(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格を有さない。
【0014】
[第1実施形態:画像形成装置10の構成]
第1実施形態に係るトナー搬送装置7を備える画像形成装置10は、電子写真方式でシートにトナー9の画像を形成する装置である。前記シートは、用紙および封筒などのシート状の画像形成媒体である。
【0015】
画像形成装置10は、本体部1内にシート供給部2、シート搬送部3、画像形成部4、トナー補給ユニット5およびトナー回収ユニット6などを備える。画像形成部4は、作像部4x、光走査ユニット40、シート転写装置48および定着装置49などを含む。
【0016】
画像形成部4は、前記シートにトナー像を形成する画像形成処理を実行する。例えば、画像形成部4が、非磁性のトナー9およびキャリアを含む二成分現像剤を用いて前記画像形成処理を実行することが考えられる。前記キャリアは、磁性を有する粒状物である。また、トナー9が磁性トナーであることも考えられる。
【0017】
図1に示される画像形成装置10は、タンデム式画像形成装置であり、カラープリンターである。そのため、画像形成部4は、複数の色のトナー9に対応した複数の作像部4xおよび複数のトナー補給ユニット5と、中間転写ベルト46と、ベルトクリーニング装置47とを備える。
【0018】
作像部4x各々は、ドラム状の感光体41、帯電装置42、現像装置43、ベルト転写装置44およびドラムクリーニング装置45などを備える。
【0019】
シート供給部2は、前記シートをシート搬送路30へ送り出し、シート搬送部3は、前記シートをシート搬送路30に沿って搬送する。トナー補給ユニット5は、現像装置43に未使用のトナー9を補給する。
【0020】
ドラム状の感光体41が回転し、帯電装置42が感光体41の表面を帯電させる。さらに、光走査ユニット40が、レーザー光の走査によって感光体41の表面に静電潜像を書き込む。
【0021】
また、現像装置43が、感光体41にトナー9を供給することにより、前記静電潜像を前記トナー像として現像する。そして、ベルト転写装置44が、感光体41表面の前記トナー像を中間転写ベルト46に転写する。これにより、重畳された複数の色の前記トナー像であるカラートナー像が、中間転写ベルト46の表面に形成される。
【0022】
ドラムクリーニング装置45は、前記トナー像が中間転写ベルト46に転写された後の感光体41表面に残存するトナー9を感光体41から除去する。
【0023】
中間転写ベルト46は、複数の色の前記トナー像を担持して回転する。シート転写装置48は、中間転写ベルト46が担持する前記トナー画像を前記シートに転写する。定着装置49は、前記シートに転写された前記トナー像を加熱することにより、前記トナー像を前記シートに定着させる。
【0024】
本実施形態において、感光体41および中間転写ベルト46は、それぞれ前記トナー像を担持して回転する像担持体の一例である。
【0025】
ベルトクリーニング装置47は、前記トナー像が前記シートに転写された後の中間転写ベルト46に残存するトナー9を除去する。本実施形態において、ベルトクリーニング装置47が、トナー搬送装置7を含む。
【0026】
[ベルトクリーニング装置47の構成]
図2〜4に示されるように、ベルトクリーニング装置47は、ケーシング70、クリーニングローラー471、搬送スクリュー71および一対の軸受部72a,72bを備える。
【0027】
例えば、ケーシング70は、一体に組み合わされた複数の合成樹脂のモールド部材によって構成される。また、搬送スクリュー71が、一体成形された合成樹脂のモールド部材であることが考えられる。
【0028】
図2〜4に示されるように、ケーシング70は、内部にトナー搬送路700を形成する。トナー搬送路700は、始端部から終端部まで直線に沿った空洞である。
図4に示されるように、ケーシング70は、トナー搬送路700の前記終端部寄りの位置で下方に開口するトナー排出口70aを有する。
【0029】
クリーニングローラー471は、中間転写ベルト46の表面に接触する状態で回転することにより、中間転写ベルト46からトナー9を擦り取る。中間転写ベルト46から擦り取られたトナー9は、ケーシング70内のトナー搬送路700へ落下する。
【0030】
ケーシング70は、トナー搬送路700を形成する部材であるとともに、クリーニングローラー471を覆うカバー部材でもある。
