特許第6601350号(P6601350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6601350
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】高周波モジュール及び通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/50 20060101AFI20191028BHJP
   H03H 7/46 20060101ALI20191028BHJP
   H03H 7/075 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   H04B1/50
   H03H7/46 A
   H03H7/075 A
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-176668(P2016-176668)
(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公開番号】特開2018-42192(P2018-42192A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2018年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】澤田 曜一
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−100440(JP,A)
【文献】 特開2006−121514(JP,A)
【文献】 特開2015−126458(JP,A)
【文献】 特開2010−273215(JP,A)
【文献】 特開2013−77663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/40−1/58
H03H 7/075
H03H 7/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置され、電源から電力供給を受けるための受電端子と、
前記基板上に配置された増幅回路と、
前記基板上に配置され、複数の信号を切り替えて前記増幅回路と通信するスイッチ回路と、
前記受電端子から前記スイッチ回路の電源端子に至る第1の導電経路と、
前記第1の導電経路上の分岐点から前記増幅回路の電源端子に至る第2の導電経路と、
前記第1の導電経路又は前記第2の導電経路の少なくとも一方から分岐し、グランドに至る第3の導電経路と、
前記第3の導電経路に挿入されたコンデンサと、を備え、
前記第1の導電経路の前記分岐点から前記スイッチ回路の電源端子に至る専有部分のインダクタンス値を第1インダクタンスとし、前記第2の導電経路のインダクタンス値を第2インダクタンスとしたとき、前記第2インダクタンスは前記第1インダクタンスより大きい、
高周波モジュール。
【請求項2】
前記第1の導電経路は、第1の配線導体で構成され、
前記第2の導電経路は、第2の配線導体で構成され、
前記第2の配線導体の長さは、前記第1の配線導体の前記分岐点から前記スイッチ回路の前記電源端子に至る専有部分の長さより長い、
請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項3】
前記第1の導電経路は、第1の配線導体で構成され、
前記第2の導電経路は、第2の配線導体と、当該第2の配線導体に挿入されたインダクタ素子とで構成されている、
請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項4】
前記スイッチ回路と前記増幅回路とは、単一の集積回路チップ内に設けられ、前記スイッチ回路の電源端子は前記集積回路チップの第1の電源端子であり、前記増幅回路の電源端子は、前記集積回路チップの第2の電源端子である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の高周波モジュール。
【請求項5】
前記基板上に配置された分波回路と、
前記スイッチ回路から前記分波回路に至る第4の導電経路と、をさらに備え、
前記基板を平面視したとき、前記第4の導電経路は、前記第1の導電経路、前記第2の導電経路、及び前記第3の導電経路のいずれの1つとも交差しない、
請求項1から4のいずれか1項に記載の高周波モジュール。
【請求項6】
前記コンデンサは、セラミックコンデンサである、
請求項1から5のいずれか1項に記載の高周波モジュール。
【請求項7】
請求項1から6にいずれか1項に記載の高周波モジュールと、
前記高周波モジュールへ高周波送信信号を送信し、前記高周波モジュールから高周波受信信号を受信するRF信号処理回路と、
