特許第6601406号(P6601406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6601406
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】受信装置、受信方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/34 20060101AFI20191028BHJP
   H04L 27/01 20060101ALI20191028BHJP
   H04B 7/005 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   H04L27/34
   H04L27/01
   H04B7/005
【請求項の数】8
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-553042(P2016-553042)
(86)(22)【出願日】2015年9月25日
(86)【国際出願番号】JP2015077009
(87)【国際公開番号】WO2016056395
(87)【国際公開日】20160414
【審査請求日】2018年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2014-205441(P2014-205441)
(32)【優先日】2014年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(72)【発明者】
【氏名】平山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】岸本 直道
【審査官】 羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−176311(JP,A)
【文献】 特開平03−174851(JP,A)
【文献】 特開平08−163198(JP,A)
【文献】 特開2012−065008(JP,A)
【文献】 特開2001−069117(JP,A)
【文献】 特開2004−72251(JP,A)
【文献】 高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式,標準規格 ARIB STANDARD ARIB STD-B44,2009年 7月29日,1.0版,P.5,56-61,URL,http://www.arib.or.jp/english/html/overview/doc/2-STD-B44v1_0.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/00−27/38
H04B 7/005
H04L 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号の誤り訂正後のデータを変調し、変調信号を生成する変調部と、
前記変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻の誤り訂正前の前記受信信号を平均化するとともに、その変調信号と同時刻の未知信号の誤り訂正前の前記受信信号と、その信号点配置の既知信号の誤り訂正前の前記受信信号とを平均化することにより、各信号点配置の変調信号に対する歪を表す歪情報を生成する平均化部と
を備え
前記平均化部は、前記平均化に際して、前記変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻の誤り訂正前の前記受信信号のうちの、前記誤り訂正に成功した前記データの誤り訂正前の前記受信信号を用いる
受信装置。
【請求項2】
前記歪情報に基づいて前記受信信号の軟判定を行う軟判定部
をさらに備える
請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記歪情報に基づいて、前記誤り訂正に用いられる尤度テーブルを生成する尤度テーブル生成部
をさらに備え、
前記軟判定部は、前記尤度テーブル生成部により生成された前記尤度テーブルを用いて、前記受信信号に対して前記誤り訂正を行い、前記データを生成する
ように構成された
請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記歪情報に基づいて前記受信信号の硬判定を行う硬判定部
をさらに備える
請求項1に記載の受信装置。
【請求項5】
前記硬判定部による前記硬判定の結果を用いて、前記受信信号の位相誤差検出を行う位相誤差検出部
をさらに備える
請求項4に記載の受信装置。
【請求項6】
前記硬判定部は、前記歪情報に基づいて、等化処理後の前記受信信号の硬判定を行う
ように構成された
請求項4に記載の受信装置。
【請求項7】
受信装置が、
受信信号の誤り訂正後のデータを変調し、変調信号を生成する変調ステップと、
前記変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻の誤り訂正前の前記受信信号を平均化するとともに、その変調信号と同時刻の未知信号の誤り訂正前の前記受信信号と、その信号点配置の既知信号の誤り訂正前の前記受信信号とを平均化することにより、各信号点配置の変調信号に対する歪を表す歪情報を生成する歪情報生成ステップと
を含み、
前記歪情報生成ステップでは、前記平均化に際して、前記変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻の誤り訂正前の前記受信信号のうちの、前記誤り訂正に成功した前記データの誤り訂正前の前記受信信号を用いる
受信方法。
【請求項8】
コンピュータを、
受信信号の誤り訂正後のデータを変調し、変調信号を生成する変調部と、
前記変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻の誤り訂正前の前記受信信号を平均化するとともに、その変調信号と同時刻の未知信号の誤り訂正前の前記受信信号と、その信号点配置の既知信号の誤り訂正前の前記受信信号とを平均化することにより、各信号点配置の変調信号に対する歪を表す歪情報を生成する平均化部と
を備え、
前記平均化部は、前記平均化に際して、前記変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻の誤り訂正前の前記受信信号のうちの、前記誤り訂正に成功した前記データの誤り訂正前の前記受信信号を用いる
受信装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受信装置、受信方法、およびプログラムに関し、特に、データ区間と同一の信号点配置の既知信号を含まない受信信号の歪を補償することができるようにした受信装置、受信方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
衛星デジタルテレビ放送の多値変調方式としては、位相情報のみを使用する、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying),8PSK(Phase Shift Keying)等のPSKが主に用いられてきた。しかしながら、4k/8k放送への期待から、位相情報に加えて振幅情報も使用する、16APSK(Amplitude Phase Shift Keying),32APSK等のAPSKが用いられようとしている。
【0003】
しかしながら、APSKの受信信号は、衛星中継器の非線形の影響を受けているため、内周円上の信号点に比べ外周円上の信号点は振幅・位相歪を含んでおり、これが、キャリア再生におけるサイクルスリップや、受信特性の劣化の原因となる。
【0004】
このような非線形性の伝送路歪を受信機側で補償する技術の1つが、ARIB STD-B44(非特許文献1)の解説Aに記載されている。ARIB STD-B44とは、高度広帯域衛星デジタル放送(高度BS)の伝送規格であり、現在、国内でサービスされているBSデジタル放送の伝送規格(ARIB STD-B20)の後継に該当する。
【0005】
ARIB STD-B44における伝送フォーマットでは、APSK信号に対する非線形歪補償を目的として、データ区間と同一の信号点配置の全ての信号点の信号が、伝送信号点配置信号と呼ばれる既知信号として伝送される。従って、非特許文献1の解説Aに記載されている技術は、信号点ごとに非線形歪後の伝送信号点配置信号を平均化し、その平均点を各信号点の信号として復調処理やFEC(Forward Error Correction)処理を行うことにより、非線形歪を補償するものである。この技術により、受信性能が向上する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】http://www.arib.or.jp/english/html/overview/doc/2-STD-B44v1_0.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、DVB(Digital Video Broadcasting)-S2やDVB-S2X等の放送規格では、データ区間と同一の信号点配置の信号が既知信号として伝送されないため、上述した技術を用いることができない。
