特許第6601103号(P6601103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6601103
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】計量キャップ及び容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/26 20060101AFI20191028BHJP
【FI】
   B65D41/26
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-193832(P2015-193832)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-65736(P2017-65736A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄貴
【審査官】 佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−016258(JP,U)
【文献】 特開2007−029212(JP,A)
【文献】 特開2005−206633(JP,A)
【文献】 実開平01−170640(JP,U)
【文献】 特開2012−111868(JP,A)
【文献】 特開2006−214848(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0191174(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/142675(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0079281(US,A1)
【文献】 登録実用新案第3141949(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/26
B65D 41/56
B65D 51/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性液状物が充填される容器本体の口部に着脱自在に装着され、該口部から取り外された倒立状の姿勢において、上側の開口部から注ぎ込まれる前記容器本体の透明性液状物を計量するための計量表示部を内壁面に備えたキャップであって、
前記計量表示部が、前記倒立状のキャップ底面から開口部に向かう高さ方向に沿って、2以上の異なる形態の画像がインターレース状に並べられたレンチキュラー画像及びレンチキュラーレンズを有するレンチキュラー部より構成され、
前記レンチキュラー部の各画像及びレンチキュラーレンズは、前記高さ方向であるレンチキュラー部の長さ方向に対して垂直な方向である幅方向に延びるように設けられており、
前記注ぎ込まれる透明性液状物の液面より下の液体層と、液面より上の空気層との屈折率の違いにより、該液面を境に上下異なる形態の画像が表示され
前記透明性液状物が、水よりも臨界ミセル濃度の高い液体である計量キャップ。
【請求項2】
前記レンチキュラー部のレンチキュラーレンズのピッチが60〜125Lpi(Line per inch)である請求項1記載の計量キャップ。
【請求項3】
レンチキュラー画像が2形態の画像で構成される請求項1又は2記載の計量キャップ。
【請求項4】
前記計量表示部が、所定の幅を有する前記レンチキュラー部よりなり、該計量表示部をキャップ周方向に等間隔をおいて3つ以上設けてなる請求項1〜3の何れか1項に記載の計量キャップ。
【請求項5】
前記計量表示部の表示面が、前記キャップの中心軸の延びる方向に対し、20°以下の範囲内で開口側である上側に傾斜している請求項1〜4の何れか1項に記載の計量キャップ。
【請求項6】
前記キャップの内壁面に、少なくとも前記計量表示部の領域を避けて断続的に螺旋状に延設され、前記口部に形成されたネジ溝部に係合する突条部を有する請求項1〜5の何れか1項に記載の計量キャップ。
【請求項7】
前記計量表示部の前記突条部が存在しない高さ位置の領域を、前記突条部が存在する高さ位置の領域に比べて幅広に形成してなる請求項6記載の計量キャップ。
【請求項8】
口部を有し、透明性液状物が充填される容器本体と、前記口部に着脱自在に装着される請求項1〜7の何れか1項に記載の計量用キャップと、を備えることを特徴とする容器。
【請求項9】
前記透明性液状物が、界面活性剤10重量%以以下、及び/又はアルコール20重量%以下含むものである請求項8記載の容器。
【請求項10】
前記透明性液状物が、液状化粧品、液状医薬部外品又は液状医薬品である請求項8又は9記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は計量キャップ及び容器に関し、より詳しくは、透明性液状物が充填される容器本体の口部に着脱自在に装着され、透明性液状物をほぼ正確にかつ容易に計量できるキャップ及び該キャップを備える容器に関する。
【背景技術】
【0002】
洗口液等の液状化粧品や液状医薬部外品、うがい薬、シロップ剤等の液状医薬品、洗濯用、家庭用、住宅、家具用の各洗剤等の液状物の多くは、樹脂材料等からなるボトル状容器に充填された形態で市場に流通している。該容器は、液状物が充填され、液状物の注ぎ口となる口部を有する容器本体と、容器本体の口部に装着され、液状物を計量する目安になる目盛や文字記号が内側側面に設けられたキャップとからなる。そして、キャップを容器本体の口部から取り外し、倒立状にしてその内部に液状物を注ぎ込むことにより、液状物を計量するように構成されている。
【0003】
洗濯用洗剤等の光による品質劣化が少ない液状物を充填する容器のキャップは主に透明材料からなり、目盛と液面との一致をキャップの横方向から比較的容易に視認することができる。しかし、液状化粧品、液状医薬部外品、液状医薬品等は、光による品質劣化を防止する観点から、多くの場合不透明材料からなるキャップを備えた容器に充填されているため、計量時にはキャップ開口部から液面を確認することになり、目盛や文字記号と液面との一致を視認しづらい場合がある。特に、不透明材料からなるキャップで透明性液状物を計量する場合は、液面の位置の視認が難しい。
