(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
スマートフォンの普及やデータクラウド化などによって、CPUの処理速度やメモリアクセス速度のさらなる向上が求められている。これらを達成するために、例えば、基板の配線をファイン化(細く高密度化)すると、消費電力が増えるという課題が生ずる。
この課題を解決するために、半導体チップ(以下「チップ」と称する)を実装したプリント基板(以下「基板」と称する)の配線距離を短くすることが考えられる。そのための一つの手段として、「Multi−chip Mount」(マルチチップマウント)という基板の製造方式が提案されている。
【0003】
マルチチップマウントによる基板の製造方法には、Chip−First法とRDL−First法がある。
Chip−First法では、基板に、電極を形成したチップを載せ(以下、「マウントする」ともいう)、次にチップの上にレジストを塗布し、チップの電極に接続する配線パターンを形成する。
RDL−First法では、まず基板上に配線パターンを形成し、次にその配線パターンの上に、電極が接触するようにチップをマウントする。
これら二つの製造方法には、長所及び短所があるが、現在のところ、Chip−First法を採用するユーザが多い。その理由について以下に説明する。
配線パターンを形成するための露光装置の露光精度(即ちパターンの形成精度)は、1μmまたはそれ未満であり、この精度で配線パターンを製作することができる(露光装置の利点)。
【0004】
これに対してマウント装置でチップを基板にマウントする位置の精度(マウント精度)は5μm程度であり、この程度の精度でしかチップを基板上にマウントできない。
RDL−First法は、上記したように、先に基板に配線パターンを形成し、その上にチップをマウントする。そのため、露光装置が1μm以下の精度で配線パターンを形成しても、マウント装置は、チップ(の電極)を、その精度に合わせて配線パターン上に置くことができない。即ち、この方法では高精度で配線パターンの形成が可能な露光装置の利点を十分に発揮できない。
【0005】
これに対して、Chip−First法は、先にチップを基板にマウントする。そして配線パターンは、マウントしたチップの電極に合わせて形成すればよい。マウントしたチップの電極の位置が多少ずれていても、露光装置の高い露光精度を利用すれば、チップの位置に合わせて配線パターンを形成できる。
このような理由で、多くのユーザがChip−First法を採用している。
しかしながら、チップをマウントする位置が、電極のパッドで補える以上にずれてしまった場合には、配線パターン形成の露光装置における露光精度がいくら高くても配線をパッドに接続することができない。マウント装置の精度が悪い場合にはこのようなことが生じ得る。
【0006】
特に、近年、基板に対するチップの実装密度が高まるにつれて、チップはより小型化され、電極パッドの大きさも小さくなる傾向にある。そのため、チップのマウントの位置がわずかにずれるだけでも、配線が電極パッドに接続できなくなることも増えてきた。
この問題に対応する露光装置として、例えば特許文献1に記載の装置が提案されている。しかし、この特許文献1に記載されている装置は、直接描画装置と呼ばれているものであり、パターンを形成したマスクを使い、このパターンをワークに露光転写する方式のものではない。ユーザの中には、直接描画の方式を使わず、パターンを形成したマスクを使う方式で、上記の問題を解決すること望む場合も出てきた。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、製造対象となる基板について説明する。
図1は、本発明の実施形態によって製造される基板の例を示す図である。
製造対象のプリント基板1は、チップが実装され配線が形成された完成品の基板(回路基板)である。このプリント基板1上には多数のモジュール基板2が形成されており、これらのモジュール基板2はプリント基板1の完成後に分割されて他のプリント基板上などに搭載される。
図2は、プリント基板上に形成されるモジュール基板2の例を示す図である。
図2に示す例のモジュール基板2では、第1チップ3_1、第2チップ3_2、第3チップ3_3という例えば3つのチップが基板4上に実装されている。各チップ3_1、3_2、3_3には例えば6〜7個の電極5が形成されており、各チップ3_1、3_2、3_3の電極5が配線6によって互いに接続されることで1つのモジュールを形成している。
【0015】
このようなモジュール基板2をChip−First法で製造する比較例の製造手順について以下説明する。
