(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タイミング制御部は、前記照明範囲の照明態様が周期的または一時的に変化するように、前記光走査部材による前記複数のコヒーレント光の走査タイミングに同期させて、前記複数のコヒーレント光の前記光学素子への入射タイミング、または前記照明範囲の照明タイミングを個別に制御する請求項4に記載の照明装置。
前記タイミング制御部は、前記照明範囲内の選択された任意の領域と前記照明範囲内の他の領域とが互いに異なる照明態様になるように、前記複数のコヒーレント光の前記光学素子への入射タイミング、または前記照明範囲の照明タイミングを個別に制御する請求項1に記載の照明装置。
前記タイミング制御部は、前記照明範囲内の選択された任意の領域が前記照明範囲内の他の領域とは異なる色で照明されるように、前記複数のコヒーレント光の前記光学素子への入射タイミング、または前記照明範囲の照明タイミングを個別に制御する請求項7に記載の照明装置。
前記タイミング制御部は、前記照明範囲のうち前記照明範囲内の選択された任意の領域だけが照明されないように、前記複数のコヒーレント光の前記光学素子への入射タイミング、または前記照明範囲の照明タイミングを個別に制御する請求項7に記載の照明装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザ光により照明される被照明領域の発光色を変化させるには、発光波長域の異なる複数のレーザ光を重ね合わせるか、あるいは、特定の発光波長域のレーザ光を蛍光体に照射して、波長変換を行えばよい。
【0006】
しかしながら、従来の照明装置は、各レーザ光で照明される全域を対象としてしか発光色を切り替えることができない。このため、スポット的に色を変えるには、ビーム径の小さい別個のレーザ光源を設けるしかなく、照明装置の光学系の構成が複雑になってしまう。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、光学系の構成を複雑にすることなく、照明範囲内の任意の領域の照明態様を任意に変更可能な照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様では、複数のコヒーレント光を発光するコヒーレント光源と、
前記複数のコヒーレント光を拡散させて、所定の照明範囲を照明する光学素子と、
前記複数のコヒーレント光の前記光学素子への入射タイミング、または前記照明範囲の照明タイミングを個別に制御するタイミング制御部と、を備え、
前記光学素子は、前記複数のコヒーレント光のそれぞれに対応して設けられ、対応するコヒーレント光が入射される複数の拡散領域を有し、
前記複数の拡散領域のそれぞれは、入射されたコヒーレント光の拡散により、前記照明範囲を照明可能であり、
前記複数の拡散領域のそれぞれは、複数の要素拡散領域を有し、
前記複数の要素拡散領域のそれぞれは、入射されたコヒーレント光の拡散により、前記照明範囲内の部分領域を照明し、
前記複数の要素拡散領域のそれぞれによって照明される前記部分領域の少なくとも一部は、それぞれ相違している照明装置が提供される。
【0009】
前記コヒーレント光源で発光された前記複数のコヒーレント光は、発光波長域がそれぞれ相違してもよい。
【0010】
前記コヒーレント光源で発光された前記複数のコヒーレント光を前記光学素子上で走査させる走査部を備えてもよい。
【0011】
前記走査部は、前記コヒーレント光源で発光された前記複数のコヒーレント光の進行方向を周期的に変化させる光走査部材を有してもよい。
【0012】
前記光走査部材は、前記コヒーレント光源からの前記複数のコヒーレント光を、前記光学素子の入射面上で周期的に走査させ、
前記タイミング制御部は、前記光走査部材による前記複数のコヒーレント光の走査タイミングに同期させて、前記複数のコヒーレント光の前記光学素子への入射タイミング、または前記照明範囲の照明タイミングを個別に制御してもよい。
【0013】
前記タイミング制御部は、前記照明範囲の照明態様が周期的または一時的に変化するように、前記光走査部材による前記複数のコヒーレント光の走査タイミングに同期させて、前記複数のコヒーレント光の前記光学素子への入射タイミング、または前記照明範囲の照明タイミングを個別に制御してもよい。
