(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
色材を吐出する複数のノズルが形成されたヘッドを備える印刷実行部であって、印刷媒体に対して前記ヘッドを主走査方向に沿って移動させることによって、対象画像を印刷する前記印刷実行部を制御する制御装置であって、
前記対象画像を表す対象画像データを取得する取得部と、
前記対象画像の中から、前記主走査方向に延びる領域の画像である注目単位画像を特定する第1特定部と、
前記注目単位画像内で前記主走査方向に沿って並ぶN個(Nは2以上の整数)の部分画像のうち、J個(Jは1以上N以下の整数)の部分画像を特定する第2特定部と、
前記J個の部分画像について、前記J個の部分画像に対応付けられるJ個の指標値を算出する算出部であって、前記指標値は、対応する前記部分画像を示す前記対象画像データ内の部分データに含まれる複数の画素の画素値を用いて算出される、前記算出部と、
前記注目単位画像に含まれるJ個の部分画像に対応するJ個の指標値を用いて、前記注目単位画像が、印刷対象であるか否かを判断する判断部と、
前記判断結果に応じて前記印刷実行部を制御する印刷制御部と、
を備え、
前記印刷制御部は、
前記注目単位画像が前記印刷対象であると判断された場合に、前記主走査方向に平行に前記ヘッドを移動させつつ前記印刷媒体上に色材を吐出する吐出処理であって、前記注目単位画像を含んで副走査方向に連続するH個(Hは1以上の整数)の単位画像であるバンド画像を前記主走査方向に沿って形成するための前記吐出処理と、前記印刷媒体を前記ヘッドに対して前記副走査方向に移動させる移動処理とを、前記印刷実行部に実行させることによって、前記バンド画像を前記印刷実行部に印刷させ、
前記注目単位画像が前記印刷対象でないと判断された場合に、前記印刷実行部に、前記注目単位画像を形成するための前記吐出処理を実行させずに、前記移動処理を実行させる、制御装置。
色材を吐出する複数のノズルが形成されたヘッドを備える印刷実行部であって、印刷媒体に対して前記ヘッドを主走査方向に沿って移動させることによって、対象画像を印刷する前記印刷実行部を制御するためのコンピュータプログラムであって、
前記対象画像を表す対象画像データを取得する取得機能と、
前記対象画像の中から、前記主走査方向に延びる領域の画像である注目単位画像を特定する第1特定機能と、
前記注目単位画像内で前記主走査方向に沿って並ぶN個(Nは2以上の整数)の部分画像のうち、J個(Jは1以上N以下の整数)の部分画像を特定する第2特定機能と、
前記J個の部分画像について、前記J個の部分画像に対応付けられるJ個の指標値を算出する算出機能であって、前記指標値は、対応する前記部分画像を示す前記対象画像データ内の部分データに含まれる複数の画素の画素値を用いて算出される、前記算出機能と、
前記注目単位画像に含まれるJ個の部分画像に対応するJ個の指標値を用いて、前記注目単位画像が、印刷対象であるか否かを判断する判断機能と、
前記判断結果に応じて前記印刷実行部を制御する印刷制御機能と、
をコンピュータに実現させ、
前記印刷制御機能は、
前記注目単位画像が前記印刷対象であると判断された場合に、前記主走査方向に平行に前記ヘッドを移動させつつ前記印刷媒体上に色材を吐出する吐出処理であって、前記注目単位画像を含んで副走査方向に連続するH個(Hは1以上の整数)の単位画像であるバンド画像を前記主走査方向に沿って形成するための前記吐出処理と、前記印刷媒体を前記ヘッドに対して前記副走査方向に移動させる移動処理とを、前記印刷実行部に実行させることによって、前記バンド画像を前記印刷実行部に印刷させ、
前記注目単位画像が前記印刷対象でないと判断された場合に、前記印刷実行部に、前記注目単位画像を形成するための前記吐出処理を実行させずに、前記移動処理を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.実施例:
図1は、実施例の複合機200を示す説明図である。複合機200は、制御装置202と、スキャナ部280と、印刷実行部290と、を有している。制御装置202は、プロセッサ210と、揮発性記憶装置220と、不揮発性記憶装置230と、画像を表示する表示部240と、ユーザによる操作を受け入れる操作部250と、通信インタフェース270と、を有している。これらの要素は、バスを介して互いに接続されている。
【0012】
プロセッサ210は、データ処理を行う装置であり、例えば、CPUである。揮発性記憶装置220は、例えば、DRAMであり、不揮発性記憶装置230は、例えば、フラッシュメモリである。
【0013】
不揮発性記憶装置230は、プログラム232を格納している。プロセッサ210は、プログラム232を実行することによって、種々の機能を実現する(詳細は、後述)。プロセッサ210は、プログラム232の実行に利用される種々の中間データを、記憶装置(例えば、揮発性記憶装置220、不揮発性記憶装置230のいずれか)に、一時的に格納する。本実施例では、プログラム232は、複合機200の製造者によって、ファームウェアとして、不揮発性記憶装置230に予め格納されている。
【0014】
表示部240は、画像を表示する装置であり、例えば、液晶ディスプレイである。操作部250は、ユーザによる操作を受け取る装置であり、例えば、表示部240上に重ねて配置されたタッチパネルである。ユーザは、操作部250を操作することによって、種々の指示を複合機200に入力可能である。
【0015】
通信インタフェース270は、他の装置と通信するためのインタフェースである(例えば、USBインタフェース、有線LANインタフェース、IEEE802.11の無線インタフェース)。
【0016】
スキャナ部280は、CCDやCMOSなどの光電変換素子を用いて光学的に原稿等の対象物を読み取ることによって、読み取った画像(「スキャン画像」と呼ぶ)を表すスキャンデータを生成する。スキャンデータは、例えば、カラーのスキャン画像を表すRGBのビットマップデータである。
【0017】
印刷実行部290は、用紙(印刷媒体の一例)上に画像を印刷する装置である。本実施例では、印刷実行部290は、印刷ヘッド292と、ヘッド移動部294と、搬送部296と、これらの要素292、294、296を制御する制御部298と、を有している。詳細は後述するが、印刷実行部290は、シアンCとマゼンタMとイエロYとブラックKとのそれぞれのインクを用いるインクジェット式の印刷装置である。なお、利用可能な複数種類のインクの組み合わせとしては、CMYに限らず、他の種々の組み合わせ(例えば、シアンCとマゼンタMとイエロYの3種類)を採用可能である。
【0018】