比較例の製造手順では、まず、基板にチップをマウントするマウント工程が実行される。
図3は、比較例のマウント工程を示す図である。
マウント工程では、基板4に、第1チップ3_1、第2チップ3_2、第3チップ3_3の3つのチップを、設計で決められた設計位置7_1、7_2、7_3にマウントする。上述したように各チップ3_1、3_2、3_3には例えば6〜7個の電極5が形成されている。チップ3_1、3_2、3_3は、電極5が紙面の上側になるように基板4上に載せられる。
基板4には複数(
図3の例では例えば2個)のワーク・アライメントマーク(ワークマーク)8が形成されている。なお、このようなワークマーク8に換えて、ワークマーク8として使用できるパターン(他とは判別のつくユニークな形状をしたパターン)が形成される場合もある。
各チップ3_1、3_2、3_3が基板4上に載せられる際には、ワークマーク8を基準とした設計位置7_1、7_2、7_3に各チップ3_1、3_2、3_3が載せられる。
【0016】
図3に示すマウント工程によってチップ3_1、3_2、3_3が基板4にマウントされた後、基板4の全面に、導電性や絶縁性を有する膜の成膜や、レジストの塗布が行われる。その後、基板4上に配線を形成するための配線露光工程が行われる。
図4は、比較例の配線露光工程で用いられる配線マスク9の一例を示す図である。
この配線マスク9は、基板4に配線6(
図2)を形成するための露光装置に用いるマスクである。配線マスク9には、基板4に形成する配線6のパターン10が形成されている。また、基板4との位置合せを行うための、マスク・アライメントマーク(マスクマーク)11が形成されている。
【0017】
図5は、比較例の配線露光工程を示す図である。
配線露光工程では、基板4上に塗布されたレジストを露光装置にて露光する。この比較例の場合、各チップ3_1、3_2、3_3が設計位置に理想的にマウントされることを前提としている。このため、露光装置では、ワークマーク8とマスクマーク11が一致するように位置合せを行い、
図4に示す配線マスク9に形成されている配線パターン10を基板4に露光(転写)する。その後、現像工程、エッチング工程などを行い、各チップ3_1、3_2、3_3の電極5間に配線6が形成される。
各チップ3_1、3_2、3_3に形成されている電極5は、配線6の幅よりも大きな径を有するパッド状のものとなっている。そのため、チップ3_1、3_2、3_3を基板4にマウントする際、マウント位置が設計位置から多少ずれたとしても、形成される配線6は電極5と接続できる。
【0018】
しかしながら、上述したマウント工程におけるマウント位置の精度は、配線露光工程における露光位置の精度に較べて低く、マウント位置が設計位置から大幅にずれて配線がパッドに接続できない場合がある。
図6は、マウント位置が設計位置から大幅にずれた例を示す図である。
図6に示す例では、3つのチップ3_1、3_2、3_3のマウント位置が設計位置から大幅にずれている。第1チップ3_1は設計位置7_1に対して平行にずれており、第2チップ3_2と第3チップ3_3は、設計位置7_2と設計位置7_3に対して回転してずれている。その結果、いくつかの配線6がパッド状の電極5に届かない状態となっている。
本発明では、このような状態であっても全ての配線6を電極5に接続するために、後述するつなぎパターンを形成する。
【0019】
以下、本発明の基板製造システムの実施形態について説明する。
図7は、本発明の基板製造システムの一実施形態を示す図である。
本実施形態の基板製造システム100は、マウント装置110と、つなぎパターン形成部120と、配線パターン形成部130を備えている。基板製造システム100の構成としては、つなぎパターン作成部120と配線パターン形成部130との間に例えば研磨装置などを備える構成や、マウント装置110の前に前工程部を備える構成や配線パターン形成部130の後に後工程部を備える構成も考えられるが、ここでは
図7に示す構成例について説明する。
【0020】
つなぎパターン形成部120は、例えば、成膜装置121と塗布装置122と露光装置123と現像装置124とエッチング装置125と積層装置126を備えている。配線パターン形成部130も、例えば成膜装置131と塗布装置132と露光装置133と現像装置134とエッチング装置135と積層装置136を備えている。
つなぎパターン形成部120の露光装置123が本発明の露光装置の一実施形態に相当する。また、
図7に示す基板製造システム100で本発明の基板製造方法の一実施形態が実行され、つなぎパターン形成部120の露光装置123で本発明の露光方法の一実施形態が実行される。
