(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導電性基材をその長手方向に沿って複数の領域に等分した場合、各領域内に位置する前記導通部が前記導電性基材の前記第1面に接触する面積は、当該領域における前記導電性基材の前記第1面の表面積の6.5%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のロール状積層基板の製造方法。
前記複数の領域のうちの一の領域内に位置する前記導通部と、前記一の領域に隣接する他の領域に位置する前記導通部との間の、前記導電性基材の長手方向に沿った長さが、500mm以下であることを特徴とする請求項3に記載のロール状積層基板の製造方法。
第1面及び当該第1面に対向する第2面を有する導電性基材と、前記導電性基材の前記第1面側に、絶縁性樹脂材料からなる絶縁層、シード層及び金属めっき層がこの順に積層されてなる積層部とを含む積層基板であって、
前記シード層は、前記絶縁層を被覆する被覆部と、前記被覆部に連続するとともに、前記導電性基材の前記第1面に接触する導通部とを有し、
前記絶縁層は、前記導電性基材の長手方向に沿って所定の間隔で位置する、前記絶縁層により囲まれる開口部を複数有し、
前記導通部は、前記開口部を介して前記導電性基材の前記第1面に接触することを特徴とする積層基板。
【背景技術】
【0002】
例えば、ハードディスクドライブ(HDD)に用いられる磁気ヘッドを支持するためのサスペンション用基板として、バネ性を有するステンレス等の金属基板の第1面上に、絶縁層、シード層及び金属めっき層がこの順に積層されてなる積層基板を用い、金属めっき層をエッチングすることで配線パターンを形成してなるものが知られている。このような積層基板を作製する方法としては、従来、ステンレス基板上にポリイミド系樹脂溶液を塗布して絶縁層を形成する工程、当該絶縁層上にスパッタ等によりシード層(第1シード層及び第2シード層)を形成する工程及び当該シード層上に電気めっきにより金属めっき層を形成する工程を含む方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
上記方法においては、シート状のステンレス基板を用いる、いわゆる枚葉式により積層基板が作成されているが、フレキシブルプリント基板等の機能性積層基板の作製方法として一般的なロール・ツー・ロール方式により上記積層基板を作製することができれば、当該積層基板の高生産性及び低コスト化を実現することができる。
【0004】
当該積層基板をロール・ツー・ロール方式で作製しようとすると、まず、ロール状に巻回された長尺金属基板200を繰り出しながら、当該長尺金属基板200の第1面210に絶縁性材料を塗布して絶縁層300を形成し、ロール状に巻き取る(
図15(A)〜(C))。次に、絶縁層300が形成された長尺金属基板200を繰り出しながら、当該絶縁層300上にスパッタにより導電性材料を成膜してシード層400を形成し、ロール状に巻き取る(
図16(A)〜(C))。そして、第1面210にシード層400が形成され、その対向面に絶縁シート600が貼付された長尺金属基板200を繰り出しつつ、当該シード層400に給電して電気めっき処理を施す(
図17)。このようにして金属めっき層が形成されれば、当該金属めっき層をエッチングして配線パターンを形成することにより、サスペンションを製造することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サスペンション用基板等として用いられる上記積層基板において、絶縁層300は、25μm以下程度の膜厚で形成される。絶縁層300の膜厚が厚くなりすぎると、サスペンションのバネ性が低下してしまうためである。このように薄膜として形成される絶縁層300には、ピンホールが形成されてしまうことが多々ある。
【0007】
ピンホールが形成された絶縁層300上にシード層400が形成されると、当該ピンホールを介して長尺金属基板200とシード層400とが導通することになる(
図18参照)。この状態で電気めっき処理工程にてシード層400に対して給電すると、