【0014】
前記タイミング制御部は、前記照明範囲内の選択された任意の領域と前記照明範囲内の他の領域とが互いに異なる照明態様になるように、前記複数のコヒーレント光の前記光学素子への入射タイミング、または前記照明範囲の照明タイミングを個別に制御してもよい。
【0015】
前記タイミング制御部は、前記照明範囲内の選択された任意の領域が前記照明範囲内の他の領域とは異なる色で照明されるように、前記複数のコヒーレント光の前記光学素子への入射タイミング、または前記照明範囲の照明タイミングを個別に制御してもよい。
【0016】
前記タイミング制御部は、前記照明範囲のうち前記照明範囲内の選択された任意の領域だけが照明されないように、前記複数のコヒーレント光の前記光学素子への入射タイミング、または前記照明範囲の照明タイミングを個別に制御してもよい。
【0017】
前記照明範囲内に存在する対象物を検出する対象物検出部を備えてもよく、
前記タイミング制御部は、前記対象物検出部で検出された対象物の領域と前記照明範囲内のその他の領域とが互いに異なる照明態様になるように、前記複数のコヒーレント光の前記光学素子への入射タイミング、または前記照明範囲の照明タイミングを個別に制御してもよい。
【0018】
前記照明範囲内に存在する対象物を検出する対象物検出部を備えてもよく、
前記タイミング制御部は、前記対象物検出部で検出された前記対象物およびその周辺領域の少なくとも一方の照明態様が前記照明範囲内の他の領域の照明態様とは相違するように、前記複数のコヒーレント光の前記光学素子への入射タイミング、または前記照明範囲の照明タイミングを個別に制御してもよい。
【0019】
前記タイミング制御部は、前記コヒーレント光源が発光する前記複数のコヒーレント光の発光タイミングを個別に制御してもよい。
【0020】
前記光学素子は、ホログラム記録媒体であってもよく、
前記複数の要素拡散領域のそれぞれは、それぞれ相違する干渉縞パターンが形成された要素ホログラム領域であってもよい。
【0021】
前記光学素子は、複数のレンズアレイを有するレンズアレイ群であってもよく、
前記複数の要素拡散領域のそれぞれは、前記レンズアレイを有してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、光学系の構成を複雑にすることなく、照明範囲内の任意の領域の照明態様を任意に変更可能な照明装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0025】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0026】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態による照明装置1の概略構成を示す図である。
図1の照明装置1は、照射装置2と、光学素子3とを備えている。照射装置2は、レーザ光源4と、タイミング制御部5と、走査部6とを有する。
【0027】
レーザ光源4は、複数のコヒーレント光すなわちレーザ光を発光する複数の光源部7を有する。これら複数の光源部7は、独立して設けられていてもよいし、共通の基板上に複数の光源部7を並べて配置した光源モジュールであってもよい。以下では、複数のコヒーレント光の発光波長域がそれぞれ相違している例を主に説明するが、複数のコヒーレント光の発光波長域は同一でもよい。複数のコヒーレント光の発光波長域をそれぞれ相違させるには、本実施形態のレーザ光源4は、発光波長域がそれぞれ相違する少なくとも2つの光源部7を有していればよく、発光波長域の種類は2つ以上であればよい。また、発光強度を高めるために、各発光波長域ごとに、複数個ずつの光源部7を設けてもよい。
【0028】
例えば、レーザ光源4が、赤色の発光波長域の光源部7rと、緑色の発光波長域の光源部7gと、青色の発光波長域の光源部7bとを有する場合には、これらの光源部7が発光した3つのレーザ光を重ね合わせることで、白色の照明光を生成可能となる。
【0029】
