特許第6600909号(P6600909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6600909
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】制汗剤又はデオドラント剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/55 20060101AFI20191028BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20191028BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20191028BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20191028BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   A61K8/55
   A61K8/73
   A61K8/06
   A61K8/34
   A61Q15/00
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-184137(P2015-184137)
(22)【出願日】2015年9月17日
(65)【公開番号】特開2016-104713(P2016-104713A)
(43)【公開日】2016年6月9日
【審査請求日】2018年8月10日
(31)【優先権主張番号】特願2014-188843(P2014-188843)
(32)【優先日】2014年9月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 和夫
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋子
(72)【発明者】
【氏名】本間 明日香
(72)【発明者】
【氏名】安藤 涼
(72)【発明者】
【氏名】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3855203(JP,B2)
【文献】 特開2004−315425(JP,A)
【文献】 特表2012−506844(JP,A)
【文献】 特開2003−012928(JP,A)
【文献】 特開2014−070043(JP,A)
【文献】 特開2008−110992(JP,A)
【文献】 特開2008−184395(JP,A)
【文献】 小松亜衣、福田敏夫,三相乳化技術を応用した高保湿化粧料の開発,FRAGRANCE JOURNAL,2013年12月,pp.33-38
【文献】 鍔田仁人、他,界面活性剤フリー化粧品の開発:三相乳化法による化粧品の有用性,日本生物工学会大会講演要旨集,2012年 9月25日,Vol.64th,p.215
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 9/00− 9/72
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内相は油相であり、外相は水相であり、
自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子を含むO/Wエマルション型であり、
さらに、イソプロピルメチルフェノールを含有する制汗剤又はデオドラント剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制汗剤又はデオドラント剤に関し、より詳しくは、O/Wエマルション型の制汗剤又はデオドラント剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制汗剤やデオドラント(消臭)剤には、種々の形態が知られている。例えば、非水系エアゾールタイプは、制汗成分及び消臭成分といった有効成分のサラッとした使い心地に優れる形態であり、また、スティックタイプは、ワックスや固化剤を基剤として含み、汗に強い耐水性に優れる形態である(例えば特許文献1参照)。しかし、非水系エアゾールタイプは、塗布効率が低く、また患部以外への接触により肌乾燥を招きやすい等の問題が知られている。スティックタイプは、基剤と有効成分との相性や、塗布後のべたつき等の使用感について、課題を有する。
【0003】