このような基板製造システム100による基板製造の手順を、具体的な例を示して説明する。なお、この基板製造システム100により、
図1に示すような、多数のモジュール基板2が形成されたプリント基板1が製造されるが、以下の説明では1つのモジュール基板に着目して製造手順を説明する。
基板製造システム100では、Chip−First法によって基板が製造され、マウント装置110でマウント工程が実行される。このマウント工程が、本発明にいう搭載工程の一例に相当する。
【0021】
図8は、本実施形態のマウント工程を示す図である。
図8に示す例では、1つの基板150上に例えば2つのチップ160がマウントされるものとする。基板150上には、基板150の位置を確認するとともに基板上の位置の基準とするためのアライメントマーク(ワークマーク)151が例えば2つ形成されており、このワークマーク151の位置を基準として各チップ160の設計位置152が決められている。また、各チップ160には、各チップ160を基板150に対して位置決めするためのアライメントマーク(チップマーク)162が例えば2つずつ形成されている。
図7に示すマウント装置110は、基板150上のワークマーク151と各チップ160のチップマーク162を検出し、各チップ160を設計位置152に位置決めして基板150上に置く。
【0022】
各チップ160には例えば4つずつ円形パッド状の電極161が形成されており、
図8に示す例では、2つのチップ160の相互間で電極161が1対1に接続されるものとする。しかし、本実施形態のマウント工程で実際に各チップ160がマウントされる位置は、設計位置152から大幅にずれて一部の電極161に配線パターンが届かない位置になる場合がある。
このようなマウント工程の後、つなぎパターン形成部120で、つなぎパターンを形成するつなぎパターン形成工程が実行される。
【0023】
図9は、本実施形態のつなぎパターン形成工程の前段を示す図である。
つなぎパターン形成工程では、チップ160がマウントされた基板150全体に、
図7に示す成膜装置121で導電性や絶縁性の必要な膜が成膜され、塗布装置122でレジストが塗布される。その後、露光装置123でつなぎパターン171が露光される。露光装置123では、つなぎパターン171を有するつなぎマスク170が用いられ、つなぎパターン171が基板150上に露光(転写)される。
図9に示す例では、つなぎパターン171の形状は、チップ160上の電極161の形状と同一のパッド状となっている。
つなぎパターン171は、電極161と配線パターンとをつなぐ位置に露光(転写)される。露光位置の決め方の詳細は後述するが、露光装置123では、つなぎマスク170上のアライメントマーク(マスクマーク)172と、基板150上のワークマーク151と、チップ160上のチップマーク162が検出され、それらの位置に基づいて露光位置が決定される。チップマーク162を検出する工程が、本発明にいう検出工程の一例に相当し、つなぎパターン171を露光する工程が、本発明にいう露光工程の一例に相当する。
【0024】
ここでは、プリント基板上に多数形成されるモジュール基板のうちの1つの基板150に着目して露光の工程を説明したが、他のモジュール基板についても同様の手順がステップ&リピートの手法で繰り返される。
また、露光装置123では、基板150上にマウントされた各チップ160に対応した各つなぎマスク170が用いられてつなぎパターン171が露光される。
図9では2つのチップ160のうち図の左側に示されたチップ160に対応したつなぎパターン171の露光について説明したが、その後、
図9の右側に示されたチップ160についてもつなぎパターンが露光される。
【0025】
図10は、本実施形態のつなぎパターン形成工程の後段を示す図である。
ここでは、基板150上にマウントされた2つのチップ160のうち
図10の右側に示されたチップ160に対応したつなぎパターン181を有するつなぎマスク180が露光装置123で用いられ、つなぎパターン181が基板150上に露光(転写)される。この場合も、つなぎパターン181の露光位置を決めるために、つなぎマスク180上のマスクマーク182と、基板150上のワークマーク151と、チップ160上のチップマーク162が検出される。また、
図10に示すつなぎパターン181も、電極161と配線パターンとをつなぐ位置に露光(転写)される。
【0026】
露光装置123によるつなぎパターン171、181の露光の後は、
図7に示す現像装置124でつなぎパターンが現像され、エッチング装置125でつなぎパターンがエッチングされ、積層装置126で導電性や絶縁性の必要な層が更に積層されて、つなぎパターンの層が完成する。
