(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上ケース及び下ケースに上下に分割されたクランクケースと、前記クランクケースと一体型のシリンダブロックと、前記クランクケースの合せ面に軸支されるクランク軸及び変速入力軸とを備えた4サイクル多気筒エンジンであって、
エンジン側面視で前記クランク軸及び前記変速入力軸のそれぞれ中心軸を結ぶ延長線と前記シリンダブロックのシリンダ軸線とが鋭角で交差するように、前記延長線からの前記クランク軸を通る垂線に対して前記シリンダブロックを後方へ傾斜して配置したことを特徴とする4サイクル多気筒エンジン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のエンジンではエンジン全体を後方へ回動させることにより、クランクシャフト及びシリンダヘッド等の上下方向位置が高くなり、却って操縦安定性の阻害要因となる。また、エンジン上方に配置されるエアクリーナボックスや燃料タンクの配置スペースが制約され、それらの容量を確保することが難しくなる等の問題が生じる。
更に、別の対策方法として、ホイールベースを延長することで対応し得るが、その場合には車両重量の増加や最小回転半径の増加を来たす等の問題がある。
【0006】
本発明はかかる実情に鑑み、他部品との適正な配置関係を確保しつつ、有効に操縦安定性の向上等を図る4サイクル多気筒エンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の4サイクル多気筒エンジンは、上ケース及び下ケースに上下に分割されたクランクケースと、前記クランクケースと一体型のシリンダブロックと、前記クランクケースの合せ面に軸支されるクランク軸及び変速入力軸とを備えた4サイクル多気筒エンジンであって、エンジン側面視で前記クランク軸及び前記変速入力軸のそれぞれ中心軸を結ぶ延長線と前記シリンダブロックのシリンダ軸線とが鋭角で交差するように、
前記延長線からの前記クランク軸を通る垂線に対して前記シリンダブロックを後方へ傾斜して配置したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の4サイクル多気筒エンジンにおいて、前記シリンダブロックの後面においてウォータジャケットの下側で、シリンダヘッドの合せ面のプロフィールから前記クランクケースの合せ面に垂直に下ろした面に対して、前記シリンダブロックのシリンダ軸線側に凹形状を設け、前記凹形状にスタータモータを配置することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の4サイクル多気筒エンジンにおいて、前記凹形状は、エンジン幅方向で略中央に設けられたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の4サイクル多気筒エンジンにおいて、前記スタータモータの後方に前記上ケースと一体でブリーザ室が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シリンダブロックが後方へ傾斜することで、クランクシャフトの高さを維持したまま、前輪及びクランクシャフト間の距離を適切に設定することができ、車両の操縦安定性を向上することが可能になる。クランクシャフトの高さ位置が実質的に変化しないため、他部品との配置関係に影響を及ぼすことなくレイアウトすることができる。また、シリンダブロックを後傾配置することで排気管やラジエータ等をエンジン側に近づけて配置することができ、ホイールベースを有効に短縮することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明における4サイクル多気筒エンジンの好適な実施の形態を説明する。
図1は本発明の適用例としての自動二輪車100の主要部構成例を示す側面図、
図2は車体に搭載されたエンジンまわりを示す正面図である。先ず、
図1及び
図2を用いて、自動二輪車100の主要部の構成について説明するが、一部については図示を省略する。なお、
図1を含め、以下の説明で用いる図においては、必要に応じて車両の前方を矢印Frにより、車両の後方を矢印Rrにより示し、また、車両の側方右側を矢印Rにより、車両の側方左側を矢印Lにより示す。
【0014】
図1及び
図2において、自動二輪車100は鋼製あるいはアルミニウム合金材でなる車体フレーム101を有し、この車体フレーム101によってエンジンを始めとする構成部材もしくは部品を支持する。車体フレーム101の前部には、ステアリングヘッドパイプ102によって左右に回動可能に支持された左右2本のフロントフォーク103が設けられる。フロントフォーク103の上端にはステアリングブラケットを介してハンドルバーが固定される。フロントフォーク103の下部には前輪104が回転可能に支持されると共に、前輪104の上部を覆うようにフロントフェンダが取り付けられる。