そこで液剤やクリーム等の非固形タイプの制汗剤やデオドラント剤が着目されている。液剤やクリーム等の非固形タイプとしては、例えば、O/Wエマルション型、W/Oエマルション型等が知られており、塗布性に優れる他、水系及び油系の有効成分の安定化や感触改善剤の配合を可能とする利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5285854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の液剤やクリーム等の非固形タイプは、塗布後のべたつき等の使用感や、有効成分の皮膚への付着性について、改善の余地を有する。
【0006】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、良好な使用感が得られかつ消臭成分の皮膚付着性に優れる液剤やクリーム等の非固形タイプの制汗剤又はデオドラント剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子を用いて乳化されたO/Wエマルション型の制汗剤又はデオドラント剤が、良好な使用感が得られかつ消臭成分の皮膚付着性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
(1) 内相は油相であり、外相は水相であり、
自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子を含むO/Wエマルション型であり、
さらに、消臭成分を含有する制汗剤又はデオドラント剤。
【0009】
(2) さらに、制汗成分を含有する、(1)に記載の制汗剤又はデオドラント剤。
【0010】
(3) 前記消臭成分は、殺菌剤を含む、(1)又は(2)に記載の制汗剤又はデオドラント剤。
【0011】
(4) 前記殺菌剤は、イソプロピルメチルフェノールを含む、(3)に記載の制汗剤又はデオドラント剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子を含むO/Wエマルション型であることで、良好な使用感が得られかつ消臭成分の皮膚付着性に優れる液剤やクリーム等の非固形タイプの制汗剤又はデオドラント剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明するが、これらに本発明が限定されるものではない。
【0014】
本発明の制汗剤又はデオドラント剤は、内相は油相であり、外相は水相であり、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子(以下「重縮合ポリマー粒子」ともいう。)を含むO/Wエマルション型であり、さらに、消臭成分を含有する。これにより、制汗剤又はデオドラント剤の使用感が向上し、かつ消臭成分の皮膚付着性が向上する。また、本発明の制汗剤又はデオドラント剤は、塗布後の制汗剤又はデオドラント剤のクレンジング時には容易に除去されやすいという利点も有する。さらに、本発明の制汗剤又はデオドラント剤は、菌増殖の抑制効果においても優れる。
【0015】
閉鎖小胞体又は重縮合ポリマー粒子は、表面が親水性の粒子であり、ファンデルワールス力によって水相中の油相との界面に介在することで、乳化状態を維持する。この乳化機構は、閉鎖小胞体又は重縮合ポリマーによる三相乳化機構として公知であり、界面活性剤による乳化機構、すなわち親水性部分及び疎水性部分をそれぞれ水相及び油相に向け、油水界面張力を下げることで乳化状態を維持する乳化機構とは全く異なる(例えば特許3855203号公報参照)。本発明では、油水界面に介在していない閉鎖小胞体又は重縮合ポリマー粒子(例えば、制汗成分及び/又は消臭成分の周囲を囲む)の寄与の存在も想定される。
【0016】
消臭成分は、包接吸着剤、中和剤、静菌剤及び殺菌剤からなる群より選択される1又は2以上を含有することが好ましい。包接吸着剤は、臭い物質を包接性や吸着性の高い物質に包接あるいは吸着させることで臭いの揮発を抑制する。中和剤は、臭い物質である低級脂肪酸をアルカリによる中和反応で安定化する。収斂剤は、汗口のタンパク質に結合して凝固収縮させることで汗口を狭めて発汗や皮脂分泌を抑制し、静菌剤及び殺菌剤は、細菌自体の働きを阻害する。このように、包接吸着剤、中和剤、静菌剤及び殺菌剤は、皮膚に付着されてその機能を発揮する成分であるところ、本発明では消臭成分の皮膚への付着性が向上するので、特に包接吸着剤、中和剤、静菌剤及び殺菌剤の機能が効果的に向上しやすい。また、静菌剤及び殺菌剤の機能が効果的に向上することから、菌増殖の抑制効果においても優れる。この点で、消臭成分は、静菌剤、殺菌剤を用いることが好ましい。
