特許第6601087号(P6601087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6601087熱転写受像シート用ベース基材及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6601087
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】熱転写受像シート用ベース基材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/52 20060101AFI20191028BHJP
   B41M 5/50 20060101ALI20191028BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20191028BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20191028BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   B41M5/52 400
   B41M5/50 410
   B41M5/50 420
   B32B5/24 101
   B32B27/32 Z
   B32B27/20 Z
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-183925(P2015-183925)
(22)【出願日】2015年9月17日
(65)【公開番号】特開2017-56657(P2017-56657A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小出 晋也
【審査官】 廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−299189(JP,A)
【文献】 特開平05−246153(JP,A)
【文献】 特開2006−159812(JP,A)
【文献】 特開2009−137168(JP,A)
【文献】 特開2003−253036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/382−5/52
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、パルプを主成分とする紙の層と無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層と発泡フィルム層とがこの順に形成されており、前記発泡フィルム層とは反対側の前記パルプを主成分とする紙の面に、背面樹脂層が形成されている熱転写受像シート用ベース基材において、
前記無機中空粒子の空隙率が40%以上であり、前記無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層は、厚み方向に複数の領域からなり、前記発泡フィルム層と接する側に前記無機中空粒子を含まない領域があり、前記パルプを主成分とする紙の層側と接する側に、前記無機中空粒子を含む領域があり、前記無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層における無機中空粒子の充填率が15〜55vol%であり、
前記背面樹脂層は、前記無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層に含有されるオレフィン樹脂よりも、密度の高いポリオレフィン樹脂からなることを特徴とする熱転写受像シート用ベース基材。
【請求項2】
前記無機中空粒子の一次粒子径が、500nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写受像シート用ベース基材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱転写受像シート用ベース基材の製造方法であって、パルプを主成分とする紙の層の一方の面に、押出ラミネートによりポリオレフィン樹脂からなる背面樹脂層を形成する工程と、前記パルプを主成分とする紙の層のもう一方の面に、発泡フィルム層と、無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂とを押出サンドウィッチラミネーションにて形成する工程とがこの順で有してなる熱転写受像シート用ベース基材の製造方法において、前記無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層を押出す際、無機中空粒子が添加されたポリオレフィン樹脂と、無添加のポリオレフィン樹脂の共押出を用い、前記無機中空粒子が添加された樹脂側が、前記パルプを主成分とする紙の層に直接接するように押出されており、前記無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層における無機中空粒子の充填率が15〜55vol%であり、前記無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂よりも、前記背面樹脂層のポリオレフィン樹脂の方が、密度が高いことを特徴とする熱転写受像シート用ベース基材の製造方法。
【請求項4】
