特許第6600765号(P6600765)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本発條株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6600765-ウェーブスプリング 図000002
  • 特許6600765-ウェーブスプリング 図000003
  • 特許6600765-ウェーブスプリング 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6600765
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】ウェーブスプリング
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/32 20060101AFI20191021BHJP
   F16F 1/02 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   F16F1/32
   F16F1/02 B
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-538275(P2019-538275)
(86)(22)【出願日】2019年2月22日
(86)【国際出願番号】JP2019006821
【審査請求日】2019年7月12日
(31)【優先権主張番号】特願2018-32465(P2018-32465)
(32)【優先日】2018年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】酒井 秀彰
(72)【発明者】
【氏名】米岡 篤志
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−18615(JP,U)
【文献】 特開2005−248983(JP,A)
【文献】 特開平7−248035(JP,A)
【文献】 実開昭50−58155(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0362036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/32
F16F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山部および谷部が周方向に交互に連ねられて形成された環状体を備え、
前記環状体は周方向における少なくとも一部が接合されており、
前記環状体において接合された部分が、前記環状体の中心軸線に直交する平面内に延びる平坦部となっており
前記平坦部は、前記中心軸線に沿う軸方向において、前記山部と前記谷部との間に位置している、ウェーブスプリング。
【請求項2】
前記平坦部における周方向の両端部が、前記中心軸線の軸方向に向けて突となる曲面状に形成されている、請求項1に記載のウェーブスプリング。
【請求項3】
前記平坦部は、前記軸方向における前記環状体の中央部に位置している、請求項1または2に記載のウェーブスプリング。
【請求項4】
前記山部と前記谷部とが配置される周方向におけるピッチが不均一である、請求項1から3のいずれか1項に記載のウェーブスプリング。
【請求項5】
前記山部および前記谷部のいずれか一方が、前記平坦部の周方向における両端に連ねられている、請求項1からのいずれか1項に記載のウェーブスプリング。
【請求項6】
前記山部、前記平坦部、および前記谷部が、周方向でこの順に連なっている、請求項1からのいずれか1項に記載のウェーブスプリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーブスプリングに関する。
本願は、2018年2月26日に、日本に出願された特願2018−032465号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、山部および谷部が周方向に交互に連ねられて形成された環状体を備えるウェーブスプリングを開示している。このウェーブスプリングでは、C字状のばね材料の両端部同士が互いに接合されることで、環状体が形成されている。
この種のウェーブスプリングの製造方法としては、ばね材料を溶接などによって接合して環状体を形成した後で、この環状体を塑性変形させて山部および谷部を形成する方法も考えられる。しかしながら、このような順序でウェーブスプリングを製造すると、環状体を塑性変形させる際に、接合部に大きな負荷がかかってしまう。このため、C字状のばね材料を予め波形に成形しておき、その両端部同士を接合する方法が一般的に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第9091315号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のウェーブスプリングでは、環状体の中心軸線に対して傾斜した端面同士を接合している。このため、端面同士の相対的な位置が決まりにくく、接合後の形状が不安定になりやすかった。