【0017】
包接吸着剤としては、シリカ、ゼオライト等の多孔質成分やタンニン酸、フラボノイド、シクロデキストリン等が挙げられる。中和剤としては酸化マグネシウムや酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられる。静菌剤としては、クロルヒドロキシアルミニウム、酸化亜鉛等が挙げられる。殺菌剤としては、ヒノキチオール、ベンゼトニウムクロリド、イソプロピルメチルフェノール等が挙げられる。中でも、クロルヒドロキシアルミニウム等の水溶性アルミニウム塩やイソプロピルメチルフェノールは、皮膚付着性及び菌増殖の抑制効果が大きいことから好ましく用いられる。
【0018】
消臭成分の含有量は、必要とされる消臭の程度に応じて適宜設定されてよく、特に限定されないが、例えば制汗剤又はデオドラント剤に対し0.001質量%以上20質量%以下であってよい。界面活性剤系や水系で問題となり得る不利益(例えば汗に溶解したり再乳化したりして一度皮膚に付着した上記成分が流出する他、ムラ付きによる上記成分の有効性の低減、べたつき等の使用性低下、皮膚が膨潤する(ふやける)ことによる皮膚因子の流出や物理刺激耐性の低下、菌の増殖)が本発明では抑制されるため、不利益を考慮せずに必要とされる消臭の程度を与えるのに十分な量の消臭成分を含めることができる。この観点で、消臭成分の含有量は、制汗剤又はデオドラント剤に対し0.01質量%以上、0.1質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であることが好ましい。他方、本発明では、消臭成分の皮膚付着及び菌増殖の抑制効果に優れるので、消臭成分の含有量に対して効果的に機能が奏され得る。この観点で、消臭成分の含有量は、制汗剤又はデオドラント剤に対し15質量%以下、12.5質量%以下、10質量%以下、7.5質量%以下であることが好ましい。
【0019】
本発明の制汗剤又はデオドラント剤は、さらに制汗成分を含有することが好ましい。制汗成分は、吸湿剤、滑沢剤及び収斂剤からなる群より選択される1又は2以上を含有することが好ましい。収斂剤は、汗口のタンパク質に結合して凝固収縮させることで汗口を狭めて発汗や皮脂分泌を抑制し、吸湿剤は、発汗した汗を速やかに吸収することで、汗と細菌との接触を阻害する。滑沢剤は、固体表面に付着して、なめらかですべり性を向上させる。このように、吸湿剤、滑沢剤及び収斂剤は、皮膚に付着されてその機能を発揮する成分であるところ、本発明では制汗成分の皮膚への付着性が向上するので、特に吸湿剤、滑沢剤及び収斂剤の機能が効果的に向上しやすい。
【0020】
吸湿剤としては、クロルヒドロキシアルミニウム等の水溶性アルミニウム塩、酸化亜鉛、タルク、シリカ等の無機粉体等の1以上が挙げられる。滑沢剤としては、シリカ、タルク、酸化亜鉛等の無機粉体等の1以上が挙げられる。収斂剤としては、クロルヒドロキシアルミニウム等の水溶性アルミニウム塩、ミョウバン、酸化亜鉛、アラントイン、クエン酸等の1以上が挙げられる。中でも、クロルヒドロキシアルミニウム等の水溶性アルミニウム塩やミョウバンは、その機能が、界面活性剤により阻害されることが知られるが、本発明の閉鎖小胞体又は重縮合ポリマー粒子による乳化系では阻害されにくい点で有利である。なお、界面活性剤による機能阻害としては、汗に溶解したり再乳化したりして一度皮膚に付着した上記成分が流出する他、ムラ付きによる上記成分の有効性の低減、べたつき等等の使用性低下、皮膚が膨潤する(ふやける)ことによる皮膚因子の流出や物理刺激耐性の低下、菌の増殖等が挙げられる。
【0021】
制汗成分の含有量は、必要とされる制汗の程度に応じて適宜設定されてよく、特に限定されないが、例えば制汗剤又はデオドラント剤に対し0.05質量%以上25質量%以下であってよい。界面活性剤系や水系で問題となり得る不利益(例えば汗に溶解したり再乳化したりして一度皮膚に付着した上記成分が流出する他、ムラ付きによる上記成分の有効性の低減、べたつき等の使用性低下、皮膚が膨潤する(ふやける)ことによる皮膚因子の流出や物理刺激耐性の低下、菌の増殖)が本発明では抑制されるため、不利益を考慮せずに必要とされる制汗の程度を与えるのに十分な量の制汗成分を含めることができる。この観点で、制汗成分の含有量は、制汗剤又はデオドラント剤に対し0.3質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であることが好ましい。他方、本発明では、制汗成分の皮膚付着が優れるので、制汗成分の含有量に対して効果的に機能が奏され得る。この観点で、制汗成分の含有量は、制汗剤又はデオドラント剤に対し15質量%以下、12.5質量%以下、10質量%以下、7.5質量%以下であることが好ましい。