制御装置202(具体的には、プロセッサ210)は、ユーザの指示に従ってスキャナ部280を駆動し、対象物を光学的に読み取ることによって、対象物を表すスキャンデータを生成する。そして、制御装置202は、スキャンデータによって表される画像を印刷実行部290に印刷させることができる。また、制御装置202は、他の装置(例えば、通信インタフェース270に接続された図示しないコンピュータ)によって供給された画像データを用いて、印刷実行部290に画像を印刷させることができる。
【0019】
図2は、用紙PM上に印刷される印刷対象の画像である対象画像IMの例と、対象画像IMを印刷する際の用紙PMに対する印刷ヘッド292の位置の例と、対象画像IMを表す複数の単位領域UAと、1個の単位領域UAを表す複数の部分領域BLと、の説明図である。図中の第1方向D1と第2方向D2とは、主走査方向を示している(第2方向D2は、第1方向D1の反対方向である)。ヘッド移動部294(
図1)は、主走査方向に平行に印刷ヘッド292を往復移動させる装置である。図示を省略するが、ヘッド移動部294は、例えば、主走査方向にスライド可能に印刷ヘッド292を支持するレールと、複数のプーリと、複数のプーリに巻き掛けられるとともに一部が印刷ヘッド292に固定されたベルトと、プーリを回転させるモータと、を有している。モータがプーリを回転させることによって、印刷ヘッド292は、主走査方向に移動する。
【0020】
図中の第3方向D3は、副走査方向を示している(「副走査方向D3」とも呼ぶ)。搬送部296(
図1)は、印刷ヘッド292に対して用紙PMを副走査方向D3に搬送する装置である。図示を省略するが、搬送部296は、例えば、印刷ヘッド292に対向する位置で用紙PMを支持する台と、印刷ヘッド292よりも上流側に配置された上流ローラと、印刷ヘッド292よりも下流側に配置された下流ローラと、それらのローラを回転させるモータと、を有している。用紙PMは、回転するローラによって副走査方向D3に搬送される。本実施例では、副走査方向D3は、主走査方向D1、D2に垂直な方向である。
【0021】
図中の用紙PMの右側には、用紙PMに対する副走査方向D3の相対位置が互いに異なる複数の印刷ヘッド292が、示されている。印刷ヘッドの符号292に続く括弧内の符号P1〜P6は、副走査方向D3の相対位置を識別する符号である。図中の各印刷ヘッド292には、印刷ヘッド292の下面におけるノズル配列の概略が示されている。図示するように、印刷ヘッド292の下面には、シアンCのインクを吐出するためのノズル群NgCと、マゼンタMのインクを吐出するためのノズル群NgMと、イエロYのインクを吐出するためのノズル群NgYと、ブラックKのインクを吐出するためのノズル群NgKとが、形成されている。1つのノズル群の複数のノズルNzの副走査方向D3の位置は、互いに異なっている。本実施例では、1つのノズル群の複数のノズルNzは、副走査方向D3に沿って並んでいる。複数のノズルNzの間で、主走査方向の位置は同じである。ただし、少なくとも一部のノズルNzの間で、主走査方向の位置が異なっていてもよい。また、4つのノズル群NgC、NgM、NgY、NgKは、主走査方向に沿って並んで配置されている。
【0022】
印刷実行部290(
図1)は、印刷ヘッド292を主走査方向に移動させながら複数のノズル群NgC、NgM、NgY、NgKの複数のノズルNzから用紙PMに向かってインク滴を吐出することによって、用紙PM上の主走査方向に延びるバンド領域上に色材のドットを形成する。以下、印刷ヘッド292を主走査方向に移動させつつ用紙PMのバンド領域上にインク滴を吐出する処理を、「吐出処理」とも呼ぶ。また、印刷実行部290は、用紙PMを、副走査方向D3に搬送する。印刷実行部290は、吐出処理と、用紙PMの搬送(「移動処理」とも呼ぶ)とを、交互に繰り返すことによって、用紙PM上に画像の全体を印刷する。対象画像IMの印刷は、副走査方向D3に反対の方向D4に向かって、進行する。以下、副走査方向D3を、「上流方向D3」とも呼び、副走査方向D3に反対の方向D4を、「下流方向D4」とも呼ぶ。
【0023】
本実施例では、対象画像IMの外形は矩形状である。図示を省略するが、対象画像IMは、主走査方向D1と副走査方向D3とに沿って格子状に配置された複数の画素によって、表されている。この対象画像IMは、複数の単位領域UAに区分されている。各単位領域UAは、主走査方向(D1、D2)に沿って延びる矩形領域である。
図2の例では、副走査方向D3に沿って並ぶ124個の単位領域UAが、対象画像IMを形成している。図中では、単位領域の符号UAに続く括弧内に、単位領域の説明のための識別番号が示されている。1番から124番までの識別番号が、下流方向D4に向かって昇順に割り当てられている(上流方向D3側の端の位置の単位領域UAが1番であり、下流方向D4側の端の位置の単位領域UAが124番である)。
【0024】
図2の上部には、連続する1番から22番の22個の単位領域UAが示されている。図中の幅Wuは、1個の単位領域UAの副走査方向D3の幅である。1個の単位領域UAは、主走査方向D1に沿って並ぶ複数の部分領域BLに区分されている。各部分領域BLは、主走査方向(D1、D2)に沿って延びる矩形領域である。
図2の例では、主走査方向D1に沿って並ぶ16個の部分領域BLが、1個の単位領域UAを形成している。図中では、部分領域を表す符号BLに続く括弧内に、部分領域の説明のための識別番号が示されている。1番から16番までの識別番号が、主走査方向D1に向かって昇順に割り当てられている(第2方向D2側の端の位置の部分領域BLが1番であり、第1方向D1側の端の位置の部分領域BLが16番である)。
【0025】
図2の右上部には、1個の部分領域BLの拡大図が示されている。部分領域BLは、格子状に配置された複数の画素Pxで構成されている。図中の第1数Naは、主走査方向D1の画素Pxの数であり、第2数Nbは、副走査方向D3の画素Pxの数である。本実施例では、Na>Nbであり、2個の数Na、Nbは、いずれも、2以上である(例えば、Na=430、Nb=20)。但し、Na≦Nbであってもよく、2個の数Na、Nbの少なくとも一方が1であってもよい。
【0026】
複数の画素Pxは、印刷処理用の画素である。後述するように、色材によるドットの形成状態は、この画素Px毎に決定される。ドット形成状態は、本実施例では、「ドット無」と「ドット有」との2個の状態から選択される。なお、ドット形成状態の総数は、2に代えて、2以上の任意の数であってよい。例えば、ドット形成状態は、「ドット無」と「小ドット」と「中ドット」と「大ドット」との4個の状態から選択されてもよい。
【0027】
用紙PM上の複数の画素Pxの密度(印刷解像度とも呼ばれる)としては、複数の解像度を利用可能である。本実施例では、ユーザは、第1解像度と、第1解像度よりも高密度な第2解像度と、から、印刷解像度を選択できる。印刷解像度は、例えば、主走査方向の画素密度と副走査方向の画素密度との積で表される。第1解像度は、例えば、600×300dpi(dots per inch)である。第2解像度は、例えば、1200×600dpiである。