また、接合手段として溶接を用いる場合、精度よく溶接するために、接合部の入熱面(ウェーブスプリングの表面)を環状体の中心軸線に直交する平面と平行となるように配置することが好ましい。しかしながら、特許文献1のウェーブスプリングでは、入熱面が環状体の中心軸線に直交する平面に対して傾斜する。このため、入熱方向が環状体の中心軸線と平行である汎用の溶接機を用いた場合、入熱方向が入熱面と直交しないため、精度よく入熱させることが容易ではなかった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、汎用の溶接機を用いながら、より精度よく接合されたウェーブスプリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るウェーブスプリングは、山部および谷部が周方向に交互に連ねられて形成された環状体を備え、前記環状体は周方向における少なくとも一部が接合されており、前記環状体において接合された部分が、前記環状体の中心軸線に直交する平面内に延びる平坦部となっている。
【0007】
上記態様のウェーブスプリングでは、環状体の中心軸線に直交する平面内に延びる平坦部において、環状体が接合されている。このため、C字状のばね材料の両端部同士を接合する際に、例えば複数の谷部の各頂部を作業台の上面に接触させると、上記ばね材料の両端部がこの上面に平行な姿勢となる。したがって、ばね材料の両端部の相対的な位置を、容易に安定させることができる。さらに、例えば接合手段としてレーザー溶接を用いる場合、レーザー光を溶接作業台の上面に垂直な方向に照射すると、レーザー光が自ずと照射面(平坦部の表面)に対して垂直に照射されることになる。以上のことから、上記態様によれば、汎用の溶接機を用いながら、より精度よく溶接されたウェーブスプリングを提供することができる。
【0008】
ここで、前記平坦部における周方向の両端部が、前記中心軸線の軸方向に向けて突となる曲面状に形成されていてもよい。
【0009】
この場合、環状体が弾性変形した際に、平坦部の両端部に局所的に大きな応力が作用することを抑えられる。
【0010】
また、前記平坦部は、前記中心軸線に沿う軸方向において、前記環状体のうち前記山部と前記谷部との間に位置していてもよい。
【0011】
この場合、環状体が付勢対象物によって押圧されて軸方向に圧縮された際に、接合部が付勢対象物に接触しにくくなる。従って、接合部が付勢対象物に強く押圧されることが抑えられ、接合部の破損などを抑止することができる。
【0012】
また、前記平坦部は、前記軸方向における前記環状体の中央部に位置していてもよい。
【0013】
この場合、環状体が付勢対象物によって押圧されて軸方向に圧縮された際に、接合部が付勢対象物にさらに接触しにくくなる。従って、接合部の破損などをより確実に抑止することができる。
【0014】
また、前記山部と前記谷部とが配置される周方向におけるピッチが不均一であってもよい。
【0015】
この場合、環状体のうち、例えば平坦部の近傍に位置する部分におけるピッチを、平坦部から離れて位置する部分におけるピッチよりも小さくして、付勢対象物にバランスよく付勢力を付与することができる。
【0016】
また、前記山部および前記谷部のいずれか一方が、前記平坦部の周方向における両端に連ねられていてもよい。
あるいは、前記山部、前記平坦部、および前記谷部が、周方向でこの順に連なっていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の上記態様によれば、汎用の溶接機を用いながら、より精度よく接合されたウェーブスプリングを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係るウェーブスプリングの平面図である。
図2図1のウェーブスプリングを展開した模式図である。
図3】第2実施形態に係るウェーブスプリングを展開した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本実施形態のウェーブスプリング1Aについて、図1および図2に基づいて説明する。
ウェーブスプリング1Aは、環状体10を備えている。以下、環状体10の中心軸線Oに沿う方向を軸方向という。また、軸方向から見た平面視において、中心軸線O回りに周回する方向を周方向といい、中心軸線Oに交差する方向を径方向という。以下、軸方向における一方側を+Z側といい、軸方向における他方側を−Z側という。
【0020】
環状体10は、+Z側に向けて突となる山部11、および−Z側に向けて突となる谷部12が、周方向に交互に連ねられて形成されている。環状体10は、周方向における少なくとも一部が接合されている。環状体10は、複数の山部11および複数の谷部12を備えている。なお、環状体10が備える山部11および谷部12の数は、適宜変更してもよい。