タイミング制御部5は、複数のコヒーレント光の光学素子3への入射タイミング、または照明範囲(被照明領域)10の照明タイミングを個別に制御する。より具体的な一例では、タイミング制御部5は、走査部6による複数のレーザ光の走査タイミングに同期させて、発光波長域がそれぞれ相違する複数のレーザ光の発光タイミングを個別に制御する。すなわち、発光波長域がそれぞれ相違する複数のレーザ光に対応して複数の光源部7が設けられている場合、タイミング制御部5は、複数の光源部7からレーザ光を発光させる発光タイミングを、各光源部7ごとに制御する。上述したように、レーザ光源4が赤青緑の3つのレーザ光を発光可能である場合、各レーザ光の発光タイミングを制御することで、赤青緑のうち任意の1色以上の色を混ぜ合わせた色の照明光を生成可能となる。
【0030】
タイミング制御部5は、レーザ光源4からの発光タイミングを制御してもよいし、光学素子3に入射されるレーザ光の入射タイミングを制御してもよいし、あるいは、光学素子3で拡散されたレーザ光が照明範囲を照明する照明タイミングを制御してもよい。以下では、タイミング制御部5がレーザ光源4からの発光タイミングを制御する例を主に説明する。
【0031】
タイミング制御部5は、各光源部7からレーザ光を発光させるか否か、すなわち発光のオン/オフを制御してもよいし、各光源部7から発光されたレーザ光を走査部6の入射面に導光するか否かを切り替えてもよい。後者の場合、各光源部7と走査部6との間に不図示の光シャッタ部を設けて、この光シャッタ部でレーザ光の通過/遮断を切り替えればよい。
【0032】
走査部6は、光源部7で発光された複数のレーザ光を光学素子3上で走査させる。走査部6は、光源部7を移動させて各レーザ光を光学素子3上で走査させてもよいし、光学素子3を移動させて各レーザ光を光学素子3上で走査させてもよいし、光源部7からのレーザ光の進行方向を変化させる光走査部材6aを設けて、各レーザ光を光学素子3上で走査させてもよい。以下では、走査部6が光走査部材6aを有する例を主に説明する。タイミング制御部5は、照明範囲の照明態様が周期的または一時的に変化するように、光走査部材6aによる複数のレーザ光の走査タイミングに同期させて、各レーザ光の発光タイミング、光学素子3への入射タイミング、または照明範囲の照明タイミングを個別に制御する。
【0033】
光走査部材6aは、レーザ光源4からのレーザ光の進行方向を経時的に変化させ、レーザ光の進行方向が一定にならないようにする。この結果、光走査部材6aを出射したレーザ光は、光学素子3の入射面上を走査するようになる。
【0034】
光走査部材6aは、例えば
図2に示すように、互いに交差する方向に延在される二つの回転軸11,12周りに回転可能な反射デバイス13を有する。この反射デバイス13の反射面13aに入射されたレーザ光源4からのレーザ光は、反射面13aの傾斜角度に応じた角度で反射されて、光学素子3の入射面3aの方向に進行する。反射デバイス13を二つの回転軸11,12周りに回転させることで、レーザ光は光学素子3の入射面3a上を二次元的に走査することになる。反射デバイス13は、例えば一定の周期で二つの回転軸11,12周りに回転する動作を繰り返すため、この周期に同期して、光学素子3の入射面3a上をレーザ光は繰り返し二次元走査する。
【0035】
本実施形態では、光走査部材6aを一つだけ設けることを想定しており、レーザ光源4で発光された複数のレーザ光はいずれも、共通の光走査部材6aに入射されて、この光走査部材6aで進行方向が経時的に変化させられて、光学素子3上を走査する。
【0036】
光学素子3は、複数のレーザ光が入射される入射面3aを有し、この入射面3aに入射された複数のレーザ光を拡散させて、所定の照明範囲を照明する。より具体的には、光学素子3で拡散された複数のレーザ光は、被照明領域10を通過した後、実際の照明範囲20である照明範囲を照明する。
【0037】
ここで、被照明領域10は光学素子3内の各拡散領域14によって重ねて照明されるニアフィールドの被照明領域である。ファーフィールドの照明範囲は、実際の被照明領域の寸法よりも、角度空間における拡散角度分布として表現されることが多い。本明細書における「被照明領域」という用語は、実際の被照射面積(照明範囲)に加え角度空間における拡散角度範囲も包含するものとする。したがって、
図1の照明装置によって照明される照明範囲は、
図1に示すニアフィールドの被照明領域10よりもはるかに広い領域となりうる。
【0038】