前記無機中空粒子の一次粒子径が、500nm以下であることを特徴とする請求項3記載の熱転写受像シート用ベース基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写受像シートに使用されるベース基材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の熱転写方法が公知であるが、それらの中で昇華性染料を記録材とし、これを紙やプラスチックシート等の基材シート(ベース基材)に担持させて熱転写シートとし、昇華性染料で染着可能な熱転写受像シート、例えば、紙やプラスチックフイルムの表面に染料受容層を設けた熱転写受像シート上に各種のフルカラー画像を形成する方法が提案されている。
【0003】
この場合には加熱手段としてプリンタのサーマルヘッドが使用され、極めて短時間の加熱によって3色又は4色の多数の色ドットを熱転写受像シートに転移させ、該多色の色ドットにより原稿のフルカラー画像を再現するものである。この様に形成された画像は、使用する色材が染料であることから非常に鮮明であり、且つ透明性に優れている為、得られる画像は中間色の再現性や階調性に優れ、従来のオフセット印刷やグラビア印刷による画像と同様であり、且つフルカラー写真画像に匹敵する高品質の画像が形成可能となっている。
【0004】
上記の様な昇華型熱転写方式に使用される熱転写受像シート(以下受像シートと記載す場合がある)は、画像に濃度むらやドット抜けがなく高濃度及び高解像度の画像が得られる様に、サーマルヘッドにおける各ドットの印字エネルギーに正確に対応した発色及び濃度が要求される。
【0005】
受像シートが硬くクッション性が欠ける場合には、サーマルヘッド−熱転写シート−受像シートの合計の厚みが均一でなくなり、サーマルヘッドの印圧が不均一になって、印字のドット抜けや濃度むらが発生する。
【0006】
そのため、受像シートには、紙等のシートの一方又は両方の面にクッション層を積層する方法が知られ、クッション材として発泡フィルムを使用する基材シート(以下ベース基材)が提案されている。
【0007】
上記の様な受像シート用ベース基材を形成する際は、有機溶剤を溶媒として含有する接着剤を基材上に塗工して接着剤層を形成し、基材の一方の面又は両方の面と発泡樹脂フィルムとを積層貼合するいわゆるドライラミネート法あるいは、ウェットラミネート法などの塗工工程を含む貼合方式で積層貼合されていた。
【0008】
しかし、この方式では接着剤の溶剤や接着時の加熱によって、得られるベース基材にカール、波打ち等が発生し、その表面に染料受容層を設ける際に染料受容層の平滑性やブリスター等の問題が発生する。
【0009】
また、溶剤の問題や加熱工程、熟成時間等、生産性にも大きな問題がある。また接着剤の硬化に時間を要する等の生産性の問題があり、製造コストの改善が要請されている。
【0010】
このような問題を解決する溶剤を使用しない既存のベース基材の積層貼合方法としては、押出サンドウィッチラミネーション法がある。
【0011】
前記押出サンドウィッチラミネーション法では例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピ
レン樹脂等を用いて、樹脂フィルムを貼り合わせる方法(特許文献1、特許文献2参照)などが、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−98926号公報
【特許文献2】特開平11−227343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
但し、特許文献1、2などの方法を用いることで、溶剤の使用を抑え、低コストで、受像シートを形成することが可能となるが、発泡フィルムを紙に張り合わせると、紙の凹凸が発泡フィルム表面に現れるため、受像シートとした際、受容層表面の平滑性が不十分となり、画像均一性が悪化する問題がある。
【0014】
また、印画時に熱が掛かることによりカールが発生するという問題がある。
【0015】
本発明は、従来の受像シートが前述の問題点を解消し、各種サーマルプリンタに対して、高感度、高画質であり、鮮明な画像が形成でき、かつ印画時の熱によるカールの少ない受像シートを実現可能とするベース基材、及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための請求項1に係る本発明は、少なくとも、パルプを主成分とする紙の層と無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層と発泡フィルム層とがこの順に形成されており、前記発泡フィルム層とは反対側の前記パルプを主成分とする紙の面に、背面樹脂層が形成されている熱転写受像シート用ベース基材において、
前記無機中空粒子の空隙率が40%以上であり、前記無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層は、厚み方向に複数の領域からなり、前記発泡フィルム層と接する側に前記無機中空粒子を含まない領域があり、前記パルプを主成分とする紙の層側と接する側に、前記無機中空粒子を含む領域があり、前記無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層における無機中空粒子の充填率が15〜55vol%であり、
前記背面樹脂層は、前記無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層に含有されるオレフィン樹脂よりも、密度の高いポリオレフィン樹脂からなることを特徴とする熱転写受像シート用ベース基材である。
【0017】
上記課題を解決するための請求項2に係る本発明は、前記無機中空粒子の一次粒子径が、500nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写受像シート用ベース基材である。
【0018】