【0031】
一対の軸受部72a,72bは、それぞれトナー搬送路700の前記始端部および前記終端部に設けられている。搬送スクリュー71は、一対の軸受部72a,72bによって両端部が支持された軸部711と、軸部711から螺旋状に張り出した羽根部712とを有する。
【0032】
搬送スクリュー71における羽根部712が形成された部分は、トナー搬送路700内に順搬送方向D1に沿って配置されている。順搬送方向D1は水平な方向または概ね水平な横方向である。
【0033】
搬送スクリュー71は、予め定められた順回転方向R0へ回転することによってトナー搬送路700内のトナー9を前記始端部から前記終端部へ向かう順搬送方向D1へ搬送する。換言すれば、羽根部712は、搬送スクリュー71が順回転方向R0へ回転するときに、トナー9を順搬送方向D1へ搬送できる螺旋方向に沿って形成されている。
【0034】
図3〜5において、順搬送方向D1と順搬送方向D1に対し反対の方向である逆搬送方向D2とが、矢印で示されている。
【0035】
搬送スクリュー71によって搬送されるトナー9は、トナー排出口70aを通じてケーシング70から排出され、トナー回収ユニット6に連通する不図示の中間搬送路へ落下する。使用済みのトナー9である廃トナーは、前記中間搬送路に沿ってトナー回収ユニット6へ搬送され、トナー回収ユニット6に回収される。なお、ケーシング70から排出されたトナー9が、トナー回収ユニット6へ直接落下することも考えられる。
【0036】
本実施形態において、ケーシング70、搬送スクリュー71および一対の軸受部72a,72bが、それぞれトナー搬送装置7の一部である。トナー搬送装置7は、前記像担持体の一例である中間転写ベルト46から除去されたトナー9を搬送する。
【0037】
以下の説明において、一対の軸受部72a,72bの一方を始端側軸受部72aと称し、他方を終端側軸受部72bと称する。
【0038】
始端側軸受部72aは、トナー搬送路700の前記始端部側において、軸部711の一方の端部である軸始端部71aを回転可能に支持する(
図3参照)。同様に、終端側軸受部72bは、トナー搬送路700の前記終端部側において、軸部711の他方の端部である軸終端部71bを回転可能に支持する(
図4参照)。
【0039】
軸始端部71aの一部は、始端側軸受部72aを貫通してケーシング70の外側へ突き出ている。軸始端部71aにおけるケーシング70の外側へ突き出た部分には、ギア75が取り付けられている。モーターおよびギア機構を含む不図示の駆動機構が、ギア75に回転力を伝達することにより、搬送スクリュー71が順回転方向R0へ回転する。
【0040】
ところで、終端側軸受部72bへのトナー9の侵入を妨げるフランジ部が、軸部711における軸終端部71bの付近に形成される場合がある。しかしながら、トナー搬送路700の前記終端部において、トナー9が、軸部711から張り出して形成された前記フランジ部を乗り越えて終端側軸受部72bへ侵入することを完全に防ぐことはできない。
【0041】
また、トナー9が前記フランジ部と終端側軸受部72bとの間に長期間滞留すると、滞留したトナー9が、搬送スクリュー71の軸部711、前記フランジ部またはケーシング70の内面に対し、トナー9がこれらの部材と擦れることによって生じる摩擦熱によって融着するおそれがある。
【0042】
トナー搬送装置7は、トナー搬送路700の前記終端部において、トナー9が滞留することによってトナー9が搬送スクリュー71またはケーシング70の内面などに融着することを防止できる構造を有している。以下、その構造について説明する。
【0043】
[トナー搬送装置7の構造]
図4〜6に示されるように、トナー搬送装置7は、終端キャップ部材701および弾性鍔部74をさらに備える。例えば、終端キャップ部材701は、一体成形された合成樹脂のモールド部材である。
【0044】
終端キャップ部材701は、トナー搬送路700の前記終端部におけるケーシング70の開口70cを塞ぐ部材である。終端キャップ部材701は、前述した終端側軸受部72bおよび後述する終端空洞形成部73を有する。
【0045】
終端側軸受部72bは、軸終端部71bが挿入された凹部であり、その凹部は、終端キャップ部材701の内側に形成されている。
【0046】
