【課題を解決するための手段】
【0019】
本明細書では、ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物;を含む基材フィルムを含み、前記基材フィルムを170℃の条件で30分間熱処理した直後には、伸度25%にて、前記基材フィルムの横方向(幅方向;transverse direction)へのモジュラスに対する機械流れ方向(machine direction)へのモジュラスの比率が0.8〜1.2である、インフレーションフィルムが提供される。
【0020】
また、本明細書では、ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物;を含む溶融樹脂組成物を、1.5〜3のブロー比(BUR; blow up ratio)で膨張させる段階;を含む、前記インフレーションフィルムの製造方法が提供される。
【0021】
以下、発明の具体的な実現例による、インフレーションフィルムおよびインフレーションフィルムの製造方法に関して、より詳細に説明する。
【0022】
発明の一実現例によれば、ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物;を含む基材フィルムを含み、前記基材フィルムを170℃の条件で30分間熱処理した直後には、伸度25%にて、前記基材フィルムの横方向へのモジュラスに対する機械流れ方向へのモジュラスの比率が0.8〜1.2である、インフレーションフィルムが提供される。
【0023】
本発明者らの研究結果、前記ポリアミド系樹脂、前記特定のセグメントを含む共重合体、および前記オレフィン系高分子化合物を共に含む原料を、インフレーション成形して製造されるフィルムが、通常の平板フィルム(cast)とは異なって、フィルムの横方向(TD;Transverse Direction)に溶融状態で引張させることによって、高温の熱処理後にも、フィルムの横方向(TD)に対して安定した物性を維持可能であり、フィルムの機械流れ方向(MD)と横方向(TD)との間の物性の偏差をより低下させることができるという点を、実験を通して確認することで、発明を確認した。
【0024】
前記インフレーションフィルムは、高温の熱処理後にも、基材フィルムの機械流れ方向(MD)と横方向(TD)において均一な物性を有することによって、タイヤの成形過程中および加硫工程中にフィルムに加えられる応力を均一に分散させることができて成形性に優れ、基材フィルムの機械流れ方向(MD)および横方向(TD)に対する物性バランス(Balance)特性によって、外部から加えられるストレス(Stress)に対して分散が容易に行われ、一方向にストレス(Stress)が集中してクラック(Crack)の発生および成長(Propagation)が加速化される現象を遅延させることによって、耐久性をさらに向上させることができる。
【0025】
前記インフレーションフィルムは、上述したポリアミド系樹脂、前記特定のセグメントを含む共重合体、および前記オレフィン系高分子化合物を共に含む原料を溶融した状態で、押出機のダイを介して連続的に生成されるチューブ状のバブルを形成する段階、前記バブル内部に所定の空気を吹き込んでフィルムの幅方向に膨張させる段階;ニップロールなどの装置部によって前記バブルが折り畳まれ、折り畳まれた両辺部を切開(Cutting)して2つの平板状態に分ける段階;平板形態のフィルム両辺部のエッジを切り出した(Edge−Triming)後、フィルムロール(Roll)状態に巻き取られる段階などにより製造される。
【0026】
前記インフレーションフィルムは、タイヤのインナーライナーに使用できる。前記インフレーションフィルムが、インナーライナーへの使用時、薄い厚さでも優れた気密性を実現してタイヤを軽量化し、自動車の燃費を向上させることができ、高い耐熱特性を有しながらも、優れた成形性と共に高い耐久性および耐疲労性などの機械的物性を示すことができる。
【0027】
前記一実現例のインフレーションフィルムは、構造的に、ハードドメイン(Hard Domain)にソフトドメイン(Soft Domain)が島(Island)状に形成されている海島(Sea−Island)モルフォロジー(Morphology)を有しており、フィルムの機械流れ方向(MD)および横方向(TD)のソフトドメインの大きさが均一になることによって、全方向に対して均一な物性を有することができ、外部から加えられるストレス(Stress)を分散させて応力集中化現象を緩和させることができる。
【0028】
上述のように、前記一実現例のインフレーションフィルムは、全方向にわたって均一で優れた物性を示し、相対的に高い引張強度および衝撃強度を有するとともに、低いモジュラスを有しており、具体的には、前記基材フィルムを170℃の条件で30分間熱処理した後、伸度25%にて、前記基材フィルムの横方向へのモジュラスに対する機械方向へのモジュラスの比率が0.8〜1.2であってもよい。
【0029】