【0008】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、データ区間と同一の信号点配置の既知信号を含まない受信信号の歪を補償することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一側面の受信装置は、受信信号の誤り訂正後のデータを変調し、変調信号を生成する変調部と、前記変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻の誤り訂正前の前記受信信号を平均化するとともに、その変調信号と同時刻の未知信号の誤り訂正前の前記受信信号と、その信号点配置の既知信号の誤り訂正前の前記受信信号とを平均化することにより、各信号点配置の変調信号に対する歪を表す歪情報を生成する平均化部とを備え、前記平均化部は、前記平均化に際して、前記変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻の誤り訂正前の前記受信信号のうちの、前記誤り訂正に成功した前記データの誤り訂正前の前記受信信号を用いる受信装置である。
【0010】
本開示の一側面の受信方法およびプログラムは、本開示の一側面の受信装置に対応する。
【0011】
本開示の一側面においては、受信信号の誤り訂正後のデータが変調されて、変調信号が生成され、前記変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻の誤り訂正前の前記受信信号が平均化されるとともに、その変調信号と同時刻の未知信号の誤り訂正前の前記受信信号と、その信号点配置の既知信号の誤り訂正前の前記受信信号とが平均化されることにより、各信号点配置の変調信号に対する歪を表す歪情報が生成される。また、前記平均化に際しては、前記変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻の誤り訂正前の前記受信信号のうちの、前記誤り訂正に成功した前記データの誤り訂正前の前記受信信号が用いられる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一側面によれば、信号を受信することができる。また、本開示の一側面によれば、データ区間と同一の信号点配置の既知信号を含まない受信信号の歪を補償することができる。
【0013】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】衛星中継器の非線形の影響の一例を示す図である。
図2図1の衛星中継器装置12の構成の一例を示すブロック図である。
図3図2のTWTA42の出力特性の一例を示す図である。
図4】送信信号の各信号点のIQ平面上の座標位置の一例を示す図である。
図5】TWTA42による増幅後の信号の各信号点のIQ平面上の座標位置を示す図である。
図6】TWTA42による増幅後の信号の各信号点のIQ平面上の座標位置を示す図である。
図7】ARIB STD-B44規格の伝送フォーマットの1フレーム分の送信信号を示す図である。
図8】伝送信号点配置信号のシンボルの例を示す図である。
図9図8の伝送信号点配置信号を用いて受信装置が行う非線形歪の補償を説明する図である。
図10】本開示を適用した送受信システムの第1実施の形態の構成例を示すブロック図である。
図11】DVB-S2やDVB-S2X規格の伝送フォーマットの1フレーム分の送信信号の一例を示す図である。
図12】π/2BPSKの各信号点のIQ平面上の座標位置を示す図である。
図13】DVB-S2X規格の伝送フォーマットの送信信号の変調方式の各信号点のIQ平面上の座標位置の一例を示す図である。
図14】DVB-S2X規格の伝送フォーマットの送信信号の変調方式の各信号点のIQ平面上の座標位置の一例を示す図である。
図15図10の受信装置112の構成例を示すブロック図である。
図16図15の直交検波部312の構成例を示すブロック図である。
図17図15の等化部313の構成例を示すブロック図である。
図18図15のLDPC符号復号部315の構成例を示すブロック図である。
図19図15の歪情報生成部316の構成例を示すブロック図である。
図20図15の受信装置112の受信処理を説明するフローチャートである。
図21図20のステップS106の歪情報生成処理の詳細を説明するフローチャートである。
図22】本開示を適用した送受信システムの第2実施の形態における受信装置の構成例を示すブロック図である。
図23図22の歪情報生成部422の構成例を示すブロック図である。
図24図23の歪情報生成部422の歪情報生成処理の詳細を説明するフローチャートである。
図25】コンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の前提および本開示を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
0.本開示の前提(図1乃至図9
1.第1実施の形態:送受信システム(図10乃至図21
2.第2実施の形態:送受信システム(図22乃至図24
3.第3実施の形態:コンピュータ(図25
【0016】
<本開示の前提>
(衛星中継器の非線形の影響の一例)
図1は、衛星中継器の非線形の影響の一例を示す図である。
【0017】
図1に示すように、衛星放送システム1においては、衛星中継装置12が、図示せぬ送信装置から送信された衛星デジタル放送の送信信号11を受信して増幅等を行い、その結果得られる信号を受信信号13として図示せぬ受信装置に送信する。このとき、送信信号11は、衛星中継装置12により非線形の影響を受けるため、受信信号13では、非線形性の歪が発生する。
【0018】
(衛星中継装置の構成の一例)
図2は、図1の衛星中継装置12の構成の一例を示すブロック図である。
【0019】
図2の衛星中継装置12は、IMUX(Input de-multiplexer)フィルタ41、TWTA(Travelling-Wave Tube Amplifier)42、およびOMUX(Output multiplexer)フィルタ43により構成される。
【0020】
衛星中継装置12のIMUXフィルタ41は、図示せぬ送信装置から送信されてきた送信信号11に対してフィルタ処理を行う。IMUXフィルタ41は、フィルタ処理後の信号をTWTA42に供給する。
【0021】
TWTA42は、フィルタ処理後の信号を増幅し、OMUXフィルタ43に供給する。OMUXフィルタ43は、TWTA42から供給される増幅後の信号に対してフィルタ処理を行い、受信信号13を生成する。受信信号13は、図示せぬ受信装置に送信される。
【0022】
(TWTAの出力特性の説明)
図3は、図2のTWTA42の出力特性の一例を示す図である。
【0023】
図3において、横軸は、TWTA42の入力信号の振幅を表し、縦軸は、出力信号の振幅または位相を表している。また、実線は、入力信号の振幅と出力信号の振幅の関係を表し、点線は、入力信号の振幅と出力信号の位相の関係を表している。
【0024】
図3に示すように、出力信号の振幅は、入力信号の振幅が大きくなるにしたがって、入力信号の振幅にほぼ比例して大きくなるが、入力信号の振幅の値が所定の値まで大きくなった後は、次第に飽和する。
【0025】
一方、出力信号の位相は、入力信号の振幅が大きくなるにしたがって徐々に大きくなり、入力信号の振幅の値が所定の値まで大きくなった後は、急激に大きくなる。そして入力信号の振幅の値がさらに所定の値まで大きくなった後は、出力信号の位相は飽和する。
【0026】
以上のように、TWTA42の出力特性は非線形性を示す。
【0027】
(送信信号の各信号点)
図4は、送信信号11が、8PSK信号、16APSK信号、および32APSK信号である場合の送信信号11の各信号点のIQ平面上の座標位置(信号点配置)の一例を示す図である。
【0028】
図4のIQ平面では、横軸がI軸、縦軸がQ軸となっており、図中白丸が信号点を表している。また、IQ座標が(0,0)となる図中の中心点から信号点を表す白丸までの距離(半径)が、その信号点の振幅を表し、横軸と、中心点と信号点を表す白丸とを結ぶ線との角度φが、その信号点の位相を表す。これらのことは、後述する図13および図14においても同様である。
【0029】
図4のAに示すように、送信信号11が8PSK信号である場合、振幅が同一で、位相の異なる8個の信号点により、8種類のシンボルが送信される。
【0030】
一方、図4のBに示すように、送信信号11が16APSK信号である場合、振幅と位相の一方または両方が異なる16個の信号点により、16種類のシンボルが送信される。また、図4のCに示すように、送信信号11が32APSK信号である場合、振幅と位相の一方または両方が異なる32個の信号点により、32種類のシンボルが送信される。
