(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6601133
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】間接活線工事用コッター
(51)【国際特許分類】
H01B 17/38 20060101AFI20191028BHJP
H01B 17/06 20060101ALI20191028BHJP
F16B 21/16 20060101ALI20191028BHJP
F16B 21/04 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
H01B17/38
H01B17/06 B
F16B21/16 Z
F16B21/04 B
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-202190(P2015-202190)
(22)【出願日】2015年10月13日
(65)【公開番号】特開2017-76477(P2017-76477A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】森山 裕之
【審査官】
北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−19013(JP,A)
【文献】
実開平02−078809(JP,U)
【文献】
特開昭62−62012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 17/38
F16B 21/04
F16B 21/16
H01B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、二山クレビス形の第1支持部に貫通した第1貫通穴を有する一方の耐張碍子と、一山クレビス形の第2支持部に貫通した第2貫通穴を有する他方の耐張碍子を揺動自在に連結するための間接活線工事用コッターであって、
前記第1貫通穴及び前記第2貫通穴に挿通自在な円柱状の第1軸部、及び、前記第1軸部の基端部に形成し、前記第1軸部の外径より大きい外径を形成した第1鍔部を有する第1コッター本体と、
前記第1軸部に嵌合自在な内周を形成し、一対の開閉する把持腕を先端部に有する長尺の絶縁操作棒を用いて、外周を把持自在な抜け止め用の第1リング部材と、を備え、
前記第1軸部は、その軸中心を貫通する第1抜け止め穴を前記第1鍔部と反対側に有し、
前記第1リング部材は、
内部に収容し、先端部が前記第1リング部材の内周から出没自在な一つ以上の円柱状の第1ピンと、
前記第1ピンの先端部が前記第1リング部材の内周から突出する力を前記第1ピンに付勢する第1付勢部材と、を有し、
前記第1ピンの先端部が前記第1抜け止め穴に没入した状態では、前記第1コッター本体に対して前記第1リング部材の移動を規制している、間接活線工事用コッター。
【請求項2】
前記第1リング部材は、複数の前記第1ピンを等間隔に配置している、請求項1記載の間接活線工事用コッター。
【請求項3】
前記第1ピンは、その先端部を半球状に形成している、請求項1又は2記載の間接活線工事用コッター。
【請求項4】
少なくとも、二山クレビス形の第1支持部に貫通した第1貫通穴を有する一方の耐張碍子と、一山クレビス形の第2支持部に貫通した第2貫通穴を有する他方の耐張碍子を揺動自在に連結するため間接活線工事用コッターであって、
前記第1貫通穴及び前記第2貫通穴に挿通自在な円柱状の第2軸部、及び、前記第2軸部の基端部に形成し、前記第2軸部の外径より大きい外径を形成した第2鍔部を有する第2コッター本体と、
前記第2軸部に嵌合自在な内周を形成し、一対の開閉する把持腕を先端部に有する長尺の絶縁操作棒を用いて、外周を把持自在な抜け止め用の第2リング部材と、を備え、
前記第2軸部は、
前記第2鍔部と反対側に形成し、軸中心を貫通する第2抜け止め穴と、
前記第2鍔部と前記第2抜け止め穴の間に配置され、相反する向きに前記第2軸部の外周から突出した一対のロックピンと、を有し、
前記第2リング部材は、
内部に収容し、先端部が前記第2リング部材の内周から出没自在な一つ以上の円柱状の第2ピンと、
前記第2ピンの先端部が前記第2リング部材の内周から突出する力を前記第2ピンに付勢する第2付勢部材と、
前記ロックピンを導入自在に、前記第2リング部材の端面から切り欠いたL字状の係合溝と、を有し、
前記ロックピンを前記係合溝の終端に導入した状態では、前記第2ピンの先端部が前記第2抜け止め穴に没入し、前記第2コッター本体に対して前記第2リング部材の移動を規制している、間接活線工事用コッター。
【請求項5】
一つ以上の前記第2ピンは、先端部が前記第2抜け止め穴の両端部に嵌合する一対の第2ピンで構成している、請求項4記載の間接活線工事用コッター。
【請求項6】
前記第2ピンは、その先端部を半球状に形成している、請求項4又は5記載の間接活線工事用コッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接活線工事用コッターに関する。特に、絶縁操作棒を用いて、無停電状態で電気工事を実施する間接活線工事に適した間接活線工事用コッターであって、耐張碍子のクレビス形支持部などに取り付けできる間接活線工事用コッターの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
架空配電線を電柱に架設する場合には、いわゆる、引通し装柱と引留め装柱の二通りの装柱方法があることが知られている。一般に、引通し装柱は、電柱に支持された腕金に固定された碍子の溝部に架空配電線が当接され、碍子及び架空配電線にバインド線を巻回して、架空配電線を電柱に支持している。一方、引留め装柱は、架空配電線を挟持する引留クランプに連結した耐張碍子を電柱に支持した腕金に取り付けて、架空配電線を電柱に支持している。
【0003】
図15は、引留め装柱による装柱の一例を示す正面図である。