図2は、第1解像度の例を示している。第1解像度は、第2解像度と比べて、印刷に要する時間を短縮できる。第2解像度は、第1解像度と比べて、粒状性を向上できる。
【0028】
1回の吐出処理は、連続する1個以上の単位領域UAで形成されたバンド状の領域内に、色材のドットを形成可能である。以下、1回の吐出処理でドットを形成可能な領域を「バンド領域」と呼ぶ。バンド領域の副走査方向D3の幅は、印刷ヘッド292におけるノズルNzの分布領域の副走査方向D3の幅と同じである。本実施例では、印刷解像度が第1解像度である場合には、連続する21個の単位領域UAが、バンド領域を形成する。対象画像IMの印刷は、例えば、以下のように進行する。1個のバンド領域内の全ての画素Pxの印刷が、1回の吐出処理で行われる。このような吐出処理と、副走査方向D3への用紙PMの搬送とを、交互に繰り返すことによって、対象画像IMの全体が印刷される。このように、印刷実行部290は、印刷モードとして、バンド領域の印刷を実行する際の、印刷ヘッド292の主走査方向(D1、D2)に平行な方向への走査回数であるパス数が1回である印刷モードを備えている。以下、パス数が1回である印刷モードを、シングルパスモードとも呼ぶ。
図2は、シングルパスモードでの処理例を示している。なお、パス数は、印刷を実行する際の、印刷ヘッド292による用紙PM上の部分領域の走査回数である、ということもできる。
【0029】
図示を省略するが、印刷実行部290は、1個のバンド領域の印刷を、複数回の吐出処理で行う印刷モードを備えている。例えば、奇数回目の吐出処理が、主走査方向D1に沿って並ぶ複数の画素Pxのうちの奇数番目の画素Pxのドットを形成し、偶数回目の吐出処理が、主走査方向D1に沿って並ぶ複数の画素Pxのうちの偶数番目の画素Pxのドットを形成してもよい。この場合、主走査方向D1に延びる1本の画素ラインの印刷は、2回の吐出処理で完了する。
【0030】
このように1本の画素ラインの印刷を2回の吐出処理で完了する印刷モードでの具体的な印刷方法としては、例えば、以下の方法を採用可能である。吐出処理と、副走査方向D3への用紙PMの搬送とが、交互に繰り返される。1回の搬送による搬送量は、印刷ヘッド292におけるノズルNzの分布領域の副走査方向D3の幅の半分である。1個のバンド領域(注目バンド領域と呼ぶ)は、連続する3回の吐出処理で、印刷される。具体的には、第1吐出処理は、注目バンド領域のうち上流方向D3側の半分の領域の奇数番目の画素Pxにドットを形成し、第2吐出処理は、注目バンド領域の全体の偶数番目の画素Pxにドットを形成し、第3吐出処理は、注目バンド領域のうち下流方向D4側の半分の領域の奇数番目の画素Pxにドットを形成する。この場合、用紙PM上の部分領域(例えば、注目バンド領域の上流方向D3側の半分の部分)は、2回の吐出処理で印刷される。すなわち、印刷の際、印刷ヘッド292による用紙PM上の部分領域の走査回数は、2回である。従って、パス数は、2である。以下、パス数が2回以上の印刷モードを、マルチパスモードとも呼ぶ。
【0031】
シングルパスモードは、マルチパスモードと比べて、印刷に要する時間を短縮できる。マルチパスモードは、シングルパスモードと比べて、ドット形成位置のずれ等が目立つことを抑制できる。
【0032】
本実施例では、ユーザは、印刷用の設定として、印刷品質を設定可能である。印刷品質は、例えば、「高速」と「きれい」とから選択可能である。「高速」が選択された場合、パス数は「1回」に設定され、印刷解像度は「第1解像度」に設定される。「きれい」が選択された場合、パス数は「2回」に設定され、印刷解像度は「第2解像度」に設定される。
【0033】
図3、
図4は、印刷処理の手順の例を示すフローチャートである。
図4は、
図3の続きを示している。印刷処理は、例えば、ユーザが「コピー」の指示を操作部250(
図1)に入力した場合に、実行される。「コピー」の指示が入力された場合、プロセッサ210は、スキャナ部280を駆動してスキャンデータを生成し、生成したスキャンデータを記憶装置(例えば、揮発性記憶装置220と不揮発性記憶装置230とのいずれか)に一時的に格納する。そして、プロセッサ210は、記憶装置のスキャンデータを用いて、印刷処理を実行する。ユーザは、コピーなどの指示を行う前に、予め、上記の印刷品質を設定できる。図示を省略するが、プロセッサ210は、ユーザによって選択された設定を表す設定情報を、不揮発性記憶装置230に格納する。なお、プロセッサ210は、「コピー」に限らず、他の処理の指示(例えば、ユーザによって指定された画像データを用いた印刷の指示)に応じて、印刷処理を実行し得る。
【0034】
図3のS200では、プロセッサ210は、記憶装置の設定情報を参照し、印刷解像度が第1解像度であるか否かを判断する。印刷解像度が第2解像度(すなわち、高解像度)である場合(S200:No)、プロセッサ210は、S202へ移行する。印刷解像度が第1解像度(すなわち、低解像度)である場合(S200:Yes)、S201で、プロセッサ210は、パス数が1回であるか否かを判断する。パス数が複数回である場合(S201:No)、プロセッサ210は、S202へ移行する。S202では、プロセッサ210は、印刷モードに応じた印刷処理を実行する。本実施例では、S202では、プロセッサ210は、対象画像の全体に亘って、吐出処理を印刷実行部290に実行させる。S202の処理の手順としては、公知の種々の手順を採用可能である(詳細な説明を省略する)。そして、プロセッサ210は、画像の印刷が完了したことに応じて、印刷処理を終了する。
【0035】
印刷解像度が第1解像度であり、かつ、パス数が1回である場合(S200:Yes、S201:Yes)、S204で、プロセッサ210は、印刷対象の画像データである対象画像データを取得する。例えば、プロセッサ210は、記憶装置に格納されたスキャンデータを、その記憶装置から取得する。以下、
図2の対象画像IMが、対象画像データによって表されることとして、説明を行う。S206では、プロセッサ210は、対象画像データの解像度を、印刷解像度に変換する。解像度変換の方法としては、公知の方法(例えば、補間など)を採用可能である。スキャンデータの解像度が、印刷解像度と同じである場合には、S206は省略される。
【0036】
S208では、プロセッサ210は、対象画像データから、対象画像IM(
図2)を形成する複数の単位領域UAのうちの1個の未処理の単位領域UAである注目単位領域を表す単位データを取得する(単位データは、単位領域内の画像である単位画像を表している)。本実施例では、注目単位領域は、未処理の単位領域UAのうちの最も上流方向D3側の単位領域UAである。例えば、
図2の例において、S208が初めて実行される場合には、第1単位領域UA(001)が、注目単位領域である。プロセッサ210は、S208で、注目単位領域(すなわち、注目単位領域の画像である注目単位画像)を特定している、と言える。