図18の矢印で示すように、当該ピンホールに電流が集中し、積層基板が発熱し、発火等が生じてしまうことがある。ピンホールに限らず、絶縁層300内に導電性異物が混入してしまった場合に、当該導電性異物を介して長尺金属基板200とシード層400とが導通し、同様の問題が生じ得る。また、絶縁層300の一部が極めて薄い膜厚(50nm以下程度)で形成されてしまった場合、シード層400への印加電圧が高電圧になり、絶縁層300の極めて薄い膜厚の部分が破壊されてしまうと、長尺金属基板200とシード層400とが導通する可能性があり、同様の問題が生じ得る。
【0008】
上記積層基板をロール・ツー・ロール方式で作製する場合、長さ1000m程度の長尺金属基板200のシード層400上に、連続して電気めっき処理を施し、金属めっき層を形成することになる。しかし、絶縁層300に1箇所でもピンホール等の欠陥が存在するだけで、電気めっき処理により金属めっき層を形成することができず、ロール・ツー・ロール方式によるメリットである高生産性及び低コスト化を実現することができないという問題がある。
【0009】
絶縁層300の品質を極めて向上させて、ピンホール等の欠陥の存在しない絶縁層300を形成することができれば、ロール・ツー・ロール方式で上記積層基板を作製するのが可能となる。しかしながら、膜厚25μm以下程度の絶縁層300にピンホール等の欠陥が形成されるのを防止することは極めて困難である一方、絶縁層300の品質を向上させることが、却ってピンホール等の欠陥サイズを小さくしてしまい、その結果、当該欠陥部分における電気抵抗が上昇し、積層基板の発熱、発火等が生じやすくなるおそれがある。
【0010】
長尺金属基板200の第1面210上に形成された絶縁層300にピンホール等の欠陥が存在するか否かを検査し、当該欠陥が存在する部分にのみシード層400を形成しないようにすれば、上記問題は解決され得る。しかしながら、絶縁層300に存在するピンホール等の欠陥は、極めて微小であるため、当該欠陥を発見するのは極めて困難であるし、当該欠陥を発見することができたとしても、当該欠陥部分にのみシード層400を形成しないようにスパッタ装置を制御するのも極めて困難である。
【0011】
このように、積層基板の作製方法にロール・ツー・ロール方式を採用する場合には、電気めっき処理により金属めっき層を形成することが極めて困難であるという技術的課題が存在する。
【0012】
上記課題に鑑みて、本発明は、長尺状の導電性基材上に、絶縁層及びシード層がこの順に積層されてなり、ロール状に巻回されてなる積層基板であって、ロール・ツー・ロール方式による電気めっき処理を施して当該シード層上に金属めっき層を形成することが可能なロール状積層基板の製造方法及び積層基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、ロール状に巻回されてなるロール状積層基板を製造する方法であって、第1面及び当該第1面に対向する第2面を有する長尺帯状の導電性基材を繰り出しながら、前記導電性基材の前記第1面の一部を露出させるようにして前記導電性基材の前記第1面上に絶縁性樹脂材料を塗布することで絶縁層を形成する工程と、前記導電性基材の前記第1面上に形成された前記絶縁層上及び露出する前記導電性基材の前記第1面上に導電性材料を成膜することでシード層を形成する工程とを有し、前記シード層は、前記絶縁層の少なくとも一部を被覆する被覆部と、当該被覆部に電気的に接続するとともに、前記導電性基材と電気的に導通可
能に前記第1面の一部に接触する導通部とを有
し、前記絶縁層は、前記導電性基材の長手方向に沿って所定の間隔で位置する、前記絶縁層により囲まれる開口部を複数有し、前記絶縁層を形成する工程において、前記複数の開口部のそれぞれから前記導電性基材の前記第1面を露出させるようにして前記絶縁層を形成し、前記シード層を形成する工程において、前記導通部が前記開口部から露出する前記導電性基材の前記第1面と接触するようにして前記シード層を形成することを特徴とするロール状積層基板の製造方法を提供する(発明1)。
【0014】
上記発明(発明1)により製造されるロール状積層基板は、シード層が絶縁層の少なくとも一部を被覆する被覆部と、当該被覆部に電気的に連続し、導電性基材と電気的に導通可能な導通部とを有するため、当該ロール状積層基板に給電して電気めっき処理を行う際に、絶縁層にピンホール等の欠陥が存在していたとしても、導通部を介してシード層から導電性基材に向かって電流が流れることになる。よって、上記発明(発明1)によれば、発熱・発火等を生じさせることなく、電気めっき処理によりシード層上に金属めっき層を形成可能なロール状積層基板を製造することができる。
