(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態を説明する。本実施の形態に係る電子写真像担持体(以下、単に「像担持体」とも言う)は、導電性支持体と、当該導電性支持体上に配置される感光層と、当該感光層上に配置される保護層と、を有する。
【0014】
上記導電性支持体は、上記感光層を支持可能で、かつ導電性を有する部材である。上記導電性支持体の例には、金属製のドラムまたはシート、ラミネートされた金属箔を有するプラスチックフィルム、蒸着された導電性物質の膜を有するプラスチックフィルム、導電性物質またはそれとバインダー樹脂とからなる塗料を塗布してなる導電層を有する金属部材やプラスチックフィルム、紙などが含まれる。上記金属の例には、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛およびステンレス鋼が含まれ、上記導電性物質の例には、上記金属、酸化インジウムおよび酸化スズが含まれる。
【0015】
上記感光層は、後述する露光により所期の画像の静電潜像を上記像担持体の表面に形成するための層である。当該感光層は、単層でもよいし、積層された複数の層で構成されていてもよい。上記感光層の例には、電荷輸送化合物と電荷発生化合物とを含有する単層、および、電荷輸送化合物を含有する電荷輸送層と、電荷発生化合物を含有する電荷発生層との積層物、が含まれる。
【0016】
上記保護層は、上記感光層の上に配置されるとともに上記像担持体の表面を構成する、上記感光層を保護するための層である。上記保護層は、ラジカル重合性モノマーおよびラジカル重合性官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含有するラジカル重合性組成物の重合硬化物で形成されている。すなわち、上記保護層は、上記ラジカル重合性モノマーのラジカル重合による一体的な重合体で構成され、上記保護層中に分散されているパーフルオロポリエーテル化合物を含有する。当該パーフルオロポリエーテル化合物は、上記重合体とラジカル重合による共有結合によって結合している。
【0017】
また、上記像担持体は、本実施形態に係る効果が得られる範囲において、上記導電性支持体および上記感光層以外の他の構成をさらに含んでいてもよい。当該他の構成の例には、中間層が含まれる。当該中間層は、例えば、上記導電性支持体と上記感光層との間に配置される、バリア機能と接着機能とを有する層である。
【0018】
上記像担持体は、その表面を構成する上記保護層以外は、公知の有機感光体と同様に構成することが可能であり、例えば、特開2012−078620号公報に記載の像担持体における保護層以外の部分と同じに構成することが可能である。また、上記保護層も、材料が異なる以外は、特開2012−078620号公報に記載されているように構成することが可能である。
【0019】
上記保護層は、前述したように、上記ラジカル重合性組成物の重合硬化物であり、当該ラジカル重合性組成物は、上記ラジカル重合性モノマーと上記ラジカル重合性官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物とを含有する。これらは、いずれも一種でもそれ以上でもよい。
【0020】
上記保護層の層状の構造は、高い膜強度が得られる観点から主に硬化性脂によって構成される。当該硬化樹脂は、架橋性の重合性化合物、具体的には2個以上のラジカル重合性官能基を有する化合物(例えば前述のラジカル重合性モノマーなど)を、紫外線や電子線などの活性線の照射により重合反応(硬化)することによって得られる樹脂であることが好ましい。
【0021】
[ラジカル重合性モノマー]
上記ラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合性官能基を有し、紫外線や可視光線、電子線などの活性線の照射により、あるいは加熱などのエネルギーの付加により、ラジカル重合(硬化)して、一般に像担持体のバインダー樹脂として用いられる樹脂となる化合物である。ラジカル重合性モノマーの例には、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、ビニルトルエン系モノマー、酢酸ビニル系モノマーおよびN−ビニルピロリドン系モノマーが含まれ、上記バインダー樹脂の例には、ポリスチレンおよびポリアクリレートが含まれる。
【0022】
上記ラジカル重合性官能基は、例えば、炭素−炭素2重結合を有しラジカル重合可能な基である。上記ラジカル重合性官能基は、少ない光量あるいは短い時間での硬化が可能であることから、アクリロイル基(CH
2=CHCO−)またはメタクリロイル基(CH
2=C(CH
3)CO−)であることが特に好ましい。
【0023】
上記ラジカル重合性モノマーの例には、以下の化合物M1〜M11が含まれる。下記式中、Rはアクリロイル基を表し、R’はメタクリロイル基を表す。
【0025】
上記ラジカル重合性モノマー化合物は、公知であり、また市販品としても入手することができる。上記ラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合性官能基が3個以上有する化合物であることが、架橋密度の高い高硬度の保護層を形成する観点から好ましい。
【0026】
[ラジカル重合性官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物]
上記ラジカル重合性官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(以下、「ラジカル重合性PFPE」とも言う)は、下記式(1)で表される。
【0028】
上記ラジカル重合性PFPEにおけるパーフルオロポリエーテル(以下、「PFPE」とも言う)は、上記式(1)で表される化合物からAおよびBを除いた部分である。
【0029】
上記PFPEは、パーフルオロアルキレンエーテルを繰り返し単位として有するオリゴマーまたはポリマーである。パーフルオロアルキレンエーテルの繰り返し単位の構造の例には、パーフルオロメチレンエーテル、パーフルオロエチレンエーテル、および、パーフルオロプロピレンエーテルの繰り返し単位の構造が含まれる。その中でも、パーフルオロポリエーテルが下記式(a)で示される繰り返し構造単位1、または、下記式(b)で示される繰り返し構造単位2を有していることが好ましい。
【0031】
上記PFPEが上記繰り返し構造単位1または上記繰り返し構造単位2を有する場合、当該繰り返し構造単位1の繰り返し数mおよび当該繰り返し構造単位2の繰り返し数nは、それぞれ0以上の整数であり、かつ、m+n≧1である。上記mは、4〜20であることが好ましく、7〜15であることがより好ましい。また、上記nは、20〜4であることが好ましく、4〜7であることがより好ましい。
【0032】
また、上記PFPEが上記繰り返し構造単位1および上記繰り返し構造単位2の両方を有する場合、当該繰り返し構造単位1と当該繰り返し構造単位2とは、ブロック共重合体構造を形成していてもよいし、ランダム共重合体構造を形成していてもよい。
【0033】
上記PFPEの重量平均分子量Mwは、100以上8000以下であることが好ましく、より好ましくは、500以上5000以下である。上記Mwは、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を利用する公知の方法によって求めることができる。
【0034】
上記式(1)中、Aは、独立して、その分子量が100以上400以下の連結基を表す。上記Aの分子量が100以上400以下であることによって、ラジカル重合性PFPEがラジカル重合性モノマーに対して十分な相溶性を有し、その結果、保護層用塗料中においてラジカル重合性PFPEが良好に分散し、よって、保護層全体にフッ素化合物(PFPE)を含有させることができる。
