(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ケースには、前記電気接触部材との間で前記弾性部材を挟むように位置し外部と接続するための端子部を備えた中間端子が収容されており、前記中間端子は可撓性を有する編組線によって前記電気接触部材と接続されている請求項1または請求項2に記載の端子金具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2002−274290号公報(上記特許文献1)の構成では、大電流用途の場合には利用することができない。なぜなら、大電流用途の場合には、板ばね部材の板厚が大きくなって剛性が高くなるため、折り曲げられた部分が弾性変形し難くなくなる。そのため、板ばね部材の自由端部が雄側の接点と接触する時に、弾性変形に起因するずれ動き現象が起こりにくく、結局、接触部分に付着した異物を十分に排除できなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示される端子金具は、相手側接点が進入する開口部が設けられたケースと、前記ケース内に前記開口部に臨むように配され、弾性部材によって前記開口部側に向けて付勢され前記相手側接点に押圧されることで前記弾性部材を圧縮しつつ回動しながら後退する電気接触部材とを備える。
【0007】
このような構成では、電気接触部材は、ケース内で弾性部材によってケースの開口部側に押圧されてケースに受け止められ、所定の初期姿勢をとっている。このような状態で、ケースの開口部を通って相手側接点が進入すると、相手側接点が電気接触部材に突き当たり、弾性部材を圧縮しつつ相手側接点から逃げるように後退する。このとき、電気接触部材は、初期姿勢から傾斜角度を変化させるよう回動しながら後退するため、相手側接点との接触部分で電気接触部材を擦るようなずれ動き現象が生じ、両者間に異物が存在していたとしても、その異物がこすり取られる。このように、電気接触部材自体が弾性変形しなくても、相手側接点との間でずれ動き現象が生ずるため、電気接触部材の板厚を電流値に応じて厚くして用いることができる。
【0008】
本明細書に開示される端子金具の実施の態様として、以下の構成としてもよい。
前記弾性部材の付勢力の作用軸は、前記相手側接点の押圧力の作用軸と同一直線上に配されており、前記ケース内では、前記電気接触部材が前記弾性部材の作用軸に対して非垂直となる傾斜状態で保持されている構成としても良い。
このような構成では、電気接触部材を傾斜状態で保持するだけの簡易な構造で、電気接触部材を回動させることができる。
【0009】
前記弾性部材をコイルスプリングとし、前記ケース内では、前記電気接触部材が前記コイルスプリングの中心軸に対して非垂直となる傾斜状態で保持されており、前記電気接触部材と接触する前記コイルスプリングの環状をなす巻回端部の領域内に前記相手側接点の押圧力の作用軸が配されている構成としても良い。
【0010】
このような構成では、電気接触部材がコイルスプリングの中心軸に対して非垂直となる傾斜状態となっているから、コイルスプリングの中心軸を挟んだ一方側の長さが他方側の長さよりも小さくなる。そのため、コイルスプリングの中心軸を挟んで一方側と他方側とでは電気接触部材に及ぼす付勢力(弾発力)が相違する。この状態で、相手側接点に押圧されて電気接触部材が後退すると、相手側接点の押圧力の作用軸がコイルスプリングの環状をなす巻回端部の領域内に配されているため、相手側接点が支点として作用してコイルスプリングの中心軸の両側の弾発力が均等になるように、電気接触部材が傾斜状態を変化させるよう回動する。この結果、電気接触部材と相手側接点との間の接触部分においてずれ動き現象が発生して異物の排除がなされる。
【0011】
前記ケースには、前記電気接触部材との間で前記弾性部材を挟むように位置し外部と接続するための端子部を備えた中間端子が収容されており、前記中間端子は可撓性を有する編組線によって前記電気接触部材と接続されている構成としても良い。
【0012】
このような構成では、外部との接続は、中間端子によって行われている。そのため、外部との接続構造によって、電気接触部材が回動動作を行う際の妨げになることがない。また、電気接触部材は中間端子と編組線によって接続されており、編組線は可撓性を有しているため、電気接触部材の回動動作の妨げになりにくい。
【0013】
本明細書に開示された端子金具を用いたコネクタの実施の態様として、以下の構成としても良い。
