(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
機械構造用炭素鋼鋼材及び機械構造用合金鋼鋼材は、自動車部品、産業機械部品及び建設機械部品等に代表される機械構造部品の素材となる。これらの鋼材を用いた機械構造部品の従来の製造方法は次のとおりである。これらの鋼材に対して熱間鍛造を実施して粗形状を有する鍛造品を製造する。鍛造品に対して切削加工を実施して、最終製品である機械構造部品を製造する。
【0003】
最近、生産性を向上するため、上記製造工程の熱間鍛造から冷間鍛造への切替えが図られている。冷間鍛造を採用することにより、鍛造品の形状をニアネットシェイプ(最終形状とほぼ同じ形状)とすることができ、これにより、切削加工量を削減できる。その結果、生産性が向上する。
【0004】
しかしながら、冷間鍛造は、熱間鍛造と比較して、加工荷重が大きくなりやすい。そのため、金型寿命が短くなったり、機械構造用部品に割れが発生しやすくなる。したがって、素材となる鋼材の冷間鍛造性を高めること、すなわち、冷間鍛造時に、小さな荷重で所望の形状に加工できるようにすること、及び、割れの発生を抑制することが要求されている。
【0005】
一方、上記機械構造部品には、高い疲労強度が求められる。高い疲労強度を得るためには、冷間鍛造後の鋼材を硬くすることが有効である。しかしながら、冷間鍛造用の鋼材自体が硬ければ、冷間鍛造性が低下する。したがって、素材である鋼材の冷間鍛造性を高めつつ、冷間鍛造品の疲労強度も高めることを求められている。
【0006】
このような問題を解決するために、焼入れ焼戻し、又は高周波焼入れといった表面硬化を目的とした熱処理を冷間鍛造後に実施して、冷間鍛造後の鋼材の疲労強度を高め、その後に切削加工を実施する製造方法もある。しかし、このような製造方法では、熱処理後の鋼材の硬度が高くなるために、被削性が低下する。この場合、冷間鍛造における生産性を向上できたとしても、切削加工の生産性が低下するため、プロセス全体としての生産性を向上しにくい。
【0007】
そこで、冷間鍛造後、切削加工を行うまでは、硬度を高める処理を実施せず、切削加工後に熱処理によって硬度を高める製造方法も提案されている。このような製造方法には、いわゆる時効硬化用鋼が用いられる。
【0008】
冷間鍛造性に優れ、冷間鍛造後は高い疲労強度を有する鋼がたとえば、国際公開第2012/053541号(特許文献1)及び特開2000−273580号公報(特許文献2)に提案されている。
【0009】
特許文献1に開示された冷鍛窒化用鋼は、Vを時効硬化元素として含有する。この鋼は、フェライト・パーライト組織、フェライト・ベイナイト組織、又は、フェライト・パーライト・ベイナイト組織を有し、かつ、フェライトの面積率が70%以上であり、抽出残渣分析による析出物中のV含有率が0.10%以下である。この鋼は、冷間鍛造性と冷間鍛造後の被削性とに優れるとともに、冷間鍛造と窒化処理とが施された後の部品に、高い芯部硬さ、高い表面硬さ、及び深い有効硬化層深さを具備させることができる、と記載されている。
【0010】
特許文献2に開示された冷間圧延用鋼は、質量%で、C:0.06〜0.50%、Si:0.05%以下、Mn:0.5〜1.0%以下、V:0.10〜0.60%を含み、フェライトとパーライトとの合計が面積率で90%以上であり、かつフェライトが、所定の値以上の面積率を有し、フェライト中にVCが析出している。この鋼は、熱間圧延中にVCを析出させ、固溶Cを減少させることで冷間鍛造性を高めたものであり、圧延後、特に処理をせずに、冷間加工に供することができる、と記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、上述の課題を解決するために、種々の検討を行い、次の知見を得た。
【0018】
(A)優れた冷間鍛造性を得るためには、冷間鍛造用鋼材の硬さを低くすることが有効である。鋼材の硬さを低くすれば、鍛造荷重が低下する。さらに、冷間鍛造時の割れを抑えるためには、鋼材のC含有量を低くすることが有効である。
【0019】
(B)時効硬化処理後に高い疲労強度及び高い耐久比を得るためには、次の(B1)〜(B3)の対策を実施することが有効である。
(B1)V炭窒化物、及びNb炭窒化物の析出硬化を利用する。
(B2)ミクロ組織を、フェライトとパーライトとを主体としたものとし、かつ、フェライトの面積率を高める。
(B3)MnSの形態を制御する。
【0020】
[(B1)について]
V及びNbを鋼に含有して、時効硬化処理によりV及びNbの炭窒化物を生成すれば、鋼の疲労強度が高まるだけでなく、鋼の耐久比も高まる。具体的には、上述の化学組成において、式(1)及び式(2)を満たせば、鋼の疲労強度及び耐久比が高まる。
