(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(ポリマー素子:導電性物質の形状が繊維状の例)
2.変形例1(導電性物質の形状が粒状の例)
3.変形例2(導電性物質がカーボン粒子の表面を覆っている例)
4.変形例3(電極層に接して金属膜を有する例)
5.変形例4(二次電池として機能する例)
6.適用例
適用例1(レンズを駆動する駆動装置を備えた撮像装置への適用例)
適用例2(撮像素子を駆動する駆動装置を備えた撮像装置への適用例)
その他の適用例
【0017】
<実施の形態>
[ポリマー素子1の構成]
図1は、本技術の一実施の形態に係るポリマー素子(ポリマー素子1)の断面構成例(Z−X断面構成例)を表したものである。このポリマー素子1は、一対の電極層12A,12Bの間に高分子層11を有しており、例えばポリマーアクチュエータ素子またはポリマーセンサ素子等に適用されるものである。高分子層11および電極層12A,12Bの平面形状(
図1のZ方向から見た平面形状)は、例えば矩形状(例えば
図1のX方向が長手方向)であり、その短手断面(例えば
図1のY方向から見た断面)が略円孤状に変形するようになっている。ポリマー素子1の周囲を、絶縁性の保護膜により覆うようにしてもよい。絶縁性の保護膜は、例えば、高弾性を有する材料(例えば、ポリウレタンなど)により構成することが可能である。
【0018】
(高分子層11)
高分子層11は、例えばイオン物質が含浸されたイオン伝導性高分子化合物膜により構成されている。ここで言う「イオン物質」とは、高分子層11内を伝導することが可能なイオン全般を指している。具体的には水素イオンや金属イオン単体、またはそれら陽イオンおよび/または陰イオンと極性溶媒とを含むもの、あるいはイミダゾリウム塩などのそれ自体が液状である陽イオンおよび/または陰イオンを含むものを意味する。前者としては、例えば、陽イオンおよび/または陰イオンに極性溶媒が溶媒和したものが挙げられ、後者としては、例えばイオン液体が挙げられる。
【0019】
イオン物質は、有機物質であっても無機物質であってもよく、その種類を問わない。イオン物質には、陽イオンが含まれていても陰イオンが含まれていてもよいが、ここでは、イオン物質に陽イオンが含まれている場合について説明する。例えば、陽イオンを含むイオン物質としては、金属イオン単体、金属イオンと水とを含むもの、有機陽イオンと水とを含むもの、あるいはイオン液体など種々の形態のものが挙げられる。具体的には、金属イオンとして、ナトリウムイオン(Na
+)、カリウムイオン(K
+)、リチウムイオン(Li
+)あるいはマグネシウムイオン(Mg
2+)などの軽金属イオンが挙げられる。有機陽イオンとしては、例えば、アルキルアンモニウムイオンなどが挙げられる。イオン物質に含まれるイオンは、高分子層11中において、水和物として存在する。このため、ポリマー素子1では、水分の蒸発を防ぐため、ポリマー素子1全体が封止されていることが好ましい。
【0020】
イオン液体は、陽イオンおよび陰イオンを含んでいる。このイオン液体は、所謂、常温溶融塩であり、難燃性および低揮発性を有している。具体的に、イオン液体としては、例えば、イミダゾリウム環系化合物、ピリジニウム環系化合物あるいは脂肪族系化合物などが挙げられる。イオン物質としては、イオン液体を用いることが好ましい。揮発性の低いイオン液体を含む高分子層11を用いることにより、高温雰囲気中あるいは真空中においてもポリマー素子1が良好に動作する。
【0021】
イオン物質として陽イオン物質が含浸されるとき、イオン伝導性高分子化合物膜としては、例えば、フッ素樹脂あるいは炭化水素系などを骨格とした陽イオン交換樹脂膜を用いることができる。陽イオン交換樹脂膜としては、例えば、スルホン(スルホ)基あるいはカルボキシル基などの酸性官能基が導入されたものが挙げられる。具体的には、酸性官能基を有するポリエチレン、酸性官能基を有するポリスチレンあるいは酸性官能基を有するフッ素樹脂膜などである。中でも、陽イオン交換樹脂膜としては、スルホン基あるいはカルボキシル基を有するフッ素樹脂膜が好ましく、例えばナフィオン(デュポン株式会社製)が挙げられる。
【0022】
(電極層12A,12B)
電極層12A,12B(イオン伝導膜)はそれぞれ、イオン伝導性の高分子材料(後述の
図2Aの高分子材料121)中に導電性材料を含むものである。本実施の形態では、この電極層12A,12Bが、
図2A,
図2Bに示したように、導電性材料として、複数のカーボン粒子122(カーボン材料)と、カーボン粒子122とは異なる種類の導電性物質123(導電性材料)とを含んでいる。詳細は後述するが、これにより、イオン伝導性高分子材料中にカーボン粒子のみを含む場合に比べて、電極層12A,12Bの電気抵抗を低くすることが可能になる。導電性物質123は電極層12A,12Bのどちらにも含まれていることが好ましいが、少なくとも電極層12A,12Bのうちのどちらか一方に含まれていればよい。
【0023】
高分子材料121には、高分子層11の構成材料と同様のものを用いることができる。この高分子材料121により、電極層12A,12B内でイオンが伝導される。カーボン粒子122は、多孔質性であり、複数の細孔(後述の
図5Bの細孔122P)を有している。この細孔の数が多くなるほど、カーボン粒子122の表面積が大きくなり、イオン吸着性が高くなる。カーボン粒子122のBET比表面積は、例えば500m
2/g以上である。カーボン粒子122の細孔内は、高分子材料121で満たされている。カーボン粒子122間の間隙にも、高分子材料121が設けられており、カーボン粒子122は高分子材料121により結着されている。このように、カーボン粒子122を高分子材料121で結着して電極層12A,12Bを構成することにより、電極層12A,12Bの柔軟性を高めることができる。カーボン粒子122としては、例えば、ケッチェンブラックが好ましい。
【0024】