つまり、前記基材フィルムを170℃の条件で30分間熱処理し、伸度25%を適用して前記基材フィルムの機械流れ方向(MD;Machine Direction)および横方向(TD;Transverse Direction)へのモジュラスをそれぞれ測定したとき、前記基材フィルムの横方向へのモジュラスに対する機械流れ方向へのモジュラスの比率が、0.8〜1.2であってもよい。
【0030】
具体的には、前記基材フィルムを170℃の条件で30分間熱処理し、伸度25%を適用して測定した機械方向および横方向へのそれぞれのモジュラスは、前記基材フィルムを23℃の温度および相対湿度50%の条件で24時間放置した後、170℃の熱風オーブン内に、前記基材フィルム層の一端をぶら下げて据え置き、無荷重および無接触の状態で30分間放置(熱処理)した直後に、30mmの試料長および30mmの試料幅の大きさの試験片に対して、万能引張試験機(Instron社、Tensile test machine)を用い、300mm/minの引張速度を適用して機械方向および横方向に、それぞれ伸び率25%で測定した強度値として定義することができる。
【0031】
また、前記基材フィルムを170℃の条件で1時間熱処理した後、前記基材フィルムの横方向への衝撃強度に対する機械方向への衝撃強度の比率が0.8〜1.2であってもよい。
【0032】
具体的には、前記基材フィルムを170℃の条件で1時間熱処理した後に測定した機械流れ方向および横方向へのそれぞれの衝撃強度は、前記基材フィルムを23℃の温度および相対湿度50%の条件で24時間放置した後、170℃の熱風オーブン内に前記基材フィルム層の一端をぶら下げて据え置き、無荷重および無接触の状態で1時間放置(熱処理)した直後に、23℃の温度および相対湿度50%の環境下、ISO8256 Method Aに準じてペンデュラムインパクト試験機(Pendulum Impact Tester、Zwick/Roell社、Model HIT5.5P)を用いて測定した、前記熱処理された基材フィルムの機械方向および横方向それぞれへの耐熱衝撃強度として定義することができる。
【0033】
前記一実現例のインフレーションフィルムが、上述した前記基材フィルムの横方向へのモジュラスに対する機械方向へのモジュラスの比率と、前記基材フィルムの横方向への衝撃強度に対する機械方向への衝撃強度の比率とを満足することによって、タイヤの成形過程中および加硫工程中にフィルムに加えられる応力を均一に分散させて、前記基材フィルムの残存応力を緩和することができるのであり、これにより、向上した成形性を確保しながら、自動車走行過程中の応力集中化現象による発熱および耐久性の低下を最小化することができる。
【0034】
一方、前記基材フィルムに含まれるポリアミド系樹脂は2.5〜4.0、好ましくは3.2〜3.8の相対粘度(硫酸96%溶液)を有することができる。このようなポリアミド系樹脂の粘度が2.5未満であれば、靭性(toughness)の低下によって十分な伸び率が確保されず、タイヤの製造時や自動車の運行時に破損が発生し得るのであり、基材フィルムが、インナーライナー用高分子フィルムとして有するべき気密性または成形性などの物性を、確保しにくいことがある。また、前記の、このようなポリアミド系樹脂の粘度が4.0を超える場合、製造される基材フィルムのモジュラスまたは粘度が不必要に高くなり得るのであって、タイヤインナーライナーが適切な成形性または弾性を有しにくいことがある。
【0035】
前記ポリアミド系樹脂の相対粘度は、常温で硫酸96%溶液を用いて測定した相対粘度を意味する。具体的には、一定のポリアミド系樹脂の試験片(例えば、0.025gの試験片)を、相異なる濃度で硫酸96%溶液に溶かして、2以上の測定用溶液を製造した後(例えば、ポリアミド系樹脂試験片を0.25g/dL、0.10g/dL、0.05g/dLの濃度となるように96%硫酸に溶かして3つの測定用溶液を作製)、25℃で粘度管を用いて前記測定用溶液の相対粘度(例えば、硫酸96%溶液の粘度管の通過時間に対する前記測定用溶液の平均通過時間の比率)を求めることができる。
【0036】
前記基材フィルムに使用可能なポリアミド系樹脂としては、ポリアミド系樹脂、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/66/610共重合体、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、およびナイロン66/PPS共重合体;またはこれらのN−アルコキシアルキル化物、例えば、6−ナイロンのメトキシメチル化物、6−610−ナイロンのメトキシメチル化物、または612−ナイロンのメトキシメチル化物があり、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、またはナイロン612を使用することが好ましいことがある。
【0037】
前記基材フィルムは、前記ポリアミド系樹脂と共に、前記ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体を含むことで、優れた気密性と共に相対的に低いモジュラスを有することができる。具体的には、前記基材フィルムに含まれるポリアミド系樹脂の固有分子鎖特性によって、前記一実現例のインフレーションフィルムは、タイヤに一般に用いられるブチルゴムなどに比べて、同一厚さで10〜20倍程度の気密性を示すことができ、前記共重合体は、前記ポリアミド系樹脂の間に結合または分散した状態で存在して、前記基材フィルムのモジュラスをより低下させることができ、前記基材フィルムの剛直度が上昇するのを抑制することができ、高温で結晶化されるのを防止することができる。