V×Nb≦0.01 (1)
100−133×C+10×V
1/3≧90.0 (2)
ここで、式(1)、及び式(2)において、各元素記号には、対応する元素の鋼中の含有量(質量%)が代入される。
【0021】
[式(1)について]
fn1=V×Nbと定義する。この定義式において、「V」、及び「Nb」は、上記のとおり、それぞれ、鋼中のV含有量(質量%)、及びNbは鋼中のNb含有量(質量%)を意味する。
【0022】
図1は、fn1と耐久比との関係を示す図である。
図1は、次の方法により得られた。C:0.02〜0.12%、Si:0.05%、Mn:0.20〜0.70%、P:0.020%以下、S:0.005〜0.030%、Al:0.005〜0.050%、Cr:0.02〜1.50%、V:0.09〜0.25%、Nb:0.005〜0.050%、Ca:0.0004〜0.0035%、Te:0.0003〜0.0045%、N:0.003〜0.030%を含有し、残部はFe及び不純物からなる複数の鋼材を準備した。
【0023】
各鋼材に対して、時効硬化処理を実施した。処理温度を200℃〜Ac
3点とし、保持時間を30〜60分とした。時効硬化処理された鋼材に対して、後述の実施例と同じ方法で引張試験(JIS Z2241(2011)準拠)、及び小野式回転曲げ疲労試験(JIS Z2274(1978)準拠)を実施し、引張強度(MPa)及び疲労強度(MPa)を求めた。得られた引張強度(MPa)及び疲労強度(MPa)を用いて、次式により耐久比を求めた。
耐久比=疲労強度/引張強度
【0024】
さらに、鋼中のV含有量及び鋼中のNb含有量(質量%)に基づいて、fn1を求めた。得られたfn1及び耐久比に基づいて、
図1を作成した。
【0025】
図1を参照して、fn1が0.01以下であれば、耐久比が0.650以上となる。そして、fn1が0.01以下の場合、fn1が減少しても耐久比は大きくは変化しない。これに対して、fn1が0.01を超えると、耐久比は、大幅に低下する。つまり、
図1の曲線は、fn1=0.01近傍で変曲点を有する。
【0026】
以上より、fn1が式(1)を満たせば、つまり、fn1が0.01以下であれば、耐久比が高くなる。
【0027】
V及びNbのいずれかのみを含有した場合、時効硬化後の耐久比を十分に高くすることはできない。NbとVとを同時に含有すれば、V及びNbのいずれかを含有した場合と比較して、耐久比が顕著に高まる。これは、NbとVとの複合炭窒化物が析出するためと考えられる。
【0028】
[式(2)について]
fn2=100−133×C+10×V
1/3と定義する。
図2は、fn2と耐久比との関係を示す図である。
図2は、
図1を得るために行った試験の結果に基づいて得た。fn2はフェライト面積率の指標となる。鋼中のCに対して十分な量のVが存在すれば、鋼中のフェライト面積率が増加する。フェライト面積率が減少すると、引張強度は向上するが、疲労強度は向上しない。fn2が90.0以上であれば、時効硬化処理後の鋼材の疲労強度が十分に高まり、耐久比は0.650以上となる。
【0029】
[(B2)について]
ミクロ組織のフェライトの面積率を85%以上とし、ベイナイト及びマルテンサイトの面積率を5%以下とする。残部はパーライトである。Nb及びV炭窒化物は、フェライト中に固溶したNb及びVを用いて生成する。時効硬化処理によりNb及びV炭窒化物が生成して、フェライトが顕著に高くなる。フェライトの面積率が85%以上であれば、時効硬化処理後の鋼材の疲労強度を顕著に高めることができる。さらに、ベイナイト及びマルテンサイトの総面積率を5%以下に抑えることにより、冷間鍛造性を高めることができる。
【0030】
[(B3)について]
MnSは高温での変形抵抗が低いため、熱間加工(熱間圧延等)時に延伸しやすい。MnSの形状は、時効硬化処理前後でほぼ変化しない。延伸されたMnSは鋼の疲労強度を低下するため、鋼の耐久比も低下する。
【0031】
耐久比を高めるためには、高温でのMnSの変形抵抗を高め、熱間加工時にMnSがなるべく延伸されずに球状を維持する方が好ましい。MnSはCaを固溶することにより、高温での変形抵抗を高め、球状を維持しやすくなる。さらに、TeはCaのMnSへの固溶を促進する。したがって、Ca及びTeはMnSを球状に維持し、鋼の耐久比を高める。
【0032】
しかしながら、Caに対してTeが過剰に含有されれば、CaのMnSへの固溶に利用されないTeがマトリクス(母材)に固溶したり、FeTeを形成したりする。この場合、鋼の疲労強度が低下し、耐久比が低下してしまう。
【0033】
fn3=Ca/Teと定義する。fn3はMnSの形態制御の指標である。fn3が0.80以上であれば、MnSのアスペクト比を5以下に抑えることができ、その結果、疲労強度が高まり、耐久比も高めることができる。