【0015】
上記発明(発明1)においては、前記絶縁層の膜厚が20μm以下であるのが好ましく(発明2)、前記導電性基材をその長手方向に沿って複数の領域に等分した場合、各領域内に位置する前記導通部が前記導電性基材の前記第1面に接触する面積は、当該領域における前記導電性基材の前記第1面の表面積の6.5%以上であるのが好ましい(発明3)。
【0016】
上記発明(発明3)においては、前記複数の領域のうちの一の領域内に位置する前記導通部と、前記一の領域に隣接する他の領域に位置する前記導通部との間の、前記導電性基材の長手方向に沿った長さが、5mm以下であるのが好ましい(発明4)。
【0017】
上記発明(発明1〜4)においては、前記シード層上に、電気めっきにより金属めっき層を形成する工程をさらに有するのが好ましい(発明5)。
【0018】
本発明は、上記発明(発明5)に係るロール状積層基板の製造方法により製造された前記ロール状積層基板の前記金属めっき層上にレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとしたウェットエッチング処理により、前記絶縁層上に信号配線パターンを形成するとともに、前記導通部を介して前記導電性基材の前記第1面に電気的に接続されるグラウンド配線パターンを形成する工程とを有することを特徴とする配線基板の製造方法を提供する(発明6)。
【0020】
また、本発明は、第1面及び当該第1面に対向する第2面を有する導電性基材と、前記導電性基材の前記第1面側に、絶縁性樹脂材料からなる絶縁層、シード層及び金属めっき層がこの順に積層されてなる積層部とを含む積層基板であって、前記シード層は、前記絶縁層を被覆する被覆部と、前記被覆部に連続するとともに、前記導電性基材の前記第1面に接触する導通部とを有し、前記絶縁層は、
前記導電性基材の長手方向に沿って所定の間隔で位置する、前記絶縁層により囲まれる開口部を
複数有し、前記導通部は、前記開口部を介して前記導電性基材の前記第1面に接触することを特徴とする積層基板を提供する(発明7)。
【0021】
上記発明(発明8)においては、前記積層基板は実質的に方形状を有し、前記導通部は、実質的方形状の前記積層基板の少なくとも一辺に存在するのが好ましい(発明9)。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、導電性基材上に、絶縁層及びシード層がこの順に積層されてなり、ロール状に巻回されてなる積層基板であって、ロール・ツー・ロール方式による電気めっき処理を施して当該シード層上に金属めっき層を形成することが可能なロール状積層基板の製造方法及び積層基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1(A)は、本発明の一実施形態に係るロール状積層基板の製造方法の一工程(絶縁層を形成する工程)を示す概略図であり、
図1(B)は、当該工程により絶縁層が形成された長尺金属基板を示す平面図であり、
図1(C)は、
図1(B)におけるI−I線断面図である。
【
図2】
図2(A)は、本発明の一実施形態に係るロール状積層基板の製造方法の一工程(シード層を形成する工程)を示す概略図であり、
図2(B)は、当該工程によりシード層が形成された長尺金属基板を示す平面図であり、
図2(C)は、
図2(B)におけるII−II線断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るロール状積層基板の製造方法の一工程(長尺金属基板の第2面に絶縁樹脂シートを貼付する工程)を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係るロール状積層基板の製造方法の一工程(電気めっき処理により金属めっき層を形成する工程)を示す概略図である。
【
図5】
図5(A)〜(E)は、本発明の一実施形態における絶縁層のエッジ形状の態様を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態におけるロール状積層基板の製造方法の一工程(スパッタによりシード層を形成する工程)を示す概略図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態における導通部の長尺金属基板に対する接触面積を説明するための平面図である。
【
図8】