【0038】
前記ポリアミド系セグメントとポリエーテル系セグメントとを含む共重合体の重量平均分子量が30,000〜500,000、または70,000〜300,000、または90,000〜200,000であってもよい。前記共重合体の重量平均分子量が30,000未満であれば、製造される基材フィルムがインナーライナー用高分子フィルムへの使用に十分な機械的物性を確保できないことがあり、前記インナーライナー用高分子フィルムが十分な気密性(Gas barrier)を確保しにくいことがあり、場合によっては、インフレーション工程中にバブル(Bubble)の安定性が低下する現象が現れることがある。また、前記共重合体の絶対重量平均分子量が500,000超であれば、高温に加熱したとき、基材フィルムのモジュラスまたは結晶化度が過度に増加して、インナーライナー用高分子フィルムとして有するべき弾性または弾性回復率を確保しにくいことがある。
【0039】
本明細書において、重量平均分子量は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られた分析装置と示差屈折検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用いることができ、通常適用される温度条件、溶媒、流速(flow rate)を適用することができる。前記測定条件の具体例として、30℃の温度、クロロホルム溶媒(Chloroform)、および1mL/minの流速(flow rate)が挙げられる。
【0040】
前記基材フィルム中の前記ポリエーテル系セグメントの含有量が2重量%〜40重量%、3重量%〜35重量%、または4重量%〜30重量%であってもよい。
【0041】
前記ポリエーテル系セグメントの含有量が基材フィルム全体の中の2重量%未満であれば、前記基材フィルムまたはインナーライナーに使用される前記インフレーションフィルムのモジュラスが高くなってタイヤの成形性が低下したり、繰り返し変形による物性の低下が大きくなったりし得る。前記ポリエーテル系セグメントの含有量がフィルム全体中の40重量%を超えると、タイヤインナーライナーに要求される気密性(Gas Barrier)が良くなくてタイヤ性能が低下することがあり、接着剤に対する反応性が低下してインナーライナーがカーカス層に容易に接着しにくいことがあり、基材フィルムの弾性が増加して均一なフィルムを製造するのが容易でないことがある。
【0042】
前記共重合体のポリアミド系セグメントは、下記化学式1または化学式2の繰り返し単位を含むことができる。
【0043】
[化学式1]
【0044】
前記化学式1において、R
1は、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、または炭素数7〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアリールアルキレン基である。
【0045】
[化学式2]
【0046】
前記化学式2において、R
2は、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基であり、R
3は、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、または炭素数7〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアリールアルキレン基である。
【0047】
また、前記共重合体のポリエーテル系セグメントは、下記化学式3の繰り返し単位を含むことができる。
【0048】
[化学式3]
【0049】
前記化学式3において、R
5は、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基であり、nは、1〜100の整数であり、R
6およびR
7は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ直接結合、−O−、−NH−、−COO−、または−CONH−である。
【0050】
また、前記基材フィルムにおいて、前記ポリアミド系樹脂、および前記ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体は9:1〜1:9、または2:8〜8:2の重量比で含まれる。前記ポリアミド系樹脂の含有量が小さすぎると、前記基材フィルムの密度や気密性が低下することがある。さらに、前記ポリアミド系樹脂の含有量が大きすぎると、前記基材フィルムのモジュラスが過度に高くなったりタイヤの成形性が低下したりすることがあり、タイヤの製造過程または自動車の運行過程で現れる高温環境でポリアミド系樹脂が結晶化され、繰り返し変形によってクラックが発生し得る。
