特許第6600960号(P6600960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6600960
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】往復動工具
(51)【国際特許分類】
   B25D 16/00 20060101AFI20191028BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   B25D16/00
   B25F5/00 C
   B25F5/00 A
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-68957(P2015-68957)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-187853(P2016-187853A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2017年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阿部 智志
(72)【発明者】
【氏名】根内 拓哉
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−223844(JP,A)
【文献】 特開2013−111729(JP,A)
【文献】 特開平09−070775(JP,A)
【文献】 特開2010−158768(JP,A)
【文献】 特開平11−333761(JP,A)
【文献】 特開2010−173053(JP,A)
【文献】 特開2008−302443(JP,A)
【文献】 特開2014−213422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 16/00
B25F 5/00
B23B 45/16
B23P 19/06
B25B 21/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの回転力が伝達され、往復動することで相手材を切断可能な先端工具と、
前記モータの駆動を制御する制御部と、
前記モータをオン・オフさせるために作業者が操作するトリガと、
前記モータの回転方向を正回転、逆回転に切替えるために作業者が操作する回転方向切替手段と、を備えた往復動工具であって、
前記制御部は、前記モータの回転方向が逆回転に設定されている場合には、前記モータを制限モードで制御し、
前記制御部は、
前記制限モードにおいては、前記トリガがオン操作されると前記モータを駆動するとともに、前記トリガのオン操作が維持されていても所定の停止条件が満たされると前記モータの駆動を停止し、
前記制限モードでない状態においては、前記トリガがオン操作されると前記モータを駆動するとともに、前記トリガのオン操作が維持されていると前記所定の停止条件が満たされるか否かに関わらず前記モータの駆動を維持することを特徴とする往復動工具。
【請求項2】
前記制御部は、前記制限モードにおいて、前記モータの回転方向が正回転である場合に比べて、前記モータを駆動させるエネルギーが小さいことを特徴とする請求項1に記載の往復動工具。
【請求項3】
前記制御部は、前記制限モードにおいて、前記モータの回転方向が正回転である場合に比べて、前記モータの設定回転数を低減させることを特徴とする請求項1または2に記載の往復動工具。
【請求項4】
前記所定の停止条件は、前記モータの連続駆動時間が所定時間以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の往復動工具。
【請求項5】
前記先端工具は、前記モータの回転方向にかかわらず同様の往復動作を行うことができることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の往復動工具。
【請求項6】
前記モータの回転により回転し、前記モータを冷却する冷却風を発生させるファンを備え、
前記ファンは、前記モータが正回転する場合の冷却性能が、逆回転する場合の冷却性能よりも優れている形状を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の往復動工具。
【請求項7】
前記モータは、ブラシレスモータであり、スイッチング素子を備え、前記スイッチング素子のスイッチング動作を行うことにより、電力を前記ブラシレスモータに供給するインバータ回路を備え、
前記制御部は、前記スイッチング動作を制御することを特徴とする請求項1〜6記載の往復動工具。
【請求項8】
前記制御部は、
前記制限モードにおいて、前記モータの駆動が停止すると、前記回転方向切替手段の操作によらず前記制限モードを解除することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の往復動工具。
【請求項9】
前記回転方向切替手段は、操作される度に前記制御部へ信号を出力するタクタイルスイッチであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の往復動工具。
【請求項10】
前記制御部が前記制限モードであるか否かを表示する表示部を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の往復動工具。
