(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0019】
[二次転写工程]
電子写真方式の画像形成装置100は、印刷工程として、感光体にトナー像を形成する工程と、感光体上のトナー像を中間転写ベルトに一次転写する工程と、中間転写ベルト上のトナー像を用紙に二次転写する工程とを実行する。
【0020】
以下では、
図1を参照して、画像形成装置100によるトナー像32の二次転写工程について説明する。
図1は、中間転写ベルト30から用紙Sへのトナー像32の二次転写を実現するための構成を示す図である。なお、一次転写工程については後述する。
【0021】
図1に示されるように、画像形成装置100は、中間転写ベルト30と、二次転写体33と、受付部34と、電圧源35と、検知部36と、駆動ローラ39と、制御装置101とを備える。
【0022】
中間転写ベルト30は、トナー像32を担持するための像担持体である。中間転写ベルト30は、後述する従動ローラ38(
図2参照)と駆動ローラ39とに張架されている。中間転写ベルト30は、駆動ローラ39から駆動力を受けることで回転し、トナー像32を二次転写体33に搬送する。なお、
図1には、像担持体の一例として中間転写ベルト30が示されているが、像担持体は、後述する感光体10(
図2参照)であってもよい。
【0023】
二次転写体33(転写体)は、中間転写ベルト30に接触して設けられている。二次転写体33は、中間転写ベルト30との接触部分を通過する用紙S(被転写体)にトナー像32と反対極性の転写電圧を印加することで中間転写ベルト30上のトナー像32を用紙Sに転写する。転写電圧の印加により、トナー像32は、中間転写ベルト30から二次転写体33に引き付けられ、像担持体と転写体との間を通過する用紙に転写される。なお、
図1には、転写体の一例として二次転写体33が示されているが、転写体は、後述する一次転写体31(
図2参照)であってもよい。また、
図1には、トナー像が転写される被転写体の一例として用紙Sが示されているが、被転写体は、その他のシートであってもよい。
【0024】
受付部34は、中間転写ベルト30と二次転写体33との接触部分を通過する用紙Sに流れる電流(以下、「転写電流」ともいう。)の下限値M1と当該転写電流の上限値M2との少なくとも一方で表わされる予め設定されている電流範囲を新たな電流範囲に変更する設定を受け付ける。受付部34の詳細については
図3で説明する。
【0025】
電圧源35は、中間転写ベルト30および二次転写体33に電圧を印加する。電圧源35は、可変式の電圧源であり、制御装置101からの電圧制御命令に従って出力電圧の大きさを変える。電圧源35は、二次転写体33のノードN2とグランドとの間に電気的に接続されている。
【0026】
中間転写ベルト30、二次転写体33および駆動ローラ39は、ノードN1,N2間で互いに接触しており、ノードN1,N2は、グランドに接続されているため、ノードN1,N2間の抵抗Rに応じた転写電圧が用紙Sに生じる。これにより、中間転写ベルト30と二次転写体33との間に転写電流が流れる。検知部36は、中間転写ベルト30と二次転写体33との接触部分を通過する用紙Sに流れる転写電流の大きさを検知する。検知部36は、たとえば電流検知センサである。転写電流の大きさは、たとえば電流値で表わされる。
【0027】
制御装置101は、検知部36によって検知される転写電流の大きさが上記設定された電流範囲に収まるように転写電圧を制御する。より具体的には、転写電流の大きさが下限値M1よりも小さい場合には、制御装置101は、転写電圧を現在よりも上げるための電圧制御命令を電圧源35に送る。転写電流の大きさが上限値M2よりも大きい場合には、制御装置101は、転写電圧を現在よりも下げるための電圧制御命令を電圧源35に送る。制御装置101は、転写電流が電流範囲に収まるまで、転写電流の検知と転写電圧の制御とを繰り返す。
【0028】
