特許第6601074号(P6601074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6601074
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】シャッタ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/80 20060101AFI20191028BHJP
【FI】
   E06B9/80 E
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-177175(P2015-177175)
(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公開番号】特開2017-53129(P2017-53129A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】野々山 昭紀
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−222966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00 − 9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の動力が伝達されることによって回動する入力軸と、
前記入力軸が係合する部材であって、シャッタに直接または間接的に接続された出力軸と、
前記シャッタの荷重を受けて一方に回動しようとする前記出力軸に対し、コイルスプリングの作用によってブレーキをかけるブレーキ機構と、
を備え、
前記入力軸および前記出力軸の一方の外周面の少なくとも一部が、前記コイルスプリングの内周面の少なくとも一部に接触しており、
前記入力軸および前記出力軸の一方の外周面の少なくとも一部が、前記入力軸および前記出力軸の他方に接触している、シャッタ駆動装置。
【請求項2】
前記入力軸および前記出力軸の一方には、第一係合部および第二係合部が形成され、
前記入力軸および前記出力軸の他方には、前記第一係合部および前記コイルスプリングの端部が嵌まり込む第一空間、および前記第二係合部が嵌まり込む第二空間が形成され、
前記第一空間は径方向外側が開放した空間であり、前記第二空間は径方向外側が前記第二係合部に接触する壁部によって閉鎖された空間である、請求項1に記載のシャッタ駆動装置。
【請求項3】
回動中心から前記第一係合部の径方向外側の面までの距離は、回動中心から前記第二空間に面する前記壁部の径方向内側の面までの距離よりも大きく設定されている、請求項2に記載のシャッタ駆動装置。
【請求項4】
前記出力軸の外周面の少なくとも一部が、前記コイルスプリングの内周面の少なくとも一部に接触している、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシャッタ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ機構を備えたシャッタ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなブレーキ機構を備えたシャッタ駆動装置として、例えば下記特許文献1に記載されるものが公知である。当該シャッタ駆動装置は、コイルスプリングが拡径することによってブレーキ機能が発現されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−125186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなシャッタ駆動装置において、動力を伝達する入力軸および出力軸の軸振れを抑制すること(振動を抑制する)ことが求められる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、軸振れを抑制することが可能なブレーキ機構を備えたシャッタ駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明にかかるシャッタ駆動装置は、駆動源の動力が伝達されることによって回動する入力軸と、前記入力軸が係合する部材であって、シャッタに直接または間接的に接続された出力軸と、前記シャッタの荷重を受けて一方に回動しようとする前記出力軸に対し、コイルスプリングの作用によってブレーキをかけるブレーキ機構と、を備え、前記入力軸および前記出力軸の一方の外周面の少なくとも一部が、前記コイルスプリングの内周面の少なくとも一部に接触しているものとする。