【0034】
以上の知見に基づいて完成した本発明による冷間鍛造用鋼は、質量%で、C:0.02〜0.13%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.20〜0.70%、P:0.020%以下、S:0.005〜0.030%、Al:0.005〜0.050%、Cr:0.02〜1.50%、V:0.02〜0.50%、Nb:0.005〜0.050%、Ca:0.0004〜0.0035%、Te:0.0003〜0.0045%、N:0.003〜0.030%、Cu:0〜0.20%、Ni:0〜0.20%、及び、Mo:0〜0.20%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)〜式(3)を満たす化学組成を有する。ミクロ組織は、面積率で85%以上のフェライトと、総面積率で5%以下のベイナイト及びマルテンサイトとを含有し、残部がパーライトからなる。
V×Nb≦0.01 (1)
100−133×C+10×V
1/3≧90.0 (2)
Ca/Te≧0.80 (3)
ここで、式(1)式、(2)及び式(3)において、各元素記号には、対応する元素の鋼中の含有量(質量%)が代入される。
【0035】
上記化学組成は、Cu:0.02〜0.20%、Ni:0.02〜0.20%、及び、Mo:0.02〜0.20%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
【0036】
以下、本発明の冷間鍛造用鋼について詳しく説明する。以下の説明で、各元素の含有率についての「%」は、「質量%」を意味する。
【0037】
[化学組成]
本発明による冷間鍛造用鋼は、次の元素を含有する化学組成を有する。
【0038】
C:0.02〜0.13%
炭素(C)は、鋼材の強度を高める。C含有量が0.02%未満であれば、時効硬化処理後に400MPa以上の引張強度及び250MPa以上の疲労強度が得られない。一方C含有量が0.13%を超えれば、冷間鍛造性が低下して、冷間鍛造時に割れが発生する。したがって、C含有量は0.02〜0.13%である。C含有量の好ましい下限は0.03%である。C含有量の好ましい上限は0.10%である。
【0039】
Si:0.01〜0.50%
シリコン(Si)は、鋼を脱酸する。Si含有量が0.01%未満であれば、上記効果が得られない。一方、Si含有量が0.50%を超えれば、フェライトの過剰な固溶強化により冷間鍛造性が低下する。したがって、Si含有量は0.01〜0.50%である。Si含有量の好ましい下限は0.05%である。Si含有量の好ましい上限は0.45%である。
【0040】
Mn:0.20〜0.70%
マンガン(Mn)は、鋼の固溶して鋼の強度を高める。Mn含有量が0.20%未満であれば、上記効果が得られない。一方、Mn含有量が0.70%を超えれば、鋼の強度が高くなりすぎ、冷間鍛造性が低下する。したがって、Mn含有量は0.20〜0.70%である。Mn含有量の好ましい下限は0.25%である。Mn含有量の好ましい上限は0.65%である。
【0041】
P:0.020%以下
リン(P)は、不純物である。Pは鋼中で偏析しやすく、局所的に延性を低下する。したがって、P含有量は0.020%以下である。P含有量の好ましい上限は0.018%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。
【0042】
S:0.005〜0.030%
硫黄(S)は、鋼の被削性を高める。S含有量が0.005%未満であれば、この効果が得られない。一方、S含有量が0.030%を超えれば、鋼中に粗大な硫化物が生成し、冷間鍛造性が低下する。S含有量が高すぎればさらに、時効硬化処理後の鋼材の耐久比が低下する。したがって、S含有量は0.005〜0.030%である。S含有量の好ましい上限は0.018%である。耐久比をさらに高めるためのS含有量の好ましい上限は0.010%未満である。
【0043】
Al:0.005〜0.050%
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。Al含有量が0.005%未満であれば、上記効果が得られない。一方、Al含有量が0.050%を超えれば、鋼中に粗大なAl介在物が生成して、冷間鍛造性を低下する。したがって、Al含有量は0.005〜0.050%である。Al含有量の好ましい下限は0.010%である。Al含有量の好ましい上限は0.045%である。なお、本明細書にいうAl含有量は、いわゆる全Al(Total.Al)の含有量を意味する。
【0044】
Cr:0.02〜1.50%