以上のように、画像形成装置100は、電流範囲の設定を受け付ける。想定以上に抵抗値が高い用紙(たとえば、粗悪な品質の用紙)が印刷される場合には、転写電圧を変化させるよりも転写電流を変化させる方が効率的に印刷品質を変えることができる。そのため、画像形成装置100のユーザーおよびサービスマンは、電流範囲を設定することで印刷品質を大きく変えることができ、所望する印刷品質を実現するために印刷テストの回数を減らすことができる。これにより、作業負荷が減る。
【0029】
[画像形成装置100の内部構造]
図2を参照して、画像形成装置100について説明する。
図2は、画像形成装置100の内部構造の一例を示す図である。
【0030】
図2には、カラープリンタとしての画像形成装置100が示されている。以下では、カラープリンタとしての画像形成装置100について説明するが、画像形成装置100は、カラープリンタに限定されない。たとえば、画像形成装置100は、モノクロプリンタであってもよいし、FAXであってもよいし、モノクロプリンタ、カラープリンタおよびFAXの複合機(MFP:Multi-Functional Peripheral)であってもよい。
【0031】
画像形成装置100は、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、中間転写ベルト30と、一次転写体31と、二次転写体33と、カセット37と、従動ローラ38と、駆動ローラ39と、タイミングローラ40と、定着装置50と、クリーニングブレード42と、制御装置101とを備える。
【0032】
画像形成ユニット1Yは、トナーボトル15Yからトナーの供給を受けてイエロー(Y)のトナー像を形成する。画像形成ユニット1Mは、トナーボトル15Mからトナーの供給を受けてマゼンタ(M)のトナー像を形成する。画像形成ユニット1Cは、トナーボトル15Cからトナーの供給を受けてシアン(C)のトナー像を形成する。画像形成ユニット1Kは、トナーボトル15Kからトナーの供給を受けてブラック(BK)のトナー像を形成する。
【0033】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、それぞれ、中間転写ベルト30に沿って中間転写ベルト30の回転方向の順に配置されている。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、それぞれ、感光体10と、帯電器11と、露光部12と、現像器13と、クリーニングブレード17とを備える。
【0034】
帯電器11は、感光体10の表面を一様に帯電する。露光部12は、制御装置101からの制御信号に応じて感光体10にレーザー光を照射し、入力された画像パターンに従って感光体10の表面を露光する。これにより、入力画像に応じた静電潜像が感光体10上に形成される。
【0035】
現像器13は、現像ローラ14を回転させながら、現像ローラ14に現像バイアスを印加し、現像ローラ14の表面にトナーを付着させる。これにより、トナーが現像ローラ14から感光体10に転写され、静電潜像に応じたトナー像が感光体10の表面に現像される。
【0036】
感光体10と中間転写ベルト30とは、一次転写体31を設けている部分で互いに接触している。一次転写体31は、ローラ形状を有し、回転可能に構成される。トナー像と反対極性の転写電圧が一次転写体31に印加されることによって、トナー像が感光体10から中間転写ベルト30に転写される。イエロー(Y)のトナー像、マゼンタ(M)のトナー像、シアン(C)のトナー像、およびブラック(BK)のトナー像が順に重ねられて感光体10から中間転写ベルト30に転写される。これにより、カラーのトナー像が中間転写ベルト30上に形成される。
【0037】
中間転写ベルト30は、従動ローラ38と駆動ローラ39とに張架されている。駆動ローラ39はモーター(図示しない)に接続されている。当該モーターは、たとえば制御装置101によって制御される。当該モーターの制御方法としては、たとえばPWM(Pulse Width Modulation)制御が採用される。制御装置101が当該モーターを制御することにより、駆動ローラ39は回転する。中間転写ベルト30および従動ローラ38は、駆動ローラ39に連動して回転する。これにより、中間転写ベルト30上のトナー像が二次転写体33に搬送される。