端子金具を収容可能なコネクタハウジングを備えたコネクタであって、前記電気接触部材の一端は前記相手側接点方向に折り曲げられた曲げ片とされており、前記コネクタハウジングには、前記曲げ片が前記電気接触部材の長手方向に移動することを規制する移動規制部が設けられている構成としても良い。
【0014】
このような構成では、コネクタハウジングの移動規制部によって、電気接触部材の長手方向への移動が規制されることから、電気接触部材が回動動作中に長手方向に移動することが規制され、回動動作が行いやすくなる。
【発明の効果】
【0015】
本明細書に開示される端子金具によれば、電流値が大きくなって板厚が厚くなっても相手側接点との間の異物を除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
実施形態を
図1から
図10の図面を参照しながら説明する。
本実施形態の端子金具10は、相手側端子90と突き当てられることで、相手側端子90と電気的に接続される。以下の説明では、
図2における上側を上側とし、
図2における下側(相手側端子90側)を下側として説明する。また、
図2における左側を前側とし、
図2における右側(編組線45側)を後側とする。
【0018】
本実施形態の端子金具10は、
図1に示すように、ケース20と、ケース20の内部に圧縮状態で収容されたコイルスプリング40(「弾性部材」の一例)と、コイルスプリング40の上側に配された中間端子50と、コイルスプリング40の下側に配された電気接触部材60と、中間端子50と電気接触部材60とを導通可能に接続する編組線45とを備えて構成されている。
【0019】
ケース20は、SUS材などの金属板材をプレス加工したものであって、
図3及び
図4に示すように、天井壁21と、天井壁21の両側縁から下方に延出された左右一対の側壁23と、側壁23の下縁から天井壁21と対向する配置で内向きに延出された複数の支持部25、27とを備えて構成されている。複数の支持部25、27の間であって、天井壁21と対向する部分は相手側端子90が進入可能な開口部31となっている。
【0020】
図1及び
図2に示すように、側壁23には、第1開口33が設けられている。第1開口33は、側壁23の前後方向の略中央位置に設けられており、天井壁21からの折れ曲がり部分(側壁23の上端縁)から下方に開口している。また、側壁23には、開口部31と連通して上方に開口する一対の第2開口35が設けられている。第2開口35は、側壁23の前後方向の略中央位置に設けられており、支持部25、27の間に位置している。第2開口35は、第1開口33よりも幅広で、上下方向の寸法が小さくなっている。そして、第2開口35の上端縁は、天井壁21や中間端子50と略平行で、コイルスプリング40の中心軸Lと略垂直になっている。また、天井壁21には、逃がし孔37が貫通して設けられている。逃がし孔37は、左右一対の第2開口35の間に位置している。
【0021】
複数の支持部25、27は、
図4に示すように、電気接触部材60の後端側に配された左右一対の一端側支持部25と、電気接触部材60の前端側に配された左右一対の他端側支持部27とからなる。
図5に示すように、一端側支持部25と天井壁21の間隔は、他端側支持部27と天井壁21の間隔よりも小さい。また、一端側支持部25の内面と他端側支持部27の内面は、同一平面をなすように配置されている。つまり、一端側支持部25の内面と他端側支持部27の内面とは、コイルスプリング40の中心軸Lに対して非垂直となる傾斜面を形成するように配置されている。
【0022】
コイルスプリング40は、
図1及び
図5に示すように、SUSなどの金属線材をコイル状に巻回したものであって、その一端の環状をなす巻回端部41が中心軸Lに垂直な円を描くように略1周分巻回された後、らせん状に巻回されて、他端の環状をなす巻回端部41が中心軸Lに垂直な円を描くように略1周分巻回されている。そして、コイルスプリング40は、自然状態ではそのばね長さは中心軸Lをまわる全周において等しい寸法となっている。
【0023】
そして、コイルスプリング40は、中間端子50と電気接触部材60とによって圧縮状態で挟持されているため、上端の巻回端部41Aが中間端子50と接触し、下端の巻回端部41Bが電気接触部材60と接触している。このため、コイルスプリング40は、中間端子50と電気接触部材60の双方を付勢し、中間端子50が天井壁21の内面に押し付けられ、電気接触部材60がケース20の支持部25、27に押し付けられている。