【0022】
消臭成分、又は消臭成分及び制汗成分は、油相及び水相の一方又は双方に含まれてよく、その含有箇所は用いる成分の機能に応じて適宜選択されてよい。特に限定されないが、タルク、酸化亜鉛等の無機粉体は、肌成分の喪失をより抑制できる点で、水相に含まれることが好ましい。
【0023】
本発明において油相とは、O/Wエマルションにおける内包された滴状の油性成分のことである。油相は、制汗剤又はデオドラント剤として用い得る任意の油で構成されてよい。本発明では、主に油相に起因する使用性の低下が抑制されるため、界面活性剤系では使用性を低下させる油性成分も、好適に使用することができる。
【0024】
この観点で、油相は、エステル類、ワックス類、高級アルコール、脂肪酸からなる群より選択される1又は2以上を含有することが好ましい。これらの油性成分は、極性又は粘度が高いため、皮膚への密着性や菌の増殖抑制効果に優れると同時に、耐水性を向上させ、過度な乾燥を抑制することができる。エステル類としては、例えば、パルミチン酸エチルヘキシル等のエステル油やステアリン酸グリセリルが、ワックス類としてはミツロウが、高級アルコールとしてはイソステアリルアルコールが、脂肪酸としてはポリヒドロキシステアリン酸が挙げられる。特に、油相は、皮膚への密着性や菌の増殖抑制効果に優れることから、エステル類(パルミチン酸エチルヘキシル、ステアリン酸グリセリル等)、ワックス類(ミツロウ等)を用いることが好ましい。
【0025】
これらの油の含有量は、特に限定されないが、使用性の低下を考慮せずに十分な上記効果を与えることができる点で、制汗剤又はデオドラント剤に対して、0.01質量%以上、0.1質量%以上、0.25質量%以上、0.5質量%以上、0.75質量%以上、0.9質量%以上、1.0質量%以上であることが好ましい。他方、本発明では油性成分による効果が効果的に発揮されるので、油性成分の必要量は相対的に低く設定することもでき、それにより塗布後の制汗剤又はデオドラント剤のクレンジングによる容易な除去を可能にする点で、上記油性成分の含有量は、制汗剤又はデオドラント剤に対して、50質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1.5質量%以下、1.25質量%以下であることが好ましい。
【0026】
同様の観点で、油相は、20℃における粘度が60mPa・S以上5000mPa・S以下である油を含有することが好ましい。粘度は、100Pa・S以上、400Pa・S以上であることが好ましく、3000Pa・S以下、1000Pa・S以下であることが好ましい。なお、本発明における粘度は、B型粘度計によって測定される。
【0027】
このような油として、イソステアリルアルコール、メドウフォーム油やテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、(イソステアリン酸/セバシン酸)ジトリメチロールプロパンオリゴエステル、ポリヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0028】
同様の観点で、油相は、20℃において固形の油を含有することが好ましい。このような油としては、エステル類(例えば、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸コレステリル等)、ワックス類(例えば、ミツロウ、ラノリン、サトウキビロウ等)、高級アルコール(例えば、セタノール、ベヘニアルアルコール、ステアリルアルコール等)、脂肪酸(例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等)が挙げられる。
【0029】
油相は、基剤となる室温で液状の油を含んでよい。このような油としては、パルミチン酸エチルヘキシル等のエステル油、スクワランやミネラルオイル等の炭化水素、ジメチコンやシクロペンタシロキサン等のシリコーン、ホホバ油等の天然油が挙げられる。