【0038】
クリーニングブレード17は、感光体10に圧接されている。クリーニングブレード17は、感光体10から中間転写ベルト30へのトナー像の転写後に感光体10の表面に残留するトナーを回収する。
【0039】
カセット37には、用紙Sがセットされる。用紙Sは、カセット37から1枚ずつタイミングローラ40によって搬送経路41に沿って二次転写体33に送られる。制御装置101は、用紙Sが送り出されるタイミングに合わせて、二次転写体33に印加する転写電圧を制御する。
【0040】
二次転写体33は、ローラ形状を有し、回転可能に構成される。二次転写体33は、トナー像と反対極性の転写電圧を搬送中の用紙Sに印加する。これにより、トナー像は、中間転写ベルト30から二次転写体33に引き付けられ、中間転写ベルト30上のトナー像が転写される。二次転写体33への用紙Sの搬送タイミングは、中間転写ベルト30上のトナー像の位置に合わせてタイミングローラ40によって制御される。その結果、中間転写ベルト30上のトナー像は、用紙Sの適切な位置に転写される。
【0041】
定着装置50は、加熱ローラ51と加圧ローラ52とを備える。定着装置50は、加熱ローラ51と加圧ローラ52との間を用紙Sに通過させ、用紙Sを加圧および加熱する。これにより、用紙S上に転写されたトナー像が用紙Sに定着する。その後、用紙Sは、トレー48に排紙される。
【0042】
クリーニングブレード42は、中間転写ベルト30に圧接されている。クリーニングブレード42は、中間転写ベルト30から用紙Sへのトナー像の転写後に中間転写ベルト30の表面に残留するトナーを回収する。回収されたトナーは、搬送スクリュー(図示しない)で搬送され、廃トナー容器(図示しない)に貯められる。
【0043】
[電流範囲の設定画面]
図3を参照して、電流範囲の設定を受け付ける受付部34(
図1参照)の一例について説明する。
図3は、受付部34の一例である設定画面70を示す図である。
【0044】
設定画面70は、予め設定されている電流範囲を新たな電流範囲に変更するための設定を受け付ける。
図3に示されるように、設定画面70は、グラフ71と、入力領域75とを含む。設定画面70は、たとえば後述する操作パネル107(
図10参照)の表示部に表示される。
【0045】
グラフ71は、相関関係72〜74と、電流範囲の下限値M1と、電流範囲の上限値M2と、初期電圧V
0とを含む。初期電圧V
0の詳細については後述する。相関関係72は、低抵抗紙における転写電圧と転写電流との関係を表わす。相関関係73は、通常抵抗紙における転写電圧と転写電流との関係を表わす。相関関係74は、高抵抗紙における転写電圧と転写電流との関係を表わす。グラフ71に示されるように、用紙の抵抗が高くなるほど、転写電圧の増加量に対する転写電流の増加量が少なくなる。
【0046】
ユーザーは、転写電流の下限値M1および転写電流の上限値M2を入力領域75に入力することができる。入力領域75には、ボタン76〜79が表示されている。ボタン76が押下されると、下限値M1が上がる。ボタン77が押下されると、下限値M1が下がる。ボタン78が押下されると、上限値M2が上がる。ボタン79が押下されると、上限値M2が下がる。また、ユーザーは、テキストボックス80に下限値M1を直接入力することができる。ユーザーは、テキストボックス81に上限値M2を直接入力することができる。好ましくは、グラフ71における下限値M1および上限値M2の表示は、入力領域75への入力値と連動する。
【0047】
グラフ71に示される下限値M1および上限値M2は、入力領域75への入力値と比例関係にある。
図3の例では、入力領域75における下限値M1の入力値として「−5」が入力されている。この入力により、グラフ71における下限値M1は、60μAから50μAに下がる。すなわち、入力領域75における入力値が「1」下がるごとに、グラフ71に示される下限値M1は「2μA」下がる。
【0048】