【0031】
(TWTAによる増幅後の信号)
図5は、送信信号11が8PSK信号である場合のTWTA42による増幅後の信号の各信号点のIQ平面上の座標位置を示す図である。また、図6は、送信信号11が32APSK信号である場合のTWTA42による増幅後の信号の各信号点のIQ平面上の座標位置を示す図である。
【0032】
図5および図6において、バツ印は、TWTA42による増幅前の信号の信号点を表し、プラス印は、TWTA42による増幅後の信号の信号点を表す。
【0033】
図5に示すように、送信信号11が8PSK信号である場合、信号点の振幅は1種類であるので、TWTA42による振幅の縮小率と位相回転量は、全ての信号点において同一である。具体的には、TWTA42による増幅後の信号の各信号点のIQ平面上の座標位置の中心点からの距離は、増幅前の信号の各信号点に比べて一定量だけ小さい。また、TWTA42による増幅後の信号の各信号点のIQ平面上の座標位置は、増幅前の信号の各信号点の座標位置を一定量だけ反時計方向に回転させた位置である。
【0034】
従って、送信信号11がPSK信号である場合、時計方向に一定量だけ回転させ、振幅を調整することにより、TWTA42による非線形歪を補正することができるため、受信装置において、判定誤りは発生せず、受信性能は劣化しない。
【0035】
これに対して、図6に示すように、送信信号11が32APSK信号である場合、信号点の振幅は複数種類あるので、TWTA42の出力特性が非線形性を示すことにより、信号点の振幅ごとに、TWTA42による振幅の縮小率と位相回転量が異なる。
【0036】
具体的には、TWTA42による増幅後の信号の各信号点のIQ平面上の座標位置の中心点からの距離は、その距離に応じた量だけ、増幅前の信号の各信号点に比べて小さい。図6の例では、中心点からの距離が大きい信号点ほど、中心点からの距離の縮小率は大きくなっている。即ち、中心点からの距離が大きくなるほど、TWTA42による増幅後の信号の信号点の位置は、より内側に抑圧される。
【0037】
また、TWTA42による増幅後の信号の各信号点のIQ平面上の座標位置は、その信号点の中心点からの距離に応じた量だけ、増幅前の信号の各信号点の位置を反時計方向に回転させた位置である。図6の例では、中心点からの距離が大きい信号点ほど、位相回転量は大きくなっている。
【0038】
以上のように、送信信号11がAPSK信号である場合、TWTA42により非線形歪が発生するため、受信装置が、衛星デジタル放送規格で定められた各信号点の送信信号に基づいて受信処理を行うと、判定誤りが発生し、受信性能が劣化する。
【0039】
そこで、ARIB STD-B44規格の伝送フォーマットでは、このような非線形歪を補償するために、データ区間と同一の信号点配置の信号点を所定の順番で含む伝送信号点配置信号が、送信信号に埋め込まれている。
【0040】
(ARIB STD-B44規格の伝送フォーマット)
図7は、ARIB STD-B44規格の伝送フォーマットの1フレーム分の送信信号を示す図である。
【0041】
図7に示すように、ARIB STD-B44規格の伝送フォーマットの1フレーム分の送信信号は、120個の変調スロットにより構成されている。図7では、i番目の変調スロットを変調スロット#iと記述している。
【0042】
各変調スロットには、同期信号FSync,SSync、または!FSync、伝送信号点配置信号P、データData、およびバースト信号Tが配置される。同期信号FSync,SSync、または!FSyncは、同期のための24シンボルの同期信号である。
【0043】
また、伝送信号点配置信号Pは、非線形歪を補償するための32シンボルのパイロット信号であり、データDataと同一の信号点配置の信号点を全て含む既知信号である。同期信号FSync,SSync、または!FSyncと、伝送信号点配置信号Pは、既知信号であり、これらの信号の各シンボルは、ARIB STD-B44規格により予め定められている。
【0044】
(伝送信号点配置信号のシンボルの例)
図8は、変調方式が32APSKである場合の伝送信号点配置信号のシンボルの例を示す図である。
【0045】
変調方式が32APSKである場合、伝送信号点配置信号には、値0乃至31の信号が順に配置される。従って、図8のAに示すように、伝送信号点配置信号の32シンボルのうちの第1のシンボルは、値0[00000]であり、図8のBに示すように、第2のシンボルは、値1[00001]である。また、図8のCに示すように、第32のシンボルは、値31[11111]である。
【0046】
なお、本明細書では、変調方式とは、QPSK,8PSK,16PSK,32APSK等の方式だけでなく、符号化率も表すものである。従って、変調方式が同一であるとは、QPSK,8PSK,16PSK,32APSK等の方式と符号化率が同一であることを指し、変調方式が同一である場合、信号点配置が同一である。
【0047】
(非線形歪の補償の説明)
図9は、図8の伝送信号点配置信号を用いて受信装置が行う非線形歪の補償を説明する図である。
【0048】
なお、図9は、IQ平面を示している。
【0049】
図9のAに示す、送信信号11に含まれる32APSKで変調された伝送信号点配置信号の各信号点(送信信号点)は、衛星中継装置12により、図9のBに示す信号点(受信信号点)に変換される。受信装置は、図9のBに示す信号点の伝送信号点配置信号を含む受信信号を受信し、信号点ごとに、受信された伝送信号点配置信号を平均化し、平均化された伝送信号点配置信号を、その信号点の信号とすることにより、非線形歪を補償する。
【0050】
受信装置は、このような非線形歪の補償を、受信信号13の硬判定処理や軟判定処理時に行うことにより、受信性能を向上させることができる。
【0051】
しかしながら、受信信号13が、伝送信号点配置信号のような、データ区間と同一の信号点配置の信号点の全てを、既知信号として含まない場合、受信装置は、上述した非線形歪の補償を行うことができない。そこで、本開示は、データ区間と同一の信号点配置の信号点の全てを既知信号として含まない受信信号に対して非線形歪を補償することにより、受信性能の向上を図る。
【0052】
<第1実施の形態>
(送受信システムの第1実施の形態の構成例)
図10は、本開示を適用した送受信システムの第1実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【0053】
図10に示す構成のうち、図1の構成と同じ構成には同じ符号を付してある。重複する説明については適宜省略する。
【0054】
図10の送受信システム101は、送信装置111、衛星中継装置12、および、受信装置112により構成される。送受信システム101は、送信装置111により送信された送信信号を、衛星中継装置12を介して受信装置112に受信させる。
【0055】
具体的には、送受信システム101の送信装置111は、送信局に設けられる。送信装置111は、DVB-S2やDVB-S2X規格等の伝送フォーマットの衛星デジタルテレビ放送の放送信号を、送信信号として衛星中継装置12に送信する。
【0056】
衛星中継装置12は、送信装置111から送信されてくる送信信号に対して、フィルタ処理や増幅処理を行い、その結果得られる信号を受信装置112に送信する。
【0057】
受信装置112は、一般ユーザの住宅や地上局に設けられる。受信装置112は、衛星中継装置12から送信されてくる信号を受信信号として受信する。受信装置112は、受信信号に対して受信処理を行う。このとき、受信装置112は、受信信号の非線形歪を補償する。
【0058】
(DVB-S2やDVB-S2X規格の伝送フォーマット)
図11は、DVB-S2やDVB-S2X規格の伝送フォーマットの1フレーム分の送信信号の一例を示す図である。
【0059】
図11に示すように、DVB-S2やDVB-S2X規格の伝送フォーマットの1フレーム分の送信信号のデータ区間は、S個のスロットから構成されており、各スロットは、90シンボルの信号からなる。また、各スロットは、8PSKなどの選択された変調方式で変調されており、16スロットごとに、必要に応じて、非変調のキャリアである36シンボルのパイロットブロックが配置される。
【0060】
また、S個のスロットの前方には、フィジカルレイヤヘッダ(PLヘッダ)が配置されている。フィジカルレイヤヘッダは、π/2BPSK(Binary Phase-Shift Keying)で変調されており、SOFとPLSCODEから構成される。SOFは、フレームの開始を示す24シンボルの信号であり、PLSCODEは、伝送制御情報、データ区間の変調方式等を示す64シンボルの信号である。
【0061】
以上のように、DVB-S2やDVB-S2X規格の伝送フォーマットの1フレーム分の送信信号には、データ区間と同一の信号点配置の信号点の全てを含む既知信号が存在しない。
【0062】
(π/2BPSKの各信号点)
図12は、π/2BPSKの各信号点のIQ平面上の座標位置を示す図である。