【0004】
また、液状物の中でも液状化粧品、液状医薬部外品、液状医薬品等は、口に含んだり、飲み込んだり又は肌に塗布したりするものであることから、市場では無色又はごく薄く着色された透明性液状物の形態が好まれる傾向にあり、これらの液状物を不透明化又は濃色化することにより視認性の向上を図ることは望まれていない。また、これらの液状物は、1回当りの用量が定められているので、各種洗剤等よりも正確な計量が必要になる。このため、透明性液状物を正確かつ容易に計量できる計量キャップが要望されている。
【0005】
特許文献1は、貫通穴である表示用窓が側壁に設けられた内筒体及び該内筒体の外壁面に接するように設けられかつ該内筒体とは異なる色に着色された外筒体からなる計量筒体と、該計量筒体を取り囲んで一体成形されたキャップ本体とからなり、内筒体の表示用窓から見える外筒体の内壁面が内筒体とは異色であることを利用して、液状物を計量するように構成した計量キャップを開示している。しかしながら、キャップの内壁面に異なる色領域を設けても、透明性液状物の液面の視認性はあまり向上しない。
【0006】
特許文献2は、透明性筒体である側壁と、該筒体の下端に嵌合される底壁と、側壁の内壁面に沿って底壁の底面から突出する有色の断面視段差状スケール板とからなり、該スケール板の各段の頂面と液面とが一致するまで液状物を注ぎ込むことにより、計量を行なうように構成した計量キャップを開示している。しかしながら、該計量キャップでは、スケール板全体を着色しかつスケール板を側壁の内側側面に沿って設けていること等から、内部の着色面積が多くなり過ぎ、注ぎ込んだ透明性液状物が着色されたように見えることがないので、液面の視認性は向上しない。
【0007】
一方、レンチキュラーレンズの利用方法としては、例えば、透明性前壁を有し、その内部に液体が充填されたケースと、表面にストライプ状の絵柄が形成され、ケース内の液体中を浮遊する遊泳体と、ケースの透明性前壁に貼り付けられたレンチキュラーレンズと、を備え、レンチキュラーレンズを通して遊泳体の絵柄の変化を見て楽しむように構成した玩具が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−113253号公報
【特許文献2】特開2007−091304号公報(請求項1及び請求項5)
【特許文献3】特開2011−200506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び特許文献2は、キャップの内部構造と、キャップ内壁面の着色と、を組み合わせることにより、液面の視認性を向上させようとする計量キャップを開示するのみである。また、特許文献3は、浮遊物表面のストライプ状絵柄がレンチキュラーレンズにより変化して見えるのを楽しむ玩具を開示するのみであり、液量を計量するための目印としてレンチキュラーレンズを用いる技術思想を開示するものではない。このように、レンチキュラーレンズは、従来から、見る角度による絵柄の変化を楽しむものとして周知であり、例えば、食玩などに用いられてきたが、これを液体計量の目印として用いた例はない。
【0010】
本発明の目的は、キャップの内壁面と透明性液状物の液面との境界において、該液面を容易に視認でき、所定液量をほぼ正確にかつ容易に計量できる計量キャップ及び該計量キャップを備えた容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、キャップ内壁面に、2以上の異なる画像がインターレース状に並べられたレンチキュラー画像と、該レンチキュラー画像の表面に形成されたレンチキュラーレンズと、を有するレンチキュラー部からなる計量表示部を設けることにより、液状物を注ぎ込む際に発生する画像変化を利用して、所定液量をほぼ正確にかつ容易に計量できる計量キャップが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(7)の計量キャップ及び下記(8)〜(11)の容器を提供する。
【0013】
(1)透明性液状物が充填される容器本体の口部に着脱自在に装着され、該口部から取り外された倒立状の姿勢において、上側の開口部から注ぎ込まれる容器本体の透明性液状物を計量するための計量表示部を内壁面に備えたキャップであって、計量表示部が、倒立状のキャップ底面から開口部に向かう高さ方向に沿って、2以上の異なる形態の画像がインターレース状に並べられたレンチキュラー画像及びレンチキュラーレンズを有するレンチキュラー部より構成され、注ぎ込まれる透明性液状物の液面より下の液体層と、液面より上の空気層との屈折率の違いにより、該液面を境に上下異なる形態の画像が表示される計量キャップ。
【0014】
上記(1)の計量キャップによれば、計量表示部として、倒立状のキャップ底面から開口部に向かう高さ方向に沿って、2以上の異なる形態の画像がインターレース状に並べられたレンチキュラー画像及びレンチキュラーレンズを有するレンチキュラー部を設けることにより、計量キャップと目との位置関係や、レンチキュラー部に対する視線の角度を調整するのではなく(より具体的には視線を殆ど移動させることなく)、透明性液状物をキャップ内に注ぎ込むことで、液面下(液体層)の屈折率と液面よりも上方の空気中(空気層)での屈折率との違いを利用して、液面を境にしてその上下で異なる画像を視認できるので、液面の位置の視認性を顕著に向上させることができる。そして、透明性液状物を注ぎ込むと、最初に視認したときとは異なる画像が液体層中に現われ、計量キャップ内壁面を上昇しながら拡大して行くので、液面の上昇を良好に視認することができる。また、レンチキュラー部を計量キャップの底壁に対して略垂直な方向に立てて用いるので、液面を境界とした部分的な画像変化を起こすことができ、液面の位置の確認が非常に容易である。このため、上記(1)の計量キャップを用いることにより、所定液量をほぼ正確にかつ容易に計量することができる。
【0015】
なお、本明細書において、異なる形態の画像とは、色違い、模様違い、絵柄の有無、これらの組み合わせなどにより一部又は全部が異なる画像を意味する。
