(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リンク部材は、前記支軸の軸方向において、前記可動ハウジングと前記分離部材とのそれぞれの一方の端部の間に介装されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の定着装置。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンター等の画像形成装置には、用紙に転写されたトナー像を用紙に定着する定着装置が備えられている。定着装置は、互いに圧接して定着ニップを形成する定着ローラーと加圧ローラーとを有し、定着ニップを用紙が通過する際にトナー像が加熱及び加圧されて用紙に定着される。
【0003】
このような定着装置においては、用紙が定着ニップを通過した後で定着ローラーに巻き付くことがある。そこで、用紙の巻き付きを防止するために、定着装置には、定着ニップを通過した後で定着ローラーから用紙を分離する分離部材が備えられている。分離部材は、定着ローラーの外周面に対向する分離板と、分離板を外周面に対して所定の隙間を開けて保持する当たり部材と、を備えている。当たり部材は、定着ローラーの通紙領域の外側の非通紙領域で外周面に当接することで、分離板と外周面との間に隙間を形成する。
【0004】
このように、定着ローラーには当たり部材が常時接触しているため、定着ローラーの当たり部材との接触箇所は摩耗が激しい。また、加熱源としてIHを使用した場合、定着ローラーの均熱化のために、定着部材は待機中でも駆動される場合があり、摩耗がより進行する。このため、定着ベルトを用いた定着ローラーでは、定着ベルトの破損の原因となってしまう。
【0005】
一方で、封筒等の特殊紙を通紙する際には、定着ニップの定着圧を下げる必要がある。このため、定着ローラーと加圧ローラーとは接離可能に設けられて、定着圧を加圧状態と減圧状態とに切り替え可能となっている。このような減圧状態においても、定着ローラーの外周面と分離板との間には、所定の隙間が確保される必要がある。隙間が不安定な場合、分離板の先端に封筒の先端が引っ掛かる通紙不良が発生する場合がある。
【0006】
特許文献1には、定着圧が加圧状態から減圧状態に切り替えられる途中で、当たり部材を定着ローラーから離間させるように構成された定着装置が記載されている。この定着装置においては、定着ローラーを加圧ローラーに対して移動させることで定着圧を切り替えるように構成されている。そして、定着圧を加圧状態から減圧状態に切り替える際に定着ローラーを移動させる途中で、定着ローラーが支持される可動フレームが当たり部材と干渉して、当たり部材を定着ローラーから離間させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記特許文献1に記載の定着装置においては、定着ローラーの移動量のばらつきによっては、減圧状態において、当たり部材と定着ローラーの外周面との隙間の寸法が不安定になるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は上記事情を考慮し、減圧状態においても定着ローラーの外周面と当たり部材との隙間を安定して確保できる定着装置及びこの定着装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の定着装置は、加熱される定着部材と、該定着部材との間に定着ニップを形成する加圧部材と、前記定着部材が回転可能に支持される固定ハウジングと、前記加圧部材が回転可能に支持されて、前記固定ハウジングに対して接離可能に設けられる可動ハウジングと、該可動ハウジングを前記固定ハウジングに接近又は離間する方向に移動させて、前記定着ニップの定着圧を加圧状態と減圧状態とに切り替える移動機構と、前記定着部材に接近又は離間する方向に支軸を中心として回動可能に前記固定ハウジングに支持されて、前記定着ニップを通過した用紙を前記定着部材から分離する分離部材と、前記固定ハウジングに設けられて、前記定着部材から離間する方向への前記分離部材の回動を規制する規制部と、を備える定着装置であって、前記可動ハウジングと前記分離部材との間に介装されるリンク部材を有し、前記加圧状態においては、前記分離部材は自身の自重によって前記定着部材に接近する方向に前記支軸を中心として回動し、前記加圧状態から前記減圧状態に前記定着圧を切り替える際に、前記移動機構が前記可動ハウジングを前記固定ハウジングから離間する方向へ移動させると、前記分離部材は、前記定着部材から離間する方向へ前記リンク部材を介して前記支軸を中心として回動し、前記規制部によって回動が規制されることを特徴とする。