上記課題を解決するための請求項3に係る本発明は、請求項1または2に記載の熱転写受像シート用ベース基材の製造方法であって、パルプを主成分とする紙の層の一方の面に、押出ラミネートによりポリオレフィン樹脂からなる背面樹脂層を形成する工程と、前記パルプを主成分とする紙の層のもう一方の面に、発泡フィルム層と、無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂とを押出サンドウィッチラミネーションにて形成する工程とがこの順で有してなる熱転写受像シート用ベース基材の製造方法において、
前記無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層を押出す際、無機中空粒子が添加されたポリオレフィン樹脂と、無添加のポリオレフィン樹脂の共押出を用い、前記無機中空粒子が添加された樹脂側が、前記パルプを主成分とする紙の層に直接接するように押出されており、前記無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層における無機中空粒子の充填率が15〜55vol%であり、
前記無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂よりも、前記背面樹脂層のポリオレフィン樹脂の方が、密度が高いことを特徴とする熱転写受像シート用ベース基材の製造方法である。
【0019】
上記課題を解決するための請求項4に係る本発明は、前記無機中空粒子の一次粒子径が、500nm以下であることを特徴とする請求項3記載の熱転写受像シート用ベース基材の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の熱転写受像シート用ベース基材によれば、少なくとも、紙の層と無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層層と発泡フィルム層とがこの順に形成されており、この無機中空粒子がパルプを主成分とする紙の層の凹凸を抑制して基材の平滑性を高めるだけでなく、断熱材として機能するため、発色感度の高い高画質な画像を形成することができる。
【0021】
また、無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層よりも密度の高いポリオレフィン樹脂を設けることで、背面側に剛性を出し、印画時の熱によるカールを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に基づく実施形態に係る熱転写受像シート用ベース基材の側断面図である。
図2】本発明に基づく実施形態に係る熱転写受像シート用ベース基材製造方法の工程図である。
図3】本発明の実施の形態に係る無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層に用いられるシリカ殻からなるシリカナノ中空粒子の製造工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態についてさらに詳細に説明する。図1は熱転写受像シート用ベース基材101の模式図である。本実施形態の熱転写受像シート用ベース基材101は、少なくとも紙の層103、無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層104、発泡フィルム層105がこの順に積層されており、前記無機の中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層よりも、密度の高いポリオレフィン樹脂からなる背面樹脂層102により構成されている。
【0024】
パルプを主成分とする紙の層103としては、上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、片面コート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等を用いてもよい。
【0025】
押出ラミネート及び、押出サンドウィッチラミネート法を行なう場合は、押出された溶融樹脂が紙目の凹凸に浸透することにより、物理的接着が得られるため、ラミネートされる面が、非塗工紙である上質紙や、中質紙、片面コート(非塗工側)を用いるのが好ましい。
【0026】
パルプを主成分とする紙の層103の厚さは、印画物としてのコシ、強度や耐熱性等を考慮し、25μm以上250μm以下の範囲のものが使用可能であるが、より好ましくは50μm以上200μm以下のものが好ましい。
【0027】
本発明の熱転写受像シート用ベース基材101は、パルプを主成分とする紙の層103の一方の面に、無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層104よりも、密度の高いポリオレフィン樹脂を押出ラミネーションにより形成するところに特徴がある。
【0028】
無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層104よりも、背面樹脂層102に剛体性を
持たせることにより、熱転写受像シートにした際、印画時の熱時による発泡フィルム層105側へのカールを抑制することが可能となる。
【0029】
背面樹脂層102で使用されるポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブデン、ポリメチルペンテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレンとα、β−不飽和カルボン酸の共重合体を金属イオンで中和したいわゆるアイオノマー樹脂が挙げられ、これらのポリオレフィン系樹脂のうちでも、特にポリエチレン樹脂が安価であることから好ましく使用される。また、これらのポリオレフィン樹脂は単独あるいは、2種類以上を混合して使用することができる。