【0051】
一方、前記実現例のインフレーションフィルムに含まれる基材フィルムは、前記ポリアミド系樹脂、およびポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体と共に、オレフィン系高分子化合物を含むことによって、前記インフレーションフィルムが高温や外部衝撃または変形などによって結晶化される現象を防止することができ、また、前記インフレーションフィルムの他の機械的物性を同等水準以上に維持しながらも、モジュラス特性を低下させたり弾性を高めたりして、低温でも耐疲労特性および耐久性を向上させることができる。
【0052】
具体的には、前記オレフィン系高分子化合物は、前記基材フィルムの柔軟性(Softness)を高め、外部から加えられる衝撃を吸収する能力を向上させる役割を果たし、また、前記基材フィルムのモジュラスを大きく低下させながら、前記基材フィルムに含まれる化合物や高分子の内部構造が変化して結晶化される現象を、防止することができる。
【0053】
前記基材フィルムは、前記オレフィン系高分子化合物3重量%〜35重量%、または10重量%〜30重量%を含むことができる。前記オレフィン系高分子化合物の含有量が小さすぎると、前記オレフィン系高分子化合物による作用および効果の程度がわずかであり得る。また、前記オレフィン系高分子化合物の含有量が大きすぎると、前記ポリアミド系樹脂および前記共重合体から発現する物性や効果を低減させることがあり、前記一実現例のインナーライナー用高分子フィルムを適用して、タイヤ製造時の高温加硫工程で熱による物性の低下が大きく生じ得る。
【0054】
前記オレフィン系高分子化合物は、オレフィン系重合体、オレフィン系共重合体、ジカルボン酸またはその酸無水物がグラフトされたオレフィン系重合体または共重合体、またはこれらの2種以上の混合物を含むことができる。
【0055】
前記オレフィン系重合体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0056】
前記オレフィン系共重合体は、エチレン−プロピレン共重合体、またはエチレン−アクリル酸エステル−マレイン酸無水物三重合体(Ethylene−Acrylic Ester−Maleic Anhydride terpolymer)、アクリル酸エステル−マレイン酸無水物共重合オレフィン(acrylic ester and maleic anhydride functionalized polyolefin)、エチレン−ブチルアクリレート−グリシジルメタクリレート三重合体(Terpolymer of ethylene、butylacrylate(BA)and glycidylmethacrylate(GMA)を含むことができる。
【0057】
上述のように、前記オレフィン系高分子化合物は、ジカルボン酸またはその酸無水物がグラフトされたオレフィン系重合体または共重合体を含んでもよいが、前記ジカルボン酸は、マレイン酸、フタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、シス−1,2,3,6テトラヒドロフタル酸、4−メチル−1,2,3,6テトラヒドロフタル酸、またはこれらの2種以上の混合物を含むことができ、前記ジカルボン酸の二無水物は、上述した例のジカルボン酸二無水物であってもよい。
【0058】
前記ジカルボン酸またはその酸無水物がグラフトされたオレフィン系重合体または共重合体中のグラフトされたジカルボン酸またはその酸無水物の含有量が0.3重量%以上であってもよいし、好ましくは0.5重量%〜3.0重量%であってもよい。
【0059】
このようなジカルボン酸またはその酸無水物のグラフト化比率は、前記オレフィン系高分子化合物を酸−塩基滴定して得られた結果から測定することができる。例えば、前記オレフィン系高分子化合物約1gを水で飽和した150mlのキシレンに入れて2時間程度還流した後、1重量%チモールブルー−ジメチルホルムアミド溶液を少量加え、0.05N水酸化ナトリウム−エチルアルコール溶液で若干超過滴定して群青色の溶液を得た後、この溶液を再び0.05Nの塩酸−イソプロピルアルコール溶液で黄色を呈するまで逆滴定して酸価を求めることができ、これから、オレフィン系高分子化合物にグラフトされたジカルボン酸の量を算出することができる。
【0060】
前記オレフィン系高分子化合物は、0.77g/cm
3〜0.95g/cm
3、または0.80g/cm
3〜0.93g/cm
3の密度(Density)を有することができる。
【0061】
前記基材フィルムは、20〜300μm、好ましくは40〜250μm、より好ましくは40〜200μmの厚さを有することができる。これにより、発明の一実現例のインナーライナー用高分子フィルムは、従来知られたものに比べて薄い厚さを有しながらも、低い空気透過性、例えば、200cm
3/(m
2・24hr・atm)以下の酸素透過度を有することができる。
【0062】