【0011】
このような構成を採用することにより、定着圧が減圧状態に切り替えられる際には、分離部材は、規制部によって回動が規制されるまで回動する。分離部材は固定ハウジングに回転可能に支持されており、規制部も固定ハウジングに設けられている。また、定着部材も固定ハウジングに回転可能に支持されている。このため、規制部に当接するまで回動した分離部材と定着部材との位置関係は常に同じであるので、減圧状態での分離部材と定着ローラーとの間の隙間を安定して管理することができる。
【0012】
したがって、定着圧を減圧状態に切り替えることで、定着部材と分離部材とを減圧状態として定着部材の長寿命化を図ることができると共に、減圧状態では分離部材と定着部材の間の隙間を安定して管理することができる。
【0013】
本発明の定着装置において、前記分離部材は、前記定着部材における前記用紙の通紙領域に対向する分離板と、前記定着部材における前記通紙領域の外側の非通紙領域に当接可能な当接部と、前記支軸に挿通される軸孔が形成された取付部と、前記リンク部材で押圧される被押圧部と、を有し、前記加圧状態においては、前記分離部材の自重によって前記取付部が前記支軸を中心として一方向に回動して前記当接部が前記非通紙領域に当接し、前記分離板と前記通紙領域との間に隙間が形成され、前記減圧状態においては、前記被押圧部が前記リンク部材で押圧されて前記取付部が前記支軸を中心として前記一方向とは反対方向に回動し、前記当接部が前記非通紙領域から離間することを特徴としても良い。
【0014】
このような構成を採用することにより、加圧状態においては、当接部と通紙領域との間に適宜な隙間を形成することができ、減圧状態においては、当接部を通紙領域から確実に離間させることができる。
【0015】
本発明の定着装置において、前記軸孔は長孔であり、前記分離部材は、前記支軸に軸支された状態では、前記当接部が前記軸孔よりも下方に位置し、前記被押圧部が前記軸孔よりも上方に位置するように、自身の自重によって回動することを特徴としても良い。
【0016】
このような構成を採用することにより、加圧状態から減圧状態に切り替えられる際に軸孔よりも上方の押圧部が押圧されて分離部材が回動することで、軸孔内の支軸の位置が変動しないので、支軸と分離部材との相対位置が変化せず、当接部と通紙領域との間の隙間を一定に維持することができる。
【0017】
本発明の定着装置において、前記リンク部材は、前記可動ハウジングに連結される弾性部材と、該弾性部材と前記分離部材との間に介装されるリンク板と、を備え、前記リンク板は、前記支軸に挿通される軸孔が形成されて、前記支軸を中心として回動可能に設けられる取付片と、前記分離部材の前記被押圧部に当接可能な押圧片と、前記弾性部材と連結される連結片と、を有し、前記減圧状態においては、前記連結片が前記弾性部材で引き寄せられることで前記取付片が前記支軸を中心として回動し、前記押圧片が前記分離部材の前記被押圧部を押圧することを特徴としても良い。
【0018】
このような構成を採用することにより、分離部材の被押圧部を押圧して、分離部材を支軸を中心として回動させることができる。
【0019】
本発明の定着装置において、前記リンク部材は、前記支軸の軸方向において、前記可動ハウジングと前記分離部材とのそれぞれの一方の端部の間に介装されていることを特徴としても良い。
【0020】
このような構成を採用することにより、定着装置の構成を簡易化できる。
【0021】
本発明の画像形成装置は、上記したいずれかの定着装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、定着圧が減圧状態であっても、分離部材と定着ローラーとの間の隙間を安定して確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態に係る定着装置及び画像形成装置について説明する。
【0025】
まず、
図1を用いて、プリンター1(画像形成装置)の全体の構成について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るプリンターの概略を示す模式図である。以下の説明では、
図1における紙面手前側をプリンター1の正面側(前側)とし、左右の向きプリンターを正面から見た方向を基準とする。
【0026】