このようなつなぎパターン形成部120における工程が、本発明にいうつなぎパターン形成工程の一例に相当する。
このようにつなぎパターン形成部120でつなぎパターンの層が形成されると、次に、配線パターン形成部130で配線パターンが形成される。
図11は、本実施形態の配線パターン形成工程を示す図である。
配線パターン形成工程では、つなぎパターン171、181が形成された基板150全体に、
図7に示す成膜装置131で導電性や絶縁性の必要な膜が成膜され、塗布装置132でレジストが塗布される。その後、露光装置133で配線パターン191が露光される。露光装置133では、配線パターン191を有する配線マスク190が用いられ、配線パターン191が基板150上に露光(転写)される。
【0027】
配線パターン191の露光位置は、本実施形態では、つなぎパターン171、181の露光位置を決める際に併せて決定される。その決定された露光位置に配線パターン191を位置決めするために、配線パターン形成部130の露光装置133は、配線マスク190上に形成されたアライメントマーク(マスクマーク)192と、基板150上のワークマーク151を検出する。
配線パターン191の露光後、
図7に示す現像装置134で配線パターンが現像され、エッチング装置135で配線パターンがエッチングされ、積層装置136で導電性や絶縁性の必要な層が更に積層されて、配線パターンの層が完成する。このような配線パターン形成部130における工程が、本発明にいう配線パターン形成工程の一例に相当する。
このように形成された配線パターン191は、チップ160のマウント位置が設計位置から大幅にずれた場合であっても、つなぎパターン171、181を介することで確実に
チップ160の電極161に接続されることになり、これによってモジュールの回路が確実に形成される。即ち、このように製造されたプリント基板(およびモジュール基板)は信頼性が高い。
【0028】
次に、つなぎパターン作成部120の露光装置123について詳細に説明する。
図12は、つなぎパターンを作成するための露光装置123を示す図である。
露光装置123は、光照射装置210と、マスクステージ220と、投影レンズ230と、ワークステージ240と、アライメント顕微鏡250と、制御装置260と、モニタ270を備えている。マスクステージ220およびワークステージ240には、それぞれ、マスクステージ駆動機構225およびワークステージ駆動機構245が付設されている。
マスクステージ220には、つなぎパターン171(181)とマスクマーク172(182)が形成されたつなぎマスク170(180)が置かれて保持される。マスクステージ220は、マスクステージ駆動機構225により駆動されることでつなぎマスク170(180)の位置を変更する。
【0029】
光照射装置210は露光光を出射するものである。光照射装置210が出射した露光光は、つなぎマスク170(180)と投影レンズ230を介して、ワークステージ240上のワークに照射され、つなぎパターン171(181)がワーク上に投影されて露光(転写)される。投影レンズ230は、つなぎパターン171(181)をワーク上に拡大あるいは縮小して投影するものであってもよいが、本実施形態では等倍で投影するものとする。
ワークステージ240には、
図8に示すようにチップ160がマウントされ成膜やレジスト塗布を経た基板150がワークとして載置されて保持される。上述したように、基板150上の各チップ160にはチップマーク162が設けられており、基板150にはワークマーク151が設けられている。
【0030】
また、ワークステージ240の表面の、マスクマーク172(182)が投影される位置には、ミラー241が設けられている。このミラー241は、ワークステージ240に投影されるマスクマーク172(182)像を反射する。ワークステージ240は、ワークステージ駆動機構245により駆動されることで基板150の位置を変更する。
マスクステージ220およびワークステージ240は、それぞれ、マスクステージ駆動機構225およびワークステージ駆動機構245により駆動され、マスクステージ220およびワークステージ240面に平行で互いに直交する2方向であるXY方向に移動するとともに、XY平面に垂直な軸を中心としたθ方向に回転する。
アライメント顕微鏡250は、投影レンズ230とワークステージ240との間に挿入自在なものであり、例えば2個所に設けられているが
図12にはそのうちの1箇所のみが図示されている。アライメント顕微鏡250は、基板150がワークステージ240に載る前に投影レンズ230とワークステージ240との間に挿入され、つなぎマスク170(180)の位置を確認する為に、ワークステージ240のミラー241で反射されたマスクマーク172(182)の像を検出する。
