特許第6601310号(P6601310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6601310
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】車両側コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20191028BHJP
【FI】
   H01R13/52 D
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-100646(P2016-100646)
(22)【出願日】2016年5月19日
(65)【公開番号】特開2017-208267(P2017-208267A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2018年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺本 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】松田 俊幸
【審査官】 山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−119143(JP,A)
【文献】 特開2016−035804(JP,A)
【文献】 特開2011−249039(JP,A)
【文献】 特開2012−243467(JP,A)
【文献】 特開2012−119144(JP,A)
【文献】 特開2016−018697(JP,A)
【文献】 特開2015−225771(JP,A)
【文献】 特表2016−526777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H01R 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボディに装着されるハウジングと、前記ハウジングに装着される複数の端子と、を備え、充電用コネクタと嵌合接続される車両側コネクタであって、
前記充電用コネクタとの嵌合方向を前後方向の基準とし前記充電用コネクタとの嵌合側を前側とした場合に、
前記ハウジングは、前記ボディに取り付けられる取付板と、前記取付板に設けられた前面開口の嵌合筒部と、を備え、
前記嵌合筒部は、円形の隔壁と、前記隔壁の前面外周縁に突出形成された環形のフード部と、を備え、
前記嵌合筒部には、端子収容部が前記隔壁を前後方向に貫通するようにして形成され、前記端子収容部は、円筒状をなす周壁の内周側に複数本の円筒部を配置した構造であり、前記周壁は前記隔壁の前側のみに配されており、
前記隔壁は、前記円筒部の内部空間と前記隔壁の後側空間とを連通させる排水空間を有しており、
前記排水空間は、前記周壁の内周面よりも側に位置する第1排水空間と、前記周壁の後端面を後側に露出させるとともに前記後端面の後側に位置して設けられ前記第1排水空間に連通する第2排水空間と、前記隔壁を貫通するとともに前記周壁の外周面よりも外周側に位置して前記第2排水空間に連通する拡張空間と、を備えて構成されている車両側コネクタ。
【請求項2】
前記嵌合筒部を前側から見て縦方向を上下方向とし、横方向を左右方向とした場合に、
前記複数の円筒部は、前記周壁の下端部に位置する第1円筒部を備えて構成され、前記排水空間は、前記第1円筒部の左右両側に一対配されている請求項1に記載の車両側コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、車両側コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車やハイブリッド車などに搭載されたバッテリに接続された車両側コネクタであって、バッテリへの充電時に充電用コネクタ(図示せず)と嵌合される車両側コネクタとして、特開2012−243467号公報(下記特許文献1)に記載のものが知られている。車両側コネクタは、端子金具が内部に収容される円筒部を有しており、円筒部内には、前方から浸入した水を後方へ逃がす逃がし孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−243467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の逃がし孔は、円筒部を構成する筒壁よりも内側の領域で円筒部の奥壁を後方に切り欠いたものであり、円筒部自体が小さいと、逃がし孔も小さいものとならざるを得ず、排水性能を確保できなくなる。