【請求項11】
モータと、
前記モータの回転力が伝達され、往復動することで相手材を切断可能な先端工具と、
前記モータの駆動を制御する制御部と、
前記モータをオン・オフさせるために作業者が操作するトリガと、
前記モータの回転方向を正回転、逆回転に切替えるために作業者が操作する回転方向切替手段と、
前記モータの回転により回転し、前記モータを冷却する冷却風を発生させるファンと、を備えた往復動工具であって、
前記先端工具は、前記モータの回転方向にかかわらず同様の往復動作を行うことができ、
前記ファンは、前記モータが正回転する場合の冷却性能が、逆回転する場合の冷却性能よりも優れている形状を有し、
前記制御部は、前記モータの回転方向が逆回転に設定されている場合には、前記モータを制限モードで制御し、
前記制御部は、前記制限モードにおいて前記トリガがオン操作されると前記モータを逆回転で駆動し、その後前記トリガがオフ操作されると前記モータの駆動を停止するとともに前記制限モードを解除することで、前記トリガが再度オン操作されると前記回転方向切替手段を操作しなくとも前記モータを正回転で駆動することを特徴とする往復動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転力を先端工具に伝達し、先端工具が往復動する往復動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ビットなどの先端工具に打撃力を与え、該ビットによってコンクリート壁やコンクリート床などを破砕したりする往復動工具が知られており、打撃力に加えて先端工具に回転力を与えることで、穴あけ作業を行う往復動工具は一般的にハンマドリルと呼ばれる。
【0003】
従来のハンマドリルの多くは少なくとも2つの動作モードを有し、例えば、ビットに打撃力のみが伝達されるハンマモードと、ビットに打撃力及び回転力の双方が伝達されるハンマドリルモードとを有する。このように複数の動作モードを有する従来のハンマドリルでは、作業者によってトリガレバーが操作されると、選択されている動作モードに従って、ビットに必要な動力が伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4281273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハンマドリルモードと、ハンマモードとを有するハンマドリルは、ハンマドリルモード時にビットを対象物から抜き取り易くするなどの目的で、ビットの回転を逆転させるためにモータの回転方向の切換えが可能な構成をしている。
【0006】
ハンマドリルモード時には、ビットが回転するため、作業者がモータの回転方向を認識することができるが、モータの回転を逆回転に設定した状態でハンマモードで作業を行った際には、モータの回転方向にかかわらずビットに打撃力が伝達されるため、作業者はモータの回転方向を認識することができない。
【0007】
上述したハンマドリルに限らずとも、モータの回転力を先端工具に伝達し、先端工具が往復運動を行うハンマ、ジグソー、セーバソー、バリカンなどの往復動工具においても、先端工具の動作状況からモータの回転方向を認識することができないものであった。
【0008】
このため、モータが、構造上望ましくない回転方向である逆回転の状態で、往復動工具が連続的に使用され、製品寿命などに問題が生じる場合があった。
【0009】
本発明の目的は、モータの回転方向又は回転方向切替の状態に応じて適正なモータ制御を行い、寿命向上などを図ることができる往復動工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、モータと、モータの回転力が伝達され、往復動することで相手材を切断可能な先端工具と、モータの駆動を制御する制御部と、モータをオン・オフさせるために作業者が操作するトリガと、モータの回転方向を正回転、逆回転に切替えるために作業者が操作する回転方向切替手段と、を備えた往復動工具であって、制御部は、モータの回転方向又は前記回転方向切替手段の状態が逆回転であると判断した場合には、モータを制限モードで制御し、前記制御部は、前記制限モードにおいては、前記トリガがオン操作されると前記モータを駆動するとともに、前記トリガのオン操作が維持されていても所定の停止条件が満たされると前記モータの駆動を停止し、前記制限モードでない状態では、前記トリガがオン操作されると前記モータを駆動するとともに、前記トリガのオン操作が維持されていると前記所定の停止条件が満たされるか否かに関わらず前記モータの駆動を維持する構成とすることによって達成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、モータの回転方向に応じて適正なモータ制御を行い、寿命向上などを図ることができる往復動工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の往復動工具の一実施例であるハンマドリルを示す断面図。
図2図1の状態から動作モードが切替えられた状態を示す断面図。
図3図1のハンマドリルのブロック図。
図4図1のハンマドリルに用いられるファンの一例を示す要部拡大図。
図5図1のハンマドリルに用いられるピニオンギヤの一例を示す要部拡大図。