【0035】
上記Aの分子量が100未満であると、上記相溶性が不十分となって上記塗料の膜弾きが生じてしまい、当該塗料の層状の塗膜が得られなくなることがある。また、上記Aの分子量が400より大きいと、ラジカル重合性PFPEにおいてPFPEが占める割合が小さくなり、その結果、保護層中のフッ素含有量が不十分になり、よって保護層の潤滑性の維持が不十分になることがある。また、上記Aの分子量が400より大きいと、ラジカル重合性PFPEにおいて連結部(上記A)の占める割合が大きくなり、その結果、保護層の強度が低下し、よって保護層の耐摩耗性および耐傷性が不十分になることがある。
【0036】
上記Aの分子量は、例えば、ラジカル重合性PFPEのGPCによる分子量の測定や、燃焼イオンクロマトグラフなどの公知の分析技術を利用する公知の方法によって求めることができる。
【0037】
たとえば、まずGPCにてラジカル重合性PFPEの分子量を測定する。次いで、このラジカル重合性PFPEを燃焼イオンクロマトにてフッ素を定量し、そこからPFPE部分の分子量を算出する。そして、GPCにて測定した分子量からPFPE部分の分子量を引き、求められた分子量の差を官能基数で割り、さらに、求められた商から(メタ)アクリロイル基の分子量を引くことによって、連結基Aの分子量を求めることができる。
【0038】
上記Aは、上記の分子量を有する有機基であればよく、例えば、エーテル結合またはウレタン結合を含む三価以上の有機基である。この場合、Aの価数は、独立して三価以上であればよい。
【0039】
前述の式(1)中、Bは、独立してラジカル重合性官能基を表す。当該ラジカル重合性官能基は、ラジカル重合性モノマーのそれと同じく、例えば、炭素−炭素2重結合を有しラジカル重合可能な基である。ラジカル重合性PFPEのラジカル重合性官能基は、ラジカル重合性モノマーのそれと同じであってもよいし、異なっていてもよい。上記Bであるラジカル重合性官能基は、下記式(2)に表されることが、すなわちアクリロイルオキシ基(下記式(B1))またはメタクリロイルオキシ基(下記式(B2))であることが特に好ましい。なお、下記式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。
【0041】
前述の式(1)中、lは、独立して2以上の整数を表す。すなわち、上記ラジカル重合性PFPEが有するラジカル重合性官能基の数は4以上である。当該ラジカル重合性官能基の数が4以上であることにより、上記保護層の十分な膜強度が得られる。また、上記ラジカル重合性PFPEの分子構造が対称な構造であることは、当該ラジカル重合性PFPEの合成を容易にする観点から好ましく、この観点から上記ラジカル重合性官能基の数は偶数であることが好ましい。たとえば、当該膜強度の向上の観点およびラジカル重合性PFPEを容易に合成する観点から、上記ラジカル重合性官能基の数は、6以上であることがより好ましい。
【0042】
上記ラジカル重合性PFPEは、末端に水酸基やカルボキシル基を有するPFPEを原料として、これらの置換基の置換またはこれらの置換基からの誘導によって適宜に合成することも可能である。上記ラジカル重合性PFPEの合成方法の例には、以下の方法が含まれる。
1)末端に水酸基を有するPFPEに対して、(メタ)アクリル酸クロライドを脱塩酸によりエステル化反応させる方法。
2)末端に水酸基を有するPFPEに対して、(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物をウレタン化反応させる方法。
3)末端にカルボキシル基を有するPFPEを常法により酸ハロゲン化物とし、この酸ハロゲン化物に対して、(メタ)アクリロイル基と水酸基を有する化合物をエステル化反応させる方法。
【0043】
末端に水酸基を有するPFPEの例には、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のFomblinD2、Fluorolink D4000、FluorolinkE10H、5158X、5147X、Fomblin Z−tet−raol、および、ダイキン工業株式会社製のDemnum−SA、が含まれる。末端にカルボキシル基を有するPFPEの例には、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のFomblinZDIZAC4000、および、ダイキン工業株式会社製のDemnum−SH、が含まれる。「FOMBLIN」はソルベイスペシャルティポリマーズ社の登録商標であり、「FLUOROLINK」はソルヴェイ社の登録商標である。また、「DEMNUM」はダイキン工業株式会社の登録商標である。
【0044】
上記ラジカル重合性PFPEの合成法の具体例を以下に示す。
【0045】
[合成例1 化合物P4の合成]
下記式で表される両末端に水酸基を有するPFPE「Fomblin Z−tet−raol」(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製)20質量部、重合禁止剤p−メトキシフェノール0.01質量部、ウレタン化触媒ジブチルスズジラウレート0.01質量部、およびメチルエチルケトン20質量部、を混合し、空気気流下で攪拌し、混合液を80℃に加熱する。
【0046】
次いで、2−(アクリロイルオキシ)エチルイソシアネート(分子量141)5.7質量部を、発熱に注意しながらゆっくり添加する。次いで、当該混合液を80℃で攪拌しながら10時間反応を行う。IRスペクトル測定でイソシアネート基由来の2360cm
−1付近の吸収ピークの消失を確認した後、上記混合液から溶媒を留去する。こうして、ラジカル重合性PFPEである化合物P4が得られる(収量(例)25.6質量部)。
【0048】
[合成例2 化合物P10の合成]
2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン(NKエステル701(新中村化学工業株式会社製))10質量部、ピリジン5.8質量部、およびトルエン40質量部、を混合し、窒素気流下6℃に保ち、これにブロムアセチルクロリド6.9質量部を、内温を10℃以下に保ちながらゆっくり滴下する。内温を10℃以下に保ちながら1時間反応した後、冷却を停止して徐々に室温に戻し、室温のまま、5時間反応を行う。
1H−NMR(300MHz、DMSO)測定にて、原料のOH基由来のピーク(δ:5.8ppm)が消失したことを確認し、中間体Aを得る(収量(例)12.2質量部)。
【0049】
窒素気流下、55%含有NaH1.5質量部、テトラヒドロフラン(THF)30質量部を混合し、0℃まで冷却し10分間撹拌する。これに、下記式で表される両末端に水酸基を有するPFPE「Fomblin D2」(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製)20質量部を加える。得られた混合液を室温に戻し、45分間撹拌する。先に合成した中間体A11質量部、重合禁止剤p−メトキシフェノール0.01質量部を上記混合液に加え、室温にて12時間反応させ、ラジカル重合性PFPEである化合物P10を得る(収量(例)18質量部)。
【0051】
[合成例3 化合物P18の合成]
2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパンをペンタエリスリトールトリアクリレート(SR444(サートマー社製))に代える以外は、合成例2と同様に合成を行う(下記式参照)。こうして、ラジカル重合性PFPEである化合物P18が得られる(収量(例)22質量部)。