クロム(Cr)は、鋼中に固溶して、鋼の疲労強度を高める。Cr含有量が0.02%未満であれば、上記効果が得られない。一方、Cr含有量が1.50%を超えれば、鋼が硬くなりすぎて冷間鍛造性が低下する。したがって、Cr含有量は0.02〜1.50%である。Cr含有量の好ましい下限は0.03%である。Cr含有量の好ましい上限は1.30%である。
【0045】
V:0.02〜0.50%
バナジウム(V)は、時効硬化処理において、Nbと結合して複合炭窒化物を形成し、鋼の疲労強度と耐久比とを高める。V含有量が0.02%未満であれば、この効果が得られない。一方、V含有量が0.50%を超えれば、鋼のコストが高くなる。したがって、V含有量は0.02〜0.50%である。V含有量の好ましい下限は0.03%である。V含有量の好ましい上限は0.45%である。
【0046】
Nb:0.005〜0.050%
ニオブ(Nb)は、時効硬化処理において、Vと結合して複合炭窒化物を形成し、鋼の疲労強度と耐久比とを高める。Nb含有量が0.005%未満であれば、この効果が得られない。一方、Nb含有量が0.050%を超えれば、鋼のコストが高くなる。したがって、Nb含有量は0.005〜0.050%である。Nb含有量の好ましい下限は0.010%である。Nb含有量の好ましい上限は0.040%である。
【0047】
Ca:0.0004〜0.0035%
カルシウム(Ca)は、MnSに固溶してMnSを球状化する。これにより、鋼の冷間鍛造性及び疲労強度が高まる。Ca含有量が0.0004%未満であれば、この効果が得られない。一方、Ca含有量が0.0035%を超えれば、粗大なCaOが生成して鋼の疲労強度が低下する。したがって、Ca含有量は0.0004〜0.0035%である。Ca含有量の好ましい下限は0.0007%であり、さらに好ましくは0.0010%である。Ca含有量の好ましい上限は0.0030%であり、さらに好ましくは0.0025%である。
【0048】
Te:0.0003〜0.0045%
テルル(Te)は、Mn硫化物へのCaの固溶を促進してMn硫化物を球状化する。これにより、鋼の冷間鍛造性及び疲労強度が高まる。Te含有量が0.0003%未満であれば、この効果が得られない。一方、Te含有量が0.0045%を超えれば、鋼の熱間延性及び疲労強度が低下する。したがって、Te含有量は0.0003〜0.0045%である。Te含有量の好ましい下限は0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。Te含有量の好ましい上限は0.0030%未満であり、さらに好ましくは0.0025%未満である。
【0049】
N:0.003〜0.030%
窒素(N)は、時効硬化処理においてV及びNbと結合して複合炭窒化物を生成する。これにより、鋼の耐久比が高まる。N含有量が0.003%未満であれば、上記効果が得られない。一方、N含有量が0.030%を超えれば、鋼の冷間鍛造性が低下する。したがって、N含有量は0.003〜0.030%である。N含有量の好ましい下限は0.006%である。N含有量の好ましい上限は0.025%である。
【0050】
本発明による冷間鍛造用鋼の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、冷間鍛造用鋼を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入されるものであって、本発明の冷間鍛造用鋼に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
【0051】
[任意元素について]
本発明の冷間鍛造用鋼の化学組成は、Feの一部に代えて、Cu、Ni及びMoからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも、鋼の疲労強度を高める。
【0052】
Cu:0〜0.20%
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Cuは鋼に固溶して鋼の疲労強度を高める。しかしながら、Cu含有量が0.20%を超えれば、鋼の冷間鍛造性が低下する。したがって、Cu含有量は0〜0.20%である。上記効果をより安定して得るためのCu含有量の好ましい下限は0.02%である。Cu含有量の好ましい上限は0.15%である。
【0053】
Ni:0〜0.20%
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Niは鋼に固溶して鋼の疲労強度を高める。しかしながら、Ni含有量が0.20%を超えれば、鋼の冷間鍛造性が低下する。したがって、Ni含有量は0〜0.20%である。上記効果をより安定して得るためのNi含有量の好ましい下限は0.02%である。Ni含有量の好ましい上限は0.15%である。