【0037】
S210では、プロセッサ210は、注目単位領域の単位データの各画素の画素値を、RGBの階調値から、印刷用の色材の色成分に対応するCMYKの階調値に変換する。RGBとCMYKとの間の対応関係は、不揮発性記憶装置230に予め格納されたルックアップテーブル(図示省略)によって予め規定されている。プロセッサ210は、このルックアップテーブルを参照して、色変換を実行する。
【0038】
S220では、プロセッサ210は、注目単位領域を表す単位データから、注目単位領域内の複数の部分領域BLのうちの1個の未処理の部分領域BLである注目部分領域を表す注目部分データを取得する(部分データは、部分領域内の画像である部分画像を表している)。本実施例では、注目部分領域は、未処理の部分領域BLのうちの最も第2方向D2側の部分領域BLである。例えば、
図2の例において、S220が初めて実行される場合には、1番の部分領域BL(BL(01))が、注目部分領域である。プロセッサ210は、220で、注目部分領域(すなわち、注目部分領域の画像である注目部分画像)を特定している、と言える。
【0039】
S225では、プロセッサ210は、注目部分領域の指標値を算出する。本実施例では、プロセッサ210は、印刷に用いられる色材の種類毎に、指標値を算出する。具体的には、シアンCの指標値iCと、マゼンタMの指標値iMと、イエロYの指標値iYと、ブラックKの指標値iKと、が算出される。本実施例では、プロセッサ210は、注目部分領域内の複数の画素のシアンCの階調値の合計値Csumを算出し、シアン合計値CsumにシアンCの所定の重みWcを乗じることによって、シアン指標値iCを算出する。同様に、マゼンタ指標値iMは、マゼンタ合計値Msum×マゼンタ重みWmであり、イエロ指標値iYは、イエロ合計値Ysum×イエロ重みWyであり、ブラック指標値iKは、ブラック合計値Ksum×ブラック重みWkである。各色成分の重みWc、Wm、Wy、Wkは、各色材のドットの暗さを表しており、予め決められている(例えば、Wc=0.41、Wm=0.43、Wy=0.27、Wk=1)。このように算出される指標値iC、iM、iY、iKは、注目部分領域内の複数の画素のそれぞれの色の暗さ(すなわち、色材の量)を表している。指標値iC、iM、iY、iKが大きいほど、色が暗い(すなわち、色材の量が多い)。注目部分領域内の色が暗いことは、注目部分領域が、背景ではなく、文字や写真などのオブジェクトを表している可能性が高いことを、示している。
【0040】
S230では、プロセッサ210は、注目単位領域内の全ての部分領域BLの処理が終了したか否かを判断する。未処理の部分領域BLが残っている場合(S230:No)、プロセッサ210は、S220へ移行し、未処理の部分領域BLの処理を実行する。
【0041】
全ての部分領域BLの処理が終了した場合(S230:Yes)、S235(
図4)で、プロセッサ210は、16個の部分領域BLのそれぞれの4種類の指標値iC、iM、iY、iK(すなわち、16×4=64個の指標値)のうちの最大指標値iMaxを特定する。
【0042】
S240では、プロセッサ210は、最大指標値iMaxが、所定の閾値Th以下であるか否かを判断する。
図5は、最大指標値iMaxと単位領域によって表される画像との関係の説明図である。
図5(A)は、最大指標値iMaxが小さい場合の単位領域UAaの画像例を示し、
図5(B)は、最大指標値iMaxが大きい場合の単位領域UAbの画像例を示している。
【0043】
図5(A)の単位領域UAaは、対象画像中の余白を表す領域である。この単位領域UAa内には、白よりも暗い複数の画素Pxdが、複数の部分領域BLに分散して配置されている。画素Pxdの総数は、複数の画素Pxdによって表される画像が印刷された場合に、印刷された画像を肉眼で視認することが難しいくらいに、少ない。このような少数の画素Pxdは、例えば、原稿のスキャン時や、画像処理時に、生じ得る。例えば、紙を形成する複数の繊維によって、原稿の表面上に細かい凹凸が形成され得る。スキャナ部280を用いて原稿を読み取ることによってスキャンデータを生成する場合には、このような細かい凹凸に起因する薄い影(すなわち、ノイズ)を表すスキャンデータが生成され得る。このようなノイズを表す画素は、
図5(A)の複数の画素Pxdのように、複数の部分領域BLに分散して、まばらに、配置され得る。また、画像データの不可逆圧縮と伸長を繰り返すことによって、
図5(A)の複数の画素Pxdのように、ノイズを表す画素が生じ得る。このようなノイズのみを表す単位領域UAaの複数の部分領域BLからは、小さい指標値iC、iM、iY、iKが算出されるので、最大指標値iMaxも小さい。
【0044】
図5(B)の単位領域UAbは、対象画像中のオブジェクトの一部を表す領域である。
図5(B)の例では、2番目の部分領域BL(BL(02))が、文字列の一部を表している。このようにオブジェクトを表す部分領域BLからは、大きい指標値iC、iM、iY、iKが算出される。従って、単位領域UAbの他の部分領域BLが、オブジェクトを表さずに余白を表す場合であっても、最大指標値iMaxは、オブジェクトを表す部分領域BLから算出される指標値iC、iM、iY、iKによって、大きくなる。
【0045】
S240(
図4)の閾値Thは、
図5(A)のようなノイズのみを表す単位領域UAaから算出される小さい最大指標値iMaxを、
図5(B)のようなオブジェクトを表す単位領域UAbから算出される大きい最大指標値iMaxから区別できるように、予め決められている。
【0046】
iMax≦Thである場合(S240:Yes)、すなわち、注目単位領域がノイズのみを表す場合、S280で、プロセッサ210は、移動印刷データを生成する。移動印刷データは、吐出処理を実行するための画像データを含まずに、用紙PMを移動させるための移動データのみを含む印刷データである。印刷データは、印刷実行部290の制御部298によって解釈可能な形式のデータである。S280では、1個の単位領域の幅Wu(
図2)と同じ距離だけ用紙PMを移動させる移動データを含む印刷データが、生成される。
【0047】
S285では、プロセッサ210は、生成した移動印刷データを、印刷実行部290(
図1)に供給する。S290では、印刷実行部290の制御部298は、受信した移動印刷データ(ここでは、移動データ)に従って、搬送部296を駆動させる。これにより、印刷ヘッド292を駆動する主走査が行われずに、用紙PMは、副走査方向D3に、幅Wuと同じ距離だけ移動する。そして、処理は、S295に移行する。
【0048】
図2の対象画像IMが印刷される場合には、まず、用紙PMに対する印刷ヘッド292の副走査方向D3の相対位置が、初期位置P1となるように、用紙PMが搬送される。