【0054】
上記ラジカル重合性組成物における上記ラジカル重合性PFPEの含有量は、少なすぎると像担持体のクリーニング性が不十分となり、多すぎると像担持体の耐摩耗性および耐傷性が不十分となることがある。上記のクリーニング性を十分に発現させる観点から、上記ラジカル重合性組成物における上記ラジカル重合性PFPEの含有量は、上記ラジカル重合性モノマー100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましい。また、上記耐摩耗性および耐傷性を十分に発現させる観点から、100質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましい。
【0055】
上記ラジカル重合性組成物は、本実施の形態の効果が得られる範囲において、上記ラジカル重合性組成物以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。当該他の成分の例には、ラジカル重合性官能基を有する金属酸化物微粒子、溶剤および重合開始剤が含まれる。
【0056】
上記ラジカル重合性官能基を有する金属酸化物微粒子(以下、「ラジカル重合性金属酸化物微粒子」とも言う)は、ラジカル重合性官能基を含む成分を表面に担持した金属酸化物微粒子である。金属酸化物微粒子の表面へのラジカル重合性官能基を含む成分の担持は、物理的な担持であってもよいし、化学的な結合によってもよい。当該ラジカル重合性官能基は、一種でもそれ以上でもよく、同じであっても異なっていてもよい。
【0057】
上記ラジカル重合性金属酸化物微粒子は、例えば、金属酸化物微粒子と、その表面に化学結合している表面処理剤残基と、当該表面処理剤残基に含まれる上記ラジカル重合性官能基とを有し、上記保護層中では、金属酸化物微粒子が、その表面に有する上記表面処理剤残基を介して、保護層を構成している一体的な重合体と化学結合した状態で存在する。なお、表面処理剤残基とは、例えば、金属酸化物微粒子の表面に化学結合している分子構造であって上記表面処理剤由来の部分である。
【0058】
上記金属酸化物微粒子における金属は、遷移金属も含む。金属酸化物微粒子も、一種でもそれ以上でもよく、同じであっても異なっていてもよい。上記金属酸化物微粒子における金属酸化物の例には、シリカ(酸化ケイ素)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化スズ、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化錫、二酸化チタン、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウムおよび銅アルミ酸化物が含まれる。中でも、アルミナ(Al
2O
3)、酸化スズ(SnO
2)、二酸化チタン(TiO
2)、銅アルミ複合酸化物(CuAlO
2)のであることが好ましい。
【0059】
上記金属酸化物微粒子の数平均一次粒径は、1〜300nmの範囲が好ましい。特に好ましくは3〜100nmである。金属酸化物微粒子の個数平均一次粒径は、カタログ値でもよく、あるいは以下のようにして求めることができる。すなわち、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製)により撮影された10000倍の拡大写真をスキャナーに取り込み、得られた写真画像から、凝集粒子を除く300個の粒子像を、ランダムに自動画像処理解析システム「ルーゼックス AP」(株式会社ニレコ製、「LUZEX」は同社の登録商標、ソフトウエアVer.1.32)を使用して2値化処理して当該粒子像のそれぞれの水平方向フェレ径を算出し、その平均値を算出して個数平均一次粒径とする。ここで、水平方向フェレ径とは、上記粒子像を2値化処理したときの外接長方形の、x軸に平行な辺の長さをいう。
【0060】
上記ラジカル重合性官能基を含む成分の金属酸化物微粒子の表面への担持は、金属酸化物微粒子の公知の表面処理技術によって行うことが可能である。たとえば、当該担持は、特開2012−078620号公報に記載されているような金属酸化物微粒子の表面処理剤による公知の表面処理方法によって行うことができる。
【0061】
上記表面処理剤は、ラジカル重合性官能基および表面処理基を有する。上記表面処理剤は、一種でもそれ以上でもよい。当該表面処理基は、金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基などの極性基への反応性を有する官能基である。上記ラジカル重合性官能基は、ラジカル重合性モノマーまたはラジカル重合性PFPEのそれと同じく、例えば炭素−炭素2重結合を有しラジカル重合可能な基であり、その例には、ビニル基、アクリロイル(オキシ)基およびメタクリロイル(オキシ)基が含まれる。
【0062】
上記表面処理剤は、上記ラジカル重合性官能基を有するシランカップリング剤が好ましく、その例には、以下の化合物S−1〜S−31が含まれる。
【0063】
S−1:CH
2=CHSi(CH
3)(OCH
3)
2
S−2:CH
2=CHSi(OCH
3)
3
S−3:CH
2=CHSiCl
3
S−4:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(CH
3)(OCH
3)
2
S−5:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(OCH
3)
3
S−6:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(OC
2H
5)(OCH
3)
2
S−7:CH
2=CHCOO(CH
2)
3Si(OCH
3)
3
S−8:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(CH
3)Cl
2
S−9:CH
2=CHCOO(CH
2)
2SiCl
3
S−10:CH
2=CHCOO(CH
2)
3Si(CH
3)Cl
2
S−11:CH
2=CHCOO(CH
2)
3SiCl
3
S−12:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
2Si(CH
3)(OCH
3)
2
S−13:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
2Si(OCH
3)
3
S−14:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3Si(CH
3)(OCH
3)
2
S−15:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3Si(OCH
3)
3
S−16:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
2Si(CH
3)Cl
2
S−17:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
2SiCl
3
S−18:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3Si(CH
3)Cl
2
S−19:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3SiCl
3
S−20:CH
2=CHSi(C
2H
5)(OCH
3)
2
S−21:CH
2=C(CH
3)Si(OCH
3)
3
S−22:CH
2=C(CH
3)Si(OC
2H
5)
3
S−23:CH
2=CHSi(OCH
3)
3
S−24:CH
2=C(CH