【0054】
Mo:0〜0.20%
モリブデン(Mo)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Moは鋼に固溶して鋼の疲労強度を高める。しかしながら、Mo含有量が0.20%を超えれば、鋼の冷間鍛造性が低下する。したがって、Mo含有量は0〜0.20%である。上記効果をより安定して得るためのMo含有量の好ましい下限は0.02%である。Mo含有量の好ましい上限は0.15%である。
【0055】
[式(1)〜式(3)について]
上記化学組成はさらに、式(1)〜式(3)を満たす。
V×Nb≦0.01 (1)
100−133×C+10×V
1/3≧90.0 (2)
Ca/Te≧0.80 (3)
ここで、式(1)〜式(3)において、各元素記号には、対応する元素の鋼中の含有量(質量%)が代入される。
【0056】
[式(1)について]
fn1=V×Nbと定義する。
図1を参照して、fn1が0.01以下であれば、耐久比が0.650以上となる。そして、fn1が0.01以下の場合、fn1が減少しても耐久比は大きくは変化しない。これに対して、fn1が0.01を超えると、耐久比は、大幅に低下する。つまり、
図1の曲線はfn1=0.01近傍で変曲点を有する。
【0057】
したがって、fn1が式(1)を満たせば、つまり、fn1が0.01以下であれば、耐久比が高くなる。fn1の上限は、特に制限されないが、たとえば、0.0098である。fn1の好ましい下限は0.0003である。
【0058】
[式(2)について]
fn2=100−133×C+10×V
1/3と定義する。fn2はフェライト面積率の指標となる。鋼中のCに対して十分な量のVが存在すれば、鋼中のフェライト面積率が増加する。fn2が90.0以上であれば、時効硬化処理後の鋼材の疲労強度が十分に高まる。一方、fn2が90.0未満であると、マトリクス組織中のフェライト面積率が85%未満となる。この場合、引張強度は向上するが、疲労強度は向上しない。したがって、fn2は90.0以上である。fn2の好ましい下限は、たとえば、91.0である。fn2の好ましい上限は、たとえば、101である。
【0059】
[式(3)について]
fn3=Ca/Teと定義する。fn2はMnSの形成制御の指標である。上述のとおり、fn3が0.80以上であれば、MnSの硬さが高まり、球状を維持しやすい。具体的には、MnSのアスペクト比を5.0以下に抑えやすい。その結果、鋼の疲労強度及び耐久比が高まる。しかしながら、fn3が0.80未満であれば、Caに対してTeが過剰に含有されているため、CaのMnSへの固溶に利用されないTeがマトリクス(母材)に固溶したり、FeTeを形成したりする。この場合、鋼の疲労強度が低下し、耐久比が低下してしまう。したがって、fn3は0.80以上である。fn3の好ましい上限は8.0である。
【0060】
[ミクロ組織]
本発明の冷間鍛造用鋼のミクロ組織は、主としてフェライト及びパーライトからなる。具体的には、マトリクス組織は、面積率で85%以上のフェライトと、面積率で5%以下のベイナイト及びマルテンサイトとを含有する。ミクロ組織の残部はパーライト、析出物、介在物、及び、不純物(析出物、介在物、不純物を合わせて「不純物等」という)である。なお、ここでいう面積率85%以上のフェライトとは、初析フェライトを意味する。
【0061】
フェライト面積率が85%未満であれば、時効硬化処理で強化されるフェライト量が少なすぎるため、耐久比が0.650未満となる。また、ベイナイト及びマルテンサイトは硬質相であるため、ベイナイト及びマルテンサイトの総面積率が5%を超えれば、冷間鍛造性が低下する。
【0062】
フェライト面積率が85%以上であり、かつ、ベイナイト及びマルテンサイトの総面積率が5%以下であれば、時効硬化処理によりフェライトが十分に強化され、鋼の耐久比が0.650以上と高くなる。
【0063】
ミクロ組織中のフェライト面積率、ベイナイト及びマルテンサイトの面積率は次の方法で求めることができる。鋼材中心部から試料を採取する。鋼材が棒鋼又は線材の場合、中心軸を含む部分から試料を採取する。採取された試料表面のうち、鋼材の圧延方向に垂直な面を観察面とする。観察面を研磨した後、3%硝酸アルコール(ナイタル腐食液)にてエッチングする。エッチングされた観察面を500倍の光学顕微鏡にて観察して、任意の5視野の写真画像を生成する。
【0064】
各視野において、フェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト等の各相は、相ごとにコントラストが異なる。したがって、コントラストに基づいて、各相を特定する。特定された相のうち、各視野でのフェライトの面積(μm