図6図1のハンマドリルに用いられる第1ギヤの一例を示す要部拡大図。
図7図1のハンマドリルに用いられるモータ制御の一例を示すフロー図。
図8図7のモータ制御で用いられるDuty制御の一例を示す表。
図9】本発明の往復動工具の第2の実施例を示すフロー図。
図10】本発明の往復動工具の第3の実施例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の往復動工具の第1の実施形態について説明する。本実施形態に係る往復動工具は、先端工具の一例であるビットを着脱可能なハンマドリルである。本実施形態に係るハンマドリルの用途は特に限定されないが、コンクリート壁や石材などの対象物に穴を開けたり、対象物を破砕したりする作業に適している。また、本実施形態に係るハンマドリルは、ビットに打撃力が伝達される一方、回転力は伝達されないハンマモードと、ビットに少なくとも回転力が伝達されるドリルモードと、を有する。さらに本実施形態におけるドリルモードでは、回転力に加えて打撃力がビットに伝達される。
【0014】
図1に示されるように、ハンマドリル1は、シリンダハウジング2と、中間ハウジング3と、モータハウジング4と、ハンドル5と、を有し、これらは相互に固定されて一体化している。シリンダハウジング2は全体として円筒形であり、シリンダハウジング2の長手方向一端(後端)とハンドル5との間に、中間ハウジング3及びモータハウジング4が配置されている。中間ハウジング3とモータハウジング4は上下に重なっており、ハンドル5の一端(下端)がモータハウジング4に連結され、ハンドル5の他端(上端)が中間ハウジング3に連結されている。尚、ハンドル5と中間ハウジング3及びモータハウジング4とは防振機構を介してそれぞれ連結されている。
【0015】
シリンダハウジング2の内部には、円筒形のシリンダ10及びリテーナスリーブ11が収容されている。シリンダ10及びリテーナスリーブ11は同心であり、リテーナスリーブ11の一部はシリンダハウジング2の先端から突出している。シリンダ10及びリテーナスリーブ11は相対回転不能に係合しており、シリンダ10に回転力が伝達されると、シリンダ10及びリテーナスリーブ11が中心軸を回転軸として一体回転する。また、不図示のビットの一部がリテーナスリーブ11に挿入される。リテーナスリーブ11に挿入されたビットは、リテーナスリーブ11に対して、回転方向には移動不能、かつ、軸方向には所定範囲で移動可能に係合する。よって、シリンダ10及びリテーナスリーブ11が回転すると、ビットに回転力が伝達され、ビットが回転する。また、ビットに打撃力が伝達されると、ビットは軸方向に所定範囲で往復動する。シリンダ10,リテーナスリーブ11及びビットの動きの詳細については後述する。
【0016】
シリンダ10内にはピストン20及び打撃子21が往復動可能に収容されている。また、シリンダ10とリテーナスリーブ11とに跨って中間子22が往復動可能に収容されている。これらピストン20,打撃子21及び中間子22は、シリンダ10の後方から前方に向かってこの順で一列に並んでいる。さらに、シリンダ10内であってピストン20と打撃子21との間には空気室23が設けられている。
【0017】
モータハウジング4内には、動力源であるモータ30が収容されている。モータ30は、インナーロータ型のブラシレスモータであって、筒形状のステータ31と、ステータ31の内側に配置されたロータ32と、ロータ32の内側に配置された出力軸33と、を有する。出力軸33はロータ32に固定されており、ロータ32を貫通して上下に伸びている。出力軸33の中心軸とシリンダ10及びリテーナスリーブ11の中心軸とは直交している。
【0018】
ロータ32から突出している出力軸33の上部は、モータハウジング4と中間ハウジング3との間の隔壁を貫通して中間ハウジング3の内側に進入している。中間ハウジング3内に突出している出力軸33の上端にはピニオンギヤ34が設けられている。
【0019】
ロータ32には、ステータ31よりも図示上方に位置するファン35が一体回転するよう取付けられている。ファン35は図4に示すように、複数の羽根36を有する構成をしており、ブラシレスモータが正回転する状態、すなわちロータ32が正回転する際には、ファン35は図示反時計回り方向に回転する。羽根36は、その形状が、径方向外側に向かうに従って放射方向に対して徐々に時計回り方向に離間する傾斜形状を有しており、ロータ32が正回転する際に、効果的にモータハウジング4内にファン風を発生させる。
【0020】
ファン35が回転することにより発生するファン風は、モータハウジング4下側からモータハウジング4内に流入し、ロータ32とステータ31周辺を通り、ファン35の径方向外側から外部に排出される。また、ファン風は後述する制御基板100付近も通過して、ファン35の内側まで流れ、ファン35の径方向外側から外部に排出される流れも有する。
【0021】
このように、ファン35が回転することによって発生するファン風によって、ブラシレスモータ30及びブラシレスモータ30の駆動を制御する制御基板100が冷却される。
【0022】
ファン35は、ロータ32が逆回転する際にも、ファン風を発生させるが、上述したように、羽根36が正回転時に効果的にファン風を発生させる形状をしており、ロータ32が逆回転する際には、ファン風の流れが逆になりモータハウジング4下側からモータハウジング4内のファン風が排出される、または、ファン風の流れ方向は維持されたままファン風の流量が低下される。