導電性物質123はカーボン粒子122間の間隙に存在しており、電極層12A,12B内の面内方向および厚み方向に分散している。このような導電性物質123は、例えば繊維状の形状を有している。この導電性物質123の直径は例えば100nm以下であり、そのアスペクト比は4以上である。導電性物質123の直径が大きいと、剛性が高くなり、ポリマー素子1の変位量に影響を与える虞がある。繊維状の導電性物質123の延在方向は、揃っていてもよく、あるいは互いに異なっていてもよい。導電性物質123の延在方向は、例えば高電界をかけることにより、揃えることが可能になる。繊維状の導電性物質123の延在方向が、電極層12A,12Bの厚み方向に揃えられていると、電極層12A,12Bの厚み方向の電気抵抗の上昇が効果的に抑えられる。また、導電性物質123の剛性が、カーボン粒子122の剛性に比べて高い場合であっても、ポリマー素子1の変位量に影響を及ぼしにくくなる。繊維状の導電性物質123の延在方向は、変形する辺(例えば電極層12A,12Bの長辺)に対して、交差する方向に揃えられていてもよく、変形する辺に対して直交する方向(例えば電極層12A,12Bの短辺)に揃えられていることが好ましい。これにより、導電性物質123の存在によるポリマー素子1の変位量への影響を抑えることができる。
【0025】
導電性物質123の電気抵抗率は、カーボン粒子122の電気抵抗率よりも低いことが好ましい。詳細には、カーボン粒子の電気抵抗率は4Ω・m前後であり、導電性物質123の電気抵抗率は、このカーボン粒子122の電気抵抗率よりも一桁以上小さいことが好ましい。このような導電性物質123には、例えば金属材料を用いることができる。中でも、導電性物質123には低抵抗、かつ、耐腐食性の金属材料を用いることが好ましく、具体的には、電気抵抗率2.05×10
-8Ω・mの金(Au)または電気抵抗率1.04×10
-7Ω・mの白金(Pt)を用いることが好ましい。金属酸化物を導電性物質123に用いるようにしてもよい。導電性物質123には、カーボン粒子122よりも電気抵抗率の低いものであればどのようなものを用いるようにしてもよく、例えば、炭素原子を含む合金等の化合物または導電性有機物等を用いるようにしてもよい。あるいは、2以上の物質の混合物を用いて導電性物質123を構成するようにしてもよい。
【0026】
導電性物質123は、例えば、カーボン粒子122と高分子材料121との重量の総和を100%としたとき、重量比で0.01wt%以上10%wt以下の割合、望ましくは0.01wt%以上0.1%wt以下の割合で電極層12A,12B内に存在している。導電性物質123の濃度が低すぎると、電極層12A,12Bの電気抵抗が下がりにくくなる。一方、導電性物質123の濃度が高くなると、電極層12A,12Bの剛性に影響を及ぼし、ポリマー素子1の変位量が低下する虞があるためである。また、カーボン粒子122の細孔(後述の
図5Bの細孔122P)に導電性物質123が入りこみ、カーボン粒子122のイオン吸着性を低下させる虞もある。上記のように導電性物質123の濃度を調整することにより、導電性物質123を、近接するカーボン粒子122間の間隙に分布させ、かつ、カーボン粒子122内部に存在する細孔内には入りこまないようにすることが可能となる。導電性物質123の濃度は、電極層12A,12B内で均一であってもよいが、電極層12A,12Bの一端の導電性物質123の濃度を、他の部分の導電性物質123の濃度に比べて高くするようにしてもよい。この導電性物質123の濃度の高い一端を、変位への寄与が最も大きな固定端(後述の
図3Bの右端)としてポリマー素子1を変位させることで、ポリマー素子1の応答速度を効果的に向上させることができる。
【0027】
図2Aに示したように、隣り合う導電性物質123同士が接触して、ネットワークを形成していてもよく、あるいは、
図2Bに示したように、隣り合う導電性物質123同士が離れていてもよい。
【0028】
[ポリマー素子1の製造方法]
本実施の形態のポリマー素子1は、例えば次のようにして製造することができる。
【0029】
まず、電極層12A,12Bの構成材料を混合して塗料を調製する。具体的には、例えば高分子材料121として、ナフィオン等のパーフルオロスルホン酸ポリマー(密度2g/cm
3)を準備する。これに重量比で2/3(体積比で約8.8)となるようにカーボン粒子122(BET比表面積1270m
2/g,かさ密度0.15g/cm
3)を加えて、純水中で混合する。一方、導電性物質123として、例えば直径約30nm、長さ約120nm〜約4500nmの繊維状の金を準備し、これを純水に分散させておく。導電性物質123の添加量は、上記のように、重量比で0.01wt%以上10%wt以下である。続いて、この純水に分散させた導電性物質123を、高分子材料121とカーボン粒子122との混合物に加え、撹拌する。このようにして、電極層12A,12Bの構成材料を混合した塗料を高分子層11の両面に塗布し、乾燥させる。これにより、ポリマー素子1が完成する。電極層12A,12Bの構成材料を混合した後、フィルム状に成形してもよく、これを高分子層11の両面に圧着することにより、ポリマー素子1を形成するようにしてもよい。高分子層11には、例えばナフィオンを用いる。
【0030】
[ポリマー素子1の作用・効果]
(A.ポリマーアクチュエータ素子として機能する場合の基本動作)
本実施の形態のポリマー素子1では、電極層12A,12Bの間に所定の電位差が生じると、以下の原理にて、高分子層11において変形(湾曲)が生じる。つまり、この場合には、ポリマー素子1がポリマーアクチュエータ素子として機能することになる。以下、このポリマー素子1のポリマーアクチュエータ素子としての動作について、説明する。
【0031】
図3Aおよび
図3Bは、このポリマー素子1の動作(ポリマーアクチュエータ素子としての動作)を、断面図(Z−X断面図)を用いて模式的に表したものである。以下、高分子層11に含浸されているイオン物質の種類による場合分けをして、ポリマー素子1の動作を説明する。
【0032】
まず、イオン物質として、陽イオンと極性溶媒とを含むものを用いた場合について説明する。
【0033】
この場合、電圧無印加状態におけるポリマー素子1は、陽イオン物質が高分子層11中にほぼ均一に分散することから、湾曲することなく平面状となる(
図3A)。ここで、
図2B中に示した電圧機能部9(この場合、電圧供給部)によって電圧印加状態とする(駆動用電圧Vdの印加を開始する)と、ポリマー素子1は以下のような挙動を示す。例えば電極層12Aがマイナスの電位、電極層12Bがプラスの電位となるように電極層12A,12Bの間に所定の駆動用電圧Vdを印加すると(
図3B中の矢印「+V」を参照)、陽イオンが極性溶媒と溶媒和した状態で電極層12A側に移動する。この際、高分子層11中では陰イオンがほとんど移動できないため、高分子層11では、電極層12A側が伸長し、電極層12B側が収縮する。これにより、ポリマー素子1は全体として、
図3B中の矢印「+Z」で示したように、電極層12B側に湾曲する。
【0034】
こののち、電極層12A,12Bの間の電位差を無くして電圧無印加状態とする(駆動用電圧Vdの印加を停止する)と、高分子層11中において電極層12A側に偏っていた陽イオン物質(陽イオンおよび極性溶媒)が拡散し、