3)Si(CH
3)(OCH
3)
2
S−25:CH
2=CHSi(CH
3)Cl
2
S−26:CH
2=CHCOOSi(OCH
3)
3
S−27:CH
2=CHCOOSi(OC
2H
5)
3
S−28:CH
2=C(CH
3)COOSi(OCH
3)
3
S−29:CH
2=C(CH
3)COOSi(OC
2H
5)
3
S−30:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3Si(OC
2H
5)
3
S−31:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(CH
3)
2(OCH
3)
【0064】
上記ラジカル重合性組成物における上記ラジカル重合性金属酸化物微粒子の含有量は、少なすぎると像担持体の耐摩耗性および耐傷性が不十分となることがある。また、上記含有量が多すぎると、保護層中のPFPEの含有量が相対的に低くなり、その結果、像担持体のクリーニング性が不十分となることがある。保護層の機械的強度を十分に発現させ、また適切な電気抵抗を実現する観点から、上記ラジカル重合性組成物における上記ラジカル重合性金属酸化物微粒子の含有量は、上記ラジカル重合性モノマーと上記ラジカル重合性PFPEとの合計100質量部に対して、30質量部以上であることが好ましい。また、クリーニング性を十分に発現させる観点から、上記ラジカル重合性組成物における上記ラジカル重合性金属酸化物微粒子の上記含有量は、100質量部以下であることが好ましい。
【0065】
上記溶剤は、一種でもそれ以上でもよい。当該溶剤の例には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジンおよびジエチルアミンが含まれる。
【0066】
上記重合開始剤は、一種でもそれ以上でもよい。重合開始剤は、保護層の製造工程に応じて公知の重合開始剤から適宜に決めることができる。重合開始剤の例には、光重合開始剤、熱重合開始剤、および、光、熱の両方で重合開始可能な重合開始剤、が含まれる。
【0067】
上記重合開始剤の例には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルアゾビスバレロニリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物、および、過酸化ベンゾイル(BPO)、ジ−tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの過酸化物、が含まれる。
【0068】
また、上記重合開始剤の例には、アセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤が含まれ、その例には、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(イルガキュア369:BASFジャパン社製、「イルガキュア」はBASF社の登録商標)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムが含まれる。
【0069】
また、上記重合開始剤の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル系光重合開始剤、および、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼンなどのベンゾフェノン系光重合開始剤、が含まれる。
【0070】
また、上記重合開始剤の例には、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤が含まれる。
【0071】
また、上記重合開始剤の例には、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、および、イミダゾール系化合物、が含まれる。
【0072】
また、光重合開始剤には、光重合促進効果を有する光重合促進剤を併用してもよい。当該光重合促進剤の例には、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチルおよび4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノンが含まれる。
【0073】
上記重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましく、例えば、アルキルフェノン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物が好ましく、さらに好ましくはα−ヒドロキシアセトフェノン構造を有する重合開始剤、あるいはアシルフォスフィンオキサイド構造を有する重合開始剤、である。
【0074】
上記ラジカル重合性組成物中における上記重合開始剤の含有量は、上記ラジカル重合性モノマー100質量部に対して0.1〜40質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜20質量部である。
【0075】
上記像担持体は、保護層用の塗料に上記のラジカル重合性組成物を用いる以外は、公知の像担持体の製造方法によって製造することができる。たとえば、上記像担持体は、導電性支持体上に形成された感光層の表面に、上記ラジカル重合性組成物を含有する保護層用塗料を塗布する工程と、塗布された保護層用塗料に活性線を照射して、あるいは塗布された保護層用塗料を加熱して、保護層用塗料中のラジカル重合性官能基のラジカル重合させる工程と、を含む方法によって製造することが可能である。
【0076】
上記保護層中、上記ラジカル重合性モノマーおよびラジカル重合性PFPE(およびラジカル重合性金属酸化物微粒子)は、保護層を形作る一体的な重合物(重合硬化物)を構成している。当該重合硬化物が上記のラジカル重合性の化合物の重合体であることは、熱分解GC−MS、核磁気共鳴(NMR)、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、元素分析などの公知の機器分析技術による上記重合硬化物の分析によって確認することが可能である。
【0077】
上記ラジカル重合性モノマーおよび上記ラジカル重合性PFPEは、いずれもラジカル重合性官能基を有する。よって、上記ラジカル重合性組成物において、これらの成分は、互いに高い相溶性を有する。よって、上記ラジカル重合性PFPEは、上記ラジカル重合性組成物において均一に分散する。その結果、PFPEは、保護層中においてもその面方向および厚さ方向のいずれにおいても均一に分散して存在する。上記ラジカル重合性組成物が上記ラジカル重合性金属酸化物微粒子をさらに含有する場合には、ラジカル重合性金属酸化物微粒子についても、ラジカル重合性PFPEと同様に、上記の良好な分散性の効果が得られる。
【0078】
上記保護層では、ラジカル重合性モノマーおよびラジカル重合性PFPE(およびラジカル重合性金属酸化物微粒子)のラジカル重合性官能基がそれぞれ互いに反応し、架橋構造を形成する。よって、PFPEの含有量がある程度多くても、十分な耐摩耗性を有する高強度な保護層が得られる。
【0079】
さらに、上記保護層は、高いクリーニング性が長期に亘って維持される。これは、以下のような理由によると考えられる。すなわち、上記保護層では、PFPEが保護層の全体に亘って分散して存在しやすい。このように、保護層では、PFPEが保護層の面方向および厚さ方向の両方向において分散して存在するので、保護層の表面には、保護層が減耗しても、高いクリーニング性を維持するのに十分な量のPFPEが存在する。
【0080】