【0023】
中間ハウジング3内であって、出力軸33の近傍には、第1駆動軸40が回転自在に配置され、第1駆動軸40の近傍には第2駆動軸50が回転自在に配置されている。これら出力軸33,第1駆動軸40及び第2駆動軸50は互いに平行である。
【0024】
第1駆動軸40の下部にはピニオンギヤ34と噛合う第1ギヤ41が設けられており、第1駆動軸40の上部には偏心ピン42が設けられおり、この偏心ピン42がコンロッド43を介してピストン20に連結されている。
【0025】
ピニオンギヤ34及び第1ギヤ41の歯部は、図5図6に示すように、出力軸33、第1駆動軸40に対して傾斜する形状をしている。このように、歯部を傾斜形状とすることにより、歯部同士の接触面積を大きくすることができ、ピニオンギヤ34及び第1ギヤ41の長寿命化を図っている。
【0026】
図5に示すように、ブラシレスモータ30が正回転、すなわちロータ32が正回転する際には、ピニオンギヤ34の歯部と第1ギヤ41の歯部との係合によって、ピニオンギヤ34を有する出力軸33には、図示点線矢印で示すように上側に荷重が働くこととなり、図6に示すように第1ギヤ41及び第1駆動軸40には反対方向の図示点線矢印で示すように下側に荷重が働くこととなる。図5図6の実線矢印はロータ32が正回転、逆回転した際のピニオンギヤ34、第1ギヤ41の回転方向を示し、点線矢印はロータ32が正回転、逆回転した際に働く荷重の方向を示す。
【0027】
ロータ32が逆回転する際には、正回転時とは逆に、出力軸33には下側、第1ギヤ41及び第1駆動軸40には上側の荷重が働くこととなる。
【0028】
第2駆動軸50の下部には第1ギヤ41と噛合う第2ギヤ51が設けられており、第2駆動軸50の上部にはベベルギヤ52が設けられており、このベベルギヤ52がシリンダの周囲に配置されているリングギヤ53と噛合っている。リングギヤ53は滑り軸受(メタル)を介してシリンダ10の外周面に装着されており、シリンダ10に対して自由に回転する。
【0029】
シリンダ10の外周面には、リングギヤ53に加えてスリーブ54が設けられている。スリーブ54は、シリンダ10と一体回転し、かつ、単独でシリンダ10の軸方向に往復スライドする。スリーブ54はスプリング55によってリングギヤ53に近接する方向に常に付勢されている。
【0030】
中間ハウジング3の上面にはモード切替ダイヤル60が設けられている。モード切替ダイヤル60の回転操作によってハンマモードとハンマドリルモードとが切り替えられる。換言すれば、モード切替ダイヤル60の回転操作によって、ビットに打撃力のみが伝達される動力伝達経路と、ビットに打撃力及び回転力が伝達される動力伝達経路と、が選択的に形成される。動力伝達経路の詳細については後述する。
【0031】
図1に示されているモード切替ダイヤル60を第1方向に180度回転させると、図2に示されるように、操作アーム61がシリンダ10の軸方向前方に移動する。すると、前進する操作アーム61によってスリーブ54が押され、スリーブ54がスプリングの付勢に抗して前方にスライドする。この結果、リングギヤ53とスリーブ54との係合が解除される。このようにしてリングギヤ53とスリーブ54との係合が解除されると、シリンダ10への回転力の伝達が遮断される。
【0032】
一方、図2に示されているモード切替ダイヤル60を第2方向に180度回転させると、図1に示されるように操作アーム61が後退する。すると、操作アーム61とスリーブ54との接触が解除され、スリーブ54がスプリングの付勢によって後方にスライドする。この結果、リングギヤ53とスリーブ54とが係合する。このようにしてリングギヤ53とスリーブ54とが係合すると、シリンダ10に回転力が伝達される。
【0033】
図1図2に示されるように、ハンドル5には作業者によって操作されるトリガレバー70と、作業者によって操作される回転方向切替ボタン80とが設けられている。回転方向切替ボタン80が、本発明の回転方向切替手段に相当する。また、ハンドル5の内部には、トリガレバー70の操作に基づいてオン・オフされるトリガスイッチ71が設けられている。回転方向切替ボタン80には、回転方向切替ボタン80によってブラシレスモータ30の回転方向が逆回転となっている際に、点灯する点灯部81(本実施形態ではLED)が内蔵されている。さらに、ハンドル5には、速度設定ボタンや複数のLEDを含む操作パネル90も設けられている。操作パネル90上の速度設定ボタンが押されると、その回数に応じてブラシレスモータ30の速度が段階的に切り替わる。また、設定された速度に応じて点灯するLEDの数が変化し、設定された速度が報知される。
【0034】
次に、ハンマドリル1における動力伝達経路について説明する。図1図2に示されるブラシレスモータ30が作動すると、出力軸33の回転がピニオンギヤ34及び第1ギヤ41を介して第1駆動軸40に伝達され、第1駆動軸40が回転する。また、出力軸33の回転がピニオンギヤ34,第1ギヤ41及び第2ギヤ51を介して第2駆動軸50に伝達され、第2駆動軸50が回転する。
【0035】