図3Aに示した状態に戻る。
【0035】
また、
図3Aに示した電圧無印加状態から、電極層12Aがプラスの電位、電極層12Bがマイナスの電位となるように、電極層12A,12Bの間に所定の駆動電圧Vdを印加すると、陽イオンは極性溶媒と溶媒和した状態で、電極層12B側に移動する。この場合、高分子層11では、電極層12A側が収縮し、電極層12B側が伸長する。これにより、ポリマー素子1は全体として、電極層12A側に湾曲する(図示せず)。
【0036】
この場合も、電極層12A,12Bの間の電位差を無くして電圧無印加状態とすると、高分子層11中において電極層12B側に偏っていた陽イオン物質が拡散し、
図3Aに示した状態に戻る。
【0037】
次に、イオン物質として、液状の陽イオンを含むイオン液体を用いた場合について説明する。
【0038】
この場合において、電圧無印加状態では、イオン液体が高分子層11中にほぼ均一に分散しているので、ポリマー素子1は、
図3Aに示した平面状となる。ここで、電圧機能部9によって電圧印加状態とする(駆動用電圧Vdの印加を開始する)と、ポリマー素子1は以下のような挙動を示す。例えば電極層12Aがマイナスの電位、電極層12Bがプラスの電位となるように電極層12A,12Bの間に所定の駆動用電圧Vdを印加すると(
図3B中の矢印「+V」を参照)、イオン液体のうちの陽イオンが電極層12A側に移動する。一方、イオン液体のうちの陰イオンは、陽イオン交換膜である高分子層11中を移動することができない。このため、高分子層11では、電極層12A側が伸長し、電極層12B側が圧縮する。これにより、ポリマー素子1は全体として、
図3B中の矢印「+Z」で示したように、電極層12B側に湾曲する。
【0039】
こののち、電極層12A,12Bの間の電位差を無くして電圧無印加状態とする(駆動用電圧Vdの印加を停止する)と、高分子層11中において電極層12A側に偏っていた陽イオンが拡散し、
図3Aに示した状態に戻る。
【0040】
また、
図3Aに示した電圧無印加状態から、電極層12Aがプラスの電位、電極層12Bがマイナスの電位となるように、電極層12A,12Bの間に所定の駆動電圧Vdを印加すると、イオン液体のうちの陽イオンが電極層12B側に移動する。この場合、高分子層11では、電極層12A側が圧縮し、電極層12B側が伸長する。これにより、ポリマー素子1は全体として、電極層12A側に湾曲する(図示せず)。
【0041】
この場合も、電極層12A,12Bの間の電位差を無くして電圧無印加状態とすると、高分子層11中において電極層12B側に偏っていた陽イオンが拡散し、
図3Aに示した状態に戻る。
【0042】
(B.ポリマーセンサ素子として機能する場合の基本動作)
また、本実施の形態のポリマー素子1では、逆に、高分子層11が面方向と直交する方向(ここではZ軸方向)へ変形(湾曲)すると、以下の原理にて、電極層12Aと電極層12Bとの間に電圧(起電力)が生じる。つまり、この場合には、ポリマー素子1がポリマーセンサ素子(例えば、曲げセンサ,速度センサあるいは加速度センサ等)として機能することになる。以下、高分子層11に含浸されているイオン物質の種類による場合分けをして、ポリマー素子1の動作について説明する。
【0043】
まず、イオン物質として、陽イオンと極性溶媒とを含むものを用いた場合について説明する。
【0044】
この場合、ポリマー素子1自身が、例えば外力による曲げ応力を受けていない状態、あるいは直線運動も回転運動もしておらず、加速度および角加速度が生じていないときには、ポリマー素子1にこれらに起因した力は加わっていない。したがって、ポリマー素子1は、変形(湾曲)することなく平面状となっている(
図3A)。そのため、陽イオン物質が高分子層11中にほぼ均一に分散することから、電極層12A,12B間には電位差が発生せず、ポリマー素子1において検出される電圧は0(ゼロ)Vとなる。
【0045】
一方、ポリマー素子1自身が、例えば曲げ応力を受けることにより、あるいは直線運動または回転運動をすることにより、加速度または角加速度が生じると、ポリマー素子1にはこれらに起因した力が加わるため、ポリマー素子1が変形(湾曲)する(
図3B)。
【0046】
例えば、
図3Bに示したように、ポリマー素子1がZ軸上の正方向(電極層12B側)に変形した場合には、高分子層11では、電極層12B側が圧縮し、電極層12A側が伸長することになる。すると、陽イオンが極性溶媒と溶媒和した状態で内圧の低い電極層12A側に移動するため、陽イオンは、電極層12A側で密の状態となる一方、電極層12B側で疎の状態となる。したがって、この場合、ポリマー素子1には、電極層12B側よりも電極層12A側において電位が高い電圧Vが発生する。つまり、この場合には、
図3Bにおける括弧書中の矢印「−V」で示したように、電極層12A,12Bに接続された電圧機能部9(この場合、電圧計)において、負極性の電圧(−V)が検出される。
【0047】
ポリマー素子1がZ軸上の負方向(電極層12A側)に変形した場合には、高分子層11では逆に、電極層12A側が圧縮し、電極層12B側が伸長することになる。すると、陽イオンが極性溶媒と溶媒和した状態で内圧の低い電極層12B側に移動するため、陽イオンは、電極層12B側で密の状態となる一方、電極層12A側で疎の状態となる。したがって、この場合、ポリマー素子1には、電極層12A側よりも電極層12B側において電位が高い電圧Vが発生する。つまり、この場合には、電極層12A,12Bに接続された電圧機能部9(電圧計)において、正極性の電圧(+V)が検出される。
【0048】
次に、イオン物質として、液状の陽イオンを含むイオン液体を用いた場合について説明する。
【0049】
この場合においても、まず、ポリマー素子1自身が、例えば直線運動も回転運動もしておらず、加速度および角加速度が生じていないときには、ポリマー素子1は、変形(湾曲)することなく平面状となっている(
図3A)。そのため、イオン液体が高分子層11中にほぼ均一に分散することから、電極層12A,12B間には電位差が発生せず、ポリマー素子1において検出される電圧は0(ゼロ)Vとなる。
【0050】
一方、ポリマー素子1自身が、例えば直線運動または回転運動をすることにより、加速度または角加速度が生じると、ポリマー素子1にはこれらに起因した力が加わるため、ポリマー素子1が変形(湾曲)する(
図3B)。
【0051】
例えば、
