあり、前記インナーライナー用高分子フィルムが十分な気密性(Gas barrier)を確保しにくいことがあり、場合によっては、インフレーション工程中にバブル(Bubble)の安定性が低下する現象が現れることがある。また、前記共重合体の絶対重量平均分子量が500,000超であれば、高温に加熱したとき、基材フィルムのモジュラスまたは結晶化度が過度に増加して、インナーライナー用高分子フィルムとして有するべき弾性または弾性回復率を確保しにくいことがある。
【0039】
本明細書において、重量平均分子量は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られた分析装置と示差屈折検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用いることができ、通常適用される温度条件、溶媒、流速(flow rate)を適用することができる。前記測定条件の具体例として、30℃の温度、クロロホルム溶媒(Chloroform)、および1mL/minの流速(flow rate)が挙げられる。
【0040】
前記基材フィルム中の前記ポリエーテル系セグメントの含有量が2重量%〜40重量%、3重量%〜35重量%、または4重量%〜30重量%であってもよい。
【0041】
前記ポリエーテル系セグメントの含有量が基材フィルム全体の中の2重量%未満であれば、前記基材フィルムまたはインナーライナーに使用される前記インフレーションフィルムのモジュラスが高くなってタイヤの成形性が低下したり、繰り返し変形による物性の低下が大きくなったりし得る。前記ポリエーテル系セグメントの含有量がフィルム全体中の40重量%を超えると、タイヤインナーライナーに要求される気密性(Gas Barrier)が良くなくてタイヤ性能が低下することがあり、接着剤に対する反応性が低下してインナーライナーがカーカス層に容易に接着しにくいことがあり、基材フィルムの弾性が増加して均一なフィルムを製造するのが容易でないことがある。
【0042】
前記共重合体のポリアミド系セグメントは、下記化学式1または化学式2の繰り返し単位を含むことができる。
【0043】
[化学式1]
【0044】
前記化学式1において、R1は、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、または炭素数7〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアリールアルキレン基である。
【0045】
[化学式2]
【0046】
前記化学式2において、R2は、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基であり、R3は、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、または炭素数7〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアリールアルキレン基である。
【0047】
また、前記共重合体のポリエーテル系セグメントは、下記化学式3の繰り返し単位を含むことができる。
【0048】
[化学式3]
【0049】
前記化学式3において、R5は、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基であり、nは、1〜100の整数であり、R6およびR7は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ直接結合、−O−、−NH−、−COO−、または−CONH−である。
【0050】
また、前記基材フィルムにおいて、前記ポリアミド系樹脂、および前記ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体は9:1〜1:9、または2:8〜8:2の重量比で含まれる。前記ポリアミド系樹脂の含有量が小さすぎると、前記基材フィルムの密度や気密性が低下することがある。さらに、前記ポリアミド系樹脂の含有量が大きすぎると、前記基材フィルムのモジュラスが過度に高くなったりタイヤの成形性が低下したりすることがあり、タイヤの製造過程または自動車の運行過程で現れる高温環境でポリアミド系樹脂が結晶化され、繰り返し変形によってクラックが発生し得る。
【0051】
一方、前記実現例のインフレーションフィルムに含まれる基材フィルムは、前記ポリアミド系樹脂、およびポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体と共に、オレフィン系高分子化合物を含むことによって、前記インフレーションフィルムが高温や外部衝撃または変形などによって結晶化される現象を防止することができ、また、前記インフレーションフィルムの他の機械的物性を同等水準以上に維持しながらも、モジュラス特性を低下させたり弾性を高めたりして、低温でも耐疲労特性および耐久性を向上させることができる。
【0052】
具体的には、前記オレフィン系高分子化合物は、前記基材フィルムの柔軟性(Softness)を高め、外部から加えられる衝撃を吸収する能力を向上させる役割を果たし、また、前記基材フィルムのモジュラスを大きく低下させながら、前記基材フィルムに含まれる化合物や高分子の内部構造が変化して結晶化される現象を、防止することができる。
【0053】
前記基材フィルムは、前記オレフィン系高分子化合物3重量%〜35重量%、または10重量%〜30重量%を含むことができる。前記オレフィン系高分子化合物の含有量が小さすぎると、前記オレフィン系高分子化合物による作用および効果の程度がわずかであり得る。また、前記オレフィン系高分子化合物の含有量が大きすぎると、前記ポリアミド系樹脂および前記共重合体から発現する物性や効果を低減させることがあり、前記一実現例のインナーライナー用高分子フィルムを適用して、タイヤ製造時の高温加硫工程で熱による物性の低下が大きく生じ得る。