そして、上記保護層は、上記のような効果を、像担持体への滑剤の塗布を最小限にするかまたは滑剤を使用せずとも(すなわち滑剤の使用の如何に関わらず)奏する。その理由は、以下のように考えられる。
【0081】
すなわち、上記の分子量を有する上記連結基を有する多官能のラジカル重合性PFPEを上記塗料が含有することから、当該塗料およびその塗膜中においてラジカル重合性PFPEが十分に分散する。その結果、保護層がその全体にフッ素化合物(PFPE)を含有し、かつ、上記ラジカル重合性組成物のラジカル重合による部分(硬化部分)を十分量含有し、その結果、上記のクリーニング性に加えて十分に高い膜強度を有する保護層が得られる、と考えられる。
【0082】
さらに、ラジカル重合性PFPEは、ラジカル重合性官能基を4つ以上有する。よって、ラジカル重合性モノマー(およびラジカル重合性金属酸化物微粒子)とPFPEとの結合箇所が増え、したがって、上述したような高い耐摩耗性および高いクリーニング性が持続する上記保護層が得られる。
【0083】
上記像担持体は、電子写真方式の画像形成装置における有機感光体として使用される。たとえば、上記画像形成装置は、上記像担持体と、上記像担持体の表面を帯電させるための帯電装置と、帯電した上記像担持体の表面に光を照射して静電潜像を形成するための露光装置と、静電潜像が形成された上記像担持体にトナーを供給してトナー像を形成するための現像装置と、上記像担持体の表面の上記トナー像を記録媒体に転写するための転写装置と、上記トナー像が上記記録媒体に転写した後の上記像担持体の表面に残留するトナーを除去するためのクリーニング装置と、を有する。
【0084】
また、上記像担持体は、静電潜像が形成された上記像担持体の表面にトナーを供給して上記静電潜像に応じたトナー像を上記像担持体の表面に形成し、上記トナー像を上記像担持体の表面から記録媒体に転写し、上記像担持体の表面に残留する上記トナーをクリーニング装置で除去する画像形成方法に適用される。当該画像形成方法は、例えば、上記の画像形成装置によって行われる。
【0085】
図1は、上記像担持体を有する画像形成装置の構成の一例を模式的に示す図である。
図1に示す画像形成装置100は、画像読取部110、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50および定着装置60を有する。
【0086】
画像形成部40は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナーによる画像を形成する画像形成ユニット41Y、41M、41Cおよび41Kを有する。これらは、収容されるトナー以外はいずれも同じ構成を有するので、以後、色を表す記号を省略することがある。画像形成部40は、さらに、中間転写ユニット42および二次転写ユニット43を有する。これらは、転写装置に相当する。
【0087】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、前述の像担持体413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415を有する。帯電装置414は、例えばコロナ帯電器である。帯電装置414は、帯電ローラーや帯電ブラシ、帯電ブレードなどの接触帯電部材を像担持体413に接触させて帯電させる接触帯電装置であってもよい。露光装置411は、例えば、光源としての半導体レーザーと、形成すべき画像に応じたレーザー光を像担持体413に向けて照射する光偏向装置(ポリゴンモータ)とを含む。
【0088】
現像装置412は、二成分現像方式の現像装置である。現像装置412は、例えば、二成分現像剤を収容する現像容器と、当該現像容器の開口部に回転自在に配置されている現像ローラー(磁性ローラー)と、二成分現像剤が連通可能に現像容器内を仕切る隔壁と、現像容器における開口部側の二成分現像剤を現像ローラーに向けて搬送するための搬送ローラーと、現像容器内の二成分現像剤を撹拌するための撹拌ローラーと、を有する。上記現像容器には、例えば、二成分現像剤が収容されている。
【0089】
像担持体413に滑剤が塗布される場合では、当該滑剤は、例えば転写後の像担持体の表面に当接するように、ドラムクリーニング装置415内またはドラムクリーニング装置415と帯電装置414との間に配置される。あるいは、上記滑剤は、二成分現像剤の外添剤として現像時に像担持体413の表面に供給されてもよい。
【0090】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、中間転写ベルト421を像担持体413に圧接させる一次転写ローラー422、バックアップローラー423Aを含む複数の支持ローラー423、およびベルトクリーニング装置426を有する。中間転写ベルト421は、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つの駆動ローラーが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0091】
二次転写ユニット43は、無端状の二次転写ベルト432、および二次転写ローラー431Aを含む複数の支持ローラー431を有する。二次転写ベルト432は、二次転写ローラー431Aおよび支持ローラー431によってループ状に張架される。
【0092】
定着装置60は、例えば、定着ローラー62と、定着ローラー62の外周面を覆い、用紙S上のトナー画像を構成するトナーを加熱、融解するための無端状の発熱ベルト10と、用紙Sを定着ローラー62および発熱ベルト10に向けて押圧する加圧ローラー63と、を有する。用紙Sは、記録媒体に相当する。
【0093】
画像形成装置100は、さらに、画像読取部110、画像処理部30および用紙搬送部50を有する。画像読取部110は、給紙装置111およびスキャナー112を有する。用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、および搬送経路部53を有する。給紙部51を構成する三つの給紙トレイユニット51a〜51cには、坪量やサイズなどに基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aなどの複数の搬送ローラー対を有する。
【0094】
画像形成装置100による画像の形成を説明する。
スキャナー112は、コンタクトガラス上の原稿Dを光学的に走査して読み取る。原稿Dからの反射光がCCDセンサー112aにより読み取られ、入力画像データとなる。入力画像データは、画像処理部30において所定の画像処理が施され、露光装置411に送られる。
【0095】
像担持体413は一定の周速度で回転する。帯電装置414は、像担持体413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411では、ポリゴンモータのポリゴンミラーが高速で回転し、各色成分の入力画像データに対応するレーザー光が、像担持体413の軸方向に沿って展開し、当該軸方向に沿って像担持体413の外周面に照射される。こうして像担持体413の表面には、静電潜像が形成される。
【0096】
現像装置412では、上記現像容器内の二成分現像剤の撹拌、搬送によってトナー粒子が帯電し、二成分現像剤は上記現像ローラーに搬送され、当該現像ローラーの表面で磁性ブラシを形成する。帯電したトナー粒子は、上記磁性ブラシから像担持体413における静電潜像の部分に静電的に付着する。こうして、像担持体413の表面の静電潜像が可視化され、像担持体413の表面に、静電潜像に応じたトナー画像が形成される。なお、「トナー画像」とは、トナーが画像状に集合した状態を言う。
【0097】