一方、前記基材フィルムが架橋剤をさらに含んでもよい。前記基材フィルムが架橋剤をさらに含むことによって、前記基材フィルム自体の結晶性や高温で結晶化される傾向を低下させることができる。具体的には、前記架橋剤を用いることによって、前記基材フィルムの製造過程で使用または合成される高分子、例えば、ポリアミド系樹脂(a)、およびポリアミド(poly−amide)系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体(b)の、それぞれ、または互いに架橋反応が起こり、これにより、前記基材フィルムの結晶性が低くなり得る。
【0063】
前記架橋剤は、オキサゾリン官能基を含む化合物、トリメリット酸無水物(Trimellitic anhydride)、カルボジイミド化合物(Carbodiimide)を含むことができる。特に、前記基材フィルムが当該架橋剤を含むことによって、前記高分子フィルムは、十分な強度と共に低いモジュラス特性を有することができ、100℃以上の高温の成形過程や伸張過程によっても基材フィルムの結晶化度がさほど大きくなく、モジュラス特性、弾性または弾性回復率などが大きく低下せず、優れた成形性も確保可能である。
【0064】
一方、前記基材フィルムは、耐熱剤をさらに含んでもよい。前記基材フィルムが耐熱剤をさらに含むことによって、フィルムの製造過程中あるいはタイヤの製造過程中に、随伴する熱による高分子の鎖切断を防止することができ、熱分解によるラジカルの生成を抑制することができ、これにより、高温の環境で長時間、放置または露出する場合にも、自身の物性が大きく低下しなくなる。つまり、前記基材フィルムに耐熱剤が追加されることによって、タイヤの成形過程でも、基材フィルムが結晶化したり高い水準で硬化したりする現象を顕著に低減することができるのであり、繰り返し変形が加えられて高温が発生する自動車の走行過程でも、インナーライナーにて亀裂または破損が発生する現象を防止することができる。
【0065】
前記基材フィルムは、耐熱剤が0.005重量%〜2.50重量%、または0.01重量%〜1.00重量%であってもよい。前記耐熱剤の含有量が小さすぎると、耐熱性向上の効果がわずかであり得る。また、前記耐熱剤の含有量が大きすぎると、基材フィルムの物性が低下し、使用含有量による耐熱性向上の効果が実質的になく、最終製品の価格を不必要に上昇させることがある。
【0066】
このような耐熱剤の具体例としては、芳香族アミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、無機化合物、ポリアミド系化合物、ポリエーテル系化合物、またはこれらの2以上の混合物を使用することができる。このような耐熱剤は、後述する製造方法でパウダー(powder)形態または液状形態などで適用可能である。
【0067】
一方、前記一実現例のインフレーションフィルムは、前記基材フィルムの少なくとも一面に形成され、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層をさらに含んでもよい。
【0068】
前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層は、前記基材フィルムおよびタイヤカーカス層に対しても優れた接着力および接着保持性能を有し、これにより、タイヤの製造過程または運行過程などで発生する熱または繰り返し変形によって発生するインナーライナーフィルムとカーカス層との間の界面の破断を防止して、前記インナーライナー用高分子フィルムが十分な耐疲労性を有するようにする。
【0069】
前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物2〜32重量%、好ましくは10〜20重量%、およびラテックス68〜98重量%、好ましくは80〜90重量%を含むことができる。
【0070】
前記レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとを1:0.3〜1:3.0、好ましくは1:0.5〜1:2.5のモル比で混合した後、縮合反応して得られたものであってもよい。また、前記レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物は、優れた接着力のための化学反応の側面から、全接着層の総量に対して2重量%以上で含まれ、適正な耐疲労特性を確保するために、32重量%以下で含まれる。
【0071】
前記ラテックスは、天然ゴムラテックス、スチレン/ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル/ブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、およびスチレン/ブタジエン/ビニルピリジンゴムラテックスからなる群より選択された1種または2種以上の混合物になってもよい。前記ラテックスは、素材の柔軟性とゴムとの効果的な架橋反応のために、全接着層の総量に対して68重量%以上で含まれ、基材フィルムとの化学反応と接着層の剛性のために、98重量%以下で含まれる。
【0072】
前記接着層は0.1〜20μm、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.2〜7μm、さらに好ましくは0.3〜5μmの厚さを有することができ、インフレーションフィルムの一表面上または両表面上に形成される。