2)と、ベイナイト及びマルテンサイトの総面積(μm
2)とを求める。全ての視野でのフェライトの面積の総和の、全ての視野の総面積に対する比を、フェライトの面積率(%)と定義する。同様に、全ての視野でのベイナイト及びマルテンサイトの面積の総和の、全ての者の総面積に対する比を、ベイナイト及びマルテンサイトの面積率(%)と定義する。
【0065】
[製造方法]
本発明の冷間鍛造用鋼の製造方法の一例を説明する。本例では、冷間鍛造用鋼材として、棒鋼又は線材(以下、棒線という)を製造する例を説明する。本冷間鍛造用鋼材の製造方法は、熱間加工工程を実施して製造される。熱間加工工程はたとえば、ビレットを製造する工程(分塊圧延工程)と、製造されたビレットを棒線に圧延する工程(仕上圧延工程)とを含む。以下、各工程について詳述する。
【0066】
[分塊圧延工程]
初めに、上述の化学組成を有する素材を準備する。たとえば、素材は次の方法で製造される。上述の化学組成を有する溶鋼を、転炉及び電気炉等を用いて製造する。溶鋼を用いて連続鋳造法により鋳片を製造する。又は、溶鋼を用いて造塊法によりインゴットを製造する。
【0067】
準備された素材(鋳片、インゴット)を加熱後、分塊圧延機を用いて分塊圧延し、必要に応じて、分塊圧延後に連続圧延機でさらに圧延して、ビレットを製造する。連続圧延機では、水平ロールスタンド、垂直ロールスタンドが交互に一列に配列されており、各スタンドの圧延ロールに形成された孔型を用いて素材を圧延して、ビレットにする。なお、連続鋳造法により直接ビレットを製造してもよい。
【0068】
[仕上圧延工程]
ビレットに対してさらに熱間圧延を実施して、冷間鍛造用鋼材を製造する。
【0069】
初めに、ビレットを加熱炉に装入して加熱する。加熱されたビレットを用いて、仕上げ圧延機列で仕上げ圧延(熱間圧延)を実施して所定の径の棒線にする。仕上げ圧延機列は、一列に配列された複数のスタンドを含む。各スタンドは、パスライン周りに配置された複数のロールを含む。各スタンドの圧延ロールに形成された孔型を用いてビレットを圧延して、鋼材(棒線)を製造する。
【0070】
なお、熱間加工工程では、上述の熱間圧延に代えて、熱間鍛造を実施してもよいし、熱間押出しを実施してもよい。
【0071】
[仕上げ温度について]
熱間加工工程において、最後にビレットを加工した直後のビレット表面温度(以下、仕上げ温度という)は900℃以上である。上述の分塊圧延工程−仕上げ圧延工程を実施した場合、仕上圧延機列を利用した仕上げ圧延において、最後にビレットを圧下するスタンド(以下、仕上げスタンドという)の出側でのビレット表面温度(仕上げ温度)が900℃以上である。
【0072】
熱間加工後(上記例では仕上げ圧延後)、マルテンサイト及びベイナイトが生成しにくい冷却速度で冷間鍛造用鋼材を冷却する。たとえば、放冷により鋼材を冷却すれば、マルテンサイト及びベイナイトの生成が抑制される。
【0073】
以上の製造方法により冷間鍛造用鋼を製造する。上述のとおり、冷間鍛造用鋼の製造方法はこの例に限定されず、他の製造方法により本発明の冷間鍛造用鋼を製造してもよい。
【0074】
[冷間鍛造品の製造方法]
上述の冷間鍛造用鋼材を用いた冷間鍛造品の製造方法の一例を説明する。冷間鍛造品の製造方法は、冷間鍛造工程、時効硬化処理工程、及び、切削加工工程を含む。以下、それぞれの工程について説明する。
【0075】
[冷間鍛造工程]
冷間鍛造用鋼を用いて、周知の方法で冷間鍛造を実施して、中間品を製造する。冷間鍛造用鋼材が棒線の場合、冷間鍛造工程前に、伸線加工工程を実施してもよい。伸線加工は、一次伸線のみであってもよいし、二次伸線等、複数回の伸線加工を実施してもよい。
【0076】
[時効硬化処理工程]
中間品に対して、時効硬化処理を実施する。時効硬化処理での処理温度(℃)、処理温度での保持時間(分)は次のとおりである。
処理温度:200℃〜Ac
3点
Ac
3点(℃)は、式(4)で定義される。
Ac
3=−230.5×C+31.6×Si−20.4×Mn−39.8×Cu−18.1×Ni−14.8×Cr+16.8×Mo+912 (4)
ここで、式(4)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
【0077】
処理温度が200℃未満であれば、Nb炭窒化物、V炭窒化物が析出せず、高い耐久比が得られない、一方、処理温度がAc
3点を超えれば、Nb炭窒化物、V炭窒化物が粗大化して、耐久性が低下する。さらに、フェライトがオーステナイトに変態するため、ひずみ(熱処理ひずみ)が生じる。処理温度が200℃〜Ac
3点であれば、高い耐久比が得られる。
【0078】
保持時間:30分以上