第1駆動軸40が回転すると、第1駆動軸40の上端に設けられている偏心ピン42が第1駆動軸40の中心軸を回転軸として回転する。すなわち、第1駆動軸40の中心軸の周囲を偏心ピン42が旋回する。この結果、コンロッド43を介して偏心ピン42と連結されているピストン20がシリンダ10内で往復動する。ピストン20が打撃子21から離反する方向に移動すると、つまりピストン20が後退すると、空気室23内の圧力が低下し、打撃子21が後退する。一方、ピストン20が打撃子21に近接する方向に移動すると、つまりピストン20が前進すると、空気室23内の圧力が上昇し、打撃子21が前進する。打撃子21が前進すると、該打撃子21によって中間子22が打撃され、中間子22によってビット(不図示)が打撃される。このようにしてビットに断続的に打撃力が伝達される。
【0036】
第2駆動軸50が回転すると、第2駆動軸50の上端に設けられているベベルギヤ52が回転し、ベベルギヤ52と噛合っているリングギヤ53が回転する。このとき、モード切替ダイヤル60の回転操作によってハンマモードが選択されていると、すなわち、図2に示されるように、リングギヤ53とスリーブ54との係合が解除されていると、リングギヤ53の回転はシリンダ10に伝達されず、リングギヤ53はシリンダ10上で空転する。よって、ビットに回転力は伝達されず、打撃力のみが伝達される。
【0037】
一方、モード切替ダイヤル60の回転操作によってハンマドリルモードが選択されていると、すなわち、図1に示されるように、リングギヤ53とスリーブ54とが係合していると、リングギヤ53の回転がスリーブ54を介してシリンダ10に伝達され、シリンダ10及びリテーナスリーブ11が一体回転する。よって、リテーナスリーブ11に保持されているビットには、断続的に打撃力が伝達され、かつ、連続的に回転力が伝達される。
【0038】
次に、本実施形態に係るハンマドリル1が備える各種回路やブラシレスモータ30の回路構成などについて図3を参照しながら説明する。図1図2に示されるように、ブラシレスモータ30とハンドル5との間に制御基板100が設けられている。図3に示されるように、上記ブラシレスモータ30,トリガスイッチ71,回転方向切替ボタン80,点灯部81,操作パネル90等は制御基板100と電気的に接続されている。また、制御基板100には、後述するスイッチング回路102,整流回路103,力率改善回路104,コントローラ106等を含むモータ制御ユニット105が搭載されている。
【0039】
図3に示されるように、ブラシレスモータ30(図1図2)のステータ31は、U相,V相,W相に対応するコイルU1,V1,W1を備えている。一方、ブラシレスモータ30のロータ32(図1図2)には、極性が異なる2種類の永久磁石が4つ設けられている。これら4つの永久磁石は、ロータ32の回転方向に沿って等間隔で配置されている。図3に示されるように、ロータ32の近傍には3つの磁気センサS1,S2,S3が配置されている。これら磁気センサS1,S2,S3は、ロータ32の回転に伴う磁力変化を検出して電気信号をロータ位置検出回路101に出力する。本実施形態における磁気センサS1,S2,S3にはホール素子が用いられている。
【0040】
図3に示されるスイッチング回路102は、ステータ31のコイルU1,V1,W1への通電を制御する。スイッチング回路102の手前には、交流電流を直流電流に変換する整流回路103と、整流回路103から出力される直流電流の電圧を昇圧してスイッチング回路102に供給する力率改善回路104と、が配置されている。整流回路103は、4つのダイオード素子が互いに接続されたブリッジ回路である。力率改善回路104は、電界効果トランジスタと、電界効果トランジスタに対してPWM(Pulse Width Modulation)制御信号を出力する集積回路と、コンデンサと、を有し、スイッチング回路102において発生する高周波電流を制限値以下に抑制する。
【0041】
スイッチング回路102は、3相フルブリッジインバータ回路であり、並列接続された2つのスイッチング素子Tr1,Tr2と、並列接続された2つのスイッチング素子Tr3,Tr4と、並列接続された2つのスイッチング素子Tr5,Tr6と、を有する。それぞれのスイッチング素子は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)である。スイッチング素子Tr1,Tr2はコイルU1に接続され、コイルU1に供給される電流を制御する。スイッチング素子Tr3,Tr4はコイルVIに接続され、コイルV1に供給される電流を制御する。スイッチング素子Tr5,Tr6はコイルWIに接続され、コイルW1に供給される電流を制御する。
【0042】
スイッチング素子Tr1,Tr3,Tr5は、力率改善回路104の正極側出力端子に接続されており、スイッチング素子Tr2,Tr4,Tr6は、力率改善回路104の負極側出力端子に接続されている。すなわち、スイッチング素子Tr1,Tr3,Tr5はハイサイド側であり、スイッチング素子Tr2,Tr4,Tr6はローサイド側である。
【0043】
尚、本実施形態では、コイルU1,V1,W1がスター結線されている。しかし、コイルU1,V1,W1の結線方式はスター結線に限られず、例えば、デルタ結線であってもよい。
【0044】
