(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ニップ幅変更部は、前記記録媒体が封筒である場合、前記ベルト部材に対する張力の付与態様を変更することにより、前記定着ニップに対する前記記録媒体の進入角度を変更する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の定着装置。
前記ニップ幅変更部は、前記記録媒体が封筒である場合、前記ベルト部材に対する張力の付与態様を変更することにより、前記定着ニップに対する前記記録媒体の排出角度を変更する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の定着装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。
図2は、本実施の形態に係る画像形成装置1の制御系の主要部を示す。
【0015】
図1および
図2に示すように、画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に転写(一次転写)し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、給紙装置2から給紙された記録媒体Pに転写(二次転写)することにより、画像を形成する。
【0016】
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0017】
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60、及び制御部101を備える。
【0018】
制御部101は、CPU(Central Processing Unit)102、ROM(Read Only Memory)103、RAM(Random Access Memory)104等を備える。CPU102は、ROM103から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM104に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロック等の動作を集中制御する。このとき、記憶部112に格納されている各種データが参照される。記憶部112は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
【0019】
制御部101は、通信部111を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部101は、例えば、外部の装置から送信された画像データ(入力画像データ)を受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて記録媒体Pに画像を形成させる。通信部111は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0020】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11及び原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
【0021】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11により、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることが可能となる。
【0022】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0023】
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部101から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部101に出力する。
【0024】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定又はユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部101の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0025】
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
【0026】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示すこととする。
図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0027】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、及びドラムクリーニング装置415等を備える。
【0028】
感光体ドラム413は、例えばドラム径が80mmのアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
【0029】
