(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記クラッチ劣化判定手段により、前記クラッチ装置が劣化していると判定された場合に、前記クラッチ装置が劣化していることを示す警告を出力する警告処理手段を更に有する
請求項1から請求項5の何れか一項に記載のクラッチ劣化検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係るクラッチ劣化検出装置の一例としての変速制御装置を備えるデュアルクラッチ式変速機を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るデュアルクラッチ装置を備えるデュアルクラッチ式変速機を示す模式的な構成図である。
【0019】
デュアルクラッチ式変速機1は、動力源の一例であるエンジン10の出力軸11に接続されている。
【0020】
デュアルクラッチ式変速機1は、第1及び第2クラッチ21,22を有するデュアルクラッチ装置20と、変速機構30と、クラッチ劣化検出装置の一例としての変速制御装置80と、変速シフタ85と、作動油調整部86と、エンジン回転数センサ91と、第1入力軸回転数センサ92と、第2入力軸回転数センサ93と、シフトポジションセンサ94とを備えている。
【0021】
第1クラッチ21は、例えば、湿式多板クラッチであって、エンジン10の出力軸(第1クラッチ21、第2クラッチ22の入力軸に相当)11と一体回転するクラッチハブ23と、変速機構30の第1入力軸(第1クラッチ21の出力軸に相当)31と一体回転する第1クラッチドラム24と、複数枚の第1クラッチプレート25と、第1クラッチプレート25を圧接する第1ピストン26と、油圧室の一例としての第1油圧室26Aとを備えている。
【0022】
第1クラッチ21は、第1油圧室26Aに供給される作動油圧によって第1ピストン26が出力側(
図1の右方向)にストローク移動すると、第1クラッチプレート25が圧接されて、トルクを伝達する接続状態となる。一方、第1油圧室26Aの作動油圧が解放されると、第1ピストン26が図示しないスプリングの付勢力によって入力側(
図1の左方向)にストローク移動されて、第1クラッチ21は動力伝達を遮断する切断状態(断状態)となる。なお、本実施形態の第1クラッチ21は、湿式クラッチであるので、クラッチが接していない状態(第1クラッチプレート同士が接していない状態)であっても、入力側の第1クラッチプレート25が回転すると、周囲の作動油を介して出力側の第1クラッチプレート25に回転させるように作用するトルクが伝達される。
【0023】
第2クラッチ22は、例えば、湿式多板クラッチであって、クラッチハブ23と、変速機構30の第2入力軸(第2クラッチ22の出力軸に相当)32と一体回転する第2クラッチドラム27と、複数枚の第2クラッチプレート28と、第2クラッチプレート28を圧接する第2ピストン29と、油圧室の一例としての第2油圧室29Aとを備えている。
【0024】
第2クラッチ22は、第2油圧室29Aに供給される作動油圧によって第2ピストン29が出力側(
図1の右方向)にストローク移動すると、第2クラッチプレート28が圧接されて、トルクを伝達する接続状態となる。一方、作動油圧が解放されると、第2ピストン29が図示しないスプリングの付勢力によって入力側(
図1の左方向)にストローク移動されて、第2クラッチ22はトルク伝達を遮断する切断状態となる。なお、本実施形態の第2クラッチ22は、湿式クラッチであるので、クラッチが接していない状態であっても、入力側の第2クラッチプレート26が回転すると、周囲の作動油を介して出力側の第2クラッチプレート26に回転させるように作用するトルクが伝達される。
【0025】
変速機構30は、入力側に配置された副変速部40と、出力側に配置された主変速部50とを備えて構成されている。また、変速機構30は、副変速部40に設けられた第1入力軸31及び第2入力軸32と、主変速部50に設けられた出力軸33と、これらの軸31〜33と平行に配置された副軸34とを備えている。第1入力軸31は、第2入力軸32を軸方向に貫通する中空軸内に相対回転自在に挿入されている。出力軸33の出力端には、何れも図示しない車両駆動輪に差動装置等を介して連結されたプロペラシャフトが接続されている。
【0026】