図8(A)は、本発明の一実施形態におけるロール状積層基板の絶縁層及びシード層の他の態様(その1)を示す平面図であり、
図8(B)は、
図8(A)におけるIII−III線断面図であり、
図8(C)は、本発明の一実施形態におけるロール状積層基板の絶縁層及びシード層の他の態様(その2)を示す、
図8(B)に相当する断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態におけるロール状積層基板の絶縁層及びシード層の他の態様(その3)を示す平面図である。
【
図10】
図10(A)は、本発明の一実施形態におけるロール状積層基板の絶縁層及びシード層の他の態様(その4)を示す平面図であり、
図10(B)は、
図10(A)におけるIV−IV線断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態におけるロール状積層基板の絶縁層及びシード層の他の態様(その5)を示す平面図である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態におけるロール状積層基板の絶縁層及びシード層の他の態様(その6)を示す平面図である。
【
図13】
図13は、本発明の一実施形態におけるロール状積層基板の絶縁層及びシード層の他の態様(その7)を示す平面図である。
【
図14】
図14(A)は、本発明の一実施形態における積層基板の概略構成を示す平面図であり、
図14(B)は、
図14(A)におけるV−V線断面図であり、
図14(C)は、
図14(A)におけるVI−VI線断面図である。
【
図15】
図15(A)は、従来の積層基板をロール・ツー・ロール方式で作製しようとしたときに考えられる製造工程の一工程(絶縁層を形成する工程)を示す概略図であり、
図15(B)は、当該工程により絶縁層が形成された長尺金属基板を示す平面図であり、
図15(C)は、
図15(B)におけるVII−VII線断面図である。
【
図16】
図16(A)は、従来の積層基板をロール・ツー・ロール方式で作製しようとしたときに考えられる製造工程の一工程(シード層を形成する工程)を示す概略図であり、
図16(B)は、当該工程によりシード層が形成された長尺金属基板を示す平面図であり、
図16(C)は、
図16(B)におけるVIII−VIII線断面図である。
【
図17】
図17は、従来の積層基板をロール・ツー・ロール方式で作製しようとしたときに考えられる製造工程の一工程(電気めっき処理により金属めっき層を形成する工程)を示す概略図である。
【
図18】
図18は、従来の積層基板をロール・ツー・ロール方式で作製したときに生じる課題を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本実施形態に係るロール状積層基板の製造方法においては、まず、第1面21及び第1面21に対向する第2面22を有し、ロール状に巻回された帯状の長尺金属基板2を準備し、当該長尺金属基板2を繰り出しながら、第1面21上に絶縁性樹脂材料を塗布して絶縁層3を形成し、絶縁層3が形成された長尺金属基板2を巻き取る(
図1(A)参照)。
【0025】
長尺金属基板2を構成する材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、SUS、銅、銅合金、ニッケル合金、アルミ合金等を挙げることができる。本実施形態により製造されるロール状積層基板1(
図4参照)がサスペンション用基板として用いられる場合、長尺金属基板2は、適度な導電性及びばね性を有するものであるのが望ましい。
【0026】
長尺金属基板2の長手方向の長さは、特に限定されるものではなく、例えば、50〜1000m程度である。また、長尺金属基板2の幅W
2(
図1(B)参照)も、特に限定されるものではなく、例えば、250〜500mm程度である。長尺金属基板2の厚さT
2(
図1(C)参照)は、10μm以上であるのが好ましく、10〜30μmであるのがより好ましく、15〜25μmであるのが特に好ましい。長尺金属基板2の厚さT
2が10μm未満であると、ロール状積層基板1(
図4参照)の機械的強度が低下するおそれがある。また、当該厚さT
2が30μmを超えると、ロール状積層基板1(
図4参照)が例えばサスペンション用基板として用いられる場合、所望とするばね性が奏され難くなる。
【0027】