好ましくは、画像形成装置100は、動作モードとして設定モードを有する。設定画面70は、画像形成装置100の動作モードが設定モードである間に、予め設定されている電流範囲の変更を受け付ける。すなわち、ユーザーが動作モードとして設定モードを選択したことに基づいて、画像形成装置100は、設定画面70を表示する。
【0049】
ユーザーが保存ボタン83を押下すると、画像形成装置100は、入力領域75に入力された下限値M1と上限値M2とを電流範囲として保存する。なお、下限値M1および上限値M2の両方が設定される必要はなく、下限値M1および上限値M2のいずれか一方が設定されてもよい。設定画面70は、転写電流の下限値M1および転写電流の上限値M2の少なくとも一方を新たに受け付けることで予め設定されている電流範囲の変更を受け付ける。
【0050】
このように電流範囲が設定されることで、ユーザーは、好みの画質で印刷することができる。たとえば、画質に影響を与えるノイズとして、がさつきや白ポチがある。ユーザーの中には、このようなノイズを許容するユーザーも存在する。たとえば、がさつきを抑制して、白ポチを許容することを望むユーザーもいる。電流範囲が設定されることで、ユーザーは、あらゆる画質を実現することができる。
【0051】
なお、上述では、受付部34の一例として設定画面70を挙げて説明を行ったが、受付部34は、設定画面70に限定されない。たとえば、受付部34は、転写電流の下限値M1および転写電流の上限値M2を規定している設定ファイルであってもよい。この場合、ユーザーは、転写電流の下限値M1および上限値M2を設定ファイルに対して設定する。設定ファイルは、たとえば後述する記憶装置120(
図10参照)に格納されている。
【0052】
[転写電圧の制御処理]
上述したように、制御装置101(
図1参照)は、転写電流が電流範囲に収まるように転写電圧を制御する。以下では、
図4および
図5を参照して、制御装置101による転写電圧の制御処理について説明する。
図4は、転写電圧と転写電流との時間的な変化を示す図である。
図5は、転写電圧と転写電流との相関関係を示す図である。
【0053】
図4に示されるように、制御装置101は、転写電圧を予め定められた初期電圧V
0から順次変化させることで、転写電流の大きさを新たに設定された電流範囲に収める。初期電圧V
0は、たとえば、ATVC(Auto Transfer Voltage Control)により予め決定されている。ATVCとは、転写電圧の初期値を自動的に決定するための制御方法である。より具体的には、ATVCを採用する画像形成装置100は、中間転写ベルト30(
図1参照)と二次転写体33(
図1参照)との間に一定の電流を流し、その時の電圧から両者間の抵抗値を算出する。その後、画像形成装置100は、抵抗値と転写電圧との相関関係を規定している予め定められたテーブルに基づいて、算出された抵抗値に対応する転写電圧を特定し、当該転写電圧を初期電圧V
0として決定する。
【0054】
時刻T
0において、用紙の先端が中間転写ベルト30と二次転写体33との接触部分に到達したとする。このことに基づいて、制御装置101は、初期電圧V
0を用紙に印加する。これにより、用紙には、転写電流I
0が流れる。
【0055】
時刻T
1において、制御装置101は、電流範囲85と転写電流I
0とを比較する。転写電流I
0の大きさは、電流範囲85の下限値M1よりも小さいため、制御装置101は、転写電圧を一定値ΔV上げる。これにより、転写電圧は、初期電圧V
0から電圧V
1に上がる。その結果、用紙には、転写電流I
1が流れる。
【0056】
時刻T
2において、制御装置101は、電流範囲85と転写電流I
1とを比較する。転写電流I
1の大きさは、電流範囲85の下限値M1よりも小さいため、制御装置101は、転写電圧を一定値ΔV上げる。これにより、転写電圧は、電圧V
1から電圧V
2に上がる。その結果、用紙には、転写電流I
2が流れる。
【0057】
時刻T
3において、制御装置101は、電流範囲85と転写電流I
2とを比較する。転写電流I
2の大きさは、電流範囲85の下限値M1よりも小さいため、制御装置101は、転写電圧を一定値ΔV上げる。これにより、転写電圧は、電圧V