【0054】
前記オレフィン系高分子化合物は、オレフィン系重合体、オレフィン系共重合体、ジカルボン酸またはその酸無水物がグラフトされたオレフィン系重合体または共重合体、またはこれらの2種以上の混合物を含むことができる。
【0055】
前記オレフィン系重合体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0056】
前記オレフィン系共重合体は、エチレン−プロピレン共重合体、またはエチレン−アクリル酸エステル−マレイン酸無水物三重合体(Ethylene−Acrylic Ester−Maleic Anhydride terpolymer)、アクリル酸エステル−マレイン酸無水物共重合オレフィン(acrylic ester and maleic anhydride functionalized polyolefin)、エチレン−ブチルアクリレート−グリシジルメタクリレート三重合体(Terpolymer of ethylene、butylacrylate(BA)and glycidylmethacrylate(GMA)を含むことができる。
【0057】
上述のように、前記オレフィン系高分子化合物は、ジカルボン酸またはその酸無水物がグラフトされたオレフィン系重合体または共重合体を含んでもよいが、前記ジカルボン酸は、マレイン酸、フタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、シス−1,2,3,6テトラヒドロフタル酸、4−メチル−1,2,3,6テトラヒドロフタル酸、またはこれらの2種以上の混合物を含むことができ、前記ジカルボン酸の二無水物は、上述した例のジカルボン酸二無水物であってもよい。
【0058】
前記ジカルボン酸またはその酸無水物がグラフトされたオレフィン系重合体または共重合体中のグラフトされたジカルボン酸またはその酸無水物の含有量が0.3重量%以上であってもよいし、好ましくは0.5重量%〜3.0重量%であってもよい。
【0059】
このようなジカルボン酸またはその酸無水物のグラフト化比率は、前記オレフィン系高分子化合物を酸−塩基滴定して得られた結果から測定することができる。例えば、前記オレフィン系高分子化合物約1gを水で飽和した150mlのキシレンに入れて2時間程度還流した後、1重量%チモールブルー−ジメチルホルムアミド溶液を少量加え、0.05N水酸化ナトリウム−エチルアルコール溶液で若干超過滴定して群青色の溶液を得た後、この溶液を再び0.05Nの塩酸−イソプロピルアルコール溶液で黄色を呈するまで逆滴定して酸価を求めることができ、これから、オレフィン系高分子化合物にグラフトされたジカルボン酸の量を算出することができる。
【0060】
前記オレフィン系高分子化合物は、0.77g/cm3〜0.95g/cm3、または0.80g/cm3〜0.93g/cm3の密度(Density)を有することができる。
【0061】
前記基材フィルムは、20〜300μm、好ましくは40〜250μm、より好ましくは40〜200μmの厚さを有することができる。これにより、発明の一実現例のインナーライナー用高分子フィルムは、従来知られたものに比べて薄い厚さを有しながらも、低い空気透過性、例えば、200cm3/(m2・24hr・atm)以下の酸素透過度を有することができる。
【0062】
一方、前記基材フィルムが架橋剤をさらに含んでもよい。前記基材フィルムが架橋剤をさらに含むことによって、前記基材フィルム自体の結晶性や高温で結晶化される傾向を低下させることができる。具体的には、前記架橋剤を用いることによって、前記基材フィルムの製造過程で使用または合成される高分子、例えば、ポリアミド系樹脂(a)、およびポリアミド(poly−amide)系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体(b)の、それぞれ、または互いに架橋反応が起こり、これにより、前記基材フィルムの結晶性が低くなり得る。
【0063】
前記架橋剤は、オキサゾリン官能基を含む化合物、トリメリット酸無水物(Trimellitic anhydride)、カルボジイミド化合物(Carbodiimide)を含むことができる。特に、前記基材フィルムが当該架橋剤を含むことによって、前記高分子フィルムは、十分な強度と共に低いモジュラス特性を有することができ、100℃以上の高温の成形過程や伸張過程によっても基材フィルムの結晶化度がさほど大きくなく、モジュラス特性、弾性または弾性回復率などが大きく低下せず、優れた成形性も確保可能である。
【0064】
一方、前記基材フィルムは、耐熱剤をさらに含んでもよい。前記基材フィルムが耐熱剤をさらに含むことによって、フィルムの製造過程中あるいはタイヤの製造過程中に、随伴する熱による高分子の鎖切断を防止することができ、熱分解によるラジカルの生成を抑制することができ、これにより、高温の環境で長時間、放置または露出する場合にも、自身の物性が大きく低下しなくなる。つまり、前記基材フィルムに耐熱剤が追加されることによって、タイヤの成形過程でも、基材フィルムが結晶化したり高い水準で硬化したりする現象を顕著に低減することができるのであり、繰り返し変形が加えられて高温が発生する自動車の走行過程でも、インナーライナーにて亀裂または破損が発生する現象を防止することができる。
【0065】
前記基材フィルムは、耐熱剤が0.005重量%〜2.50重量%、または0.01重量%〜1.00重量%であってもよい。前記耐熱剤の含有量が小さすぎると、耐熱性向上の効果がわずかであり得る。また、前記耐熱剤の含有量が大きすぎると、基材フィルムの物性が低下し、使用含有量による耐熱性向上の効果が実質的になく、最終製品の価格を不必要に上昇させることがある。
【0066】