【0063】
図12のAは、奇数番目のシンボルの各信号点を表し、図12のBは、偶数番目のシンボルの各信号点を表す。
【0064】
図12のAおよび図12のBに示すように、π/2BPSKでは、値0と値1の信号点の位相が180度異なり、各値の奇数番目のシンボルの信号点と偶数番目のシンボルの信号点の位相は90度異なる。
【0065】
(DVB-S2X規格の伝送フォーマットの送信信号の各信号点)
DVB-S2X規格の伝送フォーマットの送信信号の変調方式としては、各信号点のIQ平面上の座標位置が図4に示した位置ではない変調方式も存在する。図13および図14は、各信号点のIQ平面上の座標位置が図4に示した位置ではない、DVB-S2X規格の伝送フォーマットの送信信号の変調方式の各信号点のIQ平面上の座標位置の一例を示す図である。
【0066】
図13のAに示すように、DVB-S2X規格の伝送フォーマットの送信信号の変調方式としては、3種類の振幅の信号点により8個のシンボルを送信する8APSK(2+4+2APSK)方式がある。この8APSK方式では、最小の振幅の信号点により2個のシンボルが送信され、2番目に小さい振幅の信号点により4個のシンボルが送信され、最大の振幅の信号点により2個のシンボルが送信される。
【0067】
また、図13のBに示すように、2種類の振幅の信号点により16個のシンボルを送信する16APSK(8+8APSK)方式もある。この16APSK方式では、2種類のそれぞれの振幅の信号点により8個のシンボルが送信される。
【0068】
さらに、図13のCに示すように、3種類の振幅の信号点により32個のシンボルを送信する32APSK(4+12+16APSK)方式もある。この32APSK方式では、最小の振幅の信号点により4個のシンボルが送信され、2番目に小さい振幅の信号点により12個のシンボルが送信され、最大の振幅の信号点により16個のシンボルが送信される。
【0069】
また、図13のDに示すように、4種類の振幅の信号点により32個のシンボルを送信する32APSK(8+16+20+20APSK)方式もある。この32APSK方式では、最小の振幅の信号点により8個のシンボルが送信され、2番目に小さい振幅の信号点により16個のシンボルが送信され、3番目に小さい振幅の信号点により20個のシンボルが送信され、最大の振幅の信号点により20個のシンボルが送信される。
【0070】
さらに、図13のEに示すように、4種類の振幅の信号点により64個のシンボルを送信する64APSK(16+16+16+16APSK)方式もある。この64APSK方式では、4種類のそれぞれの振幅の信号点により16個のシンボルが送信される。
【0071】
また、図14のAに示すように、4種類の振幅の信号点により64個のシンボルを送信する64APSK(4+12+20+28APSK)方式もある。この64APSK方式では、最小の振幅の信号点により4個のシンボルが送信され、2番目に小さい振幅の信号点により12個のシンボルが送信され、3番目に小さい振幅の信号点により20個のシンボルが送信され、最大の振幅の信号点により28個のシンボルが送信される。
【0072】
さらに、図14のBに示すように、4種類の振幅の信号点により64個のシンボルを送信する64APSK(8+16+20+20APSK)方式もある。この64APSK方式では、最小の振幅の信号点により8個のシンボルが送信され、2番目に小さい振幅の信号点により16個のシンボルが送信され、3番目に小さい振幅の信号点により20個のシンボルが送信され、最大の振幅の信号点により20個のシンボルが送信される。
【0073】
また、図14のCに示すように、4種類の振幅の信号点により64個のシンボルを送信する64APSK(4+12+20+28APSK)方式もある。この64APSK方式では、最小の振幅の信号点により4個のシンボルが送信され、2番目に小さい振幅の信号点により12個のシンボルが送信され、3番目に小さい振幅の信号点により20個のシンボルが送信され、最大の振幅の信号点により28個のシンボルが送信される。
【0074】
さらに、図14のDに示すように、6種類の振幅の信号点により128個のシンボルを送信する128APSK(16+16+16+16+16+48APSK)方式もある。この128APSK方式では、最大の振幅を除いた5種類のそれぞれの振幅の信号点により16個のシンボルが送信され、最大の振幅の信号点により48個のシンボルが送信される。
【0075】
また、図14のEに示すように、8種類の振幅の信号点により256個のシンボルを送信する256APSK(32+32+32+32+32+32+32+32APSK)方式もある。この256APSK方式では、8種類のそれぞれの振幅の信号点により32個のシンボルが送信される。
【0076】
(受信装置の構成例)
図15は、図10の受信装置112の構成例を示すブロック図である。
【0077】
図15の受信装置112は、チャンネル選択部311、直交検波部312、等化部313、PLSコード復号部314、LDPC(Low Density Parity Check)符号復号部315、歪情報生成部316、BCH符号復号部317、およびエネルギー逆拡散部318により構成される。
【0078】
チャンネル選択部311は、衛星中継装置12から送信されてきた信号を受信信号として受信する。チャンネル選択部311は、受信信号の周波数変換を行い、得られたIF(Intermediate Frequency)信号から、ユーザ等により指定されたチャンネルのIF信号を選択する。チャンネル選択部311は、選択されたIF信号に対して、直交復調、A/D変換などの処理を施し、その結果得られるI信号とQ信号を直交検波部312に供給する。
【0079】
直交検波部312は、チャンネル選択部311から供給されるI信号とQ信号の位相誤差補正などを行う。このとき、直交検波部312は、歪情報生成部316から供給される歪情報に基づいて、衛星中継装置12により発生した非線形歪を補償する。直交検波部312は、位相誤差補正後のI信号とQ信号を等化部313に供給する。
【0080】
等化部313は、例えばDFE(Decision Feedback Equalizer)からなり、直交検波部312から供給されるI信号とQ信号に対して等化処理を行う。このとき、等化部313は、歪情報生成部316から供給される歪情報に基づいて、衛星中継装置12により発生した非線形歪を補償する。等化部313は、等化処理後のI信号とQ信号をPLSコード復号部314、LDPC符号復号部315、および歪情報生成部316に供給する。
【0081】
PLSコード復号部314は、等化部313から供給されるI信号とQ信号から、受信信号内のデータ区間の変調方式などを含むPLSコードを復号する。PLSコード復号部314は、復号結果を、歪情報生成部316とBCH符号復号部317に供給する。
【0082】
LDPC符号復号部315は、FEC処理としてLDPC符号復号処理を行う。具体的には、LDPC符号復号部315は、現在の変調方式のシンボルを構成するビット(例えば、変調方式が32APSKである場合5ビット)ごとに、尤度テーブルを用意する。LDPC符号復号部315は、尤度テーブルに基づいて、等化部313から供給されるI信号とQ信号が表す信号点に対して、シンボルを構成する各ビットの1と思われる確率と0と思われる確率の対数比LLR(Log Likelihood Ratio)を求め、この対数比LLRに対してLDPC符号復号を行う。このとき、LDPC符号復号部315は、歪情報生成部316から供給される歪情報に基づいて、衛星中継装置12により発生した非線形歪を補償する。LDPC符号復号部315は、LDPC符号復号処理の結果得られるデータ(LPDC復号後のデータとLDPCパリティ)を、歪情報生成部316とBCH符号復号部317に供給する。
【0083】
歪情報生成部316は、LDPC符号復号部315から供給されるLDPC符号復号処理後のデータを、PLSコード復号部314からのPLSコードに含まれる変調方式で変調し、変調信号を生成する。歪情報生成部316は、PLSコードが表す変調方式および変調信号の信号点配置(constellation)ごとに、その変調信号と同時刻の、等化部313から供給されるLDPC符号復号処理前のI信号およびQ信号を平均化し、平均信号を生成する。
【0084】
歪情報生成部316は、変調方式ごとに、変調信号の各信号点配置を送信信号の各信号点配置の推定値とし、その信号点配置に対応する平均信号の信号点配置を受信信号の信号点配置として、各信号点配置の変調信号に対して発生した非線形歪を表す歪情報を生成する。
【0085】
なお、ここでは、歪情報は、変調信号の各信号点配置に対応する平均信号のIQ平面上の位置の直交座標または極座標(以下では、これらをまとめて単に座標という)であるものとする。この場合、例えば、変調方式が32APSKであるとき、歪情報は、32個の座標からなる、64(=32×2)個の情報である。
【0086】