【0015】
車体フレーム101は、ステアリングヘッドパイプ102の後部に一体的に結合し、後方に向けて左右一対で二又状に分岐し、ステアリングヘッドパイプ102から後下方に拡幅しながら延設されるメインフレーム部101Aと、メインフレーム部101Aに溶着されて後下方に延設されるピボットフレーム部101Bとからなる所謂、ツインスパータイプのフレームとして構成される。メインフレーム部101A及びピボットフレーム部101Bは相互に結合し、全体として内側にスペースが形成された立体的構造を有し、そのスペース内方において車体フレーム101にエンジン10が搭載される。
【0016】
車体フレーム101のピボットフレーム部101Bの上下方向中程にはピボット軸105を介して、スイングアームが上下方向に揺動可能に結合する。このスイングアームの後端には後輪106(二点鎖線により一部を略記する)が回転可能に支持される。車体フレーム101とスイングアームの間にはリヤショックアブソーバが装架されるが、特にリヤショックアブソーバの下端側はリンク機構を介して車体フレーム101及びスイングアームの双方に連結される。後輪106にはドリブンスプロケットが軸着し、エンジン10側のドライブスプロケットと後輪106のドリブンスプロケットの間に動力伝達用チェーンが巻回される。エンジン動力はそのチェーンを介して、ドライブスプロケットからドリブンスプロケットへ伝達され、これにより後輪106を回転駆動する。後輪106の直近周囲にはその前上部付近を覆うリヤフェンダが設けられる。
【0017】
また、車体フレーム
101の後部付近から後輪106の上方にかけて、後上りに適度に傾斜してシートレール107が後方へ延出し、このシートレール107によってシート(着座シート)が支持される。シートの前側には燃料タンクが搭載される。
【0018】
車両外装において、車両の主に前部及び左右両側部はそれぞれカウリング(以下、単にカウルという)、この例ではアッパカウル、ボディカウル及びアンダカウル等が一体化して車両前部を覆うと共に、車両両側部がサイドカウルによって覆われる。また、車両後部ではシートまわりにシートカウルが被着する。
【0019】
自動二輪車100の略車両中央部において、
図1及び
図2に示されるように車体フレーム101によってエンジン10が搭載支持される。エンジン10は本実施形態では水冷式多気筒の4サイクルガソリンエンジンを使用する。エンジン10は気筒が左右方向(車幅方向)に並設された並列多気筒エンジンであり、具体的には並列4気筒エンジンとし、左右方向に左から♯1〜♯4気筒(なお、以下の説明では単に「♯1」等として記載する)が配列される。
図3は本実施形態におけるエンジン10の左側面図であり、
図3をも参照して、左右に水平支持されるクランクシャフト(クランク軸)11を収容するクランクケース12の上方にシリンダブロック13、シリンダヘッド14及びシリンダヘッドカバー15が順次重なるように一体的に結合し、またクランクケース12の下部にはオイルパン16が付設される。なお、エンジン10のシリンダ軸線Zは前方に適度に傾斜して配置される。かかるエンジン10は複数のエンジンマウント(エンジン懸架部)を介して懸架されることで車体フレーム101の内側に一体的に結合支持され、それ自体で車体フレーム101の剛性部材として作用する。
【0020】
また、クランクケース12の後部にはトランスミッションケース17が一体的に形成され、このトランスミッションケース17内には後述するカウンタシャフトや複数のトランスミッションギヤが配設される。エンジン10の動力はクランクシャフト11からトランスミッションを経て最終的に、その出力端であるドライブスプロケットへ伝達され、このドライブスプロケットが前述のように動力伝達用チェーンを介して後輪106(
図1)を回転駆動する。
【0021】
なお、クランクケース12とトランスミッションケース17は相互に一体的に結合し、全体としてエンジン10を含むエンジンユニットのケーシングアセンブリを構成する。このケーシングアセンブリの適所には後述するエンジン始動用のスタータモータやクラッチ装置等を始めとする複数の補機類が搭載もしくは結合し、これらを含めたエンジンユニット全体が車体フレーム101によって支持される。
【0022】