制御部101は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示せず)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度で回転させる。
【0030】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0031】
現像装置412は、二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0032】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレード等を有し、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーを除去する。
【0033】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
【0034】
中間転写ベルト421は無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0035】
中間転写ベルト421は、導電性および弾性を有するベルトであり、表面に体積抵抗率が8〜11logΩ・cmである高抵抗層を有する。中間転写ベルト421は、制御部101からの制御信号によって回転駆動される。なお、中間転写ベルト421については、導電性および弾性を有するものであれば、材質、厚さおよび硬度を限定しない。
【0036】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0037】
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から記録媒体Pへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0038】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側(一次転写ローラー422と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0039】
その後、記録媒体Pが二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が記録媒体Pに二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、記録媒体Pの裏面側(二次転写ローラー424と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は記録媒体Pに静電的に転写される。トナー像が転写された記録媒体Pは定着部60に向けて搬送される。
【0040】
ベルトクリーニング装置426は、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。なお、二次転写ローラー424に代えて、二次転写ローラーを含む複数の支持ローラーに、二次転写ベルトがループ状に張架された構成を採用しても良い。
【0041】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、及び搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a〜51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された記録媒体P(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類毎に収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー対を有する。
【0042】
給紙トレイユニット51a〜51cに収容されている記録媒体Pは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された記録媒体Pの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が記録媒体Pの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された記録媒体Pは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0043】
図3および
図4は、本実施の形態に係る定着装置を概略的に示す図である。
図3および
図4に示すように、定着部60は、加熱ローラー61、上加圧ローラー62、定着ベルト63(本発明の「定着面側部材」に対応)、下加圧ローラー64(本発明の「裏面側支持部材」に対応)、ベルト部材66、ニップ幅変更部70等で構成される。
【0044】
定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。定着部60、および、定着部60を制御する制御部101が、本発明の「定着装置」に対応する。
【0045】
加熱ローラー61は、アルミニウム等の熱伝導率の高い金属材料からなる中空構造のローラー部材であって、その円筒体の内部にはヒーター61a(熱源)が設けられている。ヒーター61aは、ハロゲンヒーターであって、その両端部が定着器Fの側板(図示せず)に固定される。装置本体の電源部(交流電源)により出力制御されたヒーター61aからの輻射熱によって加熱ローラー61が加熱される。