2から電圧V
3に上がる。その結果、用紙には、転写電流I
3が流れる。
【0058】
時刻T
4において、制御装置101は、電流範囲85と転写電流I
3とを比較する。転写電流I
3の大きさは、電流範囲85の下限値M1よりも小さいため、制御装置101は、転写電圧を一定値ΔV上げる。これにより、転写電圧は、電圧V
3から電圧V
4に上がる。その結果、用紙には、転写電流I
4が流れる。
【0059】
時刻T
5において、制御装置101は、電流範囲85と転写電流I
4とを比較する。転写電流I
4の大きさは、電流範囲85の下限値M1よりも大きいため、制御装置101は、現在の転写電圧を維持する。このように、制御装置101は、初期電圧V
0から一定値ΔVずつ転写電圧を増加することにより、転写電流を電流範囲85に収める。
【0060】
好ましくは、制御装置101は、印刷対象の用紙が高抵抗紙であるか否かを判断した上で転写電圧を制御する。より具体的には、
図5を参照して、制御装置101は、初期電圧V
0の印加時における転写電流が電流範囲85の下限値M1よりも小さい場合には、印刷対象の用紙が高抵抗紙であると判断する。制御装置101は、印刷対象の用紙が高抵抗紙であると判断した場合には、転写電流が電流範囲85の下限値M1よりも大きくなるまで転写電圧の増加を繰り返す。
【0061】
図5の例では、転写電圧の増加は、転写電流が60μAを超えるまで繰り返される。これにより、転写電圧は、2000Vとなる。転写電流が60μAを超えた後は、制御装置101は、転写電圧を2000Vに維持する。印刷が完了までに転写電流が再び60μAより低くなった場合には、制御装置101は、転写電圧を維持している状態を解除し、転写電流が60μA以上になるまで転写電流の検知と転写電圧の調整とを再び繰り返す。
【0062】
さらに好ましくは、制御装置101は、印刷対象の用紙が低抵抗紙であるか否かを判断した上で転写電圧を制御する。制御装置101は、初期電圧V
0の印加時における転写電流が電流範囲85の上限値M2よりも大きい場合には、印刷対象の用紙が低抵抗紙であると判断する。制御装置101は、印刷対象の用紙が低抵抗紙であると判断した場合には、転写電流が電流範囲85の上限値M2よりも小さくなるまで転写電圧の減少を繰り返す。
【0063】
図5の例では、転写電圧の減少は、転写電流が150μAを下回るまで繰り返される。これにより、転写電圧は、1300Vとなる。転写電流が150μAを下回った後は、制御装置101は、転写電圧を1300Vに維持する。印刷が完了するまでに転写電流が再び150μAよりも高くなった場合には、制御装置101は、転写電圧を維持している状態を解除し、転写電流が150μA以下になるまで転写電流の検知と転写電圧の調整とを再び繰り返す。
【0064】
制御装置101は、初期電圧V
0の印加時における転写電流が電流範囲85の下限値M1以上でありかつ電流範囲85の上限値M2以下である場合には、印刷対象の用紙が通常抵抗紙であると判断する。制御装置101は、印刷対象の用紙が通常抵抗紙であると判断した場合には、現在の転写電圧を変更せずに、現在の転写電流を維持する。
【0065】
[初期電圧V
0の連動]
図6および
図7を参照して、初期電圧V
0についてさらに説明する。
図6は、電流範囲の下限値M1の設定に連動している初期電圧V
0を示す図である。
図7は、電流範囲の上限値M2の設定に連動している初期電圧V
0を示す図である。
【0066】
上述したように、制御装置101は、転写電圧を予め定められた初期電圧V
0から順次変化させることで、中間転写ベルト30と二次転写体33との間に流れる電流の大きさを新たに設定された電流範囲に収める。初期電圧V
0の大きさは、予め設定されている電流範囲の変更に連動する。
【0067】
より具体的には、
図6に示されるように、ユーザーは、転写電流の下限値M1を下限値M1’に変更したとする。このとき、制御装置101は、下限値M1から下限値M1’への変更に合わせて初期電圧V
0を初期電圧V
0’に変更する。