図3では図示を省略するが、初期位置P1への用紙PMの搬送は、S208よりも前の任意の段階で、実行してよい。この状態で、印刷ヘッド292は、第1単位領域UA(001)から下流方向D4に連続する21個の単位領域UA上にドットを形成可能である。そして、第1単位領域UA(001)が注目単位領域として選択される(S208(
図3))。ここで、第1単位領域UA(001)が、対象画像IMの余白を表しており、最大指標値iMaxが閾値Th以下であるとする(S240:Yes(
図4))。この場合、吐出処理は実行されずに、S290で、用紙PMは、副走査方向D3に、幅Wuと同じ距離だけ移動する。この結果、印刷ヘッド292は、用紙PMに対する第2相対位置P2に配置される。第2相対位置P2では、印刷ヘッド292は、第2単位領域UA(002)から下流方向D4に連続する21個の単位領域UA上にドットを形成可能である。
【0049】
S295(
図4)では、プロセッサ210は、全ての単位領域UAの処理が終了したか否かを判断する。未処理の単位領域UAが残っている場合(S295:No)、プロセッサ210は、
図3のS208に移行して、未処理の単位領域UAの処理を実行する。
【0050】
図2の例では、第1単位領域UA(001)の処理が終了したことに応じて、第2単位領域UA(002)が処理される。ここで、第2単位領域UA(002)が、対象画像IMの文字列のオブジェクトを表しており、最大指標値iMaxが閾値Thよりも大きいとする(S240:No(
図4))。この場合、処理は、S245へ移行する。
【0051】
S245では、プロセッサ210は、対象画像データから、注目単位領域を含む連続する21個の単位領域UAで構成されるバンド領域内の画像であるバンド画像を表すバンドデータを取得する。バンド領域は、注目単位領域と、注目単位領域の下流方向D4側に位置する20個の単位領域UAと、で構成されている。
図2中の第1バンド領域BA(1)は、第2単位領域UA(002)が注目単位領域である場合のバンド領域であり、第2単位領域UA(002)から第22単位領域UA(022)までの21個の単位領域UAで構成されている。このように、1個のバンド画像は、注目単位画像を含み下流方向D4に連続する(すなわち、副走査方向D3に連続する)複数個(本実施例では、21個)の単位画像で構成されている。
【0052】
S250では、プロセッサ210は、バンドデータの各画素の画素値を、RGBの階調値から、印刷用の色材の色成分に対応するCMYKの階調値に変換する。この色変換処理は、S210(
図3)の処理と同じである。なお、注目単位領域の画素値の色変換は、S210で完了しているので、S250では、他の単位領域UAの画素値が変換される。
【0053】
S255では、プロセッサ210は、バンドデータを用いてハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理としては、いわゆる誤差拡散法に従った処理が行われる。この代わりに、ディザマトリクスを用いる方法を採用してもよい。
【0054】
S260では、プロセッサ210は、バンド画像を印刷するための印刷データであるバンド印刷データを生成する。バンド印刷データは、ハーフトーン処理の結果(インクドットのパターン)を表すバンド画像データと、バンド画像データに基づく吐出処理の後に用紙PMを搬送するための移動データと、を含んでいる。S260では、1個のバンド領域の幅(21×Wu)と同じ距離だけ用紙PMを移動させる移動データを含む印刷データが、生成される。
【0055】
S265では、プロセッサ210は、生成したバンド印刷データを、印刷実行部290(
図1)に供給する。S270では、印刷実行部290の制御部298は、受信したバンド印刷データに含まれるバンド画像データに従って、印刷ヘッド292とヘッド移動部294とを駆動し、そして、吐出処理を実行する。これにより、バンド画像が印刷される。例えば、
図2の第2単位領域UA(002)が注目単位領域である場合、第1バンド領域BA(1)のバンド画像が印刷される。
【0056】
S275では、印刷実行部290の制御部298は、バンド印刷データに含まれる移動データに従って、搬送部296を駆動する。これにより、用紙PMは、副走査方向D3に、印刷済のバンド領域の幅(21×Wu)と同じ距離だけ移動する。
図2中の第3相対位置P3は、この移動後の制御装置202の相対位置である。そして、処理は、S295に移行する。未処理の単位領域UAが残っている場合(S295:No)、S208〜S295の処理が繰り返される。なお、プロセッサ210は、バンド印刷データを生成した場合、バンド印刷データに対応するバンド領域BAを構成する複数の単位領域UAを、いずれも、処理済として扱う。全ての単位領域UAの処理が終了した場合(S295:Yes)、対象画像IMの印刷が終了し、印刷処理が終了する。なお、本実施例では、S270、S275の処理が完了する前であっても、プロセッサ210は、S265の完了に応じて、S295に移行して、処理を進行する。ただし、プロセッサ210は、S270、S275の完了を待ち、S270、S275が完了したことに応じて、S295に移行してもよい。
【0057】
図2の例では、第1バンド領域BA(1)の印刷に続けて、第1バンド領域BA(1)の下流方向D4側に連続する第2バンド領域BA(UA(023)〜UA(043))と第3バンド領域BA(UA(044)〜UA(064))との印刷が、行われている。第2と第3のバンド領域BA(2)、BA(3)の印刷の後には、
図4のS275による用紙PMの移動が行われる(移動距離=21×Wu)。これにより、印刷ヘッド292の相対位置は、第3相対位置P3から、第4相対位置P4、そして、第5相対位置P5へ移動する。
【0058】
図2の例では、3個の単位領域UA(065)、UA(066)、UA(067)が、余白を表している。これらの単位領域UA(065)、UA(066)、UA(067)は、第5相対位置P5の印刷ヘッド292がドットを形成可能な21個の単位領域UAのうちの上流方向D3側の3個の単位領域である。これらの単位領域UA(065)、UA(066)、UA(067)が注目単位領域である場合、最大指標値iMaxが閾値Th以下であり(S240:Yes(
図4))、S280〜S290によって、印刷ヘッド292の走査が行われずに、用紙PMの搬送が行われる。ここでは、幅Wuと同じ距離の搬送が3回行われる。これにより、印刷ヘッド292は、第5相対位置P5から、3×Wuの距離だけ下流方向D4に移動した第6相対位置P6に、相対的に移動する。そして、第6相対位置P6の印刷ヘッド292による第4バンド領域BA(4)の印刷が行われる。そして、
図3、
図4で説明した手順に従って、対象画像IMの印刷が行われる。
【0059】
このように、本実施例では、単位領域UA(すなわち、単位画像)が印刷対象であるか否かの判断が、単位領域UAに含まれる16個の部分領域BL(すなわち、16個の部分画像)に対応する64個の指標値を用いて行われる。従って、単位領域UAが印刷対象であるか否かの判断の精度を向上できる。