また、上記の充電用コネクタは、複数の円筒部を一括して囲う周壁を備えているものの、円筒部の外面と周壁の内面との間に浸入した水を排水する排水路を備えていないため、円筒部の外面と周壁の内面との間に水が溜まることになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される車両側コネクタは、車両の内外を隔離する隔壁と、前記隔壁から前側に突出する形態をなす周壁と、前記周壁の内側に配され前記隔壁を前後方向に貫通する形態で設けられた複数の円筒部とを備え、前記隔壁は、前記円筒部の内部空間と前記隔壁の後側空間とを連通させる排水空間を有しており、前記排水空間は、前記周壁の内側に位置する第1排水空間と、前記周壁の後側に位置して前記第1排水空間に連通する第2排水空間とを備えて構成されているものとしてもよい。
【0006】
このようにすると、周壁の内部空間に浸入した水が第1排水空間から排水される第1の排水経路と、第2排水空間から排水される第2の排水経路とが存在する。周壁が小さくなると、第1の排水経路による排水性能は低下するものの、第2の排水経路によって排水性能を高めることができる。したがって、周壁が小さい場合でも十分な排水性能を確保することができる。
【0007】
本明細書によって開示される車両側コネクタは、以下の構成としてもよい。
前記排水空間は、前記周壁の外側に位置する拡張空間をさらに備えている構成としてもよい。
このような構成によると、第2排水空間から排水される第2の排水経路に加えて、拡張空間から排水される第3の排水経路が追加されるため、さらに排水性能を高めることができる。
【0008】
前記複数の円筒部は、前記周壁の下端部に位置する第1円筒部を備えて構成され、前記排水空間は、前記第1円筒部の左右両側に一対配されている構成としてもよい。
このような構成によると、一対の排水空間によって排水することができる。
【発明の効果】
【0009】
本明細書によって開示される技術によれば、周壁が小さい場合でも十分な排水性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両側コネクタの正面図
図2図1における円筒部の拡大図
図3図1におけるA−A線断面図
図4図3における排水空間の拡大図
図5】車両側コネクタの背面図
図6図5における円筒部の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
実施形態を図1から図6の図面を参照しながら説明する。本実施形態の車両側コネクタVCは、電気自動車やハイブリッド車などに搭載されたバッテリ(図示せず)に接続され、このバッテリへの充電時に充電用コネクタ(図示せず)が嵌合接続される。以下においては、充電用コネクタとの嵌合側(図3における図示左側)を前側として説明する。
【0012】
車両側コネクタVCは、図1に示すように、車両のボディに装着されるインレットハウジング30(以下、ハウジング30)と、ハウジング30に後方から装着される大小二種類の端子(図示せず)とを備えている。端子は、大径のパワー端子と、小径の信号用端子とから構成され、いずれも円筒状をなしている。
【0013】
ハウジング30は、合成樹脂材により形成された雌側ハウジングであって、車両のボディ(パネル)に取り付けられる正面方形をなす取付板31と、取付板31に設けられた前面開口の嵌合筒部35とを備えている。嵌合筒部35は詳細には、車両の内外を隔離する円形の隔壁36の前面外周縁に、環形のフード部37が突出形成された形状であって、嵌合筒部35内に、相手の充電用コネクタの雄側ハウジング(図示せず)が嵌合されるようになっている。取付板31の四隅には、取付孔32が開口されている。
【0014】
嵌合筒部35には、4本の端子収容部40が隔壁36を前後方向に貫通するようにして形成されている。端子収容部40は、パワー端子を収容するための第1端子収容部41と、信号用端子を収容するための第2端子収容部50の2種類が2本ずつ設けられ、第1端子収容部41が横方向に、第2端子収容部50が縦方向に並んで、十字を組んだような位置に配されている。
【0015】
第2端子収容部50は、円筒状をなす周壁51の内周側に4本の円筒部52を配置した構造である。各円筒部52は、十字形をなす配置で周壁51の内周面51Aに連結されている。また、円筒部52は隔壁36を前後方向に貫通する形態とされているのに対して、周壁51は隔壁36の前側のみに配されている。図3に示すように、各円筒部52の内部には、信号用端子が収容される端子収容室53が形成されている。以下においては、4本の円筒部52のうち最も下側に位置するものを第1円筒部52という。