【0016】
(2)レンチキュラー部のレンチキュラーレンズのピッチが60〜125Lpi(Line per inch)である上記(1)の計量キャップ。
【0017】
上記(2)の計量キャップによれば、レンチキュラー部におけるレンチキュラーレンズのピッチを60〜125Lpiの範囲とすることにより、レンチキュラー部に対する視線の角度が5°〜65°の範囲で変動しても、液面を境にした、元の画像から異なる画像への変化を安定して視認することができる。
【0018】
(3)レンチキュラー画像が2形態の画像で構成される、上記(1)又は(2)の計量キャップ。
【0019】
上記(3)の計量キャップによれば、レンチキュラー画像を2形態の画像で構成することにより、レンチキュラー画像の変化を安定的に確認できる視線の角度の範囲を拡げることができるので、使用者の違いや見る角度の違いなどによる画像変化の視認不良の発生を防止することができる。
【0020】
(4)計量表示部が、所定の幅を有するレンチキュラー部よりなり、該計量表示部をキャップ周方向に等間隔をおいて3つ以上設けてなる、上記(1)〜(3)の何れかの計量キャップ。
【0021】
上記(4)の計量キャップによれば、計量表示部が等間隔で3つ以上設けられているので、計量キャップを持つ方向に関係なく、常にいずれかの計量表示部を視認することができる。
【0022】
(5)計量表示部の表示面が、キャップの中心軸の延びる方向に対し、20°以下の範囲内で開口側である上側に傾斜している、上記(1)〜(4)の何れかの計量キャップ。
【0023】
上記(5)の計量キャップによれば、計量表示部(レンチキュラー部)における液面を境界とした画像変化をより一層明確に視認することができる。特に、計量キャップ内底面の近傍領域の計量表示部では、液面のキャップ内における高さが高まるほど、角度によっては元の画像が現われる現象が生じる場合があるが、上記(5)の構成とすることにより、そのような現象を防止することができ、液面を境界とした画像変化の視認性を顕著に向上させることができる。
【0024】
(6)キャップの内壁面に、少なくとも計量表示部の領域を避けて断続的に螺旋状に延設され、口部に形成されたネジ溝部に係合する突条部を有する、上記(1)〜(5)の何れかの計量キャップ。
【0025】
上記(6)の計量キャップによれば、計量表示部による液面の視認機能を損なうことなく、容器本体への脱着機能を計量キャップに付与することができる。
【0026】
(7)計量表示部の突条部が存在しない高さ位置の領域を、突条部が存在する高さ位置の領域に比べて幅広に形成してなる、上記(6)の計量キャップ。
【0027】
上記(7)の計量キャップによれば、後述するように互いに離隔する複数の突条片からなる突条部において、隣り合う突条片の間隔(断続幅)を拡げることなく、ひいては計量キャップの容器に対する密閉性を損なうことなく、計量表示部による液面の視認機能を一層高めることができる。
【0028】
(8)口部を有し、透明性液状物が充填される容器本体と、口部に着脱自在に装着される上記(1)〜(7)の何れかの計量用キャップと、を備えることを特徴とする容器。
【0029】
上記(8)の容器によれば、上記(1)〜(7)のいずれかの計量キャップを備えているので、透明性液状物の所定量を容易にかつほぼ正確に計量できる。
【0030】
(9)透明性液状物が、水よりも臨界ミセル濃度の高い液体である、上記(8)の容器。
【0031】
上記(9)の容器よれば、透明性液状物を計量キャップ内に注ぐとき、液状物と計量表示部(レンチキュラー部)との境界の、隣り合うレンチキュラーレンズの間の溝による波立ちが抑制され、該境界が凸凹の少ないほぼ線状となるため、計量表示部(レンチキュラー部)の画像変化を非常に視認し易くなる。
【0032】
(10)透明性液状物が、界面活性剤10重量%以下、及び/又はアルコール20重量%以下含むものである、上記(8)又は(9)の容器。
【0033】
上記(10)の容器によれば、透明性液状物を計量キャップ内に注ぐとき、液状物の表面張力を低下させ、液状物の液面と計量キャップ内壁面との境界を波立たせない効果が大きくなり、該境界が液状物の注ぎ込みに伴って段差や凸凹の少ない線状となって円滑に上昇するので、計量表示部(レンチキュラー部)の画像変化をより一層視認し易くなると共に、計量表示部の所定位置に達したところで液状物の注ぎ込みを止め易くなる。
【0034】
(11)透明性液状物が、液状化粧品、液状医薬部外品又は液状医薬品である、上記(8)〜(10)の何れかの容器。
【0035】
上記(11)の容器によれば、該容器に充填される透明性液状物として、1回当りの用量が定められている、洗口液、うがい薬等の液状化粧品や液状医薬部外品、シロップ剤等の液状医薬品を用いることにより、該透明性液状物の効果を無駄なく発揮させることができると共に、用量を超える使用を抑制することができる。なお、例えば洗口液には、液状化粧品に分類されるものと、液状医薬部外品に分類されるものとがある。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、透明性液状物をほぼ正確にかつ容易に計量できる計量キャップ及び該キャップを備えた容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の第1実施形態の計量キャップの構成を模式的に示す斜視図である。
図2】レンチキュラー部の構成を拡大して模式的に示す図面である。
図3】レンチキュラー部の画像変化の具体例を示す平面図である。
図4】レンチキュラー部の画像変化の別の具体例を示す平面図である。
図5】本発明の第2実施形態の計量キャップの構成を模式的に示す斜視図である。
図6】本発明の第3実施形態の計量キャップの構成を模式的に示す斜視図である。
図7】本発明の第4実施形態の計量キャップの構成を模式的に示す斜視図である。
図8】本発明の第5実施形態の計量キャップの構成を模式的に示す斜視図である。
図9図1に示す計量キャップ内に水を注ぎ込んだときの液面の状態を示す模式図である。