このような耐熱剤の具体例としては、芳香族アミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、無機化合物、ポリアミド系化合物、ポリエーテル系化合物、またはこれらの2以上の混合物を使用することができる。このような耐熱剤は、後述する製造方法でパウダー(powder)形態または液状形態などで適用可能である。
【0067】
一方、前記一実現例のインフレーションフィルムは、前記基材フィルムの少なくとも一面に形成され、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層をさらに含んでもよい。
【0068】
前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層は、前記基材フィルムおよびタイヤカーカス層に対しても優れた接着力および接着保持性能を有し、これにより、タイヤの製造過程または運行過程などで発生する熱または繰り返し変形によって発生するインナーライナーフィルムとカーカス層との間の界面の破断を防止して、前記インナーライナー用高分子フィルムが十分な耐疲労性を有するようにする。
【0069】
前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物2〜32重量%、好ましくは10〜20重量%、およびラテックス68〜98重量%、好ましくは80〜90重量%を含むことができる。
【0070】
前記レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとを1:0.3〜1:3.0、好ましくは1:0.5〜1:2.5のモル比で混合した後、縮合反応して得られたものであってもよい。また、前記レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物は、優れた接着力のための化学反応の側面から、全接着層の総量に対して2重量%以上で含まれ、適正な耐疲労特性を確保するために、32重量%以下で含まれる。
【0071】
前記ラテックスは、天然ゴムラテックス、スチレン/ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル/ブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、およびスチレン/ブタジエン/ビニルピリジンゴムラテックスからなる群より選択された1種または2種以上の混合物になってもよい。前記ラテックスは、素材の柔軟性とゴムとの効果的な架橋反応のために、全接着層の総量に対して68重量%以上で含まれ、基材フィルムとの化学反応と接着層の剛性のために、98重量%以下で含まれる。
【0072】
前記接着層は0.1〜20μm、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.2〜7μm、さらに好ましくは0.3〜5μmの厚さを有することができ、インフレーションフィルムの一表面上または両表面上に形成される。
【0073】
一方、発明の他の実現例によれば、ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物;を含む溶融樹脂組成物を1.5〜3のブロー比(BUR)で膨張させる段階;を含む、上述したインフレーションフィルムの製造方法が提供される。
【0074】
前記ポリアミド系樹脂、前記特定のセグメントを含む共重合体、および前記オレフィン系高分子化合物を共に含む原料をインフレーション成形して製造されるフィルムは、通常の平板フィルム(cast)とは異なって、全方向にわたって均一で優れた物性を示し、相対的に高い引張強度および衝撃強度を有しかつ、低いモジュラスを有することができる。
【0075】
具体的には、前記インフレーションフィルムの製造方法によれば、ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物;を含む基材フィルムを含み、前記基材フィルムを170℃の条件で30分間熱処理した後、伸度25%で前記基材フィルムの横方向へのモジュラスに対する機械流れ方向へのモジュラスの比率が0.8〜1.2である、インフレーションフィルムが提供される。
【0076】
また、前記製造されるインフレーションフィルムにおいて、前記基材フィルムを170℃の条件で1時間熱処理した後、前記基材フィルムの横方向への衝撃強度に対する機械方向への衝撃強度の比率が0.8〜1.2であってもよい。
【0077】
上述のように、前記インフレーションフィルムは、前記ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物;を含む溶融樹脂組成物を1.5〜3、または1.8〜2.7、または2.0〜2.5のブロー比(BUR)で膨張して製造される。
【0078】
前記ブロー比(BUR、Blow Up Ratio)は、前記溶融した樹脂組成物がダイを通じて押出されてバブルを形成した後、横方向に延伸する程度の比率を意味し、具体的には、ダイ直径に対するバブル直径の比率として定義される。
【0079】
前記ブロー比が過度に増加する場合、例えば、前記インフレーションフィルムの製造過程でのブロー比が3超の場合、機械流れ方向(MD)への引張強度は減少するが、横方向(TD)への分子配向が増大して、前記インフレーションフィルムの有するMD/TDの物性バランス(Balance)が不良になり、前記インフレーションフィルムの製造過程でバブル(Bubble)の安定性が低下して工程性が低下することがある。また、前記ブロー比が1.5未満の場合、安定したバブル(Bubble)の形成が難しくて、最終的に製造されるインフレーションフィルムが不均一な厚さおよび劣悪な物性を有し、フィルムとして製造が困難になり得る。
【0080】
前記溶融樹脂組成物を1.5〜3のブロー比(BUR)で膨張させる段階で、バブル直径およびダイ直径が大きく限定されるものではなく、最終的に製造されるインフレーションフィルムの大きさや物性などを考慮して適切に調節可能であり、例えば、前記溶融樹脂組成物を1.5〜3のブロー比(BUR)で膨張させる段階で、バブル直径は450〜2000mmであり、ダイ直径は300〜800mmであってもよい。
