特許第6601368号(P6601368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6601368
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20191028BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   G03G15/08 320
   G03G15/00 303
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-223483(P2016-223483)
(22)【出願日】2016年11月16日
(65)【公開番号】特開2018-81206(P2018-81206A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2018年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】大久保 尭洋
【審査官】 三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−210303(JP,A)
【文献】 特開2006−047965(JP,A)
【文献】 特開2012−145744(JP,A)
【文献】 特開2016−012115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 15/00
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像を担持する像担持体と、
トナーとキャリアを混合してなる現像剤を収容し、前記現像剤のトナーを前記像担持体上の静電潜像に付与して、該静電潜像を現像する現像装置と、
前記現像装置にトナーを補給するトナー補給部と、
前記現像装置内の現像剤のトナー濃度を検出するトナー検出部と、
前記トナー補給部によりトナーが前記現像装置に補給された時点からの前記トナー検出部の出力がリップルを示した後、前記トナー検出部の出力が予め定められた一定範囲内の値に収束するまでに要した時間である緩和時間に基づいて、前記キャリアの劣化度を判定する制御部と、を備え
前記キャリアが劣化する以前の前記緩和時間をTs0とし、前記キャリアが劣化する以前において実際の印字率と比較されて、画像品質を保つために生産性を低下させるか否かの判定に用いられる初期追従印字率をP0とし、前記キャリアが劣化した時点での前記緩和時間をTsxとし、前記キャリアが劣化した時点において実際の印字率と比較されて、画像品質を保つために生産性を低下させるか否かの判定に用いられる補正追従印字率をPxとすると、
前記制御部は、次式(2)に基づき、前記補正追従印字率Pxを求め、
Px=(Ts0/Tsx)×P0 …(2)
前記制御部は、前記キャリアが劣化した時点において実際の印字率と前記補正追従印字率Pxを比較して、実際の印字率が前記補正追従印字率Pxよりも大きくなったときに画像品質を保つために生産性を低下させると判定し、実際の印字率が大きいほど、(i)現像剤のエイジング時間を長くする、又は(ii)印刷される記録紙の間隔を長くする制御を行う画像形成装置。
【請求項2】
前記トナー補給部によりトナーが前記現像装置に補給されてからの経過時間をtとし、前記トナー検出部の出力をyとし、定数をAとし、前記トナー検出部の出力が示す振幅が、ピーク値を示したときにおける振幅から、当該ピーク値を示したときにおける振幅の1/eに減衰するまでの時間としての緩和時間をTsとすると、
前記制御部は、前記トナー検出部の出力がピーク値及び次のピーク値となった少なくとも2つの経過時間t、該各経過時間tにおける前記トナー検出部のそれぞれの出力yを用いて、次式(1)から前記緩和時間Tsを導出し、この緩和時間Tsを前記キャリアの劣化度の指標として、前記キャリアの劣化度を判定する請求項1に記載の画像形成装置。
ln(y)=ln(A)−t/Ts …(1)
【請求項3】