図10】試験例で用いた試料の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、本発明の第1実施形態である計量キャップ1の構成を模式的に示す斜視図である。図1において、(a)は計量キャップ1の外観形状を示す斜視図、(b)は計量キャップ1に透明性液状物(以下単に「液状物」と呼ぶことがある)を注ぎ込んだ状態を示す斜視図である。以下、倒立状の姿勢に基づいて、計量キャップ1を説明する。
【0039】
計量キャップ1(以下単に「キャップ1」と呼ぶことがある)は倒立状の姿勢にあり、開口部10を有する有底円筒状の外形を有し、開口部10を臨む内側の底面20を有する底壁11と、底壁11の周縁から立ち上がる側壁12と、側壁12の内壁面23に設けられた計量表示部13と、内壁面23の周方向に断続的に設けられた突条部14と、シールリング15と、を備える。
【0040】
キャップ1は、透明性液状物が充填された容器本体(不図示)の注ぎ口である口部(不図示)に着脱自在に装着(外嵌固定)され、該口部から取り外して倒立状にし、透明性液状物を注ぎ込むことで、所定液量を計量する機能を有している。キャップ1の外形は有底円筒状に限定されず、例えば、有底多角形状等の任意の形状とすることができる。キャップ1及び口部を有する容器本体を構成する材料は透明性材料でも不透明性材料でも良いが、透明性液状物の光による劣化等を抑制する観点から、樹脂材料等を主成分とする不透明性材料であることが好ましい。
【0041】
底壁11の平面形状は本実施形態では略円形であるが、これに限定されず、例えば、三角形、四角形、六角形、八角形等の多角形でも良い。
【0042】
側壁12の外壁面22には、キャップ1の底面20から開口部10に向かう高さ方向(以下単に「キャップ1の高さ方向」と呼ぶことがある)に沿ってほぼ平行に延びる複数の底浅及び幅狭の溝22aが周方向に密に形成され、キャップ1を口部から着脱するときのキャップ1の回転を容易にしている。本実施形態に限定されず、外壁面22に周方向に延びる複数の溝又は凸部を形成してもよく、また、外壁面22を平滑な面としてもよい。一方、側壁12の内壁面23には、計量表示部13が設けられている。内壁面23の計量表示部13以外の領域の色は計量表示部13における液面上下での画像変化を明確に視認できる色であれば特に限定されず、同色でも2種以上の異なる色でもよいが、計量表示部13における画像変化をより確実に視認し、液面の視認性ひいては計量性を向上させる観点から、本実施形態では同色に構成されている。この色は特に限定されないが、例えば、概ね白色とすることが好ましい。
【0043】
本明細書において、概ね白色とは、純白色だけでなく、淡黄白色、薄く肌色味を帯びた白色、薄く黒味を帯びた白色、薄く赤味を帯びた白色、薄く緑色味を帯びた白色、薄く青味を帯びた白色等の、純白色に他の色が薄く混じった白色をも含む。別の言い方をすれば、概ね白色とは、少なくとも新聞紙(白色度55)よりも白色度の高い色であり、好ましくは白色度60を超える色、より好ましくは白色度70を超える色である。
【0044】
なお、本実施形態では、底壁11と側壁12との境界領域は、内側及び外側共になだらかな曲面に構成しているが、これに限定されず、例えば、底壁11と側壁12とが直交するように構成してもよい。
【0045】
計量表示部13は、キャップ1の高さ方向に沿って、2つの異なる形態の画像がインターレース状に並べられたレンチキュラー画像部と、レンチキュラー画像部の表面に形成された複数のレンチキュラーレンズからなるレンチキュラーレンズ部と、を有するレンチキュラー部16から構成される。レンチキュラー部16は、内壁面23において、シールリング15の上端とほぼ同じ高さ位置から、突条部14における周方向に隣り合う2つの突条片14aの断続幅を通って、開口端部10a近傍に達するように配置されている。
【0046】
次に、図2に基づいて、レンチキュラー部16をさらに詳しく説明する。図2は、レンチキュラー部16の構成を拡大して模式的に示す図面であり、(a)は側面図、(b)は斜視図である。図2に示すレンチキュラー部16は、レンチキュラー画像部30と、レンチキュラー画像部30の表面に形成されたレンチキュラーレンズ部32と、を有する。
【0047】
レンチキュラー画像部30は、レンチキュラー部16の長さ方向に繰返し並べられた複数の帯状の単位画像31からなり、各単位画像31は、レンチキュラー部16の幅方向にほぼ平行に延びる3種の異なる帯状の部分画像31a、31b、31cをレンチキュラー部16の長さ方向(又は高さ方向)に沿ってインターレース状に並べた画像である。部分画像31a、31b、31cは、レンチキュラー部16の幅方向においてはほぼ同寸である。単位画像31における部分画像の数や色、幅、延びる方向などを適宜選択することにより、色違い、模様違い、絵柄の有無、これらの組み合わせなどを表現でき、レンチキュラー部16において異なる形態の2種以上の画像を表示できる。レンチキュラー画像部30により表示される画像数は2以上であれば特に限定されないが、キャップ1に液状物を注ぎ込んだときの画像変化の視認性の観点から、2又は3であることが好ましい。なお、本明細書では、この画像数を面付け数と呼ぶことがある。
【0048】
また、本実施形態では、部分画像31a、31b、31cの幅は略同じであるが、所望の画像変化を得るために、適宜変更することができる。また、本実施形態では、単位画像31及び部分画像31a、31b、31cはレンチキュラー部16の長さ方向(又は高さ方向)に対して垂直な方向に延びるように設けられているが、垂直な方向だけでなく、斜めに傾けてもよい。
【0049】
レンチキュラーレンズ部32は、レンチキュラー画像部30の表面に設けられ、レンチキュラー部16の幅方向に延びる断面視凸状(好ましくはカマボコ状)の複数のレンチキュラーレンズ33からなる。より具体的には、レンチキュラーレンズ部32は、レンチキュラー画像部30の表面において、複数のレンチキュラーレンズ33がレンチキュラー部16の長さ方向に並べられたものであり、1つのレンチキュラーレンズ33が1つの単位画像31を覆うように構成されている。
【0050】