【0081】
前記溶融樹脂組成物を1.5〜3のブロー比(BUR)で膨張させる段階で、前記ダイ直径が小さすぎると、溶融押出工程でダイの剪断圧力が過度に高くなり、剪断応力が高くなって、押出されるフィルムが均一なバブル(Bubble)を形成しにくく、生産性が低下する問題があり得る。
【0082】
また、前記溶融樹脂組成物を1.5〜3のブロー比(BUR)で膨張させる段階で、前記ダイ直径が大きすぎると、溶融押出されるフィルムにおいて空気による均一膨張が難しくてバブル(Bubble)の形態安定性が低下して厚さが不均一であり、シワの発生が激しくて均一な物性を獲得しにくいだけでなく、工程性が低下する問題があり得る。
【0083】
一方、前記溶融樹脂組成物は1〜20のドローダウン比(DDR)で膨張できる。前記ドローダウン比(DDR、Draw Down Ratio)は、前記バブルが縦方向に延伸した程度を示し、具体的には、「ダイギャップ/(フィルム厚さ×ブロー比)」として定義される。
【0084】
そして、前記溶融樹脂組成物を1〜20のドローダウン比(DDR)で膨張させる段階で、ダイギャップは0.5〜3.5mmであり、フィルム厚さが20〜300μmであってよい。
【0085】
前記溶融樹脂組成物が膨張する段階で、形成される前記溶融樹脂組成物のバブルの内部の温度が10〜60℃であってもよい。
【0086】
前記溶融樹脂組成物のバブル内部の温度が低すぎると、結露の発生によるフィルム間ブロッキング(Blocking)現象が現れたり、バブル(Bubble)が折リ畳まれる段階でシワが流入したりし得るのであり、これにより、フィルムの製造工程中に両辺部を切開(Cutting)して2つの平板状態に分ける段階で工程性が低下し、物性が不均一であり得る。
【0087】
また、前記溶融樹脂組成物のバブル内部の温度が高すぎると、バブル(Bubble)の形態安定性が低下してシワが流入したり、結晶化が生じてバブル(Bubble)の均一性が低下し、これにより、工程性が低下したり、フィルムの物性が低下して耐久性の低下を誘発することがある。
【0088】
前記溶融樹脂組成物は、ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物を含む原料を溶融押出して形成される。
【0089】
例えば、このような原料を溶融および押出する段階で使用可能な装置および方法は大きく制限されるわけではなく、例えば、前記インフレーションフィルムの製造方法は、ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物;を200℃〜300℃で溶融および押出して前記溶融樹脂組成物を形成する段階をさらに含んでもよい。前記溶融温度は、ポリアミド系化合物の融点よりは高くなければならないが、高すぎると、炭化または分解が生じてフィルムの物性が阻害されることがあり、前記ポリエーテル系樹脂間の結合が生じたり、繊維配列方向に配向が発生したりして、インフレーションフィルムを製造するうえで不利であり得る。
【0090】
上述のように、前記インフレーションフィルムは、前記ポリアミド系樹脂、前記特定のセグメントを含む共重合体、および前記オレフィン系高分子化合物を共に含む原料を溶融した状態で、押出機のダイを介して連続的に生成されるチューブ状のバブルを形成する段階、前記バブル内部に所定の空気を吹き込んで基材フィルムの幅方向に膨張させる段階;ニップロールなどの装置部によって前記バブルが折り畳まれ、折り畳まれた両辺部を切開(Cutting)して2つの平板状態に分ける段階;平板形態のフィルム両辺部のエッジを切り出した(Edge−Triming)後、フィルムロール(Roll)状態に巻き取られる段階などにより製造される。
【0091】
具体的には、前記インフレーションフィルムの製造方法は、前記溶融樹脂組成物について、ニップロールによって折り畳まれた後、連続して、フィルムの機械流れ方向(MD)に延伸する段階;をさらに含んでもよい。
【0092】
また、前記インフレーションフィルムの製造方法において、バブル(Bubble)内部の温度制御のために内部冷却装置(IBC;Inner−Bubble−Cooling)を適用することができる。
【0093】
前記ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物に関する具体的な事項は、前記一実現例のインフレーションフィルムに関して上述した内容をすべて含む。
【0094】
また、前記インフレーションフィルムの製造方法では、上述した内容を除けば、高分子フィルムのインフレーション工程に通常使用される方法および装置を、格別な制限なく使用することができる。
【0095】
一方、前記インフレーションフィルムの製造方法は、前記溶融樹脂組成物から形成された基材フィルムの少なくとも一面に形成され、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層を形成する段階をさらに含んでもよい。
【0096】
前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層は、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を前記基材フィルムの一表面に塗布することによって形成され、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着フィルムを前記基材フィルムの一面にラミネートさせることによっても形成される。
【0097】