プリンター1の装置本体2には、シートSが収容される給紙カセット4と、給紙カセット4からシートSを送り出す給紙装置5と、シートSにトナー像を形成する画像形成部6と、トナー像をシートSに定着する定着装置7と、トナー像が定着されたシートSを排出する排紙装置8と、排出されたシートSが受け止められる排紙トレイ9と、が備えられている。
【0027】
給紙カセット4は装置本体2の下部に着脱可能に設けられている。給紙装置5は、給紙カセット4の右端部上方に備えられている。画像形成部6は、給紙カセット4の上方に設けられている。定着装置7は、画像形成部6の右端部上方に備えられ、排紙装置8は定着装置7の左上方に備えられている。排紙トレイ9は、装置本体2の上面に形成されている。さらに、装置本体2には、給紙装置5から、画像形成部6と定着装置7を通って排紙装置8に向かう用紙の搬送経路10が形成されている。
【0028】
用紙Sは、給紙カセット4から給紙装置5によって搬送経路10に送り出され、画像形成部6においてトナー像が用紙Sに形成される。トナー像は、定着装置7によって用紙Sに定着される。トナー像が定着された用紙Sは、排紙装置8によって排紙トレイ9に排出される。
【0029】
次に、定着装置7について、
図2及び
図3を参照して説明する。
図2は定着装置の斜視図、
図3は定着装置の断面図である。定着装置7は、
図2や
図3に示されるように、定着ユニット20と、定着ユニット20の左側に配置されるIHユニット21と、を備えている。
【0030】
まず、定着ユニット20について説明する。定着ユニット20は、
図2に示されるように前後方向に長い略直方体形状を成している。定着ユニット20は、
図3に示されるように、固定ハウジング23と、固定ハウジング23に回転可能に支持される定着部材としての加熱ローラー24と、固定ハウジング23に移動可能に支持される可動ハウジング25と、可動ハウジング25に回転可能に支持される加圧部材としての加圧ローラー26と、可動ハウジング25を固定ハウジング23に対して接近又は離間する方向に移動させる移動機構27(後述する
図6参照)と、を備えている。さらに、定着ユニット20は、固定ハウジング23に回動可能に支持される分離部材28と、分離部材28と可動ハウジング25との間に介装されるリンク部材29(後述する
図9等参照)と、を備えている。
【0031】
固定ハウジング23は、
図2や
図3に示されるように、前後方向に長い略直方体状の中空部材であり、天面と左側面にはそれぞれ開口23a、23bが形成されている。天面開口23aには、カバー板31が開閉可能に取り付けられている。また、固定ハウジング23の底板とカバー板31とには、左右方向の略中央に、前後方向に沿った用紙受入口32と用紙排出口33とがそれぞれ形成されている。用紙受入口32と用紙排出口33との間には、用紙Sの搬送経路10が形成されている。
【0032】
固定ハウジング23の中空部には、搬送経路10の左側に、定着ローラー24が支持される定着ローラー収容凹部35が形成され、搬送経路10の右側に、可動ハウジング25が収容される可動ハウジング収容凹部36が形成されている。
【0033】
定着ローラー収容凹部35には、定着ローラー24が支持される前後一対の軸支部(図示省略)が同軸上に形成されている。さらに、前後一対の軸支部の上方には、軸支部と平行な前後一対の支軸38がそれぞれ同軸上に立設されている。前後一対の支軸38には、後述する分離部材28が回転可能に支持される。また、定着ローラー収容凹部35には、左側面開口23bの上縁前端部に規制部40が設けられている。規制部40には、支軸38の軸方向から見た支軸38の上方に、斜め右下に面する規制面40aが形成されている。
【0034】
定着ローラー24は、回転軸と、回転軸外周面に設けられる弾性層と、弾性層の外周面に固定される定着ベルトと、を有している。回転軸は、例えば、ステンレスやアルミニウムで形成されている。弾性層は、例えば、シリコンゴムやシリコンスポンジによって形成されている。定着ベルトは、基材層と、基材層の表面に設けられる弾性層と、弾性層を被覆する離型層と、を有している。基材層は、例えば、ニッケル等の金属で形成されている。弾性層は、例えば、シリコンゴムやシリコンスポンジによって形成されている。離型層は、例えば、フッ素樹脂によって形成されている。
【0035】
また、定着ローラー24は、通紙される用紙の最大幅に対応する通紙領域と、用紙Sの搬送方向と直交する幅方向における通紙領域の両外側の非通紙領域と、を有している。
【0036】