図3に示されているモータ制御ユニット105は、制御部としてのコントローラ106と、制御信号出力回路107と、ロータ位置検出回路101と、モータ回転数検出回路108と、を含んでいる。コントローラ106は、ブラシレスモータ30を制御するための信号を演算し、出力する。コントローラ106から出力される制御信号は、制御信号出力回路107を経てスイッチング回路102に入力される。ロータ位置検出回路101は、磁気センサS1,S2,S3から出力される電気信号に基づいてロータ32(図1図2)の回転位置を検出し、ロータ32の回転位置を示す信号を出力する。ロータ位置検出回路101から出力される位置検出信号は、コントローラ106及びモータ回転数検出回路108に入力される。モータ回転数検出回路108は、ロータ32の回転数つまりモータ回転数を検出し、モータ回転数を示す信号を出力する。モータ回転数検出回路108から出力される回転数検出信号は、コントローラ106に入力される。コントローラ106は、モータ回転数が目標回転数に維持されるように、回転数検出信号に基づくフィードバック制御を実行する。
【0045】
図3に示されるコントローラ106には、図1図2に示されるトリガレバー70の操作に伴ってトリガスイッチ71から出力されるオン信号及びオフ信号が入力される。図1図2に示されるトリガレバー70が作業者によって操作されると、その操作に応じてトリガスイッチ71からオン信号又はオフ信号が出力される。具体的には、トリガレバー70が引かれるとトリガスイッチ71からオン信号が出力され、トリガレバー70の引きが解除されるとトリガスイッチ71からオフ信号が出力され、又はオン信号の出力が停止される。コントローラ106は、トリガスイッチ71から出力されたオン信号を受信すると、トリガスイッチ71がオンされたと判断する。一方、コントローラ106は、トリガスイッチ71から出力されたオフ信号を受信するか、又はオン信号の受信が途絶えると、トリガスイッチ71がオフされたと判断する。
【0046】
図3に示されるコントローラ106には、図1図2に示される回転方向切替ボタン80から出力される回転方向切替信号が入力される。本実施形態における回転方向切替ボタン80は、操作される度に信号を出力(送信)するタクタイルスイッチである。よって、図3に示されるコントローラ106には、回転方向切替ボタン80が操作される度に回転方向切替信号が入力される。言い換えれば、コントローラ106は、回転方向切替ボタン80が押される度に回転方向切替信号を受信する。
【0047】
再び図1図2を参照する。中間ハウジング3には、モード検出部としてのセンサ62が設けられている。このセンサ62は、モード切替ダイヤル60が所定位置に回転操作されると電気信号(モード検出信号)を出力(送信)する。センサ62から出力されたモード検出信号は、図3に示されるコントローラ106に入力される。図1図2に示されるモード切替ダイヤル60には永久磁石60aが内蔵されている。モード切替ダイヤル60が図2に示される位置に回転操作されると、つまりハンマモードが選択されると、モード切替ダイヤル60に内蔵されている永久磁石60aがセンサ62の近傍(本実施形態では、センサ62の真上)に位置する。すると、永久磁石60aの磁力がセンサ62によって検出され、センサ62からモード検出信号が出力される。一方、モード切替ダイヤル60が図1に示される位置に回転操作されると、つまりハンマドリルモードが選択されると、モード切替ダイヤル60に内蔵されている永久磁石60aがセンサ62から離反する。すると、永久磁石60aの磁力がセンサ62によって検出されなくなり、センサ62からのモード検出信号の出力が途絶える。よって、図3に示されるコントローラ106は、モード検出信号の入力の有無によって、選択されている動作モードがハンマモードであるか否かを判別することができる。
(第1の制御フロー)
次に、図3に示されるコントローラ106によって実行されるブラシレスモータ30の制御(オン・オフ制御)の一例について主に図1、2、3、7を参照しながら説明する。尚、以下の説明では、ブラシレスモータ30を“モータ30”と略称する。
【0048】
電源ケーブルが電源に接続されると、コントローラ106による制御が開始される。コントローラ106は、まずモータ30の回転方向を正回転にセットする(S1)。次いで、回転方向切替ボタン80が操作されたか否か、すなわち回転方向切替ボタン80から切替信号を受信したか否かを判断する(S2)。回転方向切替ボタン80から切替信号を受信していなければ、トリガスイッチ71がオンされているか否かを判別する(S3)。すなわち、トリガレバー70(図1図2)が引かれているか否かを判別する。
【0049】
トリガスイッチ71がオンされている場合(S3:Yes)、コントローラ106は、モータ30をオンする(S4)。
【0050】
トリガスイッチ71がオンされていない場合(S3:No)、コントローラ106は、ステップS2、S3を繰り返し、この間に、回転方向切替ボタン80が操作され切替信号を受信すると(S2:Yes)、コントローラ106は、回転方向を逆回転にセットし(S4)、LED81を点灯させる(S5)。
【0051】
トリガスイッチ71がオンされると(S3:Yes)、モータ30をオンし(S6)、モータ30の回転方向が正回転である場合(S7:Yes)、操作パネル90上の速度設定ボタンによって設定された速度に応じて図8に示すように目標回転数を設定し、コントローラ106は目標回転数でロータ32が回転するよう定速度制御を行う(S8)。この速度制御を、トリガスイッチ71がオフされるまで継続し(S9:Yes)、トリガスイッチ71がオフされると(S9:No)、モータ30をオフする(S10)。この後、再びステップS2で回転方向切替ボタン80が操作されるか否かを判断する。