絶縁性樹脂材料としては、絶縁性を有する樹脂材料であれば特に制限はなく、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)等の構造中にイミド結合を有するものや、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、液晶ポリマー等の高分子化合物等が挙げられる。絶縁性樹脂材料としてポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を用いる場合、長尺金属基板2の第1面21上にポリイミド前駆体含有塗工液を塗布し、熱処理を施してイミド化させることで、ポリイミドからなる絶縁層3を形成することができる。
【0028】
絶縁層3の膜厚T
3(
図1(C)参照)は、20μm以下であるのが好ましく、5〜15μmであるのがより好ましく、8〜10μmであるのが特に好ましい。絶縁層3の膜厚T
3が20μmを超えると、絶縁層3の形成以降の加工精度(例えばシード層4の成膜精度等)が悪化するおそれがあるとともに、ロール状積層基板1(
図4参照)が例えばサスペンション用基板として用いられる場合には、所望とするばね性が奏されなくなるおそれがある。また、絶縁層3の膜厚T
3が薄すぎると、所望とする絶縁性を奏することができないおそれがある。
【0029】
絶縁層3は、長尺金属基板2の両エッジE
2,E
2から幅方向内側20mm程度の範囲内に形成されるのが好ましい。本実施形態においては、後述するように、シード層4が絶縁層3上にスパッタにより形成される(
図2参照)。そして、シード層4は、その一部が長尺金属基板2の第1面21に接触するように形成される。このようにシード層4が長尺金属基板2の第1面21に接触することで、後述する電気めっき処理が可能となる。後述する工程(
図2参照)にてシード層4をスパッタにより形成する場合、チャンバ側壁等のスパッタ装置内にスパッタ粒子が付着するのを防止する保護板81が、長尺金属基板2の両エッジE
2,E
2から幅方向内側10mm程度の位置に設けられているため(
図6参照)、当該シード層4は、長尺金属基板2の両エッジE
2,E
2から幅方向内側10mm程度の範囲内に形成される。よって、絶縁層3が長尺金属基板2の両エッジE
2,E
2から幅方向内側10mm程度の範囲内に形成されていることで、シード層4の導通部42を長尺金属基板2の第1面21に適度に接触させることができる。
【0030】
絶縁層3の幅方向両側のエッジ形状は、特に限定されるものではなく、例えば、テーパ形状(
図5(A)、(B)参照)、逆テーパ形状(
図5(C)参照)、幅方向外側に突出する形状(
図5(D)参照)、幅方向内側に向かって凹んだ形状(
図5(E)参照)等が挙げられる。
【0031】
次に、第1面21に絶縁層3が形成され、巻回されてなる長尺金属基板2を繰り出しながら、絶縁層3上に導電性材料を成膜してシード層4を形成する(
図2(A)参照)。
【0032】
シード層4は、絶縁層3を被覆する被覆部41と、当該被覆部41に連続するとともに、長尺金属基板2の第1面21に接触する導通部42とを有するようにして形成される。具体的には、シード層4は、絶縁層3を被覆するように、絶縁層3の幅W
3よりも広幅に形成される。これにより、絶縁層3の幅方向外側において露出する長尺金属基板2の第1面21に接触する導通部42を形成することができる(
図2(B)、(C)参照)。
【0033】
図7に示すように、長尺金属基板2をその長手方向に沿って複数の領域AR(各領域ARに少なくとも一の導通部42が含まれる)に等分したとき、各領域ARにおいて導通部42が長尺金属基板2の第1面21に接触する面積(
図7において斜線で示す部分の面積)は、当該領域ARにおける長尺金属基板2の第1面21の表面積の6.5%以上であるのが好ましい。本実施形態においては、後述する電気めっき工程(
図4参照)にてシード層4に給電された際に、長尺金属基板2の第1面21に接触する導通部42を介して、長尺金属基板2に電流が流れる。その結果、絶縁層3にピンホール等の欠陥が存在する場合であっても、当該欠陥部分に電流が集中するのを防止することができる。しかしながら、各領域における導通部42の接触面積が、当該領域における長尺金属基板2の第1面21の表面積の6.5%未満であると、その領域内やその領域の近傍に存在する、絶縁層3のピンホール等の欠陥部分に電流が集中しやすくなるおそれがある。
【0034】