【0031】
また、アライメント顕微鏡250は、基板150がワークステージ240上に置かれ、つなぎパターン171(181)が基板150上に露光される前に、基板150と各チップ160の位置を確認する為に、基板150上のワークマーク151と、チップ160上のチップマーク162を検出する。検出後、アライメント顕微鏡250は、基板150上から退避する。
アライメント顕微鏡250は、ハーフミラー251と、複数のレンズ252、253と、CCDカメラ254を備えている。ハーフミラー251を介してアライメント顕微鏡250内に取り込まれたチップマーク162などの像光はレンズ252、253を経てCCDカメラ254上に結像し、CCDカメラ254で受像されて受像データが制御部260に送られる。
【0032】
制御部260は、CCDカメラ254で受像した画像を処理して位置座標を求める画像処理部261と、チップマーク162などの位置座標から基板150に対するつなぎパターン171(181)の露光位置を決める演算部262と、位置座標情報などの各種パラメータを記憶する記憶部263と、基板150上におけるチップ160の設計位置を示す位置情報を登録する登録部264と、求められた露光位置に基板150などを位置合わせする位置合わせ制御部265を備えている。
演算部262により露光位置を決める工程は、本発明にいうつなぎ位置決定工程の一例に相当し、演算部262は本発明にいうつなぎ位置決定部の一例に相当する。露光位置を決める詳細な手順については後述する。
画像処理部261によって処理された画像や位置情報は、確認のためにモニタ270の画面に表示される。アライメント顕微鏡250と画像処理部261とを併せたものが、本発明にいう検出部の一例に相当する。
【0033】
登録部264に登録された位置情報は記憶部263に記憶される。この記憶部263が、本発明にいう記憶部の一例に相当する。
上述したマスクステージ駆動機構225およびワークステージ駆動機構245は、位置合わせ制御部265により制御され、マスクステージ220およびワークステージ240の双方あるいは一方を、演算部262によって決められた位置へと駆動する。これにより、つなぎマスク170(180)と基板150との位置関係がつなぎパターン171(181)の露光位置を実現する位置関係となる。そしてこの位置関係でつなぎパターン171(181)が基板150に露光される。露光は光照射装置210からワークステージ240に至る部分で実行され、光照射装置210とマスクステージ220と投影レンズ230とワークステージ240とを併せたものが、本発明にいう露光部の一例に相当する。
【0034】
次に、基板150に対するつなぎパターン171(181)の露光位置を決める決定方法について説明する。
本実施形態では、電極161の具体的な位置や配線パターン191の具体的な形状を用いて露光位置を決めるのではなく、チップマーク162の検出位置などに基づいて露光位置を決める。
ここで、個々のチップマーク162や個々のマスクマーク172(182)などを互いに区別する表記方法を改めて定義する。
図13は、実装されたチップ160が有するチップマーク162を示す図である。
基板150上に実装されている各チップ160に設けられた各チップマーク162を個々に区別する為に、i番目のチップ160に設けられたj番目のチップマーク162をt
i,jと表記することとする。即ち、1番目(
図13の左側)のチップ160の2番目(
図13の下側)のチップマーク162はt
1,2と表記し、2番目(
図13の右側)のチップ160の1番目(
図13の上側)のチップマーク162はt
2,1と表記する。各チップマークt
i,jの具体的な位置は検出によって求められる。
【0035】
図14は、理想的な位置にチップが存在する場合のチップマークを示す図である。
基板150上に設定された設計位置152にチップが理想的に載っている場合の各チップマークを個々に区別する為に、i番目の設計位置152に在るチップに設けられたj番目のチップマーク162をs
i,jと表記することとする。即ち、1番目(
図14の左側)の設計位置152の2番目(
図14の下側)のチップマーク162はs
1,2と表記し、2番目(
図14の右側)の設計位置152の1番目(
図14の上側)のチップマーク162はs
2,1と表記する。各チップマークs
i,jの具体的な位置は、基板150のワークマーク151の検出位置と設計位置情報から算出される。
【0036】
図15は、基板に対して位置決めされる配線マスク190が有するマスクマーク192を示す図である。
ここでは配線マスク190上の各マスクマーク192は、設計位置にチップが理想的に載っている場合の各チップマークs