図15を参照すると、電柱Pには、その上部に腕金Aを水平状態で固定している。腕金Aの両側には、一組の耐張碍子7・7を配置している。一組の耐張碍子7・7は、揺動自在に互いに連結している。一方の耐張碍子7は、一組のねじりストラップSt・Stを介して、腕金Aに連結している。他方の耐張碍子7は、引留クランプCiを揺動自在に連結している。
【0004】
図15を参照すると、引留クランプCiは、絶縁カバーで覆われている。引留クランプCiは、その内部で架空配電線(以下、電線という)Wを挟持している。このように、引留め装柱は、電線Wを挟持する引留クランプCiに連結した耐張碍子7を電柱Pに支持した腕金Aに取り付けて、電線Wを電柱Pに支持している。一対の引留クランプCi・Ciの間には、張力を要することなく電線Wを架設している。電柱Pを迂回する電線Wの部位は、例えば、縁線Weと呼ばれている。
【0005】
図16は、
図15の部分拡大図であり、引留クランプから絶縁カバーを外した状態図である。
図17は、
図16の部分拡大図であり、
図17(A)は、引留クランプの正面図、
図17(B)は、
図17(A)のB矢視図である。
【0006】
又、
図18は、耐張碍子の構成を示す図であり、
図18(A)は、一部を断面で示した耐張碍子の正面図、
図18(B)は、耐張碍子の右側面図である。
図19は、従来技術によるコッターの構成を示す斜視図である。
図20は、従来技術によるセルフロック形の割ピンの構成を示す図であり、
図20(A)は、セルフロック形の割ピンの正面図、
図20(B)は、
図20(A)のA−A矢視断面図である。
【0007】
図18を参照すると、耐張碍子7は、磁器で形成された筒状の本体70を備えている。又、耐張碍子7は、二山クレビス形の第1支持部71と、一山クレビス形の第2支持部72を備えている。第1支持部71は、本体70の一端部側に突出している。第2支持部72は、本体70の他端部側に突出している。第1支持部71は、第1貫通穴71hを端部に貫通している。第2支持部72は、第2貫通穴72hを端部に貫通している。
【0008】
図16又は
図18を参照して、第1貫通穴71hと、第2貫通穴72hを一致させて、円柱状のコッター7cを挿入することにより、コッター7cを中心として一組の耐張碍子7・7を揺動自在に互いに連結できる。
【0009】
又、
図16又は
図18を参照して、ねじりストラップStの端部に設けた開口と第1貫通穴71hを一致させて、コッター7cを挿入することにより、コッター7cを中心として、一組のねじりストラップSt・Stと一方の耐張碍子7を揺動自在に連結できる。
【0010】
図16又は
図18を参照して、引留クランプCiの端部に設けた開口と第2貫通穴72hを一致させて、コッター7cを挿入することにより、コッター7cを中心として、他方の耐張碍子7と引留クランプCiを揺動自在に連結できる。
【0011】
図17を参照すると、引留クランプCiは、クランプ本体C1、三角体状のくさび体C2、及び押え金具C3で構成している。クランプ本体C1は、くさび体C2とスライド可能に連結している。又、クランプ本体C1は、耐張碍子7と揺動自在に連結できる円環部Caを一端部に有し、受け部Cbを他端部に有している。受け部Cbには、電線Wの被覆が部分的に剥離された剥離部Wiと共に、くさび体C2の端部が押し込まれている。
【0012】
図17を参照すると、くさび体C2の斜面には、剥離部Wiの外周を受ける円弧状の溝が形成されている。そして、くさび体C2と押え金具C3とがボルトで締結され、電線Wの剥離部Wiを挟持(クランプ)している。
【0013】
図19を参照すると、従来技術によるコッター7cは、円柱状の軸部71cと鍔部72cで構成している。軸部71cは、鍔部72cと反対側に孔7chを開口している。一組の耐張碍子7・7をコッター7cで連結後に(
図16参照)、割ピン71pを孔7chに挿入することで、コッター7cの脱落を防止できる。更に、割ピン71pを孔7chに挿入後に、割ピン71pの先端部を拡げることで、割ピン71pの脱落を防止できる。
【0014】
図19に示した割ピン71pは、松葉形と呼ばれる黄銅製の割ピンである。黄銅製の割ピン71pは、先端部の変形が容易である。一方、
図20に示した割ピン72pは、セルフロック形と呼ばれるステンレス鋼製の割ピンである。
図20を参照して、割ピン72pをコッター7cの孔7chに強制的に挿入すると、割ピン72pの先端部が弾性復帰して、割ピン72pをコッター7cにロックできる。セルフロック形の割ピン72pは、操作性に優れている。
【0015】
図16又は
図17を参照して、耐張碍子7をコッター7cで連結する、又は、耐張碍子7からコッター7cを引き抜くなどの配電工事は、一般に、無停電状態で実施している。無停電状態で配電工事する、いわゆる活線工事には、直接活線工法と間接活線工法の二通りがあることが知られている。
【0016】
絶縁手袋などを用いる直接活線工法は、作業性に優れているが、高圧電線を取り扱う活線工事には、作業員の安全確保の観点から、長尺の絶縁操作棒を用いる間接活線工法に移行している。
【0017】
図15を参照して、耐張碍子7を交換する場合には、
図16に示すように、電線Wを腕金A側に引き寄せて、コッター7cへの負荷を解除する必要がある。このような電線の引き寄せには、ストレインロッドと呼ばれる間接活線工事用の張線器を使用している。
【0018】
図21は、電線を引き寄せるための張線器の一例による構成を示す正面図である。
図22は、張線器の使用状態を示す正面図である。
図21又は
図22を参照すると、張線器8は、内部に空洞を有する円筒状の本体81と伸縮ロッド82で構成している。伸縮ロッド82は、本体81に対して、その軸方向に移動自在に連結している。
【0019】
図21又は
図22を参照して、本体81は、送りねじ(図示せず)を内部に配置している。一方、伸縮ロッド82は、前記送りねじと螺合したナット部材(図示せず)を内部に配置している。
【0020】
又、
図21又は