図3は光学素子3で拡散されたレーザ光が被照明領域10に入射される様子を示す図である。光学素子3は、複数のレーザ光に対応する複数の拡散領域14を有する。各拡散領域14には対応するレーザ光が入射される。各拡散領域14は入射されたレーザ光を拡散させて、全体として被照明領域10の全域を照明する。各拡散領域14は、複数の要素拡散領域15を有する。各要素拡散領域15は、入射されたレーザ光を拡散させて、被照明領域10内の部分領域を照明する。部分領域の少なくとも一部は、各要素拡散領域15ごとに相違している。
【0039】
光学素子3は、例えばホログラム記録媒体16を用いて構成される。ホログラム記録媒体16は、例えば
図3に示すように、複数のホログラム領域17を有する。各ホログラム領域17は、発光波長域がそれぞれ異なる複数のレーザ光のそれぞれに対応して設けられている。各ホログラム領域17は、対応するレーザ光が入射される入射面17aを有する。各ホログラム領域17の入射面17aに入射されて拡散されたレーザ光はいずれも、被照明領域10を照明する。例えば、ホログラム記録媒体16が3つのホログラム領域17を有する場合、各ホログラム領域17で拡散されたレーザ光は、被照明領域10の全域を照明する。
【0040】
図3では、赤、青または緑で発光する3つのレーザ光に対応づけて、3つのホログラム領域17を設ける例を示しているが、本実施形態によるホログラム記録媒体16は、発光波長域が異なる2つ以上のレーザ光に対応づけて、2つ以上のホログラム領域17を有していればよい。
図3のように、ホログラム記録媒体16が赤、青または緑で発光する3つのレーザ光に対応する3つのホログラム領域17を有する場合には、各ホログラム領域17が被照明領域10の全域を照明することから、3つのレーザ光が発光している場合には、被照明領域10は白色で照明されることになる。
【0041】
ホログラム記録媒体16における各ホログラム領域17のサイズすなわち面積は、必ずしも同じである必要はない。各ホログラム領域17のサイズが異なっていても、各ホログラム領域17の入射面17aに形成される干渉縞を各ホログラム領域17ごとに調整することで、各ホログラム領域17は共通の被照明領域10を照明することができる。
【0042】
複数のホログラム領域17のそれぞれは、複数の要素ホログラム領域18を有する。複数の要素ホログラム領域18のそれぞれは、入射されたレーザ光を拡散させることにより、被照明領域10内の部分領域19を照明する。各要素ホログラム領域18が照明する部分領域19の少なくとも一部は、各要素ホログラム領域18ごとに相違している。すなわち、異なる要素ホログラム領域18が照明する部分領域19同士は、少なくとも一部が相違している。
【0043】
各要素ホログラム領域18の入射面17aには干渉縞パターンが形成されている。よって、各要素ホログラム領域18の入射面17aに入射されたレーザ光は、入射面17a上の干渉縞パターンによって回折されて、被照明領域10上の対応する部分領域19を照明する。干渉縞パターンを種々に調整することで、各要素ホログラム領域18で回折すなわち拡散されるレーザ光の進行方向を変えることができる。
【0044】
このように、各要素ホログラム領域18内の各点に入射されたレーザ光は、対応する部分領域19を照明する。また、光走査部材6aは、各要素ホログラム領域18に入射されるレーザ光の入射位置および入射角度を経時的に変化させる。一つの要素ホログラム領域18内に入射されたレーザ光は、その要素ホログラム領域18内のどの位置に入射されても、共通の部分領域19を照明する。これはすなわち、部分領域19の各点に入射されるレーザ光の入射角度が経時的に変化することを意味する。この入射角度の変化は、人間の目で分解不可能な速さであり、結果として、人間の目には、相関の無いコヒーレント光の散乱パターンが多重化されて観察される。したがって、各散乱パターンに対応して生成されたスペックルが重ねられて平均化されて、観察者に観察されることになる。これにより、被照明領域10では、スペックルが目立ちにくくなる。また、光走査部材6aからのレーザ光は、ホログラム記録媒体16上の各要素ホログラム領域18を順に走査するため、各要素ホログラム領域18内の各点で回折されたレーザ光はそれぞれ異なる波面を有し、これらのレーザ光は被照明領域10上に独立に重ね合わされることで、被照明領域10ではスペックルの目立たない均一な照度分布が得られる。