図6の例では、ユーザーが転写電流の下限値M1を60μAから50μAに変更しており、これにより、初期電圧V
0は、1500Vから1700Vに上げられている。
【0068】
制御装置101は、変更後の初期電圧V
0’から開始して、転写電流が下限値M1’を超えるまで転写電圧の調整を繰り返す。転写電流は、用紙の印刷時にリアルタイムに調整される。そのため、転写電流は、用紙が中間転写ベルト30(
図1参照)と二次転写体33(
図1参照)との接触部分を通過する間にも調整される。したがって、用紙の先端部が接触部分に到達してから最適な転写電流に調整されるまでにタイムラグが生じる。転写電圧の調整が初期電圧V
0から開始されるよりも初期電圧V
0’から開始される方が、転写電流が下限値M1’を超えるまでの時間が短くなる(矢印87,88参照)。これにより、画像形成装置100は、用紙の先端部についても画像品質を改善することができる。
【0069】
図7を参照して、ユーザーは、転写電流の上限値M2を上限値M2’に変更したとする。このとき、制御装置101は、上限値M2から上限値M2’への変更に合わせて初期電圧V
0を初期電圧V
0’に変更する。
図7の例では、ユーザーが転写電流の上限値M2を150μAから160μAに変更しており、これにより、初期電圧V
0は、1500Vから1300Vに下げられている。
【0070】
制御装置101は、初期電圧V
0’から開始して、転写電流が上限値M2’を下回るまで転写電圧の調整を繰り返す。転写電圧の調整が初期電圧V
0から開始されるよりも初期電圧V
0’から開始される方が、転写電流が上限値M2’を下回るまでの時間が短くなる(矢印90,91参照)。これにより、画像形成装置100は、用紙の先端部についても画像品質を改善することができる。
【0071】
以上のように、制御装置101は、初期電圧の大きさを電流範囲の設定に連動させる。好ましくは、制御装置101は、電流範囲の下限値M1が変更された場合には、現在よりも初期電圧を上げ、電流範囲の上限値M2が変更された場合には、現在よりも初期電圧を下げる。
【0072】
[転写電圧および転写電流の調整量]
転写電流の大きさは印刷条件に応じて変動するため、転写電流の変化度合いも印刷条件に応じて変動する。したがって、印刷精度をさらに改善するためには、転写電流および転写電圧は、印刷条件に応じて調整されることが好ましい。
【0073】
以下では、
図8を参照して、転写電流および転写電圧の調整量を印刷条件に応じて決定する方法について説明する。
図8は、印刷情報124の内容を示す図である。
【0074】
印刷情報124は、電流調整量および電圧調整量を用紙の印刷条件ごとに対応付けている。用紙の印刷条件は、たとえば、用紙の搬送速度と、用紙の種類と、用紙面と、用紙幅と、カバレッジと、印刷時の環境とを含む。カバレッジは、用紙面積に占めるトナー像の面積の割合を表わす。印刷時の環境は、たとえば画像形成装置100内部の温度や湿度で表わされる。
【0075】
印刷情報124に規定されている電流調整量は、電流範囲の設定画面70(
図3参照)の入力値に対する転写電流の変化量を表わす。電流調整量は、電流範囲の下限値M1および上限値M2のそれぞれについて規定されている。電流範囲の下限値M1における電流調整量がたとえば5μAである場合には、設定画面70に対する入力値が「1」変化するごとに、電流範囲の下限値M1は、5μAずつ変化する。電流範囲の上限値M2における電流調整量が30μAである場合には、設定画面70に対する入力値が「1」変化するごとに、電流範囲の上限値M2は、30μAずつ変化する。
【0076】
印刷情報124に規定されている電圧調整量は、
図4に示される一定値ΔVに相当する。上述したように、制御装置101は、転写電流の調整時に転写電圧を一定値ΔVずつ変化させる。画像形成装置100は、用紙印刷時における印刷条件に対応付けられている電圧調整量を印刷情報124から取得する。画像形成装置100は、転写電流の調整時において、取得した電圧調整量ずつ転写電圧を変化させる。
【0077】