エンジン10には更に、エアクリーナ及び燃料供給装置からそれぞれ供給される空気(吸気)及び燃料でなる混合気を供給する吸気系、燃焼後の排気ガスをエンジン10から排出する排気系、エンジン10を冷却する冷却系及びエンジン10の可動部を潤滑する潤滑系、更にはそれらを作動制御する制御系(ECU;Engine Control Unit)が付属する。制御系の制御により複数の機能系が上述の補機類等と協働し、これによりエンジンユニット全体として円滑作動が遂行される。
【0023】
各機能系について説明すると、先ず吸気系において各気筒ともシリンダヘッド14の後側に吸気口(インテークポート)が開口し、この吸気口に吸気管(インテークパイプ)を介してスロットルボディが接続される。スロットルボディにはその内部に形成されている吸気流路もしくは通路を、アクセル開度に応じて開閉するスロットルバルブが装着され、エアクリーナから送給されてくる空気の流量が制御される。この例では各気筒のスロットルバルブ軸が同軸に配置され、このスロットルバルブ軸を機械式又は電気もしくは電磁式に駆動するバルブ駆動機構を有する。
【0024】
一方、各スロットルボディにはスロットルバルブの下流側に燃料噴射用のインジェクタが配置され、これらのインジェクタに対して燃料ポンプによって燃料タンク内の燃料が供給される。この場合、各インジェクタはその上側にて車幅方向に横架されたデリバリパイプと接続され、燃料ポンプに接続されたデリバリパイプから燃料が配給されるようになっている。各インジェクタは上述の制御系の制御により所定タイミングでスロットルボディ内の吸気流路に燃料を噴射し、これにより各気筒のシリンダブロック13に対して所定空燃比の混合気が供給される。
【0025】
次に、排気系において各気筒ともシリンダヘッド14の前側にて排気口(エキゾーストポート)が開口し、この排気口に排気管(エキゾーストパイプ)18が接続される。各気筒の排気管18は排気口から一旦下方へ延出して、クランクケース12の下側で合流して一体化する。排気管18は後方へ延出して、その後端にはマフラ19が取り付けられる。
この場合、♯1気筒の排気管18と♯2気筒の排気管18が合流部20で合流し、♯3気筒の排気管18と♯4気筒の排気管18が合流部21で合流する。更に、合流部20及び合流部21が相互に合流することで、♯1〜♯4気筒の4本の排気管18がオイルパン16の略左下方にて単一の集合管22に集合する。集合管22は接続パイプ23を介してマフラ19に接続される。
【0026】
また、冷却系においてシリンダブロック13及びシリンダヘッド14の周囲には冷却水が循環するように形成されたウォータジャケットが構成される。このウォータジャケットに送給される冷却水を冷却する熱交換器であるラジエータ24を装備する。ラジエータ24は走行風を当てることにより、内部を流通する冷却水の熱を放散させるが、この例ではラジエータ24は正面視で概略横長の矩形(長方形)形状を呈し、
図1に示されるようにステアリングヘッドパイプ102の下部付近からシリンダブロック13の前方の排気管18の前側付近まで、後方に適度に傾斜して延設配置される。エンジン10のシリンダブロック13は正面視でラジエータ24によって略覆われる。なお、ラジエータ24は車体フレーム101等を利用して、それらの適所に支持される。
【0027】
冷却系において本例では
図3のようにクランクケース12の左側壁部に、例えばクランクケース12に内蔵のオイルポンプに連動駆動されるようにしたウォータポンプ25を有する。このウォータポンプ25とウォータジャケットは冷却水ホースにより相互に接続され、またウォータポンプ25とラジエータ24は別の冷却水ホースにより相互に接続される。ウォータポンプ25にはラジエータ24から、冷却された冷却水が冷却水ホースを介して供給される。ウォータポンプ25は、ラジエータ24で冷却された冷却水を吐出して、ウォータジャケット内を流通させ、これによりエンジンが冷却される。ウォータジャケット内を流通した冷却水は冷却水ホースを介して、ラジエータ24へ送給される。ラジエータ24ではエンジン10から送給された冷却水を冷却し、再び冷却水ホースを介してウォータポンプ25へ供給し、冷却系においてかかる冷却水循環が繰り返される。
【0028】
更に、エンジンユニットの可動部に潤滑油を供給して、それらを潤滑するための潤滑系が構成される。この潤滑系には、クランクシャフト11まわりやシリンダヘッド14内に構成される動弁装置、そしてそれらを連結するカムチェーン、トランスミッション等々が含まれる。本実施形態において潤滑系に対して、クランクシャフト11の回転力を直接又は間接的に駆動源として駆動されるオイルポンプがクランクケース12に内蔵される。オイルポンプとしてトロコイドポンプ等を使用するが、このオイルポンプによりオイルパン16から吸い上げた潤滑油を潤滑系に送給する。なお、クランクケース12の前側下部にオイルフィルタ26(