図22を参照すると、本体81は、円筒状のジョイント金具83を一端部側に備えている。ジョイント金具83には、間接活線工事用の共用操作棒(図示せず)の先端部と連結できる。共用操作棒の先端部とジョイント金具83を連結し、共用操作棒を軸回りに回転すると、本体81の内部に配置された歯車装置(図示せず)を介して、ジョイント金具83の回転運動を前記送りねじに伝動できる。そして、本体81に対して、伸縮ロッド82をその軸方向に移動できる。
【0021】
図21又は
図22を参照すると、本体81は、カムラ―と呼ばれる掴持器84を一端部に連結している。掴持器84は、複数のリンク部材で構成している。掴持器84には、電線Wをその外周方向から導入できる。掴持器84の下端側に設けた操作レバー841を引っ張ると、掴持器84は、電線Wをその外周方向から掴持できる(
図22参照)。
【0022】
図21又は
図22を参照すると、本体81は、電線支持部85を中間部に設けている。電線支持部85は、U字状に開口している。
図22に示すように、電線支持部85は、電線Wを上部から導入できる。電線支持部85の上部に設けた図示しない開閉部材で、電線支持部85の開口を閉じることで、電線支持部85は、電線Wを遊動自在に支持できる。
【0023】
図21又は
図22を参照すると、伸縮ロッド82は、フック部材86を他端部に連結している。フック部材86は、リング部材86rを設けている。リング部材86rは、一対の開閉腕を先端部に有する絶縁操作棒(いわゆる、絶縁ヤットコ)で把持できる。図示しない前記絶縁操作棒を用いて、フック部材86を上方に移動できる。
【0024】
次に、
図22を参照して、張線器8の使用方法を説明する。なお、
図22に示した装柱例では、縁線Weがピン碍子7pに支持されている点が
図15及び
図16と異なっているが、その他の構成は同じである。
【0025】
最初に、
図22を参照して、ねじりストラップStに隣接配置した環状のロープRにフック部材86を係留する。そして、フック部材86を先頭に、張線器8が垂れ下がった状態で、フック部材86側を防護シートPsで防護する。フック部材86が充電部に接触して、地絡することを防止するためである。同様に、縁線We及び引留クランプCiにも、それらの充電部が露出しないように、防護シートPsで防護する。
【0026】
次に、
図22を参照して、ジョイント金具83に共用操作棒(図示せず)を連結し、共用操作棒を操作して、張線器8の一端部側を電線Wに向かって持ち上げる。次に、電線支持部85の内部に電線Wを導入した後に、掴持器84を電線Wに取り付ける。次に、共用操作棒をその軸回りに一方の方向に回転すると、伸縮ロッド82を本体81に向かって移動でき、相対的に、電線Wを腕金Aに向かって引き寄せることができる。そして、
図16に示したように、コッター7cへの負荷を解除できる。
【0027】
以上の準備が整った後に、ラジオペンチ状のアダプタ(図示せず)を一対の開閉腕に連結した絶縁操作棒を用いて、コッター7cから割ピン71pを引き抜く(
図19参照)。
【0028】
次に、
図18(B)又は
図19を参照して、タイスティックハンマー(図示せず)で鍔部72cと反対側からコッター7cを叩き、鍔部72cを突出させる。この場合、タイスティックハンマー(図示せず)は、共用操作棒の先端部に接続されている。次に、ラジオペンチ状のアダプタ(図示せず)を用いて、耐張碍子7からコッター7cを引き抜く。これらの一連の工事を経て、耐張碍子7を交換できる。
【0029】
以上説明した、従来技術によるコッター又は従来技術による割ピンを絶縁操作棒で把持して、耐張碍子にコッターを装着する作業、又はコッターから割ピンを取り外す作業が容易でないという不具合があった。特に、耐張碍子にコッターを着脱するときに、割ピンを落下させ易いという不具合があった。
【0030】
上述した不具合を解消するため、割ピンの脱落が困難であり、間接活線工法で着脱が容易な間接活線工事用コッターが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】実公平7−49057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
図23は、従来技術による間接活線工事用コッターに備わるコッター本体の構成を示す斜視図であり、一部を断面で示している。
図24は、従来技術による間接活線工事用コッターに備わる中子部材の構成を示す斜視図である。
図25は、従来技術による間接活線工事用コッターに備わる板ばね部材の構成を示す斜視図である。
【0033】
図26は、従来技術による間接活線工事用コッターの構成を示す斜視図であり、一部を断面で示している。
図27は、従来技術による間接活線工事用コッターの構成を示す縦断面図である。
【0034】
図28は、従来技術による間接活線工事用コッターの構成を示す縦断面図であり、コッター本体に対して中子部材を内部に押し込んだ状態図である。
図29は、従来技術による間接活線工事用コッターの使用例を示す斜視図である。
【0035】
なお、本願の
図23から
図27は、特許文献1の
図1から
図5に相当している。又、本願の
図28と
図29は、特許文献1の
図6と
図7に相当している。
【0036】
図23から
図27を参照すると、従来技術による間接活線工事用コッター(以下、コッターと略称する)6は、内部が中空の円筒状のコッター本体61、円柱状の中子部材62、及び、抜け止め用の板ばね部材63を備えている。
【0037】
図23又は
図26及び
図27を参照すると、コッター本体61は、円筒部61aと鍔部61bで構成している。円筒部61aは、一対の矩形の窓61w・61wを相反する向きに開口している。鍔部61bは、その内径及び外径を円筒部61aの内径及び外径より大きく形成している。
【0038】
図24又は
図26及び
図27を参照すると、中子部材62は、平板状の突部62a、円柱状の軸部62b、及び、円盤状の頭部62cを備えている。突部62aは、後述する板ばね部材63の連結部63aを先端部621に係合できる(