ここで、本実施形態の環状体10は、中心軸線Oに直交する平面内に延びる平坦部13を有している。また、周方向における平坦部13の中央部には、接合部16が形成されている。
【0021】
図2は、図1の環状体10を展開した模式図である。図2に示すように、平坦部13の周方向における両端には、谷部12が連ねられている。なお、平坦部13の周方向における両端に、山部11が連ねられていてもよい。
本実施形態では、周方向で互いに隣り合う山部11と谷部12との間の周方向における間隔(以下、ピッチPという)は、環状体10の全体で均一になっている。そして、平坦部13の周方向における長さは、ピッチPと実質的に同等になっている。このため、本実施形態のウェーブスプリング1Aは、仮に平坦部13が形成されずに等ピッチで山部11および谷部12が配された場合の1つの山部(図2の破線部)が、平坦部13に置き換わった形状となっている。
【0022】
図2に示すように、平坦部13が延在する平面Cは、山部11の頂点同士を結んでなる平面S1と略平行になっている。また、平面Cは、谷部12の頂点同士を結んでなる平面S2と略平行になっている。平坦部13は、環状体10の軸方向における中央部に位置しており、平面Cは平面S1と平面S2との中間に位置している。
【0023】
平坦部13の周方向における両端部は、一対の谷部12に接続されている。平坦部13の両端部を、第1接続部14および第2接続部15という。第1接続部14および第2接続部15は、+Z側に向けて突となる曲面状に形成されている。
【0024】
ウェーブスプリング1Aは、例えば以下の工程を経て形成される。なお、以下では接合手段としてレーザー溶接を用いた場合を例にするが、他の接合手段を採用してもよい。例えば、電子ビーム溶接、光ビーム溶接、アーク溶接、およびフラッシュバット溶接などのレーザー溶接以外の溶接手段、並びにロウ付けなどを接合手段として用いてもよい。
【0025】
まず、帯状のばね材料を、複数の山部11および複数の谷部12を有するC字状に加工する。このとき、ばね材料の第1端部13aおよび第2端部13bは、平坦な形状に形成される。
次に、山部11の各頂点若しくは谷部12の各頂点を、溶接機(レーザー装置)の溶接作業台上に接触させる。このとき、ばね材料の第1端部13aおよび第2端部13bは、溶接作業台の上面に平行な姿勢となる。
次に、第1端部13aおよび第2端部13bの端面同士を当接若しくは近接させた状態で、これらの端面に向けて、溶接作業台の上面に垂直な方向からレーザー光を照射する。これにより、第1端部13aおよび第2端部13bが互いに溶接される。そして、第1端部13aと第2端部13bとが一体となって平坦部13が形成されるとともに、平坦部13の周方向における中央部に接合部16が形成される。
【0026】
このように、本実施形態のウェーブスプリング1Aでは、環状体10の中心軸線Oに直交する平面内に延びる平坦部13において、環状体10が接合されている。このため、第1端部13aおよび第2端部13bを接合する際に、両端部13a、13bの姿勢を作業台の上面に平行な姿勢とすることができる。従って、両端部13a、13bの相対的な位置を容易に安定させることができる。さらに、接合手段としてレーザー溶接を用いる場合、レーザー光を溶接作業台の上面に垂直な方向に照射すると、両端部13a、13bの軸方向を向く面に対してレーザー光が自ずと垂直に照射されることとなる。つまり、レーザー光の照射面である両端部13a、13bの表面が、レーザー光の光軸方向に対して垂直となる。以上のことから、本実施形態によれば、汎用の溶接機を用いながら、より精度よく接合されたウェーブスプリング1Aを提供することができる。
【0027】
また、平坦部13における周方向の両端部である接続部14、15が、軸方向に向けて突となる曲面状に形成されている。これにより、環状体10が弾性変形した際に、接続部14、15に局所的に大きな応力が作用することが抑えられる。
【0028】
また、平坦部13が、軸方向において、環状体10のうち山部11と谷部12の間の中間部に位置している。これにより、環状体10が付勢対象物によって押圧されて軸方向に圧縮された際に、ウェーブスプリング全体が平坦になる直前まで、接合部16が付勢対象物に接触しにくくなる。従って、接合部16が付勢対象物から加えられる負荷を抑えられ、接合部16の破損などを抑止することができる。また、本実施形態では、平坦部13が、軸方向における環状体10の中央部に位置しているため、上述の作用効果をより確実に奏功させることができる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0030】