【0060】
仮に、複数の部分領域BLを用いずに、単位領域UAが印刷対象であるか否かを判断すると仮定する。例えば、合計値Csum、Msum、Ysum、Ksumとして、単位領域UA内の全ての画素のCMYKの階調値の合計値を用い、4個の重み付き合計値Csum×Wc、Msum×Wm、Ysum×Wy、Ksum×Wkのうちの最大値を、
図4のS240の最大指標値iMaxとして用いると仮定する。この場合、
図5(A)のように単位領域UAaが余白を表す場合に、単位領域UAaが印刷対象ではないと判断されるように、閾値Thは、単位領域UAa内の白よりも暗い複数の画素Pxdの全てを用いて算出される最大指標値iMaxよりも十分に大きな値に、予め決定される。
図5(B)のように、1個の部分領域BLのみがオブジェクトを表す場合には、オブジェクトを表す画素の数が、余白を表す画素の数と比べて少ないので、最終的に算出される最大指標値iMaxは、複数の部分領域BLがオブジェクトを表す場合と比べて、小さくなり得る。特に、オブジェクトが小さい場合には、最大指標値iMaxが閾値Thよりも小さくなり得る。この結果、オブジェクトを表す単位領域UAbは、印刷対象ではないと判断され得る。このように、複数の部分領域BLを用いずに単位領域UAが印刷対象であるか否かを判断する場合には、印刷すべき単位領域UAbが、誤って、印刷対象ではないと判断され得る。
【0061】
本実施例では、単位領域に含まれる複数の部分領域BLに対応する複数の指標値を用いて、単位領域が印刷対象であるか否かが判断される。単位領域UAがオブジェクトを表さずにノイズのみを表す場合、ノイズを表す複数の画素は、
図5(A)の複数の画素Pxdのように、複数の部分領域BLに分散して配置され得る。従って、1個の部分領域BLに含まれるノイズを表す画素(例えば、画素Pxd)の数は、単位領域UA内のノイズを表す画素の総数よりも、小さい。一方、単位領域UAがオブジェクトを表す場合には、単位領域UAによって表されるオブジェクトが小さい場合であっても、オブジェクトを表す画素は、複数の部分領域BLのうちの一部の部分領域BL(例えば、1個の部分領域BL)内に集中して存在する。以上により、
図5(A)の単位領域UAaのように、複数の部分領域BLの全てがオブジェクトを表していない場合の1個の部分領域BLから算出される最大指標値iMaxと、
図5(B)の単位領域UAbのように、一部の部分領域BLのみがオブジェクトを表し他の部分領域BLが余白を表す場合のオブジェクトを表す1個の部分領域BLから算出される最大指標値iMaxと、の間の差を大きくすることができる。この結果、最大指標値iMaxと閾値Thとの比較によって、余白のみを表す単位領域UAを、適切に、印刷対象から除くことができ、そして、オブジェクトを表す単位領域UAを、適切に、印刷対象として選択できる。
【0062】
また、単位領域UA(すなわち、単位画像)が印刷対象ではないと判断された場合には、単位領域UAの印刷のための吐出処理が実行されずに、用紙PMが搬送される(
図4:S280〜S290)。従って、印刷に要する時間を短縮できる。特に、
図2の単位領域UA(065)、UA(066)、UA(067)のように、対象画像IMの縁ではなく対象画像IMの内部に余白が存在する場合には、対象画像IMの内部の余白のための吐出処理が省略されるので、対象画像IMに応じて、適切に、印刷に要する時間を短縮できる。
【0063】
また、
図3のS210、S225で説明したように、指標値の算出に用いられる画素値は、複数の色成分(ここでは、CMYK)のそれぞれの成分値(ここでは、階調値)で表されている。そして、指標値としては、色成分毎の指標値が算出される。従って、複数の色成分のうちの一部の色成分を考慮しない場合と比べて、単位領域UAが印刷対象であるか否かを適切に判断できる。
【0064】
特に、上記実施例では、複数の色成分は、印刷実行部290の印刷ヘッド292の複数のノズルNzが吐出可能な色材の複数の種類に、それぞれ対応している。従って、色材の種類とは独立な色成分の成分値(例えば、RGBの階調値)を用いて指標値を算出する場合と比べて、印刷され得る画像に適した指標値を算出できる。この結果、単位領域UAが印刷対象であるか否かを適切に判断できる。
【0065】
また、
図3のS225で説明したように、色材の種類毎に算出される指標値iC、iM、iY、iKは、色材の種類に対応付けられた重みWc、Wm、Wy、Wkを、色成分(具体的には、階調値の合計値)に乗じて得られる。このように、色材の種類に応じて異なる特性を考慮して指標値を算出できるので、複数種類の色材のそれぞれの特性に適した判断(具体的には、単位領域UAが印刷対象であるか否かの判断)が可能である。
【0066】
特に、本実施例では、重みWc、Wm、Wy、Wkは、対応する色材の色(例えば、同じサイズのドットで表される色)が暗いほど大きい。すなわち、複数種類の色材に対応する複数の重みの間では、等量の色材で印刷された等面積のベタ領域の色が暗いほど(例えば、印刷済のベタ領域のCIELAB色空間で表される測色値のL*が小さいほど)、重みが大きい。これにより、部分領域BL(すなわち、部分画像)が暗くて目立ちやすい色の画素を含む場合に、その部分領域BLの指標値が大きくなる。目立ちやすい色の画素は、ノイズではなく、印刷すべきオブジェクト(例えば、文字や写真など)を表している可能性が高い。従って、部分領域BLがオブジェクトを表す場合に、その部分領域BLを含む単位領域UAが印刷対象ではないと判断される可能性を低減できる。また、明るく目立ちにくい画素は、暗く目立ちやすい画素と比べて、ノイズを表している可能性が高い。従って、単位領域UAの複数の部分領域BLがオブジェクトを表さずにノイズのみを表す場合に、その単位領域UAが印刷対象であると判断される可能性を低減できる。
【0067】
また、指標値iC、iM、iY、iKは、それぞれ、指標値に対応する色成分の成分値(ここでは、階調値)の部分領域BLにおける合計値と正の相関のある値である。そして、
図4のS235、S240で説明したように、注目単位領域に含まれる16個の部分領域BLのそれぞれの4個の指標値iC、iM、iY、iKで構成される64個の指標値のうちの最大指標値iMaxが閾値Thを超える場合に、注目単位領域が印刷対象であると判断される。従って、印刷すべき画素の画素値によって指標値が大きくなる本実施例においては、単位領域UAが印刷対象であるか否かを適切に判断できる。
【0068】
また、本実施例では、印刷実行部290は、印刷解像度が第1解像度であるモードと、印刷解像度が第1解像度よりも高密度な第2解像度であるモードと、を備えている。そして、