【0045】
図3では、各要素ホログラム領域18が、被照明領域10内のそれぞれ異なる部分領域19を照明する例を示しているが、部分領域19の一部は隣接する部分領域19と重なっていてもよい。また、部分領域19のサイズは、各要素ホログラム領域18ごとに相違していてもよい。さらに、要素ホログラム領域18の配列順序に従って、対応する部分領域19が被照明領域10内で配列されている必要はない。すなわち、ホログラム領域17内での要素ホログラム領域18の配列順序と、被照明領域10内での対応する部分領域19の配列順序とは、必ずしも一致している必要はない。
【0046】
本実施形態による照明装置1は、被照明領域10を通過したレーザ光によって照明される照明範囲内の一部の照明色を変えたり、照明範囲内の一部だけ照明しないような照明制御を必要に応じて行うことができるようにしている。
【0047】
図4および
図5は被照明領域10内の中央部10aの照明態様を被照明領域10内の他の部分の照明態様と相違させる例を示している。この場合、被照明領域10を通過したレーザ光によって照明される照明範囲においても、その中央部の照明態様が中央部以外の照明態様と異なって照明されることになる。
【0048】
図4の例では、ホログラム記録媒体16が赤、緑または青で発光する3つのレーザ光に対応する3つのホログラム領域17を有し、赤用のホログラム領域17ではその全域を対応するレーザ光で走査させ、緑用と青用のホログラム領域17ではその一部を除いて対応するレーザ光で走査させる。
図4では、各ホログラム領域17中で、対応するレーザ光を走査させない部分を白抜きで図示している。これらの白抜き部分は、被照明領域10内の中央部10aに相当する。赤のレーザ光は、対応するホログラム領域17の全域を走査するため、被照明領域10の全域を照明することになる。緑と青のレーザ光は、対応するホログラム領域17中の白抜き部分以外を走査するため、被照明領域10中の中央部10a以外を照明する。この結果、被照明領域10中の中央部10aは赤色で照明され、中央部10a以外の被照明領域10は、赤緑青の照明光が混ざり合って白色で照明されることになる。
【0049】
一方、
図5は、3つのホログラム領域17のいずれにおいても、被照明領域10内の中央部10aに対応する領域以外をレーザ光が走査している。このため、被照明領域10中の中央部10aはどの色でも照明されない非照明領域となる。
【0050】
タイミング制御部5は、3つのレーザ光の発光タイミングを個別に制御するため、3つのレーザ光の発光タイミングを任意に調整することで、被照明領域10内の任意の場所を任意の色で照明することができる。被照明領域10の内部の照明態様を任意に調整すれば、その照明態様に応じて、被照明領域10を通過したレーザ光で照明される実際の照明範囲内の任意の部分領域を任意の照明態様で照明可能となる。
【0051】
上述したように、3つのレーザ光の色は同じでもよい。3つのレーザ光の色が同じであったとしても、本実施形態によれば、所定の照明範囲(被照明領域)10内の任意の部分領域10aの照明態様を任意に変更できる。
【0052】
ホログラム記録媒体16は、例えば実物の散乱板からの散乱光を物体光として用いて作製することができる。より具体的には、ホログラム記録媒体16の母体であるホログラム感光材料に、互いに干渉性を有するコヒーレント光からなる参照光と物体光とを照射すると、これら光の干渉による干渉縞がホログラム感光材料に形成されて、ホログラム記録媒体16が作製される。参照光としては、コヒーレント光であるレーザ光が用いられ、物体光としては、例えば安価に入手可能な等方散乱板の散乱光が用いられる。
【0053】
ホログラム記録媒体16を作製する際に用いた参照光の焦点位置からホログラム記録媒体16に向けてレーザ光を照射することで、ホログラム記録媒体16を作製する際に用いた物体光の元となる散乱板の配置位置に、散乱板の再生像が生成される。ホログラム記録媒体16を作製する際に用いた物体光の元となる散乱板が均一的な面散乱をしていれば、ホログラム記録媒体16により得られる散乱板の再生像も、均一な面照明となり、この散乱板の再生像が生成される領域が被照明領域10となる。