図3Bに示したように、ポリマー素子1がZ軸上の正方向(電極層12B側)に変形した場合には、高分子層11では、電極層12B側が圧縮し、電極層12A側が伸長することになる。すると、高分子層11が陽イオン交換膜である場合、イオン液体中の陽イオンは膜中を移動して内圧の低い電極層12A側に移動する。一方、陰イオンは高分子層11の官能基に阻まれて移動することができない。したがって、この場合、ポリマー素子1には、電極層12B側よりも電極層12A側において電位が高い電圧Vが発生する。つまり、この場合には、
図3Bにおける括弧書中の矢印「−V」で示したように、電極層12A,12Bに接続された電圧機能部9(この場合、電圧計)において、負極性の電圧(−V)が検出される。
【0052】
ポリマー素子1がZ軸上の負方向(電極層12A側)に変形した場合には、高分子層11では逆に、電極層12A側が圧縮し、電極層12B側が伸長することになる。すると、上記と同様の理由により、イオン液体のうちの陽イオンが内圧の低い電極層12B側に移動する。したがって、この場合、ポリマー素子1には、電極層12A側よりも電極層12B側において電位が高い電圧Vが発生する。つまり、この場合には、電極層12A,12Bに接続された電圧機能部9(電圧計)において、正極性の電圧(+V)が検出される。
【0053】
(C.電気二重層キャパシタとして機能する場合の動作)
また、本実施の形態のポリマー素子1は、電気二重層キャパシタとしても機能する。電極層12A,12B間に所定の電圧を印加すると、高分子層11に含浸されているイオン物質が移動し、電極層12A,12Bの表面に整列する。これにより、電気二重層が形成され、その部分に電荷が蓄えられる結果、電気二重層キャパシタとして機能する。
【0054】
(D.電極層12A,12Bに含まれる導電性物質123の作用)
ここで、本実施の形態のポリマー素子1の電極層12A,12Bに含まれる導電性物質123の作用について説明する。
【0055】
多孔質性のカーボン粒子(カーボン粒子122)の比表面積は大きく、カーボン粒子122は高いイオン吸着性を有している。このようなカーボン粒子122をポリマー素子1の電極層12A,12Bに用いることにより、ポリマー素子1のイオン捕捉性能に起因する諸特性が向上する。
【0056】
しかしながら、カーボン粒子122は、金属材料等の他の導電材料に比べて、電気抵抗が高い。電気抵抗の高い電極層をポリマー素子に用いると、その特性が低下する。例えば、ポリマーアクチュエータ素子では、充電の時定数CRが大きくなり、応答速度が低下する。カーボン粒子を用いた電極層に金属膜を積層して、低抵抗化を図ることも考えられる(例えば、特許文献1)。この方法では、電極層の面内方向の電気抵抗は下がり得るものの、電極層の厚み方向の電気抵抗を低下させることはできない。また、剛性の高い金属膜はポリマー素子の曲げ剛性の増大を引き起こす虞がある。
【0057】
これに対し、ポリマー素子1の電極層12A,12Bでは、カーボン粒子122の他に、導電性物質123が含まれているので、導電材料としてカーボン粒子122のみを含んでいる場合に比べて、電気抵抗を下げることが可能になる。また、カーボン粒子122間の間隙に導電性物質123が設けられ、導電性物質123が電極層12A,12Bの面内方向および厚み方向の両方に分散されているので、面内方向およみ厚み方向の両方に亘り、電極層12A,12Bの電気抵抗を下げることが可能になる。実際に、導電性物質123として金を含む電極層12A,12Bでは、電極層12A,12Bの面内方向および厚み方向の両方で電気抵抗が下がることを確認している。更に、電極層12A,12B内に分散して導電性物質123を設けると、ポリマー素子1では曲げ剛性の増大が生じない。よって、導電性物質123はポリマー素子1の変位を阻害する要因にはならない。加えて、ポリマー素子1を電気二重層キャパシタとして機能させると、電気二重層容量が増加する。
【0058】
導電性物質123を添加することにより、電極層12A,12Bの電気抵抗が下がる理由としては、以下のことが考えられる。各々が離間して存在しているカーボン粒子122を導電性物質123が架橋することにより、より多くのカーボン粒子122が電流の流路となることが考えられる。あるいは、隣接するカーボン粒子122間に導電性物質123が介在することにより、等価的にカーボン粒子122間の接触抵抗が下がっていることが考えられる。
【0059】
以上のように本実施の形態では、電極層12A,12Bがカーボン粒子122と共に導電性物質123を含むようにしたので、カーボン粒子122の有するイオン吸着性を維持しつつ、電気抵抗の上昇を抑えることが可能になる。よって、ポリマー素子1では電極層12A,12Bの電気抵抗が低くなり、応答速度や容量等の特性を向上させることが可能となる。
【0060】
また、繊維状の導電性物質123を用いることにより、カーボン粒子122間の間隙に導電性物質123が入り込み、電極層12A,12B内に分散し易くなる。このため、電極層12A,12Bの電気抵抗を効果的に下げることが可能となる。
【0061】
以下、上記実施の形態の変形例について説明するが、上記実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0062】
<変形例1>
図4は、変形例1に係るポリマー素子(ポリマー素子1A)の電極層12A,12Bの平面構成を表わしたものである。この電極層12A,12Bは、粒状の導電性物質(導電性物質123A)を有している。その点を除き、ポリマー素子1Aは上記実施の形態のポリマー素子1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0063】
導電性物質123Aは例えば略球形であり、例えば1nm〜10μmの直径を有している。導電性物質123Aには、導電性物質123と同様に、金または白金等の金属材料を用いることができる。導電性物質123Aは、高分子材料121中においてカーボン粒子122間の間隙に設けられ、電極層12A,12Bの面内方向および厚み方向に分散して存在している。このような粒状の導電性物質123Aが電極層12A,12Bに含まれている場合にも、電極層12A,12Bの電気抵抗の上昇を抑えることが可能である。
【0064】
<変形例2>
図5Aは、変形例2に係るポリマー素子(ポリマー素子1B)の電極層12A,12Bの断面構成を表わしたものである。この電極層12A,12Bでは、導電性物質(導電性物質123B)が膜状に成形され、各々のカーボン粒子122の外側(カーボン粒子122の間隙)から表面全体を覆っている。その点を除き、ポリマー素子1Bは上記実施の形態のポリマー素子1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0065】