図1)が取り付けられ、潤滑油は潤滑系に送給される前にオイルフィルタ26によって浄化される。
【0029】
ここで
図4及び
図5をも参照して、クランクケース12まわりの具体的構成例について説明する。
図4はクランクケース12からクラッチカバー27(
図1参照)を取り外した状態を示す右側面図、
図5はクランクケース12を構成する上ケース28及び下ケース29のうち下ケース29の合せ面12Aを上方から見た平面図である。本実施形態ではクランクケース12は上ケース28及び下ケース29により上下に分割され、両者が閉合することでクランク室30が形成される。この場合、シリンダブロック13はクランクケース12と一体型であり、即ち上ケース28と一体成形される。また、クランクケース12の合せ面12Aにてクランクシャフト11及び変速入力軸であるカウンタシャフト31が軸支される。合せ面12Aは、
図4に示されるように後上りに傾斜して設定される。
【0030】
クランクケース12のクランク室30内には、クランクシャフト11及びクランクシャフト11と一体化したクランクウェブ32が、複数(本例では5つ)のジャーナル部33でジャーナル軸受34を介して合せ面12Aにて回転自在に軸支される。気筒に対応してクランクウェブ32相互間には、クランクピンを介してコネクティングロッド35が連結される。コネクティングロッド35の先端(小端部)にはピストンピンを介して、ピストンが揺動自在に取り付けられ、該ピストンはシリンダブロック13のシリンダボア内を上下に往復運動する。ピストンの往復運転によりクランクシャフト11が回転駆動される。
【0031】
トランスミッションケース17内において、クランクシャフト11の後方でこれと平行にカウンタシャフト31が合せ面12Aにて回転自在に軸支される。なお、カウンタシャフト31はベアリング36等を介して支持される。クランクシャフト11は、その一端(右側)がクラッチ室内に突出して設けられており、この端部にプライマリドライブギヤ37が軸着する。一方、カウンタシャフト31の一端(右側)には、プライマリドライブギヤ37と噛合するプライマリドリブンギヤ38が軸着し、クランクシャフト11の回転によりカウンタシャフト31を回転駆動することができるようになっている。カウンタシャフト31のクラッチ室側に突出した端部にクラッチ装置39が構成されており、このクラッチ装置39により、クランクシャフト11及びカウンタシャフト31間の動力接続・遮断が行われる。なお、クラッチ装置39のクラッチ軸は、カウンタシャフト31と同軸に配置される。
【0032】
トランスミッションケース17内において更に、カウンタシャフト31は、トランスミッションケース17に収容された変速装置(トランスミッション)の一部を構成する。カウンタシャフト31の略下方にドライブシャフト40が配置され、カウンタシャフト31及びドライブシャフト40上にはそれぞれ複数のトランスミッションギヤが列設される。これらのトランスミッションギヤはギヤシフト装置により噛合関係が選択的に設定され、これにより変速装置の所望の変速比が得られる。エンジン10の動力はクランクシャフト11からトランスミッションを経て最終的に、ドライブシャフト40の軸端に取り付けられたドライブスプロケット41(
図3参照)へ伝達される。そして、前述したようにドライブスプロケット41が動力伝達用チェーンを介してドリブンスプロケット、従って後輪106を回転駆動する。
【0033】
さて、上記構成でなるエンジン10において、本発明では特に
図4に示されるようにエンジン側面視でクランクシャフト11及びカウンタシャフト31のそれぞれ中心軸を結ぶ延長線Mとシリンダブロック13のシリンダ軸線Zとが鋭角θで交差するように、シリンダブロック13が後方へ傾斜して配置される。
図6にも示したように延長線Mは、クランクケース12の上ケース28及び下ケース29の合せ面12A上にあり、この合せ面12Aからのクランクシャフト11を通る垂線Pに対して、シリンダ軸線Zは後傾して設定される。
【0034】
また、
図6に示されるようにシリンダブロック13の後面においてウォータジャケット42の下側で、シリンダヘッド14との合せ面13Aのプロフィールからクランクケース12の合せ面12Aに垂直に下ろした面(垂直面S)に対して、シリンダブロック13のシリンダ軸線Z側に凹形状43が形成される。そして、
図7にも示されるように凹形状43にスタータモータ44が配置される。上述のようにシリンダ軸線Zは後傾配置され、クランクシャフト11及びカウンタシャフト31を結ぶ延長線Mと鋭角θで交差するため、シリンダブロック13の後側は垂直面Sに対して凹状となる。