像担持体413の表面のトナー画像は、中間転写ユニット42によって中間転写ベルト421に転写される。転写後に像担持体413の表面に残存する転写残トナーは、像担持体413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレードを有するドラムクリーニング装置415によって除去される。
【0098】
像担持体413の保護層は、前述したように、ラジカル重合性モノマーのラジカル重合による重合物で一体的に構成された保護層全体に、PFPE(およびさらに含有されていえれば金属酸化物微粒子も)が十分量で均一に分散している。よって、上記重合物の十分な硬度による耐摩耗性および耐傷性と、PFPEによる高いクリーニング性とが十分に発現される。
【0099】
よって、像担持体413は、滑剤が塗布されなくても、耐摩耗性、耐傷性およびクリーニング性に優れ、かつこれらの特性を長期に亘って発現する。上記ラジカル重合性金属酸化物微粒子がさらに含まれる場合には、当該金属酸化物微粒子による機械的強度の向上効果がさらに得られる。さらに、画像形成装置100が像担持体413に塗布するための滑剤を有する場合には、滑剤の使用量を従来の画像形成装置に比べてより低減させることが可能となり、最小限の使用量とすることが可能となる。
【0100】
一次転写ローラー422によって中間転写ベルト421が像担持体413に圧接することにより、像担持体413と中間転写ベルト421とによって、一次転写ニップが像担持体ごとに形成される。当該一次転写ニップにおいて、各色のトナー画像が中間転写ベルト421に順次重なって転写される。
【0101】
一方、二次転写ローラー431Aは、中間転写ベルト421および二次転写ベルト432を介して、バックアップローラー423Aに圧接される。それにより、中間転写ベルト421と二次転写ベルト432とによって、二次転写ニップが形成される。当該二次転写ニップを用紙Sが通過する。用紙Sは、用紙搬送部50によって二次転写ニップへ搬送される。用紙Sの傾きの補正および搬送のタイミングの調整は、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により行われる。
【0102】
上記二次転写ニップに用紙Sが搬送されると、二次転写ローラー431Aへ転写バイアスが印加される。この転写バイアスの印加によって、中間転写ベルト421に担持されているトナー画像が用紙Sに転写される。トナー画像が転写された用紙Sは、二次転写ベルト432によって、定着装置60に向けて搬送される。
【0103】
定着装置60は、発熱ベルト10と加圧ローラー63とによって、定着ニップを形成し、搬送されてきた用紙Sを当該定着ニップ部で加熱、加圧する。こうしてトナー画像が用紙Sに定着する。トナー像が定着された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0104】
なお、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残存する転写残トナーは、中間転写ベルト421の表面に摺接されるベルトクリーニングブレードを有するベルトクリーニング装置426によって除去される。
【0105】
像担持体413は、前述したように、耐摩耗性、耐傷性およびクリーニング性に優れ、かつこれらの特性を滑剤の使用の如何に関わらず長期に亘って発現する。よって、画像形成装置100は、所期の画質の画像を長期に亘って安定して形成することができる。
【0106】
以上の説明から明らかなように、本実施の形態に係る像担持体は、導電性支持体と、上記導電性支持体上に配置される感光層と、上記感光層上に配置される保護層とを有する。そして、上記保護層は、上記ラジカル重合性モノマーおよび上記ラジカル重合性PFPEを含有するラジカル重合性組成物の重合硬化物で形成されており、当該ラジカル重合性PFPEは前述の式(1)で表される。よって、上記像担持体は、耐摩耗性、耐傷性およびクリーニング性に優れ、これらの特性を長期に亘って発現することができる。その結果、上記像担持体は、像担持体に塗布するための滑剤の使用の如何に関わらず、保護層が減耗しても十分なクリーニング性を発現することができる。
【0107】
また、上記ラジカル重合性PFPEにおける上記式(1)中のBが(メタ)アクリロイルオキシ基であることは、反応速度が高いことにより架橋密度を高めることができるので、機械的強度および耐摩耗性を向上させる観点からより一層効果的である。
【0108】
また、上記ラジカル重合性組成物が上記ラジカル重合性金属酸化物微粒子をさらに含有することは、上記保護層の機械的強度を高める観点からより一層効果的である。
【実施例】
【0109】
[ラジカル重合性PFPE1〜26(化合物P1〜P26)の合成]
前述した合成法にしたがい、下記式(1)中、Aが下記式(a1)で示される分子構造A1(分子量129.1)であり、Bがアクリロイルオキシ基であり、lが2であるラジカル重合性PFPE1(化合物P1)を合成した。式(a1)中、分子構造A1は、PFPEおよびBを除いた部分であり、A1の分子量は129.1である。また、式(a1)中、「PFPE」は、式(1)中の「−CF
2O(CF
2CF
2O)
m(CF
2O)
nCF
2−」を表す。後述の化合物P1〜P5、P10、P11〜P15およびP20については、式(1)中、おおよそm=13、n=7であるPFPEを用い、後述の化合物P6〜P9、P16〜P19およびP21〜P26については、式(1)中、おおよそm=9、n=5であるPFPEを用いた。
【0110】
【化10】
【0111】
また、式(1)中のAが下記式(a2)〜(a6)に示される分子構造A2〜A6のそれぞれであり、Bがアクリロイルオキシ基であり、lが2であるラジカル重合性PFPE2〜6(化合物P2〜P6)のそれぞれを合成した。A2の分子量は128.2であり、A3の分子量は214.2であり、A4の分子量は245.3であり、A5の分子量は302.3であり、A6の分子量は128.2である。
【0112】
【化11】
【0113】
また、式(1)中のAが下記式(a7)〜(a10)に示される分子構造A7〜A10のそれぞれであり、Bがアクリロイルオキシ基であり、lが3であるラジカル重合性PFPE7〜10(化合物P7〜P10)のそれぞれを合成した。A7の分子量は127.1であり、A8の分子量は142.2であり、A9の分子量は121.1であり、A10の分子量は388.4である。
【0114】
【化12】
【0115】
また、Bをメタクリロイルオキシ基に代えた以外は化合物P1〜P10と同じ構造を有するラジカル重合性PFPE11〜20(化合物P11〜P20)のそれぞれを合成した。
【0116】
また、式(1)中のAが下記式(a11)〜(a15)に示される分子構造A11〜A15のそれぞれであり、Bがアクリロイルオキシ基であり、lが2であるラジカル重合性PFPE21〜25(化合物P21〜P25)のそれぞれを合成した。また、式(1)中のAが下記式(a16)に示される分子構造A16であり、Bがアクリロイルオキシ基であり、lが1であるラジカル重合性PFPE26(化合物P26)を合成した。A21の分子量は770.1であり、A22の分子量は624.8であり、A23の分子量は469.6であり、A24の分子量は71.1であり、A25の分子量は69.1であり、A26の分子量は14.0である。
【0117】
【化13】
【0118】
化合物P1〜P26の構造を表1に示す。表中、「B1」はアクリロイルオキシ基を、「B2」はメタクリロイルオキシ基をそれぞれ表す。また、「官能基数」は、ラジカル重合性PFPE一分子中の「B」の数である。
【0119】
【表1】
【0120】
[金属酸化物微粒子1の作製]