【0007】
前記出力軸の外周面の少なくとも一部が、前記コイルスプリングの内周面の少なくとも一部に接触しているとよい。
【0008】
前記入力軸および前記出力軸の一方の外周面の少なくとも一部が、前記入力軸および前記出力軸の他方に接触しているとよい。
【0009】
前記入力軸および前記出力軸の一方には、第一係合部および第二係合部が形成され、前記入力軸および前記出力軸の他方には、前記第一係合部および前記コイルスプリングの端部が嵌まり込む第一空間、および前記第二係合部が嵌まり込む第二空間が形成され、前記第一空間は径方向外側が開放した空間であり、前記第二空間は径方向外側が前記第二係合部に接触する壁部によって閉鎖された空間であるとよい。
【0010】
回動中心から前記第一係合部の径方向外側の面までの距離は、回動中心から前記第二空間に面する前記壁部の径方向内側の面までの距離よりも大きく設定されているとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかるシャッタ駆動装置は、入力軸および出力軸の一方の外周面の少なくとも一部が、コイルスプリングの内周面の少なくとも一部に接触している。したがって、当該入力軸および出力軸の一方の軸振れが抑制される。
【0012】
コイルスプリングの内周面に接触するのは出力軸であることが望ましい。出力軸は、シャッタから受ける荷重がかかっているから、当該出力軸の軸振れを優先的に抑制することで、出力軸と入力軸との間におけるいわゆるこじり(出力軸が傾いてロックされたような状態となること)の発生が抑制される。
【0013】
入力軸および出力軸の一方の外周面の少なくとも一部が、入力軸および出力軸の他方に接触する構造とすれば、入力軸と出力軸が互いの軸振れを抑制し合う構成となる。つまり、一方の軸はコイルスプリングの内周面に接触することにより軸振れが抑制されるから、当該一方の軸を介して他方の軸の軸振れも抑制される。
【0014】
第一空間を径方向外側が開放した空間と、第二空間を径方向外側が壁部によって閉鎖された空間とすれば、径方向外側が開放した第一空間にコイルスプリングの端部を挿入するしかなくなり、コイルスプリングの向きを誤って組み付けてしまうことが防止される。また、壁部は、第二係合部に接触する部分とすることもできる。つまり、入力軸および出力軸の一方と他方の接触を、壁部と第二係合部の接触によって実現することができる。このように、壁部は、コイルスプリングの誤った組み付けを防止する要素として機能するとともに、入力軸および出力軸の軸振れを抑制する要素としても機能する。
【0015】
回動中心から第一係合部の径方向外側の面までの距離が、回動中心から第二空間に面する壁部の径方向内側の面までの距離よりも大きく設定されていれば、第一係合部を第二空間に挿入することができない構成となる。つまり、入力軸および出力軸の一方に対して他方を誤った向きで組み付けてしまうことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態にかかるシャッタ駆動装置の一部断面(中心軸に沿う平面で切断した断面)図である(図をわかりやすくするためハッチングは一部の部材のみに付している)。
図2】入力軸、出力軸、コイルスプリングの外観斜視図である。
図3】(a)は通常動作時、(b)はブレーキ機能発現時、(c)は出力軸に大きな荷重がかかった時における、シャッタ駆動装置の断面(中心軸に直交する平面で切断した断面)図である(図をわかりやすくするためハッチングは省略してある)。
図4】シャッタ駆動装置の適用例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図3に詳細を示す本発明の一実施形態にかかるシャッタ駆動装置1について詳細に説明する。図4に示すように、本実施形態にかかるシャッタ駆動装置1は、駆動対象物であるシャッタを開閉する(車庫等の建物の開口91を開閉するシャッタ90を動作させる)装置である。例えば、シャッタ駆動装置1から出力された力は、シャッタ90を巻き取る巻取軸に伝達され、当該巻取軸の回転によりシャッタ90の巻き取り量が調整される。なお、本実施形態にかかるシャッタ駆動装置1は、いわゆるスリットシャッタ(スラットの角度が変化しないもの)にも適用することができるし、いわゆるブラインドシャッタ(スラットの角度が変化するもの)にも適用することができる。いずれのシャッタに適用される場合であっても、シャッタ駆動装置1の動力はシャッタの開閉操作に利用される。また、ブラインドシャッタに適用する場合には、シャッタ駆動装置1の動力をシャッタの開閉操作だけでなく、スラットの角度操作に利用することもできる。