レンチキュラーレンズ33のピッチ(幅)は特に限定されず、例えば、30Lpi〜200Lpi(Line per inch)の範囲から適宜選択できるが、レンチキュラー部16の画像変化を明確に視認できる視野角の範囲を拡げる観点から、好ましくは60Lpi〜125Lpi、より好ましくは60Lpi〜120Lpi、さらに好ましくは70Lpi〜100Lpiの範囲である。レンチキュラーレンズ33のピッチが前記範囲内であることにより(特にピッチを60Lpi〜120Lpiの範囲としかつ面付け数を2面とすることにより)、レンチキュラー部16に対する視野角(視線の角度)が5°〜65°という非常に広い範囲でレンチキュラー部16の画像変化を明確に視認できる。その結果、キャップ1を持つ位置や、キャップ1を見る角度などが使用者によって異なっても、画像変化を容易に視認することができる。
【0051】
また、レンチキュラーレンズ33の厚み(最大厚み)0.1〜2mm程度の範囲から適宜選択できるが、画像変化を容易に視認するという観点から、好ましくは0.2mm〜1.5mm、より好ましくは0.3mm〜0.5mmである。ここで、レンチキュラーレンズ33の最大厚みとは、レンチキュラーレンズ33の幅方向略中央部の厚みである。
【0052】
レンチキュラー部16は、従来からレンチキュラーシートとして良く知られ、それ自体を縦横斜めに適宜傾けて視線の角度を調整することにより、画像変化を楽しむように構成されていたものである。これに対して、本発明では、視線の角度を大きく変化させることなく、液状物が充填された液面下(液体層)の屈折率と、液面より上の空気(空気層)の屈折率とが異なることを利用して、レンチキュラー部16の液体層中に存在する画像及び/又は空気層中に存在する画像を変化させ、この変化を計量目印の一部として用いることにより、液面の視認性を向上させ、計量性を向上させるものである。
【0053】
本実施形態のレンチキュラー部16は、図1(a)に示すように、液状物17を注ぎ込まない状態では、略方形の薄い着色領域と略方形の白色領域とが縦横に交互に格子状に配置され、長さ方向における相対的に上部の所定領域の幅方向中央に位置する白色領域に配置された着色数字「20」と、該白色領域の幅方向両端から着色領域内を幅方向に延びる着色計量線と、を有する一の計量目印、及び、長さ方向における相対的に下部の所定領域の幅方向中央に位置する白色領域に配置された着色数字「10」と、該白色領域の幅方向両端から着色領域内を幅方向に延びる着色計量線と、を有する他の計量目印、計2つの計量目印が描かれている。このキャップ1に液状物17を注ぎ込んでいくと、図1(b)に示すように、白色領域が消失し、計量線が白色に変化することにより、液面17a(より具体的には液面17aと内壁面23との境界)の位置が視認し易くなり、計量が容易になる。
【0054】
なお、全ての使用者がキャップ1を見る角度は一様ではなく、使用者によってキャップ1を見る角度が異なることが一般的である。従って、多くの使用者が、図1(a)から図1(b)への画像変化が生じるような角度でキャップ1を見る場合でも、一部の使用者は、上記の画像変化とは異なる画像変化、すなわち図1(b)から図1(a)への画像変化が生じるような角度でキャップ1を見る場合がある。しかし、いずれの画像変化でも、液面下の液体層と液面より上の空気層とでは見える画像が明確に異なることから、液面及び液面移動の視認性が顕著に向上し、ほぼ正確な計量が可能になる点では同じである。本発明のように、レンチキュラーシートを利用したレンチキュラー部16を用いて計量を行なう全ての場合において、使用者により上記いずれかの画像変化を視認し、計量に利用できる。
【0055】
レンチキュラー部16は、本実施形態では、内壁面23におけるシールリング15の上端とほぼ同じ高さ位置から、突条部14における周方向に互いに離隔して隣り合う2つの突条片14aの断続幅を通って、開口端部10a近傍に達する領域に、レンチキュラー部16の立体形状に対応する凹部18を形成し、該凹部18に装着されている。レンチキュラー部16の凹部18への固定には、例えば、接着、嵌合、熱融着などの手段が用いられる。なお、レンチキュラー部16の下端は、底面20近傍まで延びていてもよく、それにより、液面を境界とした画像変化の視認性がさらに向上する場合もある。また、レンチキュラー部16の表面と内壁面23とが略面一になるように構成すれば、キャップ1を容器の口部に装着したときの密閉性、気密性などが高まるので好ましい。
【0056】
図3は、キャップ1への液状物の注ぎ込みによるレンチキュラー部16の画像変化の具体例を示す平面図である。図3において、紙面の上下方向における上に位置する図面は液状物を注ぎ込んでいないときの画像(以下「上画像」とする)を示し、下に位置する図面は液状物を上端まで注ぎ込んだときの画像(以下「下画像」とする)を示す。なお、図3に示す画像変化は代表的な例であり、水を注ぎ込んだ場合に、使用者によっては下画像から上画像への画像変化を視認する場合もある。図3において色は不図示とする。
【0057】
図3(a)の上画像には、紙面の幅方向中央から右端に向けて3本の歯ブラシが幅方向に並び、かつ長さ方向の所定位置に、数字と、数字の幅方向端部から幅方向に延びる計量線と、を有する2つの計量目印が描かれている。一方、下画像には、計量目印はそのままであるが、3本の歯ブラシに代えて液状物が充填されるボトルが描かれている。液状物のキャップ1への注ぎ込み量が増加するにつれて、3本の歯ブラシからボトルへの画像変化が、開口部10に向けて上昇して行くので、液面の位置が視認し易くなり、計量目印による計量が容易になる。
【0058】
図3(b)の上画像には、長さ方向の所定の位置に、白地の長方形枠と、該枠内に配置された着色数字と、該枠の両端から幅方向に延びる計量線と、を有する2つの計量目印、及び所定の間隔を空けて長さ方向に略平行に延びる複数の線が描かれている。一方、下画像には、計量線が着色されている以外は上画像と同じ計量目印、及び、所定の間隔を空けて幅方向に延びる複数の線が描かれている。液状物のキャップ1への注ぎ込み量が増加するにつれて、長さ方向に延びる線が消えて幅方向に延びる線が出現すると共に、計量線が着色されていることにより、液面の位置が視認し易くなり、計量目印による計量が容易になる。