前記制御部は、前記判定したキャリアの劣化度から、前記キャリアの寿命を判定する請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記判定したキャリアの劣化度に応じて、前記像担持体の表面電位を補正する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記現像装置は、前記現像剤を担持して、この現像剤を前記像担持体上の静電潜像に付与する現像剤担持体を有し、
前記制御部は、前記判定したキャリアの劣化度に基づいて、前記現像剤担持体に印加される現像バイアスを補正する請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記判定したキャリアの劣化度に基づいて、前記トナー検出部の出力を補正する請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーとキャリアを混合してなる現像剤を用いて、静電潜像を現像する画像形成装置に関し、特に、キャリアの劣化度を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、画像形成のために、トナー及びキャリアからなる現像剤を混合しつつ、現像剤中のトナーを像担持体上の静電潜像に付与して、像担持体に静電潜像を現像する。また、現像剤中のトナーが消費されて減少すると、トナーを補給する。一方、現像剤中のキャリアについては、継続して使用するため、キャリアの粒子の表面が摩耗したり小径化したりして、キャリアの劣化が進行する。このため、キャリアの劣化度に応じて、現像剤そのものの交換などが必要となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、像担持体上に静電潜像を形成し、現像装置から供給される現像剤のトナーによって静電潜像を現像して画像を形成する画像形成装置であって、静電潜像を現像してなる画像の面積率を検知して平均面積率を求めると共に、現像剤の駆動距離を検知し、これら平均面積率及び現像剤の駆動距離から現像剤のライフを決定するものが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、現像スリーブ上に存在する現像後のキャリアの静電容量値を求め、この求めた静電容量値を未使用時のキャリアの静電容量値と比較することで現像剤の劣化状態を求める画像形成装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−331719号公報
【特許文献2】特開2009−15046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、現像剤のキャリアの劣化度は、温度や湿度などの使用環境によっても大きく変化する。しかしながら、特許文献1では、キャリアに対する使用環境の影響が考慮されていないため、使用環境に応じた正確なキャリアの劣化度を知ることができない。
【0007】
また、特許文献2では、現像スリーブ上のキャリアの静電容量値を計測するために特別な装置を設ける必要があり、画像形成装置の構成の複雑化やコストの上昇を伴う。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、画像形成装置の構成の複雑化を招くことなく、現像剤中のキャリアの劣化度をより正確に判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に係る画像形成装置は、静電潜像を担持する像担持体と、トナーとキャリアを混合してなる現像剤を収容し、前記現像剤のトナーを前記像担持体上の静電潜像に付与して、該静電潜像を現像する現像装置と、前記現像装置にトナーを補給するトナー補給部と、前記現像装置内の現像剤のトナー濃度を検出するトナー検出部と、前記トナー補給部によりトナーが前記現像装置に補給された時点からの前記トナー検出部の出力がリップルを示した後、前記トナー検出部の出力が予め定められた一定範囲内の値に収束するまでに要した時間である緩和時間に基づいて、前記キャリアの劣化度を判定する制御部と、