【0018】
本実施形態にかかるシャッタ駆動装置1は、駆動源10、入力軸20、出力軸30、ブレーキ機構40を備える。駆動源10はモータである(図1参照)。当該モータの種類はどのようなものであってもよい。本実施形態では、駆動源10の動力は、所定の歯車輪列11を介して入力軸20に伝達される(図1参照)。かかる歯車輪列11はどのようなものであってもよい。また、歯車以外の動力伝達部材を含む動力伝達列によって駆動源10の動力が入力軸20に伝達されるよう構成してもよい。また、このような動力伝達列を設けず、駆動源10の動力が直接入力軸20に伝達されるものとしてもよい。
【0019】
図1図3に示す入力軸20は、駆動源10の動力によって回動する部材である。入力軸20は、大まかに見て略円柱形状を呈するものであり、歯車輪列11の動力が伝達される被駆動部29と一体的に成形されている。被駆動部29は、駆動源10の動力を入力軸20に伝達する動力伝達列の最終段の構成に応じて構築されるものであるから、それに応じた構成とすればよい。入力軸20の回動中心は、詳細を後述する出力軸30の回動中心と同じ(回動中心C)である。入力軸20には、第一空間21および第二空間22が形成されている(図2図3参照)。
【0020】
第一空間21は、径方向(入力軸20や出力軸30の回動方向に沿う円の径方向をいう。以下同じ)外側が開放した(遮るものが存在しない)空間である。第一空間21は、断面で見て、周方向(入力軸20や出力軸30が回動する方向をいう。以下同じ)に沿って所定角度分延びる空間である。周方向における第一空間21の長さは、後述するシャッタ駆動装置1の動作を実現するように設定される。
【0021】
一方、第二空間22は、第一空間21とは異なり、径方向外側が閉鎖された空間である。具体的には、第二空間22の径方向外側に壁部23が存在する。第二空間22は、断面で見て、入力軸20の周方向に沿って所定角度分延びる空間である。周方向における第二空間22の長さは、後述するシャッタ駆動装置1の動作を実現するように設定される。壁部23の径方向内側の面(第二空間22に面する部分。以下、入力側摺動面231と称する)は、回動中心Cを中心とする断面円弧状の面である。
【0022】
図1図3に示す出力軸30は、入力軸20と回動中心が一致する(回動中心C)部材であって、シャッタ90に動力を出力する出力部39と一体的に成形されている。出力部39は、直接または間接的に駆動対象物であるシャッタ90に接続されている。なお、ここでいう「接続」とは、シャッタ90に対して動力が伝達可能な状態をいうものであって、出力部39が他の部材に「固定」されていることを必要とするものではない。つまり、出力部39から出力される動力は、直接または一または複数の動力伝達部材を介して、シャッタ90に伝達されることとなる。したがって、シャッタ90の存在によって発生する荷重は、そのまま出力軸30に作用することとなる。
【0023】
出力軸30は、第一係合部31および第二係合部32を有する。第一係合部31は、上記入力軸20に形成された第一空間21に嵌まり込む部分である。第一係合部31は、断面で見て、出力軸30の周方向に沿って所定角度分延びる形状を呈する。周方向における第一係合部31の長さは、当該方向における第一空間21の長さよりも小さい。周方向における第一係合部31の一方側側面と、入力軸20における第一空間21に面する一方の側壁との間には、コイルスプリング41の一方側端部411が位置する。また、周方向における第一係合部31の他方側側面と、入力軸20における第一空間21に面する一方の側壁との間には、コイルスプリング41の他方側端部412が位置する。
【0024】
また、第一係合部31の径方向外側の面(以下、大径面311と称する)は、回動中心Cを中心とする断面円弧状である。大径面311の回動中心Cからの距離(径)(図3に示す距離r1)は、上述した入力側摺動面231(壁部23の径方向内側の面)の回動中心Cからの距離(図3に示す距離r2)よりも大きい。したがって、仮に、第一係合部31を第二空間22内に挿入しようとしても、第一係合部31は壁部23に接触するために第二空間22内に嵌まり込むことができない。