副変速部40には、第1スプリッタギヤ対41と、第2スプリッタギヤ対42とが設けられている。第1スプリッタギヤ対41は、第1入力軸31に固定された第1入力主ギヤ43と、副軸34に固定されて第1入力主ギヤ43と常時歯噛する第1入力副ギヤ44とを備えている。第2スプリッタギヤ対42は、第2入力軸32に固定された第2入力主ギヤ45と、副軸34に固定されて第2入力主ギヤ45と常時歯噛する第2入力副ギヤ46とを備えている。
【0027】
主変速部50には、複数の出力ギヤ対51と、複数のシンクロ機構55とが設けられている。出力ギヤ対51は、副軸34に固定された出力副ギヤ52と、出力軸33に相対回転自在に設けられると共に出力副ギヤ52と常時歯噛する出力主ギヤ53とを備えている。シンクロ機構55は、公知の構造であって、何れも図示しないドグクラッチ等を備えて構成されている。シンクロ機構55の作動は、変速制御装置80によって制御されており、シフトポジションセンサ94で検出される現在のシフトポジション、図示しないアクセル開度センサにより検出されるアクセル開度、車速センサにより検出される速度等に応じて、出力軸33と出力主ギヤ53とを選択的に係合状態(ギヤイン)又は非係合状態(ニュートラル状態)に切り替えるようになっている。なお、出力ギヤ対51やシンクロ機構55の個数、配列パターン等は図示例に限定されものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0028】
変速シフタ85は、変速制御装置80の指示に従って、シンクロ機構55のスリーブを移動させて、出力軸33と出力主ギヤ53とを選択的に係合状態(ギヤイン)又は非係合状態(ニュートラル状態)に切り替える。
【0029】
作動油調整部86は、例えば、リニアソレノイドバルブを有し、変速制御装置80から供給される制御信号(制御用電流)に従って、図示しない油圧供給源から第1油圧室26Aに供給する作動油の量及び圧力及び第2油圧室29Aに供給する作動油の量及び圧力を調整する。
【0030】
エンジン回転数センサ91は、エンジン10の回転数(エンジン回転数)を検出し、変速制御装置80に出力する。エンジン10の回転数は、デュアルクラッチ装置20の入力軸の回転数に相当する。第1入力軸回転数センサ92は、第1入力軸31の回転数を検出し、変速制御装置80に出力する。第1入力軸31の回転数は、第1クラッチ21の出力軸の回転数に相当する。第2入力軸回転数センサ93は、第2入力軸32の回転数を検出し、変速制御装置80に出力する。第2入力軸32の回転数は、第2クラッチ22の出力軸の回転数に相当する。シフトポジションセンサ94は、操作レバーにより指定(選択)された位置(シフトポジション)を検出し、変速制御装置80に出力する。操作レバーでは、例えば、車両の停車中に使用するP(パーキング)レンジ、変速機構30をニュートラルにする際に選択するN(ニュートラル)レンジ、自動変速を行う際に選択するD(ドライブ)レンジ、変速を運転者の操作で行う際に選択するM(マニュアル)レンジ、Mレンジでのシフトアップを指定するためのプラス(+)、Mレンジでのシフトダウンを指定するためのマイナス(−)等を選択することができる。
【0031】
変速制御装置80は、エンジン10、デュアルクラッチ装置20、変速機構30等の各種制御を行うもので、公知のCPU、ROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備えて構成されている。これら各種制御を行うために、制御装置80には、各種センサ類(91〜94)のセンサ値が入力される。
【0032】
また、変速制御装置80は、作動油供給制御手段の一例としての供給制御部81と、計時手段及び経過時間判定手段の一例としての計時処理部82と、クラッチ劣化判定手段及び警告処理手段の一例としての劣化判定部83と、変速制御部84とを一部の機能要素として有する。これらの機能要素は、本実施形態では一体のハードウェアである変速制御装置80に含まれるものとして説明するが、これらの何れか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
【0033】