図25参照)。軸部62bは、円筒部61aの内部をスライド自在に移動できる。頭部62cは、その外径が軸部62bの外径より大きくなっている。又、頭部62cは、その外径が鍔部61bの内径より小さくなっている。
【0039】
図25から
図27を参照すると、板ばね部材63は、ばね性を有する金属板を成形している。そして、板ばね部材63は、C字状に形成した連結部63aと、相反する向きに向かう一対の突出部63b・63bを有している(
図25参照)。一対の突出部63b・63bは、連結部63aから開角するように上り傾斜する傾斜面631を形成している。又、一対の突出部63b・63bは、それらの頂き部から互いに向かい合うように延出する延出部632を有している。
【0040】
図29を参照して、例えば、腕金Aに連結した一組のねじりストラップSt・Stと耐張碍子7を連結する場合には、最初に、ねじりストラップStの端部に設けた開口と第1貫通穴71hを一致させて(
図18参照)、コッター本体61を挿入する。
【0041】
次に、
図27を参照して、板ばね部材63を中子部材62の先端部に取り付けた状態で、板ばね部材63を先頭にして、中子部材62をコッター本体61の鍔部61b側から挿入する。そして、一対の突出部63b・63bの頂き部がコッター本体61の内壁をスライドし、突出部63bが窓61wに到達すると、一対の突出部63b・63bがこれらの窓61w・61wから突出する(
図25又は
図27参照)。これにより、コッター6を抜け止めできる。
【0042】
一方、
図27に示した状態から、コッター6を引き抜く場合には、
図27に示した状態から、中子部材62をコッター本体61の奥側に更に押し込む。そして、特許文献1によるコッター6は、突出部63bの傾斜面631が窓61wの縁にスライドして、一対の突出部63b・63bの頂き部がコッター本体61の外壁から引っ込むことで、コッター6を引き抜くことができる、としている。
【0043】
図23から
図27を参照すると、特許文献1によるコッター6は、耐張碍子に着脱するときに、割ピンに相当する板ばね部材63を落下させる心配がないという利点がある。しかし、特許文献1によるコッター6は、間接活線工事用の先端工具を用いて、中子部材62を操作することが容易でないという問題がある。
【0044】
割ピンを使用することなく、少なくとも一組の耐張碍子からコッターを抜け止めでき、かつ、間接活線工事用の絶縁操作棒を用いて、操作が容易な間接活線工事用コッターが求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0045】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、割ピンを使用することなく、少なくとも一組の耐張碍子からコッターを抜け止めでき、かつ、間接活線工事用の絶縁操作棒を用いて、操作が容易な間接活線工事用コッターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0046】
本発明者は、コッター本体の軸部に鍔部と反対側に貫通した抜け止め穴を設け、内周から先端部が出没自在なピンを内在したリング部材を軸部に嵌合し、ピンが抜け止め穴に没入することで、少なくとも一組の耐張碍子からコッター本体を抜け止めできると考え、これに基づいて、以下のような新たな間接活線工事用コッターを発明するに至った。
【0047】
(1)本発明による間接活線工事用コッターは、少なくとも、二山クレビス形の第1支持部に貫通した第1貫通穴を有する一方の耐張碍子と、一山クレビス形の第2支持部に貫通した第2貫通穴を有する他方の耐張碍子を揺動自在に連結するための間接活線工事用コッターであって、前記第1貫通穴及び前記第2貫通穴に挿通自在な円柱状の第1軸部、及び、前記第1軸部の基端部に形成し、前記第1軸部の外径より大きい外径を形成した第1鍔部を有する第1コッター本体と、前記第1軸部に嵌合自在な内周を形成し、一対の開閉する把持腕を先端部に有する長尺の絶縁操作棒を用いて、外周を把持自在な抜け止め用の第1リング部材と、を備え、前記第1軸部は、その軸中心を貫通する第1抜け止め穴を前記第1鍔部と反対側に有し、前記第1リング部材は、内部に収容し、先端部が前記第1リング部材の内周から出没自在な一つ以上の円柱状の第1ピンと、前記第1ピンの先端部が前記第1リング部材の内周から突出する力を前記第1ピンに付勢する第1付勢部材と、を有し、前記第1ピンの先端部が前記第1抜け止め穴に没入した状態では、前記第1コッター本体に対して前記第1リング部材の移動を規制している。
【0048】
(2)前記第1リング部材は、複数の前記第1ピンを等間隔に配置していることが好ましい。
【0049】
(3)前記第1ピンは、その先端部を半球状に形成していることが好ましい。
【0050】
(4)本発明による間接活線工事用コッターは、少なくとも、二山クレビス形の第1支持部に貫通した第1貫通穴を有する一方の耐張碍子と、一山クレビス形の第2支持部に貫通した第2貫通穴を有する他方の耐張碍子を揺動自在に連結するため間接活線工事用コッターであって、前記第1貫通穴及び前記第2貫通穴に挿通自在な円柱状の第2軸部、及び、前記第2軸部の基端部に形成し、前記第2軸部の外径より大きい外径を形成した第2鍔部を有する第2コッター本体と、前記第2軸部に嵌合自在な内周を形成し、一対の開閉する把持腕を先端部に有する長尺の絶縁操作棒を用いて、外周を把持自在な抜け止め用の第2リング部材と、を備え、前記第2軸部は、前記第2鍔部と反対側に形成し、軸中心を貫通する第2抜け止め穴と、前記第2鍔部と前記第2抜け止め穴の間に配置され、相反する向きに前記第2軸部の外周から突出した一対のロックピンと、を有し、前記第2リング部材は、内部に収容し、先端部が前記第2リング部材の内周から出没自在な一つ以上の円柱状の第2ピンと、前記第2ピンの先端部が前記第2リング部材の内周から突出する力を前記第2ピンに付勢する第2付勢部材と、前記ロックピンを導入自在に、前記第2リング部材の端面から切り欠いたL字状の係合溝と、を有し、前記ロックピンを前記係合溝の終端に導入した状態では、前記第2ピンの先端部が前記第2抜け止め穴に没入し、前記第2コッター本体に対して前記第2リング部材の移動を規制している。