上記処理温度での保持時間を30分以上とする。保持時間が30分未満であれば、Nb炭窒化物、V炭窒化物が析出せず、高い耐久比が得られない。一方、保持時間が長くても時効硬化は生じるものの、製造コストが高くなる。したがって、保持時間の好ましい上限は180分である。
【0079】
[切削加工工程]
時効硬化処理工程後の中間品に対して、切削加工を実施して、冷間鍛造品を製造する。製造された冷間鍛造品は、時効硬化処理により高い引張強度、疲労強度、及び、耐久比を有する。本発明による冷間鍛造用鋼を利用することにより、従来の製造工程(熱間鍛造工程−切削加工工程)に代えて、上記の製造工程(冷間鍛造工程−時効硬化処理工程−切削加工工程)を実施できる。そのため、生産性を高めることができる。
【実施例】
【0080】
種々の冷間鍛造用鋼を製造して、冷間鍛造性と、時効硬化処理後の疲労強度及び耐久比とを評価した。
【0081】
[供試材の製造]
表1に示す化学組成を有する試験番号1〜21の溶鋼を真空溶解により製造した。溶鋼を用いて150kgのインゴットを製造した。
【0082】
【表1】
【0083】
各インゴットを、鍛伸成形(熱間鍛造)して、直径42mmの丸棒鍛伸材を製造した。表2に示すとおり、インゴットの加熱温度は、いずれも、1200℃であり、鍛伸成形時の仕上げ温度は、いずれも、1000℃であった。いずれの試験番号においても、鍛伸成形後の丸棒鍛伸材を、大気中で放冷した。以上の製造工程により、冷間鍛造用鋼材である丸棒鍛伸材を製造した。
【0084】
【表2】
【0085】
[冷間鍛造用鋼の評価試験]
[ミクロ組織観察]
各試験番号の丸棒鍛伸材の中心部から試験片を採取した。試験片を樹脂埋めした後、試験片の面のうち、丸棒鍛伸材の軸方向に対する垂直な面を観察面として、機械研磨を実施した。機械研磨された観察面をナイタルで腐食してミクロ組織を観察し、上述の方法で、フェライト(F)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、及びマルテンサイト(M)の面積率(%)を求めた。測定結果を表2に示す。
【0086】
[ビッカース硬さ試験]
各試験番号の丸棒鍛伸材の中心部から試験片を採取した。採取された試験片を用いて、JIS Z2244(2009)に準拠したビッカース硬さ試験を実施した。試験力は9.8Nとした。測定点は3点とし、その平均値を、対応する試験番号の丸棒のビッカース硬さ(HV)と定義した。得られたビッカース硬さを表3に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
[冷間鍛造性評価試験]
各試験番号の丸棒鍛伸材から、直径14mm、長さ21mmの円柱試験片を複数採取した。円柱試験片の中心軸は、丸棒の中心軸と同軸であった。円柱試験片を用いて、冷間プレスによる圧縮試験を実施し、冷間鍛造性を評価した。具体的には、式(5)で定義される加工率が70%となるまで圧縮試験を実施して、試験後の円柱試験片のき裂の有無を目視で確認した。
加工率=(1−(加工後の円柱試験片の長さ/加工前の円柱試験片の長さ))×100 (5)
【0089】
き裂の有無の確認を次のとおり実施した。各試験番号において5本の円柱試験片に対して5倍の拡大鏡を用いてき裂を観察した。5本の円柱試験片いずれにおいても、長さ0.5mm以上のき裂が観察されなかった場合、き裂が発生しなかったと判断した。
【0090】
さらに、圧縮試験中、加工率が50%のときの荷重(t)を測定した。き裂が観察されず、かつ、荷重が20t以下である場合、冷間鍛造性が高いと判断した。き裂が観察されるか、又は、荷重が20tを超える場合、冷間鍛造性が低いと判断した。
【0091】
[冷間鍛造模擬品を用いた評価試験]
各試験番号の丸棒鍛伸材を用いて、次の製造工程により、冷間鍛造模擬品を製造した。丸棒を直径36mmになるまでピーリング加工した。ピーリング加工後の丸棒に対して加工率75%の冷間鍛造を模擬した冷間引抜加工を実施して、直径18mmの丸棒を製造した。
【0092】
直径18mmの丸棒に対して、時効硬化処理を実施した。いずれの試験番号においても、処理温度を600℃とし、保持時間を60分とした。以上の工程により、冷間鍛造模擬品を製造した。
【0093】
[MnSアスペクト比測定試験]
各試験番号の冷間鍛造模擬品から、JIS Z2274(1978)に準拠した小野式回転曲げ疲労試験片を複数採取した。小野式回転曲げ疲労試験片の中心軸は、冷間鍛造模擬品の中心軸と同軸であった。
【0094】