i,jと対応しており、配線マスク190が設計上の位置に配置されると各マスクマーク192が各チップマークs
i,jに1対1で重なる配置になっているものとする。なお、このようなマスクマーク192の配置は、配線パターン191やつなぎパターンの露光位置決定を説明するために便宜的に決められた配置である。実際の露光に使用される配線マスク190には、ワークマークなどとの位置関係が明確に決められている限り任意の箇所にマスクマーク192が配置可能である。
【0037】
各チップマークs
i,jに1対1で対応している各マスクマーク192を個々に区別する為に、i番目の設計位置152に在るj番目のチップマークs
i,jに対応したマスクマーク192をm
i,jと表記することとする。即ち、1番目のチップの2番目のチップマークs
1,2に対応した図の左下のマスクマーク192はm
1,2と表記し、2番目のチップの1番目のチップマークs
2,1に対応した図の右上のマスクマーク192はm
2,1と表記する。各マスクマークm
i,jの具体的な位置は、つなぎパターンの露光位置とともに算出される。
【0038】
図16は、つなぎマスクが有するマスクマークを示す図である。
各つなぎマスク170、180は、基板上に配置される各チップに対応しており、各つなぎマスク170、180上の各マスクマーク172、182は、つなぎパターン171、181がチップの電極に完全に重なった場合にチップマークs
1,2と1対1で重なる配置になっているものとする。なお、このようなマスクマーク172、182の配置も、配線パターンやつなぎパターン171、181の露光位置決定を説明するために便宜的に決められた配置である。実際の露光に使用されるつなぎマスク170、180には、ワークマークなどとの位置関係が明確に決められている限り任意の箇所にマスクマーク172、182が配置可能である。
【0039】
各マスクマーク172、182を個々に区別する為に、i番目のチップのj番目のチップマークs
i,jに対応したマスクマーク172、182をp
i,jと表記することとする。即ち、1番目のチップの2番目のチップマークs
1,2に対応した図の左下のマスクマーク172はp
1,2と表記し、2番目のチップの1番目のチップマークs
2,1に対応した図の右上のマスクマーク182はp
2,1と表記する。各マスクマークp
i,jの具体的な位置は、検出された各チップマークt
i,jの位置などから算出される。
上記説明した定義によれば、実際のチップマークt
i,jと、理想位置のチップマークs
i,jと、配線マスクのマスクマークm
i,jと、つなぎマスクのマスクマークp
i,jは、添え字i,jが一致しているマーク同士が互いに対応していることが分かる。
【0040】
次に、上記のように定義された表記に基づいて、マーク間距離を以下のように定義する。
i番目のチップのj番目の実際のチップマークt
i,jと、配線マスクのマスクマークm
i,jとのマーク間距離はr
i,jと定義する。例えば、1番目のチップの1番目のマークであればr
1,1は、ワークマークt
1,1とマスクマークm
1,1の距離になる。
i番目のチップのj番目の理想位置のチップマークs
i,jと、配線マスクのマスクマークm
i,jとのマーク間距離はw
i,jと定義する。
また、i番目のチップのj番目の実際のチップマークt
i,jと、つなぎマスクのマスクマークp
i,jとのマーク間距離はu
i,jと定義し、つなぎマスクのマスクマークp
i,jと、配線マスクのマスクマークm
i,jとのマーク間距離はv
i,jと定義する。
このような定義を用いて、まず、つなぎパターン無しで各チップの電極を配線パターンで接続可能な条件について考察する。
基板上に実際に載った各チップに対して配線マスクを最適に位置合わせする場合は、以下の式(1)の値を最小にすればよい。
【0041】
【数1】
しかし、上記式(1)の値が最小の場合であっても、電極と配線パターンが接続上最適な位置になるわけではない。電極と配線パターンが接続するためには、以下の式(2)を満たす必要がある。
【0043】
ここでtol
rは、ユーザから与えられるパラメータであり、チップマークt
i,jに対してマスクマークm
i,jがずれても配線が電極に届く許容値である。このtol
rの具体的な値は、電極(パッド)の径や配線の太さなどから求められているものとする。また、本来ならばtol
rはチップ毎に異なる値が与えられ得るものであるがここでは説明の簡便のため、全チップに共通の値が与えられているものとする。