歪情報は、これに限らず、例えば、全ての信号点配置のうちの各振幅を代表する信号点配置である代表信号点配置に対応する平均信号のIQ平面上の位置の座標であるようにしてもよい。この場合、例えば、変調方式が32APSKであるとき、歪情報は、3個の座標からなる、6(=3×2)個の情報である。
【0087】
また、歪情報は、1つの信号点配置に対応する平均信号のIQ平面上の位置を基準としたときの、その他の各信号点配置に対応する平均信号のIQ平面上の相対位置を表す座標であるようにしてもよい。この場合、例えば、変調方式が32APSKであるとき、歪情報は、31個の座標からなる、62(=31×2)個の情報である。
【0088】
さらに、歪情報は、代表信号点配置のうちの1つの代表信号点配置に対応する平均信号のIQ平面上の位置を基準としたときの、その他の各代表信号点配置に対応する平均信号のIQ平面上の相対位置を表す座標であるようにしてもよい。この場合、例えば、変調方式が32APSKであるとき、歪情報は、2個の座標からなる、4(=2×2)個の情報である。
【0089】
また、歪情報は、各信号点配置の変調信号を入力信号とし、その信号点配置に対応する平均信号を出力信号としたときの、図3に示したような出力特性を表すグラフであってもよい。
【0090】
歪情報生成部316は、現在のPLSコードに含まれる変調方式の歪情報を、直交検波部312、等化部313、およびLDPC符号復号部315に供給する。
【0091】
BCH符号復号部317は、PLSコード復号部314から供給されるPLSコードに基づいて、LDPC符号復号部315から供給されるデータをBCH符号復号し、復号結果をエネルギー逆拡散部318に供給する。
【0092】
エネルギー逆拡散部318は、BCH符号復号部317から供給される復号結果をエネルギー逆拡散し、出力する。
【0093】
(直交検波部の構成例)
図16は、図15の直交検波部312の構成例を示すブロック図である。
【0094】
図16の直交検波部312は、複素乗算部351、RRF(Route Roll-off Filter)352および353、記憶部354、位相誤差検出部355、LF(Loop Filter)356、およびNCO(Numerically Controlled Oscillator)357により構成される。
【0095】
複素乗算部351は、図15のチャンネル選択部311から供給されるI信号およびQ信号のそれぞれと、NCO357から供給される信号とを乗算することにより、I信号とQ信号を生成する。複素乗算部351は、生成されたI信号をRRF352に供給し、Q信号をRRF353に供給する。
【0096】
RRF352は、複素乗算部351から供給されるI信号に対してフィルタ処理を行い、雑音を除去する。RRF352は、フィルタ処理後のI信号を位相誤差検出部355に供給するとともに、図15の等化部313に供給する。
【0097】
RRF353は、複素乗算部351から供給されるQ信号に対してフィルタ処理を行い、雑音を除去する。RRF353は、フィルタ処理後のQ信号を位相誤差検出部355に供給するとともに、等化部313に供給する。
【0098】
記憶部354は、図15の歪情報生成部316から供給される歪情報を記憶する。
【0099】
位相誤差検出部(硬判定部)355は、RRF352から供給されるI信号と、RRF353から供給されるQ信号からなる信号に、IQ平面上で最も近い平均信号の座標を、記憶部354から読み出す硬判定処理を行う。位相誤差検出部355(硬判定部)は、読み出された座標の信号と、RRF352からのI信号とRRF353からのQ信号からなる信号の位相誤差を検出する位相誤差検出処理を行う。位相誤差検出部355は、検出された位相誤差をLF356に供給する。
【0100】
以上のように、位相誤差検出部355は、DVB-S2やDVB-S2X規格等で予め定められた信号点の信号ではなく、歪情報に基づいて、位相誤差を検出するので、衛星中継装置12で発生する非線形歪が補償され、位相同期性能が向上する。
【0101】
LF356は、位相誤差検出部355から検出された位相誤差をフィルタ処理し、NCO357に供給する。
【0102】
NCO357は、LF356から供給される位相誤差に基づいて、所定の周波数の信号を生成し、複素乗算部351に供給する。
【0103】
(等化部の構成例)
図17は、図15の等化部313の構成例を示すブロック図である。
【0104】
図17の等化部313は、フィードフォワードフィルタ371、減算部372−1および372−2、硬判定部373、フィードバックフィルタ374、並びに係数更新部375により構成される。
【0105】
等化部313のフィードフォワードフィルタ371は、可変係数フィルタである。フィードフォワードフィルタ371は、係数更新部375から供給される係数を用いて、図15の直交検波部312から供給されるI信号およびQ信号のそれぞれと係数との畳み込み演算を行う。フィードフォワードフィルタ371は、畳み込み演算の結果得られるI信号を減算部372−1に出力し、Q信号を減算部372−2に出力する。
【0106】
減算部372−1は、フィードフォワードフィルタ371から供給されるI信号から、フィードバックフィルタ374から供給されるI信号を減算する。減算部372−1は、その結果得られるI信号を、等化処理後のI信号として、図15のLDPC符号復号部315に供給するとともに、硬判定部373と係数更新部375に供給する。減算部372−2は、フィードフォワードフィルタ371から供給されるQ信号から、フィードバックフィルタ374から供給されるQ信号を減算する。減算部372−2は、その結果得られるQ信号を、等化処理後のQ信号として、LDPC符号復号部315に供給するとともに、硬判定部373と係数更新部375に供給する。
【0107】
硬判定部373は、図15の歪情報生成部316から供給される歪情報に基づいて、減算部372−1から供給される等化処理後のI信号および減算部372−2から供給される等化処理後のQ信号の硬判定を行う。即ち、硬判定部373は、歪情報が表す座標のうちの、等化処理後のI信号およびQ信号が表す座標に最も近い座標に対応する信号点を判定する。
【0108】
このように、硬判定部373は、DVB-S2やDVB-S2X規格等で予め定められた各信号点配置ではなく、歪情報を用いて硬判定を行うので、衛星中継装置12で発生する非線形歪が補償され、等化性能が向上する。硬判定部373は、硬判定の結果得られる信号点のI信号およびQ信号を、フィードバックフィルタ374と係数更新部375に供給する。
【0109】
フィードバックフィルタ374は、可変係数フィルタである。フィードバックフィルタ374は、係数更新部375から供給される係数を用いて、硬判定部373から供給されるI信号およびQ信号のそれぞれと係数との畳み込み演算を行う。フィードバックフィルタ374は、畳み込み演算の結果得られるI信号を減算部372−1に供給し、Q信号を減算部372−2に供給する。
【0110】
係数更新部375は、減算部372−1から供給されるI信号から、硬判定部373から供給されるI信号を減算する。また、係数更新部375は、減算部372−2から供給されるQ信号から、硬判定部373から供給されるQ信号を減算する。係数更新部375は、減算の結果得られるI信号およびQ信号に基づいてLMS(Least Mean Square)演算を行い、フィードフォワードフィルタ371とフィードバックフィルタ374に供給する係数を更新する。
【0111】
(LDPC符号復号部の構成例)
図18は、図15のLDPC符号復号部315の構成例を示すブロック図である。
【0112】
図18のLDPC符号復号部315は、尤度テーブル生成部381、記憶部382、および復号部383により構成される。
【0113】
尤度テーブル生成部381は、図15の歪情報生成部316から供給される歪情報が表す各平均信号を各信号点の理想信号として、各信号点にマッピングされるバイナリ系列(シンボル)を構成する各ビットの対数比LLRを算出する。尤度テーブル生成部381は、シンボルを構成するビットごとに、各信号点と、その信号点のビットの対数比LLRとを対応付けた尤度テーブルを生成し、記憶部382に供給する。
【0114】
記憶部382は、尤度テーブル生成部381から供給される尤度テーブルを記憶する。
【0115】
復号部383は、記憶部382から尤度テーブルを読み出す。復号部383(軟判定部)は、読み出された尤度テーブルを用いて、軟判定処理であるLDPC符号復号処理を行う。具体的には、復号部383は、尤度テーブルを用いて、図15の等化部313から供給されるI信号とQ信号が表す信号点に対し、シンボルを構成する各ビットの1と思われる確率と0と思われる確率の対数比LLRを求め、この対数比LLRに対してLDPC符号復号を行う。復号部383は、その結果得得られるデータを、図15の歪情報生成部316とBCH符号復号部317に供給する。
【0116】
以上のように、LDPC符号復号部315は、DVB-S2やDVB-S2X規格等で予め定められた各信号点の信号ではなく、歪情報を用いて尤度テーブルを生成するので、衛星中継装置12で発生する非線形歪が補償され、誤り訂正性能が向上する。