図3のS200、S201で説明したように、印刷解像度が比較的低い第1解像度であることを含む印刷モード(ここでは、「高速」の印刷モード)で印刷を実行する場合には、プロセッサ210は、単位領域UA毎に印刷対象であるか否かを判断し、そして、その判断結果に応じて印刷実行部290を制御する。従って、高速な印刷が望まれる印刷モードでは、印刷対象ではないと判断された単位領域UAのための吐出処理が省略されるので、印刷に要する時間を短縮できる。また、印刷解像度が比較的高い第2解像度であることを含む印刷モード(ここでは、「きれい」の印刷モード)で印刷を実行する場合には、プロセッサ210は、印刷実行部290に、吐出処理を対象画像の全体に亘って実行させる(S202)。従って、高画質が望まれる印刷モードでは、印刷されない部分が生じるなどの不具合を抑制できる。
【0069】
また、本実施例では、印刷実行部290は、パス数が1回であるモードと、パス数が複数回(ここでは、2回)であるモードと、を備えている。そして、
図3のS200、S201で説明したように、パス数が1回であることを含む印刷モード(ここでは、「高速」の印刷モード)で印刷を実行する場合には、プロセッサ210は、単位領域UA毎に印刷対象であるか否かを判断し、そして、その判断結果に応じて印刷実行部290を制御する。従って、高速な印刷が望まれる印刷モードでは、印刷対象ではないと判断された単位領域UAのための吐出処理が省略されるので、印刷に要する時間を短縮できる。また、パス数が複数回であることを含む印刷モード(ここでは、「きれい」の印刷モード)で印刷を実行する場合には、プロセッサ210は、印刷実行部290に、吐出処理を対象画像の全体に亘って実行させる(S202)。従って、高画質が望まれる印刷モードでは、印刷されない部分が生じるなどの不具合を抑制できる。
【0070】
また、
図2で説明したように、印刷ヘッド292は、1回の吐出処理で、副走査方向D3に連続するH個(Hは2以上の整数。ここでは、H=21)の単位領域UA(すなわち、H個の単位画像)によって表されるバンド領域BA内のバンド画像を印刷できる。そして、
図4のS260、S275で説明したように、注目単位領域(すなわち、注目単位画像)が印刷対象であると判断された場合の移動処理による移動距離は、バンド領域BAを構成するH個の単位領域UAの合計幅、すなわち、バンド画像を構成するH個の単位画像の合計幅(ここでは、21×Wu)と同じである。そして、
図4のS295で説明したように、プロセッサ210は、注目単位領域が印刷対象であると判定された場合には、印刷されるバンド領域BAを構成するH個の単位領域UAを処理済として扱う。この結果、注目単位領域の下流方向D4側に連続するH−1個の単位領域UAのそれぞれについては、印刷対象であるか否かの判断が省略される。従って、全ての単位領域UAについて判断を行う場合と比べて、印刷に要する時間を短縮できる。
【0071】
また、
図3、
図4で説明したように、指標値の算出(S225)と、単位画像が印刷対象であるか否かの判断(S240)と、バンド印刷データを印刷実行部290に供給する処理(S265)とは、下流方向D4に向かって1個の単位領域UA(すなわち、1個の単位画像)ずつ順番に実行される。従って、全ての単位領域UAの指標値の算出の完了後に、単位領域が印刷対象であるか否かの判断を行い、全ての単位領域UAの判断の完了後に、印刷データを印刷実行部290に供給する場合と比べて、印刷に要する時間を短縮できる。
【0072】
特に、本実施例では、
図3のS210では、単位データの色空間が、第1色空間(ここでは、RGB色空間)から、色材の種類の対応する色成分で規定された第2色空間(ここでは、CMYK色空間)へ変換される。そして、S260で説明したように、バンド印刷データは、バンド画像データを含んでおり、バンド画像データは、ハーフトーン処理の結果、すなわち、バンド画像に含まれる複数の画素に対応する複数の領域のそれぞれのドット形成状態を表している。ここで、色変換(S210)と、第2色空間で表された画素値を用いる指標値の算出(225)と、指標値を用いる判断(S240)と、バンド印刷データの供給(S265)とは、下流方向D4に向かって1個の単位領域UA(すなわち、1個の単位画像)ずつ順番に実行される。従って、全ての画素の色変換の完了後に、指標値を算出し、全ての単位領域UAの指標値の算出の完了後に、単位領域が印刷対象であるか否かの判断を行い、全ての単位領域UAの判断の完了後に、印刷データを印刷実行部290に供給する場合と比べて、印刷に要する時間を短縮できる。
【0073】
B.変形例:
(1)印刷処理としては、
図3、
図4で説明した処理に代えて、他の種々の処理を採用可能である。例えば、プロセッサ210は、
図3のS225とS230との間で、部分領域BLの4個の指標値のうちの最大指標値が閾値Th以下であるか否かを判断してもよい。そして、プロセッサ210は、最大指標値が閾値Thを超える場合には、注目単位領域が印刷対象であると判断し、残りの部分領域の指標値の算出を省略して
図4のS245へ移行してもよい。このように、単位領域UAがN個(上記実施例では、N=16)の部分領域BLで構成される場合に、N個の部分領域BLの一部のみが判断に用いられてもよい。一般的には、J個(Jは1以上N以下の整数)の部分領域BLの指標値(例えば、少なくともJ個の指標値)に応じて、単位領域UAが印刷対象であるか否かが判断されてよい。
【0074】
また、
図3のS200が省略されてもよい。すなわち、プロセッサ210は、印刷解像度に拘わらずに、S204に続く処理、すなわち、単位領域UA毎の印刷対象であるか否かの判断結果に応じて印刷実行部290を制御する処理を実行してもよい。また、印刷実行部290による印刷の印刷解像度が、1個の解像度に固定されていてもよい。
【0075】
また、
図3のS201が省略されてよい。すなわち、プロセッサ210は、パス数に拘わらずに、S204に続く処理、すなわち、単位領域UA毎の印刷対象であるか否かの判断結果に応じて印刷実行部290を制御する処理を実行してもよい。また、印刷実行部290による印刷のパス数が、1個のパス数(例えば、1)に固定されていてもよい。
【0076】
また、印刷実行部290は、ユーザに、印刷解像度とパス数とを互いに独立に選択することを許容してもよい。
【0077】
(2)指標値としては、
図3のS225で説明した指標値に代えて、種々の値を採用可能である。一般的には、指標値としては、部分領域BLを表す部分データ内の複数の画素に応じて決定される部分領域BL内の色材量が多いほど、単位領域UAが印刷対象であると判断されやすいように決定される種々の値を採用可能である。
【0078】
例えば、1個の部分領域BLからは、複数種類の色成分のうちの一部の色成分の階調値を用いて指標値が算出されてもよい。例えば、1個の色成分の階調値の合計値(例えば、ブラックKの階調値の合計値Ksum)が、指標値として用いられてもよい。また、1個の部分領域BLからは、複数の色成分の少なくとも一部の階調値を総合して得られる1個の指標値が算出されてもよい。例えば、CMYKのそれぞれの階調値の重み付き合計値(Wc×Csum+Wm×Msum+Wy×Ysum+Wk×Ksum)が、指標値として用いられてもよい。