本実施形態において、導通部42が長尺金属基板2の長手方向に連続するように、絶縁層3の幅方向両側に形成される場合(
図2参照)、絶縁層3の幅方向両側の各導通部42の長さW
42が5mm以上であって、絶縁層3の幅方向両側の導通部42の当該長さW
42の合計が好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上、特に好ましくは20mm以上となるようにシード層4が形成される。少なくとも一方の導通部42の幅方向の長さW
42が5mm未満であると、絶縁層3のピンホール等の欠陥部分に電流が集中しやすくなるおそれがある。さらに好ましくは、絶縁層3の幅方向両側の導通部42の長さW
42,W
42が実質的に同一(一方の長さW
42が他方の長さW
42に対する85〜100%程度)である。
【0035】
本実施形態において、シード層4は、絶縁層3上に形成され、絶縁層3に対する密着層として機能する第1シード層と、第1シード層上に形成される第2シード層とを含む。シード層4の被覆部41及び導通部42は、いずれも第1シード層と第2シード層との積層構造を有していてもよいし、被覆部41が第1シード層と第2シード層との積層構造を有し、導通部42は第2シード層の単層により構成されていてもよい。後者の場合、絶縁層3上に当該絶縁層3と実質的に同一の幅の第1シード層を形成し、第1シード層上にそれよりも広幅の第2シード層を形成すればよい。
【0036】
第1シード層を構成する材料としては、絶縁層3との密着性の良好な材料である限り特に制限はないが、例えば、Ni、Cr及びその合金等が挙げられる。第1シード層の膜厚は、絶縁層3に対して所望とする密着性を得られる限り、特に制限はなく、例えば5〜10nmの範囲内で適宜設定され得る。
【0037】
シード層4が第1シード層のみから構成されると、後述する工程(
図4参照)における電気めっき処理時に、膜厚5〜10nmの第1シード層に給電されることになるが、第1シード層が薄膜であることで抵抗が上昇し、第1シード層がめっき液中に溶解してしまうおそれがある。そのため、膜厚100〜500nmの第2シード層を第1シード層上に形成する。これによりシード層4に給電された際の抵抗の上昇を抑制し、シード層4がめっき液中に溶解してしまうのを防止することができる。第2シード層を構成する材料としては、特に制限はないが、金属めっき層5を構成する金属材料と同一であるのが好ましい。
【0038】
なお、本実施形態においては、長尺金属基板2の幅W
2よりも狭幅の絶縁層3が形成され、絶縁層3の幅方向両側に形成される導通部42が、長尺金属基板2の長手方向に沿って連続する態様を例に挙げて説明したが(
図2参照)、シード層4が長尺金属基板2の第1面21に接触する部分、すなわち導通部42として構成される部分を有していればよく、上記態様に限定されるものではない。
【0039】
例えば、
図8(A)及び(B)に示すように、幅方向略中央に位置し、長手方向に延在する絶縁層非形成部31を有するように絶縁層3が形成され、当該絶縁層非形成部31及びその両側の絶縁層3,3を完全に被覆するようにシード層4が形成される態様であってもよい。
図8(A)及び(B)に示す態様において、導通部42は、絶縁層非形成部31により露出する第1面21及び絶縁層3,3の幅方向外側において露出する第1面21に接触する部分として構成される。しかし、絶縁層非形成部31が、長尺金属基板2とシード層4とを十分に接触させ得る程度の大きさ(幅)を有するのであれば、
図8(C)に示すように、絶縁層3,3の幅方向外側において露出する第1面21にシード層4が接触していなくてもよい。
図8(C)に示す態様においては、絶縁層3,3を長尺金属基板2の両エッジE
2,E
2の近傍まで形成することができる。
【0040】
また、
図9に示すように、幅方向の略中央に位置し、長手方向に延在する絶縁層非形成部31と、当該絶縁層非形成部31に実質的に直交し、幅方向に延在する絶縁層非形成部32とを有するように絶縁層3が形成され、当該絶縁層非形成部31,32及び絶縁層3を完全に被覆するようにシード層4が形成される態様であってもよい。
図9に示す態様においても、絶縁層非形成部31,32が、長尺金属基板2とシード層4とを十分に接触させ得る程度の大きさ(幅)を有するのであれば、絶縁層3,3の幅方向外側において露出する第1面21にシード層4が接触していなくてもよい。
【0041】
さらに、