図5Bは、
図5Aの破線部分Sの拡大図である。このように、導電性物質123Bはカーボン粒子122の細孔122Pの開口を維持しつつ、カーボン粒子122を被覆していることが好ましい。導電性物質123Bは、金または白金等の金属材料により構成されており、その厚みは例えば1nm〜50nmである。導電性物質123Bの厚みをこのようにすることで、導電性物質123Bによりイオン吸着に寄与する細孔122P(直径2nm〜50nm)がふさがれるのを防ぐことができる。
【0066】
導電性物質123Bは、例えば多角バレルスパッタリング法(例えば、特開2004−250771号公報参照)を用いて形成することが可能である。具体的には、多角柱状のバレルにカーボン粒子122を入れ、そのバレルを回転させながら導電性物質123Bの構成材料を用いてスパッタリングを施す。これにより、定期的にバレル内を落下するカーボン粒子122の表面に導電性物質123Bが成膜される。この導電性物質123Bで被覆されたカーボン粒子122を高分子材料121に混合することにより、電極層12A,12Bが形成される。このようなカーボン粒子122の表面に導電性物質123Aが設けられている場合にも、電極層12A,12Bの電気抵抗の上昇を抑えることが可能である。
【0067】
<変形例3>
図6は、変形例3に係るポリマー素子(ポリマー素子1C)の断面構成を表わしたものである。このポリマー素子1Cは、電極層12Aの高分子層11とは反対の面に金属層13A、電極層12Bの高分子層11とは反対の面に金属層13Bをそれぞれ有している。その点を除き、ポリマー素子1Cは上記実施の形態のポリマー素子1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0068】
ポリマー素子1Cは、金属層13A、電極層12A、高分子層11、電極層12Bおよび金属層13Bをこの順に有するものである。このように電極層12A,12Bに金属層13A,13Bを積層することにより、電極層12A,12Bの面内方向において電位がより均一な値に近づき、より優れた変形性能が得られる。金属層13A,13Bの構成材料としては、金あるいは白金等が挙げられる。金属層13A,13Bの厚さは任意であるが、ポリマー素子1Cの変位に影響を与えない程度の厚みであることが好ましい。ポリマー素子1Cでは、電極層12A,12Bに導電性物質123(導電性物質123A,123B)が含まれているので、薄い金属層13A,13Bであっても、十分に電気抵抗を下げることが可能となる。このため、電極層に導電性物質を含まない場合に比べて、曲げ変形が阻害されない。金属層13A,13Bの厚みは、例えば50nm以下である。金属層13A,13Bは、電極層12A,12Bの電位が均一になるように連続膜となっていることが好ましい。このような金属層13A,13Bを形成する方法としては、例えば、めっき法、蒸着法あるいはスパッタ法などが挙げられる。あらかじめ基材上に金属層13A,13Bを成膜しておき、これを基材から電極層12A,12Bに転写するようにしてもよい。
【0069】
<変形例4>
図7は、変形例4に係るポリマー素子(ポリマー素子1D)の断面構成を表わしたものである。このポリマー素子1Dは、セパレータ21を介して正極22Aおよび負極22Bを有するものであり、例えばリチウムイオン二次電池として機能する。その点を除き、ポリマー素子1Dは上記実施の形態のポリマー素子1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0070】
セパレータ21は、正極22Aと負極22Bとを隔離して、両極の接触に起因する電流の短絡を防止するためのものである。このセパレータ21は正極22Aと負極22Bとの間を移動するイオンを通過させるようになっている。このセパレータ21の構成材料には、ポリマー素子1の高分子層11の構成材料と同様のものを用いることができる。セパレータ21には、電解液を含むゲル状の高分子材料を用いるようにしてもよく、あるいは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレン等の多孔質フィルムを用いるようにしてもよい。
【0071】
セパレータ21には電解液が含浸されている。この電解液は、溶媒に電解質塩が溶解されたものであり、必要に応じて、各種添加材などの他の材料を含んでいてもよい。電解液の溶媒は、例えば有機溶媒などの非水溶媒であり、具体的には、炭酸エチレン,炭酸プロピレン,炭酸ジメチル,炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチル等が挙げられる。電解液には、2種以上の溶媒を混合して用いるようにしてもよい。電解液の電解質塩は、例えばリチウム塩などの軽金属塩のいずれか1種類あるいは2種類以上である。リチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6),四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4),過塩素酸リチウム(LiClO
4)および六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF
6)のうちの1種あるいは2種以上が好ましい。電解質塩の含有量は、溶媒に対して0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下であることが好ましい。
【0072】
正極22Aは、正極活物質層221Aおよび正極集電体222Aを含んでおり、セパレータ21に近い位置から、正極活物質層221Aおよび正極集電体222Aの順に設けられている。正極活物質層221Aはコバルト酸リチウム(Li
xCoO
2)等の正極活物質を含むものであり、正極集電体222Aは、例えばアルミニウム等の金属材料により構成されている。
【0073】
負極22Bは、負極活物質層221Bおよび正極集電体222Bを含んでおり、セパレータ21に近い位置から、負極活物質層221Bおよび負極集電体222Bの順に設けられている。ポリマー素子1Dでは、この負極活物質層221Bがイオン伝導性高分子材料(
図2Aの高分子材料121)中にカーボン粒子(
図2Aのカーボン粒子122)とカーボン粒子とは異なる導電性物質(