【0025】
第二係合部32は、上記入力軸20に形成された第二空間22に嵌まり込む部分である。第二係合部32は、断面で見て、出力軸30の周方向に沿って所定角度分延びる形状を呈する。周方向における第二係合部32の長さは、当該方向における第二空間22の長さよりも小さい。
【0026】
また、第二係合部32の径方向外側の面(以下、出力側摺動面321と称する)は、回動中心Cを中心とする断面円弧状である。出力側摺動面321の回動中心Cからの距離(径)は、上述した入力側摺動面231(壁部23の径方向内側の面)の回動中心Cからの距離と略同じ(図3に示す距離r2)である。つまり、出力側摺動面321は、入力側摺動面231に接触しており、入力軸20および出力軸30の一方が他方に対して相対的に回動したときには、一方の摺動面が他方の摺動面上を摺動することとなる。
【0027】
図1図3に示すブレーキ機構40は、コイルスプリング41と筒状体42を有する。当該コイルスプリング41の内側に入力軸20が挿入されている。コイルスプリング41は、その内径が入力軸20の最大外径と略同じとなるように設定されている。つまり、入力軸20の外周面の一部は、コイルスプリング41の内周面に接触しており、入力軸20およびコイルスプリング41の一方が他方に対して相対的に回動したときには、一方の面が他方の面上を摺動することとなる。
【0028】
上述したように、コイルスプリング41の端部(一方側端部411および他方側端部412)は、第一空間21内に挿入されている。各端部は、コイルを構築する本体部分に対して屈曲して形成された部分である。具体的には、各端部の傾斜角度は、コイルを構築する本体部分に沿う円の接線に対する傾斜角度が90度未満となるように屈曲している。周方向において、一方側端部411と他方側端部412は所定角度分離れており、両端部の間に出力軸30の第一係合部31が位置する。
【0029】
筒状体42は、コイルスプリング41の径方向外側に位置する部材である。筒状体42の内径は、コイルスプリング41の外径と略同じである。本実施形態では、コイルスプリング41は、自然状態(何も力が作用していない状態)からわずかに径方向に小さくなった状態で筒状体42の内側に挿入されている。したがって、通常状態(後述するブレーキ機能が発現されていない状態)においても、コイルスプリング41が径方向外側に拡がろうとする圧力が筒状体42に作用している。
【0030】
このように構成されるシャッタ駆動装置1の作用(動作)について説明する。
【0031】
・通常動作時(シャッタの開閉操作時)
シャッタ90を変位させようとする際には、駆動源10であるモータを回転させる。シャッタ90を開方向に変位させる際にはモータを一方に、閉方向に変位させる際にはモータを他方に回転させる。なお、シャッタ90を開方向に変位させる場合であっても、閉方向に変位させる場合であっても、出力軸30までの基本的な動力伝達の流れは変わらないため、一方の動力伝達の流れのみ説明する。
【0032】
駆動源10であるモータの動力は、歯車輪列11を介して入力軸20に伝達される。これにより入力軸20が回動する。入力軸20が所定量回動すると、その第一空間21に面する側壁の一方が、コイルスプリング41の端部(一方側端部411または他方側端部412)に接触する(図3(a)参照)。コイルスプリング41の端部は、コイルを構築する本体部分に沿う円の接線に対する傾斜角度が90度未満となるように屈曲している、すなわち入力軸20における第一空間21に面する側壁側に向かって傾斜した態様であるため、当該端部が入力軸20に押されることにより、コイルスプリング41はその本体部分の径を小さくしようとする。つまり、筒状体42の内周面とコイルスプリング41の外周面との間に生ずる摩擦抵抗が小さくなる。すなわち、ブレーキが解除された状態となる。
【0033】
また、入力軸20が回動することにより、第二空間22が周方向に変位する。つまり、入力側摺動面231が出力側摺動面321上を摺動する。第二空間22が所定量変位すると、入力軸20の第二空間22に面する側壁の一方は、出力軸30の第二係合部32の一方の側面に接触する(図3(a)参照)。つまり、入力軸20が出力軸30を押す。これにより、ブレーキが解除された状態で、入力軸20と出力軸30が一体的に回動する。出力軸30が回動することにより、シャッタ90が開方向または閉方向に変位することとなる。