【0030】
背面樹脂層102の厚みとしては、5μm以上80μm以下に調整することが好ましく、より好ましくは8μm以上60μm以下に調整することが好ましい。
【0031】
発泡フィルム層105は、従来公知のもので対応でき、例えば、発泡ポリプロピレンフィルムや発泡ポリエチレンテレフタレートフィルム等の発泡フィルムなどを用いたもの、さらに発泡フィルムの片面または両面にスキン層を設けた複合フィルムを用いた発泡フィルムを挙げることができる。この中でも特に、発泡フィルムの両面にスキン層を設けた複合フィルムを用いることが好ましい。
【0032】
発泡フィルム層105の厚さは、10μm以上80μm以下の範囲のものが使用可能であるが、クッション性を維持した上で、製造コスト、収縮の大きいフィルムであることなどを考慮すると、より好ましくは10μm以上30μm以下のものが好ましい。
【0033】
本発明の熱転写用受像シート用ベース基材製造方法は、紙の層103の背面樹脂層102を形成していない面と、発泡フィルム層105を、無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層104による押出サンドウィッチラミネート工程により形成するところに特徴がある。
【0034】
従来工法で使用していた溶剤を含有する接着剤が無用であり、有機溶剤を使用しないため、環境に対して悪影響がなく安全性にも優れ、また乾燥工程が不要であり、加工速度が速いため生産性にも優れ、更に接着剤の価格も従来の溶剤型接着剤と比較して安価であり、熱転写用受像シート用ベース基材製造での低コスト化が可能となる。
【0035】
また、前記押出サンドウィッチラミネーション工程で、無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂を押出す際に、無機中空粒子が添加されたポリオレフィン樹脂(無機中空粒子充填領域層104a用)と、無添加のポリオレフィン樹脂(無機中空粒子非充填領域層104b用)との共押出しを用い、無機中空粒子が添加されたポリオレフィン樹脂側すなわち無機中空粒子充填領域層104aが、パルプを主成分とする紙の層に直接接するように押出されているところに特徴がある。
【0036】
共押出しを用いることで、無機中空粒子と発泡フィルム層105との接触によるラミ強度の低下を防ぐことが可能となる。
【0037】
また、この無機中空粒子により、パルプを主成分とする紙の層の凹凸を埋めることが可能となり高平滑な表面を得ることが出来る。さらに、無機中空微粒子からなる中空構造による断熱性により、熱収縮の大きい発泡フィルム(層)を薄く出来き、本発明の熱転写用受像シート用ベース基材101を熱転写受像シートにした際に、印画時の熱によるカールを抑制することが可能となる。
【0038】
無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層104で使用されるポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブデン、ポリメチルペンテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレンとα、β−不飽和カルボン酸の共重合体を金属イオンで中和したいわゆるアイオノマー樹脂が挙げられ、これらのポリエレフィン系樹脂のうちでも、特にポリエチレン樹脂が安価であることから好ましく使用される。また、これらのポリオレフィン樹脂は単独あるいは、2種類以上を混合して使用することができる。
【0039】
無機中空粒子を含むポリオレフィン層104の厚みとしては、5μm以上80μm以下に調整することが好ましく、より好ましくは8μm以上60μm以下に調整することが好ましい。
【0040】
無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層104中おける無機中空粒子の空隙率は、40%を下回ると、断熱性が得られないため、40%以上が好ましく、更には、70〜80%がより好ましい。
【0041】
また、本発明を実施するための、機中空粒子を添加するポリオレフィン樹脂と無添加のポリオレフィン樹脂を共押出する工程においては、無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層104中おける無機中空粒子の充填率が、15〜55vol%なるようにするのが好ましい。
【0042】
無機中空粒子を添加するポリオレフィン樹脂層104中の無機中空粒子の充填率が55vol%を超えると、層の柔軟性が低下してしまい、クラックが生じる。
【0043】
また、充填率が10vol%よりも低いと、紙の層の凹凸を埋めることが出来ず、表面平滑性を改善することが出来ない。
【0044】
無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層104中おける無機中空粒子の粒子径については、500nm以下が好ましい。粒子径が500nmを超えると、紙の層の凹凸を隠蔽できても、粒子の凹凸が基材表面に現れていまい、表面平滑性を改善することが出来ない。
【0045】
無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層104中おける無機中空粒子について、中空粒子が無機である必要性は、押出工程において300℃以上の高温で樹脂を押出すため、中空粒子には耐熱性が必要となるが、有機中空粒子では、耐熱性が不足するためである。