【0073】
一方、発明の他の実現例によれば、ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物;を含む溶融樹脂組成物を1.5〜3のブロー比(BUR)で膨張させる段階;を含む、上述したインフレーションフィルムの製造方法が提供される。
【0074】
前記ポリアミド系樹脂、前記特定のセグメントを含む共重合体、および前記オレフィン系高分子化合物を共に含む原料をインフレーション成形して製造されるフィルムは、通常の平板フィルム(cast)とは異なって、全方向にわたって均一で優れた物性を示し、相対的に高い引張強度および衝撃強度を有しかつ、低いモジュラスを有することができる。
【0075】
具体的には、前記インフレーションフィルムの製造方法によれば、ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物;を含む基材フィルムを含み、前記基材フィルムを170℃の条件で30分間熱処理した後、伸度25%で前記基材フィルムの横方向へのモジュラスに対する機械流れ方向へのモジュラスの比率が0.8〜1.2である、インフレーションフィルムが提供される。
【0076】
また、前記製造されるインフレーションフィルムにおいて、前記基材フィルムを170℃の条件で1時間熱処理した後、前記基材フィルムの横方向への衝撃強度に対する機械方向への衝撃強度の比率が0.8〜1.2であってもよい。
【0077】
上述のように、前記インフレーションフィルムは、前記ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物;を含む溶融樹脂組成物を1.5〜3、または1.8〜2.7、または2.0〜2.5のブロー比(BUR)で膨張して製造される。
【0078】
前記ブロー比(BUR、Blow Up Ratio)は、前記溶融した樹脂組成物がダイを通じて押出されてバブルを形成した後、横方向に延伸する程度の比率を意味し、具体的には、ダイ直径に対するバブル直径の比率として定義される。
【0079】
前記ブロー比が過度に増加する場合、例えば、前記インフレーションフィルムの製造過程でのブロー比が3超の場合、機械流れ方向(MD)への引張強度は減少するが、横方向(TD)への分子配向が増大して、前記インフレーションフィルムの有するMD/TDの物性バランス(Balance)が不良になり、前記インフレーションフィルムの製造過程でバブル(Bubble)の安定性が低下して工程性が低下することがある。また、前記ブロー比が1.5未満の場合、安定したバブル(Bubble)の形成が難しくて、最終的に製造されるインフレーションフィルムが不均一な厚さおよび劣悪な物性を有し、フィルムとして製造が困難になり得る。
【0080】
前記溶融樹脂組成物を1.5〜3のブロー比(BUR)で膨張させる段階で、バブル直径およびダイ直径が大きく限定されるものではなく、最終的に製造されるインフレーションフィルムの大きさや物性などを考慮して適切に調節可能であり、例えば、前記溶融樹脂組成物を1.5〜3のブロー比(BUR)で膨張させる段階で、バブル直径は450〜2000mmであり、ダイ直径は300〜800mmであってもよい。
【0081】
前記溶融樹脂組成物を1.5〜3のブロー比(BUR)で膨張させる段階で、前記ダイ直径が小さすぎると、溶融押出工程でダイの剪断圧力が過度に高くなり、剪断応力が高くなって、押出されるフィルムが均一なバブル(Bubble)を形成しにくく、生産性が低下する問題があり得る。
【0082】
また、前記溶融樹脂組成物を1.5〜3のブロー比(BUR)で膨張させる段階で、前記ダイ直径が大きすぎると、溶融押出されるフィルムにおいて空気による均一膨張が難しくてバブル(Bubble)の形態安定性が低下して厚さが不均一であり、シワの発生が激しくて均一な物性を獲得しにくいだけでなく、工程性が低下する問題があり得る。
【0083】
一方、前記溶融樹脂組成物は1〜20のドローダウン比(DDR)で膨張できる。前記ドローダウン比(DDR、Draw Down Ratio)は、前記バブルが縦方向に延伸した程度を示し、具体的には、「ダイギャップ/(フィルム厚さ×ブロー比)」として定義される。
【0084】
そして、前記溶融樹脂組成物を1〜20のドローダウン比(DDR)で膨張させる段階で、ダイギャップは0.5〜3.5mmであり、フィルム厚さが20〜300μmであってよい。
【0085】
前記溶融樹脂組成物が膨張する段階で、形成される前記溶融樹脂組成物のバブルの内部の温度が10〜60℃であってもよい。
【0086】
前記溶融樹脂組成物のバブル内部の温度が低すぎると、結露の発生によるフィルム間ブロッキング(Blocking)現象が現れたり、バブル(Bubble)が折リ畳まれる段階でシワが流入したりし得るのであり、これにより、フィルムの製造工程中に両辺部を切開(Cutting)して2つの平板状態に分ける段階で工程性が低下し、物性が不均一であり得る。
【0087】