を備える通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高周波モジュール及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の通信装置において、信号経路の切り替えが可能な高周波回路が用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図6は、特許文献1に開示される高周波回路のブロック図である。当該高周波回路は、第1及び第2のアンテナ端子ANT1、ANT2、差動の送信端子Tx、第1の受信端子Rx1、及び第2の受信端子Rx2、並びにスイッチング回路DP3Tを有する。スイッチング回路DP3Tは、電源端子Va1、Va2、Vt、Vrに供給される電圧に応じて、所望の信号経路の接続/非接続を切り替える。また、電源端子Vcc1、Vcc2、Vb、Vatt、VbL1、VbL2、VcLに供給される電圧に応じて、高周波増幅回路HPA、低雑音増幅回路LNA1、LNA2がON/OFFされる。
【0004】
当該高周波回路は、これらの電源端子に供給される電圧の組み合わせに応じて、例えば、送受信動作の切り替え、及び送信動作における最適アンテナの選択(いわゆる送信ダイバーシティ動作)を行う。
【0005】
また、特許文献1には、印加する電圧の高/低が常に同じ電圧を供給するための電源端子は共通化(共用)できること、及び共用により電源端子数や電源ラインを少なくでき、回路部品の構造の簡素化、小型化が行いやすくなることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2011/061946号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電源端子や電源配線をただ共用しただけでは、共用した電源端子や電源配線を介したノイズの回り込みが懸念される。
【0008】
そこで、本発明は、電源端子や電源配線を複数の回路への電源供給に共用しつつ、共用した電源端子や電源配線を介して回り込むノイズを抑制できる高周波モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る高周波モジュールは、基板と、前記基板上に配置され、電源から電力供給を受けるための受電端子と、前記基板上に配置された増幅回路と、前記基板上に配置され、帯域が異なる複数の信号を切り替えて前記増幅回路へ出力するスイッチ回路と、前記受電端子から前記スイッチ回路の電源端子に至る第1の導電経路と、前記第1の導電経路上の分岐点から前記増幅回路の電源端子に至る第2の導電経路と、前記第1の導電経路及び前記第2の導電経路の少なくとも一方から分岐し、グランドに至る第3の導電経路と、前記第3の導電経路に挿入されたコンデンサと、を備え、前記第2の導電経路の第2インダクタンスは、前記第1の導電経路の前記分岐点から前記スイッチ回路の電源端子に至る専有部分の第1インダクタンスより大きい。
【0010】
この構成によれば、前記受電端子で受け取った電源電圧を、前記第1の導電経路の前記受電端子から前記分岐点に至る部分を共用して、前記増幅回路と前記スイッチ回路とに供給している。そのため、受電端子数の削減や導電経路の単純化は実現されるものの、前記スイッチ回路のノイズが、前記第1及び第2の導電経路を通って、前記増幅回路へ回り込む懸念が生じる。この懸念に対し、前記第2の導電経路の前記第2インダクタンスを、前記第1の導電経路の前記分岐点から前記スイッチ回路の電源端子に至る専有部分の前記第1インダクタンスより大きく設けている。これにより、前記スイッチ回路から、前記第1及び第2の導電経路を通って、前記増幅回路へ回り込むノイズは、前記第2の導電経路で減衰される。その結果、電源端子や電源配線を複数の回路への電源供給に共用しつつ、共用した電源端子や電源配線を介して回り込むノイズを抑制できる高周波モジュールが得られる。
【0011】
さらには、前記コンデンサによって、電源ノイズが前記増幅回路及び前記スイッチ回路に及ぼす影響が低減されるので、優れたノイズ特性を持つ高周波モジュールが得られる。
【0012】
また、前記第1の導電経路及び前記第2の導電経路は、第1の配線導体及び第2の配線導体でそれぞれ構成され、前記第2の配線導体の長さは、前記第1の配線導体の前記分岐点から前記スイッチ回路の前記電源端子に至る専有部分の長さより長くてもよい。
【0013】
この構成によれば、前記第2の配線導体及び前記第1の配線導体の専有部分のそれぞれの単位長あたりのインダクタンスの値が略等しいことを前提としたとき、前記第2インダクタンスを前記第1インダクタンスよりも大きく構成することができる。
【0014】
また、前記第1の導電経路は、第1の配線導体で構成され、前記第2の導電経路は、第2の配線導体と、当該第2の配線導体に挿入されたインダクタ素子とで構成されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、前記インダクタ素子のインダクタンスに応じて、前記第2インダクタンスを前記第1インダクタンスよりも大きく構成することができる。