【0046】
無機中空粒子の具体的な例としては、TiO、ZnO、AlO、NiO、Cu2Oなどの金属酸化物のナノ中空粒子や、シリカナノ中空粒子が挙げられるが、中でも、シリカは化学的安定性が高く、人体や環境に対して無害であり、光学的透明性が高く、安価であるため、シリカナノ中空粒子を使用するのが好ましい。
【0047】
ここで、本発明は、熱転写受像シート用ベース基材に係わるものであるが、最終的に昇華転写方式に使用される熱転写受像シートとする場合には、前記発泡フィルム層105の最表面側に、受像層を設けることができる。前記受像層を設ける場合には、前記発泡フィルム層105の最表面に直接塗布しても良いが、前記発泡フィルム層105と前記受像層との間に、下引き層を設けておいても良い。
【0048】
これら、下引き層並びに、受像層は公知の材料を任意に用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下に、本発明の各実施例および各比較例に用いた材料を示す。なお、文中で「部」とあるのは、特に断りのない限り重量基準である。また、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
まず、本発明に用いる無機中空粒子の製造を行った。
図3に示されるように、最初にコア粒子302となる炭酸カルシウム微粒子を結晶成長させる。ここで生成させる炭酸カルシウムの結晶はカルサイトであり六方晶系であるが、合成条件を制御することにより、あたかも立方晶系であるかのような形状、即ち「立方体状形態」に成長させることができる。ここで、「立方体状形態」とは、立方体に限らず面で囲まれた立方体に似た形状をいう。この炭酸カルシウム302の外径約400nm〜600nmとなるように結晶成長させた後に、ゾル−ゲル法によりシリコンアルコキシドを用いて、炭酸カルシウム微粒子302にシリカ303をコーティングする。
【0051】
続いて、これを水に分散させて酸を添加して内部の炭酸カルシウム302を溶解させて流出させることによって、流出孔を有する立方体状形態のシリカ殻からなるナノ中空粒子304が形成される。最後に、800℃で焼成し溶解した炭酸カルシウム302が流出した孔を塞ぐことによって、緻密なシリカ殻からなるナノ中空粒子(シリカナノ中空粒子)301が製造される。シリカナノ中空粒子301の中空部分301bの内径は、コア粒子の炭酸カルシウム微粒子302の外径400nm〜600nmであり、緻密なシリカ殻301aの厚さは1nm〜5nm、厚くても5nm〜20nm前後であるため、シリカナノ中空粒子301の一次粒子径は約400nm〜650nmとなった。
また、かさ密度は、0.03から0.07g/mlとなった。
【0052】
次に、本発明における無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層を形成するための中空粒子含有マスターバッチの製造方法について説明する。ここでは、前述の通り作製したシリカナノ中空粒子301の中から、一次粒子径が約600nmであり、壁厚が約35nm以下であり、かさ密度が0.05g/mlであり、空隙率が約70%の立方体状形態のシリカ殻からなるシリカナノ中空粒子(以下、シリカナノ中空粒子1)を選んで用いた。
【0053】
低密度ポリエチレン樹脂(スミカセンL718−H 密度:0.918g/cm3 住友化学製)と、シリカナノ中空粒子1をタンブルミキサーで攪拌し、押出機により混練した樹脂を押出し、ペレタイザーで樹脂をカットし、シリカナノ中空粒子を含むマスターバッチ−1を作成した。
【0054】
この際、マスターバッチ−1のシリカナノ中空粒子1の添加量は、低密度ポリエチレン樹脂対して、40重量%とした。
【0055】
パルプを主成分とする紙の層として両面にコロナ処理を施した、厚さ約149μmの上質紙(しらおい 坪量127.9g/m2 日本製紙製)を使用し、一方の面に溶融押し出しラミネーションにより、厚さ30μmの背面樹脂層を形成した。背面樹脂層の形成には、低密度ポリエチレン樹脂(サンテックLD L4490 密度0.939g/cm3
旭化成ケミカルズ製)を用いた。
【0056】
次に、無機中空粒子充填領域層104a用の樹脂として、シリカナノ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−1(配合比は後述の通り)が厚さ5μmと、無機中空粒子非充填領域層104b用樹脂であるシリカナノ中空粒子無添加の低密度ポリエチレン樹脂(スミ
カセンL718−H 密度0.918g/cm3 住友化学製)が厚さ10μmからなる厚さ15μmの共押出樹脂(無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層104)を接着剤として、紙の背面樹脂層側とは反対側の面と、厚さ35μmの発泡フィルム(トヨパールP4255 東洋紡製)の片面を、押出サンドイッチラミネーションにて貼り合わせることにより、熱転写受像シート用ベース基材を得た。
【0057】
その際、ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−1は、紙の凹凸を隠蔽するために、紙面に接するように押出した。厚さ15μの無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層に対する、ナノシリカ中空粒子の充填率を透過型電子顕微鏡により確認したところ、15vol%であった。
【0058】
<ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−1>
・低密度ポリエチレン樹脂
(スミカセンL718−H 住友化学製) 839.0部