【0117】
(歪情報生成部の構成例)
図19は、図15の歪情報生成部316の構成例を示すブロック図である。
【0118】
図19の歪情報生成部316は、RAM(Random Access Memory)401および402,変調部403、および平均化部404により構成される。
【0119】
RAM401は、図15の等化部313から供給される、FEC処理前のI信号およびQ信号を保持する。RAM402は、LDPC符号復号部315から供給されるデータを保持する。
【0120】
変調部403は、インターリーブ部411とマッピング部412により構成される。変調部403は、図15のPLSコード復号部314から供給されるPLSコードに含まれるデータ区間の変調方式、即ち送信装置111におけるデータ区間の変調方式と同一の変調方式で、RAM402に保持されているデータを変調し、変調信号を生成する。
【0121】
具体的には、インターリーブ部411は、RAM401から読み出されるI信号およびQ信号のLDPC符号復号処理後のデータを、RAM402から読み出す。インターリーブ部411は、読み出されたデータに対してビットインターリーブを施し、その結果得られるデータをマッピング部412に供給する。
【0122】
マッピング部412は、PLSコードに含まれる変調方式で、インターリーブ部411から供給されるデータをマッピングし、そのデータに対応する送信信号の信号点のI信号およびQ信号を生成する。マッピング部412は、生成されたI信号およびQ信号を変調信号として平均化部404に供給する。
【0123】
平均化部404は、RAM401からI信号とQ信号を読み出す。平均化部404は、PLSコード復号部314から供給されるPLSコードが表す変調方式および変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻の、読み出されたI信号およびQ信号を平均化し、平均信号を生成する。平均化部404は、変調方式ごとに、変調信号の各信号点配置を送信信号の各信号点配置の推定値とし、その信号点配置に対応する平均信号の信号点配置を受信信号の信号点配置として、歪情報を生成する。
【0124】
平均化部404は、生成された歪情報のうちの、現在のPLSコードに含まれる変調方式の歪情報を、図15の直交検波部312、等化部313、およびLDPC符号復号部315に供給する。
【0125】
(受信装置の処理の説明)
図20は、図15の受信装置112の受信処理を説明するフローチャートである。
【0126】
図20のステップS101において、チャンネル選択部311は、図10の衛星中継装置12から受信された受信信号に対して周波数変換を行い、得られたIF信号から、ユーザ等により指定されたチャンネルのIF信号を選択する。チャンネル選択部311は、選択されたIF信号に対して直交復調、A/D変換などの処理を施し、その結果得られるI信号とQ信号を直交検波部312に供給する。
【0127】
ステップS102において、直交検波部312は、チャンネル選択部311から供給されるI信号とQ信号の位相誤差補正などを行う。このとき、直交検波部312は、歪情報生成部316から供給される歪情報に基づいて、衛星中継装置12により発生した非線形歪を補償する。直交検波部312は、位相誤差補正後のI信号とQ信号を等化部313に供給する。
【0128】
ステップS103において、等化部313は、直交検波部312から供給されるI信号とQ信号に対して等化処理を行う。このとき、等化部313は、歪情報生成部316から供給される歪情報に基づいて、衛星中継装置12により発生した非線形歪を補償する。等化部313は、等化処理後のI信号とQ信号をPLSコード復号部314、LDPC符号復号部315、および歪情報生成部316に供給する。
【0129】
ステップS104において、PLSコード復号部314は、等化部313から供給されるI信号とQ信号からPLSコードを復号する。PLSコード復号部314は、復号結果を、歪情報生成部316とBCH符号復号部317に供給する。
【0130】
ステップS105において、LDPC符号復号部315は、等化部313から供給されるI信号とQ信号が表す信号点に対してLDPC符号復号処理を行う。このとき、LDPC符号復号部315は、歪情報生成部316から供給される歪情報に基づいて、衛星中継装置12により発生した非線形歪を補償する。LDPC符号復号部315は、LDPC符号復号処理の結果得られるデータを、歪情報生成部316とBCH符号復号部317に供給する。
【0131】
なお、最初のステップS102、S103,S105の処理では、まだ歪情報が生成されていないため、例えば、予め放送規格で定められた歪情報が用いられる。
【0132】
ステップS106において、歪情報生成部316は、PLSコードが表す変調方式ごとに、LDPC符号復号処理後のデータとLDPC符号復号処理前のI信号およびQ信号とを用いて、歪情報を生成する歪情報生成処理を行う。この歪情報生成処理の詳細は、後述する図21を参照して説明する。
【0133】
ステップS107において、BCH符号復号部317は、PLSコード復号部314から供給されるPLSコードに基づいて、LDPC符号復号部315から供給されるデータをBCH符号復号し、復号結果をエネルギー逆拡散部318に供給する。
【0134】
ステップS108において、エネルギー逆拡散部318は、BCH符号復号部317から供給される復号結果をエネルギー逆拡散し、出力する。
【0135】
以上の処理は、ステップS109において処理の終了が指示されたと判定されるまで繰り返される。
【0136】
図21は、図20のステップS106の歪情報生成処理の詳細を説明するフローチャートである。
【0137】
図21のステップS131において、歪情報生成部316のRAM401(図19)は、等化部313から供給される、LDPC符号復号処理前のI信号およびQ信号を保持する。ステップS132において、RAM402は、LDPC符号復号部315から供給される、LDPC符号復号処理後のデータを保持する。
【0138】
ステップS133において、変調部403は、RAM402に保持されているLDPC符号復号処理後のデータを読み出し、PLSコード復号部314から供給されるPLSコードに含まれる変調方式で変調して、変調信号を生成する。変調部403は、生成された変調信号を平均化部404に供給する。
【0139】
ステップS134において、平均化部404は、PLSコードに含まれる変調方式および変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻の、RAM401から読み出されたLDPC符号復号処理前のI信号およびQ信号を平均化し、平均信号を生成する。
【0140】
ステップS135において、平均化部404は、変調方式ごとに、変調信号の各信号点配置を送信信号の各信号点配置の推定値とし、その信号点配置に対応する平均信号の信号点配置を受信信号の信号点配置として、歪情報を生成する。
【0141】
ステップS136において、平均化部404は、生成された歪情報のうちの、現在のPLSコードに含まれる変調方式の歪情報を、直交検波部312、等化部313、およびLDPC符号復号部315に供給する。
【0142】
これにより、直交検波部312の記憶部354(図16)に記憶される歪情報が更新され、硬判定部373(図17)の判定に用いられる歪情報が更新され、LDPC符号復号部315の尤度テーブル生成部381(図18)は、尤度テーブルを更新する。そして、処理は、図20のステップS106に戻り、ステップS107に進む。
【0143】
以上のように、受信装置112は、受信信号のLDPC符号復号処理後のデータを変調して変調信号を生成し、変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻のLDPC符号復号処理前のI信号およびQ信号を平均化することにより、歪情報を生成する。即ち、受信装置112は、LDPC符号復号処理後のデータを変調した結果得られる変調信号を、データ区間と同一の信号点配置の既知信号の送信信号の代わりに用いて、歪情報を生成する。これにより、データ区間と同一の信号点配置の既知信号を含まない受信信号の非線形歪を補償し、受信性能を向上させることができる。
【0144】
例えば、受信装置112は、歪情報に基づいて位相誤差検出時に非線形歪を補償することにより、位相同期性能を向上させ、位相同期を高速化することができる。また、受信装置112は、歪情報に基づいて等化処理における硬判定時に非線形歪を補償することにより、等化性能を向上させることができる。さらに、受信装置112は、歪情報に基づいてLDPC符号復号処理に用いられる尤度テーブルの生成時に非線形歪を補償することにより、誤り訂正性能を向上させることができる。
【0145】