【0016】
また、前記スイッチ回路と前記増幅回路とは、単一の集積回路チップ内に設けられ、前記スイッチ回路の電源端子は前記集積回路チップの第1の電源端子であり、前記増幅回路の電源端子は、前記集積回路チップの第2の電源端子であってもよい。
【0017】
この構成によれば、前記スイッチ回路と前記増幅回路とを単一の集積回路チップで構成するので、高周波モジュールを小型化できる。
【0018】
また、前記高周波モジュールは、前記基板上に配置された分波回路と、前記スイッチ回路から前記分波回路に至る第4の導電経路と、をさらに備え、前記基板を平面視したとき、前記第4の導電経路は、前記第1の導電経路、前記第2の導電経路、及び前記第3の導電経路のいずれの1つとも交差しないとしてもよい。
【0019】
この構成によれば、前記基板の平面視において、信号の経路である前記第4の導電経路が、電源の経路である前記第1、第2、第3の導電経路のいずれとも交差しないので、高周波モジュールのノイズ特性をさらに向上できる。
【0020】
また、前記コンデンサは、セラミックコンデンサであってもよい。
【0021】
この構成によれば、前記コンデンサに、一般的に容量あたりの体積が小さいセラミックコンデンサを採用するので、高周波モジュールを小型化できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る高周波モジュールによれば、電源端子や電源配線を複数の回路への電源供給に共用しつつ、共用した電源端子や電源配線を介して回り込むノイズを抑制できる高周波モジュールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施の形態1に係る高周波モジュールの機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る高周波モジュールの要部の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図3】実施の形態1に係る高周波モジュールにおける導電経路の配置例を示す平面図である。
図4】実施の形態1に係る高周波モジュールにおける導電経路の配置例を示す断面図である。
図5】実施の形態1の変形例に係る高周波モジュールの要部の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図6】実施の形態2に係る通信装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図7】従来例に係る高周波回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面に示される構成要素の大きさ又は大きさの比は、必ずしも厳密ではない。
【0025】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る高周波モジュールは、例えば、マルチバンド(複数の周波数帯域)/マルチモード(複数の無線通信規格)に対応する通信装置のフロントエンド回路に用いられる複合部品である。当該高周波モジュールは、互いに異なるバンド/モードの高周波(RF)信号を処理する複数の信号経路を有し、信号経路の接続/非接続の切り替えにより、所望のバンド/モードのRF信号を処理する。
【0026】
図1は、実施の形態1に係る高周波モジュールの機能的な構成の一例を示すブロック図である。図1に示される高周波モジュール100は、異なる3つのバンドBand A、Band B、Band Cの中から選択される1つの選択バンドのRF信号を処理する。3つのバンドのそれぞれは、異なる無線通信規格に対応するバンドであってもよい。各バンドでは、送信用のサブバンドと受信用のサブバンドとを用いて、周波数分割による全二重通信が行われる。
【0027】
高周波モジュール100は、電力増幅器(PA)111、送信スイッチ112、低雑音増幅器(LNA)121、受信スイッチ122、バンドごとのデュプレクサ131、132、133、アンテナスイッチ134、電源供給回路140を備える。
【0028】
PA111は、RF信号入力端子101で受信した送信RF信号を増幅し、送信スイッチ112へ送信する。
【0029】
送信スイッチ112は、PA111から受信した送信RF信号を、図示していない制御信号に従って、選択バンドの信号経路へ出力する。
【0030】
LNA121は、受信スイッチ122から受信した受信RF信号を増幅し、RF信号出力端子102へ出力する。
【0031】
受信スイッチ122は、デュプレクサ131、132、133からそれぞれ受信RF信号を受信する。受信スイッチ122は、受信した受信RF信号のうち、図示していない制御信号に従って、選択バンドの受信RF信号をLNA121へ出力する。