従って、軸終端部71bと終端側軸受部72bとの間において、トナー搬送路700とケーシング70の外側とに連通する隙間は生じない。従って、トナー9が、軸終端部71bと終端側軸受部72bとの間からケーシング70の外へ漏れることがない。
【0047】
終端空洞形成部73は、ケーシング70におけるトナー排出口70aの順搬送方向D1の下流側の縁70bと終端側軸受部72bとの間の部分である。終端空洞形成部73は、内部に断面が円形の空洞を形成している。
【0048】
弾性鍔部74は、軸部711に取り付けられたエラストマーまたはその他のゴムなどの弾性部材である。即ち、軸部711は硬質の部材であり、弾性鍔部74は、軸部711よりも柔軟な弾性部材である。軸部711を含む搬送スクリュー71と弾性鍔部74とは材質が異なる。
【0049】
例えば、弾性鍔部74は、接着剤によって軸部711に接着されている。また、弾性鍔部74が、軸部711に形成された凸部または凹部との嵌め合い構造によって軸部711に取り付けられることも考えられる。また、弾性鍔部74が、二色成形によって軸部711と合体した状態に成形された部材であることも考えられる。
【0050】
弾性鍔部74は、軸部711から円盤状に張り出して形成されている。本実施形態において、軸終端部71bは、軸部711における弾性鍔部74が取り付けられた部分よりも順搬送方向D1側の部分である(
図4,5参照)。
【0051】
弾性鍔部74は、終端空洞形成部73の内面に沿う円形の外縁74bを有する。以下の説明において、弾性鍔部74における順搬送方向D1側の側面のことを下流側面74cと称する。下流側面74cは、軸部711寄りの内輪部74aから外縁74bへ向かって逆搬送方向D2へ傾斜して形成されている。
【0052】
より具体的には、弾性鍔部74の下流側面74cは、軸部711を中心として内輪部74aから外縁74bへ向かって逆搬送方向D2へ傾斜した円錐面に沿って形成されている。
【0053】
また、
図5に示されるように、軸終端部71bに、螺旋状の溝71cが形成されている。搬送スクリュー71が順回転方向R0へ回転することにより、螺旋状の溝71cが形成された軸終端部71bが、周囲のトナー9を逆搬送方向D2へ搬送する。
【0054】
換言すれば、溝71cは、搬送スクリュー71が順回転方向R0へ回転するときに、トナー9を逆搬送方向D2へ搬送できる螺旋方向に沿って形成されている。
【0055】
トナー搬送装置7において、弾性鍔部74は、搬送スクリュー71によって順搬送方向D1へ搬送されるトナー9が終端側軸受部72bへ侵入することを妨げる。これにより、トナー9の大部分は、ケーシング70からトナー排出口70aを通じて排出される。
【0056】
但し、トナー9の一部は、弾性鍔部74を乗り越えて終端空洞形成部73内および終端側軸受部72b内へ侵入する。しかしながら、弾性鍔部74の下流側面74cが、内輪部74aから外縁74bへ向かって逆搬送方向D2へ傾斜して形成されているため、終端側軸受部72b側へ侵入したトナー9は、弾性鍔部74の外縁74b側へ案内される。
【0057】
なお、弾性鍔部74は、トナー排出口70aよりも順搬送方向D1側に位置するため、弾性鍔部74がトナー9から受ける順搬送方向D1の圧力はごく小さい。そのため、弾性鍔部74は、過剰に薄い形状でなければ、トナー9から受ける圧力によって順搬送方向D1へ撓むことはない。
【0058】
トナー9が、終端空洞形成部73内および終端側軸受部72b内に溜まると、弾性鍔部74が、トナー9から受ける圧力によって逆搬送方向D2側へ撓む。これにより、トナー9が、撓んだ弾性鍔部74の外縁74bと終端空洞形成部73との間の隙間から、トナー排出口70a側へ戻る。
【0059】
従って、トナー9は、終端空洞形成部73内および終端側軸受部72b内に長期間滞留しない。また、トナー9が終端空洞形成部73内および終端側軸受部72b内で圧縮されることを回避できる。
【0060】
また、
図4,6に示されるように、終端空洞形成部73の内面形状は、逆搬送方向D2へ向かって徐々に口径が広がる円錐面に沿う形状である。そのため、終端空洞形成部73は、その内部に逆搬送方向D2へ円錐状に拡がる空洞を形成している。
【0061】
また、
図4に示されるように、終端空洞形成部73の内面の下部が、終端側軸受部72b側からトナー排出口70aへ向かって下る傾斜面73aである。
【0062】
従って、トナー9が、撓んだ弾性鍔部74の外縁74bと終端空洞形成部73との間の隙間において、傾斜面73a上を滑ってトナー排出口70aへ落下しやすい。