【0046】
上加圧ローラー62は、記録媒体Pの定着面(トナー像が形成されている面)側であって加熱ローラー61の下方に、回転可能に配置される。上加圧ローラー62は、SUS304等の芯金上にスポンジ材からなる弾性層が形成されたスポンジローラーであって、下加圧ローラー64に定着ベルト63を介して圧接する。
【0047】
定着ベルト63は、樹脂材料からなるベース層上に、弾性層、離型層が順次積層された多層構造の無端状ベルトである。定着ベルト63の弾性層は、フッ素ゴム、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性材料で形成されている。離型層は、PFA(4フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、PES(ポリエーテルサルフォン樹脂)、等で形成されている。離型層を設けることにより、トナー像に対する離型性が担保される。
【0048】
定着ベルト63は、上加圧ローラー62と加熱ローラー61とに巻き掛けられている。定着ベルト63は、上加圧ローラー62と下加圧ローラー64とにより挟まれ、記録紙Pを加熱する。
【0049】
ベルト部材66は、ニッケル、ニッケル合金、鉄などの金属製の無端状ベルトである。ベルト部材66は、高い張力に耐えうる機械的な強度を有する。
図3および
図4に示すように、ベルト部材66は、下加圧ローラー64と一対の支持ローラー72とに巻き掛けられる。一対の支持ローラー72は、定着ニップ位置の記録媒体搬送方向における上流側と下流側とに配置されている。なお、ベルト部材66は、機械的な強度、トナーに対する離型性、可撓性、および耐熱性などを有するものであれば、金属製のものに限定されない。
【0050】
制御部101は、例えば、記録媒体Pの種類(例えば、普通紙、封筒)の情報を定着部60に出力する。ニップ幅変更部70は、記録媒体Pの種類に応じて、ベルト部材66に対する張力の付与態様を変更することにより、記録媒体Pの搬送方向における定着ニップのニップ幅を変更する。なお、本発明はこれに限定されない。例えば、ユーザーによる入力操作を受けて、操作部22が制御部101に操作信号を出力し、制御部101が制御信号を定着部60に出力し、ニップ幅変更部70が制御信号を受けて、定着ニップのニップ幅を変更するようにしてもよい。
【0051】
図5はニップ幅変更部70を概略的に示す図である。
図5に示すように、ニップ幅変更部70は、上流側の支持ローラー72を上下方向に移動させると、下流側の支持ローラー72を上下方向に移動させるローラー移動機構とを備えている。ニップ幅変更部70は、ローラー移動機構により上流側および下流側の支持ローラー72の位置を変更することによって、ベルト部材66に対する張力の付与態様を変更する。両方の機構は同じ構成を有しているため、以下、一方のローラー移動機構について説明し、他方の説明に代える。ここで、「ベルト部材66に対する張力の付与態様」とは、ベルト部材66に対して張力を付与する方向(例えば、記録媒体の搬送方向に対し平行な方向、搬送方向に対し直交する方向)および力の大きさを含む。
【0052】
ローラー移動機構は、支持ローラー72の回転軸の両端部に設けられた軸受け部74a,74bと、軸受け部74a、74bが連結されたナット部75a,75bと、ナット部75a,75bを上下方向に案内するガイド部76a,76bと、スクリュー軸を有し、ナット部75a,75bに螺合し、スクリュー軸回りに回転することでナット部75a,75bを上下方向に移動させるスクリュー部78a,78bと、スクリュー部78a,78bを回転させるモーターMa,Mbと、を備えている。
【0053】
モーターMa,Mbが回転すると、スクリュー部78a,78bを回転させ、ナット部75a,75bを上下移動させ、支持ローラー72を上下移動させる。モーターMa,Mbが回転停止すると、スクリュー部78a,78bを回転停止させ、ナット部75a,75bの上下移動を停止させ、支持ローラー72を所定の高さ位置に拘束する。
【0054】
図3に示すように、上流側および下流側の一対の支持ローラー72は下降位置に位置する。ベルト部材66は、フリーの状態であり、上加圧ローラー62に圧接しない。ここで、フリーの状態とは、ベルト部材66に対して張力を付与する力がない状態をいう。
【0055】
図3に示すベルト部材66がフリーの状態では、下加圧ローラー64が定着ベルト63を押し込むことによって、曲線状の定着ニップが形成される(
図6参照)。
図3に示す状態で、通常の記録媒体Pの通紙が行われる(通常通紙時の状態)。
【0056】
図7は、ベルト部材66の張力と定着ニップにおける記録媒体Pが受ける圧力との関係を示す図である。
図7に点線で示すように、通常通紙時の状態では、記録媒体Pが受ける圧力が所定値以上となる定着ニップの記録媒体搬送方向における長さ(ニップ幅)は短い。
【0057】
図3に示すベルト部材66がフリーの状態では、上流側および下流側の一対の支持ローラー72が下降位置に位置している。
【0058】