図2Aの導電性物質123)とを含んでいる。導電性物質は、カーボン粒子間の間隙に存在している。これにより、導電性材料としてカーボン粒子のみを含む場合に比べて、負極22Bの電気抵抗の上昇を抑えることができる。負極集電体222Bは、例えば銅(Cu),ニッケル(Ni)あるいはステンレスなどの金属材料により構成されている。
【0074】
このポリマー素子1Dでは、充電時において、例えば、正極22Aからリチウムイオンが放出され、セパレータ21に含浸された電解液を介して負極22Bに吸蔵される。一方、放電時において、例えば、負極22Bからリチウムイオンが放出され、セパレータ21に含浸された電解液を介して正極22Aに吸蔵される。ここでは、負極22B(負極活物質層221B)に、カーボン粒子と共に導電性物質が含まれているので、カーボン粒子の有するイオン吸着性を維持しつつ、電気抵抗の上昇を抑えることが可能になる。よって、ポリマー素子1Dでは、負極22Bの電気抵抗が低くなり、充放電特性を向上させることが可能となる。
【0075】
<適用例>
続いて、上記実施の形態および変形例に係るポリマー素子の適用例(撮像装置への適用例;適用例1,2)について説明する。
【0076】
[適用例1]
(携帯電話機8の構成)
図8および
図9は、上記実施の形態等のポリマー素子の適用例1に係る撮像装置を備えた電子機器の一例として、撮像機能付き携帯電話機(携帯電話機8)の概略構成を斜視図で表わしたものある。この携帯電話機8では、2つの筐体81A,81B同士が、図示しないヒンジ機構を介して折り畳み自在に連結されている。
【0077】
図8に示したように、筐体81Aの一方側の面には、各種の操作キー82が複数配設されると共に、その下端部にマイクロフォン83が配設されている。操作キー82は使用者(ユーザ)による所定の操作を受け付けて情報を入力するためのものである。マイクロフォン83は、通話時等における使用者の音声を入力するためのものである。
【0078】
筐体81Bの一方側の面には、
図8に示したように、液晶表示パネル等を用いた表示部84が配設されると共に、その上端部には、スピーカー85が配設されている。表示部84には、例えば、電波の受信状況や電池残量、通話相手の電話番号、電話帳として登録されている内容(相手先の電話番号や氏名等)、発信履歴、着信履歴等の各種の情報が表示されるようになっている。スピーカー85は、通話時等における通話相手の音声等を出力するためのものである。
【0079】
図9に示したように、筐体81Aの他方側の面にはカバーガラス86が配設されていると共に、筐体81A内部のカバーバラス86に対応する位置に撮像装置2が設けられている。この撮像装置2は、物体側(カバーガラス86側)に配置されたカメラモジュール4と、像側(筐体81Aの内部側)に配置された撮像素子3とにより構成されている。撮像素子3は、カメラモジュール4内のレンズ(後述するレンズ40)により結像されてなる撮像信号を取得する素子である。この撮像素子3は、例えば電荷結合素子(CCD:Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を搭載したイメージセンサからなる。
【0080】
(撮像装置2の構成)
図10は、撮像装置2の概略構成例を斜視図で表したものであり、
図11は、この撮像装置2におけるカメラモジュール4の構成を分解斜視図で表したものである。
【0081】
カメラモジュール4は、光軸Z1に沿って像側(撮像素子3の撮像面30側)から物体側へと順に(Z軸上の正方向に沿って)、支持部材51、ポリマーアクチュエータ素子531、レンズ保持部材54およびレンズ40、ならびにポリマーアクチュエータ素子532を備えている。このポリマーアクチュエータ素子531、532が、上記ポリマー素子1,1A,1B,1Cにより構成されている。なお、
図10では、レンズ40の図示を省略している。このカメラモジュール4はまた、固定用部材52、連結部材551A,551B,552A,552B、固定電極530A,530B、押え部材56およびホール素子57A,57Bを備えている。なお、これらのカメラモジュール4の部材のうちのレンズ40を除いたものが、本技術における「レンズを駆動する駆動装置」(レンズ駆動装置)の一具体例に対応している。
【0082】
支持部材51は、カメラモジュール4全体を支持するためのベース部材(基体)である。
【0083】
固定用部材52は、ポリマーアクチュエータ素子531,532の一端をそれぞれ固定するための部材である。この固定用部材52は、像側(
図10および
図11における下側)から物体側(上側)へと向けて配置された、下部固定用部材52D、中央(中部)固定用部材52Cおよび上部固定用部材52Uの3つの部材からなる。下部固定用部材52Dと中央固定用部材52Cとの間には、ポリマーアクチュエータ素子531の一端および固定電極530A,530Bの一端がそれぞれ、挟み込まれて配置されている。一方、中央固定用部材52Cと上部固定用電極52Uとの間には、ポリマーアクチュエータ素子532の一端および固定電極530A,530Bの他端がそれぞれ、挟み込まれて配置されている。また、これらのうちの中央固定用部材52Cには、レンズ保持部材54の一部(後述する保持部54Bの一部)を部分的に挟み込むための開口52C0が形成されている。これにより、レンズ保持部材54の一部がこの開口52C0内を移動できるようになるため、スペースを有効活用することができ、カメラモジュール4の小型化を図ることが可能となる。
【0084】
固定電極530A,530Bは、ポリマーアクチュエータ素子531,532における電極層(前述した電極層12A,12B,22A,22B)に対して、後述する電圧供給部59からの駆動用電圧Vd(後述の
図12A,
図12B)を供給するための電極である。これらの固定電極530A,530Bはそれぞれ、例えば金(Au)もしくは金めっきされた金属等からなり、Uの字状となっている。これにより、固定電極530A,530Bはそれぞれ、中央固定用部材52Cの上下(Z軸に沿った両側面)を挟み込むようになっており、一対のポリマーアクチュエータ素子531,532に対して少ない配線で並列に同じ電圧を印加することが可能となっている。また、固定電極530A,530Bを金めっきされた金属材料から構成した場合、表面の酸化等による接触抵抗の劣化を防ぐことができる。
【0085】
レンズ保持部材54は、レンズ40を保持するための部材であり、例えば液晶ポリマー等の硬質な樹脂材料からなる。このレンズ保持部材54は、中心が光軸Z1上になるようにして配置され、レンズ40を保持する環状の保持部54Bと、この保持部54Bを支持すると共に保持部54Bと後述する連結部材551A,551B,552A,552Bとを接続する接続部54Aとからなる。また、保持部54Bは、一対のポリマーアクチュエータ素子531,532における後述する駆動面同士の間に配置されている。