供給制御部81は、劣化判定処理を実行する場合には、判定対象のクラッチ(21,22)の油圧室(26A,29A)の油圧が、劣化判定処理を行うための所定の油圧となるように作動油調整部86を制御するための制御信号を出力する。本実施形態では、劣化判定処理を行うための所定の油圧としては、判定対象のクラッチが接する直前の油圧(待機油圧)としている。このように待機油圧とすると、クラッチが接してしまう状態を低減できるので、クラッチが接してクラッチの出力軸の回転数が急激に上昇してしまうことを適切に防止することができ、クラッチの出力軸の回転数を用いての判定における精度を高く維持することができる。
【0034】
計時処理部82は、作動油調整部86が油圧室(26A,29A)への作動油の供給を開始させた時点から計時を開始する。また、計時処理部82は、入力軸回転数センサ(92,93)からのセンサ値に基づいて、処理対象のクラッチの出力軸の回転数が所定の回転数を超えたか否かを判定する。ここで、所定の回転数としては、例えば、エンジン10のアイドリング回転数よりも低い回転数としてもよい。アイドリング回転数よりも低い回転数とすることにより、劣化判定処理に要する時間を短縮することができる。また、計時処理部82は、クラッチの出力軸の回転数が所定の回転数を超えていると判定した場合には、作動油調整部86が油圧室への作動油の供給を開始させた時点からの経過時間の計時を終了する。
【0035】
劣化判定部83は、計時処理部82により計時された油圧室への作動油の供給を開始してからクラッチの出力軸の回転数が所定の回転数を超えるまでの経過時間が所定の許容時間を超えているか否かを判定する。また、劣化判定部83は、経過時間が許容時間を超えていると判定した場合には、クラッチが劣化していると判定し、経過時間が許容時間を超えていないと判定した場合には、クラッチが劣化していないと判定する。ここで、許容時間としては、クラッチが劣化していない場合に、クラッチの出力軸の回転数が所定の回転数となるまでの経過時間として許容される時間であり、この許容時間は、例えば、同一または同様な構成のデュアルクラッチ装置20を用いて実験等することにより、把握することができる。
【0036】
劣化判定部83は、クラッチが劣化していると判定した場合に、クラッチが劣化していることを変速制御装置80の図示しないメモリに記憶するとともに、そのことを、例えば、運転席に設けられたメータ類を表示する図示しないメータ部に出力する。これにより、運転者は、クラッチが劣化していることを適切に把握することができる。
【0037】
変速制御部84は、シフトポジションセンサ94で検出される現在のシフトポジション、アクセル開度センサにより検出されるアクセル開度、車速センサにより検出される速度等に応じて、適切な変速段を特定し、変速シフタ85を制御して、変速機構30を適切な変速段とする。
【0038】
また、変速制御部84は、シフトポジションをニュートラルレンジにした場合には、変速機構30を、ニュートラル状態、すなわち、入力軸(31,32)と出力軸33との間で駆動力が伝達されない状態になる様に変速シフタ85を制御する。
【0039】
次に、デュアルクラッチ装置20のクラッチ(21,22)が劣化しているか否かを判定する劣化判定処理について説明する。
【0040】
図2は、本発明の一実施形態に係る劣化判定処理のフローチャートである。
【0041】
劣化判定処理は、例えば、シフトポジションセンサ94により検出されるシフトポジションがニュートラルレンジである場合に、デュアルクラッチ装置20の1つのクラッチ(第1クラッチ21又は第2クラッチ22)を対象として実行される。なお、デュアルクラッチ装置20の2つのクラッチを対象にする場合には、それぞれのクラッチを処理対象として劣化判定処理を繰り返し実行すればよい。この劣化判定処理は、車両の始動時に毎回実行するようにしてもよく、複数回の始動するごとに1回実行するようにしてもよく、劣化判定処理を実行した後、所定の期間が経過した後における始動時に実行するようにしてもよい。
【0042】
本実施形態では、この劣化判定処理の実行中は、エンジン10の回転数は、一定の回転数(例えば、アイドリング回転数)に維持されるように制御されているものとして以下説明する。
【0043】
供給制御部81は、作動油調整部86に対して、処理対象のクラッチ(第1クラッチ21又は第2クラッチ22)の油圧室(26A又は29A)を待機油圧となる様にするための制御信号を供給し、作動油調整部86による油圧室への作動油の供給を開始させ(ステップS11)、計時処理部82は、作動油調整部86が油圧室への作動油の供給を開始させた時点から計時を開始する(ステップS12)。
【0044】