を備え、前記キャリアが劣化する以前の前記緩和時間をTs0とし、前記キャリアが劣化する以前において実際の印字率と比較されて、画像品質を保つために生産性を低下させるか否かの判定に用いられる初期追従印字率をP0とし、前記キャリアが劣化した時点での前記緩和時間をTsxとし、前記キャリアが劣化した時点において実際の印字率と比較されて、画像品質を保つために生産性を低下させるか否かの判定に用いられる補正追従印字率をPxとすると、前記制御部は、次式(2)に基づき、前記補正追従印字率Pxを求め、Px=(Ts0/Tsx)×P0…(2)、前記制御部は、前記キャリアが劣化した時点において実際の印字率と前記補正追従印字率Pxを比較して、実際の印字率が前記補正追従印字率Pxよりも大きくなったときに画像品質を保つために生産性を低下させると判定し、実際の印字率が大きいほど、(i)現像剤のエイジング時間を長くする、又は(ii)印刷される記録紙の間隔を長くする制御を行うものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像形成装置の複雑化を招くことなく、現像剤中のキャリアの劣化度をより正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の画像形成装置の一実施形態を示す断面図である。
図2】本実施形態の画像形成装置における感光体ドラム及び現像装置等を示す断面図である。
図3】本実施形態の画像形成装置の構成を示すブロック図である。
図4】トナーが補給された時点からのトナー濃度センサーの出力値の変化を示すグラフである。
図5】印刷された記録紙の枚数に対する緩和時間の特性を示すグラフである。
図6】(A)は追従印字率を最低値の30%に固定した状態でかぶりが発生しないような印字率と生産性の関係を示すグラフであり、(B)は補正追従印字率を30%又は35%に調節した上でかぶりが発生しないような印字率と生産性の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態を示す断面図である。本実施形態の画像形成装置1は、例えば、コピー機能、プリンター機能、スキャナー機能、及びファクシミリ機能のような複数の機能を兼ね備えたMFP(複合機)である。この画像形成装置1は、画像読取部11と、画像形成部12とを備えている。
【0014】
画像読取部11は、原稿を光学的に読み取るスキャナーを有し、この原稿の画像を示す画像データを生成する。
【0015】
画像形成部12は、画像読取部11で生成された画像データによって示される画像を記録紙Pに印刷するものであり、マゼンタ用の画像形成ユニット3M、シアン用の画像形成ユニット3C、イエロー用の画像形成ユニット3Y、及びブラック用の画像形成ユニット3Bkを備えている。各画像形成ユニット3M、3C、3Y、及び3Bkのいずれにおいても、感光体ドラム4の表面を均一帯電させ、感光体ドラム4の表面を露光して、感光体ドラム4の表面に静電潜像を形成し、感光体ドラム4の表面の静電潜像をトナー像に現像して、感光体ドラム4の表面のトナー像を、1次転写ローラー6により中間転写ベルト5に転写する。これにより、カラーのトナー像(画像)が中間転写ベルト5上に形成される。このカラーのトナー像は、中間転写ベルト5と2次転写ローラー9の間のニップ域Nにおいて給紙部7から搬送路8を通じて搬送されてきた記録紙Pに2次転写される。
【0016】
この後、定着装置15で記録紙Pが加熱及び加圧されて、記録紙P上のトナー像が熱圧着により定着され、更に記録紙Pが排出ローラー対16を通じて排出トレイ17に排出される。
【0017】
また、各画像形成ユニット3M、3C、3Y、及び3Bkの上方には、トナーコンテナ18が4つ設けられている。各トナーコンテナ18は、マゼンタのトナー、シアンのトナー、イエローのトナー、ブラックのトナーをそれぞれ収納しており、これらのトナーをそれぞれの経路(図示せず)を通じて各画像形成ユニット3M、3C、3Y、及び3Bkの現像装置22(図2に示す)へと供給する。
【0018】
図2は、各画像形成ユニット3M、3C、3Y、及び3Bkにおける1組の感光体ユニット21及び現像装置22を示す断面図である。図2に示すように各画像形成ユニット3M、3C、3Y、及び3Bk毎に、感光体ユニット21、現像装置22、及び1次転写ローラー6が設けられている。感光体ユニット21には、感光体ドラム4、感光体ドラム4の表面を除電する除電部24、感光体ドラム4の表面に残留したトナーをクリーニングするクリーニング部25、感光体ドラム4の表面を均一に帯電させる帯電部26等が設けられている。また、現像装置22には、現像ローラー27、交流電圧と直流電圧を重畳した現像バイアスを現像ローラー27に印加する現像バイアス印加部29、現像剤を収容した現像剤収容部31、現像剤を循環搬送させる2本のスクリュー32、及び現像ローラー27に現像剤を供給する供給ローラー33等が設けられている。