好ましくは、このような接着層の形成段階は、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を、前記形成された基材フィルムの一表面または両表面上にコーティングした後、乾燥する方法で進行させることができる。前記形成される接着層は0.1〜20μm、好ましくは0.1〜10μmの厚さを有することができる。前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物2〜32重量%、およびラテックス68〜98重量%、好ましくは80〜90重量%を含むことができる。
【0098】
前記接着剤の塗布には通常使用される塗布またはコーティング方法または装置を格別な制限なく使用することができるが、ナイフ(Knife)コーティング法、バー(Bar)コーティング法、グラビアコーティング法またはスプレー法、または浸漬法を使用することができる。ただし、ナイフ(Knife)コーティング法、グラビアコーティング法またはバー(Bar)コーティング法を使用することが、接着剤の均一な塗布およびコーティングの側面で好ましい。
【0099】
前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤に関する内容は、前記一実現例のインフレーションフィルムに関して上述した内容をすべて含む。
【発明の効果】
【0100】
本発明によれば、全方向にわたって均一で優れた物性を示し、相対的に高い引張強度および衝撃強度を有するとともに、低いモジュラスを有し、薄い厚さでも優れた気密性を実現してタイヤを軽量化し、自動車の燃費を向上させることができるインナーライナー用インフレーションフィルムとその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0101】
図1】タイヤの構造を概略的に示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0102】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0103】
[実施例:高分子フィルムの製造]
<実施例1>
(1)基材フィルムの製造
ε−カプロラクタムから製造された相対粘度(硫酸96%溶液)3.2のポリアミド系樹脂(ナイロン6)と、重量平均分子量が約92,000の共重合体樹脂(アミン基末端のポリテトラメチレンオキシドを主鎖とするポリエーテル系セグメント35重量%およびε−カプロラクタム由来のポリアミド系セグメント65重量%を用いて合成)と、マレイン酸無水物がグラフトされた(0.9重量%)エチレン−プロピレン共重合体(密度:0.890g/cm3)とを20:62:18の重量比で混合し、前記混合物100重量部に対し、オキサゾリン系化合物1重量部および耐熱剤[ヨウ化銅およびヨウ化カリウムの混合物−混合物中の銅(Cu)の含有量7重量%]0.3重量部を添加して、基材フィルム製造用混合物を準備した。
【0104】
そして、前記混合物を、240℃で、円形ダイ(ダイギャップ[Die Gap]−2.0mm、ダイ幅[Die Diameter]500mm)を通じて、均一な溶融樹脂流れを維持さしつつ押出し、エアリング(Air−Ring)および内部温度制御装置(IBC;Inner Bubble Cooler)を用いてバブル内部の温度を17℃に調節し、ブロワ(Blower)の風量および吐出量を調節してバブル(Bubble)のブロー比(BUR;Blow−Up Ratio)を2.1にし、ドローダウン比(DDR;Draw Down Ratio)を11.9にして、直径1,050mmのバブル(Bubble)を形成した。連続して、フラット支持台を経て、ニップロール(Nip−Roll)を用いてバブルを平面(Flat)形態にし、両辺部を刃で切開して、2つの平面(Flat)形態のフィルムに作った後、それぞれのフィルムの両辺部を切り出し、ワインダに巻き取って、厚さ80μmを有する平面(Flat)形態の基材フィルムを得た。
【0105】
(2)接着剤の塗布
レゾルシノールとホルムアルデヒドとを1:2のモル比で混合した後、縮合反応させてレゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物を得た。前記レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物15重量%とスチレン/ブタジエン−1,3/ビニルピリジンラテックス85重量%とを混合して、濃度25%のレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を得た。
【0106】
そして、このようなレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を、グラビアコーターを用いて前記基材フィルムの両面にコーティングし、150℃で1分間乾燥および反応させて、両面にそれぞれ3μmの厚さの接着層を形成した。
【0107】
<実施例2>
(1)基材フィルムの製造
相対粘度(硫酸96%溶液)3.8のポリアミド系共重合体樹脂[ε−カプロラクタムおよびヘキサメチレンジアミン(Hexametylene diamine)とアジピン酸(Adipic acid)とを94:6の重量比で使用して合成]と、重量平均分子量が約123,000の共重合体樹脂(アミン基末端のポリテトラメチレンオキシドを主鎖とするポリエーテル系セグメント20重量%およびε−カプロラクタム由来のポリアミド系セグメント80重量%を用いて合成)と、マレイン酸無水物がグラフトされた(0.7重量%)エチレン−プロピレン共重合体(密度:0.920g/cm3)とを30:65:5の重量比で混合し、前記混合物100重量部に対し、オキサゾリン系化合物0.4重量部および耐熱剤[ヨウ化銅およびヨウ化カリウムの混合物−混合物中の銅(Cu)の含有量7重量%]0.2重量部を添加して、基材フィルム製造用混合物を準備した。
【0108】