【0063】
なお、終端空洞形成部73の内面形状が、逆搬送方向D2へ向かって徐々に口径が広がる円錐面に沿う形状である。そのため、終端キャップ部材701が、終端側軸受部72bを中心とする周方向においてどのような向きでケーシング70に装着されても、終端空洞形成部73の内面の下部は、終端側軸受部72b側からトナー排出口70aへ向かって下る傾斜面73aとなる。
【0064】
また、螺旋状の溝71cが形成された軸終端部71bが、周囲のトナー9を逆搬送方向D2へ搬送する。軸終端部71bは、トナー9が弾性鍔部74の外縁74bと終端空洞形成部73との間の隙間からトナー排出口70a側へ戻る現象を促進する。
【0065】
また、
図4に示されるように、弾性鍔部74は、軸部711寄りの内輪部74aから外縁74bへ向かって徐々に厚みが小さく形成されている。この場合、弾性鍔部74は、外縁74b寄りの部分において撓みやすい。即ち、弾性鍔部74において、外縁74b寄りの部分の方が軸部711寄りの部分よりも柔軟である。
【0066】
従って、トナー9が終端空洞形成部73内および終端側軸受部72b内に溜まった場合に、弾性鍔部74の外縁74b寄りの部分が、トナー9から受ける圧力によって逆搬送方向D2側へ撓みやすい。そのため、トナー9が、撓んだ弾性鍔部74の外縁74bと終端空洞形成部73との間の隙間からトナー排出口70a側へ戻る現象が促進される。
【0067】
また、軸終端部71bの形状は、四角柱に螺旋状の溝71cが刻まれた形状である(
図5,7参照)。これにより、
図7に示されるように、軸終端部71bと終端側軸受部72bとの間の接触面積を極力小さくすることができる。その結果、終端側軸受部72bへ侵入したトナー9が、軸終端部71bと終端側軸受部72bとの間で磨り潰されることによって終端側軸受部72bなどに融着する事態を極力回避することができる。
【0068】
[第2実施形態:トナー搬送装置7X]
次に、
図8を参照しつつ、第2実施形態に係るトナー搬送装置7Xについて説明する。トナー搬送装置7Xは、トナー搬送装置7における弾性鍔部74が、側面形状の異なる弾性鍔部74Xに置き換えられた構造を有している。
【0069】
弾性鍔部74Xの下流側面74cも、弾性鍔部74の下流側面74cと同様に、軸部711寄りの部分から外縁74bへ向かって逆搬送方向D2へ傾斜して形成されている。さらに、弾性鍔部74Xは、内輪部74aから外縁74bへ向かって徐々に厚みが小さく形成されている。
【0070】
但し、弾性鍔部74の下流側面74cにおいて、外縁74b寄りの外側部分74cyが軸部711寄りの内側部分74cxよりも急な勾配で傾斜して形成されている。
【0071】
トナー搬送装置7Xが採用されれば、弾性鍔部74に許容される寸法の範囲内において、弾性鍔部74における内輪部74a側の一部の厚みを十分に確保しつつ、外縁74b寄りの部分の厚みをより小さくすることができる。この場合、弾性鍔部74Xにおいて、外縁74b寄りの部分がより撓みやすい寸法を採用することができる。
【0072】
従って、トナー9が、撓んだ弾性鍔部74の外縁74bと終端空洞形成部73との間の隙間からトナー排出口70a側へ戻る現象が促進される。
【0073】
[応用例]
以上に示されたトナー搬送装置7,7Xにおいて、軸終端部71bの形状が、四角柱以外の多角柱に螺旋状の溝71cが刻まれた形状であることが考えられる。例えば、軸終端部71bの形状が、三角柱に螺旋状の溝71cが刻まれた形状、または、五角柱に螺旋状の溝71cが刻まれた形状などであることが考えられる。
【0074】
また、トナー搬送装置7,7Xが、ドラムクリーニング装置45に適用されることも考えられる。この場合、トナー搬送装置7,7Xは、感光体41から除去されたトナー9を搬送する。
【0075】
また、トナー搬送装置7,7Xが、トナー補給ユニット5に適用されることも考えられる。この場合、トナー搬送装置7,7Xは、現像装置43に供給されるトナー9を搬送する。
【0076】
なお、本発明に係るトナー搬送装置および画像形成装置は、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された実施形態及び応用例を自由に組み合わせること、或いは実施形態及び応用例を適宜、変形する又は一部を省略することによって構成されることも可能である。