ニップ幅変更部70は、記録媒体Pの種類(例えば、封筒)に応じて、モーターMa,Mbを回転させる。これにより、スクリュー部78a,78bを回転させ、ナット部75a,75bを上方移動させ、支持ローラー72を上方移動させる。一対の支持ローラー72の上方移動に応じて、ベルト部材66は、一対の支持ローラー72間、上流側の支持ローラー72と下加圧ローラー64との間、および、下流側の支持ローラー72と下加圧ローラー64との間で、張られる。
【0059】
図4に示すように、ベルト部材66は、一対の支持ローラー72間、上流側の支持ローラー72と下加圧ローラー64との間、および、下流側の支持ローラー72と下加圧ローラー64との間で、張られた状態となる。このとき、モーターMa,Mbの回転を停止させて、スクリュー部78a,78bを回転停止させることにより、ナット部75a,75bの上下移動を停止させ、上流側および下流側の一対の支持ローラー72を上昇位置に拘束する。
【0060】
一対の支持ローラー72を上昇位置に拘束した状態では、ベルト部材66が記録媒体の搬送方向と平行な方向の張力を付与され、ベルト部材66が定着ベルト63を介して上加圧ローラー62を押し上げる。上加圧ローラー62は軟らかな弾性層を有する。これにより、直線状の定着ニップ(フラットニップ)が形成され、また、定着ニップの記録媒体搬送方向における長さ(ニップ幅)が長くなる(
図4および
図7参照)。
図4に示す状態では、2枚の紙を重ねて接着した封筒などの記録媒体Pの通紙が行われる(封筒等通紙時の状態)。
【0061】
図7に実線で示すように、封筒等通紙時の状態におけるニップ幅は、通常通紙時の状態におけるニップ幅より長い。なお、ここで、定着ニップとは、定着ベルト63と下加圧ローラー64とを、ベルト部材66を介して圧接させた部分ばかりでなく、ベルト部材66を上加圧ローラー62に圧接させた部分(疑似ニップ)も含まれるものとする。
図7に示す実線の中心の凸部が、定着ベルト63と下加圧ローラー64とを圧接させた部分にける圧力を示し、凸部の両側部が、疑似ニップの圧力を示す。なお、
図8に示すように、封筒等通紙時に上下の加圧ローラー62,64の中心軸間の距離を通常時より長くした場合、
図7に破線で示すように、定着ニップの圧力は下がる。また、ニップ幅も狭くなる。
【0062】
ニップ幅変更部70は、記録媒体Pの種類(例えば、普通紙)に応じてモーターMa,Mbを回転させる。これにより、スクリュー部78a,78bを回転させ、ナット部75a,75bを下方移動させ、支持ローラー72を下方移動させる。一対の支持ローラー72の下方移動に応じて、ベルト部材66は、一対の支持ローラー72間、上流側の支持ローラー72と下加圧ローラー64との間、および、下流側の支持ローラー72と下加圧ローラー64との間で弛められ、
図3に示すフリーの状態となる。これにより、定着ニップが曲率を持つようになり、普通紙を容易に分離することができる。
【0063】
上記の実施の形態に係る定着装置によれば、記録媒体の搬送方向と平行な方向の張力をベルト部材66に付与し、ベルト部材66を上加圧ローラー62に圧接させ、直線状の定着ニップを形成し、かつ、ニップ幅を長くしたので、定着性を低下させることなく、封筒などの記録媒体Pを定着する際に記録媒体Pの皺や画像ずれの発生を防止することが可能となる。
【0064】
また、定着ニップにおいて、上下の加圧ローラー62,64により記録媒体Pに圧力を加える。これにより、ピークの圧力が通常通紙時と変わらず、定着性が低下しない。
【0065】
さらに、通常通紙時は、ベルト部材66をフリー状態にするため、通常の記録媒体Pにも対応できるため、封筒などの記録媒体Pに対応する封筒専用機を用意することなく、封筒などの記録媒体の通紙を行うことが可能となる。
【0066】
さらに、通常通紙時は、定着ベルト63とベルト部材66とによる定着ニップの記録媒体搬出側の曲率を確保しているため、記録媒体Pの分離性を損なわない。
【0067】
上記の実施の形態では、ベルト部材66の張力を通常通紙時と封筒等通紙時との2段階に調整するニップ幅変更部70を示したが、記録媒体の種類に応じて、ベルト部材66の張力を3段階以上に調整してもよい。これにより、分離性の悪い記録媒体の場合、定着ベルト63とベルト部材66とによる定着ニップの記録媒体排出側に少し曲率を持たせるようにすることで、記録媒体の分離性を確保することできる。
【0068】
また、上記の実施の形態では、ベルト部材66を下加圧ローラー64に巻き掛けたものを示したが、本発明はこれに限らない。ベルト部材66を上加圧ローラー62に巻き掛けてもよい。この構成では、支持ローラー72を下降位置に移動させたとき、ベルト部材66に記録媒体の搬送方向と平行な方向の張力が付与されて、定着ニップのニップ幅が広くなり、支持ローラー72を上昇位置に移動させたとき、ベルト部材66がフリー状態となって、ニップ幅が狭くなる。
【0069】
また、上記の実施の形態では、ベルト部材66が一対の支持ローラー72および下加圧ローラー64に巻き掛けられるものである。これにより、下加圧ローラー64の回転力によりベルト部材66を周回させることができ、簡単な構成で、ベルト部材66を下加圧ローラー64に連動させることができる。しかし、本発明はこれに限らない。ベルト部材66が一対の支持ローラー72に巻き掛けられるが、下加圧ローラー64に巻き掛けられないものであってもよい。これにより、例えば、ベルト部材66を小スペースに配置することが可能となる。