そして、前記混合物を、230℃で、円形ダイ(ダイギャップ[Die Gap]−3.0mm、ダイ幅[Die Diameter]400mm)を通じて、均一な溶融樹脂流れを維持しつつ押出し、エアリング(Air−Ring)および内部温度制御装置(IBC;Inner Bubble Cooler)を用いてバブル内部の温度を25℃に調節し、ブロワ(Blower)の風量および吐出量を調節してバブル(Bubble)のブロー比(BUR;Blow−Up Ratio)を2.88にし、ドローダウン比(DDR;Draw Down Ratio)を8.0にして、直径1,150mmのバブル(Bubble)を形成した。連続して、フラット支持台を経て、ニップロール(Nip−Roll)を用いてバブルを平面(Flat)形態にし、両辺部を刃で切開して2つの平面(Flat)形態のフィルムに作った後、それぞれのフィルムの両辺部を切り出し、ワインダに巻き取って、厚さ130μmを有する平面(Flat)形態の基材フィルムを得た。
【0109】
(2)接着剤の塗布
前記基材フィルムの両面に2μmの厚さの接着層を形成させた点を除き、前記実施例1と同様の方法で接着層を形成した。
【0110】
<実施例3>
(1)基材フィルムの製造
相対粘度(硫酸96%溶液)3.8のポリアミド系共重合体樹脂[ε−カプロラクタムおよびヘキサメチレンジアミン(Hexametylene diamine)とアジピン酸(Adipic acid)とを94:6の重量比で使用して合成]と、重量平均分子量が約137,000の共重合体樹脂(アミン基末端のポリテトラメチレンオキシドを主鎖とするポリエーテル系セグメント16重量%およびε−カプロラクタム由来のポリアミド系セグメント84重量%を用いて合成)と、マレイン酸無水物がグラフトされた(0.9重量%)エチレン−プロピレン共重合体(密度:0.850g/cm3)とを10:80:10の重量比で混合し、前記混合物100重量部に対し、オキサゾリン系化合物0.4重量部および耐熱剤[ヨウ化銅およびヨウ化カリウムの混合物−混合物中の銅(Cu)の含有量7重量%]0.4重量部を添加して、基材フィルム製造用混合物を準備した。
【0111】
そして、前記混合物を、230℃で、円形ダイ(ダイギャップ[Die Gap]−2.5mm、ダイ幅[Die Diameter]700mm)を通じて、均一な溶融樹脂流れを維持しつつ押出し、エアリング(Air−Ring)および内部温度制御装置(IBC;Inner Bubble Cooler)を用いてバブル内部の温度を35℃に調節し、ブロワ(Blower)の風量および吐出量を調節してバブル(Bubble)のブロー比(BUR;Blow−Up Ratio)を1.64にし、ドローダウン比(DDR;Draw Down Ratio)を15.2にして、直径1,150mmのバブル(Bubble)を形成した。連続して、フラット支持台を経て、ニップロール(Nip−Roll)を用いてバブルを平面(Flat)形態にし、両辺部を刃で切開して2つの平面(Flat)形態のフィルムに作った後、それぞれのフィルム両辺部を切り出し、ワインダに巻き取って、厚さ100μmを有する平面(Flat)形態の基材フィルムを得た。
【0112】
(2)接着剤の塗布
前記基材フィルムの両面に5μmの厚さの接着層を形成させた点を除き、前記実施例1と同様の方法で接着層を形成した。
【0113】
<実施例4>
(1)基材フィルムの製造
相対粘度(硫酸96%溶液)3.6のポリアミド系共重合体樹脂[ε−カプロラクタムおよびヘキサメチレンジアミン(Hexametylene diamine)とアジピン酸(Adipic acid)とを94:6の重量比で使用して合成]と、重量平均分子量が約74,000の共重合体樹脂(アミン基末端のポリテトラメチレンオキシドを主鎖とするポリエーテル系セグメント42重量%およびε−カプロラクタム由来のポリアミド系セグメント58重量%を用いて合成)と、マレイン酸無水物がグラフトされた(0.8重量%)エチレン−プロピレン共重合体(密度:0.910g/cm3)とを70:20:10の重量比で混合し、前記混合物100重量部に対し、オキサゾリン系化合物0.5重量部および耐熱剤[ヨウ化銅およびヨウ化カリウムの混合物−混合物中の銅(Cu)の含有量7重量%]0.7重量部を添加して、基材フィルム製造用混合物を準備した。
【0114】
そして、前記混合物を、255℃で、円形ダイ(ダイギャップ[Die Gap]−0.8mm、ダイ幅[Die Diameter]800mm)を通じて、均一な溶融樹脂流れを維持させて押出し、エアリング(Air−Ring)および内部温度制御装置(IBC;Inner Bubble Cooler)を用いてバブル内部の温度を20℃に調節し、ブロワ(Blower)の風量および吐出量を調節してバブル(Bubble)のブロー比(BUR;Blow−Up Ratio)を1.53にし、ドローダウン比(DDR;Draw Down Ratio)を17.5にして、直径1,220mmのバブル(Bubble)を形成した。連続して、フラット支持台を経て、ニップロール(Nip−Roll)を用いてバブルを平面(Flat)形態にし、両辺部を刃で切開して2つの平面(Flat)形態のフィルムに作った後、それぞれのフィルム両辺部を切り出し、ワインダに巻き取って、厚さ30μmを有する平面(Flat)形態の基材フィルムを得た。
【0115】
(2)接着剤の塗布
レゾルシノールとホルムアルデヒドとを1:2.5のモル比で混合した後、縮合反応させてレゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物を得た。前記レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物22重量%とスチレン/ブタジエン−1,3/ビニルピリジンラテックス78重量%とを混合して、濃度30%のレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を得た。
【0116】