定着ローラー24の回転軸の両端は、定着ローラー収容凹部35に形成された前後一対の軸支部に回転可能に支持されている。このように定着ローラー24が支持されると、固定ハウジング23の左側側面開口23bから定着ローラー24の外周面の一部が露出する。また、回転軸の一端は、定着ローラー収容凹部35から外側に突出して、モータ等の駆動源に接続される。駆動源が駆動されると、定着ローラー24は、回転軸を中心として
図3の反時計回り方向に回転する。
【0037】
可動ハウジング収容凹部36の下部には、前後一対の軸支ピン42(
図3参照)が立設されている。可動ハウジング収容凹部36には、前述のように、加圧ローラー26が回転可能に支持された可動ハウジング25が収容される。
【0038】
可動ハウジング25と加圧ローラー26とについて、
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は可動ハウジングの斜視図、
図5は可動ハウジングの前端部の斜視図である。
【0039】
可動ハウジング25は、加圧ローラー26が収容される中空部を有する中空状部材であり、左側面は開口している。
図4に示されるように、可動ハウジング25の前端面と後端面とには、それぞれ連結片43が設けられている。連結片43は、断面視L字状であり、屈曲部に開口43aが形成されている。さらに、前端面と後端面の下縁には、フック片44がそれぞれ設けられている。また、
図5に示されるように、可動ハウジング25の上面の前端部には、ばね取付部46が設けられている。
【0040】
加圧ローラー26は、回転軸と、回転軸外周面に設けられる弾性層と、弾性層の外周面を覆う離型層と、を有している。回転軸は、例えば、ステンレスやアルミニウムで形成されている。弾性層は、例えば、シリコンゴムやシリコンスポンジによって形成されている。離型層は、例えば、フッ素樹脂によって形成されている。加圧ローラー26は、可動ハウジング25の中空部に回転軸を中心として回動可能に収容されて、左側面の開口から外周面の一部が露出している。
【0041】
図3に示されるように、加圧ローラー26が収容された可動ハウジング25は、各フック片44を可動ハウジング収容凹部36に形成された前後一対の軸支ピン42に係合させることで、可動ハウジング収容凹部36に、軸支ピン42を中心として回動可能に支持されている。可動ハウジング25が、軸支ピン42を中心として
図3の反時計回り方向に回動すると、可動ハウジング25の左側面開口から露出した加圧ローラー26が定着ローラー24に圧接して、加圧ローラー26と定着ローラー24との間に定着ニップを形成する。一方、可動ハウジング25が
図3の時計回り方向に回動すると、加圧ローラー26は定着ローラー24から離間する。
【0042】
次に、可動ハウジング25の移動機構27について、
図6を参照して説明する。
図6は移動機構を示す側面図であり、
図6(A)は加圧状態における移動機構を示し、
図6(B)減圧状態における移動機構を示す。
【0043】
移動機構27は、可動ハウジング25の前端面の外側で、可動ハウジング収容凹部36に回転可能に支持されるレバー部材48と、レバー部材48と可動ハウジング25との間に介装されるコイルばね49と、を備えている。
【0044】
レバー部材48は、略直方体状の部材であり、長手方向の中央部に、前後一対の軸支ピン42と平行な軸孔48aが形成されている。また、レバー部材48の一端部には、軸孔48aと平行なピン48bが設けられている。さらに、レバー部材48の他端部には、軸孔48aを中心とした円弧状に沿ってギア歯48cが形成されている。このギア歯48cは、装置本体2に設けられる駆動ギア(図示省略)を係合可能となっている。
【0045】
レバー部材48の軸孔48aには、可動ハウジング収容凹部36に設けられる軸部(図示省略)が挿通されている。これにより、レバー部材は軸孔48aを中心として回動可能に支持される。コイルばね49の一端は、レバー部材48のピン48bに係止され、他端は、可動ハウジング25の連結片43の開口43a(
図4参照)に係止されている。
【0046】
この移動機構27においては、
図6(A)に示されるように、可動ハウジング25は、軸支ピン42を中心として反時計回り方向に回動するように、コイルばね49によって付勢されている。これにより、加圧ローラー26が定着ローラー24に圧接されて、定着ニップの定着圧は加圧状態となっている。加圧状態においては、定着ローラー24と加圧ローラー26とは互いに弾性変形して、搬送方向に沿った定着ニップ幅が広くなっている。
【0047】
定着ニップの定着圧を減圧状態に切り替えるには、駆動ギアによって、レバー部材48を軸孔48aを中心として時計回りに回動させる(