【0054】
本実施形態では、光学素子3を用いて、照明範囲内の一部の照明色を変えたり、照明範囲内の一部だけ照明しないような照明制御を行えるようにしている。このような照明制御をホログラム記録媒体16を用いて行うには、各要素ホログラム領域18に形成される干渉縞パターンが複雑になる。このような複雑な干渉縞のパターンは、現実の物体光と参照光を用いて形成する代わりに、予定した再生照明光の波長や入射方向、並びに、再生されるべき像の形状や位置等に基づき計算機を用いて設計することが可能である。このようにして得られたホログラム記録媒体30は、計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)とも呼ばれる。また、各要素ホログラム領域18上の各点における拡散角度特性が同じであるフーリエ変換ホログラムを計算機合成により形成してもよい。さらに、被照明領域10の光軸後方側にレンズなどの光学部材を設けて、実際の照明範囲のサイズおよび位置を設定してもよい。
【0055】
光学素子3としてホログラム記録媒体16を設けることによる利点の一つは、レーザ光の光エネルギー密度を拡散により低下できることであり、また、その他の利点の一つは、ホログラム記録媒体16が指向性の面光源として利用可能になるため、従来のランプ光源(点光源)と比較して、同じ照度分布を達成するための光源面上の輝度を低下できることである。これにより、レーザ光の安全性向上に寄与でき、被照明領域10を通過したレーザ光を人間の目で直視しても、単一点光源を直視する場合に比べ、人間の目に悪影響を与えるおそれが少なくなる。
【0056】
図1〜
図5に示した例では、赤、緑および青用のホログラム領域17を
図6に示すように、各ホログラム領域17の入射面に沿って隣接配置している。
図6では、赤用のホログラム領域を符号17r、緑用のホログラム領域を符号17g、青用のホログラム領域を符号17bで示している。
【0057】
このように、3つのホログラム領域17を入射面に沿って隣接配置する以外に、
図7に示すように、各ホログラム領域17を積層方向に配置したホログラム記録媒体16を用いてもよい。この場合、各ホログラム領域17の干渉縞パターンは、各ホログラム領域17の層に形成される。光走査部材6aからのレーザ光が入射されるホログラム記録媒体16の表面から奥の方にあるホログラム領域17までレーザ光ができるだけロスなく到達するように、各ホログラム領域17の可視光透過率をできるだけ高くするのが望ましい。また、積層方向に重なる位置に干渉縞パターンを形成すると、表面から奥の方の層にはレーザ光が届きにくくなるため、
図5に示すように、積層方向にずらして各層に干渉縞パターンを形成するのが望ましい。
【0058】
図1では、光走査部材6aからのレーザ光が光学素子3を透過して拡散する例を示したが、光学素子3は、レーザ光を拡散反射させるものでもよい。例えば、光学素子3としてホログラム記録媒体16を用いる場合、ホログラム記録媒体16は反射型でも透過型でもよい。一般に、反射型のホログラム記録媒体16(以下、反射型ホロ)は、透過型のホログラム記録媒体16(以下、透過型ホロ)に比べて、波長選択性が高い。すなわち、反射型ホロは、異なる波長に対応した干渉縞を積層させても、所望の層のみで所望の波長のコヒーレント光を回折させることができる。また、0次光の影響を除去しやすい点でも、反射型ホロは優れている。一方、透過型ホロは、回折可能なスペクトルが広く、レーザ光源4の許容度が広いが、異なる波長に対応した干渉縞パターンを積層させると、所望の層以外の層でも所望の波長のコヒーレント光が回折されてしまう。よって、一般には、透過型ホロは、積層構造にするのが困難である。
【0059】
また、ホログラム記録媒体16の具体的な形態としては、フォトポリマーを用いた体積型ホログラム記録媒体16でもよいし、銀塩材料を含む感光媒体を利用して記録するタイプの体積型ホログラム記録媒体16でもよいし、レリーフ型(エンボス型)のホログラム記録媒体16でもよい。
【0060】