【0030】
油相の含有量は、特に限定されず、制汗剤又はデオドラント剤に対し、5〜95質量%の範囲で適宜選択されてよい。また、油相の平均粒子径は、特に限定されないが、1〜50μmであってよく、乳化状態の安定性の観点で5〜30μmであることが好ましい。このような大粒子径の油相を有する安定なO/Wエマルションは、界面活性剤系では構成するのが困難であるのに対し、本発明では容易に構成し得る。油相の平均粒子径は、エマルションの粘度が十分に低い(必要に応じ、希釈する)状態で、レーザー回折散乱式粒度分布計(島津製作所 SALD2100)により測定される。
【0031】
自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質としては、特に限定されないが、下記の一般式1で表されるポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体、もしくは一般式2で表されるジアルキルアンモニウム誘導体、トリアルキルアンモニウム誘導体、テトラアルキルアンモニウム誘導体、ジアルケニルアンモニウム誘導体、トリアルケニルアンモニウム誘導体、又はテトラアルケニルアンモニウム誘導体のハロゲン塩の誘導体が挙げられる。
【0032】
一般式1
【化1】
【0033】
式中、エチレンオキシドの平均付加モル数であるEは、3〜100である。Eが過大になると、両親媒性物質を溶解する良溶媒の種類が制限されるため、親水性ナノ粒子の製造の自由度が狭まる。Eの上限は好ましくは50であり、より好ましくは40であり、Eの下限は好ましくは5である。
【0034】
一般式2
【化2】
【0035】
式中、R1及びR2は、各々独立して炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基であり、R3及びR4は、各々独立して水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、XはF、Cl、Br、I又はCHCOOである。
【0036】
両親媒性物質としては、リン脂質やリン脂質誘導体等、特に疎水基と親水基とがエステル結合したものを採用してもよい。また、刺激緩和性に優れる点で、ジラウロイルグルタミン酸リシンNaも好ましい。
【0037】
リン脂質としては、下記の一般式3で示される構成のうち、炭素鎖長12のDLPC(1,2−Dilauroyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)、炭素鎖長14のDMPC(1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)、炭素鎖長16のDPPC(1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)が採用可能である。
【0038】
一般式3
【化3】
【0039】
また、下記の一般式4で示される構成のうち、炭素鎖長12のDLPG(1,2−Dilauroyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH塩、炭素鎖長14のDMPG(1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH4塩、炭素鎖長16のDPPG(1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH塩を採用してもよい。
【0040】
一般式4
【化4】
【0041】
さらに、リン脂質として卵黄レシチン又は大豆レシチン等のレシチン又はそれを水素化したものを採用してもよい。
【0042】
水酸基を有する重縮合ポリマーは、天然高分子又は合成高分子のいずれであってもよく、乳化剤の用途に応じて適宜選択されてよい。ただし、安全性に優れ、一般的に安価である点で、天然高分子が好ましく、乳化機能に優れる点で以下に述べる糖ポリマーがより好ましい。なお、粒子とは、重縮合ポリマーが単粒子化したもの、又はその単粒子同士が連なったもののいずれも包含する一方、単粒子化される前の凝集体(網目構造を有する)は包含しない。
【0043】