【0019】
現像剤収容部31に収容されている現像剤は、トナーとキャリアを混合してなる二成分の現像剤である。この現像剤収容部31には、感光体ドラム4の回転軸方向(図2の紙面奥行き方向)に延びる、2本の搬送経路36が並行して形成されている。これらの搬送経路36の両端部は繋がっており、現像剤の循環搬送経路が形成されている。2本のスクリュー32は、現像剤をその循環搬送経路を通じて撹拌しつつ循環搬送し、現像剤のトナーとキャリアを混合すると共に、トナーとキャリアの撹拌によりトナーを帯電させる。
【0020】
現像ローラー27は、感光体ドラム4に接近又は接触している。この現像ローラー27の表面には、供給ローラー33を経由して、該現像ローラー27に現像剤が付与される。この現像ローラー27の表面に担持されたトナーは、現像バイアス印加部29により交流電圧及び直流電圧が重畳された現像バイアスが印加された現像ローラー27と、電位V0に帯電された感光体ドラム(特許請求の範囲における像担持体の一例)4の間の静電気力により現像ローラー27の表面から感光体ドラム4の表面へと移動して付着する。これにより、感光体ドラム4の表面上の静電潜像がトナーで現像される。更に、1次転写ローラー6には、転写バイアス電圧が印加されており、この転写バイアス電圧の印加により、感光体ドラム4の表面に担持されているトナー像を1次転写ローラー6側に引き寄せ、当該トナー像を中間転写ベルト5に転写させる。
【0021】
一方、現像装置22の現像剤収容部31には、現像剤収容部31内のトナー濃度を検出するトナー濃度センサー35(特許請求の範囲におけるトナー検出部の一例)が設けられている。このトナー濃度センサー35は、透磁率センサーであって、現像剤収容部31内の現像剤の透磁率を検出している。この検出された透磁率に基づき、トナー濃度(キャリアに対するトナーの比率。いわゆるT/C)が求められる。例えば、トナー濃度センサー35による検出範囲にある現像剤におけるキャリアの量が少ないと、高いトナー濃度が検出され、トナー濃度センサー35に対峙している現像剤におけるキャリアの量が多いと、低いトナー濃度が検出される。
【0022】
現像剤収容部31内の現像剤のトナーが消費されて、トナー濃度が低下したときには、トナー濃度センサー35の出力値に基づき、トナーコンテナ18から現像剤収容部31の循環搬送経路へとトナーが補給され、2本のスクリュー32により現像剤のトナーとキャリアが均一に混合されて、トナー濃度が元に戻される。
【0023】
図3は、画像形成装置1の主要内部構成を示す機能ブロック図である。図3に示すように画像形成装置1は、制御ユニット41、表示部42、操作部44、記憶部45、制御部51、トナー補給部47、画像読取部11、画像形成部12、及びトナー濃度センサー35などを備えている。これらの構成要素は、互いにバスを通じてデータ又は信号の送受信が可能とされている。
【0024】
表示部42は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)や有機EL(OLED:Organic Light-Emitting Diode)ディスプレイなどから構成される。
【0025】
操作部44は、テンキー、決定キー、スタートキーなどのハードキーを備えている。
【0026】
記憶部45は、RAM、大容量のHDD(Hard Disk Drive)などからなる。
【0027】
制御部51は、交流電圧の振幅VP、周波数F、及びデューティー比Duを調節し、直流電圧の値を調節して、上記現像バイアスを制御する。
【0028】
トナー補給部47は、トナーコンテナ18から現像装置22の現像剤収容部31の循環搬送経路へとトナーを補給するトナー補給機構である。トナー補給部47は、制御部51による制御で駆動される。なお、現像バイアス印加部29は、現像装置22の一部である。
【0029】