式(2)の条件を満たしながら式(1)の値が最小値となるように配線マスクの位置を求めると、電極と配線パターンが接続される位置関係が得られることになる。そのような位置関係を演繹的に算出するためには、以下の式(3)を用いる。
【0045】
ここでαは、配線マスクの位置が設計上の位置からずれたズレ量に相当する変数である。この式(3)は、最大のr
i,j=tol
rという条件下でαについて演繹的に解く事ができるが、α≦1を満たす解が存在していれば、電極と配線パターンが接続される現実的な位置関係が存在することになる。つまり、そのような解のαに相当する露光位置で配線パターンの露光を行えば電極と配線パターンが接続されることになる。
このような解法を、つなぎパターンを用いる場合に拡張すると、以下の式(4)と式(5)が得られる。
【0048】
ここで、tol
uおよびtol
vは、ユーザから与えられるパラメータであり、チップマークt
i,jおよびマスクマークm
i,jに対してつなぎマスクのマスクマークp
i,jがずれてもつなぎパターンが配線および電極に届く許容値である。
上記の式(4)を、最大のu
i,j=tol
uかつ最大のv
i,j=tol
vという条件下でαおよびβについて解き、α+β≦1を満たす解が存在していれば、つなぎパターンを介して電極と配線パターンが接続される現実的な位置関係が存在することになる。つまり、そのような解のαおよびβに相当する露光位置でつなぎパターンおよび配線パターンの露光を行えばつなぎパターンを介して電極と配線パターンが接続されることになる。
図12に示す制御部260の演算部262では、このような解法によって露光位置が算出される。
さらに、上述した解法を、つなぎパターンを複数回用いる場合に拡張する事も出来る。この場合は、以下の式(6)と式(7)が得られる。
【0051】
ここで、u
i,j,kは、i番目のチップのj番目の実際のチップマークt
i,jと、k番目のつなぎマスクのマスクマークp
i,j,kとのマーク間距離であり、v
i,j,kは、k番目のつなぎマスクのマスクマークp
i,j,kと配線マスクのマスクマークm
i,jとのマーク間距離である。
このような式(6)および式(7)も上記同様に解くことが出来る。
チップがワーク(基板)にマウントされる精度と、電極と配線とをつなぐのに必要な重ね合わせ精度が分かっていれば、つなぎパターンが最大で何層必要であるか(つなぎパターンを最大で何回形成すればよいか)は経験的にわかるはずであるから、つなぎパターンの層を実際のマウント位置に関わらず常にその層数分形成してもよい。
あるいは、露光装置でチップマークとワークマークを検出することで実際のマウント精度が得られるので、そのように得られたマウント精度に応じてつなぎパターンが何層必要か(つなぎパターンを何回形成するか)を演算し、その層数だけつなぎパターンを露光形成するようにしてもよい。
なお、つなぎパターンは、他の配線や他の電極と短絡しない位置に形成しなければならない。また、チップのマウントがあまりにも大きな位置ずれを生じていた場合、電極と配線端部の中間位置につなぎパターンを形成しても、両者を接続できない場合もある。これらについては、露光装置を以下のように制御することで対応する。
【0052】
電極の径の大きさ、配線端部の位置、つなぎパターンの径の大きさはあらかじめ設定されており既知のものであるので、
図12に示す露光装置123の制御部260の記憶部263に記憶させておく。そして、露光装置123がチップマークを検出したら演算部262で電極の位置座標を演算する。さらに、記憶しておいた上記情報に基づいて、形成するつなぎパターンで電極と配線端部とを接続できるかを演算し、つなぎパターンを形成した際に他の電極や配線と短絡しないかも演算する。これらの演算により、つなぎパターンを形成しても電極と配線端部とを接続できない、あるいはつなぎパターンを形成すると他の電極や配線と短絡するといった結果が得られた場合は、制御部260は、露光動作を停止し、その旨を示す信号(警告メッセージなど)をモニタ270に表示する。
【0053】
なお、上記説明では、配線パターンの露光位置を設計位置からずらすとともにつなぎパターンを形成する例を示したが、本発明では、配線パターンの露光位置は設計位置からずらさずに、つなぎパターンの形成のみで電極と配線とを接続してもよい。この場合、式(4)、式(6)においてw
i,j=0、かつβ=1−αとなる。
また、上記説明では、つなぎパターンとして、マウントの誤差で離れてしまった配線パターンと電極とを繋ぐための専用のつなぎパターンを例示したが、本発明にいうつなぎパターンは、例えば層の高さを合わせるためなどの他の目的で配線パターンと電極との間に設けられている中間のパターンを、チップの搭載位置に基づいて決められた箇所につなぎパターンとして形成したものであってもよい。