なお、光学素子3の具体的な形態は、ホログラム記録媒体16に限定されるものではなく、複数の要素拡散領域15に細かく分割することが可能な各種の拡散部材でもよい。例えば、各要素拡散領域15をそれぞれ一つのレンズアレイとするレンズアレイ群を用いて光学素子3を構成してもよい。この場合、要素拡散領域15ごとにレンズアレイが設けられ、各レンズアレイが被照明領域10内の部分領域19を照明するように各レンズアレイの形状が設計される。そして、各部分領域19の位置は、少なくとも一部が相違している。これにより、ホログラム記録媒体16を用いて光学素子3を構成した場合と同様に、被照明領域10内の一部分だけの照明色を変えたり、一部分だけを照明しないようにすることができる。
【0061】
図4および
図5では、被照明領域10内の一部の照明を停止させたり、一部の照明色を変化させる例を示したが、被照明領域10内の一部の照明態様を変える手法は、これら以外にも考えられる。例えば、レーザ光源4が同一の発光波長域で発光する複数の光源部7を有する場合には、そのうちの一部の光源部7の発光を停止させて、被照明領域10内の一部の照明強度をその周囲の照明強度よりも低くしてもよい。その逆に、被照明領域10内の一部の照明強度をその周囲の照明強度よりも高くしてもよい。また、被照明領域10内の一部を点滅照明させてもよい。あるいは、被照明領域10内の一部の色を連続的または断続的に変化させてもよい。
【0062】
このように、第1の実施形態では、発光波長域がそれぞれ相違する複数のレーザ光に対応づけられる複数の拡散領域14を有する光学素子3を設け、各拡散領域14は複数の要素拡散領域15を有し、各要素拡散領域15は被照明領域10内の部分領域19を照明するため、各要素拡散領域15にレーザ光を照射するか否かをタイミング制御部5にて制御することで、被照明領域10内の任意の領域の照明態様を被照明領域10内の他の領域の照明態様とは相違させることができる。例えば、被照明領域10内の任意の領域の照明色を変えたり、任意の部分領域19のみを照明しないようにすることができる。
【0063】
さらに、光走査部材6aはレーザ光を各要素拡散領域15内で走査し、各要素拡散領域15内の各点に入射されたレーザ光は、対応する部分領域19の全域を照明するため、被照明領域10内の各部分領域19におけるレーザ光の入射角度が経時的に変化することになり、被照明領域10でのスペックルが目立ちにくくなる。
【0064】
(第2の実施形態)
以下に説明する第2の実施形態は、被照明領域10内に存在する対象物の照明態様を変えるものである。
【0065】
図8は本発明の第2の実施形態による照明装置1の概略構成を示す図、
図9は
図8の照明装置1で照明される照明範囲20を示す図である。
図8の照明装置1は、
図1の照明装置1の構成に加えて、対象物検出部21を備えている。対象物検出部21は、光学素子3により照明される照明範囲内に存在する対象物22を検出する。すなわち、対象物検出部21は、
図8の被照明領域10を通過したレーザ光により照明される照明範囲20内に存在する対象物22を検出する。
【0066】
対象物検出部21は、対象物22を光学的に検出するセンサであってもよい。例えば、センサから赤外線を被照明領域10に照射し、その反射光がセンサにて所定時間以内に検出されるか否かにより、対象物22の有無と対象物22の位置およびサイズとを検出してもよい。あるいは、被照明領域10の画像をカメラで撮影し、その撮影画像をパターンマッチング等の画像認識により分析して、対象物22の有無と対象物22の位置およびサイズとを検出してもよい。
【0067】
タイミング制御部5は、対象物検出部21で対象物22が検出された場合には、対象物22の位置およびサイズに応じて、複数の光源部7の発光タイミングを制御する。より具体的には、タイミング制御部5は、被照明領域10内に投影された対象物22の像およびその周辺領域の照明態様を、被照明領域10内の他の領域の照明態様と相違させる。これにより、被照明領域10を通過したレーザ光が実際の照明範囲20を照明する際に、対象物22およびその周辺領域の照明態様を、照明範囲20内の他の領域の照明態様とは相違させることができる。
【0068】
例えば
図9(a)に示すように、タイミング制御部5は、照明範囲20内の対象物22を照明しないような発光制御を行ってもよい。これにより、
図9(a)の照明装置1が例えば乗物のヘッドライトで、対象物22が人間である場合に、照明範囲20内の人間がヘッドライトを浴びて眩しさを感じることがないように、人間には照明光を直接当てないようにすることができる。