制御ユニット41は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)などから構成される。この制御ユニット41は、上記のROMまたは記憶部45に記憶された制御プログラムが上記のCPUで実行されることにより、制御部51、及び表示制御部53として機能する。なお、制御ユニット41の上記の各構成は、プログラムに基づく動作によらず、それぞれハード回路により構成されてもよい。
【0030】
制御部51は、画像形成装置1の全体的な動作制御を司る。
【0031】
表示制御部53は、表示部42を制御して、画像形成処理に必要な設定項目の入力画面、あるいは情報の入力画面などを表示させる。
【0032】
ここで、画像形成装置1の現像装置22では、現像剤中のキャリアが継続して使用されるので、キャリアの粒子の表面が摩耗したり小径化したりして、キャリアが劣化する。このため、キャリアの寿命や劣化度を判定する必要がある。
【0033】
そこで、本実施形態では、制御部51がトナー補給部47によりトナーコンテナ18から現像装置22の現像剤収容部31にトナーを補給したときに、この補給時点からのトナー濃度センサー35の出力値にリップルが生じて、この出力値のピーク値からの減衰特性に基づきキャリアの劣化度を判定する。本実施形態では、当該減衰特性がキャリアの劣化度に応じて変化することに注目している。これにより、本実施形態では、温度や湿度などの使用環境によってキャリアの劣化度が変化していても、この使用環境下で使用される実態に則してキャリアの劣化度を正確に判定可能としている。また、本実施形態では、既存のトナー濃度センサー35を用いるので、特別な装置を追加する必要がなく、画像形成装置1の構成の複雑化やコストの上昇を招くことがない。
【0034】
上記キャリアの劣化度を判定するための処理を詳細に説明する。トナーコンテナ18から現像剤収容部31へとトナーが補給されると、このトナーの補給箇所で現像剤のトナー濃度が著しく高くなって、2本のスクリュー32により、トナー濃度が著しく高くなった現像剤が循環搬送される。この現像剤がトナー濃度センサー35の配設箇所を通過すると、最初は、該現像剤の部分のトナー濃度が比較的高く、該現像剤が循環搬送経路を循環搬送されてトナー濃度センサー35の配設箇所に繰り返し到達する度に、該現像剤の部分のトナー濃度が低下して、予め定めた規定の濃度に収束する。
【0035】
トナー濃度センサー35の出力値は、その現像剤の部分の最初の通過のときに最大のピーク値に達し、2回目の通過のときに更に低いピーク値に達し、以降更に低減して、予め定められた一定範囲内の値に収束する。すなわち、トナー補給部47によりトナーが現像装置22に補給された時点からのトナー濃度センサー35の出力がリップルを示した後、トナー濃度センサー35の出力が予め定められた一定範囲内の値に収束する。制御部51は、このようなトナー濃度センサー35の出力値が示す減衰特性に基づき、キャリアの劣化度を判定する。
【0036】
次に、トナー濃度センサー35の出力値の減衰特性に基づくキャリアの劣化度の判定の一例を説明する。
【0037】
まず、図2に示すような画像形成ユニットの仕様並びに条件を、例えば以下のように設定する。
[プリント速度] 26枚/分
[感光体ドラム周速] 164.92mm/sec
[感光体ドラム径] 24mm
[感光体ドラムと現像ローラーの間隙] 0.30mm
[感光体] OPC
[感光体ドラム表面電位] V0=450V
[現像ローラー径] 16mm
[現像ローラー表面形状] ローレット 80μm120本
[現像ローラー速度] 263.89mm/sec
感光体ドラムに対する周速比1.6(トレール回転)
[現像ローラーバイアス電圧] 直流バイアス電圧Vd=350V
交流バイアス電圧Vaの振幅電圧VP=1200V、周波数=4KHz、
デューティー比50%
[トナー] 6.8μm、正帯電性
「トナー濃度センサー] 透磁率センサー
このような仕様並びに条件のもと、トナー濃度センサー35の出力値は、現像剤収容部31にトナーが補給された時点から、図4のグラフに示すように変化する。図4のグラフにおいて、横軸はトナーの補給時点から経過した時間tを示し、縦軸はトナー濃度センサー35の出力値yを示している。また、図4のグラフが示す特性U1は、時間経過に伴うトナー濃度センサー35の出力値yの変化である。
【0038】