図10に示すように、絶縁層3が、長手方向に所定の間隔で複数の開口部33を有するように形成され、絶縁層3の幅W
3よりも狭幅のシード層4が形成される態様であってもよい。この場合において、開口部33を介して露出する第1面21と接触する部分が、導通部42として構成される。
【0042】
さらにまた、
図11及び
図12に示すように、絶縁層3が、長手方向に沿って所定の間隔で、幅方向に延在する絶縁層非形成部34を有するように形成され、絶縁層3の幅W
3よりも狭幅のシード層4が形成される態様であってもよいし(
図11参照)、当該絶縁層非形成部34及び絶縁層3を完全に被覆するようにシード層4が形成される態様であってもよい(
図12参照)。
【0043】
また、
図13に示すように、シード層4の両エッジが、平面視において波線形状を有するように当該シード層4が形成される態様であってもよい。この態様では、シード層4のうち、絶縁層3の両エッジよりも幅方向外側の部分が、長尺金属基板2の第1面21に接触する導通部42として構成される。なお、
図13に示す態様において、シード層4は、絶縁層3を完全に被覆するように形成されているが、シード層4の一部を長尺金属基板2の第1面21に十分に接触させ得る限りにおいて、絶縁層3の少なくとも一部を被覆するように形成されていてもよい。
【0044】
図10〜13に示す態様において、各領域ARに導通部42が存在するように複数の領域ARに区分された場合に、一の領域AR1とそれに隣接する他の領域AR2とにおいて、一の領域AR1内の導通部42と、他の領域AR2内の導通部42との間の長さL(ピッチ;長尺金属基板2の長手方向に平行な長さ)は、500mm以下であるのが好ましく、400mm以下であるのがより好ましい。当該長さLsが500mmを超えると、長尺金属基板2の長手方向において近接する導通部42,42間に存在する、絶縁層3のピンホール等の欠陥部分に電流が集中しやすくなるおそれがある。したがって、長尺金属基板2の長手方向に沿って区分した複数の領域ARのそれぞれの長さを500mmとしたときに、各領域ARに少なくとも一の導通部42が含まれるようにシード層4を形成するのが望ましい。なお、
図10に示す態様において、上記長さLは、長手方向において隣接する開口部33,33のピッチであり、
図11及び12に示す態様において、上記長さLは、長手方向において隣接する絶縁層非形成部34,34のピッチである。
【0045】
続いて、シード層4が形成された長尺金属基板2を繰り出しながら、長尺金属基板2の第2面22側に、当該第2面22を被覆する絶縁樹脂シート6(PETシート等)を貼付する(
図3参照)。そして、絶縁樹脂シート6が第2面22に貼付された長尺金属基板2を、給電ロール71を有する電気めっき槽70に搬送し、電気めっき処理によりシード層4上に金属めっき層5を形成する(
図4参照)。
【0046】
本実施形態においては、絶縁層3上に形成されたシード層4の一部(導通部42)が長尺金属基板2の第1面21に接触している。そのため、電気めっき槽70にて給電ロール71からシード層4に給電された際に、絶縁層3に存在するピンホール等の欠陥部分に電流が集中してしまうことがなく、長尺金属基板2が発熱し、発火するのを防止することができる。その結果、長尺金属基板2の長手方向の全域において、シード層4上に金属めっき層5を好適に形成することができる。このようにして金属めっき層5が形成された長尺金属基板2を巻き取ることで、ロール状積層基板1が製造される。上述したように、本実施形態によれば、ロール・ツー・ロール方式により、ロール状に巻回されたロール状積層基板1を製造することができる。
【0047】
本実施形態において製造されるロール状積層基板1が、サスペンション用基板として用いられる場合、ロール状積層基板1を所定の大きさに切断し、金属めっき層5上にレジストパターンを形成し、当該レジストパターンをマスクとしたウェットエッチング処理を金属めっき層5に施すことで、サスペンションの配線パターン層が形成される。したがって、ロール状積層基板1がこのような用途で用いられる場合、金属めっき層5を構成する材料としては、例えば、Cu、Ag、銅合金、ニッケル合金等の導電性を有する材料を用いることができ、金属めっき層5の膜厚は、5〜10μm程度に設定され得る。
【0048】