【0052】
トリガスイッチ71がオンされ(S3:Yes)、モータ30をオンし(S6)、モータ30の回転方向が逆回転である場合(S7:No)、通電時間のカウントをスタートし(S11)、速度設定ボタンによって設定された速度に応じて図8に示すように目標回転数を設定し、コントローラ106は目標回転数でロータ32が回転するよう定速度制御を行う(S12)。逆回転での作業状態が、10秒以上継続する前に(S13:No)、トリガスイッチ71がオフされると(S14:No)、モータ30をオフし(S15)、通電時間のカウントを終了し(S16)、LED81をオフし(S17)、更に回転方向を正回転にセットする(S18)。この後、再びステップS2で回転方向切替ボタン80が操作されるか否かを判断する。
【0053】
逆回転での作業状態が10秒以上継続したと判断した時には(S13:Yes)、LED81を点滅させる(S19)。その後、逆回転での作業状態が15秒以上継続したか否か判断し(S20)、15秒以上継続したと判断した場合には(S20:Yes)、モータ30をオフして(S21)、トリガスイッチ71がオン状態を維持する間、LED81の点滅を維持する。ステップS22で、トリガスイッチ71がオフされたと判断すると、ステップS16に移行し、通電時間のカウントを終了し、その後LED81をオフし(S17)、更に回転方向を正回転にセットする(S18)。
【0054】
図1図7に示す往復動工具では、次の特徴、効果がある。
(1)逆回転が設定されていること並びに逆回転での作業中は、LED81を点灯させることで、作業者に逆回転する状態にあること、逆回転で駆動していることを認識させることができ、無用に逆回転状態で作業が行われることが抑制できる。
【0055】
なお、LED81に代わって他の点灯手段であっても良く、音、振動などで作業者に報知する構造であっても良い。
(2)基本的には、モータ30を正回転させた作業が行われる往復動工具において、正回転を基準にファン35を設計することで、ファン35の小型化などを図ることができるが、この構成において、ファン35を逆回転させる状態では、ファン35による冷却効果が低くなる。従って逆回転状態では、モータ30の回転数を正回転時よりも小さく制限してモータの駆動エネルギーを小さくする制限モードとなることで、発熱量が高い高速回転での駆動が避けられ、無用にファン35を大型化することや工具自体の耐熱性向上などを考慮しなくとも良くなる。
【0056】
なお、上記実施形態では、目標回転数を制限する構成としたが、例えば固定のDutyでモータ30の回転を制御する制御方法で、逆回転状態では、正回転時よりもDutyを制限する構成であっても良く、スイッチング素子の導通角を制限する構成でも良い。
(3)ギヤの歯部を軸に対して傾斜させることで、歯部同士の接触面積を大きくしてギヤの寿命を向上させた構成とした場合、ギヤ及びギヤと一体の軸又はギヤを受ける軸には軸方向の荷重が加わることになり、正逆回転可能な往復動工具の場合には、両方向の荷重を考慮した設計とする必要があるが、過度に逆回転を意識した設計、例えば、軸を受ける軸受の耐荷重を両側とも強固にする必要などがなく、設計の自由度が増す。
(4)モータ30の効率を向上させる目的で、機械的な進角構造を採用することがある。ブラシレスモータ30を搭載した上記実施形態においては、スイッチング回路のスイッチングのタイミングを制御することで進角制御が可能であるが、タイミングを制御せずとも、ロータ32と磁気センサS1〜S3の位置を僅かにずらすことで機械的な進角構造とすることができる。ブラシ付のモータを搭載した構造においては、ブラシの取付け角度を僅かにずらすことで機械的な進角構造とすることができる。このような機械的な進角構造は通常、正回転でモータ30の効率が向上するよう設計されており、逆回転では一転効率が低下してしまうものである。本発明では、このような機械的な進角構造を採用した往復動工具において、効率の悪い逆回転状態での継続作業やより効率の悪くなる高速回転での作業を制限することができ、製品の長寿命化を図ることができる。
(5)逆回転での作業終了後は、自動的に回転方向を正回転にセットし直す制御とすることで、逆回転の作業が連続的に行われることが防止できる。なお、これに併せ、逆回転する状態にあること、逆回転で駆動していることを点灯部が報知する構成とすることにより、作業者が回転方向を誤認することも抑制できる。
(6)回転方向切替ボタン80の操作により、回転方向の切替えを許容する期間をトリガスイッチ71がオフされている期間、すなわちトリガレバー70が操作されていないときのみとすることで、作業中に不意に回転方向切替ボタン80が操作されて不意に回転が切替わることを抑制し、作業に支障をきたしたり、製品寿命が低下するなどの不具合を抑制できる。
(7)所定時間以上継続して逆転作業が行われた際に、点灯部が点滅して、警告することで、逆転作業状態が継続して行われ、製品寿命などに問題が生じることを抑制できる。
(第2の制御フロー)
次に、図3に示されるコントローラ106によって実行されるブラシレスモータ30の制御(オン・オフ制御)の他の一例について主に図1,2,3,9を参照しながら説明する。
【0057】