この特性U1から明らかなように、トナーの補給時点(図4における0sec時点)よりトナー濃度センサー35の出力値がリップルを示し、この出力値が、1回目のピーク値PV1(最大)に達した後に低減し、2回目の低いピーク値PV2に達した後、振幅が減衰してやがて収束する。
【0039】
ここで、トナー濃度センサー35の出力値をyとし、定数をAとし、トナー濃度センサー35の出力値yの示す振幅が、ピーク値PV1のときにおける振幅から、当該ピーク値PV1のときにおける振幅の1/e(上記予め定められた一定範囲内の値の一例)に減衰するまでの時間を緩和時間Tsとし、トナーの補給時点から経過した時間をtとし、トナーとキャリアが規定の比率で均一に混合されたときのトナー濃度センサー35の出力値yを定数Cとすると、図4のグラフにおけるトナー濃度センサー35の出力値yの変化を示す特性U1は、次式(a)で表される。
【0040】
y=A×et/Ts×sinθ+C …(a)
そして、出力値yがピーク値となる時点ではsinθ=1であるため、出力値yの各ピーク値を結ぶ曲線の特性U2は、次式(b)で表される。
【0041】
y=A×et/Ts+C …(b)
更に、上記式(b)において、緩和時間Tsに影響がない定数Cを除去し、両辺の対数をとると、次式(1)が導出される。
【0042】
ln(y)=ln(A)−t/Ts …(1)
なお、lnは自然対数関数である。
【0043】
こうして導出された上記式(1)には変数が「t」のみであるため、2つ以上の出力値yのピーク値と、それぞれのピーク値の到来時である時間tを求めれば、緩和時間Tsを算出できる。また、2つ以上の出力値yのピーク値を求めるには、トナーの補給時からトナー濃度センサー35の出力値yにうねりが生じている期間内が最適である。
【0044】
制御部51は、トナー補給部47を制御して、トナーをトナーコンテナ18から現像剤収容部31へと補給させたときに、この補給時からトナー濃度センサー35の出力値yを繰り返しサンプリングして、2つの出力値yのピーク値を判定する。そして、制御部51は、これらのピーク値の時間tを求め、これらの出力値yのピーク値及びそれぞれの時間tを用いて、上記(1)に基づき緩和時間Tsを算出する。なお、時間tは、制御ユニット41に内蔵されるタイマーにより計時され、制御部51は、当該タイマーから時間tを得る。
【0045】
制御部51が、このような現像剤を検出対象としたトナー濃度センサー35の出力値yから緩和時間Tsを算出して、この緩和時間Tsに基づいてキャリアの劣化度を判定する。
【0046】
制御部51は、緩和時間Tsを、現像剤のキャリアの劣化度を示す指標とする。すなわち、キャリアの劣化度に応じて、トナーが補給された時点から、トナーとキャリアが均一に混合されるまでに要する時間が変化すると、出力値yの振幅がピーク値PV1のときにおける振幅の1/eに減衰するまでの緩和時間Tsも同様に変化する。これに基づいて、制御部51は、緩和時間Tsからキャリアの劣化度を判定する。
【0047】
図5のグラフは、現像装置22のキャリアを補充したり現像剤を交換したりすることなく、トナーのみを補充するという条件のもと、記録紙Pの印刷枚数に対して変化する緩和時間Tsの特性を示している。図5のグラフには、初期の緩和時間Ts、2枚ずつ間隔をあけて40K枚を印刷した後の緩和時間Ts、2枚ずつ間隔をあけて140K枚を印刷した後の緩和時間Tsが示されている。図5のグラフから明らかなように、印刷枚数が多くなるほどキャリアが劣化し、印刷枚数が多くなるほど緩和時間Tsが増大していることから、緩和時間Tsがキャリアの劣化度に応じて増大することが明らかである。これに基づいて、制御部51は、緩和時間Tsが長いほど、キャリアの劣化度が大きい(劣化の進み具合が大きい)として判定する。表示制御部53は、判定したキャリアの劣化度を表示部42に表示させる。
【0048】
また、本実施形態では、現像装置22周囲の温度や湿度などの使用環境が大きく変化しても、この使用環境変化の影響は、トナー濃度センサー35による検出対象である現像装置22内の現像剤に反映される。そして、制御部51が、このような現像剤を検出対象としたトナー濃度センサー35の出力値yから緩和時間Tsを算出し、この緩和時間Tsに基づいてキャリアの劣化度を判定する。このため、本実施形態によれば、使用環境が変化した場合であっても正確にキャリアの劣化度を判定することができる。