糖ポリマーは、セルロース、デンプン等のグルコシド構造を有するポリマーである。例えば、リボース、キシロース、ラムノース、フコース、グルコース、マンノース、グルクロン酸、グルコン酸等の単糖類の中からいくつかの糖を構成要素として微生物が産生するもの、キサンタンガム、アラビアゴム、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、フコイダン、クインシードガム、トラントガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン、カードラン、ジェランガム、フコゲル、カゼイン、ゼラチン、デンプン、コラーゲン等の天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、セルロース結晶体、デンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキシド等の合成高分子が挙げられる。
【0044】
閉鎖小胞体及び重縮合ポリマー粒子は、エマルション形成前では平均粒子径8nm〜800nm程度であるが、O/Wエマルション構造においては平均粒子径8nm〜500nm程度である。なお、両親媒性物質の閉鎖小胞体及び重縮合ポリマーは、一方のみが含まれても、双方が含まれてもよい。双方が含まれる場合には、例えば、別々に乳化したエマルションを混合してよい。また、閉鎖小胞体及び重縮合ポリマー粒子の量は、油相の量に応じて適宜設定されてよく、特に限定されないが、制汗剤又はデオドラント剤に対し合計で0.0001〜5質量%であってよく、具体的には0.1〜1質量%程度の少量で十分である。
【0045】
本発明の油相及び水相は、その他、制汗剤又はデオドラント剤において使用し得る任意の成分を含んでもよい。
【0046】
以上のエマルションは、両親媒性物質の二分子膜の層状体を水に分散させ、又は水酸基を有する重縮合ポリマーを水中に単粒子化させ、両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体又は重縮合ポリマーの粒子を含む乳化剤分散液を形成する工程と、乳化剤分散液と油性成分とを混合することで、O/Wエマルションを形成する工程と、を有する方法により製造される。なお、制汗成分及び/又は消臭成分は、O/Wエマルションの形成後に添加してもよく、O/Wエマルションの形成過程で添加してもよい。特に限定されないが、親油性の制汗成分及び/又は消臭成分はO/Wエマルションの形成過程で添加され、親水性の制汗成分及び/又は消臭成分は添加タイミングを問わない。
【0047】
また、閉鎖小胞体又は重縮合ポリマーの粒子を十分に形成することで、大きい粒子径を有する油滴が得られやすくなる。このような方法としては、上記の両親媒性物質及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマーを分散媒(つまり水)中に添加して撹拌する、両親媒性物質を良溶媒に溶解した後、その溶液を水と混合する等が挙げられる(例えば、特開2006−241424号公報参照)。
【0048】
単粒子化は、重縮合ポリマー粒子の結合体を含む顆粒を、水に分散して分散液を調製した後、顆粒を膨潤し、さらに顆粒に由来する水素結合を可逆的条件下で切断することで、結合体の高次構造が緩和された緩和物を生成し、時間をおいた後、結合体内の水素結合を切断し、重縮合ポリマー粒子を水中に分離することで行われることが好ましい。この過程を経ない場合、重縮合ポリマー粒子(単粒子〜数個の単粒子の集合)が十分には得られにくい。
【実施例】
【0049】
<実施例1、参考例1、2>
レシチンの溶液から閉鎖小胞体の分散液を調製した。そこにクロルヒドロキシアルミニウム又はタルク、エステル類、ワックス類を加え、制汗剤又はデオドラント剤を調製した。
【0050】
<比較例1〜3>
閉鎖小胞体の分散液の代わりにレシチンの溶液を用いた点を除き、実施例1及び参考例1、2と同様の手順で、比較例1〜3のO/Wエマルション型の制汗剤又はデオドラント剤を調製した。
【0051】
<比較例4、5>
油性成分を加えなかった点を除き、実施例1及び参考例1と同様の手順で、比較例4、5の制汗剤又はデオドラント剤を調製した。
【0052】
実施例、参考例及び比較例における各成分の配合量を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
<蒸散促進評価>
各エマルション3mLをガラス製容器に充填し、湿度80%、40℃で24時間静置した。その後の重量変化を精密秤量により求め、重量変化率を求めた。精製水の重量変化率を差し引いた差分を表2に示す。
【0055】
<使用感評価>