また、前記溶融樹脂組成物のバブル内部の温度が高すぎると、バブル(Bubble)の形態安定性が低下してシワが流入したり、結晶化が生じてバブル(Bubble)の均一性が低下し、これにより、工程性が低下したり、フィルムの物性が低下して耐久性の低下を誘発することがある。
【0088】
前記溶融樹脂組成物は、ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物を含む原料を溶融押出して形成される。
【0089】
例えば、このような原料を溶融および押出する段階で使用可能な装置および方法は大きく制限されるわけではなく、例えば、前記インフレーションフィルムの製造方法は、ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物;を200℃〜300℃で溶融および押出して前記溶融樹脂組成物を形成する段階をさらに含んでもよい。前記溶融温度は、ポリアミド系化合物の融点よりは高くなければならないが、高すぎると、炭化または分解が生じてフィルムの物性が阻害されることがあり、前記ポリエーテル系樹脂間の結合が生じたり、繊維配列方向に配向が発生したりして、インフレーションフィルムを製造するうえで不利であり得る。
【0090】
上述のように、前記インフレーションフィルムは、前記ポリアミド系樹脂、前記特定のセグメントを含む共重合体、および前記オレフィン系高分子化合物を共に含む原料を溶融した状態で、押出機のダイを介して連続的に生成されるチューブ状のバブルを形成する段階、前記バブル内部に所定の空気を吹き込んで基材フィルムの幅方向に膨張させる段階;ニップロールなどの装置部によって前記バブルが折り畳まれ、折り畳まれた両辺部を切開(Cutting)して2つの平板状態に分ける段階;平板形態のフィルム両辺部のエッジを切り出した(Edge−Triming)後、フィルムロール(Roll)状態に巻き取られる段階などにより製造される。
【0091】
具体的には、前記インフレーションフィルムの製造方法は、前記溶融樹脂組成物について、ニップロールによって折り畳まれた後、連続して、フィルムの機械流れ方向(MD)に延伸する段階;をさらに含んでもよい。
【0092】
また、前記インフレーションフィルムの製造方法において、バブル(Bubble)内部の温度制御のために内部冷却装置(IBC;Inner−Bubble−Cooling)を適用することができる。
【0093】
前記ポリアミド系樹脂;ポリアミド系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体;およびオレフィン系高分子化合物に関する具体的な事項は、前記一実現例のインフレーションフィルムに関して上述した内容をすべて含む。
【0094】
また、前記インフレーションフィルムの製造方法では、上述した内容を除けば、高分子フィルムのインフレーション工程に通常使用される方法および装置を、格別な制限なく使用することができる。
【0095】
一方、前記インフレーションフィルムの製造方法は、前記溶融樹脂組成物から形成された基材フィルムの少なくとも一面に形成され、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層を形成する段階をさらに含んでもよい。
【0096】
前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層は、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を前記基材フィルムの一表面に塗布することによって形成され、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着フィルムを前記基材フィルムの一面にラミネートさせることによっても形成される。
【0097】
好ましくは、このような接着層の形成段階は、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を、前記形成された基材フィルムの一表面または両表面上にコーティングした後、乾燥する方法で進行させることができる。前記形成される接着層は0.1〜20μm、好ましくは0.1〜10μmの厚さを有することができる。前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物2〜32重量%、およびラテックス68〜98重量%、好ましくは80〜90重量%を含むことができる。
【0098】
前記接着剤の塗布には通常使用される塗布またはコーティング方法または装置を格別な制限なく使用することができるが、ナイフ(Knife)コーティング法、バー(Bar)コーティング法、グラビアコーティング法またはスプレー法、または浸漬法を使用することができる。ただし、ナイフ(Knife)コーティング法、グラビアコーティング法またはバー(Bar)コーティング法を使用することが、接着剤の均一な塗布およびコーティングの側面で好ましい。
【0099】
前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤に関する内容は、前記一実現例のインフレーションフィルムに関して上述した内容をすべて含む。