【0059】
図3(c)の上画像には、方形の赤色領域と方形の白色領域とが縦横に交互に格子状に配列され、長さ方向の所定位置における幅方向中央の赤色領域に配置された白色数字と、白色数字が配置された赤色領域の両端から白色領域を幅方向に延びる着色された計量線と、を有する2つの計量目印が描かれている。下画像には、上画像の赤色領域に対応する位置に白色画像が、また、白色領域に対応する位置に青色領域が配置され、かつ数字が着色されている以外は上画像と同じ計量目印が描かれている。計量キャップ1に液状物を注ぎ込んでいくと、赤色領域が消え、青色領域が現われることにより液面の位置が視認し易くなり、さらに計量目印の数字が着色して現われることにより、計量目印による計量が容易になる。
【0060】
図3(d)の上画像には、青地面における長さ方向の所定位置の幅方向中央部に方形の白色領域が形成され、該白色領域内に配置される着色数字と、該白色領域の両端から幅方向に延びる白色線である計量線と、有する2つの計量マークが描かれている。下画像では、方形の赤色領域と方形の白色領域とが縦横に交互に格子状に配置され、計量線が着色されている以外は上画像と同じ計量目印が描かれている。キャップ1に液状物を注ぎ込むにつれて、青色が消えて赤色領域と白色領域との格子模様が現れ、さらに計量線が着色されて現われることにより、液面を視認し易くなり、計量目印による計量が容易になる。
【0061】
図4は、キャップ1への液状物の注ぎ込みによるレンチキュラー部16の画像変化の別の具体例を示す平面図である。図4において、紙面の上下方向における上に位置する図面は液状物を注ぎ込んでいないときの画像(以下「上画像」とする)を示し、下に位置する図面は液状物を上端まで注ぎ込んだときの画像(以下「下画像」とする)を示す。なお、図4に示す画像変化は代表的な例であり、水を注ぎ込んだ場合に、使用者によっては下画像から上画像への画像変化を視認する場合もある。図4では色は不図示とする。
【0062】
図4(a)の上画像には、長さ方向の所定位置の幅方向中央に方形の白色領域が赤地画面の中に配置され。該白色領域内に位置する着色数字と、該白色領域の両端から幅方向に延びる白色線と、を有する2つの計量マークが描かれている。下画像には、赤地画面が青地画面に代わる以外は、上画像と同じ計量マークが描かれている。キャップ1に液状物を注ぎ込むにつれて、画面の色が赤から青に変化することにより、液面を視認し易くなり、計量目印による計量が容易になる。
【0063】
図4(b)の上画像には、雲の全体的な輪郭と、1艇のヨットが描かれ、及び長さ方向の所定位置において幅方向に延びる計量線を有する複数の計量目印が描かれている。さらに、上方の計量線には空を飛ぶ飛行機の機影が重ねて描き込まれている。下画像には、左端部の長さ方向下部から右端部の長さ方向上部に部分円弧状に延びる虹、長さ方向下部において水面に浮かぶ複数艇のヨット、虹と複数のヨットとの間に部分的に拡がる雲、及び上画像と同じ計量線が描き込まれている。キャップ1に液状物を注ぎ込むにつれて、画面に複数艇のヨットが現れ、さらに虹が現れることにより、液面の上昇を視認し易くなり、計量目印による計量が容易になる。
【0064】
図4(c)の上画像には、略菱形の赤色領域と、略菱形の白色領域とが縦横に交互に格子状に配置され、長さ方向の所定位置の幅方向中央の白色領域に配置される着色数字と、着色数字が配置された白色領域の幅方向両端から幅方向に延びる計量線と、を有する計量目印が描かれている。下画像には、略菱形の赤色領域が略菱形の青色領域に代わる以外は、上画像と同じ画像が描かれている。キャップ1に液状物を注ぎ込むにつれて、赤色領域が消えて青色領域が現れることにより、液面を視認し易くなり、計量目印による計量が容易になる。
【0065】
図4(d)の上画像には、長さ方向の下端から上端に延び、頂角が鋭角である三角形状の赤色領域が幅方向に複数並んで配置され、長さ方向の所定位置における幅方向中央の2つの赤色領域の間に配置された着色数字と、着色数字の幅方向両端近傍から幅方向に延びる計量線と、を有する2つの計量目印が描かれている。下画像には、赤色領域が青色領域に代わる以外は、上画像と同じ画像が描かれている。キャップ1に液状物を注ぎ込むにつれて、赤色領域が消えて青色領域が現れることにより、液面を視認し易くなり、計量目印による計量が容易になる。また、本実施形態では、現われる青色領域の幅が徐々に狭くなることによっても、液面の移動を確認できるので、液面の視認性がさらに向上する。
【0066】
なお、レンチキュラー部16において、少なくとも液面を境に異なる画像が表示されれば液面を視認できるので、その上下の画像がすべて同じである必要はない。また、キャップ1に液状物を注ぎ込んでいくと、レンチキュラー部16の特性上、液面の上下で画像変化が起こると共に、底面20に近い領域のみが元の画像に戻る場合がある。このような場合でも、液面の上下での画像変化を確認できれば、特に問題なく使用できる。ただし、液面を境に上下それぞれの全範囲が同じ画像であることが好ましい。
【0067】
以下、図1に示すキャップ1全体の説明に戻る。
突条部14は、計量表示部13を避けて、内壁面23の周方向に螺旋状に断続的に連設された複数の突条片14aからなり、複数の突条片14aが容器本体の口部の外周に設けられたネジ構造と螺合することにより、キャップ1を容器本体の口部に装着させる。
【0068】
シールリング15は、底面20からキャップ1の中心芯(不図示)を中心にして開口部10に向けて円環状に立ち上がり、キャップ1を容器本体の口部に装着するときに該口部の周囲に当接してこれを密閉し、液漏れ、特に容器本体を傾けたときの液漏れ等を防止する。
【0069】

キャップ1の寸法は、容器本体に設定される液状物の充填量、容器本体や口部の寸法等に応じて適宜選択されるので、限定はされないが、その一例を示せば、直径が20〜50mm程度、好ましくは25〜35mm程度であり、高さが2〜5cm程度、好ましくは2.5〜4.5cm程度である。これにより、例えば、10〜40ml程度の液状物を容易に計量できる。なお、寸法を大きくして、より多量の液状物を計量できるように構成してもよい。
【0070】