【0070】
(変形例1)
次に、定着装置の変形例1について
図9を参照して説明する。
封筒は、封入口のフタであるフラップ部を有する。封筒を定着ニップに通紙するとき、フラップ部は他の部分より厚く、他の部分より高い圧力がかかるため、皺を発生させ易い。フラップ部における皺の発生を防止するためには、封筒におけるフラップ部にかかる圧力を下げ、かつ、他の部分にかかる圧力を下げないように、支持ローラー72の回転軸の角度を調整すればよい。
【0071】
フラップ部の位置を検知する検知部82(
図2参照)を備える。検知部82には、例えば、紙の厚さ検知(重送検知)によりフラップ部を特定する技術が用いられる。制御部101は、検知部82の検知結果を受けて定着部60に制御信号を出力する。なお、操作部22(
図2参照)による手入力でフラップ部の位置が入力されてもよい。この場合、制御部101は、フラップ部の位置に基づいて定着部60に制御信号を出力する。ニップ幅変更部70は、上加圧ローラー62の中心軸に対し、支持ローラー72の回転軸におけるフラップ部に相当する側の端部がそれと反対側の端部より離れるように、スクリュー部78a,78bの回転によりナット部75a,75bを上下移動させて、支持ローラー72の回転軸の角度を調整する。これにより、フラップ部が定着ニップに通し易くなる。
【0072】
図9において説明すると、支持ローラー72の回転軸における左端部の位置が右端部の位置より低くなるように、支持ローラー72の回転軸の角度を調整する。
上記の変形例1に係る定着装置によれば、フラップ部を自動的に検知して、フラップ部における皺等の発生を防止することが可能となる。
【0073】
なお、検知部82の検知結果に基づいて、支持ローラー72の回転軸の角度を調整したが、これに限らない。例えば、ユーザーによる入力操作(フラップ部の位置を指定する操作)を受けて、操作部22が制御部101に操作信号を出力し、制御部101が制御信号を定着部60に出力し、ニップ幅変更部70が制御信号を受けて、支持ローラー72の回転軸の角度を調整するようにしてもよい。
【0074】
(変形例2)
次に、定着装置の変形例2について
図10Aから
図10Cを参照して説明する。
図10Aから
図10Cは、変形例2に係る定着装置を示す図である。
上記の実施形態において、記録媒体搬送方向(水平方向)と平行な方向の張力をベルト部材66に付与し、ベルト部材66を上加圧ローラー62に圧接することにより、ニップ幅が広く、かつ、フラットな定着ニップを形成するこができる。これにより、2枚の紙を接着した封筒などの記録媒体を定着ニップに通紙した場合に、2枚の紙のずれを防止することができる。
【0075】
しかし、記録媒体の種類によっては、2枚の紙にずれが生じ、皺が上側の紙や下側の紙に発生し、または、発生するおそれがある場合がある。皺等の発生を防止し、また、皺等を発生し難くするためには、定着ニップに対する記録媒体の進入角度や定着ニップに対する記録媒体の排出角度を調整すればよい。なお、
図10Aに示すように、上記の実施形態では、進入角度および排出角度はいずれも水平方向である。
【0076】
ニップ幅変更部70は、進入角度および排出角度の少なくとも一方を調整するように、上流側および下流側の支持ローラー72の位置を調整する。
【0077】
ニップ幅変更部70は、皺が下側の紙に発生し、または、発生するおそれがある場合、上流側の支持ローラー72の位置を定着ニップより高く、下流側の支持ローラー72の位置を定着ニップより低くするように、スクリュー部78a,78bの回転によりナット部75a,75bを上下移動させる。これにより、
図10Bに示すように、記録媒体が斜め上方に向かって定着ニップに搬入される進入角度となる。また、記録媒体が斜め上方に向かって定着ニップから搬出される排出角度となる。
【0078】
ニップ幅変更部70は、皺が上側の紙に発生し、または、発生するおそれがある場合、上流側の支持ローラー72の位置を定着ニップより低く、下流側の支持ローラー72の位置を定着ニップより高くするように、スクリュー部78a,78bの回転によりナット部75a,75bを上下移動させる。これにより、(
図10Cに示すように、記録媒体が斜め下方に向かって定着ニップに搬入される進入角度となる。また、記録媒体が斜め下方に向かって定着ニップから搬出される排出角度となる。
【0079】
上記変形例2に係る定着装置によれば、上流側および下流側の支持ローラー72の位置を調整することにより、記録媒体の進入角度や排出角度を調整する。これにより、皺等の発生をさらに防止することが可能となる。
【0080】
記録媒体の種類に応じて、皺が発生するのが紙の上側であるか、または下側であるかの傾向がある場合、ニップ幅変更部70が記録媒体の種類に応じて、上流側および下流側の支持ローラー72の高さ位置を調整するようにしてもよい。
【0081】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明の実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。