なお、LDPC符号復号部315は、LDPC符号復号処理の成功を判定するようにしてもよい。この場合、歪情報生成部316は、変調方式および変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号に対応するLDPC符号復号処理前のI信号およびQ信号のうちの、LDPC符号復号処理に成功したデータのLDPC符号復号処理前のI信号およびQ信号のみを平均化し、平均信号を生成する。これにより、歪情報をより正確に生成することができる。
【0146】
また、等化部313は、フィードフォワードフィルタとフィードバックフィルタの両方を用いるDFEではなく、フィードフォワードフィルタのみを用いる線形等化器であってもよい。この場合、等化部313は、歪情報に基づいて等化誤差検出を行う。
【0147】
<第2実施の形態>
(受信装置の第2実施の形態の構成例)
本開示を適用した送受信システムの第2実施の形態は、衛星デジタルテレビ放送の放送信号がARIB STD-B44規格の伝送フォーマットの信号である点を除いて、第1実施の形態と同様である。以下では、送受信システムの第2実施の形態における受信装置についてのみ詳細に説明する。
【0148】
図22は、本開示を適用した送受信システムの第2実施の形態における受信装置の構成例を示すブロック図である。
【0149】
図22に示す構成のうち、図15の構成と同じ構成には同じ符号を付してある。重複する説明については適宜省略する。
【0150】
図22の受信装置420の構成は、受信信号がARIB STD-B44規格の伝送フォーマットの信号である点、PLSコード復号部314、歪情報生成部316、BCH符号復号部317、エネルギー逆拡散部318の代わりに、TMCC復号部421、歪情報生成部422、BCH符号復号部424、エネルギー逆拡散部423が設けられる点が、図15の受信装置112の構成と異なる。
【0151】
受信装置420のTMCC復号部421は、等化部313から供給されるI信号とQ信号から、受信信号内のデータ区間の変調方式などを含むTMCC情報を復号する。TMCC復号部421は、復号結果を、歪情報生成部422とBCH符号復号部424に供給する。
【0152】
歪情報生成部422は、LDPC符号復号部315から供給されるLDPC符号復号処理後のデータのうちの、伝送信号点配置信号の区間以外のデータ区間(以下、伝送信号点配置信号外区間という)のデータを、TMCC情報に含まれる変調方式で変調し、変調信号を生成する。
【0153】
歪情報生成部422は、TMCC情報に含まれる変調方式および変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻の伝送信号点配置信号外区間のLDPC符号復号処理前のI信号およびQ信号と、その信号点配置の伝送信号点配置信号のLDPC符号復号処理前のI信号およびQ信号とを平均化し、平均信号を生成する。
【0154】
歪情報生成部422は、変調方式ごとに、変調信号の各信号点配置を送信信号の各信号点配置の推定値とし、その信号点配置に対応する平均信号の信号点配置を受信信号の信号点配置として、歪情報を生成する。歪情報生成部422は、現在のTMCC情報に含まれる変調方式の歪情報を、直交検波部312、等化部313、およびLDPC符号復号部315に供給する。
【0155】
エネルギー逆拡散部423は、LDPC符号復号部315から供給されるデータをエネルギー逆拡散し、BCH符号復号部424に供給する。
【0156】
BCH符号復号部424は、TMCC復号部421から供給されるTMCC情報に基づいて、エネルギー逆拡散部423から供給されるデータをBCH符号復号し、復号結果を出力する。
【0157】
(歪情報生成部の構成例)
図23は、図22の歪情報生成部422の構成例を示すブロック図である。
【0158】
図23に示す構成のうち、図19の構成と同じ構成には同じ符号を付してある。重複する説明については適宜省略する。
【0159】
図23の歪情報生成部422の構成は、RAM401,RAM402、平均化部404が、RAM440、RAM441、平均化部442に代わる点が、図19の歪情報生成部316の構成と異なる。
【0160】
歪情報生成部422のRAM440は、図22の等化部313から供給されるLDPC符号復号処理前のI信号およびQ信号のうちの、伝送信号点配置信号外区間のI信号およびQ信号を保持する。RAM441は、LDPC符号復号部315から供給されるLDPC符号復号処理後のデータのうちの、伝送信号点配置信号外区間のデータを保持する。
【0161】
平均化部442は、等化部313から供給される伝送信号点配置信号の区間のI信号およびQ信号を、TMCC情報に含まれる変調方式、および、その伝送信号点配置信号の信号点配置に対応する、I信号およびQ信号とする。なお、伝送信号点配置信号の区間の変調方式は、伝送信号点配置信号外区間の変調方式と同一であるため、伝送信号点配置信号の各信号点配置は、変調信号の各信号点配置と同一である。
【0162】
また、平均化部442は、RAM440から伝送信号点配置信号外区間のI信号とQ信号を読み出す。平均化部442は、読み出された伝送信号点配置信号外区間のI信号およびQ信号を、TMCC情報に含まれる変調方式、および、そのI信号およびQ信号と同時刻の変調信号の信号点配置に対応する、I信号およびQ信号とする。
【0163】
平均化部442は、変調方式および変調信号の信号点配置ごとに、対応するI信号とQ信号を平均化し、平均信号を生成する。平均化部442は、変調方式ごとに、変調信号の各信号点配置を送信信号の各信号点配置の推定値とし、その信号点配置に対応する平均信号の信号点配置を受信信号の信号点配置として、歪情報を生成する。
【0164】
平均化部442は、生成された歪情報のうちの、現在のTMCC情報に含まれる変調方式の歪情報を、図22の直交検波部312、等化部313、およびLDPC符号復号部315に供給する。
【0165】
(受信装置の処理の説明)
図22の受信装置420の受信処理は、ステップS104でPLSコードの代わりにTMCC情報が復号される点、ステップS107の処理とステップS108の処理の順序が逆である点、および、ステップS106の歪情報生成処理を除いて、図20の受信処理と同様である。従って、以下では、歪情報生成処理についてのみ説明する。
【0166】
図24は、受信装置420の歪情報生成部422(図23)の歪情報生成処理の詳細を説明するフローチャートである。
【0167】
図24のステップS151において、歪情報生成部422は、LDPC符号復号部315から供給されるLDPC符号復号処理後のデータが、伝送信号点配置信号の区間のデータであるかどうかを判定する。
【0168】
ステップS151で伝送信号点配置信号の区間のデータであると判定された場合、ステップS152において、歪情報生成部422の平均化部442は、等化部313から供給される、そのデータのLDPC符号復号処理前のI信号およびQ信号を、その伝送信号点配置信号の信号点配置、および、TMCC情報に含まれる変調方式に対応する、I信号およびQ信号とする。そして、処理はステップS157に進む。
【0169】
一方、ステップS151で伝送信号点配置信号の区間のデータではないと判定された場合、ステップS153において、RAM440は、等化部313から供給されるLDPC符号復号処理前のI信号およびQ信号を保持する。
【0170】
ステップS154において、RAM441は、LDPC符号復号部315から供給されるLDPC符号復号処理後のデータを保持する。
【0171】
ステップS155において、変調部403は、RAM441に保持されているLDPC符号復号処理後のデータを読み出し、TMCC情報に含まれる変調方式で変調して、変調信号を生成する。変調部403は、生成された変調信号を平均化部442に供給する。
【0172】
ステップS156において、平均化部442は、RAM441から読み出されたデータのLDPC符号復号処理前のI信号およびQ信号をRAM440から読み出し、変調部403から供給される変調信号の信号点配置、および、TMCC情報に含まれる変調方式に対応する、I信号およびQ信号とする。
【0173】
ステップS157において、平均化部442は、変調方式および変調信号の信号点配置ごとに、ステップS155およびステップS156で、その変調方式および信号点配置に対応するI信号およびQ信号とされたI信号およびQ信号を平均化し、平均信号を生成する。ステップS158およびS159の処理は、PLSコードがTMCC情報に代わる点を除いて、図21のステップS135およびS136の処理と同様であるので、説明は省略する。
【0174】
以上のように、受信装置420は、変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻の未知信号のLDPC符号復号処理前のI信号およびQ信号と、その信号点配置の伝送信号点配置信号のLDPC符号復号処理前のI信号およびQ信号とを平均化し、歪情報を生成する。従って、受信装置420は、伝送信号点配置信号の受信信号のみを用いて歪情報を生成する場合に比べて、高速に歪情報を生成することができる。
【0175】