このように、画像形成装置100は、互いに異なる複数の印刷条件の各々に対応付けられている電圧調整量を印刷情報124として格納している。印刷情報124は、たとえば、後述する記憶装置120(
図10参照)に格納されている。制御装置101は、印刷対象の用紙における印刷条件に対応付けられている電圧調整量を印刷情報124から取得する。制御装置101は、取得した電圧調整量ずつ転写電圧を変化させることで、中間転写ベルト30と二次転写体33との間に流れる転写電流の大きさを設定された新たな電流範囲に収める。これにより、画像形成装置100は、印刷条件に合わせて転写電圧を変化させることができ、印刷品質をさらに改善することができる。
【0078】
用紙の搬送速度、用紙の種類、用紙面、用紙幅は、たとえば、印刷時に設定される印刷設定から取得される。画像形成装置100内の環境は、画像形成装置100に内蔵される温度センサ(図示しない)や湿度センサ(図示しない)などに基づいて特定される。用紙のカバレッジは、トナー像の撮影して得られる画像に基づいて算出される。
【0079】
なお、
図8には、印刷情報124がテーブルとして表されているが、印刷情報124は、必ずしもテーブルとして表される必要はない。たとえば、印刷情報124は、印刷条件を説明変数とし、電流調整量または電圧調整量を目的変数とする関係式で表わされてもよい。
【0080】
[画像形成装置100の制御構造]
図9を参照して、画像形成装置100の制御構造について説明する。
図9は、画像形成装置100が実行する処理の一部を表わすフローチャートである。
図9の処理は、制御装置101がプログラムを実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、回路素子またはその他のハードウェアによって実行されてもよい。
【0081】
ステップS10において、制御装置101は、画像形成装置100の動作モードとして設定モードが選択されたか否かを判断する。一例として、画像形成装置100は、動作モードとして、設定モード、印刷モード、およびスキャンモードなどを含む。制御装置101は、画像形成装置100の動作モードとして設定モードが選択されたと判断した場合(ステップS10においてYES)、制御をステップS12に切り替える。そうでない場合には(ステップS10においてNO)、制御装置101は、制御をステップS20に切り替える。
【0082】
ステップS12において、制御装置101は、中間転写ベルト30(
図1参照)と二次転写体33(
図1参照)との接触部分を通過する用紙に流れる転写電流の下限値M1と当該電流の上限値M2との少なくとも一方で表わされる予め設定されている電流範囲を新たな電流範囲に変更するための設定を受け付ける処理を実行する。
【0083】
ステップS20において、制御装置101は、印刷が開始されたか否かを判断する。制御装置101は、印刷が開始されたと判断した場合(ステップS20においてYES)、制御をステップS22に切り替える。そうでない場合には(ステップS20においてNO)、制御装置101は、制御をステップS10に戻す。
【0084】
ステップS22において、制御装置101は、中間転写ベルト30(
図1参照)と二次転写体33(
図1参照)との接触部分を通過する被転写体に流れる転写電流の大きさを検知する処理を実行する。
【0085】
ステップS24において、制御装置101は、ステップS22で検知される転写電流の大きさが電流範囲に収まるように転写電圧を制御する処理を実行する。より具体的には、制御装置101は、転写電流が電流範囲の下限値M1よりも小さい場合には転写電圧を上げる。制御装置101は、転写電流が電流範囲の上限値M2よりも大きい場合には転写電圧を下げる。
【0086】
ステップS30において、制御装置101は、全ての用紙について印刷が終了したか否かを判断する。制御装置101は、全ての用紙について印刷が終了したと判断した場合(ステップS30においてYES)、転写電圧の制御処理を終了する。そうでない場合には(ステップS30においてNO)、制御装置101は、制御をステップS22に戻す。
【0087】