【0024】
なお、コイルスプリング40の内部には、
図1及び
図5に示すように、保持軸43が挿通されている。この保持軸43は、真鍮などの金属製であって中間端子50にカシメ等の手段によって固着されたものである。
【0025】
また、保持軸43の下端は、第2開口35の上端位置よりも上方に位置している。詳細には、保持軸43の下端は、電気接触部材60が相手側端子90によって上方に持ち上げられた場合に、保持軸43の下端と電気接触部材60が干渉しない範囲内で、最大限下方に位置するように配されている。このようにすることで、コイルスプリング40が上下方向からの力によって傾くことを抑制できるようになっている。
【0026】
中間端子50は、
図1及び
図5に示すように、銅合金などの金属板材をプレス加工したものであって、天井壁21とコイルスプリング40との間に挟持されている。中間端子50は、コイルスプリング40の上端を支持する第1ばね受け部51と、第1ばね受け部51の後方に配された第1編組線接続部53と、第1ばね受け部51及び第1編組線接続部53と直交する配置で上方に立ち上がる機器側接続部55(「端子部」の一例)とを有している。そして、機器側接続部55には、ボルト孔55Aと係止孔55Bとが設けられている。
【0027】
第1ばね受け部51には、固着孔51Aが貫通して設けられており、保持軸43の上端部43Aが固着孔51Aに挿通されてかしめられることで、中間端子50と保持軸43とが固着されている。そして、この保持軸43のかしめられた部分がケース20の逃がし孔37に収容されている。また、第1ばね受け部51の両側縁には、一対の第1張出部57が設けられており、第1張出部57は第1開口33内に配される。一対の第1張出部57の前後方向の寸法は、第1開口33の前後方向の寸法と略同一もしくは若干小さくなっている。そのため、第1張出部57が第1開口33の前後の開口縁に対して当接することで、中間端子50の前後方向への移動を抑制している。一方で、第1開口33は天井壁21から下方に開口していることから、中間端子50の下方への移動を許容している。
【0028】
電気接触部材60は、
図1及び
図5に示すように、銅合金などの金属板材をプレス加工したものであって、両支持部25、27の内面とコイルスプリング40との間にコイルスプリング40の中心軸Lに対して非垂直となる傾斜状態で挟持されている。また、電気接触部材60の板厚は、端子金具10に求められる電気容量によって設定されており、コイルスプリング40と比較した時に剛体とみなせる程度の板厚と硬さを有している。
【0029】
電気接触部材60は、コイルスプリング40の下端の巻回端部41Bを受ける第2ばね受け部61と、ケース20の一端側支持部25によって支持された第2編組線接続部63と、第2ばね受け部61及び第2編組線接続部63と直交する配置で下方に折り曲げられた曲げ片65を有している。第2編組線接続部63は、第1編組線接続部53と対向する位置に設けられている。また、電気接触部材60は、ほとんどがケース20の内部に収容されているものの、曲げ片65と後記する第2張出部67については、ケース20の外部に配されている。
【0030】
第2ばね受け部61は、一端側支持部25と他端側支持部27との間に位置し、ケース20の開口部31によってその下面側をケース20の外部に露出している。この第2ばね受け部61の下面側は、相手側端子90との接点部69とされている。また、第2ばね受け部61の両側縁には、一対の第2張出部67が設けられており、第2張出部67は第2開口35内に配される。一対の第2張出部67の前後方向の寸法は、第2開口35の上端縁での前後方向の寸法と略同一もしくは若干小さくなっている。そのため、第2張出部67が第2開口35の前後の開口縁に対して当接することで、中間端子50の前後方向への移動を抑制している。一方で、第2開口35は開口部31から連通して上方に開口していることから、電気接触部材60の上方への移動を許容している。
【0031】
編組線45は、導電性のある銅等の金属素線を編んで作られたものである。
図5に示すように、編組線45の両端部は、中間端子50の第1編組線接続部53及び電気接触部材60の第2編組線接続部63に抵抗溶接で接続されている。そして、編組線45の中間部分47は、ケース20の外部に配され、余長を有する状態で略U字状をなしている。そして、中間端子50と電気接触部材60とが相対的に移動すると、中間部分47が撓み変形するようになっている。そのため、中間端子50と電気接触部材60とが相対的に移動する際に、編組線45がその動きの妨げになることが抑制されている。