【0051】
(5)一つ以上の前記第2ピンは、先端部が前記第2抜け止め穴の両端部に嵌合する一対の第2ピンで構成していることが好ましい。
【0052】
(6)前記第2ピンは、その先端部を半球状に形成していることが好ましい。
【発明の効果】
【0053】
本発明による間接活線工事用コッターは、割ピンを用いることなく、間接活線工事用の絶縁操作棒を用いて、抜け止め用のリング部材をコッター本体の軸部に嵌合することで、容易に抜け止めできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明の第1実施形態による間接活線工事用コッターの構成を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態による間接活線工事用コッターに備わる第1リング部材の構成を示す斜視分解組立図である。
【
図3】第1実施形態による間接活線工事用コッターに備わるリテーナの構成を示す図であり、
図3(A)は、リテーナの正面図、
図3(B)は、リテーナの側面図、
図3(C)は、リテーナの背面図である。
【
図4】第1実施形態による間接活線工事用コッターに備わる内輪の構成を示す図であり、
図4(A)は、内輪の正面図、
図4(B)は、内輪の側面図、
図4(C)は、
図4(A)のA−A矢視断面図である。
【
図5】第1実施形態による間接活線工事用コッターに備わる第1リング部材の構成を示す図であり、
図5(A)は、第1リング部材の正面図、
図5(B)は、第1リング部材の縦断面図である。
【
図6】第1実施形態による間接活線工事用コッターの構成を示す正面図であり、第1リング部材を第1コッター本体の第1軸部に係止した状態図である。
【
図7】本発明の第2実施形態による間接活線工事用コッターの構成を示す斜視図である。
【
図8】第2実施形態による間接活線工事用コッターに備わる第2リング部材の構成を示す斜視分解組立図である。
【
図9】第2実施形態による間接活線工事用コッターの構成を示す図であり、
図9(A)は、第2軸部に備わるロックピンが第2リング部材に形成した係合溝に導入される直前の状態を示す正面図、
図9(B)は、
図9(A)のA−A矢視断面図、
図9(C)は、
図9(A)の右側面図である。
【
図10】第2実施形態による間接活線工事用コッターの構成を示す正面図であり、第2軸部に備わるロックピンが第2リング部材に形成した係合溝の終端に導入された状態図である。
【
図11】第2実施形態による間接活線工事用コッターの構成を示す正面図であり、第2リング部材を第2コッター本体の第2軸部に係止した状態図である。
【
図12】本発明に係る絶縁操作棒の一例による構成を示す正面図である。
【
図15】引留め装柱による装柱の一例を示す正面図である。
【
図16】
図15の部分拡大図であり、引留クランプから絶縁カバーを外した状態図である。
【
図18】耐張碍子の構成を示す図であり、
図18(A)は、一部を断面で示した耐張碍子の正面図、
図18(B)は、耐張碍子の右側面図である。
【
図19】従来技術によるコッターの構成を示す斜視図である。
【
図20】従来技術によるセルフロック形の割ピンの構成を示す図であり、
図20(A)は、セルフロック形の割ピンの正面図、
図20(B)は、
図20(A)のA−A矢視断面図である。
【
図21】電線を引き寄せるための張線器の一例による構成を示す正面図である。
【
図23】従来技術による間接活線工事用コッターに備わるコッター本体の構成を示す斜視図であり、一部を断面で示している。
【
図24】従来技術による間接活線工事用コッターに備わる中子部材の構成を示す斜視図である。
【
図25】従来技術による間接活線工事用コッターに備わる板ばね部材の構成を示す斜視図である。
【
図26】従来技術による間接活線工事用コッターの構成を示す斜視図であり、一部を断面で示している。
【
図27】従来技術による間接活線工事用コッターの構成を示す縦断面図である。
【
図28】従来技術による間接活線工事用コッターの構成を示す縦断面図であり、コッター本体に対して中子部材を内部に押し込んだ状態図である。
【
図29】従来技術による間接活線工事用コッターの使用例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0056】
(絶縁操作棒の構成)
最初に、本発明の実施形態による間接活線工事用コッターの構成を説明する前に、間接活線工事用コッターを操作するための絶縁操作棒の一例による構成を説明する。
【0057】
図12は、本発明に係る絶縁操作棒の一例による構成を示す正面図である。
図13は、
図12の要部を拡大した正面図である。
図14は、
図13の左側面図である。
【0058】
図12から
図14を参照すると、絶縁操作棒5は、長尺の操作棒51と把持工具52で構成している。又、絶縁操作棒5は、作動棒53を備えている。把持工具52は、操作棒51の先端部に取り付けている。
【0059】
図12又は
図13を参照すると、把持工具52は、開閉する一対の湾曲した把持腕5a・5bで構成している。そして、一方の把持腕5aは、基端部が固定された固定腕であり、他方の把持腕5bは、一方の把持腕5aの基端部に設けた回動軸5cを中心に回動する可動腕となっている。
【0060】
図12を参照すると、作動棒53は、操作棒51に沿って保持されている。作動棒53の先端部は、他方の把持腕5bに回動自在に連結している。そして、作動棒53の基端部に設けた操作レバー54を操作すると、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bを開閉できる。絶縁操作棒5は、操作棒51及び作動棒53の中間部が絶縁性を有するプラスチックパイプなどで構成され、間接活線工法に好適なように、絶縁性を確保している。