・マスターバッチ−1 100.0部
【0059】
(実施例2)
実施例1の紙の背面樹脂層側とは反対側の面と、厚さ35μmである発泡フィルム(トヨパールP4255 東洋紡製)の片面を、押出サンドイッチラミネーションにて貼り合わせる工程において、ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−1を、ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−2(後述の配合比を参照のこと)に変更し、シリカナノ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−2が厚さ10μmと、無添加の低密度ポリエチレン樹脂(スミカセンL718−H 密度0.918g/cm3 住友化学製)が厚さ5μmからなる厚さ15μmの共押出樹脂(無機中空粒子を含むポリオレフィン層)を接着剤とし、紙の背面樹脂層側とは反対側の面と、厚さ35μmの発泡フィルム(トヨパールP4255 東洋紡製)の片面を、押出サンドイッチラミネーションにて貼り合わせた以外は、実施例1と同じ工程により、実施例2の熱転写受像シート用ベース基材を得た。
【0060】
なお、厚さ15μの無機中空粒子を含むポリオレフィン層に対する、ナノシリカ中空粒子の充填率を透過型電子顕微鏡により確認したところ、55vol%であった。
【0061】
<ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−2>
・低密度ポリエチレン樹脂
(スミカセンL718−H 住友化学製) 185.0部
・マスターバッチ−1 100.0部
【0062】
(実施例3)
実施例1の無機中空粒子の製造方法において、コア粒子となる炭酸カルシウムの粒径と、ゾル−ゲル法により炭酸カルシウム微粒子にシリカをコーティングする厚みを調整することにより、緻密なシリカ殻の厚が約25nm〜30nm、一次粒子径約500nm、空隙率70%のシリカナノ中空粒子(以下、シリカナノ中空粒子2)を得た。
【0063】
また、このシリカナノ中空粒子2のかさ密度は、0.06g/mlとなった。
次に、低密度ポリエチレン樹脂(スミカセンL718−H 住友化学製)とシリカナノ中空粒子2を用いて、実施例1と同様に、シリカナノ中空粒子の添加量が、低密度ポリエチレン樹脂対して、40重量%のマスターバッチ−2を作製した。
【0064】
ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−1を、ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−3(後述の配合比を参考のこと)に変更した以外は、実施例1と同じとし、実施例3の熱転写受像シート用ベース基材を得た。
【0065】
また、厚さ15μの共押出樹脂に対する、ナノシリカ中空粒子の充填率を透過型電子顕微鏡により確認したところ、ナノシリカ中空粒子の充填率を透過型電子顕微鏡により確認したところ、15vol%であった。
【0066】
<ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−3>
・低密度ポリエチレン樹脂
(スミカセンL718−H 住友化学製) 687.0部
・マスターバッチ−2 100.0部
【0067】
(実施例4)
実施例2において用いた、ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−2を、ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−4(後述の配合比を参照のこと)に変更した以外は、実施例2と同じとし、実施例4の熱転写受像シートを得た。
また、厚さ15μの無機中空粒子を含むポリオレフィン層に対する、ナノシリカ中空粒子の充填率を透過型電子顕微鏡により確認したところ、55vol%であった。
【0068】
<ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−4>
・低密度ポリエチレン樹脂
(スミカセンL718−H 住友化学製) 144.0部
・マスターバッチ−2 100.0部
【0069】
(実施例5)
実施例1の無機中空粒子の製造方法において、コア粒子となる炭酸カルシウムの粒径と、ゾル−ゲル法により炭酸カルシウム微粒子にシリカをコーティングする厚みを調整することにより、緻密なシリカ殻の厚が約35nm〜40nm、一次粒子径約300nm、空隙率40%のシリカナノ中空粒子(以下、シリカナノ中空粒子3)を得た。
【0070】
また、このシリカナノ中空粒子3のかさ密度は、0.07g/mlとなった。
次に、低密度ポリエチレン樹脂(スミカセンL718−H 住友化学製)とシリカナノ中空粒子3を用いて、実施例1同様に、シリカナノ中空粒子の添加量が、低密度ポリエチレン樹脂対して、40重量%のマスターバッチ−3を作製した。
【0071】
ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−1を、ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−5(後述の配合比を参照のこと)に変更した以外は、実施例1と同じとし、比較実施例1の熱転写受像シート用ベース基材を得た。
【0072】
また、厚さ15μの共押出樹脂に対する、ナノシリカ中空粒子の充填率を透過型電子顕微鏡により確認したところ、ナノシリカ中空粒子の充填率を透過型電子顕微鏡により確認したところ、15vol%であった。
【0073】
<ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−5>