即ち、ARIB STD-B44規格の伝送フォーマットでは、送信信号全体における伝送信号点配置信号の割合が少ないため、伝送信号点配置信号の受信信号に対応するI信号およびQ信号の平均化には多くの時間(例えば2秒以上)を要する。従って、チャンネルの選択が行われてから正常な復号結果が出力されるまでのチャンネル選局時間が長くなる。
【0176】
これに対して、受信装置420は、伝送信号点配置信号の受信信号だけでなく、データ区間の未知信号の受信信号に対応するI信号およびQ信号も平均化に用いるため、平均化に必要な数のI信号およびQ信号を高速に取得することができる。その結果、歪情報を高速に生成することができ、チャンネル選局時間を短縮することができる。
【0177】
<第3実施の形態>
(本開示を適用したコンピュータの説明)
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどが含まれる。
【0178】
図25は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
【0179】
コンピュータ900において、CPU(Central Processing Unit)901,ROM(Read Only Memory)902,RAM(Random Access Memory)903は、バス904により相互に接続されている。
【0180】
バス904には、さらに、入出力インタフェース905が接続されている。入出力インタフェース905には、入力部906、出力部907、記憶部908、通信部909、及びドライブ910が接続されている。
【0181】
入力部906は、キーボード、マウス、マイクロフォンなどよりなる。出力部907は、ディスプレイ、スピーカなどよりなる。記憶部908は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部909は、ネットワークインタフェースなどよりなる。ドライブ910は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリなどのリムーバブルメディア911を駆動する。
【0182】
以上のように構成されるコンピュータ900では、CPU901が、例えば、記憶部908に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース905及びバス904を介して、RAM903にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0183】
コンピュータ900(CPU901)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブルメディア911に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
【0184】
コンピュータ900では、プログラムは、リムーバブルメディア911をドライブ910に装着することにより、入出力インタフェース905を介して、記憶部908にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部909で受信し、記憶部908にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM902や記憶部908に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0185】
なお、コンピュータ900が実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0186】
また、本明細書において、システムとは、複数の構成要素(装置、モジュール(部品)等)の集合を意味し、すべての構成要素が同一筐体中にあるか否かは問わない。したがって、別個の筐体に収納され、ネットワークを介して接続されている複数の装置、及び、1つの筐体の中に複数のモジュールが収納されている1つの装置は、いずれも、システムである。
【0187】
さらに、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【0188】
また、本開示の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0189】
例えば、第1乃至第3実施の形態では、位相誤差検出時、等化処理における硬判定時、およびLDPC符号復号処理に用いられる尤度テーブルの生成時の全てにおいて、歪情報に基づく非線形歪の補償が行われたが、少なくとも1つにおいて行われればよい。
【0190】
また、第2実施の形態において、第1実施の形態と同様に、LDPC符号復号部315が、LDPC符号復号処理の成功を判定するようにしてもよい。この場合、歪情報生成部422は、伝送信号点配置信号外区間のLDPC符号復号処理前のI信号およびQ信号のうちの、LDPC符号復号処理に成功したデータに対応するもののみを平均化に用いる。
【0191】
なお、本開示は、以下のような構成もとることができる。
【0192】
(1)
受信信号の誤り訂正後のデータを変調し、変調信号を生成する変調部と、
前記変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻の誤り訂正前の前記受信信号を平均化することにより、各信号点配置の変調信号に対する歪を表す歪情報を生成する平均化部と
を備える受信装置。
(2)
前記歪情報に基づいて前記受信信号の軟判定を行う軟判定部
をさらに備える
前記(1)に記載の受信装置。
(3)
前記歪情報に基づいて、前記誤り訂正に用いられる尤度テーブルを生成する尤度テーブル生成部
をさらに備え、
前記軟判定部は、前記尤度テーブル生成部により生成された前記尤度テーブルを用いて、前記受信信号に対して前記誤り訂正を行い、前記データを生成する
ように構成された
前記(2)に記載の受信装置。
(4)
前記歪情報に基づいて前記受信信号の硬判定を行う硬判定部
をさらに備える
前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の受信装置。
(5)
前記硬判定部による前記硬判定の結果を用いて、前記受信信号の位相誤差検出を行う位相差検出部
をさらに備える
前記(4)に記載の受信装置。
(6)
前記硬判定部は、前記歪情報に基づいて、等化処理後の前記受信信号の硬判定を行う
ように構成された
前記(4)または(5)に記載の受信装置。
(7)
前記平均化部は、前記変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻の誤り訂正前の前記受信信号のうちの、前記誤り訂正に成功した前記データの誤り訂正前の前記受信信号を平均化する
ように構成された
前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の受信装置。
(8)
前記平均化部は、前記変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻の未知信号の誤り訂正前の前記受信信号と、その信号点配置の既知信号の誤り訂正前の前記受信信号とを平均化する
ように構成された
前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の受信装置。
(9)
受信装置が、
受信信号の誤り訂正後のデータを変調し、変調信号を生成する変調ステップと、
前記変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻の誤り訂正前の前記受信信号を平均化することにより、各信号点配置の変調信号に対する歪を表す歪情報を生成する歪情報生成ステップと
を含む受信方法。
(10)
コンピュータを、
受信信号の誤り訂正後のデータを変調し、変調信号を生成する変調部と、
前記変調信号の信号点配置ごとに、その変調信号と同時刻の誤り訂正前の前記受信信号を平均化することにより、各信号点配置の変調信号に対する歪を表す歪情報を生成する平均化部と
して機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0193】
112 受信装置, 355 位相誤差検出部, 373 硬判定部, 381 尤度テーブル生成部, 383 復号部, 403 変調部, 404 平均化部, 420 受信装置, 441 平均化部
図1
図2
図3
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図5
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図10
図11
図12
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図19
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図21
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