【0032】
本実施形態の端子金具10は、
図6に示すように、コネクタハウジング70の内部に収容されている。コネクタハウジング70は、上下に分割された合成樹脂製の上割体70Uと下割体70Lとを組み合わせることで構成されている。そして、端子金具10とコネクタハウジング70とによってコネクタC1が構成されている。
【0033】
コネクタハウジング70の上割体70Uには、機器側接続部55をコネクタハウジング70の外部に導出させる導出部71が設けられている。導出部71の内部には、ランス73が設けられている。このランス73は、機器側接続部55の係止孔55Bに嵌まり込んで係止することにより、中間端子50がコネクタハウジング70の内部に落ち込むことを抑制している。
【0034】
コネクタハウジング70の下割体70Lには、相手側端子90の進入を許容するハウジング開口部75が設けられている。ハウジング開口部75は、端子金具10の開口部31とほぼ同じ位置に設けられており、電気接触部材60を下側に露出可能としており、後記する嵌合部97の進入を可能としている。
【0035】
また、コネクタハウジング70の下割体70Lには、一対の移動規制部77が設けられている。一対の移動規制部77は、ハウジング開口部75の後側に設けられており、コネクタハウジング70の下面から上側(内部)に向かって前後方向に所定の間隔を有して突出している。一対の移動規制部77の間には、電気接触部材60の曲げ片65が収容されている。一対の移動規制部77の間の間隔は、曲げ片65の板厚よりも大きく、電気接触部材60の回動動作によって曲げ片65が回動する妨げにならない程度の大きさとなっている。また、一対の移動規制部77は、互いに同じ高さであって、電気接触部材60が最も上方に位置する時(第2開口35の上端縁に第2張出部67が当接する位置)に、曲げ片65の下端位置よりも高くなるようになっている。これにより、端子金具10が、コネクタハウジング70の内部において前後方向に移動することが規制されている。
【0036】
コネクタC1に嵌合する相手側コネクタC2は、相手側端子90と合成樹脂製の相手側ハウジング95とを備えている。相手側端子90は、
図6に示すように、導電性の金属で形成されており、上下方向に延びる板状部材が前方に略直角に曲げられることで略L字状に形成されている。相手側端子90のうち電気接触部材60に対向する一端側が相手側接点91とされている。そして、相手側接点91の上面には、球状部93が下面側からの叩き出しにより形成されている。球状部93の中心位置(最も高くなる点)が、コイルスプリング40の中心軸Lの延長線上に配されるようになっている。
【0037】
また、相手側端子90は相手側ハウジング95にインサート成形によって保持されている。相手側接点91は、嵌合部97によって保持されている。嵌合部97がハウジング開口部75内に進入することで、コネクタC1と相手側コネクタC2とが嵌合する。そして、嵌合部97の下縁位置には、フランジ部99が外側に向かって突出するように設けられている。フランジ部99がコネクタハウジング70の下面に当接することで、相手側端子90(相手側接点91)が既定位置を超えて進入することを抑制している。
【0038】
本実施形態の端子金具10及びコネクタC1は、以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。
コネクタC1と相手側コネクタC2とが嵌合前の状態では、
図6に示すように、電気接触部材60は、ケース20の開口部31側に押圧された状態で、ケース20(両支持部25、27)に受け止められている。この際、電気接触部材60は付勢力F1の作用軸(コイルスプリング40の中心軸L)に対して非垂直となる傾斜状態で保持されている。
【0039】
また、嵌合前の状態では、電気接触部材60の曲げ片65は、コネクタハウジング70の一対の移動規制部77の間に収容されていることによって前後方向への移動が規制されている。一方で、電気接触部材60は、第2張出部67(