図5は、本発明の第2実施形態のキャップ2の構成を模式的に示す斜視図である。図5において、キャップ1との共通部分については図1と同一の参照符号を付し、説明を省略する。キャップ2は、側壁12の内壁面23に、シールリング15を介して対向する2つの計量表示部13が周方向に略等間隔で設けられ、各計量表示部13がレンチキュラー部16で構成されていることを特徴とする。このように構成することにより、使用者がキャップ2を手に取ったときに、計量表示部13に対する視線の角度調整が容易になり、キャップ2の使い勝手が向上する。
【0071】
2つのレンチキュラー部16は、液状物の注ぎ込みにより同じ画像変化を起こすものでもよく、異なる画像変化を起こすものでもよい。レンチキュラー部16の数は1又は2に限定されず、3以上としてもよい。3以上のレンチキュラー部16を設ける場合、これらは周方向に略等間隔で配置することが好ましい。3以上のレンチキュラー部16を周方向に略等間隔で設けることにより、キャップ2を手に取ったときにいずれかのレンチキュラー部16の全体が視界内に入ってくるので、キャップ2を持ちかえたり、キャップ2を回転させたりする必要がなくなる。
【0072】
図6は、本発明の第3実施形態のキャップ3の構成を模式的に示す斜視図である。(a)は液状物を注ぎ込んでいない状態を示し、(b)は液状物を注ぎ込んだ状態を示す。図6において、キャップ1との共通部分には図1と同一の参照符号を付して説明を省略する。キャップ3は、側壁12周方向の所定箇所に所定幅を有して設けられた段差部24と、段差部24の内壁面23側に、段差部24に沿うように配置されたレンチキュラー部16から構成された計量表示部19と、を有することを特徴とし、それ以外は、キャップ1と同じ構成を有している。
【0073】
段差部24は、内壁面23において互いに離隔して周方向に隣り合うように設けられた2つの突条片14aの断続幅と略同じ幅を有し、側壁12におけるシールリング15の上端と略同じ高さ位置から開口端部10aまで延びるように設けられ、キャップ3の中心軸の延びる方向に対して所定の角度を有して傾斜している。また、段差部24は、側壁12の外壁面22の側では凸部25となり、かつ内壁面23の側では凹部26となる。従って、凸部25の表面及び凹部26の底面も、キャップ3の中心軸の延びる方向に対して所定の角度で傾斜している。段差部24の傾斜角は特に限定されないが、好ましくは20°以下、より好ましくは10〜20°の範囲である。なお、凸部25は、キャップ3を容器本体の口部に着脱する際に、キャップ3の回転を補助する機能をも有している。
【0074】
なお、本実施形態では、凸部25及び凹部26の両方がほぼ平行に傾斜するように構成しているが、段差部24を、下端側領域を肉厚にし、上側に行くほど厚みが薄くなる断面視テーパ状に形成し、側壁12の外壁面22の側では外壁面22と略面一になるか又は外壁面22に対して僅かに突出し、凹部26の底面のみがキャップ3の中心軸が延びる方向に対して傾斜するように構成してもよい。
【0075】
レンチキュラー部16は、段差部24の内壁面23側における凹部26の底面に配置され、計量表示部19を構成する。レンチキュラー部16は、例えば、接着、嵌合、熱融着などの手段により、該底面に固定される。該底面に配置されたレンチキュラー部16は、段差部24と同じ20°以下の傾斜角を有している。すなわち、本実施形態の計量表示部19では、レンチキュラー部16が開口部10側である上側に傾斜している。
【0076】
このように構成することにより、計量表示部19(レンチキュラー部16)における液面を境界とした画像変化をより一層明確に視認することができる。特に、計量キャップ3の底面20に近い側のレンチキュラー部16では、液面のキャップ3内における高さが高まるほど、視線の角度によっては変化する前の元の画像が現われる現象が生じる場合がある。しかし、本実施形態のように、レンチキュラー部16が傾斜するように配置することにより、そのような現象の発生を極力少なくし、液面を境界とした画像変化の視認性を顕著に向上させることができる。
【0077】
本実施形態において、段差部24ひいてはレンチキュラー部16は、一定角度で傾斜することが好ましいが、これに限定されず、例えば、曲線状に傾斜させてもよく(例えば、下側をより大きく傾斜させる等)、傾斜角を開口端部10aまでの途中部で1回又は複数回変更してもよい。
【0078】
図7は、本発明の第4実施形態のキャップ4の構成を模式的に示す斜視図である。キャップ4は、キャップ3における段差部24及び計量表示部19が側壁12の4箇所に設けられていることを特徴とし、それ以外はキャップ3と同じ構成である。それぞれ4つの段差部24及び計量表示部19は、キャップ4の周方向において略等間隔に設けられ、それぞれ2つずつが互いに対向している。このように構成すれば、液面の上下での画像変化がより鮮明になり、計量性が一層向上すると共に、口部からキャップ4を取り外したときに、キャップ4の持ち方や、キャップ4に対する視線の角度を変更しなくても、計量表示部19の全体が視野内に入ってくるので、その取扱い性が顕著に向上する。すなわち、キャップ4は、キャップ2、3の好ましい特性を併せ持つものである。
【0079】
図8は、本発明の第5実施形態のキャップ5の構成を模式的に示す斜視図である。図8において、図1との共通部分には同じ参照符号を付して説明を省略する。計量キャップ5は、計量表示部13aがレンチキュラー部16aから構成されていることを特徴とする。レンチキュラー部16aは、底面20から開口端部10aに向かう方向において、幅の異なる2つの領域を有していることを特徴とする。より具体的には、レンチキュラー部16aにおいて、複数の突条片14aから構成される突条部14よりも上方(突条部14が存在しない高さ位置)の領域が、突条部14も含めたそれより下方の領域(すなわち突条部14が存在する領域)よりも幅広になっている。
【0080】