金属酸化物微粒子として数平均一次粒径20nmの酸化スズ粒子100質量部、表面処理剤として「3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(S−15)」7質量部、および、メチルエチルケトン1000質量部、を湿式サンドミル(メディア:径0.5mmのアルミナビーズ)に入れ、30℃にて6時間混合した。その後、メチルエチルケトンとアルミナビーズをろ過により金属酸化物微粒子から分離し、当該金属酸化物微粒子を60℃にて乾燥した。こうして、上記ラジカル重合性金属酸化物微粒子である金属酸化物微粒子1を作製した。
【0121】
[金属酸化物微粒子2の作製]
金属酸化物微粒子を数平均一次粒径50nmの銅アルミ酸化物粒子に、そして表面処理剤の使用量を3.5質量部に変更する以外は金属酸化物微粒子1の作製と同様にして、上記ラジカル重合性金属酸化物微粒子である金属酸化物微粒子2を作製した。
【0122】
[実施例1 像担持体1の作製]
(1)導電性支持体の準備
円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、導電性支持体を準備した。
【0123】
(2)中間層の作製
ポリアミド樹脂(X1010、ダイセルデグサ株式会社製) 10質量部
酸化チタン粒子(SMT500SAS、テイカ株式会社製) 11質量部
エタノール 200質量部
上記中間層用材料を混合し、分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で10時間の分散を行い、中間層用の塗布液を調製した。当該塗布液を浸漬塗布法によって上記導電性支持体の表面に塗布し、110℃で20分間乾燥し、膜厚2μmの中間層を導電性支持体上に形成した。
【0124】
(3)電荷発生層の作製
電荷発生物質(Cu−Kα特性X線回折スペクトル測定で8.3°、24.7°、25.1°、26.5°に明確なピークを有するチタニルフタロシアニンおよび(2R,3R)−2,3−ブタンジオールの1:1付加体と、未付加のチタニルフタロシアニンの混晶) 24質量部
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBL−1、積水化学工業株式会社製、「エスレック」は同社の登録商標)」 12質量部
混合液(3−メチル−2−ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(V/V) 400質量部
上記電荷発生層用材料を混合し、循環式超音波ホモジナイザー「RUS−600TCVP(株式会社日本精機製作所製)」を19.5kHz、600Wにて循環流量40L/時間で0.5時間に亘って分散することにより、電荷発生層用の塗布液を調製した。当該塗布液を浸漬塗布法によって上記中間層の表面に塗布し、乾燥させて、膜厚0.3μmの電荷発生層を中間層上に形成した。
【0125】
(4)電荷輸送層の作製
下記構造式(2)で表される電荷輸送物質 60質量部
ポリカーボネート樹脂(Z300、三菱ガス化学株式会社製) 100質量部
酸化防止剤(IRGANOX1010、BASF社製、「IRGANOX」は同社の登録商標)」 4質量部
トルエン/テトラヒドロフラン 800質量部
シリコーンオイル 1質量部
上記電荷輸送層用材料を混合、溶解させることにより電荷輸送層用の塗布液を調製した。当該塗布液を浸漬塗布法によって上記電荷発生層の表面に塗布し、120℃で70分間乾燥することにより、膜厚24μmの電荷輸送層を電荷輸送層上に形成した。なお、上記トルエン/テトラヒドロフランは、9体積部のTHFに対して1体積部のトルエンを混合した混合溶媒である。また、上記シリコーンオイルは、「KF−54」(信越化学工業株式会社製)である。
【0126】
【化14】
【0127】
(5)保護層の作製
ラジカル重合性モノマー(M2) 100質量部
化合物P10 40質量部
金属酸化物微粒子2 100質量部
重合開始剤 10質量部
2−ブタノール 400質量部
上記保護層用材料を溶解、分散し、保護層用の塗布液を調製した。当該塗布液を電荷輸送層の表面に、円形スライドホッパー塗布機を用いて塗布した。なお、重合開始剤は、イルガキュア819(BASFジャパン社製、「イルガキュア」はBASF社の登録商標)である。
【0128】
次いで、塗布された上記塗布液の膜に、メタルハライドランプから紫外線を1分間照射して当該膜を硬化させることにより、膜厚3.0μmの保護層を電荷輸送層上に形成した。こうして、像担持体1を作製した。
【0129】
[実施例2 像担持体2の作製]
ラジカル重合性モノマーを「M2」から「M1」に、ラジカル重合性PFPEを「化合物P10」から「化合物P2」に、そして金属酸化物微粒子を「2」から「1」にそれぞれ変更した以外は像担持体1の作製と同様にして、像担持体2を作製した。
【0130】
[実施例3 像担持体3の作製]
ラジカル重合性モノマーの量を「100質量部」から「120質量部」に、ラジカル重合性PFPEを「化合物P10」から「化合物P3」に、そしてラジカル重合性PFPEの量を「40質量部」から「20質量部」にそれぞれ変更した以外は像担持体1の作製と同様にして、像担持体3を作製した。
【0131】
[実施例4 像担持体4の作製]
ラジカル重合性モノマーを「M2」から「M6」に、ラジカル重合性モノマーの量を「100質量部」から「110質量部」に、ラジカル重合性PFPEを「化合物P10」から「化合物P13」に、ラジカル重合性PFPEの量を「40質量部」から「30質量部」に、そして金属酸化物微粒子の量を「100質量部」から「120質量部」にそれぞれ変更した以外は像担持体1の作製と同様にして、像担持体4を作製した。
【0132】
[実施例5 像担持体5の作製]
ラジカル重合性モノマーを「M2」から「M1」に、ラジカル重合性モノマーの量を「100質量部」から「120質量部」に、ラジカル重合性PFPEを「化合物P10」から「化合物P14」に、そしてラジカル重合性PFPEの量を「40質量部」から「20質量部」にそれぞれ変更した以外は像担持体1の作製と同様にして、像担持体5を作製した。
【0133】
[実施例6 像担持体6の作製]
ラジカル重合性モノマーの量を「120質量部」から「90質量部」に、ラジカル重合性PFPEを「化合物P14」から「化合物P6」に、ラジカル重合性PFPEの量を「20質量部」から「50質量部」に、そして金属酸化物微粒子を「2」から「1」にそれぞれ変更した以外は像担持体5の作製と同様にして、像担持体6を作製した。
【0134】
[実施例7 像担持体7の作製]
ラジカル重合性モノマーの量を「120質量部」から「100質量部」に、ラジカル重合性PFPEを「化合物P14」から「化合物P7」に、ラジカル重合性PFPEの量を「20質量部」から「40質量部」に、金属酸化物微粒子を「2」から「1」に、そして金属酸化物微粒子の量を「100質量部」から「120質量部」にそれぞれ変更した以外は像担持体5の作製と同様にして、像担持体7を作製した。
【0135】
[実施例8 像担持体8の作製]
ラジカル重合性モノマーの量を「120質量部」から「100質量部」に、ラジカル重合性PFPEを「化合物P14」から「化合物P8」に、ラジカル重合性PFPEの量を「20質量部」から「40質量部」に、そして金属酸化物微粒子の量を「100質量部」から「120質量部」にそれぞれ変更した以外は像担持体5の作製と同様にして、像担持体8を作製した。
【0136】
[実施例9 像担持体9の作製]
ラジカル重合性PFPEを「化合物P14」から「化合物P18」に変更した以外は像担持体5の作製と同様にして、像担持体9を作製した。
【0137】
[実施例10 像担持体10の作製]