図6(A)の矢印参照)。すると、可動ハウジング25は、軸支ピン42を中心として
図6(A)の時計回り方向に回動して、
図6(B)に示されるように、加圧ローラー26が定着ローラー24から離間し、定着ニップの定着圧が加圧状態から減圧状態に切り替えられる。
【0048】
次に、分離部材28について、
図7と
図8を参照して説明する。
図7は分離部材の斜視図、
図8は分離部材の側面図であり、
図8(A)は分離部材を前側から見た側面図、
図8(B)は
図7のVII−VII矢視図である。
【0049】
分離部材28は、定着ローラー24の回転軸の軸方向に長い部材であり、定着ローラー24の上方で定着ローラー収容凹部35に支持される支持板51と、支持板51に固定される一対の当たり部材52及び分離板53と、を有している。
【0050】
支持板51は側面視L字状の部材であり、直角に屈曲した支持部51aと被規制部51bとを有している。支持部51aには、一対の当たり部材52及び分離板53が固定される。被規制部51bは、規制部40の規制面40a(
図3参照)に当接して、分離部材28の回動を規制する。
【0051】
支持部51aの外面の前後両端部には、それぞれ2個の位置決め突起55が長手方向に所定の間隔で形成されている。また、支持部51aの前後側縁には、被規制部51bと同じ方向に直角に屈曲する取付部56がそれぞれ形成されている。両取付部56には、軸孔57が同軸上に形成されている。
図8(A)に示されるように、前側の取付部56に形成された軸孔57は長孔形状であり、
図8(B)に示されるように、後側の取付部56に形成された軸孔57は矩形状である。
【0052】
被規制部51bの前側の側縁には、支持部51aとは反対の方向に直角に屈曲した被押圧部59が形成されている。被押圧部59には、支持部51aの側の側縁に、矩形状の切り欠き60が形成されている。
【0053】
一対の当たり部材52は、支持板51の支持部51aに固定される固定部52aと、支持部51aから略円弧状に突出する突出部52bと、をそれぞれ有している。突出部52bの先端には当接部62が形成されている。当接部62は、軸孔57の軸方向と平行な短い円柱形状を成している。各固定部52aは、定着ローラー24の幅方向外側の非通紙領域に対応するように、支持部51aの内側の面に固定されている。このように固定部52aが支持部51aに固定されると、突出部52bは、側面視にて、支持部51aよりも手前側に円弧状に突出すると共に、先端に形成された当接部62が取付部56よりも下方に突出する。
【0054】
分離板53は、支持板51の支持部51aよりもやや短い長さの長方形板状の部材である。分離板53は、支持部51aに固定される固定部53aと、支持部51aから延設されて、固定部53aよりの幅の狭い突出部53bと、を有している。固定部53aの前後両端部には、それぞれ2個の位置決め孔64が長手方向に所定の間隔で形成されている。これらの位置決め孔64に、支持部51aの位置決め突起55が挿通することで、分離板53が支持板51に位置決めされている。突出部53bは、一対の当たり部材52の突出部52bの間を通って延設されている。突出部53bの支持部51aからの突出長さは、一対の当たり部材52の突出部52bの突出長さよりも短い。言い換えると、側面視において、分離板53の突出部53bの先端縁と、一対の当たり部材52の当接部62との間には、所定の間隔が開いている。
【0055】
分離部材28は、支持板51の各取付部56に形成された軸孔57に、固定ハウジング23の定着ローラー収容凹部35に形成された支軸38を係合させることで、支軸38を中心として回動可能に支持される。分離部材28が支軸38に軸支された自由姿勢では、軸孔57の上端縁が支軸38に係止されて、一対の当たり部材52が軸孔57よりも下方に位置し、被押圧部59が軸孔57よりも上方に位置するように、分離部材28は自重によって回動する。
【0056】
定着ローラー24が定着ローラー収容凹部35に支持されると、一対の当たり部材52が定着ローラー24の非通紙領域に当接して定着ローラー24で押し上げられ、分離部材28は、
図3の反時計回り方向に支軸38を中心として回動する。そして、分離部材28の自重によって、一対の当たり部材52の当接部62は、定着ローラー24の非通紙領域に当接する。これにより、分離板53の突出部53bの先端縁と、定着ローラー24の通紙領域との間には、所定の隙間が形成される。
【0057】
次に、リンク部材29について、
図9〜
図12を参照して説明する。
図9及び
図10はリンク部材を示す斜視図、