【0034】
・ブレーキ機能発現時(シャッタ保持時)
シャッタを所定位置で保持するためには、シャッタ90の重み等によって出力軸30が回動しないようにブレーキをかける必要がある。また、シャッタ駆動装置1をブラインドシャッタに適用する場合、スラットを所定角度で保持するためには、スラットの重み等によって出力軸30が回動しないようにブレーキをかける必要がある。つまり、次のようにブレーキ機構40が作動する。少なくともシャッタ90からの荷重を受ける出力軸30は、一方に回動しようとする。これにより、出力軸30の第一係合部31の一方の側壁が、コイルスプリング41の端部(他方側端部412)に接触する(図3(b)参照)。コイルスプリング41の端部は、コイルを構築する本体部分に沿う円の接線に対する傾斜角度が90度未満となるように屈曲している、すなわち第一係合部31の一方の側壁から離れるように傾斜した態様であるため、当該端部が第一係合部31(出力軸30)に押されることにより、コイルスプリング41はその本体部分の径を大きくしようとする。本実施形態では、ブレーキ機能が発現されていない状態においても、コイルスプリング41の本体部分の外周面は筒状部の内周面に接触しているから、実際にはコイルスプリング41の本体部分の径が大きくなるということはないが、コイルスプリング41の本体部分が筒状部に押し当てられる圧力は高まる。つまり、筒状体42の内周面とコイルスプリング41の外周面との間に生ずる摩擦抵抗が大きくなる。すなわち、ブレーキがかかった状態となり、それ以上の出力軸30の回動が阻止される。したがって、当該位置でシャッタ90が保持される(ブラインドシャッタの場合にはスラットの角度も保持される)こととなる。
【0035】
このようなブレーキ機能は、シャッタ90(ブラインドシャッタの場合にはスラットを含む)からの出力軸30へ伝わる荷重が大きくなるとき(例えば、シャッタ90を全閉状態から開方向に変位させようとする際における駆動源10の駆動直後(入力軸20に伝達された動力が出力軸30に伝わる前)や、全閉状態で保持する場合等)にも発現される。このように出力軸30に大きな荷重がかかり、出力軸30(第一係合部31)がコイルスプリング41の端部に接触した場合(図3(c)参照)、出力軸30(第一係合部31)がコイルスプリング41の端部を押す力は大きくなる。コイルスプリング41は、径方向に大きくなって筒状体42の内周面に押し当てられた状態(それ以上変形できない状態)にあるから、コイルスプリング41の端部から出力軸30への反作用力も大きくなる。
【0036】
このような反作用力を受けた出力軸30は倒れようとするが、本実施形態では、出力軸30の第二係合部32(出力側摺動面321)が、第二空間22内において入力軸20(入力側摺動面231)に接触しているため、出力軸30の軸振れは入力軸20によって抑制されることとなる。また、入力軸20の外周面の少なくとも一部は、コイルスプリング41の本体部分の内周面に接触している。コイルスプリング41の本体部分の外周面は、筒状体42の内周面に接触しているから、コイルスプリング41自体が倒れることは筒状部によって規制されているといえる。したがって、外周面の少なくとも一部が接触している入力軸20は、コイルスプリング41によって(コイルスプリング41を介して筒状体42によって)軸振れが抑制される。このように、本実施形態によれば、入力軸20の軸振れが抑制され、それに接触する出力軸30の軸振れも抑制されることとなる。これにより、出力軸30に大きな荷重がかかったときにおける振動や騒音の発生が抑制される。また、軸振れによる摩擦抵抗の増大が抑制されるため、装置の耐久性(寿命)が向上するという利点もある。また、新たな部品等を追加して軸振れを抑制するものではないため、コストの増加を抑制することができるという利点もある。
【0037】
なお、入力軸20や出力軸30の軸振れを抑制する意義は、このような大きな荷重が出力軸30に作用したときに限られるものではない。通常の駆動時であっても、入力軸20や出力軸30の軸振れは発生しうるものであるから、それを抑制する意義は大きい。例えば、駆動源10からの動力が入力軸20に伝達されたときに、入力軸20の軸振れが発生するおそれがあるが、当該入力軸20の軸振れも、その外側に位置するコイルスプリング41の本体部分によって抑制されることとなる。
【0038】