電源ケーブルが電源に接続されると、コントローラ106による制御が開始される。コントローラ106は、トリガレバー70が引かれて、トリガスイッチ71がオンされているか否かを判別する(S1)。トリガスイッチ71がオンされると(S1:Yes)、コントローラ106は、モータ30の回転方向が正回転であるか否かを判断し(S2)、正回転である場合(S2:Yes)、モータ30をオンし(S3)、図8に示すような正回転の回転数制御を行う(S4)。トリガスイッチ71がオンである場合、S2〜S5を繰り返し、トリガスイッチ71がオフされると(S5:No)、モータ30をオフする(S6)。
【0058】
ステップ2において、モータ30の回転方向が逆回転であると判断した場合(S2:No)、次いでハンマモードであるか否かを判断する(S7)。ハンマモードではなくハンマドリルモードであると判断した場合には(S7:No)、モータ30をオンし(S8)、図8に示すような逆回転の回転数制御を行い、LED81を点灯させる(S10)。トリガスイッチ71がオンである場合、S2,S7〜S11を繰り返し、トリガスイッチ71がオフされると(S11:No)、モータ30をオフし(S12)、LED81をオフする(S13)。
【0059】
ステップS7において、ハンマモードと判断した場合には、モータ30を起動させずに、LED81を点滅させる(S14)。このLED81の点滅は、トリガスイッチ71がオフされるまで継続する(S15)。
【0060】
図9に示す制御方法を搭載した往復動工具では、次の特徴、効果がある。
【0061】
先端工具が往復動作のみを行うハンマモードにおいては、モータ30を正転で駆動しても、逆転で駆動しても作業者は先端工具を見てモータ30の回転方向を認識することができない。本実施形態においては、このようなハンマモードにおいては、トリガスイッチ71がオンされたとしてもモータ30を駆動させない、すなわちモータ30を駆動させるエネルギーをゼロとする制限モードとなることで、モータ30が逆転した状態で往復動工具が動作することを防止することができ、製品の長寿命化を図ることができる。また、LED81を点滅させることで、製品の故障などではなく、異常状態と判別してモータ30が駆動しない状態を作業者に報知することで、回転方向の切替えを作業者に促すことができる。
【0062】
なお、ハンマモード時に逆回転状態で、モータ30を超低速で駆動させるよう制限するものとしても良い。
【0063】
また、モータ30をブラシレスモータ30の代わりにブラシ付モータとすると共に、回転方向切替ボタン80の代わりにモータへの通電回路を切替える切替スイッチを設けた構成としても良く、このような構成の場合には、トリガレバー70を操作した際に、コントローラ106の制御にかかわらずモータ30に正逆回転方向の電力が供給される構成となる。このような構成では、実際にモータが駆動した後に電流の方向を確認してステップS2における回転方向の判断を行うこととなり、逆転状態で且つハンマモードであると判断した後にモータをオフする制御となる。なお、上記したモータへの通電回路を切替える切替スイッチは、正回転位置、逆回転位置の状態を維持する構成である。
(第3の制御フロー)
次に、第2の制御フローの変形例である第3実施形態について図10を参照しながら説明する。
【0064】
図9の実施形態との相違点は、ハンマモードが選択され、且つ逆回転が選択されている状態で、トリガレバー70が操作された際の制御である。
【0065】
本実施形態では、逆回転が選択されており、ステップS7においてハンマモードであると判別された際に(S7:Yes)、回転方向の選択状況にかかわらず正回転でモータを駆動する(S3,S4)。
【0066】
このような制御とすることにより、ハンマモードにおいて、確実にモータ30を逆転させず、且つトリガレバー70の再操作を必要としない、作業性の良い往復動工具とすることができる。
【0067】
本実施形態は、制御部であるコントローラ106がスイッチング素子のスイッチングを切替えることで、モータ30を駆動する構成をしたブラシレスモータ30を搭載した往復動工具であるために、容易に実現できるものであり、トリガレバー70を操作した際に、コントローラ106の制御にかかわらずモータ30に正逆回転方向の電力が供給される構成であるブラシ付モータでは実現が難しいものである。
【0068】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本発明は、偏心カム等によってモータの回転運動がピストンの往復運動に変換される往復動工具にも適用可能であり、モータの回転力を先端工具に伝達し、先端工具が往復運動を行うハンマ、ジグソー、セーバソー、バリカンなどの往復動工具に適用可能である。特に、ジグソー、セーバソー、バリカンなどの切断工具において、正回転での作業時に先端工具が食い込んだ状態になったのを解除する目的で逆回転させる機能を設けた往復動工具に最適である。
【符号の説明】
【0069】
1 ハンマドリル
2 シリンダハウジング
3 中間ハウジング
4 モータハウジング
5 ハンドル
10 シリンダ
20 ピストン
30 ブラシレスモータ(モータ)
60 モード切替ダイヤル
62 センサ
70 トリガレバー
71 メインスイッチ
80 回転方向切替ボタン
81 LED
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10