図11はリンク板の斜視図、
図12は分離部材の前端に装着されたリンク板を示す斜視図である。
【0058】
リンク部材29は、リンク板71とコイルばね72とを有し、
図9及び
図10に示されるように分離部材28と可動ハウジング25との間に介装される。
【0059】
リンク板71は、
図11に示されるような、互いに直交する2つの辺を有する取付片74と、取付片74の直交する2つの辺から同じ方向に直角に屈曲した連結片75と押圧片76とを有している。取付片74には、円形の軸孔77が形成されている。連結片75には、押圧片76とは反対側の側縁に、ばね係止部78が形成されている。ばね係止部78は、切り欠きと長孔との間に形成されている。押圧片76には、連結片75とは反対側の縁に、切り欠き79が形成されている。
【0060】
図12に示されるように、リンク板71は、分離部材28の前端に連結される。リンク板71は、取付片74が分離部材28の取付部56の外側、連結片75が支持部51aの外側、押圧片76が被規制部51bの外側となる姿勢で、取付片74の軸孔77が、定着ローラー収容凹部35に形成された支軸38に係合している。つまり、リンク板71は分離部材28と同様に、支軸38を中心として回動する。また、押圧片76の切り欠き79は、分離部材28の被押圧部59の切り欠き60に係合している。
【0061】
コイルばね72は、リンク板71の連結片75のばね係止部78に一端が係止され、他端が、可動ハウジング25のばね取付部46に係止されている。
【0062】
次に、
図2を参照して、IHユニット21について説明する。IHユニット21は、コイル部91と、コイル部91を巻線状に保持するコイルボビン92と、アーチコア93と、を有している。IHユニット21は、固定ハウジング23の左側面開口23bを覆うように取り付けられて、左側面開口23bから露出した定着ローラー24の外周面を覆っている。コイル部91に高周波の交流電圧を印加することにより磁界を発生させ、この磁界の作用によって定着ローラー24の基材層に渦電流が発生して基材層が発熱し、定着ローラー24が加熱される。
【0063】
上記構成を有する定着装置7にいて、定着圧を加圧状態から減圧状態へ切り替える際の分離部材28の挙動について、
図13〜
図16を参照して説明する。
図13と
図14は分離部材を示す側面図であり、
図13は加圧状態、
図14は減圧状態を示す。
図15と
図16は定着ローラーと加圧ローラーとを示す側断面図であり、
図15は加圧状態、
図16は減圧状態を示す。
【0064】
用紙が普通紙の場合は、定着ニップの定着圧は加圧状態に切り替えられている。分離部材28は前述のように自重によって回動して、
図13や
図15に示されるように、一対の当たり部材52の当接部62が定着ローラー24の非通紙領域に当接している。これにより、分離板53の突出部53bの先端縁と定着ローラー24の通紙領域との間には、所定のギャップが開いている。なお、リンク部材29のコイルばね72は自由長であり、リンク板71にコイルばね72の付勢力は及んでいない。
【0065】
普通紙は、定着ニップを通過してトナー像が定着された後、先端が分離板53の突出部53bの先端縁によって定着ローラー24から分離される。
【0066】
一方、用紙が封筒などの厚紙の場合は、移動機構27(
図6参照)によって、可動ハウジング25が定着ローラー24から離れる方向に軸支ピン42を中心として回動して、加圧ローラー26が定着ローラー24から離間し(
図16の矢印F参照)、定着ニップの定着圧は減圧状態に切り替えられる。可動ハウジング25が定着ローラー24から離れる方向に回動すると、リンク部材29のコイルばね72によってリンク板71の連結片75が引っ張られる(
図13の矢印A参照)。これにより、リンク板71が支軸38を中心として
図13の反時計回り方向に回動して(
図13の矢印B参照)、押圧片76が、分離部材28の被押圧部59を押圧する(
図13の矢印C参照)。
【0067】
すると、分離部材28は支軸38を中心として
図13の反時計回り方向に回動し(
図14の矢印D参照)、一対の当たり部材52の当接部62が定着ローラー24の非通紙領域から離間する(
図14、
図16の矢印E参照)。分離部材28は、
図14に示されるように、支持板51の被規制部51bの外面が、規制部40の規制面40aに当接するまで回動する。なお、被規制部51bの外面が規制部40の規制面40aに当接した後で、可動ハウジング25が回動した場合、可動ハウジング25の移動量はコイルばね72の伸縮によって吸収される。つまり、分離部材28は、定着ローラー24に対して常に一定の位置(被規制部51bの外面が規制部40の規制面40aに当接する位置)までしか回動しない。