各エマルション0.2gを、パネリストの上腕内側に塗布し、なじんだ後の肌触りを、下のスコアに分類した。この結果を表2に示す。
1:さらさら感あり
2:べたつきなし
3:べたつきややあり
4:べたつきあり
5:不快なべたつき
【0056】
<皮膚付着性評価A>
実施例1、参考例1、2及び比較例1〜3、5の制汗剤又はデオドラント剤を100倍希釈した液5gを15mLチューブに入れ、ケラチンパウダー0.1gを加えた。その後、40℃で30分間静置し、2000Gで15分間にわたり遠心分離を行った。上清2mLに、金属検出試薬としての1%XO試薬20μLを添加し、OD500を測定した。ケラチンパウダーを加えなかったブランク時のOD500を差し引いた値(A値)を求めた。
【0057】
実施例1、参考例1、2、及び比較例1〜3、5に含まれるクロルヒドロキシアルミニウム又はタルクを水で置き換えた制汗剤又はデオドラント剤を作成し、実施例1、参考例1、2、及び比較例1〜3、5の制汗剤又はデオドラント剤の代わりに用いた以外は、上記と同様にOD500を測定し、ブランク時のOD500を差し引いた値(B値)を求めた。A値からB値を差し引いた値(C値)を表2に示す。C値はケラチンに付着した金属類(ここではクロルヒドロキシアルミニウム又はタルク)の量に比例すると考えられる。
【0058】
<肌成分喪失性評価>
上記皮膚付着性評価と同じ手順で得た上清を分析し、ケラチン由来の金属類の存否を判定した。この結果、金属類の存在が確認された場合、肌成分の喪失あり、金属類の存在が確認されなかった場合、肌成分の喪失なし、とそれぞれ評価した。
【0059】
<角質との相性評価>
各エマルション0.2gを、パネリストの上腕内側に塗布し、10分放置した。その後、塗布部を水道水に浸漬し、風乾した。このとき、密着性評価では浸漬を10秒間行い、耐水性評価では浸漬を30秒間行った後、塗布部を摩擦した。その後、テープを塗布部に貼って剥離し、テープの当該部分を、金属検出試薬としての1%XO試薬で染色した後、顕微鏡で観察した。観察した画像を用い、各評価を下のスコアに分類した。
1:染色が全くなし
2:わずかに染色あり
3:染色あり
4:明確に染色あり
5:強い染色あり
【0060】
【表2】
【0061】
表2に示されるように、実施例の制汗剤又はデオドラント剤(実施例1及び参考例1、2)は、組成的には同じだがレシチンが閉鎖小胞体化しなかった比較例の制汗剤又はデオドラント剤(比較例1〜3)に比べ、良好な使用感であり、かつ、制汗成分又は消臭成分の皮膚付着性に優れていた。また、実施例及び参考例の制汗剤又はデオドラント剤(実施例1及び参考例1、2)は、組成的には同じだが界面活性剤系である比較例の制汗剤又はデオドラント剤(比較例1〜3)に比べ、水分の蒸散促進効果、角質密着性及び角質耐水性に優れ、肌成分喪失の抑制効果にも概ね優れていた。このことから、本願発明の制汗剤又はデオドラント剤は、従来の制汗剤又はデオドラント剤が有する課題を解決し、優れた効果を示すことが分かった。
【0062】
また、閉鎖小胞体の分散液を調製した場合であっても、油性成分を加えなかった比較例5では、油性成分を加えた実施例1に比べて、制汗成分又は消臭成分の皮膚付着性や耐水性が悪く、肌成分の喪失もかなりあった。このことから、本願発明の制汗剤又はデオドラント剤が十分な効果を発揮するためには、油相も必要であることが示された。
【0063】
<実施例2>
レシチンの溶液から閉鎖小胞体の分散液を調製した。そこに、表3に示すように、ミツロウ、親油型モノステアリン酸グリセリル、パルミチン酸エチルヘキシル、イソプロピルメチルフェノール、精製水を加え、制汗剤又はデオドラント剤を調製した。なお、表中の含有比を示す数値は質量%であり、イソプロピルメチルフェノールをIPMと表記することがある。
【0064】
<実施例3>
重縮合ポリマー粒子としてヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体を用い、表3に示すように、ミツロウ、親油型モノステアリン酸グリセリル、パルミチン酸エチルヘキシル、イソプロピルメチルフェノール、精製水を加え、制汗剤又はデオドラント剤を調製した。
【0065】
<比較例6>
閉鎖小胞体の分散液の代わりにレシチンの溶液を用いた点を除き実施例2と同様の手順で、制汗剤又はデオドラント剤を調製した。
【0066】
【表3】
【0067】
<皮膚付着性評価B>