ラジカル重合性モノマーを「M2」から「M8」に、ラジカル重合性モノマーの量を「100質量部」から「110質量部」に、ラジカル重合性PFPEを「化合物P10」から「化合物P1」に、そしてラジカル重合性PFPEの量を「40質量部」から「30質量部」にそれぞれ変更した以外は像担持体1の作製と同様にして、像担持体10を作製した。
【0138】
[実施例11 像担持体11の作製]
ラジカル重合性PFPEを「化合物P10」から「化合物P15」に変更した以外は像担持体1の作製と同様にして、像担持体11を作製した。
【0139】
[実施例12 像担持体12の作製]
ラジカル重合性モノマーを「M2」から「M1」に、ラジカル重合性PFPEを「化合物P10」から「化合物P4」に、そして金属酸化物微粒子を「2」から「1」にそれぞれ変更した以外は像担持体1の作製と同様にして、像担持体12を作製した。
【0140】
[実施例13 像担持体13の作製]
ラジカル重合性PFPEを「化合物P4」から「化合物P17」に、金属酸化物微粒子を「1」から「2」に、そして金属酸化物微粒子の量を「100質量部」から「120質量部」にそれぞれ変更した以外は像担持体12の作製と同様にして、像担持体13を作製した。
【0141】
[実施例14 像担持体14の作製]
ラジカル重合性モノマーの量を「100質量部」から「110質量部」に、ラジカル重合性PFPEを「化合物P4」から「化合物P11」に、ラジカル重合性PFPEの量を「40質量部」から「30質量部」に、そして金属酸化物微粒子を「1」から「2」にそれぞれ変更した以外は像担持体12の作製と同様にして、像担持体14を作製した。
【0142】
[実施例15 像担持体15の作製]
ラジカル重合性モノマーの量を「100質量部」から「90質量部」に、ラジカル重合性PFPEを「化合物P4」から「化合物P10」に、そしてラジカル重合性PFPEの量を「40質量部」から「50質量部」にそれぞれ変更した以外は像担持体12の作製と同様にして、像担持体15を作製した。
【0143】
[実施例16 像担持体16の作製]
ラジカル重合性PFPEを「化合物P4」から「化合物P20」に、金属酸化物微粒子を「1」から「2」に、そして金属酸化物微粒子の量を「100質量部」から「120質量部」にそれぞれ変更した以外は像担持体12の作製と同様にして、像担持体16を作製した。
【0144】
[実施例17 像担持体17の作製]
ラジカル重合性PFPEを「化合物P4」から「化合物P9」に変更した以外は像担持体12の作製と同様にして、像担持体17を作製した。
【0145】
[比較例1 像担持体18の作製]
ラジカル重合性PFPEを「化合物P10」から「化合物P21」に、そして金属酸化物微粒子を「2」から「1」にそれぞれ変更した以外は像担持体1の作製と同様にして、像担持体18を作製した。
【0146】
[比較例2 像担持体19の作製]
ラジカル重合性PFPEを「化合物P10」から「化合物P22」に変更した以外は像担持体1の作製と同様にして、像担持体19を作製した。
【0147】
[比較例3 像担持体20の作製]
ラジカル重合性モノマーを「M2」から「M1」に、ラジカル重合性モノマーの量を「100質量部」から「120質量部」に、ラジカル重合性PFPEを「化合物P10」から「化合物P23」に、ラジカル重合性PFPEの量を「40質量部」から「20質量部」に、そして金属酸化物微粒子の量を「100質量部」から「120質量部」に変更した以外は像担持体1の作製と同様にして、像担持体20を作製した。
【0148】
[比較例4 像担持体21の作製]
ラジカル重合性PFPEを「化合物P10」から「化合物P25」に、そして金属酸化物微粒子を「2」から「1」にそれぞれ変更した以外は像担持体1の作製と同様にして、像担持体21を作製した。
【0149】
[比較例5 像担持体22の作製]
ラジカル重合性モノマーの量を「100質量部」から「110質量部」に、ラジカル重合性PFPEを「化合物P10」から「化合物P26」に、そしてラジカル重合性PFPEの量を「40質量部」から「30質量部」にそれぞれ変更した以外は像担持体1の作製と同様にして、像担持体22を作製した。
【0150】
像担持体1〜22の材料を表2に示す。
【0151】
【表2】
【0152】
[評価]
像担持体1〜22のそれぞれを、フルカラー複写機(商品名:「bizhub PRO C6501」、コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社製、「bizhub」は同社の登録商標)に搭載し、30℃、85%RHの高温高湿環境(HH環境)で、像担持体に滑剤を塗布することなく、画像比率6%の文字画像をA4横送りの向きで50万枚連続してプリントする耐久試験を実施した。
【0153】
(1)耐摩耗性
上記耐久試験前後における像担持体の均一膜厚部分(像担持体の両端は膜厚が不均一になりやすいので、少なくとも両端3cmを除く)を、渦電流方式の膜厚測定器(商品名:「EDDY560C」、HELMUT FISCHER GMBTE CO社製)を用いてランダムに10か所測定し、その平均値を求め、像担持体上の層の厚さとした。そして、上記耐久試験前後の上記層の厚さの差を減耗量とした。減耗量が小さいほど耐摩耗性が高く、減耗量が2.0μm以下であれば実用上問題ない。
【0154】
(2)耐傷性
上記耐久試験後、A3紙全面にハーフトーン画像の画出しを行い、下記の基準により像担持体の耐傷性を評価した。
◎:像担持体表面に目視でみられる目立った傷の発生はなく、ハーフトーン画像にも像担持体傷に対応する画像不良の発生は見当たらない(良好)。
○:像担持体表面に目視で軽微な傷の発生があるが、ハーフトーン画像には像担持体傷に対応する画像不良の発生は見当たらない(実用上問題なし)。
×:像担持体表面に目視で明確に傷の発生があり、ハーフトーン画像にも該傷に対応する画像不良の発生が認められる(実用上問題あり)。
【0155】
(3)クリーニング性
上記耐久試験中および耐久試験後に、像担持体の表面を目視で観察し、下記の基準により像担持体のクリーニング性を評価した。
◎:50万枚までトナーのすり抜けがなく、全く問題ないレベル。
○:50万枚までの時点で像担持体上にトナーのすり抜けが一部見られるが、出力画像は良好であり、実用上問題ないレベル。
△:50万枚以前にトナーのすり抜けにより、出力画像上にスジ状の軽微な画像不良が発生したが、実用上問題ないレベル。
×:50万枚以前にトナーのすり抜けにより、出力画像上にスジ状の明らかな画像不良の発生が認められる(実用上問題あり)。
【0156】
各像担持体における評価結果を表3に示す。
【0157】
【表3】
【0158】
表1〜3に示されるように、像担持体1〜17は、耐久試験後における減耗量が十分に少なく、かつ十分な耐傷性およびクリーニング性を有する。よって、導電性支持体上に感光層および保護層がこの順で重ねられてなる電子写真像担持体であって、上記保護層が、ラジカル重合性モノマーおよび四官能以上の特定のラジカル重合性PFPEを含有するラジカル重合性組成物の重合硬化物、で形成されている像担持体は、滑剤を使用せずとも、また保護層が減耗しても十分なクリーニング性を有することがわかる。
【0159】
これに対して、像担持体18〜20は、いずれも、耐摩耗性および耐傷性が不十分であった。特に、像担持体18、19は、さらにクリーニング性も不十分であった。これは、PFPEとラジカル重合性官能基とを接続する有機基の分子量が大きすぎ、保護層におけるPFPEの部分およびラジカル重合した部分の濃度が相対的に少なくなったため、と考えられる。
【0160】
また、像担持体21および22は、いずれも、保護層用塗料の塗布時に塗膜に弾きが生じ、保護層を形成することができなかった。これは、PFPEとラジカル重合性官能基とを接続する有機基の分子量が小さすぎ、上記塗布時にPFPEの撥液性が強く作用してしまったため、と考えられる。