図3は、第2実施形態のウェーブスプリング1Bの展開図である。図3に示すように、本実施形態では、平坦部13が、山部11と谷部12とによって周方向で挟まれている。すなわち、山部11、平坦部13、および谷部12が、周方向でこの順に連なっている。
【0031】
また、平坦部13と谷部12とを接続する第1接続部14は、+Z側に向けて突の曲面状に形成され、平坦部13と山部11とを接続する第2接続部15は、−Z側に向けて突の曲面状に形成されている。つまり、平坦部13の周方向における両端部である第1接続部14および第2接続部15が、軸方向に向けて突となる曲面状に形成されている。
【0032】
本実施形態では、平坦部13の周方向における長さが、ピッチPの約2倍になっている。このため、本実施形態のウェーブスプリング1Bは、仮に平坦部13が形成されずに等ピッチで山部11および谷部12が配された場合の、1組の山部および谷部(図3の破線部)が、平坦部13に置き換わった形状となっている。
【0033】
ここで、第1実施形態の形状と第2実施形態の形状とを比較する。第1実施形態のウェーブスプリング1Aは、図2における破線で示した1つの山部が平坦部13に置き換わった形状を有している。一方、第2実施形態のウェーブスプリング1Bは、図3における破線で示した1組の山部および谷部が平坦部13に置き換わった形状を有している。このように、第1実施形態のウェーブスプリング1Aは、第2実施形態のウェーブスプリング1Bと比較して谷部12を多く配置できるため、付勢力を確保しやすい形状となっている。従って、ばね材料の板厚やピッチPの寸法など、付勢力に影響する緒元の選択の自由度が比較的大きい。一方、第2実施形態のウェーブスプリング1Bは、第1実施形態のウェーブスプリング1Aと比較して平坦部13の周方向における長さが大きくなっている。このため、接合時に、端部13a、13b同士の相対的な位置がより合わせやすくなり、接合の精度をより安定させることが可能となる。
【実施例】
【0034】
実施例1として、第1実施形態におけるウェーブスプリング1Aについて、環状体10が平坦になるように弾性変形させたときのウェーブスプリング1A内の応力分布を、シミュレーションにより算出した。この結果、平坦部13に隣接する谷部12の頂部(図2の点A)において、応力値が最大となった。その一方で、平坦部13の中央部(接合部16)における応力値は、点Aにおける応力値の0.25倍となった。
【0035】
実施例2として、第2実施形態におけるウェーブスプリング1Bについて、環状体10が平坦になるように弾性変形させたときのウェーブスプリング1B内の応力分布を、シミュレーションにより算出した。この結果、谷部12を挟んで平坦部13に隣接する山部11の頂部(図3の点B)において、応力値が最大となった。その一方で、平坦部13の中央部(接合部16)における応力値は、点Bにおける応力値の0.03倍となった。
【0036】
実施例1および2の結果から、第1実施形態および第2実施形態のいずれの形状においても、接合部16に応力が集中しにくいことが確認された。
また、シミュレーションの結果から、山部11または谷部12に応力が集中しやすいことが確認された。このため、接合部16を山部11または谷部12に配置せず、山部11および谷部12の間の中間部に接合部16を配置することで、接合部16に応力が集中することを抑制できる。このように、接合部16への応力集中を抑制することで、ウェーブスプリング1A、1Bの強度を高めることができる。
【0037】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0038】
例えば、ウェーブスプリング1A、1Bは、環状体10から径方向内側または径方向外側に突出する爪部を有していてもよい。この場合、爪部によって、ウェーブスプリング1A、1Bの中心軸線O回りの回転を規制することができる。
【0039】
また、前記実施形態では、ピッチPが環状体10の全体で均一となっていたが、ピッチPは不均一であってもよい。例えば、環状体10のうち平坦部13の近傍に位置する部分のピッチを、平坦部13から離れた部分のピッチよりも小さくしてもよい。この場合、図2または図3における破線で示した形状が平坦部13に置き換わったことによる付勢力の低下を補い、付勢対象物にバランスよく付勢力を付与することができる。
【0040】
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1A、1B…ウェーブスプリング 10…環状体 11…山部 12…谷部 13…平坦部 14…第1接続部 15…第2接続部 16…接合部 O…中心軸線
【要約】
ウェーブスプリング(1A)は、山部(11)および谷部(12)が周方向に交互に連ねられて形成された環状体(10)を備える。環状体(10)は周方向における少なくとも一部が接合されている。環状体(10)において接合された部分が、環状体(10)の中心軸線(O)に直交する平面内に延びる平坦部(13)となっている。
図1
図2
図3