実施例2、3及び比較例6の制汗剤又はデオドラント剤5gを15mLチューブに入れ、ケラチンパウダー0.1gを加えて混合した。その後、40℃で30分間静置し、2000Gで15分間にわたり遠心分離を行った。遠心分離後、上清を回収し、液体クロマトグラフィーを用いて上清中に含まれるイソプロピルメチルフェノールの濃度を求め、上清中に含まれるイソプロピルメチルフェノール量を算出した。そして、制汗剤又はデオドラント剤に含まれるイソプロピルメチルフェノール量から、遠心分離後の上清に含まれるイソプロピルメチルフェノール量を差し引き、ケラチンパウダーに付着したイソプロピルメチルフェノール量を算出した。その結果を表4に示す。
【0068】
なお、液体クロマトグラフィーの分析方法は、以下の通りである。
調整した分析用試料を、50質量%のアセトニトリル水溶液(以下、50%−ACNaq.という)で10倍希釈し、0.20μmメンブレンフィルターでろ過したものを試料溶液とした。別に、イソプロピルメチルフェノール原料約20mgを精密に量り、50%−ACNaq.で20mLに定容したものを標準原液とした。標準原液を1、10、100ppmとなるよう50%−ACNaq.で適宜希釈し、0.20μmメンブレンフィルターでろ過したものを標準溶液とした。
試料溶液及び標準溶液それぞれ5μLにつき、下記の条件で液体クロマトグラフィーにより試験を行った。標準溶液それぞれのピーク面積と濃度から試料溶液中の各濃度(μg/mL)を求め、試料中のイソプロピルメチルフェノール含量(%)を算出した。
【0069】
(液体クロマトグラフィー操作条件)
カラム:内径3mm、長さ100mmのステンレス管に3μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんしたもの
検出器:紫外線吸光光度計(測定波長:230nm)
光路長:10mm
移動相:10mM−酢酸アンモニウム水溶液/アセトニトリル(40:60)
流量:0.5mL/min
カラム温度:40℃
【0070】
【表4】
【0071】
表4に示されるように、実施例2の制汗剤又はデオドラント剤は、組成的には同じたがレシチンが閉鎖小胞体化しなかった比較例6の制汗剤又はデオドラント剤に比べ、消臭成分の皮膚付着性に優れていた。また、水酸基を有する重縮合ポリマー粒子を用いた実施例3の制汗剤又はデオドラント剤においても、比較例6の制汗剤又はデオドラント剤に比べ消臭成分の皮膚付着性に優れていた。
【0072】
<実施例4>
レシチンの溶液から閉鎖小胞体の分散液を調製した。そこに、表5に示すように、ミツロウ、親油型モノステアリン酸グリセル、パルミチン酸エチルヘキシル、クロルヒドロキシアルミニウム、イソプロピルメチルフェノール、精製水を加え、制汗剤又はデオドラント剤を調製した。なお、表中の含有比を示す数値は質量%である。
【0073】
<比較例7>
閉鎖小胞体の分散液の代わりにレシチンの溶液を用いた点を除き実施例4と同様の手順で、制汗剤又はデオドラント剤を調製した。
【0074】
【表5】
【0075】
<菌増殖抑制効果の評価>
以下(1)〜(5)に示す通りに検体を用意、評価を行った。
(1)パネリストが、夜、入浴後に水分を拭き取った後、検査キット(商品名;ふきふきチェックII、栄研化学株式会社製)を用いての両脇の下を拭き取り、制汗剤又はデオドラント剤塗布前の検体を用意した。
(2)その後実施例4の制汗剤又はデオドラント剤を右脇の下、比較例7の制汗剤又はデオドラント剤を左脇の下に、それぞれ0.1gを塗布した。
(3)さらに、翌朝の起床後、及び日中(正午前後)に、先と同じ方法で制汗剤又はデオドラント剤を塗布した。
(4)(1)から18時間経過後に、検査キットを用いて左右脇の下を拭き取り、制汗剤又はデオドラント剤塗布後の検体を用意した。
(5)約20mLの培地に1mLの検体を入れて混釈し、35℃、48時間培養後に菌数をカウントした。培地には、カゼインペプトン5g/L、酵母エキス2.5g/L、ブドウ糖1.0g/L、寒天14.0g/Lの組成からなる標準寒天培地を使用した。
【0076】
培養後の菌数の結果を表6に示す。なお、表中、TNTCは、測定不能多数(too numerous to count)の意であり、数値の単位は、cfu/10cmであり、cfuはコロニー形成単位(Colony Forming Unit)のことである。
【0077】
【表6】
【0078】
表6に示されるように、実施例4の制汗剤又はデオドラント剤は、組成的には同じだがレシチンが閉鎖小胞体化しなかった比較例7の制汗剤又はデオドラント剤に比べ、菌増殖抑制効果に優れていた。