・低密度ポリエチレン樹脂
(スミカセンL718−H 住友化学製) 580.0部
・マスターバッチ−3 100.0部
【0074】
(実施例6)
実施例2において、ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−2を、ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−6(後述の配合比を参照のこと)変更した以外は、実施例2と同じとし、実施例6の熱転写受像シートを得た。
また、厚さ15μの無機中空粒子を含むポリオレフィン層に対する、ナノシリカ中空粒子の充填率を透過型電子顕微鏡により確認したところ、55vol%であった。
【0075】
<ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−6>
・低密度ポリエチレン樹脂
(スミカセンL718−H 住友化学製) 115.0部
・マスターバッチ−3 100.0部
【0076】
(比較例1)
実施例1の無機中空粒子の製造方法において、コア粒子となる炭酸カルシウムの粒径と、ゾル−ゲル法により炭酸カルシウム微粒子にシリカをコーティングする厚みを調整することにより、緻密なシリカ殻の厚が40nm〜45nm、一次粒子径約300nm、空隙率37%のシリカナノ中空粒子(以下、シリカナノ中空粒子4)を得た。
【0077】
また、このシリカナノ中空粒子4のかさ密度は、0.08g/mlとなった。
次に、低密度ポリエチレン樹脂(スミカセンL718−H 住友化学製)とシリカナノ中空粒子4を用いて、実施例1同様に、シリカナノ中空粒子の添加量が、低密度ポリエチレン樹脂対して、40重量%のマスターバッチ−4を作製した。
【0078】
ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−1を、ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−7(後述の配合比を参照のこと)に変更した以外は、実施例1と同じとし、比較例1の熱転写受像シート用ベース基材を得た。
【0079】
また、厚さ15μの共押出樹脂に対する、ナノシリカ中空粒子の充填率を透過型電子顕微鏡により確認したところ、ナノシリカ中空粒子の充填率を透過型電子顕微鏡により確認したところ、10vol%であった。
【0080】
<ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−7>
・低密度ポリエチレン樹脂
(スミカセンL718−H 住友化学製) 1000.0部
・マスターバッチ−4 100.0部
【0081】
(比較例2)
実施例2において、ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−2を、ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−8(後述の配合比を参照のこと)に変更した以外は、実施例2と同じとし、比較例2の熱転写受像シートを得た。
【0082】
また、厚さ15μの無機中空粒子を含むポリオレフィン層に対する、ナノシリカ中空粒子の充填率を透過型電子顕微鏡により確認したところ、60vol%であった。
【0083】
<ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−8>
・マスターバッチ−4 100.0部
【0084】
(比較例3)
実施例3における、ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−3を、ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−9(後述の配合比を参照のこと)に変更した以外は、比較例1と同じとし、比較実施例3の熱転写受像シート用ベース基材を得た。
【0085】
また、厚さ15μの無機中空粒子を含むポリオレフィン層に対する、ナノシリカ中空粒子の充填率を透過型電子顕微鏡により確認したところ、10vol%であった。
【0086】
<ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−9>
・低密度ポリエチレン樹脂
(スミカセンL718−H 住友化学製) 1370.0部
・マスターバッチ−2 100.0部
【0087】
(比較例4)
実施例2における、ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−2を、ナノシ
リカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−10(後述の配合比を参照のこと)に変更した以外は、実施例2と同じとし、比較例4の熱転写受像シート用ベース基材を得た。
【0088】
また、厚さ15μの無機中空粒子を含むポリオレフィン層に対する、ナノシリカ中空粒子の充填率を透過型電子顕微鏡により確認したところ、60vol%であった。
【0089】
<ナノシリカ中空粒子を含む低密度ポリエチレン樹脂−10>
・マスターバッチ−2 100.0部
【0090】
(比較例5)
実施例1において、背面樹脂層の樹脂を、低密度ポリエチレン樹脂(スミカセンL718−H 密度0.918g/cm3 住友化学製)に変更した以外は実施例1と同じとし、比較例5の熱転写受像シート用ベース基材を得た。
【0091】
≪熱転写受像シートの作製≫
実施例及び比較実施例で作製した熱転写用受像シート用ベース基材の発泡フィルムの紙側とは反対側の表面に、下引き層塗布液を、乾燥後の厚みが4μmとなるように塗布、乾燥することで、下引き層を形成した。