【0086】
ポリマーアクチュエータ素子531,532はそれぞれ、レンズ40の光軸Z1と直交する駆動面(X−Y平面上の駆動面)を有し、この光軸Z1に沿って駆動面同士が対向するように配置されている。これらのポリマーアクチュエータ素子531,532はそれぞれ、レンズ保持部材54(およびレンズ40)を、後述する連結部材551A,551B,552A,552Bを介して光軸Z1に沿って駆動するためのものである。
【0087】
連結部材551A,551B,552A,552Bはそれぞれ、ポリマーアクチュエータ素子531,532の各他端と、接続部54Aの端部との間を互いに連結(接続)するための部材である。具体的には、連結部材551A,551Bはそれぞれ、接続部54Aの下端部とポリマーアクチュエータ素子531の他端との間を連結し、連結部材552A,552Bはそれぞれ、接続部54Aの上端部とポリマーアクチュエータ素子532の他端との間を連結している。これらの連結部材551A,551B,552A,552Bはそれぞれ、例えばポリイミドフィルム等のフレキシブルフィルムからなり、各ポリマーアクチュエータ素子531,532と同等以下(好ましくは同一以下)の剛性(曲げ剛性)を有する柔軟な材料からなることが望ましい。これにより、連結部材551A,551B,552A,552Bが、ポリマーアクチュエータ素子531,532の湾曲方向とは逆方向に湾曲する自由度が生まれる。したがって、ポリマーアクチュエータ素子531,532と連結部材551A,551B,552A,552Bとからなる片持ち梁における断面形状が、S字状の曲線を描くようになる。その結果、接続部54AがZ軸方向に沿って平行移動することが可能となり、保持部54B(およびレンズ40)が支持部材51に対して平行状態を保ったまま、Z軸方向に駆動されるようになる。なお、上記した剛性(曲げ剛性)としては、例えばバネ定数を用いることができる。
【0088】
(カメラモジュール4の動作)
図12A,
図12Bはそれぞれ、カメラモジュール4の概略構成例を側面図(Z−X側面図)で模式的に表したものであり、
図12Aは動作前の状態を、
図12Bは動作後の状態をそれぞれ示している。
【0089】
このカメラモジュール4では、電圧供給部59からポリマーアクチュエータ素子531,532に対して駆動用電圧Vdが供給されると、前述した原理にて、ポリマーアクチュエータ素子531,532の他端側がそれぞれ、Z軸方向に沿って湾曲する。これにより、これらポリマーアクチュエータ素子531,532によってレンズ保持部材54が駆動され、レンズ40がその光軸Z1に沿って移動可能となる(
図12B中の矢印参照)。このようにしてカメラモジュール4では、ポリマーアクチュエータ素子531,532を用いた駆動装置(レンズ駆動装置)によって、レンズ40がその光軸Z1に沿って駆動される。つまり、カメラモジュール4内のレンズ40がその光軸Z1に沿って移動し、フォーカシングやズーミングが行われる。
【0090】
[適用例2]
続いて、上記実施の形態等のポリマー素子の適用例2に係る撮像装置(カメラモジュール)について説明する。本適用例に係る撮像装置もまた、例えば前述した
図8,
図9に示したような、撮像機能付き携帯電話機8に内蔵されるようになっている。ただし、適用例1の撮像装置2では、ポリマー素子(ポリマーアクチュエータ素子)をレンズ駆動装置として用いていたのに対し、本適用例の撮像装置では以下説明するように、撮像素子3を駆動するための駆動装置として用いている。
【0091】
(撮像装置2Aの構成)
図13は、本適用例に係る撮像装置(撮像装置2A)の概略構成例を、側面図(Z−X側面図)で表したものである。この撮像装置2Aは、基板60上に、各種部材を保持するためのハウジング61を備えている。
【0092】
このハウジング61には、レンズ40を配置するための開口部611が形成されていると共に、一対の側壁部613A,613Bと、基板60上に位置する底部612とが設けられている。側壁部613Aには一対の板ばね621,621の一端側が固定されており、これら板ばね621,621の他端側には、接続部54Aおよび支持部64を介して撮像素子3が配置されている。また、底部612上にはポリマーアクチュエータ素子63の一端側が固定されており、このポリマーアクチュエータ素子63の他端側は支持部64の底面に固定されている。なお、この底部612上にはホール素子57Aも配置されていると共に、接続部54A上におけるホール素子57Aの対向位置には、ホール素子57Bが配置されている。
【0093】
なお、これらの撮像装置2Aの部材のうち、底部612、側壁部613A、板ばね621,622、ポリマーアクチュエータ素子63、支持部64および接続部54Aが主に、本技術における「撮像素子を駆動する駆動装置」(撮像素子駆動装置)の一具体例に対応している。
【0094】
ポリマーアクチュエータ素子63は、上記したように、撮像素子3を駆動するためのものであり、上記実施の形態等に係るポリマー素子1,1A,1B,1Cを用いて構成されている。
【0095】
(撮像装置2Aの動作)
図14A,
図14Bはそれぞれ、撮像装置2Aの一部(上記した撮像素子駆動装置)を側面図(Z−X側面図)で模式的に表したものであり、
図14Aは動作前の状態を、
図14Bは動作後の状態をそれぞれ示している。
【0096】
この撮像装置2Aでは、電圧供給部(図示せず)からポリマーアクチュエータ素子63に対して駆動用電圧Vdが供給されると、前述した原理にて、ポリマーアクチュエータ素子63の他端側がそれぞれ、Z軸方向に沿って湾曲する。これにより、このポリマーアクチュエータ素子63によって接続部54Aが駆動され、撮像素子3がレンズ40の光軸Z1に沿って移動可能となる(
図14B中の矢印参照)。このようにして撮像装置2Aでは、ポリマーアクチュエータ素子63を用いた駆動装置(撮像素子駆動装置)によって、撮像素子3がレンズ40の光軸Z1に沿って駆動される。これにより、レンズ40と撮像素子3との相対的な距離が変化することで、フォーカシングやズーミングが行われる。
【0097】
<その他の適用例>
図15A,
図15Bは、その他の適用例に係る電子機器(電子機器7A,
図7B)の構成例を、模式的に表したものである。
【0098】
電子機器7A(