小野式回転曲げ疲労試験片を長手方向に切断し、その切断面が観察面となる試料を採取し、樹脂に埋め込んだ。観察面に対して機械研磨及び鏡面仕上げを実施した後、500倍の倍率で、走査型電子顕微鏡(商品名:JSM−5700、日本電子株式会社製)を用いて観察した。観察視野内で特定された300個のMnSについて、各MnSの長手方向の最大長さを長軸とし、長軸と垂直方向の長さを短軸と定義し、長さを測定した。各MnSについて、次式を用いて、アスペクト比ARを求めた。
AR=長軸/短軸
【0095】
300個のアスペクト比の平均を、各試験番号の冷間鍛造模擬品でのMnSのアスペクト比ARと定義した。得られたアスペクト比ARを表3に示す。
【0096】
[ビッカース硬さ試験]
小野式回転曲げ疲労試験片の中心部から試料を採取し、中心部の任意の3点でJISZ2244(2009)に準拠したビッカース硬さ試験を実施した。試験力は9.8Nとした。測定点は3点とし、その平均値を、対応する試験番号の冷間鍛造模擬品のビッカース硬さ(HV)と定義した。得られたビッカース硬さを表3に示す。
【0097】
[小野式回転曲げ疲労試験]
上述の小野式回転曲げ疲労試験片を用いて、室温、大気雰囲気中にて、JIS Z2274(1978)に準拠した小野式回転曲げ疲労試験を実施した。回転数を3000rpmとし、応力負荷繰返し回数が10
7サイクル後において破断しなかった最大応力を疲労強度(MPa)とした。疲労強度が250MPa以上の場合、疲労強度に優れると判断した。
【0098】
[引張試験]
各試験番号の冷間鍛造模擬品の中心位置から、JIS Z2241(2011)に規定される14A号試験片を採取した。試験片の長手方向は冷間鍛造模擬品の長手方向であり、平行部の直径は6mm、標点距離は10mmであった。採取した試験片に対して、室温(25℃)で引張試験を実施して、引張強度(MPa)を求めた。得られた引張強度を表3に示す。
【0099】
[耐久比]
得られた疲労強度及び引張強度に基づいて、次式より、耐久比を求めた。
耐久比=疲労強度/引張強度
得られた疲労強度を表3に示す。
【0100】
[試験結果]
試験結果を表3に示す。表3の総合評価の欄には、熱間加工後の丸棒の冷間鍛造性、冷間鍛造模擬品の疲労強度及び耐久比、を総合して評価した結果を示す。試験番号1〜10では、いずれも化学組成が適切であり、fn1〜fn3が式(1)〜式(3)を満たした。そのため、ミクロ組織中のフェライトの面積率は85%以上であり、ベイナイト及びマルテンサイトの面積率は5%以下であった。その結果、冷間鍛造性評価試験において、き裂が観察されず、荷重も20t以下であり、優れた冷間鍛造性を示した。さらに、時効硬化処理後の冷間鍛造模擬品において、疲労強度が250MPa以上と高く、耐久比も0.650以上と高かった。特に、試験番号1、2、及び6では、S含有量が0.010%未満と低かった。そのため、これらの試験番号での耐久比は、0.690以上とさらに高かった。
【0101】
一方、試験番号11では、C含有量が高すぎた。そのため、冷間鍛造性評価試験での荷重が20tを超え、き裂も観察され、冷間鍛造性が低かった。さらに、fn2が低すぎたため、フェライトの面積率が85%未満となり、耐久比が0.650未満と低かった。
【0102】
試験番号12では、C含有量が低すぎた。そのため、時効硬化処理後の疲労強度が250MPa未満と低かった。
【0103】
試験番号13では、V含有量が低すぎ、さらに、fn2が低すぎた。そのため、フェライトの面積率が85%未満であり、耐久比が0.650未満と低かった。
【0104】
試験番号14では、Nb含有量が低すぎた。そのため、耐久比が0.650未満と低かった。時効硬化処理においてNb炭窒化物が十分に生成せず、フェライトが強化されなかったためと考えられる。
【0105】
試験番号15では、fn1が高すぎた。そのため、耐久比が0.650未満と低かった。これは、未固溶炭窒化物が残り粗大化したことにより、疲労強度が低下したためと考えられる。
【0106】
試験番号16では、fn2が低すぎた。そのため、そのため、フェライトの面積率が85%未満であり、耐久比が0.650未満と低かった。
【0107】
試験番号17では、Caを含有しなかった。そのため、MnSのアスペクト比が5.0を超え、耐久比が0.650未満と低かった。
【0108】
試験番号18では、Teを含有しなかった。そのため、MnSのアスペクト比が5.0を超え、耐久比が0.650未満と低かった。
【0109】
試験番号19では、fn3が低すぎた。そのため、MnSのアスペクト比が5.0を超え、耐久比が0.650未満と低かった。
【0110】
試験番号20では、fn1が高すぎた。そのため、耐久比が0.650未満と低かった。
【0111】
試験番号21では、fn2が低すぎた。そのため、耐久比が0.650未満と低かった。
【0112】
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。