【0092】
更にその下引き層の上に、染料受容層塗布液を、乾燥後の厚みが3μmとなるように塗布、乾燥することで、染料受容層を形成し、実施例1〜6、比較例1〜5の熱転写受像シートを得た。
【0093】
<下引き層塗布液>
・ポリエステル樹脂 13.1部
・酸化チタン(粒径0.2μm) 26.2部
・水/イソプロピルアルコール〔IPA〕(質量比2/1) 60. 0部
【0094】
<受像層塗布液>
・塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 19.5部
・アミノ変性シリコーンオイル 0.50部
・トルエン 40.0部
・メチルエチルケトン 40.0部
【0095】
≪熱転写記録媒体の作製≫
基材として、4.5μmの片面易接着処理付きポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その非易接着処理面に下記組成の耐熱滑性層塗布液を、乾燥後の塗布量が1.0g/m2となるように塗布、乾燥し、耐熱滑性層付き基材を得た。次に、耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下記組成の熱転写層塗布液を、乾燥後の塗布量が1.0g/m2となるように塗布、乾燥して熱転写層を形成し、熱転写記録媒体を得た。
【0096】
<耐熱滑性層塗布液>
・シリコーン系アクリルグラフトポリマー 50.0部
・(東亜合成(株)US−350)
・メチルエチルケトン 50.0部
【0097】
<熱転写層塗布液>
・C.I.ソルベントブルー36 2.5部
・C.I.ソルベントブルー63 2.5部
・ポリビニルアセタール樹脂 5.0部
・トルエン 45.0部
・メチルエチルケトン 45.0部
【0098】
<印画評価>
実施例1〜6、比較例1〜5から作製した熱転写受像シートおよび熱転写記録媒体を使用し、解像度が300×300DPIの、評価用サーマルプリンタにて風景画の印画を行い、画質の評価を行った。
画質の評価は、以下の基準で実施した。
◎:熱転写受像シート表面に凹凸がなく、画質に優れている。
○:熱転写受像シート表面の凹凸が見えるが、画像にムラがなく、実用上問題がない。
×:熱転写受像シート表面の凹凸が目立ち、画像にムラが発生し、実用上問題がある。
【0099】
実施例1〜6、比較例1〜5から作製した熱転写受像シートおよび熱転写記録媒体を使用し、解像度が300×300DPIの、評価用サーマルプリンタにてKGサイズの黒ベタ画像の印画を行い、曲げ試験及びカール評価を行った。
【0100】
<曲げ試験>
曲げ試験では、印画物の長辺の両端を掴み、中央部の凹む部分を基準として、受像面側に60mm曲げた後、背面樹脂層側に60mm曲げる操作を50回繰り返した。
次に、曲げ操作行った印画物の断面を電子顕微鏡により観察を行い、無機中空粒子を含むポリオレフィン層の曲げに対する耐久性を評価した。
曲げ試験評価は、以下の判断基準により行った。
○:層クラックがなく、中空粒子の隙間がポリオレフィン樹脂で満たされている。
×:層にクラック或いは、無機中空粒子の滑落がみられる。
【0101】
<印画後カール>
印画後カール量の測定では、印画物を平板に置いたとき、受容層面側凹カールを−(マイナス)とし、受容層面凸カールを+(プラス)とし、印画物四隅のカール量の平均値をカール量とした。
印画後カール評価は、以下の判断基準により行った。
○:−5mm以上5mm以下
×:−5mm以下
【表1】
【0102】
実施例1〜6の結果より、空隙率40%以上、無機中空粒子を、充填率15〜55vol%含む無機中空粒子を含むポリオレフィン層を設け、背面樹脂層には、無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂よりも、密度の高いポリオレフィン樹脂を用いることで、高感度、高画質であり、鮮明な画像が形成できかつ、印画時の熱によるカールの少ない受像シートを作成することができた。また、無機中空粒子が500nm以下ではより良い本発明の効果が確認できた。
【0103】
これに対し、比較例1、比較例2では、無機中空粒子の空隙率が40%より低い37vol%であるため、断熱性の低下から低階調側の発色が弱く画質が悪い熱転写受像シートとなった。
【0104】
比較例2、比較例4では、無機中空粒子の添加量が多く、無機中空粒子を含むポリオレフィン層の膜の剛性が低下した結果、曲げ試験においてクラックが発生する熱転写受像シートとなった。
【0105】
比較例5では、背面樹脂のポリオレフィン樹脂の密度が低く、剛性が弱いため、印画後に−7mmカールする受像シートとなった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明に基づき得られる熱転写受像シート用ベース基材は、熱転写受像シートとして昇華
転写方式のプリンタに使用することができ、プリンタの高速・高機能化と併せて、各種画像を簡便にフルカラーで形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書などのカード類、アミューズメント用出力物等に広く利用できる。
【符号の説明】
【0107】
101:熱転写受像シート用ベース基材
102:背面樹脂層
103:パルプを主成分とする紙の層
104:無機中空粒子を含むポリオレフィン樹脂層
104a:無機中空粒子充填領域層
104b:無機中空粒子非充填領域層
105:発泡フィルム層
301:シリカナノ中空粒子
301a:中空部分
301b:シリカ殻
302:コア粒子(炭酸カルシウム)
303:シリカ
304:溶融孔を有するシリカナノ中空粒子
図1
図2
図3