そして、このようなレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を、グラビアコーターを用いて前記基材フィルムの両面にコーティングし、150℃で1.5分間乾燥および反応させて、両面にそれぞれ10μmの厚さの接着層を形成した。
【0117】
<実施例5>
(1)基材フィルムの製造
ε−カプロラクタムから製造された相対粘度(硫酸96%溶液)3.8のポリアミド系樹脂(ナイロン6)と、重量平均分子量が約137,000の共重合体樹脂(アミン基末端のポリテトラメチレンオキシドを主鎖とするポリエーテル系セグメント16重量%およびε−カプロラクタム由来のポリアミド系セグメント84重量%を用いて合成)と、マレイン酸無水物がグラフトされた(0.8重量%)エチレン−プロピレン共重合体(密度:0.910g/cm3)とを8:70:22の重量比で混合し、前記混合物100重量部に対し、オキサゾリン系化合物0.2重量部および耐熱剤[ヨウ化銅およびヨウ化カリウムの混合物−混合物中の銅(Cu)の含有量7重量%]1.0重量部を添加して、基材フィルム製造用混合物を準備した。
【0118】
そして、前記混合物を、230℃で、円形ダイ(ダイギャップ[Die Gap]−2.2mm、ダイ幅[Die Diameter]600mm)を通じて均一な溶融樹脂流れを維持させて押出し、エアリング(Air−Ring)および内部温度制御装置(IBC;Inner Bubble Cooler)を用いてバブル内部の温度を45℃に調節し、ブロワ(Blower)の風量および吐出量を調節してバブル(Bubble)のブロー比(BUR;Blow−Up Ratio)を1.83にし、ドローダウン比(DDR;Draw Down Ratio)を5.7にして、直径1,100mmのバブル(Bubble)を形成した。連続して、フラット支持台を経て、ニップロール(Nip−Roll)を用いてバブルを平面(Flat)形態にし、両辺部を刃で切開して2つの平面(Flat)形態のフィルムに作った後、それぞれのフィルム両辺部を切り出し、ワインダに巻き取って、厚さ210μmを有する平面(Flat)形態の基材フィルムを得た。
【0119】
(2)接着剤の塗布
前記基材フィルムの両面に1μmの厚さの接着層を形成させた点を除き、前記実施例4と同様の方法で接着層を形成した。
【0120】
[比較例:高分子フィルムの製造]
(1)基材フィルムの製造
ε−カプロラクタムから製造された相対粘度(硫酸96%溶液)3.8のポリアミド系樹脂(ナイロン6)と、重量平均分子量が約137,000の共重合体樹脂(アミン基末端のポリテトラメチレンオキシドを主鎖とするポリエーテル系セグメント16重量%およびε−カプロラクタム由来のポリアミド系セグメント84重量%を用いて合成)とを90:10の重量比で混合して、基材フィルム製造用混合物を準備した。
【0121】
そして、前記混合物を、255℃で、T型ダイ(ダイギャップ[Die Gap]−1.2mm)を通じて、均一な溶融樹脂流れを維持させて押出し、20℃に調節される冷却ロールの表面にエアナイフ(Air Knife)を用いて溶融樹脂を均一な厚さのフィルム状に冷却固化させた。そして、10m/minの速度で、延伸および熱処理の区間を経ずに、100μmの厚さを有する基材フィルムを得た。
【0122】
(2)接着剤の塗布
実施例1と同様の方法でレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を、グラビアコーターを用いて前記基材フィルムの両面にコーティングし、150℃で1分間乾燥および反応させて、両面にそれぞれ3μmの厚さの接着層を形成した。
【0123】
<実験例>
実験例1:酸素透過度実験
前記実施例および比較例で得られた基材フィルムに対して、ASTM D1434法で、ガス透過率測定装置(Gas Transmission Rate Tester)(Model BR−1/BT−1、東洋精機製作所(Toyoseiki Seisaku−Sho)社製品)を用いて、25℃、60RH%の雰囲気下、酸素透過度を測定した。
【0124】
実験例2:伸度25%でのモジュラス比率(Modulus Balance)実験
前記実施例および比較例で得られた基材フィルムを、23℃、相対湿度50%の条件で24時間放置後、170℃の熱風オーブン内に前記基材フィルム層の一端をぶら下げて据え置き、無荷重および無接触の状態で30分間放置(熱処理)した直後、試料長を30mm、試料幅を30mmにし、引張速度を300mm/minにして、万能引張試験機(Instron社、Tensile test machine)を用いて、基材フィルムの機械流れ方向(MD;Machine Direction)および横方向(TD;Transverse Direction)についての、伸び率25%での強度値を、それぞれ10回測定して、最大値および最小値を除いた8つの値に対する平均値でもって、基材フィルムの機械方向(MD;Machine Direction)および横方向(TD;Transverse Direction)についての、高温(170℃)での25%伸張時のモジュラス(Modulus)を求めた。
【0125】
前記方法により測定された基材フィルムの機械流れ方向(MD;Machine Direction)および横方向(TD;Transverse Direction)についての、高温(170℃)での25%伸張時のモジュラス(Modulus)値の比率で、モジュラスバランス(Modulus Balance)を確認することができ、下記一般式1のような方式で計算した。
【0126】
<一般式1>
【0127】
実験例3:耐熱衝撃強度比(MD/TD)実験
前記実施例および比較例で得られた基材フィルムの耐熱衝撃強度を、次のように測定した。
【0128】
ISO8256 Method A方法を適用して耐熱衝撃強度を測定し、前記基材フィルムの機械流れ方向(MD;Machine Direction)および横方向(TD;Transverse Direction)について、試験片切断機(Cutting Device、ISO8256 Type4)を用いて、評価用試験片をそれぞれ10個ずつ採取した。