【0079】
また、対象画像データの画素値の色成分の総数は、4個に代えて、1以上の任意の数であってよい。例えば、色成分の総数が1個(例えば、ブラックK)であってもよい。この場合も、1個の色成分の階調値を用いて指標値を算出すればよい。また、指標値の算出に用いられる画素値の色成分は、色材の種類とは異なる色成分であってもよい(例えば、RGB)。
【0080】
また、各色成分の重みが均等であってもよい(例えば、Wc=Wm=Wy=Wk)。この場合、指標値の計算から、重みWc、Wm、Wy、Wkが省略されてもよい。
【0081】
また、指標値は、合計値Csum、Msum、Ysum、Ksumに重みWc、Wm、Wy、Wkを乗じた値に代えて、合計値と正の相関のある種々の値であってよい。例えば、指標値は、部分領域BL内の平均階調値、または、部分領域BL内の階調値の中央値(メディアン)であってよい。また、そのような値に色成分毎の重みを乗じた値が、指標値であってもよい。
【0082】
また、指標値としては、他の種々の値を採用可能である。例えば、部分領域BL内の有色の画素(すなわち、最も明るい白とは異なる色を示す画素)の総数を採用してもよく、部分領域BL内の最大階調値を採用してもよく、ハーフトーン処理によって特定される部分領域BL内のドットの総数を採用してもよい。
【0083】
また、指標値の算出には、部分領域BL内の一部の画素のみが用いられてもよい。例えば、主走査方向D1に沿って並ぶ複数の画素のうちの偶数番目の画素のみが用いられても良い。
【0084】
(3)単位領域が印刷対象であると判断するための条件としては、指標値によって表される部分領域BL内の色材量が多いことを示す種々の条件を採用可能である。例えば、少なくとも1個の部分領域BLの少なくとも1個の指標値が閾値を超えることを採用してもよい。一般的には、単位領域UAがN個の部分領域BLで構成される場合に、J個(Jは1以上N以下の整数)の部分領域BLのそれぞれの指標値に基づいて、単位領域UAが印刷対象であるか否かが判断されてよい。例えば、1個の単位領域UAがN個の部分領域BLで構成され、画素値がL個の色成分で表される場合に、N個の部分領域BLのうちのJ個(Jは1以上N以下の整数)の部分領域BLのそれぞれのL個の指標値で構成されるJ×L個の指標値のうちの最大指標値が閾値を超えることが条件であってもよい。
【0085】
(4)
図2の実施例では、1回の吐出処理で印刷されるバンド画像に対応するバンド領域BAは、21個の単位領域UAで構成されているが、1個のバンド領域BAを構成する単位領域UAの総数は、1以上の任意の数であってよい。例えば、1個の単位領域UAが、1個のバンド領域BAを構成していてもよい。
【0086】
(5)
図3、
図4の実施例では、印刷のための処理(例えば、指標値の算出と、単位領域UAが印刷対象であるか否かの判断と、バンド印刷データの印刷実行部290への供給)が、下流方向D4に向かって1個の単位領域UAずつ順番に行われている。これに代えて、複数個(例えば、2個)の単位領域UAずつ順番に、印刷のための処理が行われてもよい。
【0087】
(6)印刷に用いられる対象画像データは、スキャンデータに代えて、他の任意の画像データであってよい。例えば、対象画像データは、ユーザによって指定された画像データであってもよい。また、指定された画像データの形式がビットマップ形式とは異なる形式である場合(例えば、EMF(Enhanced Meta File)形式)、プロセッサ210は、データ形式を変換(例えば、ラスタライズ)することによって生成されるビットマップデータを、対象画像データとして用いればよい。
【0088】
(7)
図2の実施例では、対象画像IMの端と用紙PMの端との間に余白が設けられているが、用紙PMの全体に対象画像IMが印刷されてもよい(縁無し印刷とも呼ばれる)。この場合、プロセッサ210は、用紙PMの端と対象画像IMの端とが一致するように、印刷データを形成してよい。また、プロセッサ210は、対象画像IMの端が用紙PMの端の外にはみ出るように、印刷データを形成してもよい。いずれの場合も、プロセッサ210は、対象画像IMを複数の単位領域UAに区分し、そして、単位領域UA毎に、単位領域UAが印刷対象であるか否かを判断すればよい。
【0089】
(8)印刷実行部290を制御する制御装置の構成としては、
図1の制御装置202の構成に代えて、種々の構成を採用可能である。例えば、表示部240と操作部250と通信インタフェース270との少なくとも1個が省略されてもよい。また、制御装置202と印刷実行部290とが、互いに独立な別の装置であってもよい。例えば、制御装置202は、パーソナルコンピュータ、スマートフォンなどの印刷実行部290とは別の装置であってもよい。また、ネットワークを介して互いに通信可能な複数の装置(例えば、コンピュータ)が、制御装置202による処理の機能を一部ずつ分担して、全体として、制御装置202による処理の機能を提供してもよい(これらの装置を備えるシステムが制御装置に対応する)。また、印刷実行部は、単機能のプリンタであってもよい。
【0090】
(9)印刷実行部の構成としては、実施例の印刷実行部290の構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。例えば、印刷に利用可能な色材は、CMYKに代えて、任意の色材であってよい(例えば、ブラックKのみ、CMYのみ、CMYとシアンCよりも薄いライトシアンとの組み合わせ、など)。また、印刷方式は、インクジェット式に代えて、他の方式(例えば、レーザ式)であってもよい。
【0091】
上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、
図3のS225の処理を実行する機能を、専用のハードウェア回路によって実現してもよい。
【0092】
また、本発明の機能の一部または全部がコンピュータプログラムで実現される場合には、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)に格納された形で提供することができる。プログラムは、提供時と同一または異なる記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納された状態で、使用され得る。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種ROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含み得る。
【0093】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。