図1参照)が第2開口35の前後の孔縁に当接することで、ケース20内での前後方向への移動が規制されている。そのため、全体として、曲げ片65がコネクタハウジング70に対して移動が規制されていることで、端子金具10のコネクタハウジング70内での前後方向への移動が規制されている。また、中間端子50も導出部71によって保持されることで、コネクタハウジング70に対する移動が規制され、端子金具10のコネクタハウジング70内での前後方向への移動が規制されている。
【0040】
そして、コネクタC1と相手側コネクタC2とが相対的に近づくと、
図7に示すように、コネクタハウジング70のハウジング開口部75及びケース20の開口部31を通って相手側端子90の相手側接点91が進入する。この際に、相手側接点91の球状部93は、コイルスプリング40の中心軸Lに沿った状態で相対的に移動する。このようにして、相手側接点91が電気接触部材60の接点部69に突き当たる。そして、コネクタC1と相手側コネクタC2とがさらに相対的に近づくと、
図8に示すように、コネクタC1と相手側コネクタC2とが完全に嵌合する。このように、電気接触部材60がコイルスプリング40によって相手側接点91側に押し付けられることで、電気接触部材60と相手側接点91とが電気的に接続される。
【0041】
次に、電気接触部材60の回動動作について、
図6から
図9を用いて説明する。コネクタC1と相手側コネクタC2とが嵌合前の初期状態では、
図6に示すように、電気接触部材60はコイルスプリング40の中心軸Lに対して非垂直となる傾斜状態で保持されている。この状態では、
図9に示すように、コイルスプリング40の上下方向の寸法が一方側の寸法L1と他方側の寸法L2とが異なっており、L2>L1の関係となっている。つまり、コイルスプリング40の中心軸Lを挟んで一方側(後側)の長さL1が他方側(前側)の長さL2よりも小さくなっている。
【0042】
このように中心軸Lを挟んでコイルスプリング40の長さが前側と後側とでは異なっている。そのため、コイルスプリング40の圧縮による付勢力(弾発力)が、一方側の弾発力FB(中心軸Lより後側の弾発力)の大きさと他方側の弾発力FA(中心軸Lより前側の弾発力)の大きさでは相違しており、それぞれの力の大きさはFF<FBの関係となっている。なお、これらの巻回端部41Bの領域内でのコイルスプリング40の弾発力を合成すると、コイルスプリング40の全体としての付勢力F1となっており、全体として付勢力F1の作用軸はコイルスプリング40の中心軸L上に配されている。この状態で、コイルスプリング40の付勢力F1とケース20の両支持部25、27による支持力がつりあった状態で電気接触部材60が保持されている。
【0043】
そして、
図8及び
図9に示すように、相手側接点91からの押圧力F2が電気接触部材60にかかると、電気接触部材60がケース20の両支持部25、27から離れる。この状態では、他方側の弾発力FFと一方側の弾発力FBとが異なる状態となっているのを、巻回端部41Bの領域内でのコイルスプリング40の弾発力が均等になるように(力の大きさFF=FBになるように)、電気接触部材60が
図9の二点鎖線で示すコイルスプリング40の中心軸Lに対して垂直な状態になるように回動する。
【0044】
なお、電気接触部材60の回動動作の際には、相手側接点91の作用軸が電気接触部材60と環状の巻回端部41Bの領域内に配されている。コイルスプリング40の巻回端部41Bの領域内を相手側接点91が押圧することで、相手側接点91が回動動作の際の支点として電気接触部材60を支持することができる。また、コイルスプリング40の巻回端部41Bと相手側接点91とが近接しているため、電気接触部材60に対して力がかかる位置も近接する。そのため、電気接触部材60にかかる回転モーメントが大きくなりすぎず、電気接触部材60の回動にかかる力が小さくなり安定する。
【0045】
電気接触部材60の回動後には、電気接触部材60は水平状態となり、コイルスプリング40の全体としての電気接触部材60への付勢力F1の作用軸と相手側接点91からの押圧力F2作用軸とが同じとなり安定する。このようにして、電気接触部材60は、コイルスプリング40の全体としての付勢力F1と相手側接点91の押圧力F2によって水平状態(コイルスプリング40の中心軸Lに垂直な状態)で挟持される。
【0046】
このように電気接触部材60が初期姿勢から傾斜角度を変化させるような回動をする際に、電気接触部材60は相手側接点91と摺動する。この摺動について
図10を用いて説明する。電気接触部材60に相手側接点91が突き当たった状態では、