【0061】
図12を参照して、操作レバー54を握って、操作レバー54を操作棒51に近づけると、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bを閉じることができる。操作レバー54を解放すると、操作レバー54に連結したばね(図示せず)の力で、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bを開くことができる。
図12又は
図13は、一方の把持腕5aに対して、他方の把持腕5bが最大に開いた状態を示している。
【0062】
図13又は
図14を参照して、一方の把持腕5aは、先細り状の把持爪51aを突出している。把持爪51aは、把持面50aを形成している。把持面50aは、回動軸5cの回転中心から遠心方向に沿って略平行に形成されている。同様に、他方の把持腕5bは、先細り状の把持爪51bを突出している。把持爪51bは、把持面50bを形成している。把持面50bは、把持面50aと所定の開角を設けて配置されている。
図12又は
図13を参照して、操作レバー54を握ると、把持面50bを把持面50aに近づけることができる。
【0063】
図12から
図16に示した絶縁操作棒5は、高所に配置された高圧配電線などを一対の把持爪51a・51bで把持できる、いわゆる「絶縁ヤットコ」になっている。
【0064】
[第1実施形態]
(間接活線工事用コッターの構成)
次に、本発明の第1実施形態による間接活線工事用コッターの構成を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による間接活線工事用コッターの構成を示す斜視図である。
図2は、第1実施形態による間接活線工事用コッターに備わる第1リング部材の構成を示す斜視分解組立図である。
【0065】
図3は、第1実施形態による間接活線工事用コッターに備わるリテーナの構成を示す図であり、
図3(A)は、リテーナの正面図、
図3(B)は、リテーナの側面図、
図3(C)は、リテーナの背面図である。
【0066】
図4は、第1実施形態による間接活線工事用コッターに備わる内輪の構成を示す図であり、
図4(A)は、内輪の正面図、
図4(B)は、内輪の側面図、
図4(C)は、
図4(A)のA−A矢視断面図である。
【0067】
図5は、第1実施形態による間接活線工事用コッターに備わる第1リング部材の構成を示す図であり、
図5(A)は、第1リング部材の正面図、
図5(B)は、第1リング部材の縦断面図である。
【0068】
図6は、第1実施形態による間接活線工事用コッターの構成を示す正面図であり、第1リング部材を第1コッター本体の第1軸部に係止した状態図である。
【0069】
(全体構成)
図1から
図6を参照すると、本発明の第1実施形態による間接活線工事用コッター(以下、コッターと略称する)10は、第1コッター本体1と抜け止め用の第1リング部材3を備えている。
【0070】
図1又は
図6を参照すると、第1コッター本体1は、円柱状の第1軸部1aと第1鍔部1bを有している。第1軸部1aは、第1貫通穴71h及び第2貫通穴72hに挿通できる(
図18(A)参照)。又、第1軸部1aは、その軸中心を貫通する第1抜け止め穴11hを第1鍔部1bと反対側に開口している。
【0071】
図1又は
図6を参照すると、第1鍔部1bは、第1軸部1aの基端部に形成している。第1鍔部1bは、第1軸部1aの外径より大きい外径を形成している。第1鍔部1bは、一対の開閉する把持腕5a・5bを先端部に有する絶縁操作棒5を用いて(
図12から
図14参照)、外周を把持できる。
【0072】
図1又は
図2及び
図5又は
図6を参照すると、第1リング部材3は、第1軸部1aに嵌合自在な内周を形成している。又、第1リング部材3は、一対の開閉する把持腕5a・5bを先端部に有する絶縁操作棒5を用いて(
図12から
図14参照)、外周を把持できる。
【0073】
図1又は
図2及び
図5又は
図6を参照すると、第1リング部材3は、複数の円柱状の第1ピン31と第1付勢部材32を有している。第1ピン31は、第1リング部材3の内部に収容している。そして、第1ピン31は、その先端部を第1リング部材3の内周から出没できる。第1リング部材3は、複数の第1ピン31を等間隔に配置することが好ましい。又、第1ピン31は、その先端部を半球状に形成することが好ましい。
【0074】
図2又は
図5及び
図6を参照すると、第1付勢部材32は、第1ピン31の先端部が第1リング部材3の内周から突出する力を第1ピン31に付勢している。第1付勢部材32は、円筒部材の外周に螺旋溝を形成した「ヘリカルばね」で構成することが好ましい。
【0075】
図6を参照して、第1ピン31の先端部が第1抜け止め穴11hに没入した状態では、第1コッター本体1に対して第1リング部材3の移動を規制している。
【0076】
以上の構成により、第1実施形態によるコッター10は、二山クレビス形の第1支持部71に貫通した第1貫通穴71hを有する一方の耐張碍子7と、一山クレビス形の第2支持部72に貫通した第2貫通穴72hを有する他方の耐張碍子7を揺動自在に連結できる(
図16又は
図18参照)。そして、一組の耐張碍子7・7からコッター10を抜け止めできる。
【0077】
第1実施形態によるコッター10は、割ピンを用いることなく、間接活線工事用の絶縁操作棒5を用いて、抜け止め用の第1リング部材3を第1コッター本体1の第1軸部1aに嵌合することで、容易に抜け止めできる。
【0078】
(第1リング部材の構成)
次に、第1実施形態による第1リング部材3の構成を説明する。
図2から
図5を参照すると、第1リング部材3は、内輪3a、外輪3b、及び一対のリテーナ3r・3rで外殻を構成している。
【0079】
図2又は
図4を参照すると、内輪3aは、遠心方向に突出する複数のフランジ3afを有している。これらのフランジ3afは、内輪3aの外周に断続して配置されている。又、これらのフランジ3afは、その端縁を外輪3bの内壁に圧入できる。