【0049】
このように本実施形態では、温度や湿度などの使用環境の影響を受けることなく、トナー濃度センサー35の出力値に基づきキャリアの劣化度を緩和時間Tsに基づいて正確に判定することができる。また、既存のトナー濃度センサー35を用いるので、格別な装置を追加する必要がない。
[応用例1]
上記実施形態によれば、画像形成装置1の使用環境が変化しても、キャリアの劣化度を正確に判定することができる。
【0050】
そこで、応用例1では、制御部51は、キャリアの劣化度に基づき、キャリアの寿命並びに現像剤の交換時期を正確に判定する。例えば、制御部51は、緩和時間Tsが予め設定された閾値に到達すると、現像剤の交換時期であると判定する。表示制御部53は、現像剤の交換を促す旨のメッセージを表示部42に表示させる。
[応用例2]
キャリアが劣化すると、キャリアの粒子の表面が摩耗したり小径化したり、キャリアの電気抵抗が低くなる。この場合、現像ローラー27の表面に担持された現像剤のトナーだけではなく、現像剤のキャリアも現像ローラー27から感光体ドラム4の表面へと移動して付着する。これをキャリア現像と称する。このキャリア現像は、画像品質の劣化を招くだけではなく、感光体ドラム4の表面及び中間転写ベルト5の表面に傷を付ける原因となる。
【0051】
しかしながら、このキャリア現像は、制御部51が、現像ローラー27に印加される交流バイアス電圧Vaの振幅電圧VPを増大させたり、周波数Fを増大させたり、正逆デューティー比Duを増大させたりすることにより抑制することができる。あるいは、キャリア現像は、制御部51が、感光体ドラム4の表面電位V0と現像ローラー27に印加される直流バイアス電圧Vdの差(V0−Vd)を小さくすることによっても抑制することができる。
【0052】
そこで、応用例2では、制御部51が、現像バイアス印加部29における、キャリアの劣化度に応じて交流バイアス電圧Vaの振幅電圧VP、周波数F、正逆デューティー比Du、直流バイアス電圧Vdを調節して、キャリア現像を抑制する。制御部51は、緩和時間Tsが予め設定された閾値以上になると、緩和時間Tsに応じて予め定め設定している、交流電圧Vcの振幅電圧VP、周波数F、正逆デューティー比Duの各値と、直流電圧Vdの値とを示すバイアス制御指示を、現像バイアス印加部29に出力する。現像バイアス印加部29は、当該バイアス制御指示に基づいて、交流電圧Vcの振幅電圧VP、周波数F、正逆デューティー比Duの各値と、直流電圧Vdの値とを設定し、緩和時間Tsに応じた現像バイアスを生成して、現像ローラー27に印加する。これにより、キャリアの劣化が進んだ場合における、キャリア現像の抑制が可能になる。
【0053】
例えば、制御部51は、緩和時間Tsが予め設定された閾値以上になると、緩和時間Tsが大きくなるほど、交流電圧Vcの振幅電圧VP、周波数F、正逆デューティー比Duの各値と、直流電圧Vdの値とを大きくするバイアス制御指示を、現像バイアス印加部29に出力する。
【0054】
なお、制御部51は、緩和時間Tsが予め設定された閾値以上になると、緩和時間Tsに応じて、(1)交流電圧Vcの振幅電圧VP、周波数F、正逆デューティー比Duの各値、(2)直流電圧Vdの(1)又は(2)のいずれか一方のみを制御するようにしてもよい。
[応用例3]
キャリアが劣化すると、キャリアの粒子の表面が摩耗したり小径化したりして、現像剤中のキャリアのかさ密度が高くなる。この場合は、トナー濃度センサー35により実体に則した検出が行われず、検出される現像剤の透磁率が本来よりも高くなり、本来よりも低いトナー濃度が検出される。このため、キャリアに対するトナーの比率が低い判定となり、この比率に基づきトナーが過剰に補給され、画像品質の低下を招く。
【0055】
そこで、応用例3では、制御部51は、キャリアの劣化度に応じてトナー濃度センサー35の出力値を補正する。例えば、制御部51は、緩和時間Tsの増大に応じて、トナー濃度センサー35の出力値、つまりトナー濃度センサー35により検出された現像剤の透磁率を補正して低減させる。これにより、キャリアが劣化しても、キャリアに対するトナーの比率を正確に判定して、トナーの補給を適確に行うことを可能にする。