上述したように、本実施形態に係るロール状積層基板の製造方法においては、絶縁層3上に形成されるシード層4が、長尺金属基板2の第1面21と導通部42を介して電気的に接続される。そのため、シード層4上に金属めっき層5を形成するために電気めっき処理を行うときに、絶縁層3にピンホール等の欠陥が存在していたとしても、当該欠陥部分に電流が集中することがなく、発熱、発火等の問題が生じない。よって、本実施形態によれば、ロール・ツー・ロール方式により電気めっき処理を施してシード層4上に金属めっき層5を形成し、ロール状積層基板1を製造することができる。
【0049】
次に、上述のようにして製造されたロール状積層基板から作製される積層基板について説明する。
【0050】
図14に示すように、本実施形態における積層基板10は、第1面20a及びそれに対向する第2面20bを有する実質的に方形状の金属基板20と、金属基板20の第1面20a上に積層されてなる積層部30とを含み、上述したロール状積層基板1を切断して個片化してなるものである。したがって、
図14に示す積層基板10において、本実施形態により製造されるロール状積層基板1と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
【0051】
積層部30は、絶縁層3、シード層4及び金属めっき層5が金属基板20の第1面20a上に積層されてなる構造を有する。シード層4は、金属基板20の上の絶縁層3を被覆する被覆部41と、金属基板20の第1面20aに接触する導通部42とを有する。本実施形態において、導通部42は、実質的に方形状の金属基板20の一辺に沿って設けられている。すなわち、実質的に方形状の金属基板20の一辺においては、金属基板20上にシード層4(導通部42)及び金属めっき層5が積層されてなり、他の三辺においては、金属基板20上に絶縁層3、シード層4(被覆部41)及び金属めっき層5が積層されてなる。
【0052】
かかる積層基板10において、金属めっき層5は、レジストパターンをマスクとしたウェットエッチング処理により、絶縁層3上に信号配線パターンを形成するための層であるとともに、金属基板20に電気的に接続するグラウンド配線パターンを形成するための層である。
【0053】
このように、本実施形態における積層基板10によれば、シード層4の導通部42が金属基板20の第1面20aに接触していることで、シード層4上に積層されている金属めっき層5のエッチングにより、絶縁層3上に信号配線パターンを形成するのと同時に、金属基板20に電気的に接続するグラウンド配線パターンも形成することができる。
【0054】
なお、
図14に示す態様においては、実質的に方形状の金属基板20の一辺においては、金属基板20上にシード層4(導通部42)及び金属めっき層5が積層されてなり、他の三辺においては、金属基板20上に絶縁層3、シード層4(被覆部41)及び金属めっき層5が積層されてなる。しかしながら、このような態様に限定されることなく、金属基板20の少なくとも一辺において、金属基板20上にシード層4(導通部42)及び金属めっき層5が積層されていればよい。
【0055】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0057】
〔実施例1〕
厚さ20μm、長さ500m、幅420mmのロール状のステンレス板(長尺金属基板2)を繰り出しながら、厚さ10μmのポリイミド膜(絶縁層3)を塗工法により形成した(
図1参照)。次に、ポリイミド膜(絶縁層3)を被覆する被覆部41とステンレス板上に接触する導通部42とを有するシード層4(密着性材料としてのNi−Cr合金からなる第1シード層(膜厚10nm)及び導電性材料としてのCuからなる第2シード層(膜厚100nm))をスパッタにより形成した(
図2参照)。そして、シード層4の形成された面と対向する面にPETフィルムを貼付したステンレス板(長尺金属基板2)を電気めっき槽70に導入し、シード層4に給電して電気銅めっき処理を施した(
図4参照)。実施例1においては、ステンレス板(長尺金属基板2)の長手方向の全域において、シード層4上に金属めっき層5を形成することができた。
【0058】
〔比較例1〕
絶縁層3よりも狭幅のシード層4であって、ステンレス板上に接触する導通部42を有しないようにシード層4を形成した以外は、実施例1と同様にしてシード層4に給電して電気銅めっき処理を施した。しかしながら、比較例1においては、シード層4に給電した後、ステンレス板(長尺金属基板2)が発熱してしまい、電気銅めっき処理を行うことができなかった。