【0016】
ハウジング30における隔壁36の背面には、図5に示すように、後面開口の装着筒部60が突出形成されている。装着筒部60には、各端子を一括して抜け止めするためのリテーナ(図示せず)が装着されるようになっている。装着筒部60の内周側に、各端子収容部40が配されている。
【0017】
さて、図1に示すように、隔壁36における第1円筒部52の左右両側には、一対の排水空間Sが形成されている。排水空間Sは、図3に示すように、円筒部52の外周面52Aと周壁51の内周面51Aとの間に形成された前側空間FSと、隔壁36の後側に形成された後側空間BSとを連通させる空間である。後側空間BSは、詳細には図5に示すように、円筒部52の外周面52Aと第1端子収容部41の外周面41Aとの間に形成された空間である。
【0018】
図3の一点鎖線で示すように、排水空間Sは、前側空間FSに浸入した水を後側空間BSに排水させるための空間である。排水空間Sは、図4に示すように、周壁51の内周面51Aの内側に位置する第1排水空間S1と、周壁51の後端面51Bの後側に位置して第1排水空間S1に連通する第2排水空間S2と、周壁51の外周面51Cよりも外周側に位置して第2排水空間S2に連通する拡張空間S3とを備えている。前側空間FSは、第1排水空間S1と第2排水空間S2の双方に連通している。
【0019】
前側空間FSから後側空間BSに至る排水経路としては、図3に示すように、第1排水空間S1のみを経由する第1の排水経路R1と、図4に示すように、第1排水空間S1と第2排水空間S2を経由する第2の排水経路R2と、第2排水空間S2と拡張空間S3を経由する第3の排水経路R3とが存在することになる。第1の排水経路R1と第2の排水経路R2は、前側空間FSから第1排水空間S1に直接浸入するのに対して、第3の排水経路R3は、前側空間FSから第1排水空間S1を経由することなく第2排水空間S2に直接浸入するものとされている。
【0020】
第3の排水経路R3が実現可能な理由は、周壁51の一部を外周側に貫通する形態で切り欠くことで、前側空間FSから第2排水空間S2を超えて下方に開口する形態で拡張空間S3が設けられているからである。一方、第1排水空間S1は、隔壁36の一部を前後方向に貫通する形態で切り欠くことで、前側空間FSから後方に開口する形態で設けられていることになる。これにより、前側空間FSは、後方と下方の双方に開口する形態となり、周壁51の小型化に起因して前側空間FSと後側空間BSとを連通させる開口部の面積が小さくなった場合でも、周壁51の外周側に排水空間Sを張り出させて拡張することで前記した開口部を拡張させて排水性能を確保できるようになっている。
【0021】
以上のように本実施形態では、周壁51の内部空間(前側空間FS)に浸入した水が第1排水空間S1から排水される第1の排水経路R1と、第2排水空間S2から排水される第2の排水経路R2とが存在する。周壁51が小さくなると、第1の排水経路R1による排水性能は低下するものの、第2の排水経路R2によって排水性能を高めることができる。したがって、周壁51が小さい場合でも十分な排水性能を確保することができる。
【0022】
排水空間Sは、周壁51の外側に位置する拡張空間S3をさらに備えている構成としてもよい。
このような構成によると、第2排水空間S2から排水される第2の排水経路R2に加えて、拡張空間S3から排水される第3の排水経路R3が追加されるため、さらに排水性能を高めることができる。
【0023】
複数の円筒部52は、周壁51の下端部に位置する第1円筒部52を備えて構成され、排水空間Sは、第1円筒部52の左右両側に一対配されている構成としてもよい。
このような構成によると、一対の排水空間Sによって排水することができる。
【0024】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)上記実施形態では第2端子収容部50に排水空間Sを設けているものの、第1端子収容部41に排水空間を設けてもよい。
【0025】
(2)上記実施形態では周壁51の下端部に第1円筒部52が位置するために第1円筒部52の左右両側に一対の排水空間Sを設けているものの、周壁51の下端部に円筒部52がない場合には、周壁51の下端部に排水空間を設けてもよい。
【符号の説明】
【0026】
VC…車両側コネクタ
36…隔壁
51…周壁
52…円筒部
FS…前側空間(円筒部の内部空間)
BS…後側空間
S…排水空間
S1…第1排水空間
S2…第2排水空間
S3…拡張空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6