[応用例4]
高濃度印刷が連続で行われている状況では、トナーが随時補給されるものの、キャリアによりトナーが帯電される時間が短くなるので、トナーの帯電量が小さくなり、トナーかぶりが発生する。このため、単位時間当たりの印字率が一定の判定基準(以降、追従印字率と称す)より大きくなると、現像装置22の現像剤収容部31内での現像剤の撹拌時間(現像剤のエイジング時間)を延長することでトナーの帯電量を保つようにしている。あるいは、単位時間当たりの印字率が追従印字率よりも大きくなると、印刷される記録紙Pの間隔を長くしている。つまり、単位時間当たりの印字率が追従印字率よりも大きくなると、画像品質を保つために生産性が低下する。
【0056】
ここで、キャリアの劣化に伴い該キャリアによるトナーの帯電付与能力が低下するので、実際のキャリアの帯電付与能力に則して、すなわちキャリアの劣化度に則して、追従印字率を変動させるのが望ましいが、従来は、画像形成装置1の稼働中にキャリアの劣化度を計測する手段が無いので、追従印字率を最低値で固定しており、これが画像形成装置1の効率的な稼働を妨げていた。
【0057】
そこで、応用例4では、制御部51は、キャリアの劣化度に応じて追従印字率を変動させる。例えば、キャリアが劣化する以前の緩和時間をTs0とし、キャリアが劣化する以前において実際の印字率と比較されて、画像品質を保つために生産性を低下させるか否かの判定に用いられる初期追従印字率をP0とし、キャリアが劣化した時点での緩和時間をTsxとし、キャリアが劣化した時点において実際の印字率と比較されて、画像品質を保つために生産性を低下させるか否かの判定に用いられる補正追従印字率をPxとする。制御部51は、次式(2)に基づき、補正追従印字率Pxを求める。
【0058】
Px=(Ts0/Tsx)×P0 …(2)
そして、制御部51は、記録紙Pの印刷枚数やトナー濃度センサー35により検出されたトナー濃度の変化などに基づき実際の印字率を求め、実際の印字率と補正追従印字率Pxを比較して、実際の印字率が補正追従印字率Pxよりも大きくなったときに画像品質を保つために生産性を低下させると判定し、実際の印字率が大きいほど、(i)現像剤のエイジング時間を長くする、又は(ii)印刷される記録紙Pの間隔を長くする、等の制御を行い、トナーかぶりの発生を防止する。これにより、追従印字率を固定した場合と比較すると、トナーかぶりの発生を防止しながらも、生産性の低下を抑制できる。
【0059】
図6(A)は、従来のように追従印字率を最低値の30%に固定した状態での印字率と生産性の関係を示すグラフである。また、図6(B)は、上記式(2)に基づき補正追従印字率Pxを30%又は35%に調節した上での印字率と生産性の関係を示すグラフである。図6(A)のグラフと図6(B)のグラフの比較から明らかなように、補正追従印字率Pxを変更することにより、画像品質及び生産性を低下させることがない実際の印字率の範囲が広がる。
【0060】
以上のように、上記応用例2、3、及び4では、は、従来行われていなかったフィードバック制御を行うことで、キャリアの劣化度に対応する緩和時間Ts0をフィードバックし、現像ローラー27のバイアス、トナー濃度センサー35の出力値、又は追従印字率を制御して、上記に示した効果を奏する。
【0061】
なお、上記実施形態では、本発明の画像形成装置の一実施形態として画像形成装置を例示しているが、これは一例に過ぎず、コピー機、プリンター、ファクシミリ装置等であってもよい。
【0062】
また、図1乃至図6を用いて説明した上記実施形態の構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成及び処理に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0063】
1 画像形成装置
11 画像読取部
12 画像形成部
4 感光体ドラム
22 現像装置
27 現像ローラー
29 現像バイアス印加部
35 トナー濃度センサー
41 制御ユニット
42 表示部
44 操作部
45 記憶部
47 トナー補給部
51 制御部
53 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6