【0032】
デュプレクサ131、132、133は、バンドごとに設けられ、当該バンド内の送信サブバンドの送信RF信号と受信サブバンドの受信RF信号とを混合/分離する。
【0033】
アンテナスイッチ134は、図示していない制御信号に従って、選択バンドの信号経路と、アンテナ端子103とを接続する。
【0034】
受電端子104及びグランド端子105は、図示していない電源回路から、電源電圧及びグランド電圧をそれぞれ受け取る。
【0035】
電源供給回路140は、単一の受電端子104で受け取った電源電圧を、LNA121及び受信スイッチ122へ供給する回路である。なお、PA111、送信スイッチ112、アンテナスイッチ134への電源供給回路の図示は省略しているが、電源供給回路140と同様の電源供給回路が利用可能である。
【0036】
この構成において、LNA121は増幅回路の一例であり、受信スイッチ122はスイッチ回路の一例である。また、デュプレクサ131、132、133の各々は、分波回路の一例である。
【0037】
次に、高周波モジュール100の電源供給回路140を含む要部について説明する。
【0038】
図2は、高周波モジュール100の要部の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図2の例において、LNA121及び受信スイッチ122は、単一の集積回路(IC)チップ120内に設けられる。ICチップ120は、受信スイッチ122の電源端子である電源端子126と、LNA121の電源端子である電源端子127とを有する。
【0039】
電源供給回路140は、受電端子104から受信スイッチ122の電源端子126に至る第1の導電経路141と、第1の導電経路141上の分岐点143からLNA121の電源端子127に至る第2の導電経路142とを有する。ここで、第2の導電経路142の第2インダクタンスL2が、第1の導電経路141の分岐点143からスイッチ回路の電源端子126に至る専有部分の第1インダクタンスL1より大きくなるように、第1及び第2の導電経路141、142は設けられる。
【0040】
また、電源供給回路140は、第1の導電経路141及び第2の導電経路142の少なくとも一方(図2の例では、第1の導電経路141)から分岐し、グランドに至る第3の導電経路145と、第3の導電経路145に挿入されたコンデンサ144とを有する。
【0041】
また、高周波モジュール100は、第4の導電経路123、124、125を有する。第4の導電経路123、124、125は、受信スイッチ122と、デュプレクサ131、132、133(図2では示さず)とをそれぞれ接続する。
【0042】
この構成によれば、受電端子104で受け取った電源電圧を、第1の導電経路141の受電端子104から分岐点143に至る部分を共用して、LNA121と受信スイッチ122とに供給している。また、第2の導電経路142の第2インダクタンスL2を、第1の導電経路141の分岐点143から受信スイッチ122の電源端子126に至る専有部分の第1インダクタンスL1より大きく設けている。
【0043】
これにより、受信スイッチ122から、第1及び第2の導電経路141、142を通って、LNA121へ回り込むノイズは、第2の導電経路142で減衰される。その結果、受電端子104及び第1の導電経路141の一部を、LNA121及び受信スイッチ122への電源供給に共用しつつ、受信スイッチ122からLNA121へ回り込むノイズが抑制される。
【0044】
さらには、コンデンサ144によって、電源ノイズがLNA121及び受信スイッチ122に及ぼす影響が低減されるので、優れたノイズ特性を持つ高周波モジュール100が得られる。
【0045】
次に、図2の機能構成に対応する高周波モジュール100の構造(特には、導電経路の配置)について説明する。
【0046】
図3及び図4は、高周波モジュール100の構造の一例を示す平面図及び断面図である。図4は、図3のIV−IV線を矢印方向に見た断面に相当するが、理解の便宜のため、別断面に位置する構成要素も適宜図示している。
【0047】
高周波モジュール100は、基板150上に構成される。図3及び図4の例において、基板150は多層配線基板である。
【0048】
基板150の一方主面には、LNA121及び受信スイッチ122を含むICチップ120、デュプレクサ131、132、133、並びにコンデンサ144が面実装されている。また、基板150の他方主面には、受電端子104及びグランド端子105を含む複数の表面電極が設けられている。高周波モジュール100は、当該複数の表面電極を介して、プリント配線基板などのマザー基板に実装される。
【0049】
基板150の内層には、グランドプレーンとしての面内導体1462が設けられている。面内導体1462は、層間導体1461でグランド端子105に接続されている。