【0080】
図2又は
図5を参照して、フランジ3afとフランジ3afの間の空間には、第1ピン31及び第1付勢部材32を収容できる。フランジ3afとフランジ3afの間の空間に対応して、内輪3aには、第1ピン31の先端部が突出する穴31ahを開口している。
【0081】
図2又は
図3を参照すると、リテーナ3rは、凸部31rと凹部32rを円周方向に交互に形成している。凸部31rには、第1ピン31及び第1付勢部材32を外周方向から導入できる。凹部32rには、リベット用の細孔を開口している。
【0082】
図2を参照して、リテーナ3rの凹部32rの底面が対向するように、一対のリテーナ3r・3rを配置し、フランジ3afを介して、一対のリテーナ3r・3rをリベット(図示せず)で結合することで、複数の第1ピン31及び第1付勢部材32を内輪3aと外輪3bに収容できる(
図5参照)。
【0083】
(間接活線工事用コッターの作用)
次に、第1実施形態によるコッター10の操作方法を説明しながら、コッター10の作用及び効果を説明する。
【0084】
最初に、
図16又は
図18を参照して、一方の耐張碍子7に設けた第1支持部71に貫通した第1貫通穴71hと、他方の耐張碍子7に設けた第2支持部72に貫通した第2貫通穴72hを一致させ、第1軸部1aを挿通することで(
図1参照)、一対の耐張碍子7・7を揺動自在に連結できる。この場合、一対の開閉する把持腕5a・5b(
図12又は
図13参照)で、第1鍔部1bを把持することで、第1貫通穴71h及び第2貫通穴72hに第1軸部1aを容易に挿通できる。
【0085】
次に、
図1を参照して、複数の第1ピン31の付勢力に抗して、第1リング部材3を第1軸部1aに挿入する。この場合、一対の開閉する把持腕5a・5b(
図12又は
図13参照)で、第1リング部材3の外周を把持することで、第1リング部材3を第1軸部1aに容易に挿入できる。
【0086】
図6を参照して、第1ピン31の先端部が第1軸部1aの外周をスライド後に、第1ピン31の先端部が第1抜け止め穴11hに没入した状態では、第1コッター本体1に対して第1リング部材3の移動を規制している。これにより、第1実施形態によるコッター10は、一組の耐張碍子7・7からコッター10を抜け止めできる。
【0087】
第1実施形態によるコッター10は、割ピンを用いることなく、間接活線工事用の絶縁操作棒5を用いて、抜け止め用の第1リング部材3を第1コッター本体1の第1軸部1aに嵌合することで、容易に抜け止めできる。
【0088】
第1実施形態によるコッター10は、複数の第1ピン31を第1リング部材3の内部に配置しているので、第1ピン31の先端部が第1抜け止め穴11hに没入することが容易である、という特有の効果がある。
【0089】
[第2実施形態]
(間接活線工事用コッターの構成)
次に、本発明の第2実施形態による間接活線工事用コッターの構成を説明する。
図7は、本発明の第2実施形態による間接活線工事用コッターの構成を示す斜視図である。
図8は、第2実施形態による間接活線工事用コッターに備わる第2リング部材の構成を示す斜視分解組立図である。
【0090】
図9は、第2実施形態による間接活線工事用コッターの構成を示す図であり、
図9(A)は、第2軸部に備わるロックピンが第2リング部材に形成した係合溝に導入される直前の状態を示す正面図、
図9(B)は、
図9(A)のA−A矢視断面図、
図9(C)は、
図9(A)の右側面図である。
【0091】
図10は、第2実施形態による間接活線工事用コッターの構成を示す正面図であり、第2軸部に備わるロックピンが第2リング部材に形成した係合溝の終端に導入された状態図である。
【0092】
図11は、第2実施形態による間接活線工事用コッターの構成を示す正面図であり、第2リング部材を第2コッター本体の第2軸部に係止した状態図である。
【0093】
(全体構成)
図7から
図11を参照すると、本発明の第2実施形態による間接活線工事用コッター(以下、コッターと略称する)20は、第2コッター本体2と抜け止め用の第2リング部材4を備えている。
【0094】
図7から
図11を参照すると、第2コッター本体2は、円柱状の第2軸部2aと第2鍔部2bを有している。第2軸部2aは、第1貫通穴71h及び第2貫通穴72hに挿通できる(
図18(A)参照)。
【0095】
図7又は
図8を参照すると、第2軸部2aは、第2抜け止め穴21hと一対のロックピン21p・21pを有している。第2抜け止め穴21hは、第2鍔部2bと反対側に開口している。又、第2抜け止め穴21hは、第2軸部2aの軸中心を貫通している(
図11参照)。
【0096】
図7から
図11を参照すると、一対のロックピン21p・21pは、第2鍔部2bと第2抜け止め穴21hの間に配置されている。又、一対のロックピン21p・21pは、相反する向きに第2軸部2aの外周から突出している。
【0097】
図7から
図11を参照すると、第2鍔部2bは、第2軸部2aの基端部に形成している。第2鍔部2bは、第2軸部2aの外径より大きい外径を形成している。第2鍔部2bは、一対の開閉する把持腕5a・5bを先端部に有する絶縁操作棒5を用いて(
図12から
図14参照)、外周を把持できる。
【0098】
図7又は
図8を参照すると、第2リング部材4は、第2軸部2aに嵌合自在な内周を形成している。又、第2リング部材4は、一対の開閉する把持腕5a・5bを先端部に有する絶縁操作棒5を用いて(
図12から
図14参照)、外周を把持できる。
【0099】
図8又は
図11を参照すると、第2リング部材4は、一対の円柱状の第2ピン41・41と第2付勢部材42・42を有している。第2ピン41は、第2リング部材4の内部に収容している。そして、第2ピン41は、その先端部を第2リング部材4の内周から出没できる。一対の第2ピン41・41は、対向配置している。又、第2ピン41は、その先端部を半球状に形成することが好ましい。