図15A)は、ポリマーセンサ素子71および信号処理部72を含むものである。この電子機器7Aでは、ポリマーセンサ素子71が変形することにより検知された信号が、信号処理部72に入力され、各種の信号処理が行われるようになっている。このような電子機器7Aとしては、例えば、血管の拡張および収縮を検知する脈拍センサ、指等の接触位置、接触の強さを検知する触覚センサ、本等のページめくり等に伴う曲げ状態を検知する曲げセンサおよび人の関節の動き等を検知するモーションセンサ等が挙げられる。
【0099】
電子機器7B(
図15B)は、信号入力部73およびポリマーアクチュエータ素子74を含むものである。この電子機器7Bでは、信号入力部73からの信号によりポリマーアクチュエータ素子74が変形するようになっている。このような電子機器7Bとしては、例えば、カテーテル等が挙げられる。
【0100】
<その他の変形例>
以上、実施の形態、変形例および適用例を挙げて本技術の技術を説明したが、本技術はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、ポリマー素子および撮像装置内の他の部材における形状や材料等については、上記実施の形態等で説明したものには限定されず、また、ポリマー素子の積層構造についても、上記実施の形態等で説明したものには限定されず、適宜変更可能である。
【0101】
更に、上記適用例では、ポリマーアクチュエータ素子またはポリマーセンサ素子を電子機器に適用する場合を例に挙げて説明したが、電気二重層キャパシタとして機能するポリマー素子および二次電池として機能するポリマー素子(
図7のポリマー素子1D)を電子機器に適用するようにしてもよい。
【0102】
加えて、上記変形例4では、ポリマー素子1Dの負極22Bがカーボン粒子と共に導電性物質を含む場合について説明したが、正極がカーボン粒子と共に導電性物質を含むようにしてもよい。また、変形例4では本技術を二次電池に適用させる場合について説明したが、本技術は一次電池にも適用可能である。
【0103】
更にまた、上記実施の形態等では、本技術の駆動装置の一例として、主に、駆動対象物であるレンズをその光軸に沿って駆動するレンズ駆動装置を挙げて説明したが、その場合には限られず、例えば、レンズ駆動装置がレンズをその光軸と直交する方向に沿って駆動するようにしてもよい。また、本技術の駆動装置は、そのようなレンズ駆動装置や撮像素子駆動装置以外にも、例えば絞り(特開2008−259381号公報等参照)や手ぶれ補正等の他の駆動対象物を駆動する駆動装置等にも適用することが可能である。更に、本技術の駆動装置、カメラモジュールおよび撮像装置は、上記実施の形態で説明した携帯電話機以外にも、種々の電子機器に適用することが可能である。
【0104】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
【0105】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)イオン伝導性高分子材料と、カーボン材料と、前記カーボン材料とは異なる導電性材料とを含むイオン伝導膜。
(2)前記カーボン材料はカーボン粒子であり、前記カーボン粒子の間隙に前記導電性材料を有する前記(1)記載のイオン伝導膜。
(3)前記導電性材料の電気抵抗率は、前記カーボン材料の電気抵抗率よりも低い前記(1)または(2)記載のイオン伝導膜。
(4)前記導電性材料は金属材料である前記(1)乃至(3)のうちいずれか1つに記載のイオン伝導膜。
(5)前記導電性材料は金または白金である前記(1)乃至(4)のうちいずれか1つに記載のイオン伝導膜。
(6)前記導電性材料の形状は繊維状である前記(1)乃至(5)のうちいずれか1つに記載のイオン伝導膜。
(7)前記導電性材料の形状は粒状である前記(1)乃至(5)のうちいずれか1つに記載のイオン伝導膜。
(8)前記導電性材料は、前記カーボン粒子の表面を覆う膜状に成形されている前記(2)に記載のイオン伝導膜。
(9)長辺および短辺を有する矩形状に成形され、前記導電性材料は、前記長辺と交差する方向に延在している前記(6)に記載のイオン伝導膜。
(10)前記導電性材料は、当該イオン伝導膜の厚み方向に延在している前記(6)に記載のイオン伝導膜。
(11)一対の電極層と、前記一対の電極層の間の高分子層とを備え、前記一対の電極層のうちの少なくとも一方は、イオン伝導性高分子材料と、カーボン材料と、前記カーボン材料とは異なる導電性材料とを含むポリマー素子。
(12)前記一対の電極層の前記高分子層と反対の面には、金属層が設けられている前記(11)記載のポリマー素子。
(13)一端が固定されると共に他端が前記一端に対して変位し、前記一端の前記導電性材料の濃度は、他の部分の前記導電性材料の濃度に比べて高い前記(11)に記載のポリマー素子。
(14)ポリマーアクチュエータ素子として構成されている前記(11)乃至(13)のうちいずれか1つに記載のポリマー素子。
(15)ポリマーセンサ素子として構成されている前記(11)乃至(13)のうちいずれか1つに記載のポリマー素子。
(16)電気二重層キャパシタとして構成されている前記(11)または(12)に記載のポリマー素子。
(17)電池として構成されている前記(11)または(12)に記載のポリマー素子。(18)一対の電極層と前記一対の電極層の間の高分子層とを有するポリマー素子を備え、前記一対の電極層のうちの少なくとも一方は、イオン伝導性高分子材料と、カーボン材料と、前記カーボン材料とは異なる導電性材料とを含む電子機器。
(19)レンズと、ポリマー素子を用いて構成され、前記レンズを駆動する駆動装置とを備え、前記ポリマー素子は、一対の電極層と、前記一対の電極層の間の高分子層とを有し、前記一対の電極層のうちの少なくとも一方は、イオン伝導性高分子材料と、カーボン材料と、前記カーボン材料とは異なる導電性材料とを含むカメラモジュール。
(20)レンズと、前記レンズにより結像されてなる撮像信号を取得する撮像素子と、ポリマー素子を用いて構成され、前記レンズまたは前記撮像素子を駆動する駆動装置とを備え、前記ポリマー素子は、一対の電極層と、前記一対の電極層の間の高分子層とを有し、前記一対の電極層のうちの少なくとも一方は、イオン伝導性高分子材料と、カーボン材料と、前記カーボン材料とは異なる導電性材料とを含む撮像装置。
【0106】
本出願は、日本国特許庁において2013年12月2日に出願された日本特許出願番号第2013−249052号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願のすべての内容を参照によって本出願に援用する。
【0107】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。