キャップ5によれば、隣り合う突条片14aの断続幅を拡げることなく、計量表示部13aの表示面積を大きくすることができるので、キャップ5の容器口部を密閉する機能と、液状物を注ぎ込んだときの液面を明確に視認し、ほぼ正確な液量を計量する機能とを、高い水準で両立させることができる。なお、突条片14aの断続幅が拡がると、キャップ5の突条片14aと容器本体の口部に形成されたねじ山との引っ掛かりを設計で意図した通りに行なうのが難しくなり、キャップ5が正しくボトルに装着されず、密閉が不十分になるという問題が生じる場合がある。
【0081】
本発明の別の実施形態である容器は、透明性液状物をキャップに注ぎ込むための口部を
有する液状物充填用の容器本体と、該口部に着脱自在に装着されるキャップとを備え、キャップが上記した本発明の計量キャップであることを特徴とする。
【0082】
本発明の容器に充填される液状物としては、透明性であれば特に限定されないが、臨界ミセル濃度(CMC)が水よりも高い透明性液状物が好ましく、界面活性剤濃度が10重量%以下及び/又はアルコール濃度が20重量%以下である透明性液状物がより好ましい。界面活性剤濃度はより好ましくは0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.01〜5重量%である。また、アルコール濃度は、より好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは1〜20重量%である。本発明のキャップにおけるレンチキュラー部は、表面に複数の凸状(好ましくはカマボコ状)のレンチキュラーレンズを並べて配置したものであり、レンチキュラーレンズ間の溝が多数存在するものであることから、液状物の表面張力の影響を受けて、レンチキュラーレンズと液面との境界に段差などの乱れが発生し易い。
【0083】
図9は、キャップ1内に水を注ぎ込んだときの液面とレンチキュラー部16表面との境界の状態を示す模式図である。水は比較的高い表面張力を有することから、水の液面とレンチキュラー部16の表面とが接触した場合に、水の液面が段差などを形成して乱れやすいため、正確な計量が困難になる場合がある。キャップ1に水を注ぎ込むと、図9(a)では一方の端部において液面に段差が発生し、図9(b)ではその段差が大きくなって他方の端部に向けて移動し、図9(c)では他方の端部付近で段差が大きくなった後、図9(d)では液面の段差がなくなるものの、水平線に一致するようにはなり難い。したがって、水を正確に計量しようとすると、液面が静まるまで時間を要し、短時間で正確な計量を行なうことができない。
【0084】
これに対し、水よりも臨界ミセル濃度の高い透明性液状物は、液面の乱れが少なく、液面が直ぐに水平線に一致して上昇して行くので、短時間で正確な計量を行なうことができる。透明性液状物の臨界ミセル濃度を高めるためには、例えば、透明性液状物に界面活性剤やアルコールなどの添加物を添加する方法が挙げられる。従って、界面活性剤濃度を10重量%以下及び/又はアルコール濃度を20重量%以下とすることにより、透明性液状物の臨界ミセル濃度がさらに高まり、表面張力がさらに低下するので、透明性液状物の計量をさらに簡便に実施することができる。
【0085】
本発明の容器に充填可能な透明性液状物としては特に限定されず、例えば、洗口液、うがい薬等の液状化粧品や液状医薬部外品、シロップ剤等の液状医薬品、液状農薬、洗濯用、家庭用、家具・建物用の各洗剤等が挙げられるが、液状化粧品、液状医薬部外品、液状医薬品等が好ましい。これらは、界面活性剤やアルコールを含むものが多く、表面張力が低くなっているので、レンチキュラー部を計量目印とする本発明のキャッブを用いた計量に適している。
【0086】
本発明の容器は、透明性材料及び不透明性材料のいずれから構成してもよいが、不透明性材料で構成することが好ましい。不透明性材料から構成することにより、変質等を伴うことなく、耐光性が十分ではない透明性液状物を長期間にわたって安定的に保存できるようになる。
【0087】
(試験例)
支持台と、支持台に対して垂直に立ち上がった白色壁とを有する器具(図10には不図示)を用意した。
また、レンチキュラーレンズ(下記表1では単に「レンズ」とする)のピッチ及び厚み、並びにレンチキュラー画像部(下記表1では単に「画像」とする)の面付け数(下記表1では「面付」とする)が異なる9種の同寸のレンチキュラー部を、前記器具の白色壁に図10に示すように貼付け、試料を作製した。この試料を上部が開口した直方体状透明プラスチック製容器内に入れ、透明性液状物を注ぎ込み、試料の正面から30cmの間隔を空けて、試料への視線の角度を水平に対して0°〜70°の範囲で5°刻みに変化させながら。液面下の液体層及び液面よりも上の空気層の画像を観察し、下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0088】
[評価基準]
A:一方の画像のみを視認できる。
B:他方の画像のみを視認できる。
X:残像のため、複数の画像が重なって見える。一方の画像が他方の画像より見え易い場合と、他方の画像が一方の画像よりも見え易い場合とがある。
【0089】
【表1】
【0090】
表1において、空気層及び液体層のそれぞれの画像が、A及びB又はB及びAである場合、液状物の注ぎ込みによる画像変化を明確に視認できることを意味している。表1から、9種のレンチキュラー部について液状物の注ぎ込みによる画像変化を視認できることが判るが、特に、レンズピッチが60〜100Lpi、レンズ厚みが0.38〜0.44mm、及び面付け数2である場合に、広い視野角で画像変化を明確に視認できることが判る。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0092】
1、2、3、4、5 計量キャップ
10 開口部
10a 開口端部
11 底壁
12 側壁
13、13a、19 計量表示部
14 突条部
14a 突条片
15 シールリング
16、16a レンチキュラー部
17 液状物
17a 液面
18 凹部
20 底面
22 外壁面
22a 溝
23 内壁面
24 段差部
25 凸部
26 凹部
30 レンチキュラー画像部
31 単位画像
31a、31b、31c 部分画像
32 レンチキュラーレンズ部
33 レンチキュラーレンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10