【0068】
厚紙は、定着ニップを通過してトナー像が定着された後、先端が分離板53の突出部53bの先端によって定着ローラー24から分離される。
【0069】
上記説明したように本発明の定着装置7によれば、定着ニップの定着圧が減圧状態に切り替えられる際には、分離部材28は、支持板51の被規制部51bの外面が、規制部40の規制面40aに当接するまで回動する。つまり、分離部材28は、定着ローラー24に対して常に一定の位置までしか回動しない。
【0070】
分離部材28は固定ハウジング23に設けられた支軸38に回転可能に支持されており、規制部40も固定ハウジング23に設けられている。また、定着ローラー24も固定ハウジング23に回転可能に支持されている。このため、規制部40に当接するまで回動した分離部材28と定着ローラー24との位置関係は常に同じであるので、減圧状態での分離部材28と定着ローラー24との間の隙間を安定して管理することができる。したがって、定着圧を減圧状態に切り替えることで、定着ローラー24と一対の当たり部材52とを非接触として定着ローラー24の長寿命化を図ることができると共に、減圧状態では分離板53の先端縁と定着ローラー24の通紙領域との間の隙間を安定して管理することができる。
【0071】
また、分離部材28は長孔状の軸孔57で支軸38に軸支されているので、分離板53の変形等によって分離板53の突出部53bの先端縁と定着ローラー24の通紙領域との平行度がずれたような場合に、支軸38が軸孔57内を移動することで、一対の当たり部材52の当接部62を非通紙領域に当接させて、分離板53の先端縁と通紙領域との間隔を一定に保つことができる。
【0072】
また、加圧状態から減圧状態に切り替えられる際に、分離部材28は、軸孔57よりも上方に設けられた被押圧部59が押圧されることで支軸38を中心として回動する。加圧状態では、分離部材28の自重によって、軸孔57の上端縁に支軸38が係止されている。このため軸孔57よりも上方の被押圧部59が押圧されて分離部材28が回動する際、軸孔57内の支軸38の位置は変動しない。
【0073】
これに対して、例えば、分離部材28の軸孔57よりも下方の部分が押圧されて、あるいは、引っ張られて支軸38を中心として回動する場合、分離部材28には上方向への力がかかるので、分離部材28の回動時に支軸38が軸孔57内を相対的に下方に移動する虞がある。すると、支軸38と分離部材28との相対位置が変化し、減圧状態での分離部材28と定着ローラー24との間の隙間が変化してしまう。
【0074】
したがって、本発明の様に、分離部材28を軸孔57よりも上方の被押圧部59を押圧して回動させることで、支軸38と分離部材28との相対位置を一定に維持することができる。
【0075】
さらに、リンク板71を分離部材28と同じ支軸38を中心として回動可能に支持している。また、リンク板71の押圧片76の切り欠き79と、分離部材28の被押圧部59の切り欠き60とは互いに係合している。したがって、減圧状態に切り替えられてリンク板71が回動する際に、押圧片76の切り欠き79と被押圧部59の切り欠き60とは、支軸38を中心としたほぼ同じ半径の回動軌跡に沿って移動する。このため、被押圧部59の切り欠き60と支軸38との間隔は、常に一定に保たれるので、支軸38と分離部材28との相対位置を一定に維持することができる。
【0076】
また、リンク部材29は、分離部材28の前端部と可動ハウジング25の前端部との間のみに設けられているので、コストを削減できる。なお、リンク部材29を分離部材28の後端部と可動ハウジング25の後端部との間にも設けても良い。
【0077】
なお、本発明の実施形態では、プリンター1に本発明の構成を適用した場合について説明したが、他の異なる実施形態では、複写機、ファクシミリ、複合機等のプリンター1以外の画像形成装置に本発明の構成を適用しても良い。
【0078】
さらに、上記した本発明の実施形態の説明は、本発明に係る定着装置及び画像形成装置における好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。すなわち、上記した本発明の実施の形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の実施の形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。