次いで、計時処理部82は、入力軸回転数センサ(92,93)からのセンサ値に基づいて、処理対象のクラッチの出力軸の回転数が所定の回転数を超えたか否かを判定する(ステップS13)。この結果、クラッチの出力軸の回転数が所定の回転数を超えていないと判定した場合(ステップS13:NO)には、計時処理部82は、再びステップS13の処理を実行する。
【0045】
一方、クラッチの出力軸の回転数が所定の回転数を超えていると判定した場合(ステップS13:YES)には、計時処理部82は、作動油調整部86が油圧室への作動油の供給を開始させた時点からの経過時間の計時を終了する(ステップS14)。
【0046】
次いで、劣化判定部83は、計時処理部82により計時された油圧室への作動油の供給を開始してからクラッチの出力軸の回転数が所定の回転数を超えるまでの経過時間が所定の許容時間を超えているか否かを判定する(ステップS15)。
【0047】
この結果、経過時間が許容時間を超えていると判定された場合(ステップS15:YES)には、劣化判定部83は、クラッチが劣化していると判定し(ステップS16)、クラッチが劣化していることを変速制御装置80の図示しないメモリに記憶するとともに、そのことを示す警告を、例えば、運転席に設けられたメータ類を表示する図示しないメータ部に出力し(ステップS17)、処理を終了する。
【0048】
一方、経過時間が許容時間を超えていないと判定された場合(ステップS15:NO)には、劣化判定部83は、クラッチが劣化していない、すなわちクラッチは正常と判定し(ステップS18)、処理を終了する。
【0049】
次に、クラッチの油圧室の圧力変化と、クラッチの出力軸回転数の変化とを説明する。
【0050】
図3(A)は、本発明の一実施形態に係る油圧室の圧力の変化の一例を示すタイミングチャートである。
図3(B)は、本発明の一実施形態に係るクラッチ出力軸の回転数の変化の一例を示すタイミングチャートである。
【0051】
まず、油圧室の圧力の変化について説明する。
図3(A)に示す時点T0において、作動油調整部86が供給制御装置81から、クラッチ(第1クラッチ21又は第2クラッチ22)の油圧室(26A又は29A)を待機油圧とするための制御信号を受信すると、作動油調整部86は、油圧室への作動油の供給を開始させる。
【0052】
作動油調整部86により油圧室への作動油の供給が開始されると、油圧室内へ作動油が溜まっていき、それに伴って作動油室内の作動油圧が上昇する。その後、時点T1において、作動油圧がクラッチのピストン(26又は29)を移動させることのできる圧力に到達すると、ピストンが出力側に移動を開始し、ピストンの移動に伴って油圧室が広がるので油圧が一時的に低下する。時点T2になると、ピストンは移動を継続しているが、油圧が徐々に増加するようになる。その後、時点T3になると、油圧が待機油圧に到達し、その後、作動油調整部86により作動油室内の油圧が待機油圧で維持されるように制御される。
【0053】
ここで、クラッチの劣化と、時点T1、T2、T3の関係について説明する。クラッチにおいて、クラッチプレートの摩耗が大きくなると、クラッチプレートを接する直前まで移動させる場合におけるピストンを駆動させる駆動量が多くなり、作動油室に供給すべき作動油の量が増加する。このため、待機油圧に到達する時点T3となるまでの時間が長期化する。また、油圧室において作動油のリークが発生していたり、ピストン周囲に作動油のリークが発生していたりすると、外部にリークする作動油量を補う作動油量を供給する必要があるので、時点T1,T2,T3となるまでの時間が長期化してしまう。一方、ピストンの移動に対するフリクションの増加が発生していると、ピストンが移動せずに、油圧室内の圧力が上昇するために時点T3になるまでの時間が短縮される場合もあり得る。しかしながら、この場合においては、油圧室内の油圧が待機油圧となっていても、ピストンの移動量が不足しており、クラッチが接となる直前の状態になっていない。
【0054】
次に、クラッチ出力軸(変速機構30の第1入力軸31又は第2入力軸32)の回転数の変化について説明する。時点T0において、油圧室への作動油の供給が開始されると、クラッチ出力軸の回転数は、クラッチプレート間の作動油を介して伝達されるトルクの影響を受けて、