ステップS30の処理により、印刷が終了までステップS22,S24の処理が繰り返される。これにより、転写電流が電流範囲に収まるまで、転写電流の検知と転写電圧の制御とが繰り返される。
【0088】
[画像形成装置100のハードウェア構成]
図10を参照して、画像形成装置100のハードウェア構成の一例について説明する。
図10は、画像形成装置100の主要なハードウェア構成を示すブロック図である。
【0089】
図10に示されるように、画像形成装置100は、制御装置101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、ネットワークインターフェイス104と、操作パネル107と、記憶装置120とを含む。
【0090】
制御装置101は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはそれらの組み合わせなどによって構成される。
【0091】
制御装置101は、本実施の形態に従う制御プログラム122などの各種プログラムを実行することで画像形成装置100の動作を制御する。制御装置101は、制御プログラム122の実行命令を受け付けたことに基づいて、記憶装置120からROM102に制御プログラム122を読み出す。RAM103は、ワーキングメモリとして機能し、制御プログラム122の実行に必要な各種データを一時的に格納する。
【0092】
ネットワークインターフェイス104には、アンテナ(図示しない)などが接続される。画像形成装置100は、当該アンテナを介して、外部の通信機器との間でデータをやり取りする。外部の通信機器は、たとえば、スマートフォンなどの携帯通信端末、サーバーなどを含む。画像形成装置100は、制御プログラム122をアンテナを介してサーバーからダウンロードできるように構成されてもよい。
【0093】
操作パネル107は、表示部とタッチパネルとで構成されている。表示部およびタッチパネルは互いに重ねられており、操作パネル107は、表示部に対するタッチ操作を受け付ける。操作パネル107は、たとえば、画像形成装置100に対する印刷操作やスキャン操作などを受け付ける。表示部は、電流範囲の設定画面70(
図3参照)などを表示する。
【0094】
記憶装置120は、たとえば、ハードディスクや外付けの記憶装置などの記憶媒体である。記憶装置120は、本実施の形態に従う制御プログラム122や印刷情報124(
図10参照)などを格納する。印刷情報124の格納場所は記憶装置120に限定されず、印刷情報124は、制御装置101の記憶領域(たとえば、キャッシュなど)、ROM102、RAM103、外部機器(たとえば、サーバー)などに格納されていてもよい。
【0095】
制御プログラム122は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、本実施の形態に従う制御処理は、任意のプログラムと協働して実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従う制御プログラム122の趣旨を逸脱するものではない。さらに、制御プログラム122によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。さらに、少なくとも1つのサーバーが制御プログラム122の処理の一部を実行する所謂クラウドサービスのような形態で画像形成装置100が構成されてもよい。
【0096】
[まとめ]
以上のようにして、画像形成装置100は、転写電流の変動可能範囲を表わす電流範囲の設定を受け付ける。想定以上に抵抗値が高い用紙(たとえば、粗悪な品質の用紙)が印刷される場合には、転写電圧を変化させるよりも転写電流を変化させる方が効率的に印刷品質を変えることができる。そのため、画像形成装置100のユーザーおよびサービスマンは、電流範囲を設定することで印刷品質を大きく変えることができ、所望する印刷品質を実現するために印刷テストの回数を減らすことができる。これにより、作業負荷が減る。
【0097】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。