【0129】
この際、評価用試験片の形態(試験片の長さ×ショルダーの幅×平行試験片の長さ×試験片の幅)は、ISO8256 type4に合わせて60mm×10mm×25mm×3mmとなるように切断し、規格に合わせて切断した評価用試験片を23℃、相対湿度50%の条件で24時間放置後、170℃の熱風オーブン内に前記基材フィルム層の一端をぶら下げて据え置き、無荷重および無接触の状態で1時間熱処理した直後、23℃、相対湿度50%の環境下、ISO8256 Method Aに準じて、ペンデュラムインパクト試験機(Pendulum Impact Tester、Zwick/Roell社、Model HIT5.5P)を用いて、熱処理された基材フィルムの機械流れ方向(MD;Machine Direction)および横方向(TD;Transverse Direction)に対する耐熱衝撃強度を、それぞれ10回測定して、最大値および最小値を除いた8つの値に対する平均値を求めた。
【0130】
前記耐熱衝撃強度の測定時、外部環境による偏差を最小化するために、評価用試験片は熱処理前に測定に必要な大きさに切断し、熱処理後、物性の変化を最小化するために、熱処理後15分以内に測定を完了した。
【0131】
前記基材フィルムの機械方向(MD)および横方向(TD)に対する耐熱衝撃強度は、下記一般式2のように求めた。
【0132】
<一般式2>
耐熱衝撃強度(kJ/m2)=衝撃エネルギー(kJ)/[フィルムの厚さ(m)×試験片の幅(0.003m)]
(ここで、評価用試験片の幅は3mmに固定)
【0133】
また、耐熱衝撃強度比は、下記一般式3のように求めた。
【0134】
<一般式3>
【0135】
実験例4:成形の容易性測定
前記実施例および比較例の基材フィルムをインナーライナーに適用して、205R/65R16規格でタイヤを100本ずつ製造した。タイヤ製造工程中のグリーンタイヤの製造後、製造容易性および外観を評価し、以降、加硫後のタイヤの最終外観を検査した。
【0136】
この時、グリーンタイヤまたは加硫後のタイヤに歪みがなく、直径の標準偏差が5%以内の場合、「良好」と評価した。そして、グリーンタイヤまたは加硫後のタイヤに歪みが発生してタイヤがうまく製作されなかったり、タイヤ内部のインナーライナーが溶けたり破れて破損した場合、または直径の標準偏差が5%超の場合、「不良」と評価した。
【0137】
前記実施例および比較例の基材フィルムをタイヤインナーライナーに適用して製造されたタイヤ100本に対して、良好な外観を有するタイヤの本数を確認して、成形容易性を評価し、下記一般式4のように成形容易性を求めた。
【0138】
<一般式4>
【0139】
実験例5:耐久性測定実験
FMVSS139タイヤの耐久性測定方法を用いて荷重を増加させ、実験例4で製造されたタイヤの耐久性を実験評価した。このような耐久性測定は、ステップ荷重(Step Load)方式で荷重を増加させる荷重耐久テスト(Endurance Test)と、速度を増加させる高速耐久テスト(High Speed Test)の2つの方法で実施し、タイヤ内部のクラックの有無を確認して、クラックがない場合に「良好」、発生した場合に「不良」と表記した。
【0140】
前記実験例4の方法でタイヤの最終外観を評価して、外観が「良好」なタイヤを20本ずつ選別して、それぞれ10本ずつ、荷重耐久テスト(Endurance Test)および高速耐久テスト(High Speed Test)を行うことで「クラック」発生の有無を確認し、タイヤ10本に対して耐久性測定後、「クラック」発生のない「良好」なタイヤの本数で、下記一般式5のように荷重耐久テスト(Endurance Test)および高速耐久テスト(High Speed Test)によるタイヤの耐久性を求めた。
【0141】
<一般式5>
【0142】
実験例6:空気圧保持性能測定
実験例4で製造されたタイヤを、ASTM F1112−06法を用いて、21℃の温度、101.3kPaの圧力下、下記一般式6に示しているように、90日間の空気圧保持率(IPR:Internal Pressure Retention)を測定して比較評価した。
【0143】
<一般式6>
【0144】
前記実験例1〜6の結果を、下記表1に示した。
【0145】
【表1】
【0146】
前記表1に示されているように、実施例で製造されるインフレーションフィルムは、全方向にわたって均一で優れた物性を示し、相対的に高い引張強度および衝撃強度を有するとともに、低いモジュラスを有し、具体的には、前記基材フィルムを170℃の条件で30分間熱処理した後、伸度25%で前記基材フィルムの横方向へのモジュラスに対する機械流れ方向へのモジュラスの比率が0.85〜1.17の範囲内であることが確認され、方向によるモジュラスが均一で、これにより、タイヤの成形過程および加硫工程中にフィルムに加えられる応力を均一に分散させることができるという点が確認された。
【0147】
また、実施例で製造されるインフレーションフィルムは、170℃の条件で1時間熱処理した後、前記基材フィルムの横方向への衝撃強度に対する機械流れ方向への衝撃強度の比率が0.83〜1.19で、方向による衝撃強度が均一であるという点が確認され、これにより、前記インフレーションフィルムを設けた空気入りタイヤは、自動車の走行過程中に外部から加えられる応力(Stress)を容易に分散させて、応力集中によるクラック(Crakc)の発生を減少させることができる。
【0148】
そして、前記実施例で得られた高分子フィルムは、30μm〜210μmの厚さでも183cm3/(m2・24hr・atm)以下の酸素透過度を示し、薄い厚さでも優れた気密性を実現できるので、優れた成形性と共に、タイヤへの適用時に高い耐久性を確保できることが確認された。
図1