図10の二点鎖線で示すように、相手側接点91と電気接触部材60の接点部69とは、点Aで点接触する。この状態では、相手側接点91からの押圧力F2は、電気接触部材60に対してほとんど発生していないため、電気接触部材60は、
図7及び
図10に示すように、両支持部25、27によって、コイルスプリング40の中心軸L(コイルスプリング40の付勢力F1の作用軸)に対して非垂直な傾斜状態で支持されている。より具体的には、電気接触部材60の前端側(曲げ片65と反対側)が後端側に比べて、相手側接点91に近接するように配置されている。
【0047】
このように電気接触部材60の前端が下がる傾斜状態で支持されているため、電気接触部材60に相手側接点91が突き当たった際に、相手側接点91の球状部93の中心位置(中心軸L上の点)よりも前方に位置する点Aで接点部69と相手側接点91とが点接触する。そして、付勢力F1および押圧力F2の作用軸(中心軸L)から接触位置(点A)が前方にずれており、かつコイルスプリング40内の弾発力FF、FBに不均等が生じていることから、電気接触部材60に回転力が作用して、相手側接点91と接触したままで相手側接点91の接触点を支点に回動しようとする。そのため、相手側接点91がケース20内に進入するにつれて、電気接触部材60が相手側接点91によって上方(ケース20の内側に)に移動しつつ回動する。そして、付勢力F1および押圧力F2の作用軸(中心軸L)上で接点部69と相手側接点91とが接触する点Bまで、電気接触部材60は回動しながら移動する。
【0048】
つまり、電気接触部材60と相手側接点91とが最初に突き当たった状態(
図7の状態)から嵌合状態(
図8の状態)に移動する間に、電気接触部材60は初期姿勢から傾斜角度を変化させるよう回動しながら後退する。この際に、
図9に示すように、電気接触部材60と相手側接点91とが接触する点が点Aから点Bまで擦るようにしてずれ動くことから、電気接触部材60と相手側接点91との間に異物が存在したとしても、その異物が擦り取られて、接触部分からは排除される。そして、嵌合状態まで移動すると、電気接触部材60は、コイルスプリング40の中心軸Lに対して垂直な状態で保持され、コイルスプリング40の付勢力F1によって相手側接点91に押し付けられる。
【0049】
また、電気接触部材60の回動及び移動に伴って、曲げ片65も回動及び移動する。この際に、一対の移動規制部77の間に曲げ片65が収容されていることから、回動動作時に電気接触部材60が前後方向に移動することを抑制される。なお、第2張出部67が第2開口35によって前後方向の動きが規制されていることによっても、電気接触部材60の前後方向への移動は規制されている。そして、コネクタC1が相手側コネクタC2と嵌合して、
図8に示すように、電気接触部材60がケース20内上方に位置するようになっても、曲げ片65の先端部は一対の移動規制部77の間に収容されていることから、電気接触部材60は、コネクタハウジング70内での前後方向への移動が規制されている。
【0050】
以上のように、本実施形態の端子金具10では、電気接触部材60は、ケース20内でコイルスプリング40によってケース20の開口部31側に押圧されてケースに受け止められ、所定の初期姿勢をとっている。このような状態で、ケース20の開口部31を通って相手側接点91が進入すると、相手側接点91が電気接触部材60に突き当たり、コイルスプリング40を圧縮しつつ相手側接点91から逃げるように後退する。このとき、電気接触部材60は、初期姿勢から傾斜角度を変化させるよう回動しながら後退するため、相手側接点91との接触部分で電気接触部材60を擦るようなずれ動き現象が生じ、両者間に異物が存在していたとしても、その異物がこすり取られる。このように、電気接触部材60自体が弾性変形しなくても、相手側接点91との間でずれ動き現象が生ずるため、電気接触部材60の板厚を電流値に応じて厚くして用いることができる。
【0051】
また、本実施形態の端子金具10では、コイルスプリング40の付勢力F1の作用軸は、相手側接点91の押圧力F2の作用軸と同一直線上(中心軸L上)に配されており、ケース20内では、電気接触部材60がコイルスプリング40の作用軸に対して非垂直となる傾斜状態で保持されている。このような構成では、電気接触部材60を傾斜状態で保持するだけの簡易な構造で、電気接触部材60を回動させることができる。
【0052】