上記本実施形態にかかるシャッタ駆動装置1の構成は、その組み立てにおいても有利に作用する。本実施形態では、第一空間21を径方向外側が開放した空間と、第二空間22を径方向外側が壁部23によって閉鎖された空間としている。したがって、コイルスプリング41の端部は、径方向外側が閉鎖された第二空間22には挿入することができず、径方向外側が開放した第一空間21に挿入するしかない。つまり、コイルスプリング41の向き(周方向位置)を誤って組み付けてしまうことが防止される。そして、上記壁部23は、第二係合部32に接触する部分でもある。すなわち、壁部23は、コイルスプリング41の誤った組み付けを防止する要素として、かつ、入力軸20および出力軸30の軸振れを抑制する要素として機能するものである。
【0039】
また、回動中心Cから第一係合部31の径方向外側の面(大径面311)までの距離(図3に示す距離r1)は、回動中心Cから第二空間22に面する壁部23の径方向内側の面(入力側摺動面231)までの距離(図3に示す距離r2)よりも大きく設定されている。そのため、第一係合部31を第二空間22に挿入することはできない。つまり、第一係合部31を第一空間21に、第二係合部32を第二空間22に挿入しなければ入力軸20および出力軸30の一方に対して他方を組み付けることができないから、入力軸20および出力軸30の一方に対して他方を誤った向きで組み付けてしまうことが防止される。そして、上記壁部23は、第二係合部32に接触する部分でもある。すなわち、壁部23は、入力軸20および出力軸30の一方に対する他方の誤った組み付けを防止する要素として、かつ、入力軸20および出力軸30の軸振れを抑制する要素として機能するものである。
【0040】
また、入力軸20は、壁部23によってその周方向一方側に位置する部分と周方向他方側に位置する部分とが繋げられた構造(第二空間22の周方向両側に位置する部分が繋げられた構造)であるといえる。つまり、筒状の構造物が二つに分離したものではなく、壁部23によって一体化されたものであるため、入力軸20の変形や破損等を招くおそれが低い。つまり、壁部23は、入力軸20の変形等を抑制する要素として、かつ、入力軸20および出力軸30の軸振れを抑制する要素として機能するものである。
【0041】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0042】
例えば、上記実施形態における入力軸20と出力軸30を逆にすることも可能である。つまり、上記実施形態でいう第一空間21や第二空間22が形成される部材を出力軸30とし、第一係合部31や第二係合部32が形成される部材を入力軸20とすることも可能である。この場合、出力軸30に押された場合には本体部分の径を大きくする方向に、入力軸20に押された場合には本体部分の径を小さくする方向に変形するよう、コイルスプリング41の端部の形状(本体部分に沿う円の接線に対する傾斜角度)や、出力軸30の形状(第一空間21の側面の形状)、入力軸20の形状(第一係合部31の形状)を適宜調整すればよい。
【0043】
このような構成としても、出力軸30の外周面の少なくとも一部は、コイルスプリング41の内周面に接触するから、出力軸30の軸振れが抑制される。また、入力軸20(第二係合部32)が出力軸30(壁部23)に接触した状態にあるから、両軸の軸振れが抑制される。なお、上記実施形態のように入力軸20の外周面の少なくとも一部がコイルスプリング41の内周面に接触する構造とするよりも、出力軸30の外周面の少なくとも一部がコイルスプリング41の内周面に接触する構造とすることが好ましい。出力軸30は、シャッタ90(ブラインドシャッタの場合にはスラットを含む)から受ける荷重が(入力軸20よりも先に)かかるものであるから、当該出力軸30の軸振れを優先的に抑制することで、シャッタ90から比較的大きな荷重が出力軸30にかかっている場合において、出力軸30と入力軸20との間にいわゆるこじり(出力軸30が傾いてロックされたような状態となること)が発生してしまうことが抑制される。
【符号の説明】
【0044】
1 シャッタ駆動装置
10 駆動源
20 入力軸
21 第一空間
22 第二空間
23 壁部
231 入力側摺動面
30 出力軸
31 第一係合部
311 大径面
32 第二係合部
321 出力側摺動面
39 出力部
40 ブレーキ機構
41 コイルスプリング
42 筒状体
90 シャッタ

図1
図2
図3
図4