【0069】
あるいは、例えば
図9(b)に示すように、タイミング制御部5は、照明範囲20内の対象物22を別の色で照明するような発光制御を行ってもよい。これにより、
図9の照明装置1が例えば乗物のヘッドライトで、対象物22が歩行者や対向車等である場合に、対象物22を赤色等の目立つ色で照明して、乗物の運転手に対象物22の存在を知らせて、運転手の注意を喚起することができる。
【0070】
対象物22の照明態様は、
図9(a)のような照明停止、
図9(b)のような異なる色での照明以外にも、種々の方法が考えられる。例えば、レーザ光源4が同一の発光波長域で発光する複数の光源部7を有する場合には、そのうちの一部の光源部7の発光を停止させて、対象物22の照明強度をその周囲の照明強度よりも低くしてもよい。あるいはその逆に、対象物22の照明強度をその周囲の照明強度よりも高くしてもよい。また、対象物22の照明を、連続照明ではなく点滅照明に切り替えてもよい。
【0071】
このように、第2の実施形態では、対象物検出部21が検出した対象物22の位置およびサイズに合わせて、タイミング制御部5が複数の光源部7の発光タイミングを制御するため、対象物22の照明態様を、照明範囲20内の他の領域と変えることができる。これにより、対象物22の防眩性を向上させたり、対象物22の存在をわかりやすく報知することが可能となる。
【0072】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、照明範囲20内の対象物22を追尾するものである。第3の実施形態の構成は、
図8と同じであり、対象物検出部21によって照明範囲20内の対象物22を検出する。
【0073】
タイミング制御部5は、照明範囲20内の対象物22の周辺領域24の照明態様を、照明範囲20内の他の領域の照明態様と相違させるべく、レーザ光源4の各光源部7の発光タイミングを制御する。対象物22の周辺領域24の照明態様としては、被照明領域10内の周辺領域24以外の領域とは異なる色で照明してもよいし、被照明領域10内の周辺領域24のみ照明を停止してもよいし、被照明領域10内の周辺領域24のみ点滅照明を行ってもよい。
【0074】
図10(a)と
図10(b)は、被照明領域10に投影される対象物22の像の位置が移動した例を示している。対象物22の像の位置に合わせて、異なる照明態様で照明される領域も変化していく。この例では、対象物22を含む部分領域19を中心とする周辺の計9つの部分領域19の照明態様をそれ例外の被照明領域10の照明態様とは相違させている。これらの図では、対象物22を含む計9つの部分領域19の照明態様を影線で図示しているが、この影線は、他の領域とは照明色が異なっていたり、非照明領域であることを示している。
【0075】
図10(a)と
図10(b)に示すように、被照明領域10上で、対象物22の像の周辺領域24の照明態様を他の領域の照明態様と相違させれば、実際の照明範囲20上に存在する対象物22の周囲領域の照明態様を、その他の領域の照明態様から相違させることができる。
【0076】
対象物22の追尾の仕方は、
図10に示したものに限定されない。例えば、対象物22の進行方向を検出して、対象物22が現在存在する位置から進行方向とは反対側、すなわち、対象物22の移動軌跡のみを照明してもよいし、その逆に、対象物22がこれから進行する可能性のある全方向を先回りで照明してもよい。
【0077】
このように、第3の実施形態では、照明範囲20内の対象物22を継続的に検出し、対象物22の周辺領域24の照明態様を照明範囲20内の他の領域とは相違させるため、対象物22が移動していても、対象物22を照明によって追尾することが可能となる。よって、例えば、夜間に、移動している対象物22を連続的に撮影することができる。
【0078】
第1乃至第3の実施形態による照明装置は、乗物に搭載されるものだけではなく、特定の場所に設置されるものでもよい。また、乗物に搭載する場合でも、乗物は車両に限定されるものではなく、航空機等の飛行体、列車、船舶、潜水物などの各種の移動体でもよい。
【0079】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。