【0100】
図8又は
図11を参照すると、第2付勢部材42は、第2ピン41の先端部が第2リング部材4の内周から突出する力を第1ピン31に付勢している。第2ピン41は、円筒部材の外周に螺旋溝を形成した「ヘリカルばね」で構成することが好ましい。
【0101】
図2と
図8を参照すると、第1ピン31と第2ピン41は、同じものであるが、説明の便宜上、符号を変えて区別した。同様に、第1付勢部材32と第2付勢部材42は、同じものであるが、説明の便宜上、符号を変えて区別した。
【0102】
図7から
図10を参照すると、第2リング部材4は、一対のL字状の係合溝4d・4dを有している。係合溝4dは、第2リング部材4の端面から切り欠いている。そして、一対のL字状の係合溝4d・4dには、一対のロックピン21p・21pを導入できる。
【0103】
図10を参照して、ロックピン21pを係合溝4dの終端に導入した状態では、第2ピン41の先端部が第2抜け止め穴21に没入している(
図11参照)。そして、第2コッター本体2に対して第2リング部材4の軸方向及び外周方向の移動を規制している。
【0104】
以上の構成により、第2実施形態によるコッター20は、二山クレビス形の第1支持部71に貫通した第1貫通穴71hを有する一方の耐張碍子7と、一山クレビス形の第2支持部72に貫通した第2貫通穴72hを有する他方の耐張碍子7を揺動自在に連結できる(
図16又は
図18参照)。そして、一組の耐張碍子7・7からコッター20を抜け止めできる。
【0105】
第2実施形態によるコッター20は、割ピンを用いることなく、間接活線工事用の絶縁操作棒5を用いて、抜け止め用の第2リング部材4を第2コッター本体2の第2軸部2aに嵌合することで、容易に抜け止めできる。
【0106】
(第2リング部材の構成)
次に、第2実施形態による第2リング部材4の構成を説明する。
図8を参照すると、第2リング部材4は、その軸中心に向かって開口した一対の保持穴4h・4hを有している。保持穴4hには、第2ピン41及び第2付勢部材42を収容できる。
【0107】
図8を参照して、保持穴4hは、第2ピン41の先端部を突出できるが、第2ピン41が脱落しないように、第2リング部材4の内周側が縮径している。又、保持穴4hは、第2リング部材4の外周側が拡径している。円板状の蓋体43を保持穴4hの外周側に圧入することで、第2ピン41及び第2付勢部材42を脱落困難に収容できる。
【0108】
(間接活線工事用コッターの作用)
次に、第2実施形態によるコッター20の操作方法を説明しながら、コッター20の作用及び効果を説明する。
【0109】
最初に、
図16又は
図18を参照して、一方の耐張碍子7に設けた第1支持部71に貫通した第1貫通穴71hと、他方の耐張碍子7に設けた第2支持部72に貫通した第2貫通穴72hを一致させ、第2軸部2aを挿通することで(
図7又は
図8参照)、一対の耐張碍子7・7を揺動自在に連結できる。この場合、一対の開閉する把持腕5a・5b(
図12又は
図13参照)で、第2鍔部2bを把持することで、第1貫通穴71h及び第2貫通穴72hに第2軸部2aを容易に挿通できる。
【0110】
次に、
図7を参照して、一対の第2ピン41の付勢力に抗して、第2リング部材4を第2軸部2aに挿入する。この場合、一対の開閉する把持腕5a・5b(
図12又は
図13参照)で、第2リング部材4の外周を把持することで、第2リング部材4を第2軸部2aに容易に挿入できる。
【0111】
図9を参照して、第2リング部材4を第2鍔部2bに向かって移動する過程では、係合溝4dの始端をロックピン21pに対向配置しておくことが好ましい。第2リング部材4を第2鍔部2bに向かって更に移動し、ロックピン21pを係合溝4dに導入する。次に、第2リング部材4を所定角度回動することで、ロックピン21pを係合溝4dの終端に導入できる(
図10参照)。
【0112】
図9から
図10に示したロック方式は、第2軸部2aに対して、第2リング部材4を捩って接続することから、例えば、「ツイストロック」と呼ばれている。
【0113】
図10に示した状態では、一対の第2ピン41・41は、それらの先端部が第2抜け止め穴21hの両端部に嵌合している(
図11参照)。
図11を参照して、第2ピン41の先端部が第2抜け止め穴21hに没入した状態では、第2コッター本体2に対して第2リング部材4の軸方向及び外周方向の移動を規制している。これにより、第2実施形態によるコッター20は、一組の耐張碍子7・7からコッター20を抜け止めできる。
【0114】
第2実施形態によるコッター20は、割ピンを用いることなく、間接活線工事用の絶縁操作棒5を用いて、抜け止め用の第2リング部材4を第2コッター本体2の第2軸部2aに嵌合することで、容易に抜け止めできる。
【0115】
第2実施形態によるコッター20は、一対の第2ピン41・41を第2リング部材4の内部に配置すると共に、第2軸部2aに設けたロックピン21pに係止自在な係合溝4dを有しているので、第2コッター本体2に対して、第2リング部材4の軸方向の移動を確実に規制できる、という特有の効果がある。
【0116】
本発明による間接活線工事用コッターは、次のような効果が期待される。
(1)間接活線作業で耐張碍子を容易に交換できる。
(2)小さい割ピンを取り扱う必要が無くなる。
(3)割ピンを落下させる心配が無くなる。
(4)絶縁操作棒を用いて、コッターを容易に取り付けできる。
【0117】
本発明は、耐張碍子の連結に好適な間接活線工事用コッターを開示したが、本発明の間接活線工事用コッターは、耐張碍子以外に適用することが期待される。
【符号の説明】
【0118】
1 第1コッター本体
1a 第1軸部
1b 第1鍔部
3 第1リング部材
5 絶縁操作棒
5a・5b 一対の把持腕
7 耐張碍子
10 コッター(間接活線工事用コッター)
11h 第1抜け止め穴
31 第1ピン
32 第1付勢部材
71 第1支持部
71h 第1貫通穴
72 第2支持部
72h 第2貫通穴