【0050】
第1の導電経路141は、層間導体1411、1413及び面内導体1412で構成される。
【0051】
層間導体1411の一端は、受電端子104に接続されている。層間導体1413の一端は、ICチップ120に設けられた受信スイッチ122の電源端子126に接続されている。
【0052】
第2の導電経路142は、面内導体1421及び層間導体1422で構成される。
【0053】
面内導体1421の一端は、面内導体1412の分岐点143に接続されている。層間導体1422の一端は、ICチップ120に設けられたLNA121の電源端子127に接続されている。
【0054】
面内導体1412、1421は分岐点143を含む単一の導体箔であってもよく、その場合、分岐点143を境として、当該導体箔の一方部分が面内導体1412であり、他方部分が面内導体1421である。
【0055】
第3の導電経路145は、層間導体1451、1452で構成される。層間導体1451の一端は、面内導体1412に接続され、他端は、コンデンサ144の一端に接続されている。層間導体1452の一端は、コンデンサ144の他端に接続され、他端は、面内導体1462に接続されている。層間導体1452と面内導体1412とは、別断面にあり、接続していない。
【0056】
第4の導電経路123、124、125は、基板150に設けられる面内導体1231、1241、1251と層間導体(図示せず)とで、それぞれ構成される。第4の導電経路123、124、125は、デュプレクサ131、132、133から受信スイッチ122を含むICチップ120へ、バンドごとの受信RF信号を伝達する。
【0057】
上述のように配置された導電経路によって、図2に示される高周波モジュール100の要部が構成される。
【0058】
図3及び図4の例では、層間導体1411、1413及び面内導体1412が、第1の導電経路141を構成する第1の配線導体に対応する。第1の配線導体の分岐点143から受信スイッチ122の電源端子126に至る専有部分の長さは、面内導体1412の分岐点143から層間導体1413に至る部分の長さと層間導体1413の高さとの和で表される。
【0059】
また、面内導体1421及び層間導体1422が、第2の導電経路142を構成する第2の配線導体に対応する。第2の配線導体の長さは、面内導体1421の長さと層間導体1422の高さとの和で表される。
【0060】
なお、一般に、層間導体の高さは面内導体の長さに比べて十分に小さいので、層間導体の高さを無視し、面内導体の長さのみで配線導体の長さを表してもよい。
【0061】
ここで、第2の配線導体の長さは、第1の配線導体の専有部分の長さより長い。つまり、第2の配線導体及び第1の配線導体の専有部分のそれぞれの単位長あたりのインダクタンスの値が略等しいことを前提としたとき、第2の導電経路142の第2インダクタンスL2を、第1の導電経路141の専有部分の第1インダクタンスL1より大きく構成することができる。
【0062】
また、図3に示すように、基板150の平面視において、受信RF信号の経路である第4の導電経路123、124、125が、電源の経路である第1、第2、第3の導電経路141、142、145のいずれとも交差していない。これにより、第1、第2、第3の導電経路141、142、145から第4の導電経路123、124、125へ回り込むノイズが低減するので、高周波モジュール100のノイズ特性が向上する。
【0063】
なお、上記では、第2の導電経路142の第2インダクタンスL2を、第1の導電経路141の専有部分の第1インダクタンスL1より大きく構成するために、第2の配線導体の長さを第1の配線導体の専有部分の長さより長く設けたが、この例には限られない。
【0064】
例えば、図示は省略するが、第2の導電経路142に、インダクタ素子を挿入することによって、第2インダクタンスL2を、第1インダクタンスL1より大きく構成してもよい。この場合、第1の導電経路141は、前述と同様、第1の配線導体で構成され、第2の導電経路142は、第2の配線導体と、当該第2の配線導体に挿入されたインダクタ素子とで構成される。
【0065】
この構成によれば、インダクタ素子のインダクタンスに応じて、第2インダクタンスL2を第1インダクタンスL1より大きく構成することができる。
【0066】
次に、高周波モジュールの変形例について説明する。
【0067】
図5は、変形例に係る高周波モジュール100aの要部の機能的な構成の一例を示すブロック図である。高周波モジュール100aは、図2の高周波モジュール100と比べて、電源供給回路140aが変更される。電源供給回路140aには、第5の導電経路147と、第5の導電経路147に挿入されたコンデンサ146とが追加される。
【0068】
これにより、コンデンサ144、146の双方によって、電源ノイズがLNA121及び受信スイッチ122に及ぼす影響が低減されるので、さらに優れたノイズ特性を持つ高周波モジュール100aが得られる。