【0035】
上記の場合、シリンダブロック13の凹形状43は
図7に示されるように、エンジン幅方向で中央に設けられる。凹形状43は♯2気筒及び♯3気筒に略対応する。
また、
図3をも参照して、スタータモータ44の後方には上ケース28と一体でブリーザ室45が設けられている。ブリーザ室45はブリーザ室カバー46を有し(
図3)、導入されたブローバイガスを気液分離して、その分離した気体を吸気系に還流させるようにしている。
【0036】
ここで、
図5を参照してスタータモータ44の出力軸44aは左右方向、即ちクランクシャフト11と平行に配置されると共に右方に延出し、出力軸44a及びクランクシャフト11間でクランクシャフト11と平行に延設された駆動力伝達シャフト48に軸着されたトルクリミッタ47と噛合する。トルクリミッタ47は、スタータモータ44からクランクシャフト11側へのトルクのみを伝達し、クランクシャフト11側からスタータモータ44側へのトルクを遮断するように構成されている。トルクリミッタ47は複数のアイドルギヤ49を介してクランクシャフト11と接続し、この場合、最終段のアイドルギヤ49Aが、クランクシャフト11の右端部に軸着されたワンウェイクラッチ50に噛合する。スタータモータ44が作動すると、トルクリミッタ47及びアイドルギヤ49等を介してクランクシャフト11が強制的に回転されることで、エンジン10を始動させることができる。
【0037】
本発明のエンジン10において、延長線Mとシリンダブロック13のシリンダ軸線Zとが鋭角θで交差し、即ちシリンダブロック13が後方へ傾斜することで、クランクシャフト11の高さを維持したまま、前輪104及びクランクシャフト11間の距離を適切に設定することができる。つまり前輪104及びクランクシャフト11間の距離を有効に詰めることができ、操縦安定性を向上することが可能になる。この場合、クランクシャフト11の高さ位置が実質的に変化しないため、エンジン10の上方に配置されるエアクリーナボックスや燃料タンク等と干渉することなく、即ち他部品との配置関係に影響を及ぼすことなくレイアウトすることができる。また、シリンダブロック13を後傾配置することで排気管18やラジエータ24等をエンジン10側に近づけて配置することができ、ホイールベースを有効に短縮することが可能になる。
【0038】
また、シリンダブロック13の後面においてウォータジャケット42の下側に凹形状43を設け、この凹形状43にスタータモータ44が配置される。シリンダブロック13を後傾配置するとそのままでは、後方のスタータモータ44と干渉してしまう。シリンダブロック13の後面の凹形状43に対して、スタータモータ44を後方へずらすことなく、スペース効率よく配置することができる。なお、凹形状43を形成する場合、置き中子を使用してシリンダブロック13の後面に適正に形成することが可能である。
【0039】
仮にスタータモータ44を後方へずらすと、スタータモータ44の出力軸44aとクランクシャフト11との軸間距離が大きくなり、それらを連結するアイドルギヤ49等の個数が増加する。これに対して、本発明ではそのような部品増加をもたらすことなく、凹形状43を利用してスタータモータ44を配置することができる。
また、本発明ではシリンダブロック13はクランクケース12と一体型であり、クランクケース12の剛性を有効に高めることができる。仮にシリンダブロック13がクランクケース12と別体であると、一体の場合に比べてクランクケース12の剛性が低下し、これに起因して騒音増加、あるいは機械的損失や重量増加等の問題が生じ得る。
【0040】
更に、本発明ではスタータモータ44の後方に、クランクケース12の上ケース28と一体でブリーザ室45が設けられる。
スタータモータ44及びブリーザ室45の配置関係において、仮にスタータモータ44を後方へずらすと、そのままではブリーザ室45の容量確保が難しくなる。一方、ブリーザ室45をスタータモータ44に対応して後方へずらすと、それらの周囲の他部品との配置関係に影響を及ぼし部品のレイアウト性を損なう場合がある。本発明では上述のように凹形状43を利用して、スタータモータ44を後方へずらすことなく、スペース効率よく配置することで、周囲部品の適正なレイアウト性等を確保維持することができる。
【0041】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上記実施形態においてエンジン10が並列4気筒エンジンの例を説明したが、気筒数は適宜増減可能である。また、シリンダ軸線Zの後傾角度として、エンジン仕様あるいは車種等に応じて適宜設定することができる。