図3(B)に示すように、徐々に増加する。ここで、ピストンが移動することにより、入力側と出力側のクラッチプレートの間が狭くなるほど、入力軸側のクラッチプレートから作動油を介して出力軸側のクラッチプレートに伝達されるトルクが大きくなるので、クラッチプレートが接するように近づく程、出力軸の回転数の増加が急になる。この結果、例えば、待機油圧に到達した時点T3の後の時点T4においては、出力軸の回転数が許容回転数に到達することとなる。
【0055】
ここで、クラッチの劣化と、時点T4の関係について説明する。クラッチにおいて、クラッチプレートの摩耗が大きくなると、クラッチプレートを接する直前まで移動させる場合におけるピストンを駆動させる駆動量が多くなり、必要となる作動油の量が増加する。このため、クラッチプレートの摩耗が大きくなるほど、クラッチプレート間の距離が狭くなるまでの時間が長期化し、出力軸の回転数が許容回転数となる時点T4までの時間が長くなってしまう。また、油圧室において作動油のリークが発生していたり、ピストン周囲に作動油のリークが発生していたりすると、外部にリークする作動油量を補うための作動油量を供給する必要があるので、クラッチプレートを接する直前まで移動させる場合において必要となる作動油の量が増加する。このため、クラッチプレート間の距離を狭くするまでの時間が長期化し、出力軸の回転数が許容回転数となる時点T4までの時間が長くなってしまう。
【0056】
このように、クラッチの劣化の上記各現象については、クラッチの出力軸の回転数が許容回転数となるまでの経過時間についてみると、クラッチが劣化するほど経過時間を長期化するように影響することがわかる。したがって、この経過時間を予め決定した許容時間と比較することにより、クラッチの劣化を適切に判定できることがわかる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る変速制御装置80によると、クラッチ(21、22)の入力軸側の回転数を一定に保った状態で、クラッチの油圧室(26A,29A)が所定の作動油圧力となるように作動油を供給し、クラッチの油圧室への作動油の供給が開始されてから、クラッチの出力軸の回転数が所定の回転数となるまでの経過時間を計測し、経過時間が所定の許容時間を超えるか否かを判定し、経過時間が許容時間を超える場合に、デュアルクラッチ装置20のクラッチが劣化していると判定するようにしたので、油圧室の圧力を検出する比較的高価な圧力センサを備えることなく、容易且つ適切にクラッチの劣化を判定することができる。
【0058】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態では、動力源として、エンジン10を用いて説明したが、本発明はこれに限られず、動力源としては、電動モータや油圧モータであってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、油圧室の油圧を待機油圧にするように制御し、その際のクラッチ21,22の出力側回転数が所定の回転数になるまでの時間を計測し、クラッチ21,22の劣化を判定するようにしていたが、本発明はこれに限られず、例えば、クラッチ21,22が接する状態となる待機油圧以上の油圧にするように制御してもよく、また、待機油圧よりも低い油圧に制御するようにしてもよく、要は、クラッチ21,22の出力側回転数を上昇することのできる油圧であれば任意の油圧に制御するようにしてよい。
【0061】
また、上記実施形態では、シフトポジションがニュートラルレンジの際に劣化判定処理を実行するようにしていたが、本発明はこれに限られず、車両が停止していれば、シフトポジションが、例えば、ドライブレンジのように別のポジションにある場合に実行するようにしてもよい。ただし、劣化判定処理を実行する際には、デュアルクラッチ式変速機1の変速機構30をニュートラル、すなわち、変速機構30の入力軸31,32と出力軸33との間を駆動力が伝達されない状態とする必要がある。
【0062】
また、上記実施形態では、湿式クラッチの劣化を判定するようにしていたが、本発明はこれに限られず、乾式クラッチの劣化を判定するようにしてもよい。なお、クラッチが乾式クラッチである場合においては、クラッチが接していないと、出力側のクラッチプレートが回転しないので、油圧室の油圧をクラッチが接する圧力以上に制御する必要がある。
【0063】
また、上記実施形態では、変速機として、副変速部40を有するデュアルクラッチ式変速機1を例に挙げていたが、本発明はこれに限られず、1つのクラッチのみのクラッチ装置を備える変速機であってもよい。