【0069】
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1及びその変形例に係る高周波モジュールを備える通信装置について説明する。
【0070】
図6は、実施の形態2に係る通信装置1の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図6に示されるように、通信装置1は、フロントエンド回路10、RF信号処理回路20、及びベースバンド信号処理回路30を備える。
【0071】
フロントエンド回路10は、RF信号処理回路20で生成された送信RF信号を電力増幅器により増幅してアンテナ40へ供給し、アンテナ40で受信された受信RF信号を低雑音増幅器により増幅してRF信号処理回路20へ供給する。フロントエンド回路10は、実施の形態1及びその変形例に係る高周波モジュールで構成される。
【0072】
RF信号処理回路20は、ベースバンド信号処理回路30で生成された送信信号を送信RF信号に変換し、フロントエンド回路10へ供給する。当該変換は、信号の変調及びアップコンバートを含んでもよい。また、フロントエンド回路10から受信した受信RF信号を受信信号に変換し、ベースバンド信号処理回路30へ供給する。当該変換は、信号の復調及びダウンコンバートを含んでもよい。RF信号処理回路20は、高周波集積回路(RFIC)チップで構成されてもよい。
【0073】
ベースバンド信号処理回路30は、応用装置/応用ソフトウェアで生成された送信データを送信信号に変換し、RF信号処理回路20へ供給する。当該変換は、データの圧縮、多重化、誤り訂正符号の付加を含んでもよい。また、RF信号処理回路20から受信した受信信号を受信データに変換し、応用装置/応用ソフトウェアへ供給する。当該変換は、データの伸長、多重分離、誤り訂正を含んでもよい。ベースバンド信号処理回路30は、ベースバンド集積回路(BBIC)チップで構成されてもよい。
【0074】
応用装置/応用ソフトウェアは、送信データ及び受信データを用いて、音声通話や画像表示などの応用動作を行う。
【0075】
通信装置1によれば、フロントエンド回路10に、実施の形態1及びその変形例に係る高周波モジュールを用いることにより、電源端子や電源配線を複数の回路への電源供給に共用しつつ、共用した電源端子や電源配線を介して回り込むノイズを抑制できる。
【0076】
以上、本発明の実施の形態に係る高周波モジュール及び通信装置について説明したが、本発明は、個々の実施の形態には限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0077】
例えば、図1の高周波モジュール100では、LNA121の出力を単一のRF信号出力端子102に出力しているが、RF信号出力端子102は1つには限られない。
【0078】
例えば、図示はしていないが、複数のRF信号出力端子と出力スイッチとを設け、LNA121の出力を、当該出力スイッチで、当該複数のRF信号出力端子に切り替えて出力してもよい。
【0079】
この場合、電源供給回路140は、受信スイッチ122に代えて当該出力スイッチとLNA121とに電源電圧を供給する。当該出力スイッチからLNA121へ回り込むノイズは、実施の形態での説明と同様にして、電源供給回路140で減衰される。
【0080】
その結果、電源端子や電源配線を複数の回路への電源供給に共用しつつ、共用した電源端子や電源配線を介して回り込むノイズを抑制できる高周波モジュールが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、高周波モジュールとして、各種の通信装置に広く利用できる。
【符号の説明】
【0082】
1 通信装置
10 フロントエンド回路
20 RF信号処理回路
30 ベースバンド信号処理回路
40 アンテナ
100、100a 高周波モジュール
101 RF信号入力端子
102 RF信号出力端子
103 アンテナ端子
104 受電端子
105 グランド端子
111 PA
112 送信スイッチ
120 ICチップ
121 LNA
122 受信スイッチ
123、124、125 第4の導電経路
126 受信スイッチの電源端子
127 LNAの電源端子
131、132、133 デュプレクサ
134 アンテナスイッチ
140、140a 電源供給回路
141 第1の導電経路
142 第2の導電経路
143 分岐点
144、146 コンデンサ
145 第3の導電経路
147 第5の導電経路
150 基板
1231、1412、1421、1462 面内導体
1411、1413、1422、1451、1452、1461 層間導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7