また、本実施形態の弾性部材は、コイルスプリング40であって、ケース20内では、電気接触部材60がコイルスプリング40の中心軸Lに対して非垂直となる傾斜状態で保持されており、コイルスプリング40が電気接触部材60に接触するコイルスプリング40の環状の巻回端部41Bの領域内に相手側接点91の押圧力F2の作用軸が配されている構成としても良い。
【0053】
このような構成では、電気接触部材60がコイルスプリング40の中心軸Lに対して非垂直となる傾斜状態となっているから、コイルスプリング40中心軸Lを挟んだ一方側(後側)の長さL1が他方側(前側)の長さL2よりも小さくなっている。そのため、コイルスプリング40の中心軸Lを挟んで一方側(後側)と他方側(前側)とでは電気接触部材60に及ぼす付勢力(弾発力)が相違する。この状態で、相手側接点91に押圧されて、電気接触部材60が後退すると、相手側接点91の押圧力F2の作用軸がコイルスプリング40の他端の巻回端部41Bの領域内に配されているため、相手側接点91が支点として作用して、電気接触部材60はコイルスプリング40の中心軸Lの両側の券回端部41Bの領域内の弾発力が均等になるように、電気接触部材60が傾斜状態を変化させるよう相手側接点91を支点としてコイルスプリング40の中心軸Lに対して垂直になるように回動する。この結果、電気接触部材60と相手側接点91との間の接触部分においてずれ動き現象が発生して異物の排除がなされる。
【0054】
そして、ケース20には、電気接触部材60との間でコイルスプリング40を挟むように位置し外部(機器)と接続するための機器側接続部55を備えた中間端子50が収容されており、中間端子50は可撓性を有する編組線45によって電気接触部材60と接続されている。このような構成では、外部との接続は、中間端子50によって行われている。そのため、外部との接続構造によって、電気接触部材60が回動動作を行う際の妨げになることがない。また、電気接触部材60は中間端子50と編組線45によって接続されており、編組線45は可撓性を有しているため、電気接触部材60の回動動作の妨げになりにくい。
【0055】
本実施形態のコネクタC1は、端子金具10を収容可能なコネクタハウジング70を備えたコネクタC1であって、電気接触部材60の一端は相手側接点91方向に折り曲げられた曲げ片65とされており、コネクタハウジング70には、曲げ片65が電気接触部材60の長手方向(前後方向)に移動することを規制する移動規制部77が設けられている。このような構成では、コネクタハウジング70の移動規制部77によって、電気接触部材60の長手方向への移動が規制されることから、電気接触部材60が回動動作中に長手方向に移動することが規制され、回動動作が行いやすくなる。
【0056】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)上記実施形態では、中間端子50が設けられていたが、中間端子50がなくても良い。その場合には、電気接触部材から直接外部に電線等で接続され、コイルスプリング40の上端側はケース20内に押し付けられるようになっていても良い。
【0057】
(2)上記実施形態では、編組線45を用いていたが、編組線ではなく被覆電線を用いても良い。また、編組線45の配設位置はケース20の外部となっていたが、ケース20内やコイルスプリング40内に配設されていても良い。
【0058】
(3)上記実施形態では、第2張出部67が第2開口35の孔縁に当接することで、電気接触部材60が前後方向への移動が規制されていたが、第2張出部67及び第2開口35が設けられていなくても良い。
【0059】
(4)上記実施形態では、曲げ片65が一対の移動規制部77の間に収容されることで、電気接触部材60及び端子金具10の前後方向への移動が規制されていたが、曲げ片65及び一対の移動規制部77が設けられていなくても良い。また、移動規制部77は、一対ではなく、片側であっても良い。
【0060】
(5)上記実施形態では、電気接触部材60は傾斜状態で保持されていたが、コイルスプリング40の中心軸Lに対して垂直に保持されていても良い。その場合には、コイルスプリング40の中心軸Lと相手側接点91の突き当て位置とがずれることで電気接触部材60を回動させたり、弾性部材を複数にして、その弾性部材の力を不均等にすることで回動させたりしても良い。
【0061】
(6)上記実施形態では、弾性部材としてコイルスプリング40を用いたが、高強度ゴムなど他の弾性部材を用いても良い。また、コイルスプリング40の中心に保持軸43が配されていなくても良い。